九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
災害救助を迅速化するRFIDトリアージシステム
増永, 良文
青山学院大学情報科学研究センター
井上, 創造
九州大学附属図書館研究開発室
http://hdl.handle.net/2324/8083
出版情報:DB magazine. 17 (5), pp.122-123, 2007-09-01. 翔泳社 バージョン:
権利関係:
第 37 回
ナ ビ ゲ ー タ rデータベースは実世界の写し絵」とは、データベースの真髄を表わす言葉としてナビゲ‑タ
がこれまで好んで使い続けてきた惹句であるが、センサ‑技術が進歩するとともに、直接実 世界のデータをデータベースに取 り込み、問い合わせや高度な情報処理が可能となる時代が やってきているoセンサーは
GPS
、ジャイロ、温度センサーなど多彩を極めるが、中でもRF旧
タグは小型軽量でかさばら
ず対象物に直接貼 り付けら
れること、無線による非接触型 のデータ読み出しと書き込みが可能なことなどから、さまざまな分野での応用が試されてい る。今回紹介 してもらう研究は、災害時の負傷者の治療優先措置に絡めたRF旧
情報システムの実証実験である。 (増永)
災 害時の適連な対応を実現する 2005年に起きたJR福知山線脱線事故のよ うに、大量の負傷者が出る事故が発生したと きには、迅速な対応が求められまも 本稿で は、そうした現場でも負傷者の情報を迅速に 収集できる「RFIDトリアージシステム」の研究 を紹介しますb
RFIDとは、無線通信 が可能 な小型IC (RFIDタグ)を用いて人や物の識別をする技 術で1.その本質は、情報と現実の物を競合 的に管理できることにありますが、本研究で は、RFIDタグ上にもデータを配置 しており、
RFID上の連携したデータベースシステムへと 発展する可能性 をも持っていま1.
ト リア̲ジとその阿藤 大量の負傷者が局所的 に発生した場合、トリアー ジという手法で負傷者の 情報把握 が行 なわれ ま 1.トリアージは以下のよ うに救急作業員 によって 行なわれます (図1) 0
①ファースト(1st)トリア ージ。救急作業員は事 故現場に入 り、負傷の 程度により色分けされ たトリアージタグを負 傷者 に取 り付け、事故 現場近くに設置された
現場救護所に移動
②セカンド(2nd)トリアージ。トリアージタ グに負傷者の情報を記入
⑧病院選定。現場救護所から救急車で病院 に搬送する。その前に搬送先をトリアー ジタグに記入 し、カーボンコピーを現場 救護所近くの現場本書別こ回収
④救急車内でも、トリアージタグに情報を 入力
⑤救急車は現場救護所に戻り、トリアージタ グを現場本部に回収。その後搬送を繰り 返す
このように、負傷者の負傷の程度、搬送先、
氏名、電話番号、住所、年齢、性別といった 情報が現場本部に集められ、意思決定や報 道に用いられます占ただし、これらの作業は
匹 コ
従来の集団救急作業での情報の流れ青山学院大学 教授/
日本データベース学会会長
増永長文
納ASUNAGA,Yoshifumi
九州大学 附属図書館研究開発室 准教授
井上創造
INOUE,SoZ.完全 に人手に依存するため、以下の点が問 題となっていま1.
情報遅延 :救急車が現場 に帰還するまで完 全な情報は判明しない
情報欠落 :負傷者が徒歩で災害現場を離れ てしまった場合、情報の正確な把損ができ ない。負傷者の放送時に、トリアージタグの 複写の切り取り忘れやJ紛失が発生した場 合にも、正確 に把握できない
R FI D
M ア̲ジシステムでは、筆者らが開発 したRFIDタグを用い たトリアージシステムを轟介しましょう。
まず、各トリアージタグに1KB程度の書き込 みが可能なRFIDタグを負傷者に添付しま1.
田
1st/2ndトリアージ端末での入力画面 垣 ヨ 美顔の様子 このRFIDタグにはあらか じめ識別子が付与されています。
lst/2ndトリアージおよび病院選定 においで は、救急作業員が タッチパネルやボタンを用 いて入力 できるRFIDリーダー付 きPDA(OS はWindowsCE)端末 に負傷者 の情報 を入 力 しますbその情報 はRFIDタグに書 き込 ま れると同時に、無線 ネットワークを通 じてサー バーに転送 され ます。ただし、ネットワークが 不通の場合 には、端末上 にいったん保持 し、
通信可能になった時点で再送 されますo画面 はその入力画面ですら
救急車 内および病 院 においては、救急作 業員がRFIDリーダーを備 えたノートPCに負 傷者 の情報 を入力 し、その情報がPDAと同 様 にRFIDタグとサーバーに送億 されますb
データセンターには、端 末から送 られ る負 傷者情報 を蓄積す るリレーショナルデータベ ースが配置 されていま1.データベースには、
時刻 印 をキーとした負傷者情報 の入力履歴 が単一のテーブルに保持 されま10さらに、現 場本部端末から届 く負傷者情報 の閲覧要求 に応答す るサーバーも設置 します)1人の負 傷者 に対する情報が複数の端末から逐次送 られてくるため、入力 時の時刻 印 をもとに情 報 を最新 に保 ちます.
現場本部においては、Webブラウザ端末 を 用いてサーバーに集まった負傷者情報 を閲覧 しまも データベースでは、時刻 印をキーとし た入力履歴 の各属性が負傷者 ごとに集約 さ れ、最新 の負傷者情報が表示 されま1.
本 システムは、情報 を無線 ネットワークを通 じて集約できるだけでなく、RFIDを用いたこ とで以下のような利点 も持 ち合 わせ ました。
負傷者の 自動識別:RFIDタグに唯一の識別 子が記録 されているため、入力端末で、こ れまでに入力 された情報 と負傷者 を対応 付 けできる
可用性の向上 :情報 を入力する際に、それま でに入力 された情報 をRFIDタダから読み 出す ことにより、通信電波が到達 しない山 奥や地下でも情報 を得 られる
スループットの向上 :上記および入力後の情 報 は、端末がバックグラウンドジョブとして サーバーに送 ることにより、ネットワークの 通億時 間に影響 されず に入力ができる
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実 証実験で大きな戯 を樺諾
筆者 らは福 岡市消 防局 と協力 し、十数台 の車両 による多重衝突事故 により100名程度 の負傷者が発生 したことを想定 して、訓練 を 兼ねた実証実験 を行 ないました (写真)0
この実験 において従来方式 と筆者 らの提 案システムで訓練 を繰 り返 したところ、負傷の 程度のような緊急 を要する情報 については、
従来方式 では約54分 で63人分 しか集 まりま せ んでしたが、提案 システムでは約36分で 全 員分集 まりました。また負傷者 の搬 送 も、従 来方式で約57分・かかったものが約41分 に短 縮 されました。1分1秒 を争 う事故現場 におい ては、大 きな効果 だと考 えられます)
実験 においては無線LANと携帯電話 によ る通信 を用 いましたが、1回の入力 データの 送信 時間の平均 は17.3秒 、分散 は35.39でし た。送信 時 間は大 きく、またばらついていま す。しかし、RFIDタグに情報 を保持すること により、入力 時 間にまったく影響 を与 えなか ったことは特筆すべ きことだと言 えます.
R FI D システム設計のポイ的
これらの経験から了RFID情報 システムに特 有の設計上のポイントを、以下のように得 るこ
とができました。
タグを付 ける対象 :タグを付 ける場所 がある か、電導性や汚れやすさ、温度環境、対象 物 の個数、使用期 間 (何年 間使 うか)、電 池 を使 う場合 に取 り替 え可能か
読み書きの方法 :人手か 自動か、複数同時 に 読 み取 る必要が あるか、読 み取 り可 能 な
距離 はどこまでか、バーコードでの代替 は 可能か
読み書 きした情報の信頼性 :読み取 りミスや 偽造/なりすまLが許 されていないか タグに乗 せる情報:IDは標準化 されたもの
か、アプリケーションデータも乗せ るか (今 回はこの例)
タグの再利用 :一度使用 されたタグを再度利 用することができるか
本稿 では、RFIDタグを用 いたトリアージシ ステムの事例 と、そこから得 られた知見 を紹 介 しました。 今後知見 を蓄積 し、データベー スの機能 として共通化することが重要 だと筆 者 は考 えています)
増 永 良 文 (ますながよしふみ)
青山学院大学情報科学研究センター教授。1970年 東北大学大学院工学研究科博士課程了、工学博士。
情報処理学会データベースシステム研究会主査、
ACMSfGMODEj本支部長、情報処理学会監事な どを歴任。2002年に日本データベース学会を設立 し、現在同会長O著書に『リレーショナルデータベー ス入門[新訂版]』(サイエンス社)など。
[email protected] 井上創 造 (いのうえそうぞう)
九州大学附属図書館研究開発室准教授。平成 14年 九州大学大学院システム情報科学研究科博士後期 課程修了。博士(工学)。データベースシステム、
RFID情報システムのセキュリティ/個人情報保護/
信頼性に興味を持つ0日本データベース学会
(DBSJ)、情報処理学会(fPSJ)JEEE、ACM会員.
[email protected]仙aCJP
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