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高濃度窒素添加4H-SiC 単結晶中の積層欠陥発生条 件の理論的研究

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Academic year: 2022

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高濃度窒素添加4H‑SiC 単結晶中の積層欠陥発生条 件の理論的研究

著者 一村 愛子

URL http://hdl.handle.net/10236/12330

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2013 年度修士論文要旨

高濃度窒素添加 4H-SiC 単結晶中の積層欠陥発生条件の 理論的研究

関西学院大学大学院 理工学研究科 物理学専攻 大谷昇研究室 一村愛子

現在、新たなパワーデバイス材料として、物性的に優れた性質をもつ SiC 単結晶の使用が期待されている。SiC 単 結晶を使用することで、電力変換器の効率向上、小型化・軽量化が可能となり、大きな省エネルギー効果、CO2の排 出量削減につながる。しかしながら、SiC パワーデバイスの適用範囲を広げるためには解決すべき課題がまだ多く 存在し、その 1 つが SiC 単結晶の低抵抗率化である。

現在、抵抗率が 20 mcm 程度の SiC 単結晶基板が市販されているが、基板抵抗に起因した電力損失の素子全体の 電力損失に占める割合は決して小さなものではない。そこで、基板抵抗を低減するために SiC 単結晶に窒素ドナー を高濃度に添加することが行われている。窒素を高濃度(1×1019 cm-3以上)に添加することで、容易に基板結晶の 抵抗率を数 mcm まで低減することができる。しかしながら、抵抗率が約 12 mcm 以下になると、イオン注入後の 回復アニール処理などで基板を高温(1000℃以上)に晒すと、基板結晶中に積層欠陥が発生するという問題が生じ る[1]。基板結晶中に積層欠陥が発生すると、基板の電気抵抗が増大する。そのため、抵抗率が 12 mcm 以下の基 板結晶は現在市販されていない。このような状況の中、最近、Straubinger ら[2]は、上記アニール温度よりもさら に高温(1700℃以上)で高濃度窒素添加 4H-SiC 単結晶基板をアニールすると、積層欠陥が消失することを報告した。

この報告は、低抵抗率 4H-SiC 単結晶基板において積層欠陥発生を抑制できる可能性を示唆するものである。そこで 我々は、1700℃を超える高温域での積層欠陥不安定化のメカニズムを解明することを目的として、高濃度窒素添加 4H-SiC 単結晶中の積層欠陥の安定性を定量的に評価することを試みた。

積層欠陥の発生メカニズムとして、Liu ら[3]及び Miao ら[4]は量子井戸作用(Quantum Well Action: QWA)を提 案している。4H-SiC 中に 3C 構造の積層欠陥が発生すると、両者のバンドギャップ差から、積層欠陥(極薄 3C 積層)

が 4H-SiC 中で量子井戸のように働き、4H-SiC 中の伝導電子をトラップする。この積層欠陥への伝導電子のトラッ プ(低エネルギー化)が、積層欠陥安定化の駆動力であると彼らは考えた。

この QWA モデルを唯一定量的に解析しているのが、Kuhr らの論文[1]である。我々はこの Kuhr らの論文の計算手 法に従って、積層欠陥の高温での挙動解明を試みたが、彼らの計算手法では、高温域での挙動は勿論のこと、中温 域(1000℃~1500℃)での積層欠陥の安定性すら説明できないことがわかった。そこで本論文では、Kuhr らの論文 では考慮されていなかった幾つかの物理的効果を計算に取り入れることにより、高濃度窒素添加 4H-SiC 単結晶中の 積層欠陥の中温域並びに高温域での安定性を議論することを試みた。

Kuhr らの論文で考慮されていなかった物理的効果として、以下の 5 つを検討した。

① 伝導帯底の多重度

② 積層欠陥中の電子の有効質量(2 次元効果)

③ 積層欠陥の厚さ

④ 積層欠陥中のドナー不純物準位

⑤ 正孔発生の影響

本論文では、①、③を考慮することで、積層欠陥の安定性が増すことを示した。また、④を考慮することで、高 温で積層欠陥が不安定化する可能性のあることを示した。積層欠陥導入によるエネルギー利得は、複雑な温度依存 性を示す。本論文では、この温度依存性の物理的起源についても議論した。温度上昇に伴って、伝導電子はよりエ ネルギーの高い準位に励起されるが、バルク中の電子と積層欠陥中の電子では、その挙動に大きな差が生じる。バ ルク中の電子では、ドナー準位と伝導帯(連続準位)の間にギャップが存在し、これが離散準位系特有の温度依存 性を示す原因となる。一方、積層欠陥中の電子は、状態密度が一定の連続準位(2 次元電子ガス)に電子が詰まっ た状態になっており、温度上昇に伴ってギャップレスで励起される。これらエネルギー準位構造が異なる 2 つの系 が隣接して存在することが、積層欠陥導入によるエネルギー利得の複雑な温度依存性の原因となっている。

[1] T. A. Kuhr et al., J. Appl. Phys. 92, 5863 (2002)

[2] T. Straubinger et al., Materials Science Forum 645-648, 223 (2010) [3] J. Q. Liu et al., Appl. Phys. Lett. 80, 2111 (2002)

[4] M. S. Miao et al., Appl. Phys. Lett. 79, 4360 (2001)

参照

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