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単結晶サファイアを用いた静電容量式圧力センサの 研究

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(1)

単結晶サファイアを用いた静電容量式圧力センサの 研究

著者 増田 誉

発行年 2001‑09‑21

出版者 静岡大学

URL http://doi.org/10.14945/00006465

(2)

電子科学研究科土1 tl

…,1・7375RE

       綜

 静岡大学大学院 電子科学研究科      電子応用工学専攻

       醸ws♪鱗       漢

      

      増田 誉  遷図蓬攣

(3)

概 要

 本研究は過酷な環境下でも使用できる工業用圧力発信器に対して隔膜構造を 用いずに構築することを目標とした。このために単結晶サファイアを用いた静 電容量式圧力センサとその信号処理回路を開発した。

 センサの構成材料は上記要求を満足する単結晶サファイアを用い、この微細 加工技術と直接接合技術を開発した。さらに圧力測定原理は弾性率に影響され ない静電容量式を選択した。電極膜には単結晶サファイアと線膨張率差が近く、

機械的かつ化学的にも安定性の高い白金を用いた。上記の開発により小型化が 困難な5Kpaの微圧センサを作成した。チップサイズは約口7mm、ダイヤフラ ムの直径と厚さは約φ4.3mm、 t:0.05mm、電極間距離は約3μmであり、セン サの直線性、温度特性、湿度特性等の誤差をレシオメトリック信号処理により 除去するためにセンサチップには感圧容量と基準容量の2つのキャパシタを内 臓させた。この2つのキャパシタのべ一ス・キャパシタンスは共に約10pFであ り、感圧容量の圧力感度は定格圧力印加時に約1pFだけ増加するよう設計した。

このセンサチップは、耐食性の高いニッケル基合金板と予め拡散接合により接 合された台座と固液間反応接合技術を用いて接合されパッケージに収められて

いる。

 信号処理回路は印加圧力により生じたセンサの微小な容量変化を高精度に測 定するために電荷増幅器を用いた電流・電圧計法を開発し、センサに寄生する 抵抗成分による誤差は位相検波回路により除去し、センサや回路に存在する直 線性、温度特性、湿度特性等の誤差は4象限レシオメトリック信号処理を施す ことで除去した。耐熱性能はセンサと信号処理回路の配線部分をケーブルで接

続し確保した。.このケ・…一・ ブルに混入する磁界ノイズはシールド部分に迂回させ、

かつ電界ノイズは導体シN・・・…ルドで遮蔽した。さらにケーブルはツイスト・ペア ー構造の2線シールドケーブルとすることで混入したノイズを相殺した。

 これらの技術により長さ1mのケーブルを用いた圧力伝送器としての総合性能 は、測定分解能が約±0.001%FS、補正前の直線性誤差±0.7%FS、補正後の直 線性誤差±0.04%FS、温度特性±0.003%FS/℃、40時間での安定性±

0.002%FSを得ることができ、さらに電磁界環境試験では出力の変動は認めら

れなかった。

(4)

目 次

第1章 序論       1

1.1はじめに       

1

 1.1.1圧力の定義      1

 1.1.2圧力計測の重要性       4

 1.L3圧力センサの歴史展望       6

 1.1.4隔膜構造の利点と問題点       13

1.2本研究の目的と論文の構成      16

参考文献      

18

第2章 静電容量式サファイア圧力センサ  20 2.1はじめに       20

2.2センサ素子材料      23

2.3センサの設計       29

 2.3.1センサ素子の基本構造       29

 2.3.2基本設計      31

 2.3.3センサ素子の設計       41

 2.3.4設計したセンサの構造       54

2.4センサの製造プロセス       55

 2.4.1スペbUサ       55

 2.4.2ダイヤフラム      56

 2.4.3サファイア同士の直接接合技術         57

 2.4.4基板       63

 2.4.5台座      66

 2.4.6固液間反応接合技術       68

 2.4.7電極取り出し       75

 2.4.8組み付け       76

2.5むすび      77

参考文献       79

第3章 インターフェv−・・一一・Lス回路     

83

(5)

3.1はじめに       83

3.2レシオメトリック信号処理      85

3.3信号処理回路        90

 3.3.1信号処理回路の概要       90

 3.3.2正弦波発振回路      92

 3,3.3差動静電容量・電圧変換回路      100

 3.3.4検波回路と平滑回路       105

3.4インターフェv−・一・・ス回路の性能      113

3.5むすび       117

参考文献       118

第4章 圧力伝送器       120

4.1はじめに       120

4.2センサとのi接続i      122

4.3防爆対策       132

4.4圧力伝送器の性能      137

 4.4.1圧力感度特性と過大圧特性       137

 4.4.2直線性      139

 4.4.3温度特性       142

 4.4.4高温安定性        144

4.5むすび       146

参考文献       149

第5章 結論      150

謝辞       153

iii

(6)

序論

L1.1圧力の定義

 圧力とは単位面積あたりに印加されるカと定義される1)。

力の単位はMKS重力系では重量キログラム[kgf]である。よって、圧力の単位 はMKS重力系では重量キログラム毎平方メートル[kgf/m2]で表現される。しか

し、一般的には重量キログラム毎平方センチメートル[kgf/cm2]を用いること が多い。これは、1kgf/cm2の圧力は約10mの水柱が発生する圧力であり、かつ、

地球上の大気圧とほぼ等しいために人間にとって、その大きさを理解しやすい ことが理由である。一方、国際単位系(SI)では力の単位にニュートン[N]が用 いられる。従って、圧力の単位はニュートン毎平方メートル[N/m2]であり、こ れにはパスカル[Pa]という固有の名称が与えられている。平成5年11月に施 行された新計量法により平成11年10月1日からは重量キログラム毎平方セ

ンチメートル[kgf/cm2]やミリメートル水柱[mmH20]が用いられなくなり、ミ リメートル水銀柱とトール[mmHg =torr]も用途を限定された認可となる2)。

       Table 1.1圧力単位の換算表2)

分類 単位[記号] 換算

国際単位系に係る単位

    パスカル[Pa]

jュートン毎平方メートル[N/㎡]

@    バール[bar]

98066.5Pa=1kgf/c㎡

@ 1N/m2=1Pa 撃aar=100×103Pa 一般的に使用が認められる非

@    SI単位 気圧[atm] 1atm=101.325×1♂Pa

用途を限定して使用が認めら

@  れる非SI単位

    トル[Torr]

@ ミリトル[mTorr]

@マイクロトル[μTorr]

?竰激 リメートル[m団g]

1Torr=1mmHg=133.322Pa

 本論文では新計量法に準じたパスカル[Pa]を極力用いることにするが、圧力 の大きさを直感的に理解するためにミリメートル水柱[mmH20]とトール[torr]

(7)

も用いることとする。また正式な単位であるパスカル[Pa]に換算する場合は

Table 1.1を用いることとする。

 圧力は基準とする圧力により3つの形態に分類される。その1つは絶対真空 を基準とした圧力差で、これを絶対圧と呼ぶ2・3)。実際の絶対圧センサでは圧 力基準室に絶対真空を生成することが不可能なため真空領域のある一定の圧力

となるガスを封入している。よって、センサはこの圧力基準室の圧力と測定圧

力の差圧を測定している。圧力単位を使用する上で絶対圧は単位の後に

absoluteを略した記号absやAを付けて表す。絶対圧を測定する一般的な計器は 真空計と呼ばれ真空計で測定した圧力を真空度と呼ぶ。Table 1.2に絶対圧計

の主な用途を示す2・4・5)。

 差圧は圧力の基準を持たず二つの系の圧力差のみを扱う場合を指す。差圧計 の主な用途は、差圧流量形、密閉タンクの液面計である6)。

 大気圧を基準とした圧力差をゲ・・一一…ジ圧と呼ぶ。この大気圧の定義は2種類あ る。ゲージ圧計が置かれている雰囲気の圧力を大気圧と呼ぶ場合と、標準気圧 を基準とした圧力差を呼ぶ場合の2種類である。この後者の標準気圧を基準と する揚合を特別にシールドゲージ圧計と呼ぶ。また、ゲージ圧計のみ大気圧を 基準として大気圧以下の圧力を負圧と呼び、大気圧以上の圧力を正圧と呼ぶ。

この負圧のみを測定するゲージ圧計を負圧計、正圧のみを測定するゲージ圧計 を正圧計、負圧から正圧を連続して測定するゲージ圧計を連性圧計と呼ぶ。こ

れらの圧力の関係をFig.1.1に模式的に示す2)。

2

(8)

Tablle 1.2絶対圧計の主な用途2 4 5)

用途

1 真空加熱乾燥装置

2 真空加熱反応装置

3 半導体製造装置

4 化学薬品の蒸留製造装置

5 真空吸着装置

6

大気圧環境での物質の沸点を加圧環境にし上昇させ加熱する装置、例えば、牛乳の高温/短時間殺菌等

7 高度計

8 気象観測用気圧計

9 密閉容器内にあるガスの量

10 ガス成分量(通常、絶対圧での分圧を用いる。)

11 気密度測定装置

絶対圧

  ゲージ圧 沿ウ    正圧

大気圧 完全真空

Fig.1.1絶対圧とゲージ圧の関係2)

(9)

1。L2圧力計測の重要性

 圧力センサの用途は、耐圧容器や真空容器等の圧力監視・制御等に見られる 様に測定した圧力値自身を必要とする用途と測定した圧力値からタンクに入れ られた液体の液位や管に流れる流量等の物理量に変換して用いる用途に分類で きる。上記の内容を概略的に分類するとFig.1.2となる。

圧力の計測 圧力の有無の計測

容器や配管の耐庄に対する圧力計測、圧力による物 質の融点制御、化学反応速度等の制御を行う

ロボット制御や圧力容器のドアの開閉に関する安全 性の確認を行う

A、G G

距離の計測 物体の存在の計測

ノズルで物体にガスを吹き付けノズルの背圧と物体 距離の関係を利用し距離を計測する

物体を真空吸着する方法とノズルで物体にガスを吹 き付けノズルの背圧変化で計測する

G

A、G

   気密性の計測    蕃裏護難智鷺減圧しその圧力の変動を測定し気  A、G

        Fig.1.2用途から見た圧力センサの分類2 4 6)

 Fig.1.2の記号Aは絶対圧(Absolute Pressure)、記号Gはゲージ圧(Gauge Pressure)、記号Dは差圧(Differential Pressure)を指す3)。

 Fig.1.2に示す様に圧力計測の用途は多様であり温度や流量計測と並ぶ基本 物理量として極めて重要である。例えば圧力容器に印加する圧力を計測・制御

しなければ圧力容器が耐圧限界を越えて爆発してしまうこともあり、さらに、

プロセス制御では牛乳の短時間殺菌の様に温度でなく圧力を制御することで融 点を制御し処理することにも使用されている。

 別の側面から圧力センサを分類すると比較的環境特性の厳しいFA(Factory Automation)用圧カセンサや更に環境特性の厳しい工業用圧力発信器が属する

生産財用圧カセンサ と家庭電化製品や自動車等の 消費財用圧力センサ に分けられる。

      4

(10)

 消費財用圧力センサは機器組み込み型として用いられることが一般的である。

よって、組み込まれる製品が小型・軽量・低価格化されると、それに比例して 圧力センサも小型・軽量・低価格化してきている。この技術課題を解決するた

めに消費財用圧力センサでは従来から用いられてきた隔膜構造がなく、代りに シリコーンゲルポッティング技術、ガラスやバルクアルミナを用いた静電容量 式圧カセンサ、SOIピエゾ抵抗式圧力センサ等が用いられている1騨2)。

 生産財用圧力センサに属するFA用圧力センサの代表的な用途は半導体製造装 置における吸着搬送装置や対向ノズルによる物体の存在確認装置等であり、環 境特性が消費財用圧力センサと同等なため同様な技術が用いられている。また、

消費財用圧力センサではセンサインターフェース回路を小型・軽量・低価格化

するためにセンサ素子と集積化している1°2)。

 一般的に工業用圧力測定器は圧力伝送器や圧力発信器と呼ばれている。耐食 性・耐熱性・過大圧等の環境特性の厳しい圧力伝送器は現在でも隔膜構造を用 いており、よって製品形状や重量は大きく、かっ高価格である。しかし圧力伝 送器の分野でも小型・軽量・低価格化が徐々にではあるが進んできている。工 業用圧力発信器の主な用途は、内圧測定、レベル計測、流量計測である2)。

(11)

1.L3圧力センサの歴史展望

 ここでは、圧力センサの検出原理で最も一般的な抵抗式と静電容量式の歴 史・展望を述べる。

 当初、抵抗式圧力センサは金属やセラミック製の受圧板、即ちダイヤフラム の表面に金属ワイヤストレインゲージを貼り付けたストレインゲージ式から発

達した。1940年代後半から1950年代初頭に、シリコンやゲルマニウム

等の半導体は金属よりも大きなゲージ率を持つことが発見され、圧力センサへ の応用研究が開始された。やがてシリコンを用いた半導体圧力センサはシリコ ンピエゾ抵抗式圧力センサと呼ばれるようになった1)。

 ピエゾ抵抗効果は半導体結晶に与えた歪み、即ち原子問距離の変化によって 禁制帯の幅が変化し、それに伴ってキャリヤ濃度が変化することに基づく等方 的な効果がある。さらに半導体結晶の等エネルギー面は複雑な形状を持ってい るため伝導電子の移動度、即ち電気抵抗には結晶異方性がある。従って電気抵 抗を測定している位置を固定し、歪みを与えた前後の半導体結晶の電気抵抗を 測定すると、結晶が歪むために電気抵抗の結晶異方性が現れる異方的な効果も ある。大きなピエゾ抵抗効果を示す主な半導体としてSi、 Ge等がある。 Geは 資源としての産出量が少なく、かつ、吸湿性が高く不安定である等の理由から Siが主に使われる。またpn接合や金属一半導体接触ダイオード、即ちショット キーダイオードの障壁部に圧力を加えると順・逆両方向ともに電流が増大する。

このようなダイオードは感圧ダイオードと呼ばれている1)。

 ピエゾ抵抗効果は圧力計、ひずみ計、音・電気変換素子などに利用されてい

る。

 一般的なシリコンピエゾ抵抗式圧力センサ素子を上面から見た図をFig.1.3 に示す。図のゲージ抵抗は薄肉部であるダイヤフラム上の2または4カ所に配 置される。ダイヤフラムに圧力を印加すると、これが擁み、ゲージ抵抗に歪み が誘起され、歪みの方向により抵抗値が変化する。ゲージ抵抗の初期抵抗値を Rとし抵抗値の変化量を∠Rとすると、ダイヤフラム上のゲー一ジ抵抗の配置を工 夫することで印加圧力の増加に伴い抵抗値がZRだけ増加するゲージ抵抗と印 加圧力の増加に伴い抵抗値がztd Rだけ減少するゲージ抵抗を形成できる。この

2種類のゲージ抵抗が相補的に動作する様にホイットストーンブリッジ回路を 形成すればFig.1.4の回路となる。従って、この回路はオフセット誤差等の同

6

(12)

相ノイズを除去でき、圧力に比例した電圧出力信号を得ることが出来る7・8)。

アルミ電極 拡散リード部 歪みゲージ

Fig.1.3シリコンピェゾ抵抗式圧力センサの上面図1・9・1①)

        通常形ゲージ(ゲージ抵抗R)

ut

       Vin

 Fig.1.4シリコンピエゾ抵抗式圧力センサの抵抗変化と出力の関係1 lo)

 Fig.1.5は最も一般的なシリコンピエゾ抵抗式圧カセンサのパッケージ構造 図である。Fig.1.6はセンサ素子周辺の拡大図である。センサ素子は台座と呼 ばれるアルカリ塩ガラスや絶縁用ガラスを挟んだシリコン単結晶、セラミック 等を用いてステムと接続される。全ての圧力センサはステムやその周辺部分か

らセンサ素子のダイヤフラム部分に伝播してくる応力に感度を持ち、この応力 は全て測定誤差となる。従って台座はセンサ素子に外部から応力を伝播させな いための応力減衰用に用いられる。また台座材料の熱膨張率がセンサ素子、即 ちシリコンの熱膨張率と異なると誤差となるため極めて近い材料が選定される、

この部分の接合には接合応力を軽減するために様々な工夫がなされており、特 に陽極接合技術、低融点ガラスによる封着、半田付け、台座をシリコンとした

直i接接合技術、有機i接着剤等が開発され実用化されている1・1 1・12)。

 台座が接合されるステム(ヘッダとも呼ばれる)も同様な理由により熱膨張 率を近づける必要があり、ステム材料には金属磁性体が持つインバー効果を利

(13)

用した低熱膨張材料であるFe−Ni系やFe−Ni−Co系合金が主に用いられ、さらに 低応力化する場合にガラスやセラミックスが用いられる。

導体圧カセンサ ップ

シリコン台座

TO−8ヘッダ

膜温度補償 抗基板

Fig.1.5シリコンピエゾ抵抗式圧力センサのパッケージ全体図4 12)

       ・Sio2       ・Au線.Si3N4

      ・Al線 ・P系ガラスアルミパッド

・陽極接合

・低融点ガラスによる封着

・Au−Si共晶ハンダ付け →

・Si−Si直接接合

・有機系接着剤

・B系ガラス

霧…9 雛÷・型・P型Si単結晶基板

.  ...腓.....   n型、p型拡散層

し も り ら ら  ら ら

::::::::::::む:

:こ::::・:・:・こ:::

::・:・::::ご:・:く

・こ::::こ::::こ:::

さ:::::::ミ:i:

・:二:露ゑ≒::糖撫

・。二::・二・二・二・:・∫・:・∫・る:・:

らら亀 ら 塾 ● 噺 しら もら. ら も■ らら う らららロし りら

ら りらロ し ら り  

∵.㌔・」・㌦㌦゜.

亀 も ● 噺◎◎ 馬噸 らむ ら むしりり   ら ロ ら り のしい り

::::こ:::::くむ二

:§::::::i:iミ

● ● らら 鳥 嚇 ● ら ら ら 亀● 魎 ● ○ し

・アルカリ塩ガラス

・Si単結晶

・セラミック

二:::ゑ≒:ゑ聴:::鼻二% ・ステンレス鋼

:・:・:÷:÷;÷:e:・:・:  ・インバー系合金

      ・低融点ガラスによる封着       ・ハンダ付け

      ・有機系接着剤

       Fig.1.6センサ素子近傍のパッケージ構造図4 12)

 1990年代初頭までシリコンピエゾ抵抗式圧力センサは異方性エッチング 技術や陽極接合技術等のマイクロ・マシニング技術の進展により小型・高性能 化されてきた。さらに同じシリコンを用いた集積回路技術の進歩とその技術の

8

(14)

水平展開も発達した理由である。

 1990年代初頭から耐熱性の向上やダイヤフラムの厚さ制御の目的から集 積回路の研究で既に存在していたSOI技術を新たに取り入れたシリコンピエ ゾ抵抗式圧力センサの開発が盛んに行われたが大きな成果は得られず、近年、

シリコンピェゾ抵抗式圧カセンサに関する研究は減少してきている。この理由 はシリコンピェゾ抵抗式圧力センサを用いる限り、特別な用途を除き、耐食性 や電気絶縁性の低さからマイクロ・マシニング技術を追求しセンサ素子を小 型・低価格化しても圧力伝送器として小型・低価格化できないためである。ま た隔膜構造やそれに相当するセンサ素子の保護構造を必要としない用途では既 にこの市場における圧力センサの使用量が限界値に到達しており無尽蔵に生産 しても用途が無く、新たな市場開拓がなければ量産性を高めるためのセンサ素 子の小型化に関する研究が直接低価格化に結びつかなくなってきている。

 静電容量式圧力センサはストレインゲー・・一ジ式圧力センサと同時期に始まって おり、現在でもシリコンピエゾ抵抗式圧力センサと同程度の市場占有率を持つ。

 Fig.1.7は最も単純な形状を持つ静電容量式圧力センサの動作原理図である。

図に示す様に静電容量式圧力センサはダイヤフラム上に配置した平行平板コン デンサの電極間距離が圧力により変化することでセンサ・キャパシタのキャパ シタンスが変化し、このキャパシタンス変化を測定し印加圧力を同定する方法 である。センサ・キャパシタの圧力感度は圧力印加前の電極間距離と圧力印加 によるダイヤフラムの変位で決まるため、ダイヤフラムの変位が小さくても圧 力印加前の電極間距離を狭くすれば圧力感度を大きく出来る。この特徴を用い 静電容量式圧力センサはシリコンピエゾ抵抗式圧力センサで測定出来ない微圧 領域にも対応でき、かつダイヤフラムはFig.1.8で示す様にアルミナセラミッ

クス等の弾性率の大きい材料も使うことが出来る。この理由から静電容量式圧 力センサはダイヤフラム材料に耐食性の高い金属やセラミックス等を用いたセ ンサが多く、これらは隔膜構造を必要としない。これに反し耐食性に乏しいシ リコン・ダイヤフラムを用いた静電容量式圧カセンサは少ない。また静電容量 式圧力センサにおいてpn絶縁分離技術を用いると、この部位に生ずる寄生容量 が不可避となり大きな誤差を生じる。従ってシリコン・マイクロ・マシニング 技術を用いた静電容量式圧カセンサではFig.1.9に示す様にシリコンとパイレ

ックスガラス等の絶縁物を組み合わせ寄生容量の小さな構造としている。従っ てセンサはシリコンのみでは作成出来ず、シリコン・マイクロ・マシニング技

(15)

術を用いた効果が半減している。さらにシリコン等の半導体ダイヤフラムに電 気伝導性を持つ接液材料を直接接触させると、接液媒体とシリコン・ダイヤフ

ラムは電気的に接続され使用できない問題点を持っ。

Pressure         Moving diaphragm

Snbstmte Cavity

Fig.1.7最も単純な形状を持つ静電容量式圧力センサの動作原理図

Fig.1.8アルミナセラミックで作製された静電容量式圧力センサの写真13)

        n↓         Al

EE

N

  Fig.1.9シリコンを用いた静電容量式圧力センサの構造模式図14−16)

 この様な技術的背景より静電容量式圧力センサには現在でも従来の金属やセ ラミックのダイヤフラムが用いられ、シリコン・マイクロ・マシニング技術を 用いたセンサは空圧機器等の一部の用途のみに留まり大きな発展に至らなかっ た。しかし近年、センサデバイスの研究において従来のシリコン・マイクロ・

マシニング技術からシリコン以外の材料に移行して行く傾向が見られるように なってきている。既に述べたが静電容量式圧力センサはセンサ構造の工夫によ

り微圧から超高圧レンジまで高精度に測定できる特徴を持つ。従って静電容量 式圧力センサはシリコン以外の様々な材料に対応できる可能性があり、次世代 の圧力センサはシリコン以外の材料と静電容量式で大きく変革されると考えら

れている。

       10

(16)

 ピエゾ抵抗式圧力センサではその信号検出にホイートストーンブリッヂ回路 が用いられるが、静電容量式圧力センサのインターフェース回路としてはFig.

1.10とFig.1.11に示す回路が用いられている。

 Fig.1.10の三角波タイミング発振回路は反転積分器の積分キャパシタをセン サ・キャパシタで置き換え、センサのキャパシタンス変化により回路の発振周 波数が変化することを基本原理としている。従ってセンサのキャパシタンス変 化を固定した周波数で測定できず、またセンサに寄生する等価直列抵抗と等価 並列抵抗の変動による影響を直接受ける欠点を持つ。さらに高インピーダン ス・ノードとなる演算増幅器の反転入力端子に注入されたノイズは回路の発振 周波数を乱し、これを効果的に除去することが出来ない欠点も持っ。

      +VREF

Cswll。.v.。

φ1◎→ゆ

Csw12..響。●

Csw21。.●.亀

Csw22 e.v.噂

㎞ v、CX v。ur c。mparatorl S Qφ2

φ1

      一VREF

 Fig.1.10三角波タイミング発振回路を応用したインターフェー・一一ス回路  Fig.1.11は印加圧力に対し静電容量が増加するキャパシタCxと減少するキ

ャパシタCYを持つセンサに対し用いられる回路である。この回路の動作原理は 基準電圧+VREFに接続された抵抗Rl、 R2、 R3、 R4を流れる直流電流と、ダイ オードDlとD4を経由して2つのセンサ・キャパシタに流れる電流の和が等しく なるように正弦波発振器からの出力信号の振幅を帰還制御する。この帰還制御 により2つのセンサ・キャパシタに流れる電流の和は圧力によりセンサ・キャ パシタンスが変化しても一定に保たれる。またセンサに印加した正弦波電圧の 半周期はダイオードD2とD3を経由して2つのセンサ・キャパシタに電流を流す。

(17)

この2っの電流の流れる方向は逆方向であるため2つのセンサ・キャパシタに 流れる電流の差が抵抗VR1に流れ2つのセンサのキャパシタンスに比例した電 圧出力を図の電圧Vgに生じる。この様に2つのセンサ・キャパシタに流れる電 流の和が一定に保たれた状態で2つのセンサ・キャパシタに流れる電流の差を 検出することによってキャパシタ間の差とその和による比を求める2象限レシ オメトリック信号処理とできる。

 この回路は用いる素子を全て理想素子と仮定しても非線形性を持ち、加えて ダイオードの電流・電圧特性も非線形性を生み出す。またセンサ・キャパシタ

と並列に存在する寄生容量の影響を避けられず、センサのキャパシタンスが数 pF以下と小さい場合には高精度検出は困難である。

 静電容量式圧力センサのインターフェース回路方式には、上記に述べたセン サの静電容量変化を周波数の変化に変換して測定する方法や電圧振幅の変化に 変i換して測定する方法以外に、矩形波発振回路の発振波形におけるデューティ 比の変化やパルス密度の変化等も提案されている17)。

 しかし実際に実用化されている回路はFig.1.10とFig.1.11を基礎とした方 式が主であり、他の方式は実用化されていない。

      +VREF

a b

c n2

n3

Co C     。ρ言%Cstl VR1

d T

 .eeq。 Csn

V7 3

Vlo

Fig.1.11リング復調器を応用したインターフェース回路6)

12

(18)

LL4隔膜構造の利点と問題点

 隔膜構造とは、主にシv・…dLルダイヤフラムとも呼ばれる隔膜と、シールダイヤ フラムからセンサに圧力を伝達する媒体である封入液からなる。隔膜構造を持 つ圧力センサの構造を模式的に表すとFig。1.12となる。

 図のシールダイヤフラムの役割は耐食性に乏しいシリコン材料の欠点を補う ことや接液面を平坦化し液体の溜まりを減らし、過大圧の印加に対しセンサの ダイヤフラムが破壊してもシールダイヤフラムが底面に着底することで測定媒 体の噴出を防いでいる。またセンサ素子やインターフェース回路の熱的な保護 は図の放熱及び断熱部分と記述した封入液が入った長い配管を用いて行ってい る。さらに図の防爆隙間とは、製品ケー一ス内に進入した可燃性ガスが何らかの 原因で爆発することで製品ケースの内圧が上昇しセンサのダイヤフラムとシー・一・・

ルダイヤフラムが破壊した場合に、この経路から製品内部のエネルギーが製品 外部にある可燃性ガスを引火させないための機構である。

 この隔膜構造を用いることで得られる利点をTable 1.3に示す2)。

 しかし隔膜構造はTable 1.3で示す利点とは反面、小型・軽量・低価格化へ の障害となっており問題点をTable 1.4に示す2)。

 特に隔膜構造の大きな問題点は圧力レンジが低圧になればなるほど温度特性

の低減のため隔膜構造が大きくなり、隔膜構造が大型化するとシV…一・・ルダイヤフ

ラムへ印加される圧力が等分布加重と見なせなくなる水頭圧の影響やシールダ イヤフラム面内の温度分布等の二次的な問題も生まれる。また隔膜構造に用い られる封入液は全ての要求に対応できない。従って測定温度範囲・応答速度・

人体に対する安全性・爆発性等の要求仕様に対して重要性や用途に合わせて封

入液を選んでいる。

 これが工業用圧力伝送器の少量・多品種化を生み出す原因となっており高価 なものにしている要因でもある。例えば食品用の封入液ではエチレングリコー ルや水が使用され、高濃度酸素等の爆発性雰囲気ではダイフロイル等の不燃性

液が用いられる2)。

(19)

封入オイル         隔膜霊属ダイヤ7ラム

Fig.1.12隔膜構造を持つ圧力センサの構造模式図        Table 1.3隔膜構造の利点

項目 利点 備考

1 腐食性流体への適用 センサ素子の耐食性が低いため、高耐食性金属ダイアフラムを pいて対応する。

2 粘度の高い液体への適用 センサ素子とその周囲の形状が凸凹であるため液溜りができ 驕Bこれをシールダイアフラムで平坦にしている。

3 凝固し易い液体への適用 項目2と同じ理由でシールダイアフラムを用いる。

4 過大圧への適用 シールダイアフラムによるストッパ構造の形成による過大圧防 機構。

5 脈動圧への適用 シールダイアフラムと封入液によるダンピング構造

6 食品や医薬品への適用 項目2と同じ理由でシールダイアフラムを用いる。

7 爆発性雰囲気への適用 シールダイアフラムと封入液、さらに、防爆構造の採用。

8 高温流体への適用 シールダイアフラムと封入液による断熱溝造によるセンサ素子 フ保護。

14

(20)

Table 1.4隔膜構造の問題点

項目 問題点

1

封入液の体積膨張率とシールダイアフラムの曲げ剛性から大きな温度特性を持つ。温度特性を ャさくするためにシールダイアフラムを大きくするとサイズを大きくし、また、シールダイア tラムを薄くすると耐食性が低下する。

2 上記問題と同様な理由により圧力レンジが小さくなればなるほど隔膜構造は大型化する。

3 封入液の部分加熱、例えば、日光が当る部分と影になる部分が存在すると温度特性を補償する アとすらできない。

4

封入液の液位より水頭圧の影響が出る。シールダイアフラムの取り付け姿勢が動方向に対し ト平行であるとシールダイアフラムに印加される水頭圧が等部分過重で無くなり分布圧力が印 チされオフセット誤差のみではなくなる。

5 封入液は全ての用途に適用できる材料が存在せず用途に応じて変える必要がある。

6 薄いシールダイアフラムは外部からの集中過重で損傷したり変形し計器の損傷やドリフトにつ ネがる。

7

シールダイアフラムを透過した水素ガスは封入液に多量に溶解し、この溶解した水素ガス ヘ急激な温度上昇によりガスとして析出しシールダイアフラムを膨らませドリフトや破壊 ノ至る。

8

封入液が何らかの原因で漏れるとドリフトになり、さらに、封入液がプロセス媒体に混入する ニ大きな事故となる。例えば、純水製造装置では隔膜構造の圧力センサを使用することはな

「。

9 封入液に溶解したガス、封入液が劣化して析出してきたガス、その容器から析出するガスは全 トドリフトとなる。

10 計器が設置されている系の振動はシールダイアフラムと封入液の自重で振動し影響を受け易

「。

11 高温で使用できる封入液は高粘度のため低温で使用出来ない。よって使用温度範囲が狭くな 驕B       

12 高温用に特化した封入液でも200℃程度が上限であり低温用に特化した封入液でも一70℃程度が コ限である。

13 粘度の高い液体や凝固し易い液体はシールダイヤフラムに付着し曲げ剛性を大きくする。これ ヘ計器の温度特性を悪1ヒさせる原因となる。

(21)

1。2本研究の目的と論文構成

 隔膜:構造は工業用圧力伝送器において不可避とされ、それに付随する問題点 は材料や構造を用途により使い分けることで対応してきた。しかし隔膜構造を 持つ工業用圧力伝送器は微圧レンジにおける高精度化を不可能とした。

 本研究は隔膜構造の利点を損なわずに、微圧領域の圧力を正確に測定できる 隔膜フリー構造の静電容量式圧力センサ実現することを目的とし、そのために 必要なセンサ製造技術、信号処理技法を開発した。

 本論文は、その成果をまとめたものであり、全5章から成る。

 第1章では工業用途における圧力計測の重要性を述べ、抵抗式圧力センサと 静電容量式圧力センサの歴史を紹介した。その後、研究の背景となる工業用圧 力伝送器に用いられている隔膜構造の利点と問題点を述べた。

 第2章では工業用圧力伝送器から隔膜構造を排除するために必要な仕様を抽 出し、隔膜フリー・センサに必要なセンサ材料を選定した経緯を述べた。最適 なセンサ材料にサファイアが選定され、サファイアの材料物性を紹介した。特 にサファイアはシリコンと比較して弾性率が大きいため歪みを測定する抵抗式 では圧力感度が小さくなる問題点を持っ。そこで弾性率に直接影響されない静 電容量式を選定した。また静電容量式は機械センサであるためセンサ構成材料 を工夫すると抵抗式では成し得ない高温での測定が可能とできた。隔膜フリ

ー・ Zンサは材料にサファイア、圧力検出原理に静電容量式の2つを組み合わ せ、はじめて成し得ることを述べた。サファイアを用いた静電容量式圧力セン サの設計では、サファイアの熱膨張率や弾性率に強い結晶異方性を持つため、

これを考慮した設計手法を必要とし、本研究では新たに熱膨張率と弾性率が3 軸方向で異なる板の微小曲げ式を用い圧力・静電容量の関係式を作成し、その 導出過程も述べた。実際のセンサの設計では上記の圧力・静電容量の関係式を 用い概略設計を行い、電極膜の形状の微調整には有限要素法にて設計した。サ ファイア静電容量式圧力センサの製造技術とそのプロセスでは、従来から研究 事例の少ない材料であるサファイアを用いたため多くの開発項目があった。特 にサファイア同士の直接接合では接合前に予め表面を活性化し、活性面が消滅

しない真空中で重ね合わせ、ホット・プレスにて接合した。

16

(22)

 またセンサのマウンティング(=ダイボンドorダイアタッチ)では面粗度 の大きい低価格なサファイア板とセンサを接合するために接合中に酸化アルミ ニウムと酸化ホウ素によるブリットを形成するTransient Liquid Phase Bonding法を新たに開発した。本論文では上記2項目を抽出し詳しく解説した。

 第3章では前章で述べたセンサの圧力のみで変化した微小な静電容量を測定 する回路に付いて述べた。単結晶サファイアに対するマイクロ・マシニング技 術で作られたセンサの圧力による静電容量変化は極めて小さく、温度・湿度に よっても変化した。この温度特性と湿度特性は新たに開発した差動静電容量・

電圧変換回路である電荷増幅器と、これを用いた4象限レシオメトリック信一号 処理により大幅に相殺できた。さらに検波回路では同期検波による位相分離技 術を採用しセンサに寄生する抵抗成分と容量成分が分離できた。この位相分離 技術は湿度特性の改善や、センサの温度特性を悪化させる原因となる電極膜を 薄く出来た。上記の各技術は回路の各ブロック毎に目標仕様を設け回路構造

(・=方法)と効果の確認を行う形式で記述した。

 第4章では第2章のセンサと第3章の信号処理回路を組み合わせ工業用圧力 伝送器とする方法を述べ、その組み合わせた性能を評価した。隔膜フリー・セ

ンサでは高温の接液媒体から信号処理回路部へ流入する熱を制限する機構を持 たない。このためセンサと信号処理回路を結ぶ電気信号の配線を長くすること により熱的に隔離する方法を選択した。このために配線の寄生容量の影響を電 荷増幅器の性能により除去し、4象限レシオメトリック信号処理により相殺し た。また長い配線には外部からの電磁界ノイズに対する耐性を向上させるため に4線式シールド・ワイヤーを用いた。工業用圧力伝送器に欠かせない防爆性 能はセンサ部を本質安全防爆とし信号処理回路部を耐圧防爆とした。従ってセ ンサと信号処理回路の受け渡しはエネルギー制限回路を必要とし、これが測定 誤差に影響しない方法を考案した。最後に、開発した全ての技術を組み合わせ 工業用圧力伝送器として性能を評価した内容を述べる。

 第5章では本研究によって得られた成果をまとめると共に、将来展望を述べ

た。

(23)

参考文献

1) 山香 英三 編著、ハイテクノロジ・センサ、共立出版、第3章 圧力   センサ、1986年

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3) 計測管理協会 編、圧力の計測、コロナ社、第1章 概説、1987年 4) トランジスタ技術編集部、センサ・インターフェー一シングNo.2メカト    ロニクス・センサ活用編、CQ出版社、第2部 機械周辺でのセンサ活用、

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5) 計測管理協会 編、圧力の計測、コmナ社、第6章 産業計測における   圧力測定要項、1987年

6) 日本電気計測器工業会 編、差圧伝送器の正しい使い方、日本工業出版、

  第1章 差圧伝送器の概論と第2章 差圧流量計、1986年

7) 藤倉電線技報、 半導体圧力センサ センサ特性および温度補償 、第66

  号、 p.9〜24、 9.月、 (1983)

8) 藤倉電線技報、  半導体圧カセンサの温度特性 、第69号、p.41〜57、

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9) 一ノ瀬 昇、小林 哲二、センサとその応用、総合電子出版社、第1章   圧力センサ、1980年

10) NOVA SENSOR, Silicon Sensors and Microstructures ,(1988)

11)藤倉電線技報、 半導体圧カセンサ 総論 、第66号、p.1〜8、9月、

  (1983)

12) 藤倉電線技報、  半導体圧力センサ 組立技術 、第66号、P.25〜31、9   月、(1983)

13) 長野計器カタログ、 圧力センサ応用製品セレクションガイド より 14) Tomio Nagata,Hiroaki Terabe,Sirou Kuwahara and Sizuki

  Sakurai,うりDigital Compensated Capacitive Pressure Sensor Using   CMOS Technology for Low Pressure Me as urements ,IEEE, P.308−

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15) 江刺 正喜、庄子 習一、松本 佳宣、古田 一吉、  カテー・・テル用容   量型圧力センサ 、電子情報通信学会論文誌 C−H、Vol. J73−C−・II、

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       18

(24)

16) 江刺 正喜、  集積化半導体圧力センサの製造技術 、新技術開発事業   団報、第477号、(1988)

ユ7) X.J.Li and G. C. M Meijer, A Novel Smart Resistive−Capacitive

  Angular PSD ,∬EE,IMTC/94,Vo1.1,pp308−311,(1994)

(25)

2。1はじめに

 第1章で述べた様に隔膜構造フリーセンサを形成させるためには、従来のセ

ンサ素子とそのパッケ・・一一…ジに要求される要求性能とは比較にならないほど多く の高度な技術を必要とする。

 隔膜構造フリーセンサに要求される性能をTable 2.1に示す。

       T曲鑑e2.1隔膜構造フリーセンサに要求される性能

項目 化学的性能

1 強酸や強アルカリ等の腐食性媒体による腐食によりダイヤフラムの曲げ剛性の変化が、10年間 ナ±0.1%FS以下であること。

2 強酸や強アルカリ等の腐食性媒体による腐食により耐圧や気密性の初期性能が、10年間維持で ォること。

3 強酸や強アルカリ等の腐食性媒体による腐食により接液媒体を汚染しないこと。

4 接液媒体に生物に有害な毒物を排出したり、センサと接液媒体の相互反応による毒物を生み出 ウないこと。

5 水素ガスの透過による基準圧力室の圧力変動や脆化による破壊をしないこと。

6 耐熱性や安全性の理由から難撚性であれ可燃性物質、例えば炭化物セラミックス、窒化物セラ ックス、ダイヤモンド、樹脂等は使用できない。

項目 機械的性能

1 測定媒体中に存在する固体成分により傷が付かないこと。

2 接液媒体が溜まらない様な平坦な構造とする。

3 爆発性を持つ媒体にも使用できる耐圧防爆性能を持つこと。

4 圧力測定範囲は、10Pa〜100型Paの広い範囲に対応できること。

5 差圧センサは、高いCMRR、即ち優れた静圧特性を持つこと。

6 圧力ヒステリシス特性は、測定限界以下であること。

7 繰り返し圧力特性は、連続1000万回のゼロ圧力とスパン圧力の繰り返し圧力印加後、試験前後 フ変化が±0.1%FS以下であること。

8 15MPa以下の圧力レンジのセンサの過大圧特性は全て15MPa以上とし、15MPa以上の圧力レンジ フセンサの過大圧特性は全てスパンの1.5倍を確保すること。

9 衝撃圧特性は、繰り返し圧力試験機を圧電型にし、これに耐えること。

10 温度ヒステリシス特性は、±0.1%FS以下であること。

11 熱衝撃特性は、温度差∠100℃の液相条件で100回の熱衝撃試験の前後で±0.1%FS以下の変動 ナあること。

20

(26)

項目 電気的性能

1 水道水、強酸、強アルカリ等の電気伝導性媒体とセンサの間に生じた強電界により絶縁破壊し ネいこと。

2 爆発性を持つ媒体にも使用できる耐圧防爆性能を持っこと。

3 圧力測定範囲は、10Pa〜100MPaの広い範囲に対応できること。

4 圧力変動に対する63%応答速度は、最大100msec以下であること。

項目 熱的性能

1 使用温度範囲は、−100℃〜500℃の広い範囲で使用できること。

2 温度ヒステリシス特性は、±0.1%FS以下であること。

 熱衝撃特性は、温度差∠100℃の液相条件で100回の熱衝撃試験の前後で±0.1%FS以下の変 3 動であること。

 隔膜構造フリーセンサでなくても圧力センサにおけるパッケージは他のセン サと比較して極めて高度な技術を必要とし圧カセンサの性能はパッケージで決 まってしまう。よって一般的にセンサ素子とそのパッケージは分離して呼ばれ ることが多い。しかし本論文ではインターフェイス回路を主眼としているため センサ素子とそのパッケージを含めセンサと呼ぶこととする。Table 2.1より 解かるように隔膜構造フリーセンサでは第1に高い耐食性が要求され、これは センサ素子のみならずパッケージ材料や接合部分も同様である。そこで本研究 ではTable 2.1に示す性能を全て満足できるセンサ素子材料を調査し最も適し た材料としてサファイアを見出した。現在、このサファイアを用いたマイク

ロ・マシニング技術を研究し小型の静電容量式圧カセンサ素子を作成できるよ

うになった。またパッケ・・一・・ジ材料もTable 2.1に示す性能を満足しなければな

らずベルヌーイ法で製造された安価なサファイア板を流用することにした。し かし安価なサファイア板は面が粗く、かっ平坦度にも劣りセンサ素子のために 開発した直接接合技術を用いることができないレ2)。さらに圧カセンサは最終 的に配管と接続するため金属コネクタを必要とし、安価なサファイア板と耐食 性金属で作られた金属コネクタとの耐食性を持つ接合技術が必要となる。

 この接合には従来に無い新たな低温拡散接合を考案し研究した。またセンサ 素子と安価なサファイア板との接合も従来に無い新たな低温拡散接合を考案し 研究した。この接合技術は従来の接合技術と全く異なり、ろう付や拡散接合に おいて最高難i度の技術であるTransient Liquid Phase Bonding法(以後TLP法

と呼ぶ。)またはActive Diffusion Bonding法と呼ばれる活性化拡散接合技術 における接合材料である金属を無機材料である酸化アルミニウムに置換える従 来に無い新たな方法を考案した3)。これは接合時のある一定時間だけ反応性の 高い、即ち活性な液相を固相中に生じ、見かけ上この時の組織は液相焼結法に

(27)

見える。その後、液相は化学反応により固相へと消滅して行くTLP法となるこ とより1 固液間反応接合法 と名付けた。これは接合面に接着剤となる液体を 塗布し接合すると接着剤が微量な不純物を含んだ多結晶サファイアとなり接合 する技術である。

 この章ではセンサ素子材料であるサファイア材料、サファイアを用いた静電 容量式センサの設計、及びパッケージのプロセスフローを述べる。

22

(28)

2.2センサ素子材料

 センサ素子やパッケージの接液部の大部分を占めるサファイアは、別名 鋼 玉 および コランダム と呼ばれ、単結晶の α一アルミナ(A1203) のこ

とであり宝石用に用いられる着色用に不純物を含んだものと工業用に用いられ る不純物を含まない無色透明なものとに分類できる。工業用サファイアは結晶 欠陥が極めて少なく、広い面積に亘り結晶粒界とその粒界部分に偏析物が存在

しない。よって、このような純粋な結晶は天然に産出することはほとんどなく 人工的に液相成長にて合成される。このため、工業用サファイアはウエハー状 の広い面積で用いられる用途に対応できるようになりsos(Silicon on Sapphire)技術等に多く使用されてきているため低価格化と大口径化が進んで

いる4)。

 サファイアの結晶系は菱面体晶系に属するが、一般的には六方晶で近似され、

この結晶系はコランダム(Corundum)型と呼ばれている。またサファイアの格

子定数は、a=4.763A、 c=13.003Aである5)。

 不純物を含まないor 一アルミナの単結晶体は ホワイトサファイア と呼ばれ、

多結晶体を 高純度アルミナセラミックス と呼び、このホワイトサファイア に0.01wt%〜3wt%程度のCr203で着色したものは ルビー と呼ばれ、酸化鉄、

TiO2、 NiO等で着色したものをそれぞれ ブルーサファイア 、 イエロ「サ ファイア と呼んでいる。β一アルミナは純粋なアルミナ結晶の多形の一種では なく、組成はNa20(or K20)・11Al203の多量にアルカリ金属を含んだ低純度

なアルミナである5)。

 Table 2.2にアルミナ結晶の多形を示す5樋9)。この様にアルミナは同じ組成比 で現在知られているだけでも8種類存在する。この材料中で通常の製造方法で は不安定で簡単に合成できないものもあり全ての材料の詳細まで明確に把握さ れてはいない。しかし、現在知られている材料に対する熱力学的特性である生 成エンタルピーと生成ギブスエネルギーを計算すると全ての温度範囲でα一ア ルミナが最も低いエネルギーレベルを示すため、1気圧下において全ての温度 範囲で全てのアルミナはα一アルミナに転位しようとしていることが解る。こ のためα一アルミナ以外は中間アルミナと呼ばれている。即ち、α一アルミナ がアルミナ中最も安定な材料である。また、他のアルミナは水和物を形成する 傾向を持ち脱水状態により著しく耐食性が変化する。

(29)

Table 2.2単結晶アルミナの多形5 13)

アルミナの結晶

@ 形態

化学式 晶系 格子定数(A) 比重(9/cの

ρ一アルミナ AlO3

一アルミナ

A10

正方晶 a=8.01,c=7.73 3.2

一アルミナ

A10

立方晶 a=7.90〜7.95 2.5〜3.6

δ一アルミナ A1203 斜方晶 a=4.25,b=12.75, c=10.21 3.2

一アルミナ A103 等軸 a=7.95 3

κ一アルミナ A1203 斜方晶 a=8.49,b=12.73, c=13.39 3.1〜3.3

θ一アルミナ

A10

単斜晶 a=5.63 b=・2.95 c=11.86 3.4〜3.6

α一アルミナ A1203 六方晶 a=4.763,c=13.003 3.95〜4.02

 Fig.2.1に単結晶サファイアの結晶構造を示す。この構造を持つ他の材料に、

Fe203、 Cr203、 Ti203、 V203などがある。図に示す様に陰イオンである酸素 がhcpの位置にあり、陽イオンであるアルミニウムが6配位位置の2/3を占める。

Fig.2.1より単結晶サファイアは、 c軸平行とc軸垂直のみの結晶異方性を持 つことが解る。

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一eり○

        赤丸はアルミニウムイオン、黒丸は空孔         Fig.2.1単結晶サファイアの結晶構造5−13)

 Fig.2.2はサファイアを底面、即ちc面から見た時の原子配列でありサファ イアの結晶中で最も緻密で結合エネルギーが大きく耐食性に富む。逆にA面が 最も疎なる面でありC軸方向の結合エネルギーも小さく耐食性も乏しい。もし も完全なC面をセンサ表面に形成できれば理想的であるが、これは加工精度か

24

(30)

ら不可能である。現在の加工精度を用いてセンサ表面にC面を採用するとC面 であるテラスとA面であるステップの連続体となってしまいステップである弱 いA面部分から雲母や黒鉛のように剥れ侵食される。よって実際にはC面が最 も耐食性に劣る面である。

110io】

      IO 110】    一一   【1100】

      A2【1210】

大きい青丸は酸素イオン、小さい赤丸はアルミニウムイオン、黒丸は空孔      Fig.2.2 C面からみたサファイアの原子配列5−13)

Fig。2.3は市販されている単結晶サファイアの代表的な面方位を示している。

        C−Surface(0001) C−axis

Ai−axi

R−Surface(1102)

A−Surface(1120)

Fig.2.3単結晶サファイアの代表的な面方位5 13)

(31)

Table 2.3主なセンサ構成材料に対する水道水による耐食性1 14薗22)

材料 エッチングレート A/day

単結晶シリコン 2700

人工石英(Siら) 1700

窒化珪素 0

99.6%アルミナ 0

単結晶サファイア 0

Table 2.4単結晶サファイアに対する強酸と強アルカリによる耐食性1 14脚22)

環境条件

単位時間と単位面積 魔スりの重量減量

@mg/c㎡・day

エッチング

@レート

@A/day

HCI、濃度35%、温度20°C 0.0002 5 欄03、濃度35%、温度20°C 0.00008 2

王水(HCI;州q=3:1)、温度60°C 0 0

HF、濃度46%、温度60°C 0,004 101

(HF、濃度40%)+(撒q、濃度10%)、温度60°C 0,004 101 H3PO4、濃度60%、温度100°C 0.0009 23 H2SO4、濃度95%、温度100°C 0.0002 5

闘aOH、濃度30%、温度100°C 0.0007 18  Table 2.3は、センサに用いられる主な材料の表面に樹脂を半分塗り、約8

5℃の水道水に1週間浸漬した後に樹脂を剥離し、水道水から樹脂で保護され た部分と水道水に触れていた部分の段差を測定し、それを1日当たりのエッチ ング・レートに換算した結果である。シリコンとその酸化物は両者共に蒸留処 理した純水で殆ど腐食されないが、水道水の消毒に用いられる次亜塩素酸ナト リウム(NaC10)や次亜塩素酸カルシウム(Ca(C10)2)に著しく腐食される。

 Table 2.4は、単結晶サファイア板を強酸と強アルカリに浸漬し、その前後 で変化した重量を測定した結果である。単結晶サファイアは高濃度で高温のフ ッ酸水溶液に微量に腐食される。これはAl203よりもAIF3が低いエネルギーレ ベルであり、AIF3は微量ながら電解イオンとして水に溶解するためである。

  Table 2.5単結晶サファイアの高温すべりによる塑性変形特性5 23圏24)

開始温度(℃)

底面すべり(C面すべり) >900

柱面すべり >2000

菱面すべり >1200

26

(32)

 Table 2.5は単結晶サファイアの高温すべりによる塑性変形特性である。単 結晶サファイアの塑性変形特性はシリコンのそれよりも遥かに優れる。しかし 最も低温ですべる面はC面、即ちC軸方向の結合であり、これは結晶構造から 容易に推察出来ることである。よって塑性変形のみから見た圧力センサはC軸 方向へ働くせん断応力を最小にする必要がある。これはセンサ表面をC面及び R面基板を選択することを指し、C面は既に述べた耐食性の低さからR面が最 適であると判断しR面基板を用いて作成している。ただしC面基板以外の面方 位を用いるとサファイアの強い異方性より機械加工、例えば穴開け加工やダイ

シング等の難度が上がり、さらにセンサの温度特性等にも影響する。

      Table 2.6サファイアの主な特性5 14−21)

密度(kg/♂) 3.97×103

モース硬度 9

ビツカース硬度(MPa)

C面:2.15×104

̀面:2.25×104 q面:2.35×104 機械的性質

弾性係数(MPa)

C面:4.7×105

̀面:7.0×105 q面:4.0×105

剛性率(MPa)※ 1.5〜1.9×1(戸

引っ張り強さ(MPa) 2250

圧縮強さ(MPa) 2950

抗折強度(MPa) 690

※剛性率は、ずれ弾性率及びせん断弾性率とも呼ばれる。

融点(℃) 2053

比熱(kJ/kg・K)(at 25℃) 0.75

C軸平行

q.T.:53

T0℃:67 P000℃:90 熱的性質 熱膨張係数(1/℃)×1σ7

C軸垂直

q.T.:45

T0℃:50 P000℃:83

熱伝導率(W/m・K)(at 25℃) 42

輻射率    0.02以下

iλ=2.6〜3.7μm,880℃)

比抵抗(Ω・m)

R.T.:1014〜1016 T00℃:109〜1011

@1400℃:107

電気的特性 絶縁耐力(kV/m)    4S.8×10

  比誘電率

i103〜101°Hz25℃)

C軸平行:11.5 b軸垂直:9.3

(33)

光学的性質 屈折率 No=1.768

me=1.760

光透過率

 サファイアの主な特性をTable 2.6に示す。この表に記されたサファイアの 特性は隔膜構造フリーセンサにおける要求性能から見たセンサの構成材料とし てシリコンやダイヤモンドを含めた全ての材料を遥かに凌ぐことが解る。

         10          9          8          67         三6         譲1

        鶴

        篠2          1          0

         −100  200   500   800  1100  1400  1700

      温度(°C)

     Fig.2.6サファイアの熱膨張係数の温度依存性5 14 25)

 次にセンサの温度特性等に強く影響するサファイアの線膨張率の結晶異方性 について述べる。Fig.2.6はサファイアの線膨張率の温度依存性をc面平行と C面垂直の結晶異方性による差を表している。図の室温付近の線膨張係数の差 である約1×10 6の値は室温付近の陽極接合用ガラスの線膨張係数である約3.5

×10 6とシリコンの室温付近の線膨張係数である約2.5×10−6との差とほぼ等価 である。しかしシリコンとサファイアのヤング率の比が4〜5倍程度あり、さ

らにシリコンと陽極接合用ガラスのヤング率の比が2倍程度ある。よって仮に サファイア同士を何らかの方法で接合してもC面平行とC面垂直の材料を接合

した場合に発生する接合応力は、他の接合条件である温度や形状等を全く等し いと仮定した場合におけるシリコンと陽極接合用ガラスの接合応力の8〜10倍 程度の応力を発生させる。この様にサファイアのC面平行とC面垂直の線膨張 率の結晶異方性は深刻な問題であり、これを克服するために結晶方位を合わせ た直i接接合技術を研究し、この問題を解決した。

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