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K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) の単結晶育成とイオン伝導

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(1)

令和

元 年度 修士論文

K

2

M

x

Ti

8-x

O

16

(M = Mg, Zn, Ni, Fe) の

単結晶育成とイオン伝導

指導教員 古澤 伸一 准教授

群馬大学理工学府

電子情報・数理教育プログラム

(2)

目次

第 1 章 序論 1 第 1 節 第 2 節 第 3 節 イオン導電体の特徴とその応用 本研究の背景と目的 K2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) の結晶構造 1 2 4 第 2 章 固体内のイオン伝導および解析方法 5 第 1 節 第 2 節 第 3 節 第 4 節 固体内のイオン拡散機構 一次元周期ポテンシャルにおける熱活性型イオン伝導 Debye の経験則によるインピーダンスの解析方法 イオン導電体の等価回路によるインピーダンスの解析方法 5 5 9 10 第 3 章 フラックス法による K2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の育成 13 第 1 節 第 2 節 K2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の育成手順 K2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の育成結果 13 14 第 4 章 K2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の結晶構造評価 15 第 1 節 第 2 節 第 3 節 第 4 節 第 5 節 粉末X 線回折法

K2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶における粉末 X 線回折パターン SEM-EDX によるK2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の組成分析

K2MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶の結晶軸同定

反射ラウエ法によるK2MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶のラウエ写真撮影

15 16 18 20 22 第 5 章 K2 MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の物性評価 23 第 1 節 第 2 節 第 3 節 第 4 節 第 5 節 第 6 節 交流インピーダンスの測定 真空蒸着法による電極の取り付け インピーダンス測定の原理 -自動平衡ブリッジ法- K2 MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶におけるインピーダンス 分極法によるK2 MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶の輸率測定 K2 MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶の直流電気伝導度の温度依存性 23 23 27 30 34 37 第 6 章 まとめ 42 謝辞 43 付録 44

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1 章 序論

第1 節 イオン導電体の特徴とその応用 電気伝導は電荷の移動によって電流が生じる現象であり、良好な導電性を示す金属は電子 の移動によって電流が生じ、食塩水や希硫酸などの電解質溶液はイオンの移動によって電流 を生じる。一方、ガラスやアルミナ磁器など、金属や半導体以外の固体は基本的に絶縁体であ りほとんど導電性を示さない。ところが、1960 年代に固体でありながらイオン導電性を示す 物質が数多く発見されたことで、イオン導電性を示す固体物質が注目されるようになった。こ れらの固体物質の中には電解質溶液に匹敵するイオン導電性を持つ物質も存在する。そのよ うなイオン導電性を示す固体物質はイオン導電体(ionic conductor)、または固体電解質(solid electrolyte)とも呼ばれている。特に、半導体と同等のイオン導電性を示す物質は超イオン導電 体(super ionic conductor)と呼ばれている。[1][2]

イオン導電体は、導電現象を化学変化と結びつける(例:化学エネルギーを直接電気エネル ギーに変換するetc…)ことができるため、センサー、電池、エレクトロミック素子など様々な 電気化学デバイスへの応用が考案されている。例えば、イオン導電体を電池の構成材料に用い た場合、 (1) 固体であるため漏液による液漏れ事故や発火事故の心配がない。 (2) 使用可能な温度範囲が広いため温度変化による寿命劣化に強い。 (3) 薄膜化が可能なので、電池の小型・薄型化や構造の簡略化が容易である。 (4) 形状のよる制約がなくなるため、様々な形状の電池が実現可能になる。 などの特徴と利点を持った全固体電池の作製が可能になる。しかしながら、イオン導電体を上 記のように応用するためには、そのイオン伝導メカニズムについて調べることが必要不可欠 である。[1][2]

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第2 節 本研究の背景と目的 近年、スマートフォンを始めとした様々な電子機器の小型・薄型化や、身体に身に付ける タイプの小型の端末であるウェアラブルデバイスの登場によって、電池の小型・薄型化や長 寿命化、安全性の確保が求められてきている。現在、多くの電子機器に用いられているリチ ウムイオン電池は、1991 年に SONY によって実用化されて以来、上記の電子機器を始めと して電気自動車の大型電池など、様々な製品に使用されている。 リチウムイオン電池はそのエネルギー密度の高さから、小型かつ軽量であり、サイクル性 能が高いなどの利点があるが、液体材料である電解質溶液を用いるため液漏れや発火事故が 懸念されており、安全性の向上が課題になっている。ところが、第1 節で述べたイオン導電 体を電解質溶液の代わりに電池の材料として使用することで、これらの欠点を克服した「究 極の電池」と呼ばれる全固体リチウムイオン電池の作製が可能になる。さらには、イオン導 電体は固体であるため形状に制約がなく、薄膜化も可能という特徴から、全固体リチウムイ オン電池のみならず、薄膜電池、燃料電池、エレクトロクロミック素子、センサーなどへの 応用も期待されている。そのため、現在勢力的に研究が行われている。 アルカリ金属イオン導電体(Li+イオン導電体, Naイオン導電体, Kイオン導電体)につい ての研究動向を調べるため、それらの学術記事についてGoogle Scholar で検索を利用して調 査してみると、Table 1-1 で示されているように、Li+イオン導電体、Naイオン導電体の研究 報告はそれぞれ約1750 件、約 202 件と非常に多く、現在 Li+イオン導電体、Naイオン導電 体の研究が盛んであることがわかった。しかしながら、K+イオン導電体に関する研究報告は Li+イオン導電体の約1000 分の 1、Naイオン導電体の約20 分の 1 の約 13 件と明らかに少 ない。

一方、Table 1-2 は Li, Na, K の原子量、地殻中に占める割合、標準電極電位をまとめたもの

である。Li の地殻中に占める割合は約 0.002 %と少ないが、K はその約 1000 倍以上と非常に 多く地殻中に存在していることから、資源的な優位性が高いことがわかる。また、標準電極 電位を比べてみると、Li と K でほとんど差がないことがわかる。これらのことから、K+ オン導電体を用いれば、資源的優位性が高く、Li+イオン導電体と遜色ない起電力を持ったデ バイスの実現が可能になると考えられる。 K+イオン導電体を用いたデバイスを実現するためには、結晶構造とその結晶構造内をイオ ンが伝導する経路や、伝導イオンと伝導イオンの間に働く相互作用、フレームワークイオン と伝導イオン間の相互作用といった、K+イオン導電体のイオン伝導メカニズムを研究するこ とが極めて重要である。特に、このようなイオン伝導メカニズムをはじめとした基礎物性を 明らかにするためには単結晶を対象にした研究が重要である。そこで著者は、イオン導電体 のイオン伝導におけるフレームワークイオンの寄与について調べることを考え、1 次元超イ オン伝導性を持つことで有名なホランダイト型の構造を持つK2MgxTi8-xO16に注目した。この 物質は、Mg を Zn や Ni や Fe に置換可能なことが知られている。しかしながら、著者が

(5)

Google Scholar を用いて調査した限りでは、Mg を Zn や Ni や Fe に置換した物質の単結晶を 対象としたイオン伝導の研究報告例はなかった。そのため、K2MxTi8-xO16 (M=Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶のイオン伝導性を調べることは学術的意義が高いと考えられる。そこで、K2MxTi8-xO16 (M=Mg, Zn, Ni, Fe) の単結晶育成と、育成した単結晶を対象としてイオン伝導性を調べ、そ のイオン伝導メカニズムについて知見を得ることを目的として研究を行った。Table 1-3 は本 研究において育成目標とする組成式と略称を示したものである。[3][4][5] Table 1-1 アルカリ金属イオン導電体についての学術記事の GoogleSholar による検索結果 Key words ヒット件数

Lithium ionic conductivity 約1750 件 Sodium ionic conductivity 約202 件 Potassium ionic conductivity 約13 件

(検索日 2019 年 12 月上旬) Table 1-2 目標とする組成式と略称 原子 原子量 標準電極電位 [V] 地殻中に占める割合 [%] Li 6.941 -3.045 約0.002 Ni 22.990 -2.817 約2.83 K 39.098 -2.925 約2.59 Table 1-3 目標とする組成式と略称 組成式 略称 K2MgTi7O16 KMTO K2ZnTi7O16 KZTO K2NiTi7O16 KNTO K2Fe2Ti6O16 KFTO

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第3 節 K2MTi7O16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) の結晶構造 ホランダイトの結晶系はTetragonal で、空間群は𝐶4ℎ5 I 4/m)であり、K 2MgTi7O16の格子定 数はa = 10.157 Å、b = 10.157 Å、c = 2.974 Å である[5]。Fig. 1-1 は c 軸方向から見たときのホ ランダイトの結晶構造を示したものである。白の破線はunit cell を表す。結晶の骨組み構造で あるフレームワークは、MO6, TiO6八面体の連鎖によって構築され、c 軸方向に沿った 1 次元 的なトンネルを形作っている。K+イオンはトンネル内のサイトを部分的に占有している。こ のような結晶構造より、ホランダイトではK+イオンがトンネル内をc 軸方向に沿って 1 次元 的に伝導をすると考えられている。本研究では、育成結晶のc 軸方向と a 軸方向のイオン伝 導性について調べた。 Fig.1-1 ホランダイトの結晶構造

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2 章 固体内のイオン伝導および解析方法

(古澤伸一准教授ノートから一部抜粋) 第1 節 固体内のイオン拡散機構 本節では固体内のイオン拡散機構の一般論について述べる。固体内をイオンが伝導するた めには可動イオン(伝導イオン,mobile ion)が周りの原子の束縛を断ち切らなければならな い。この束縛エネルギーを断ち切るエネルギーは主に熱エネルギーである。つまり、伝導イオ ンは熱エネルギーを受けて「熱的に活性化(thermal activated)」される必要がある。このよう なイオン伝導を熱活性型のイオン伝導という。 第 2 節 一次元周期ポテンシャルにおける熱活性型イオン伝導 イオン導電体におけるイオン伝導は、主に熱活性型のイオン伝導と考えられる。ここでは一 次元周期ポテンシャル(Fig. 2-1)中におけるイオン伝導について考える。Fig. 2-1 に示されて いるように、イオンの伝導経路上には高さΔのポテンシャル障壁が周期aで繰り返されている。 伝導イオンが位置エネルギー極小の位置(サイト,site)において、周波数0で熱振動してい ると仮定すると、この伝導イオンは熱エネルギーを受けることで活性化され、ある確率Pで高 さΔのポテンシャル障壁を飛び越え(ホッピング,hopping)、距離a離れた隣接した極小点に 移る。 熱統計力学より、伝導イオンが1回の試行において温度Tで高さΔのポテンシャル障壁を飛 び越える確率Pは、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-1) で与えられる。ここでkBはボルツマン定数である。単位時間当たりのホッピング回数[s-1](ホ ッピングレート,hopping rate)は、 (2-1)式に0を掛ければ求まるので、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-2) で与えられる。 外部電場のない状態においては、イオンは+x方向、-x方向のどちらへも等確率で飛び越える ため、全体としてイオンの流れはない。 P k TB        exp           0P 0 k TB exp

(8)

Fig. 2-1 イオン伝導に対する一次元周期ポテンシャル(E=0) 【補足】イオンの位置エネルギーが極小な位置とはイオンが結晶内で本来占有する位置であ る。これをサイト(site)と呼ぶ。 イオンの熱振動の1回の振動がイオンの跳躍(hopping)の試行1回に相当すると仮定すれば、 イオンは1秒間に0回ホッピングを試行することになる。これを試行周波数(attempt frequency) という。また、単位時間当たりのホッピング回数をホッピングレートという。 次に、イオン導電体の+x方向に対して外部電場Eが印加された場合を考えると、イオンの受 けるポテンシャルU'(x)は周期ポテンシャルU(x)と外部電場から受ける静電ポテンシャル(x) の和であることから、 U'(x)=U(x)+Ze(x)=U(x)-ZeEx+k (kは定数)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-3) となる。このときのポテンシャルの形は、Fig. 2-2のようになる。 Fig. 2-2 イオン伝導に対する一次元周期ポテンシャル(E≠0) Fig. 2-2 に示されているように、ポテンシャル障壁の高さが変化することで、伝導イオンが電 Eの方向にホッピングする場合のポテンシャル障壁の方が低くなり、電場E方向へホッピン イオンの 電荷:Ze 試行周波数:0 イオンが跳び越す障壁の高さ: 隣接サイト間の距離:a x U(x) x U(x) イオンの 電荷:Ze 試行周波数:0 + Zea 2 E - Zea 2 E E

(9)

グしやすくなっていることがわかる。実際に、それぞれの方向へホッピングする場合のポテン シャル障壁の高さを求めると、+x方向にホッピングするときの障壁の高さは、Δ-ZeaE/2であ り、-x方向にホッピングするときの障壁の高さは、Δ+ ZeaE/2となり、電場Eの方向にホッピ ングする回数が勝っていることがわかる。 ここで、+x方向への実質的なホッピング回数を+xとすると、(2-2)式より ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-4) となる。 さらに、1個のイオンの平均速度𝑣̅は、(2-4)式のホッピング回数+xに跳躍距離aをかけて、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-5) となる。一般にEa≪kBTであることから、 であり、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-6) と近似できる。従って、(2-5)式は、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-7) となる。 単位体積当たりに電荷ZeのイオンがN個存在すると仮定した場合の電流密度iは、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-8)

            T k ZeaE Δ Γ Γ B 0 x /2 exp           T k ZeaE B /2 exp a Γ vx                             T k ZeaE T k ZeaE T k Δ a Γ B B B 0 2 exp 2 exp exp                     T k ZeaE T k Δ a Γ B B 0 2 sinh 2 exp 1 2k T  ZeaE B T k ZeaE T k ZeaE B B 2 2 sinh               T k Δ T k Zea Γ v B B exp 2 0 E T k Δ T k Zea Γ N v NZe i B B          exp 2 0

(10)

が得られる。 より正確には(2-10a)式に物質によって決まる係数である相関係数fを掛けることで、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-11) となる。 この(2-11)式を熱活性型の式という。 また、 として(2-10)式に代入し、両辺にTをかけて対数をとることで、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-12) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-13) が得られる。さらに、(2-12)式は ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-14) という形式も良く用いられる。 (2-13)式は、縦軸をlog(、横軸をにとることで、電気伝導度の温度依存性のデータ は傾き-Δ/kB×10-3log e の直線上に載り、その傾きから活性化エネルギーを求められることを 示している。 このプロットを、アレニウスプロット(Arrenius plot)という(Fig. 2-3)。 Fig. 2-3 熱活性型イオン伝導の電気伝導度の温度依存性のアレニウスプロット

 

        T k Δ f Γ T k a Ze N B B 2 2 exp 0 

 

f Γ k a Z N σ 0 B 2 2 0 e 

 

T e k Δ T σ log log 1 log B 0                   T k Δ σ T B exp 0 

 

T e k Δ T σ 3 3 B 0 10 10 log log log                 lo g (  T ) 1000/T 傾き=  kB×10 -3 log10e

(11)

第3 節 Debye の経験則によるインピーダンスの解析方法 本節及び次節では、イオン導電体のインピーダンススペクトルの解析方法について述べる。 イオン導電体のインピーダンススペクトルはデバイの経験則によって解析することができる。 複素インピーダンスをZ*とし、直流抵抗率及び周波数が極限の場合におけるインピーダンス をそれぞれZ0とZ∞とすると、複素インピーダンスZ*に対する Debye の経験則は、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-15) で与えられる。とは角周波数と緩和時間で、は緩和時間の分布の大きさを示す。 ここで、(2-15)式の実部のインピーダンス Z’(ω)と虚部のインピーダンス Z”(ω)は、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-16a) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-16b) で与えられる。この(2-16a)式と(2-16b)式を用いて、周波数を変化させた場合の Z’(ω)と Z”(ω) の値を、それぞれ横軸と縦軸にとってプロット(Cole-Cole プロット)すると、中心を実軸の 下に持つ円弧になる(Fig. 2-4)。 Fig. 2-4 Cole-Cole プロット

 

Z Z Z Z       1 0 * 2 2 0 2 sin ) ( 2 cos ) ( 1 2 cos ) ( 1 ) ( ) (                                 Z Z Z Z' 2 2 0 2 sin ) ( 2 cos ) ( 1 2 sin ) )( ( ) (                             Z Z Z Z'  Z0 Z∞  -Z"

(12)

第 4 節 イオン導電体の等価回路によるインピーダンスの解析方法 イオン導電体のインピーダンススペクトルの解析によく用いられる、等価回路を用いた手 法について述べる。これは電極界面や粒界、バルクなどにおけるイオン伝導現象を抵抗やコン デンサーなどの回路素子に置き換えて解析させる手法であり、どの成分がどの回路素子に対 応しているか適切に読みとることができれば、インピーダンススペクトルからそれぞれの情 報を得られる。Fig. 2-5 に示してあるのは、イオン導電体バルクを抵抗 RBの抵抗素子と容量CB のコンデンサーで置き換えた単純な並列回路の等価回路を一例として示した図である。 Fig. 2-5 単純な等価回路におけるインピーダンス このモデルでは角周波数における複素インピーダンス Z*()は ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-17) と表すことができる。 また、(2-17)式を実部と虚部に分離すると、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-18a) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-18b) となる。 さらに、(2-18a)式と(2-18b)式からを消去すると、 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-19) を得ることができる。(2-19)式は本章の前節で述べたのと同様に、Z’を横軸、-Z”を縦軸にと ったCole-Cole プロットを取ると、中心(RB/2, 0)、半径 RB/2 の半円の軌跡をインピーダンスス ペクトルが描くことを示している。また、低周波数側の実軸Z’と重なる点から直流抵抗 RBを 見積もることができる。Cole-Cole プロットはインピーダンススペクトルから直流抵抗Z(0 =RBB B B R C i R Z     1 ) ( *

 

2 B B B R ωC R Z ω Z ) ( 1 ) ( ' Re *    

 

2 2 * ) ( 1 ) ( " Im B B B B R ωC R ωC Z ω Z     

 

 

2 2 2 2 " 2 '               B RB ω Z R ω Z Z'  RB RB CBmax -Z" (a)

(13)

を見積もることができる反面、周波数に関する情報が含まれていないため、それを踏まえた上 で解析する必要がある。さらに、半円の頂点における角周波数maxから時定数1/(RB CB)を得る ことができ、この得られたRBとmaxからCBを見積もることができる。 金属など電気伝導率が高い物質の場合はRB<<1/CBとなり、(2-17)式は近似的に Z*R B, ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-20) となり、Fig. 2-6 に○印で示したような抵抗のみの等価回路に対応する。 一方で、石英やアルミナなどの絶縁体は電気伝導率が極めて低いため1/CB<<RBとなり、 (2-17)式は近似的に Z*~-i(1/C B), ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-21) となる。Fig. 2-6 に●印で示したようなコンデンサーのみの等価回路に対応する。イオン導電 体においても、極めて低いイオン伝導率を持つ材料の場合近い軌跡のカーブを描く。 Fig. 2-6 抵抗・コンデンサーのみの等価回路 Fig. 2-7 に示してある図は、粒界などにおける界面イオン伝導を含むイオン導電体の典型的 な等価回路である。界面における電気抵抗をRi 、界面における電気容量をCiとすると、この ときのインピーダンススペクトルは ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(2-22) となる。このとき、時定数RiCiRBCBに2 桁近い差があるならば、2 つの成分は明確に分離 して観測される。この場合のCole-Cole プロットを Fig. 2-7 に示す。一方で、時定数 RBCBRiCiが近いならば、2 つの成分は分離せずに歪んだ円弧を描く。 -Z" Z' RB CBRB (b) i i i * R C i R R C i R        1 1 ) ( Z B B B

(14)

Fig. 2-7 界面イオン伝導を含む等価回路 インピーダンススペクトルの低周波成分は、イオン導電体と電極界面における電気 2 重層 や電極反応による寄与を大きく受ける。特に、ブロッキング電極を用いた場合の測定における インピーダンススペクトルは電気2 重層の寄与が大きく現れる。ブロッキング電極も RiCi の並列回路で表すことができる。さらに、電極界面にイオンの拡散が生じる場合、低周波数領 域においてワールブルグインピーダンスが観測される。その図をFig. 2-8 に示す。 異なる試料サイズや電極材料を用いてインピーダンス測定を行うことにより、電極部分の インピーダンス成分を実験的に決定することが可能である。 Fig. 2-8 ワールブルグインピーダンス RB CB Rg Cg -Z" Z'  RB (c) Rb Cb Re Ce or RB+Rg or RB+Re Z'  RB RB CBmax -Z" (f) RB

(15)

3 章 フラックス法による K

2

MxTi

8-x

O

16

(M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の育成

第1 節 K2MTi7O16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の育成手順

K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の育成はフラックス法を用いて行った。以下の式 K2CO3 + 7TiO2 + MO → K2MTi7O16 + CO2↑ (M = Mg, Zn, Ni) ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3-1) K2CO3 + 6TiO2 + Fe2O3 → K2Fe2Ti6O16 + CO2↑・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(3-2) は、K2MTi7O16 (M = Mg, Zn, Ni) と K2Fe2Ti6O16 の化学反応式である。原料の合成は、この(3-1)式と(3-2)式を用いて固相反応法により行った。K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe)単結晶の 育成は以下の手順により行った。

1) Table 3-1 に示す試薬級 K2CO3、TiO2、MgO、ZnO、NiO、Fe2O3を(3-1)式、(3-2)式に従い、 それぞれ所定のモル比で秤量し、アルミナ乳鉢中でエタノールを加えて混合した。 2) 1)の混合物を約 940 kgf/cm2で加圧成形したのち、950 ℃で 10 時間煆焼した。。 3) 2)で作製した焼結体を湿式粉砕し、再び約 940 kgf/cm2で加圧成形したのち、1200 ℃で 5 時間焼結後、再び湿式粉砕し原料とした。 4) フラックスとして、K2MoO4とMoO3を2:1 のモル比で混合したモリブデン酸系フラック スを用いた。 5) 3)と 4)を重量比 5:18 で混合したのち白金坩堝に充填し、シリコニット電気炉内で 1300℃ 又は1350 ℃まで加熱したのち、900 ℃又は 950 ℃まで-5 ℃/h の速度で徐冷した。 6) -100 ℃/h で室温まで冷却したのち、電気炉から取り出し熱湯でフラックスを溶かして結 晶を取り出した。 Table 3-1 単結晶育成に用いた試薬量 試料名 分子量 [g] 純度・等級 メーカー K2CO3 138.21 99.5 % 和光純製工業株式会社 TiO2 79.88 99.0 % 和光純製工業株式会社 MgO 40.30 96.0 % 和光純製工業株式会社 ZnO 81.39 99.0 % 和光純製工業株式会社 NiO 74.69 99.0 % 和光純製工業株式会社 Fe2O3 159.69 95.0 % 和光純製工業株式会社 K2MoO4 238.13 99.0 % 和光純製工業株式会社

(16)

第2 節 K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe)単結晶の育成結果

Fig. 3-1 (a) ~ (d) は育成した結晶の写真であり、Table 3-2 に育成した結晶の結晶名、色、平

均サイズなどの概略が示してある。KMTO 単結晶と KZTO 単結晶は端が四角錐の柱状の形

状で、長さは最大で7 mm 以上、幅は 0.7~0.8 mm 程度の大きさであった。色は KMTO 単結

晶が暗緑色、KZTO 単結晶が黒緑色であった。一方、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶は針状

で、長さは10 mm 以上、幅が 0.3~0.5 mm と細長い形状の結晶が得られた。色は KNTO 単

結晶が黄緑色、KFTO 単結晶が暗赤色であった。

(a) KMTO 単結晶 (b) KNTO 単結晶

(c) KNTO 単結晶 (d) KFTO 単結晶 Fig. 3-1 育成した結晶の写真 Table 3-2 育成結晶の色と平均サイズ 結晶名 色 平均サイズ [mm] KMTO 暗緑 0.7×0.7×3.0 KZTO 黒緑 0.7×0.8×4.0 KNTO 黄緑 0.3×0.3×5.0 KFTO 暗赤 0.3×0.3×5.0

(17)

4 章 K

2

M

Ti

8-x

O

16

(M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の結晶構造評価

第1 節 粉末 X 線回折法 (古澤先生ノートから抜粋)

育成した単結晶の評価を行うため、粉末X線回折測定を行った。測定配置をFig. 4-1 に、測

定条件をTable 4-1 に示す。

Fig. 4-1 X 線回折測定配置

Table 4-1 K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の粉末 X 線回折法の測定条件

使用装置 RIGAKU RINT2000 (理学電気株式会社) 管球 CuK = 1.5406 Å) 管電圧 20 kV 管電流 2 mA 測定モード 連続 走査軸 -2 走査範囲 3.00°~90.00° X線源 縦発散制限ソーラスリット 入射X線 入射スリット 入射高さ制限スリット 回折X線 回折X線モノクロメータ(平板) 検出器 受光ソーラスリット 巾制限受光スリット ゴニオメータ(R185mm) 試料  2 2

(18)

0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 2 [ deg ] KNTO Single crystal 110 200 220 130 400 211 600 240 KMTO Single crystal 30 1. 32 1 PDF2+ : 00-018-1032 251 141 510 541 730 202 ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● × ● ● ● ● ● ● ● × × KZTO Single crystal KFTO Single crystal ● ● ●× × ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● ● 660 ● 112 002 × × 530 PDF2+ : 01-071-0650 (d) (b) (a) (c) (e) Int e ns it y ( A rbi tra ry U ni ts )

第2 節 K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe)単結晶における粉末 X 線回折パターン

育成した単結晶の構造的評価を行うため、一部を粉砕したのちコロジオン希釈溶液と混ぜ

合わせて粉末X 線回折測定用のサンプルホルダーにセットし、粉末 X 線回折測定を行っ

た。

Fig. 4-2 (a) は K2MgTi7O16におけるPDF データである。PDF データの詳細は Table 4-2 に示 す。Fig. 4-2 (b) ~ (e) は育成した単結晶の粉末 X 線回折パターンである。●印は PDF データ と一致したピークを示し、×印は不明のピークを示している。

Fig. 4-2 (d), 4-2 (e) に示されているように、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶のパターンは PDF データと非常によく一致し、これらの単結晶はホランダイト型構造を持つことが示唆され た。しかし、Fig. 4-2 (b), Fig. 4-2 (c) に示されている KMTO 単結晶と KZTO 単結晶のパター

ンではPDF データと概ね一致しているように見えるが、観測されないピークが多数存在して

いる。そこで、他の物質のPDF データと比較したところ、ルチル型構造の TiO2のPDF デー

タと最もよく一致した(Fig. 4-2 (a) の赤色の棒グラフ)。これより、KMTO 単結晶と KZTO 単結晶についてはルチル型構造を持つことが示唆された。

(19)

Table 4-2 K2MgTi7O16のPDF: 00-018-1032 データ

00-018-1032 QM=i K2MgTi7O16 Potassium Magnesium Titanium Oxide Priderite, syn Rad: CuKα Lambda: 1.5418 Filter: d-sp: Guinier

Cutoff: Int: Visual I/Icor: Ref. Bayer, Hoffman., Am. Mineral., 51, 511 (1966)

stoechiometriques KX (MY Ti2-Y) O4, Groult, D., Mercey, C., Raveau, B., J.

Sys: Tetragonal S.G.: Aspect: a: 10.157 b: c: 2.974 A: C: 0.292803 A: B: C: Z: 1.00 mp: Ref. Ibid. Dx: 3.754 Dm: SS/FOM: F26=12(.029,74) Sample Preparation: Synthetic, by solid-state reaction, heated 1000 C, 20

hours, in air. Warning: Lines with abs(delta 2Theta)>0.06 DEG. Unit Cell Data

Source: Powder Diffraction.

2θ Int h k l 2θ Int h k l 12.36176 40 1 1 0 52.59678 10 5 3 0 17.45694 40 2 0 0 54.24366 40 6 0 0 24.78598 20 2 2 0 54.7696 20 5 0 1 27.78264 100 3 1 0 57.92455 60 5 2 1 35.36512 20 4 0 0 62.45351 40 0 0 2 36.11507 80 2 1 1 63.88945 10 1 1 2 37.61837 20 3 3 0 65.44941 10 2 0 2 39.68723 20 4 2 0 66.87629 40 5 4 1 40.35403 60 3 0 1 69.70425 20 6 3 1 44.29202 5 3 2 1 70.66488 10 7 3 0 45.55982 20 5 1 0 73.86266 10 4 0 2

(20)

第3 節 SEM+EDX による K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の組成分析 育成した単結晶の組成を調べるため、群馬大学機器分析センターの走査型電子顕微鏡 (SEM)(島津製作所株式会社、SSX--550)とエネルギー分散型 X 線分析装置(EDX)(島 津製作所株式会社、SEDX-500)を用いて組成分析を行った。Table 4-3 と Table 4-4 に、使 用した装置の詳しい仕様を示した。 各単結晶の育成に用いた原料である焼結体の一部を切り出した標準試料と、育成した単結 晶のいくつかを対象として測定を行った。Table 4-5 は、標準試料と各単結晶サンプルから検 出された元素の検出強度の平均を示したものである。Table 4-5 に示してあるように、KMTO 単結晶とKZTO 単結晶において K は検出されなかった。また、KMTO 単結晶では Mg が一部 のサンプルで僅かに検出されたが、KZTO単結晶ではZn が検出されなかった。このことから、

KMTO 単結晶と KZTO 単結晶は Ti と O が主成分の結晶であることがわかった。一方、KNTO

単結晶とKFTO 単結晶では全ての元素が検出された。そこで、KNTO 標準試料と KFTO 標準

試料の分析結果と比較し、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶のより詳細な組成比を算出した。Table

4-6 は O を 16 としたときの組成比の算出結果を示したものである。括弧内の数値は、目標と した組成との差を表している。Table 4-6 に示してあるように、目標とした組成と概ね近い組 成の結晶が得られたことがわかった。 Table 4-3 走査型電子顕微鏡の仕様 走査型電子顕微鏡 型名 SSX-550 メーカー名 島津製作所株式会社 倍率 ×10 ~ ×300,000(65 段) 分解能 二次電子像 3.0 nm 反射電子像 4.5 nm 加速電圧 0.3 ~ 30 KV Table 4-4 エネルギー分散型 X 線分析装置の仕様 エネルギー分散型X 線分析装置 型名 SEDX-500 メーカー名 島津製作所株式会社 検出元素 ホウ素(B, Z=5)~ ウラン(U, Z=92) 分解能 138 eV 素子面積 10 mm2

(21)

Table 4-5 標準試料と単結晶サンプルから検出された元素の検出強度平均 サンプル名 K M (Mg, Zn, Ni, Fe) Ti O KMTO 標準試料 23.130 1.430 10.352 3.849 KZTO 標準試料 15.122 3.349 25.365 3.169 KNTO 標準試料 9.303 1.887 29.108 1.839 KFTO 標準試料 10.469 5.299 23.343 2.386 KMTO 単結晶 - 0.161 37.841 3.175 KZTO 単結晶 - - 38.676 2..261 KNTO 単結晶 7.310 1.386 27.442 2.274 KFTO 単結晶 6.656 3.091 23.636 2.082

Table 4-6 KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の組成比

サンプル名 K M(Ni, Fe) Ti

KNTO 1.710(-0.290) 0.799(-0.201) 7.173(+0.173) KFTO 1.401(-0.599) 1.285(-0.715) 6.686(+0.686)

(22)

第4 節 K2MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶の結晶軸同定

KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の結晶軸を同定するため、Fig. 4-3 に示したような配置で KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の結晶サンプルに対して XRD 測定を行った。測定装置の仕様・ 配置や、条件は粉末X 線回折測定と同様(Fig. 4-1、Table 4-1 参照)であるが、単結晶の面回 折は非常に厳しい条件下で発生し、0.05 mm のスリット幅の場合ほんの少しの傾いただけで検 出されなくなってしまう可能性があるため、受光スリットのみ0.30 mm に変更して測定を行 った。また、単結晶のサイズが小さいことから、X 線が当たりやすくするため、単結晶を複数 個並べて測定を行った。

Fig. 4-4 と Fig. 4-5 に測定結果を示す。Fig. 4-4 及び Fig. 4-5 は、それぞれ KNTO 単結晶及び KFTO 単結晶の測定パターンである。また、図内における(a)及び(b)は、それぞれ Fig. 4-3 (a) 及

びFig. 4-3 (b) の測定配置での測定結果である。さらに、図内の(c)に黒の棒グラフで示したも

のがK2MTi7O16 の PDF データである。

Fig. 4-4 (a) と Fig. 4-5 (a) に示されているように、Fig. 4-3 (a) の配置ではどちらの結晶にお

いても、10° ~ 20°付近に山のようなピークが観測されているが、これは結晶を固定するた

めに用いた両面テープの回折ピークである。さらに、赤い●印で示した同定できなかった回折

ピークは、結晶を固定していたアルミ製ホルダーのものである。一方、63° 付近に 002 面に由

来する強いピークが観測された。このことから、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の長手方向が

c 軸であることを同定した。

次に、KFTO 単結晶の Fig. 4-3 (b) の配置での測定結果(Fig. 4-5 (b))では、600 面に由来す る回折ピークが観測された。一方で、KNTO 単結晶の Fig. 4-3 (b) の配置における測定結果(Fig. 4-4 (b))では、110 面、220 面、330 面のピークが観測された。これは、結晶の断面がわずかに

八角形であり、結晶を固定したときわずかに傾いていたため、110 面、及びそれに並行な 220

面、330 面のピークが観測されたものであると考えている。いずれにせよ、結晶の長手方向に

(23)

Fig. 4-3 結晶軸同定における XRD 測定の配置

Fig. 4-4 KNTO の各配置での XRD 測定結果 Fig. 4-5 KFTO の各配置での XRD 測定結果

(a) (b) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 In te ns it y ( Arbi tra ry Uni ts ) 2 [ deg ] 110 200 220 310 400 211 600 420 301 (c) 251 141 510 541 730 202 660 112 002 530 321 330 (a) 002 110 220 330 (b) PDF2+ : 00-018-1032 ● ● ● ● 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 Int ens it y ( A rbi tra ry U ni ts ) 2 [ deg ] 110 200 220 310 400 211 600 420 301 141 251 510 541 730 202 660 112 002 530 321 330 600 (c) (a) (b) PDF2+ : 00-018-1032 ● ● ● 002

(24)

第5 節 反射ラウエ法による K2MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶のラウエ写真撮影

KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の結晶性を評価するため、ラウエ写真の撮影を行った。Table 4-7 に撮影条件を示す。 Table 4-7 ラウエ写真撮影条件 使用装置 RIGAKU RINT2000 (理学電気株式会社) 管球 W 管電圧 40 kV 管電流 20 mA 露光時間 5 min 現像時間 1 min カメラ定数 3 cm フィルム Polaroid57 Fig. 4-6 はラウエ写真の撮影配置と KFTO 単結晶に a 軸方向から X 線を入射し、反射ラウ エ法を用いて撮影したラウエ写真である。確認できたスポットを赤い円で示した。Fig. 4-6 に示されているように、割れていない鮮明なスポットが写っていることがわかる。また、二 回対称性を持ったスポットがいくつか写っていることがわかる。これらのことから、KFTO 単結晶は単結晶であることを確認できた。KNT O 単結晶に関しては、撮影を行ったものの撮 影に失敗し、フィルムに何も写らなかったため単結晶であることを確認できなかった。

(25)

5 章 インピーダンス測定のよる評価

第1 節 交流インピーダンスの測定 (一部古澤伸一准教授ノートから抜粋) イオン導電体のイオン伝導度などの電気的特性は、主に直流測定法や交流インピーダンス 法により評価される。これらの手法を用いて測定を行う場合、測定サンプルは電極、イオン導 電体、電極といった順番で構成される。電極の取り付けは、測定サンプルに蒸着する方法や測 定の際に挟み込んで固定するなどの方法が用いられる。また、電極材料は可逆電極、または不 可逆電極として作用する材料を目的に応じて選択する必要がある。高温領域の測定において は、白金、金、銀など比較的高温で安定な電極が用いられる。 第2 節 電極の固定方法と真空蒸着法による電極の取り付け 単結晶のインピーダンスを測定するためには、電極をサンプルに蒸着することが望ましい。 しかしながら、Table 5-1 に示したように単結晶サンプルのサイズが小さく蒸着が難しいため、 専用の治具にサンプルを金電極でFig. 5-1 に示したように挟み込んで固定して測定を行った。 一部サンプルにのみ真空蒸着法で電極を蒸着した。本研究では空気中、高温領域でも比較的安 定であり、真空蒸着法で製膜が可能な金(Au)を電極材料として用いた。電極間距離と電極面積 はTable 5-1 に示した通りである。 Fig. 5-2 および Table 5-2 は、それぞれ電極作製に使用した真空蒸着装置(真空機工株式会社 型式:VPC-260F)の概略図および主な仕様である。

(26)

Table 5-1 単結晶サンプルの電極面積と電極間距離 試料名 電極面積 [mm2] 電極間距離 [mm] 電極 KNTO1 0.165 3.185 Au KNTO2 0.0847 3.220 Au KNTO3 0.111 4.140 Au KNTO4 0.0439 4.500 Au KNTO5 0.314 2.376 Au KNTO6 0.0617 2.662 Au KNTO7 0.0635 2.951 Au KNTO8 0.0686 3.735 Au KNTO1_a-axis 1.331 0.450 Au KFTO1 0.189 3.490 Au KFTO2 0.127 3.304 Au KFTO3 0.0985 2.977 Au KFTO4 0.112 1.454 Au KFTO5 0.167 4.912 Au KFTO6 0.0969 4.617 Au KFTO7 0.130 4.871 Au KFTO8 0.0753 2.880 Au KFTO1_a-axis 1.989 0.390 Au

(27)

Fig. 5-1 サンプルの固定方法の概略図 Table 5-2 真空蒸着装置 VPC-260F の主な仕様 真空排気装置 到達圧力 1×10-5 Torr(1.3×10-3 Pa) 排気時間 3×10-5 Torr(4.0×10-3 Pa)/20 分以内 所要電気量 100 V 単相 50/60 Hz,約 1.2 kW 蒸着用電源 所要電気量 0~10 V,Max 150 A 200 V 単相 50/60 Hz,約 1.5 kW

(28)
(29)

第3 節 インピーダンス測定の原理 -自動平衡ブリッジ法-

本研究で育成した単結晶のインピーダンスの測定にはHP4194A Impedance/Gain-Phase Analyzer(HEWLETT PACKARD社製)を使用した。HP4194Aによるインピーダンスの測定

は自動平衡ブリッジ法を基本原理としている。自動平衡ブリッジ法の基本構成をFig. 5-3 に

示す。この手法では、DUT(Device Under Test、被測定物)の低電位側(L端側)を常に仮想 接地(電位=0)することで抵抗Rに流れる電流とDUTに流れる電流Iが等しくなるように、高 ゲインアンプのゲインが自動的に調整される。Fig. 5-3 に示してある回路は、オペアンプを 用いた反転増幅器回路と同様に、常にL点の電圧がゼロとなるような負帰還の作用によって 動作する。また、DUT(インピーダンス:Zx)に流れた電流Iは、交流の信号源によって全て が帰還抵抗Rに流れ込む。その結果、信号源の電圧V1とZxにかかる電圧が等しくなり、増幅 器の出力電圧V2は試料を流れる電流Iと帰還抵抗Rの積V2=RIになる。したがって、V1とV2を検 出してその比をとると 2 1 2 1 1 V V R R V V I V Zx          ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-1) となり、インピーダンスZxの値を得ることができる。 ここで、入力電圧をV1、出力電圧をV2、それぞれの位相角を1、2とすると、

1 1

1 1 1 1 1 e cos sin 1

i V V V V    i   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-2)

2 2

2 2 2 2 2 e cos sin 2

i V V V V    i   ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-3) であるので、  

2 1 2 1 2 1 2 1 2 1 e cos sin e e 1 2 2 1                      i V V R V V R V V R Z i i i x ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-4) を得られる。 自動平衡ブリッジ法は一台で低周波帯から高周波帯まで(20 Hz~110 MHz)の広い周波数 における測定を行うことができ、インピーダンス測定範囲が広く、測定の正確性が高いとい う特徴がある。 Fig. 5-4 にインピーダンス測定装置の概略図を示す。Table 5-3 には使用した装置の仕様を示 してある。Fig. 5-4 に示されているように、自作の Test Fixture(設計:古澤准教授、製作:東

(30)

また、本研究におけるインピーダンス測定の条件をTable 5-4 に示した。 Fig. 5-3 自動平衡ブリッジ法の基本構成 Fig. 5-4 インピーダンス測定装置の概略図 V1 V2 H L DUT Zx R HEWLET 4194A PACKARD IMPEDANCE/GAIN-PHASE ANALYZER

LINE OFF ON

MENU SWEEP MODE TRIGGER

EDIT PARAMETER ENTRY

MARKER/L CURSOR

MEASREMENT UNIT

HEWLETT PACKWARD

OUTPUT INPUT

OUT PUTDUAL

SINGLE REFERENCE CHANNELINPUTTES T CHANNEL OVER LOAD OVER LOAD UNKNOWN CABLE

LENGTH

IMPEDANCE (100Hz-40MHz) GAIN-PHASE (10Hz-100MHz)

INTEG TIMEAVERASING SHORT MEDIUM LONG SOFT KEYS INTENSITY hp 1 ・ 2 ・ 4 ・ 8 ・16 32 ・64 ・128 ・256

REFERENCE CHANNEL TES T CHANNEL SINGLE

DUAL

IMPEDANCEATTENUATION IMPEDANCEATTENUATION BIAS SAMY REMOTEHI PASSLO V k mA mV  A ℃ M A FUNCTION

V DCA DCOHMLP OHM~V AC ~A AC

RATENULLCOMP TEMP(K) AC・DC

GP-IB LINE-F

A mA A COM V  ℃

0.5A FUSE 330mA MAX 10A MAX

MAX 500V PK 1000V- 750V~MAX

ADVANTEST DIGITAL MULTIMETERTR6847 POWER

ON OFF

RANGE

AUTO DOWNUP HOLD

HIGH TRIG LOW SHIFT LOCAL GP-IB HP4194A Impedance/Gain-Phase Analyzer T. C. Digital Multimeter Sample Electric Furnace 0℃ Computer Test Fixture

(31)

Table 5-3 インピーダンス測定装置の仕様 インピーダンス測定装置

HP4194A Impedance/Gain-Phase Analyzer(HEWLETT PACKARD社)の仕様 テスト周波数 範囲 100 Hz ~15 MHz(測定ケーブル長 1 m) 分解能 1 mHz 確度 ±20 ppm(23±5 ℃) 測定回路モード 並列等価回路 測定範囲、最高分解能 測定パラメータ |Z|, |Y|, , R, X, G, B, L, C, D, Q 測定範囲 10 m~100 M 最大分解能 100  温度測定 31440Aディジタルマルチメーター(Agilent社) 温度センサー:Alumel Chromel熱電対 測定プログラム IANAZ (古澤准教授 製作) OS Windows7 Table 5-4 インピーダンス測定条件 温度領域 300~700 K 周波数領域 100 Hz ~10 MHz 雰囲気 空気 電極 Au 電極 測定回数 昇温~降温を1 サイクルとし 1 サイクル

(32)

第4節 KNTO 単結晶と KFTO 単結晶におけるインピーダンス

Fig. 5-5 は冷却過程での 700 K における、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の c 軸方向の複素抵 抗率の Cole-Cole プロットを比較したものである。赤の円でプロットしたものが KNTO 単結 晶のデータで、青の円でプロットしたものが KFTO 単結晶のデータである。Fig. 5-5 に示され ているように、同じホランダイト型の構造を持つ単結晶でもフレームワークイオンが異なる と、描くインピーダンススペクトルが大きく異なることがわかった。 0 1000 2000 3000 4000 0 1000 2000 3000 4000 5000 6000 -Z" [  cm ] Z' [cm] ○:KNTO6 cool ○:KFTO3 cool Fig. 5-5 c 軸方向における育成単結晶の複素抵抗率の Cole-Cole プロットの比較

Fig. 5-6 と Fig. 5-7 は冷却過程での 700 K における、KNTO 単結晶及び KFTO 単結晶の c 軸 方向の複素抵抗率の Cole-Cole プロットのサンプル依存性を比較したものである。Fig. 5-6 (a) と Fig. 5-7 (a)に示されているように、どちらの単結晶サンプルにおいても低周波部分のイン ピーダンスが大きくサンプルに依存していることがわかる。これは、サンプル形状や電極近 傍のインピーダンスの影響が表れているためであると考えられる。一方、Fig. 6 (b)と Fig. 5-7 (b) はそれぞれ Fig. 5-6 (a)及び Fig. 5-5-7 (a) の高周波部分を拡大したものである。また、Fig. 5-7 (c) は Fig. 5-7 (b) のさらに高周波部分を拡大したものである。Fig. 5-6 (b)と Fig. 5-7 (b)及 び Fig. 5-7 (c) に示されているように、高周波部分は低周波部分に比べてインピーダンススペ クトルのサンプル依存性が少なく、いくつかのサンプルのプロットが重なっている部分や、 似た形状を描いている部分があることがわかる。この部分がバルク伝導に関連する成分であ ると考えられる。

(33)

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 0 20000 40000 60000 80000 100000 -Z" [  cm] Z' [cm] ○:KNTO1_cool ○:KNTO2_cool ○:KNTO3_cool ○:KNTO4_cool ○:KNTO5_cool ○:KNTO6_cool ○:KNTO7_cool ○:KNTO8_cool (a) 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 0 500 1000 1500 2000 2500 3000 3500 4000 -Z" [  cm] Z' [cm] (b) ○:KNTO1_cool ○:KNTO2_cool ○:KNTO3_cool ○:KNTO4_cool ○:KNTO6_cool ○:KNTO7_cool ○:KNTO8_cool

(34)

0 10000 20000 30000 40000 50000 60000 70000 80000 0 20000 40000 60000 80000 100000 120000 -Z" [  cm] Z' [cm] (a) ○:KFTO1_cool ○:KFTO2_cool ○:KFTO3_cool ○:KFTO4_cool ○:KFTO5_cool ○:KFTO6_cool ○:KFTO7_cool ○:KFTO8_cool 0 500 1000 1500 0 500 1000 1500 2000 -Z" [  cm] Z' [cm] ○:KFTO2_cool ○:KFTO3_cool ○:KFTO5_cool ○:KFTO6_cool ○:KFTO7_cool ○:KFTO8_cool (b) 0 5 10 15 20 25 30 0 5 10 15 20 25 30 35 40 -Z" [  cm] Z' [cm] ○:KFTO2_cool ○:KFTO6_cool ○:KFTO7_cool ○:KFTO8_cool (c)

(35)

Fig. 5-8 は冷却過程での 700 K における、KNTO 単結晶及び KFTO 単結晶の a 軸方向の複 素抵抗率の Cole-Cole プロットである。Fig. 5-8 (a) は KNTO 単結晶のもので、Fig. 5-8 (b) は KFTO 単結晶のものである。Fig. 5-8 に示されているように、どちらの単結晶の Cole-Cole プ ロットにおいても低周波部分と高周波部分に円弧を描いていることがわかる。この低周波部 分の円弧がバルク伝導に関連する成分と考えられる。 Fig. 5-6 ~ Fig. 5-8 の高周波部分におけるバルク伝導に関連する成分と思われる部分を、 Debye の経験則 (2-14) 式を用いてフィッテングを行い、直流抵抗率を求め、その逆数から直 流電気伝導度を求めた。 0 1000000 2000000 3000000 4000000 5000000 6000000 7000000 0 2000000 4000000 6000000 8000000 10000000 -Z" [  cm ] Z' [cm]:KNTO1_a-axis_cool (a) 0 5000000 10000000 15000000 0 5000000 10000000 15000000 20000000 -Z" [  cm ] Z' [cm]:KFTO1_a-axis_cool (b)

(36)

第 5 節 分極法によるK2 MxTi8-xO16 (M = Ni, Fe) 単結晶の輸率測定 KNTO 単結晶と KFTO 単結晶が K+イオン導電体であることを確かめるため、分極法による 輸率の測定を行った。Fig. 5-8 は輸率測定装置の概略を示したものである。Table 5-5 は輸率測 定に用いた装置の仕様と測定条件を示したものである。 Fig. 5-9 輸率測定装置の概略図 Table 5-5 輸率測定装置の仕様・測定条件 制御コンピューター PCG-61A11N(SONY 社) 電流測定 31440A ディジタルマルチメーター(Agilent 社) DC 電源 E3610ADC パワースピリー(Agilent 社) 測定プログラム 古澤准教授 作製 温度領域 500~700 K 雰囲気 空気 電極 Au 電極 Fig. 5-10 は 700K において、ある時刻に 1V の直流電圧を結晶サンプルに c 軸方向から印 加した後の直流電気伝導度の時間依存性をプロットしたものを一例として示したグラフであ る。Fig. 5-10 (a) と Fig. 5-10 (b) はそれぞれ KNTO 単結晶及び KFTO 単結晶の測定結果であ る。どちらの結晶においても直流電圧を印加した直後から電気伝導度が急激に減少し、ある

漸近値に近づいていることがわかる。この漸近値を Ieとし、電極間距離 l、電極面積 S、印加

(37)

𝜎𝑒 = 𝑙 𝑆 𝐼𝑒 𝑉・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-5) より、電気伝導度σeを求めた。 本来輸率を求める場合、この電気伝導度σeと電極部分を含めた電気伝導度との比を計算す る必要があるが、育成した単結晶のインピーダンススペクトルの低周波部分はサンプル依存 性や電極による影響が大きいため、今回はインピーダンスプロットから得られた K+イオン のバルクイオン伝導度をσiとして、以下の式 𝑅𝑇 = 𝜎𝑖 𝜎𝑖+𝜎𝑒・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-6) に当てはめて輸率として見積もった。その結果をTable 5-6に示す。Table 5-6 に示されている ように、KNTO単結晶の輸率は0.98、KFTO単結晶の輸率は0.99となり、これらの結晶はバル ク伝導がほぼ100 %のK+イオン導電体であることがわかった。

(38)

3.5 10-8 4 10-8 4.5 10-8 5 10-8 5.5 10-8 6 10-8 0 50 100 150 200 250 300

Time [sec]

KNTO 700 K

[

-1

cm

-1

]

(a)

1.2 10-6 1.3 10-6 1.4 10-6 1.5 10-6 1.6 10-6 1.7 10-6 1.8 10-6 0 50 100 150 200

Time [sec]

KFTO 700 K

[

-1

cm

-1

]

(b)

Fig. 5-10 700K における育成結晶の直流電気伝導度の時間依存性 Table 5-6 KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の輸率

結晶名 輸率

KNTO 0.98

(39)

第6 節 K2MTi7O16 (M = Ni, Fe) 単結晶の直流電気伝導度の温度依存性

Fig. 5-11 は冷却過程における KNTO 単結晶及び KFTO 単結晶の直流電気伝導度の温度依

存性を示したものである。●印でプロットしたデータがKNTO 単結晶のサンプルのもので、

▲印でプロットしたデータがKFTO 単結晶のサンプルのものである。Fig. 5-11 に示されてい

るように、全体的なイオン伝導度はKNTO 単結晶より KFTO 単結晶の方が高いことがわか

る。c 軸方向における KNTO 単結晶と KFTO 単結晶のイオン伝導度の平均を比較したとこ

ろ、KFTO 単結晶が KNTO 単結晶の約 390 倍大きいことがわかった。なお、KNTO1、

KNTO2、KNTO 5 及び KFTO1、KFTO 4 のデータは電極やサンプル形状による影響が大きい と考えられるため、平均値の計算から除外した。以降の平均値の計算においても、KNTO1、 KNTO2、KNTO 5 及び KFTO1、KFTO 4 のデータは同様に計算から除外した。 さらに、700K のときの a 軸方向におけるイオン伝導度と 700K のときの c 軸方向における イオン伝導度の平均値を比較してみると、KNTO 単結晶は c 軸方向の方が約 3.92×103倍高 く、KFTO 単結晶においても c 軸方向の方が約 1.30×106倍高いことがわかった。このように a 軸方向と c 軸方向のイオン伝導度に大きな異方性があることから、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶にはc 軸方向に沿った 1 次元イオン伝導性があることを確認できた。 一方で、イオン伝導度は温度上昇に伴って指数関数的に増加していることから、熱活性型 のイオン伝導メカニズムであることがわかった。ここで、単純な熱活性型のイオン伝導の温 度依存性は、         T k Δ σ T B exp 0  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-7)

 

f Γ k a Z N σ 0 B 2 2 0 e  ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・(5-8) によって与えられる。σ0は前置因子であり、キャリア濃度N、試行周波数 Γ0、 跳躍距離 a、 キャリアの価数 Ze などの関数であり、Δ は活性化エネルギーである。Fig. 5-5 にプロットさ れたデータはいずれも直線で近似できていることから、 (5-7) 式を用いてフィッテングし、

その傾きからKNTO 単結晶と KFTO 単結晶における活性化エネルギーを見積もった。Table

5-7 に c 軸方向における活性化エネルギーが示されていて、Table 5-8 に a 軸方向における活

性化エネルギーが示されている。Table 5-7 に示されているように、KNTO 単結晶より KFTO

単結晶の方が活性化エネルギーが全体的に小さいことがわかる。また、活性化エネルギーの 平均を比較してみると、KNTO 単結晶が約 0.97 eV、KFTO 単結晶が約 0.29eV であり、

(40)

ここでKNTO 単結晶と KFTO 単結晶とでイオン伝導度と活性化エネルギーに差が生じてい る理由について考察する。KNTO 単結晶と KFTO 単結晶で、イオン伝導度と活性化エネルギ

ーに上記のような差が生じる理由の1 つは、単結晶に含まれる K の量に起因するものではな

いかと考えている。組成分析の結果から算出した、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の K の組成

比はそれぞれ1.71 と 1.40 である。ホランダイト型構造を持つ K2MgTi7O16 の Unit cell の K が

占有するサイト数が6 であることから、これらの単結晶の K のサイト占有率を求めると、そ れぞれ約28.5%と約 23.3%である。KNTO 単結晶の方が K のサイト占有率が高いことがわか る。一方で、第1 章の第 3 節で述べたように、K ホランダイトのイオン伝導は 1 次元的なト ンネル内のサイトを部分的に占有しているK+イオンが伝導するものと考えられている。ここ で、トンネル内のサイトのK+イオン占有率が高いほどK+イオンの移動できるサイトが少なく なってしまい動く余地がなくなり、K+イオンが伝導しにくくなるのではないかと考えた。そ のため、K のサイト占有率の高い KNTO 単結晶より、K のサイト占有率の低い KFTO 単結晶 の方が K+イオンが動きやすくイオン伝導性が高く活性化ネルギーが低いという結果になっ たのではないかと考えている。 次に、格子定数との関係について考察する。KNTO 単結晶及び KFTO 単結晶の大まかな格 子定数を、泉富士夫らによって開発されたRietan-FP[8]を用いて、それぞれの結晶の粉末X 線 回折測定のデータから決定したところ、KNTO 単結晶では a = 10.466 Å、c = 3.127 Å、KFTO 単 結晶ではa = 10.332 Å、c = 3.093 Å という格子定数が得られた。まず、a 軸の格子定数を比較 すると、KFTO 単結晶より KNTO 単結晶の a 軸の格子定数の方が大きいことがわった。この ことから、KNTO 単結晶のイオン伝導経路は KFTO 単結晶のより幅が大きく、イオン伝導性 が高くなるものと考えられる。しかしながら、測定を行った結果はFig. 5-11 に示したように、 KFTO 単結晶の方が高いイオン伝導性を示している。この理由としては、上記で述べた結晶の K 含有量の差、及びそれに由来する K+イオンのサイト占有率が、イオン伝導性与える影響の 方が非常に大きいためであると考えられる。c 軸の格子定数を比較すると、KNTO 単結晶の方 がKFTO 単結晶より大きいことがわかった。この差は、活性化エネルギーに表れていると考 えられる。格子定数が大きいならば、その分だけサイト間の距離も大きくなる。ホランダイト のイオン伝導は、c 軸に沿って起きるものと考えられているため、c 軸の格子定数が大きい KNTO 単結晶では隣接するサイトとの距離が KFTO 単結晶より大きいものと思われる。その ため、K+イオンが隣接サイトへホッピングするために必要な活性化エネルギーが、KFTO 単 結晶より大きくなってしまったものと考えられる。

(41)

10

-7

10

-6

10

-5

10

-4

10

-3

10

-2

10

-1

10

0

10

1

10

2

10

3

1.4

1.5

1.6

1.7

1.8

1.9

2

2.1

T

[

-1

cm

-1

K]

1000/T [K

-1

]

●:KNTO1_cool ●:KNTO2_cool ●:KNTO3_cool ●:KNTO4_cool ●:KNTO5_cool ●:KNTO6_cool ●:KNTO7_cool ●:KNTO8_cool ○:KNTO1_a-axis_cool ▲:KFTO1_cool ▲:KFTO2_cool ▲:KFTO3_cool ▲:KFTO4_cool ▲:KFTO6_cool ▲:KFTO7_cool ▲:KFTO8_cool △:KFTO1_a-axis_cool

(42)

Table 5-7 c 軸方向における KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の活性化エネルギー サンプル名 活性化エネルギー ⊿ [eV] KNTO3 1.20 KNTO4 0.98 KNTO6 0.64 KNTO7 1.18 KNTO8 0.83 KFTO2 0.33 KFTO3 0.36 KFTO6 0.23 KFTO7 0.31 KFTO8 0.23

Table 5-8 a 軸方向における KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の活性化エネルギー

サンプル名 活性化エネルギー ⊿ [eV] KNTO1_a-axis 0.84 KFTO1_a-axis 0.83 Fig. 5-12 は Fig. 5-11 のグラフを室温まで演繹したものである。横軸の 3.3 の位置にある赤 い縦のラインは、室温における値であることを示している。Fig. 5-12 に示されているよう に、KFTO 単結晶の一部のサンプルのデータでは室温においても 10-3-1 cm-1 K] 以上のイ オン伝導度を示すことから、KFTO 単結晶は室温において超イオン伝導性を持つイオン導電 体である可能性が示唆された。

(43)

Fig. 5-12 直流電気伝導度の温度依存性を室温まで演繹した図

10

-12

10

-10

10

-8

10

-6

10

-4

10

-2

10

0

10

2

1

1.5

2

2.5

3

3.5

T

[

-1

cm

-1

K]

1000/T [K

-1

]

●:KNTO1_cool ●:KNTO2_cool ●:KNTO3_cool ●:KNTO4_cool ●:KNTO5_cool ●:KNTO6_cool ●:KNTO7_cool ●:KNTO8_cool

3.3

2.74×10

-2

7.72×10

-2

4.84×10

-4

1.51×10

0

2.77×10

-7 ▲:KFTO1_cool ▲:KFTO2_cool ▲:KFTO3_cool ▲:KFTO4_cool ▲:KFTO6_cool ▲:KFTO7_cool ▲:KFTO8_cool

6.19×10

-1

2.99×10

-9

(44)

6 章 まとめ

本研究の結果を以下にまとめる。

(1) フラックス法により、K2MxTi8-xO16 (M = Mg, Zn, Ni, Fe) 単結晶の育成を行った。その結 果、KMTO 単結晶と KZTO 単結晶は端が四角錐の柱状で 0.7 mm × 0.7 mm × 3.0 mm 程 度の大きさを持ち、KMTO 単結晶は暗緑色、KZTO 単結晶は黒緑色の結晶が得られた。 一方、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶は全体的に細長い針状で 0.3 mm × 0.3 mm × 5.0 mm 程度の大きさを持ち、KNTO 単結晶は黄緑色、KFTO 単結晶は暗赤色の結晶が得られ た。 (2) 粉末 X 線回折測定の結果より、KNTO 単結晶と KFTO はホランダイト型構造であるこ とがわかった。KMTO 単結晶と KZTO 単結晶はルチル型構造である可能性が高いこと が示唆された。

(3) SEM-EDX による組成分析の結果より、KMTO 単結晶と KZTO 単結晶には K が含まれ

ておらず、Ti と O が主成分の結晶であることがわかった。KNTO 単結晶と KFTO 単結 晶からは全ての元素が検出された。 (4) 分析結果から組成を算出した結果、KNTO 単結晶の組成式が K1.71Ni0.80Ti7.17O16であり、 KFTO 単結晶の組成式が K1.40Fe1.29Ti6.69O16であったことから、目標の組成に概ね近い組 成のホランダイト型結晶が得られたことがわかった。 (5) KNTO 単結晶と KFTO 単結晶のインピーダンスプロットと直流電気伝導度の時間依存 性から輸率を求め、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶はバルク伝導がほぼ純粋な K+イオン 導電体であることがわかった。

(6) KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の電気伝導度の温度依存性をプロットの比較より、KFTO

単結晶の方がKNTO 単結晶よりイオン伝導度が約 390 倍高いことがわかった。 (7) a 軸方向における KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の電気伝導度の温度依存性のプロット より、イオン伝導度はc 軸方向の方が、KNTO 単結晶では約 3.92×103倍高く、KFTO 単結晶では約1.30×106倍高いことがわかった。このことから、KNTO 単結晶と KFTO 単結晶のイオン伝導はc 軸方向に沿った 1 次元イオン伝導であることを確認した。 (8) K NTO単結晶とKFTO 単結晶のイオン伝導の活性化エネルギーとしてそれぞれ約0.97、 約0.29 eV が得られ、KFTO 単結晶は KNTO 単結晶の約 0.30 倍活性化エネルギーが小 さいことがわかった。 (9) a 軸方向における KNTO 単結晶と KFTO 単結晶の活性化エネルギーは c 軸方向のもの より、KNTO 単結晶では約 0.87 倍低く、KFTO 単結晶では約 2.84 高いことがわかった。

Fig. 2-1  イオン伝導に対する一次元周期ポテンシャル( E=0) 【補足】イオンの位置エネルギーが極小な位置とはイオンが結晶内で本来占有する位置であ る。これをサイト( site)と呼ぶ。   イオンの熱振動の 1回の振動がイオンの跳躍( hopping )の試行1回に相当すると仮定すれば、 イオンは 1秒間に 0 回ホッピングを試行することになる。これを試行周波数(attempt  frequency ) という。また、単位時間当たりのホッピング回数をホッピングレートという。  次に、イオン導電
Fig. 2-3  熱活性型イオン伝導の電気伝導度の温度依存性のアレニウスプロット  kTfΔTΓkaZeNBB220exp ΓfkaZσN0B220e eTkTΔσ1logloglogB0kTσΔTB0exp TekTΔσ33B01010loglogloglog(T)1000/T傾き=kB×10-3log10e
Fig. 2-7 界面イオン伝導を含む等価回路  インピーダンススペクトルの低周波成分は、イオン導電体と電極界面における電気 2 重層 や電極反応による寄与を大きく受ける。特に、ブロッキング電極を用いた場合の測定における インピーダンススペクトルは電気 2 重層の寄与が大きく現れる。ブロッキング電極も R i と C i の並列回路で表すことができる。さらに、電極界面にイオンの拡散が生じる場合、低周波数領 域においてワールブルグインピーダンスが観測される。その図を Fig
Fig. 3-1 (a) ~ (d)  は育成した結晶の写真であり、 Table 3-2 に育成した結晶の結晶名、色、平
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