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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

“Peasant”とは何か : その概念と研究の視点

松永, 和人

福岡大学

https://doi.org/10.15017/2231519

出版情報:九州人類学会報. 2, pp.29-34, 1974-10-01. 九州人類学研究会 バージョン:

権利関係:

(2)

"P e a s a n t 

u

と は 何 か

ー そ の 概 念 と 研 究 の 視 点 一

福 岡 大 学 松 永 和 人

1.

近時、とく Kアメリカの文化人類学

κ

ぉ、いて、" Peasantu (「農民 J)ないし" Peasant Society≫ (「農民社会 J)の問題がその主要な課題のーっとしてとりあげられてきているが、

その" Peasant >>ないし PeasantSociety とは何かーーその概念と研究の視点についてのべ るのが本論の目的である。そのような問題は決して最近κはじまった新しいテーマではなく、後

κ

かかげる RobertRedfiel dの著作などKすでにその例をみるのであるが、従来、その

"'Peasan t の用語が" Folk≫ と混用されているむきもあるので、まず、その用語の問題から のべること

κ

したい。

2.  Folk

泊と

S Peasant

泊と

a Fanner

まず、" Folk句用語であるが、 GeorgeM, Foster Kよれば〔叫の用語が文化人類学上の 用語として出現したのは Wiam G.  Surnne rの" Folkway s泊(1906)からで、それが

Redfiel dの6 Tepoztlan ‑ Mexican Village ‑AStudy of Folk Life̲≫ 

(1930

κ

よって定着するに至る。それがその後も受けつがれ、同じ Redfie Id19  年の著作 The Folk Culture  of  Yucatanuを通して、 19 0年 代K及んでいる。1950

(2) 

年前後にお、ける例としては、 Redfieldの" The Folk Society  7)やFoster の" What is  Folk Culture?抽(3))などがみられる。一方、" PeasantHの用 語も、すでK阜〈、 14年の RedfieldAlfonso Villa Roja sChanKorn  Aya Village一 泊 にお付る研究課題としてと Pあげられてお.9、また、その" Peasant Village nとしての Chan Korn uは、 Redfieldの" The Folk Culture  of Yucatan ≫ 

f亡診いて、四 つの調査地(4)のーっとされている。なお•,

John F.  Embre e 19年、我が

国の農村 Suye Mura" (「須恵村J)を PeasantCommunity uとしてとらえている。

0 年代の後半~入ると、 1 5 6年『亡、 Redf .el dPeasant Society and  Culture  ‑ An Anthropological Approach  to Civilization −ー抽が出版され、

それ以後は、" Peasant泊の用語の方が" Folk凶の用語K代ってよく用いられるようになるの であるが、 9 5 0年代の前半までは、その Peasant泊の用語が" Fol k抽といわば相互交換 的に用いられ、その両者の間K、明確な概念上の区別が友されていたとはいいがたい一面も感じら れるのである。というのは、 Peasant拍の用語は、例えば、 19 4年の Redfield

‑29 ‑

(3)

Al on so Vi Ro j sとの共著( ChanKorn  ‑ Maya Vi 11 age  )に な い て、

「 ぞ れ が 、 政 治 的

κ

、 経 済 的V亡 、 現 代 文 明 の 町 や 市K依存している・……−…・という点K訟 い て....・H・−・・ be sma i,  (部族民)・・HH・−−とは異なる(5)Jとのべ、≪ Peasant  Society" 

が 閉 鎖 的 念 社 会 で は な く 外 社 会 ( 国 家 や 都 市 ) vc自 己 を 飼 い て い る ζ と を 指 摘 す る こ と Vて よ っ て 、 そ の 明 確 な 概 念 規 定 を 行 っ て い る の で あ る が 、 一方、 Fo"の方は、その概 念 上 、 必 ず し も 明 確 で は な い の で あ る 。 19 3 0年の Redfieldの著作(≪ Tepoztlan  Mexican Village  ‑ A  Study of  FolLif e一泊)に訟いては 「真の意味での原始 的危人々( truly  primitive) Jと「西欧文明との適応( an adjustment with Western  civilization) Jをなし「現代的な社会的・経済的秩序K組み込まれた( interwoven with the  modern social and economic order )人々 Jの二種のグループの人々を folkpeoples拍とのべて いる(6)かと思えは、同じRedfield17年の論文( ≪切1eFolk Societyぬ) t'C .t,,いては、その

≪ Folk HJ概念をあたかも≪ tribesman凶を意味するかのように、「我々は、 FolkSociety " 

(7) 

を、小規模の、孤立した、文字を知らない、同質的な、集団結束の強い意識をもった J社会とし、ま 泊 (8)

た、「経済的vc他から独立したグループをもって idealfolk society  と考える Jとものべて (9) 

いるのである。ζの後者の限Pでは、まさt'CFosterの指摘KみるようKFolkHは≪ Primi  tive凶と同議語と して用いられている。 Folk拍のそのような用い方のほか、さらに、 ζ ζ κの べる Peasant uと同じ用い方もみられ、例えば、Fosterは、その19 5 3年の論文( ≪ 'Mlat is  Folk Culture? )でのべている文の中の6 Folk uを、その編著書≪ PeasanSociety ‑ A   Reader ‑ i,  ( )では、その用語だけを≪ PeasantK公きかえて説明して判る).() ζのよ うf亡して、要する『亡、 Folkuの概念ないしその用法は必ずしも明確ではなく、或いは、広範閣な 意味内容をもっているのであって、それが、すべての場合、 g Peasant抽と伺じ内容を意味している

とは決していうζとができない。 Redfieldt'Cおいては、その≪ Folk泊は「都市居住者jのいわば対 置概念として用いられている巾広い概念であって、そのような「非都市居住者」の概念の中K、いわ ゆるa tribesman '1とととKいう Peasant uが含まれることとなる。帥 ζのよう

κ

して、 Folk凶 と≪Peasanuとは必ずしもイクオールではなく、そのような広範囲の意味内容をもっ≪ Folk "の 概念の中で、 PeasantH、政治的t亡、経済的K、社会的K、また、文化的に、外社会との関連を 有している非都市居住者というようK、その明確vc限定された意味内容を有しているのである。

なお、≪ Peasant "と (同じく「農民Jと訳される) ≪ Farme r凶との相違点K関しては、 一例を あげれば、 Rogers,E. M. Burdge, RJ .がその共望書 SocialChange in Rural Societies u 

7 2 t'C ~'いて説明していると乙ろで一応納得されるであろう。その前者は、“ Peasant "を もって「部分的Kマーケy トを志向した( partly market ‑oriented ) J ≪ subsistence farmer " 

とし、かつ、 農業を businessenterprise iiとして営む≪ conme rc al  fanner凶と区別してい る。

ω

(4)

3.  " Peasant H の 抵 念 と そ の 研 究 の 視 点

以上の" Folk 11PeasantuFarmer11の用語の説明からずでκ"Peasant 11 Kついて大 体の准察が行われえたことと思うの2、さらに、その概念と研究の視点 Kついて少し説明を加えて b

ζ う。

"Peasant泊ないし PeasantSociety Hとは、 Fosterkよれば帥、要するκ、「原始社会 Prirni tive Society ) J、 「産業社会( Industrial Society )」などと並列的にとらえられる

「一つの主要な社会類型(AMajor Societal Type )」であるが、さら ye、BernardJ.  Siegel  は、その" Peasant 11ないし" PeasantSociety 11をもって、「部族(社会)的でもなく、産業

(社会)的でもない( nontribal and nonindustrialized)帥jとのべ、また、 EricR. Wolf  は、「原始部族(社会)と産業社会との中間K位置づけられる人々( mankind which stand  mi伽泡ybet enthe  prirni tive  tribe and industrial society ) Jで 「 原 始 的 で も な し か と い って、現代的でもない( neither primitive nor modern ) Jと説明している帥。つまり、外社会 から孤立した原始部族社会とは異なって、部分的K自己を外社会に開き、外社会との関連をも吋亡 至っている社会ではあるが、かといって、まだ、完全な意味で産業社会までKは到達してならず、

それ自身、社会的、文化的、経済的に、伝統的な内的まとまりを示している社会が" Peasant  Society >iなのである。そのような" PeasantSociety II I'(ついて、 AlfredL.  Kroeberは、「部 分文化をもった部分社会( Part ‑Societies with Part‑Cultures )」とのべている乙とは有名念 事実であるが、伺それとは、 aPeasant Society 11が自己を完全に外社会K刷 、 よ り 広 範 囲 の 社会・文化体系の一部分にしかすぎなくなっているという乙とではなく、それ自身、内的に相対的

なまとまりを示しつつ、かつ、部分的κ、自己を外社会re開いていると解すべきであろう。いずれ にしても、 aPeasant Society 11は、原始都篠社会の特質と現代社会的特質の両方をかねそなえて いるという ζKもなるのであるが、その点、 1935‑36年に、我が国の農村" SuyeMraMを 調査した Embreeは、彼がaPeasant Community uとみ在すその≪ Suye Mira II l'Cついて、要旨、

次のようにのべている納。

I" Peasant Community 11は、例えば、親密な地縁集団、強力な親族の結合、定期的な宗教 的会合、などといった文字使用以前の(文字を知らない、 prel te rate )社会の特徴を保持する一方、 それは、経済的κ、法的K、 ま た 、 教 育 ム 国 家 Kよってコントロールされている。 J

同議なζとは、地yN. DiazJackM.  Potter Janus‑faced泊とのべるζKよっ て、その二面性を指摘しているが倒、そのような6 Peasant Mないし" PeasantSociety u研究の 課題は、その二面性のダイナミックスを把湿する乙とKある。例えば、その文化的側面Kついては、

Redfieldの有名なd Great Tradition 11G Little Tradition泊或いは" High Culture 11

‑31  ‑

(5)

(1

Low Culture ≫  との簡のダイナミソクな関連将軍造の把獲であり、政治 社会的側面についていえ ば、その伝統的な組織と外社会からの或いは外社会との燭速の下

κ

ぉ・ける新しい組織との聞のダイナ ミックな関連続造の把握であり、また、経済的側面Kついていえば、その伝統的な自給自足的経済体 制!と近代的な市場経済体制との問のダイナミックな関連潟造の把援がその主要な課題なのである。

"Peasant Mないし" PeasantSociety  が関連の下Ki>'かれている外社会とは、従来の研究 K念い て、国家または都市に求められているが、その外社会が都市であれ、或いは、国家であれ、それらと の筒の6徳造的関連性11structural  relationship)帥の究明が" PeasantHないし"Peasant

Society泊研究の基本的な課題なのである。なな、その場合の都千百とは

a

量村社会の伝統的な社会・

文化体系を破援するような都市ではなく、共生的( symb i ti c )な或いは並存する( juxtapose  )  関係Ki>'ける都市であって、そのような都市とは、著書する K、「産業化前都市( Preindustrial 

I)

City )  jでるる。そのような都市との「共生的J関係、Kある重量村社会が PeasantSociety,.  という ζKなる。

以上、 PeasantMないし PeasantSociety泊研究の視点Vてついて、そのどくあらましをのべて きた。それは、要するK、経済的K、社会的に、また、文化的に、 PeasantSociety,. f'Cかける伝 統的要素と近代的要素とのダイナミックな関連構造の把握tてあった。そのような両者の関連の姿は、

当然、変化の問題でもある。 ζの点、 TeodorShaninのr" Peasantry泊は、プロセスとしてのみ、

(221 

つまり、変化Vてかいてのみ存在する jという言葉は、まさ『亡、当を得た言葉であろう。

〔 追 記 〕

以上の一般的な論述の次K、当然、伝統的な要素と近代的な要素とのダイナミックな関連の様相、

或いは、変化の具体的なプロセスをみなければならないが、紙数の関係上、省略してお、〈。なb、 本 論は近い将来東洋経済新報社から出版される予定の吉田被吾編「文化人類学読本 Jの一章「盆民 社 会 jの一部であり、また、そのとくあらましである。同宣言を執筆中、その大要を九州人類学研究 会 K提示して、いろいろな批判を求めた。その旨を ζ ζ K明記し、訟 ζとわりしてかきたい。な b、

くわしくは、同続本を参照していただきたい。

(6)

く 註 〉

之 到1eAmerican J

uxna.l

f Sociology, 

V 。 工

.L

工 工 ,

1947

,所収

!)倣への私信

4  Ciericy‑‑‑Merida 

Town ‑‑‑Dzitas 

Peasant Village ‑ ‑Chan Kom  .Triba

Village‑‑‑Tusik  (5)  Redfield, R

・ :

1934, p.l 

~6~ Redf R

・ :

1930, pp 2‑3 

7 The Americ1Journal of Sociology,  op.  cit.  p.297  (8)  ibid.  p.298 

(9

)担

ericanAnthropo

ogist, op.  ci

七.

p.162 

~io~

11

)この点に関して,

Fo G FMo

steetalr

は次のようにのべている。 ・(

eds

1967,  p

1

七histypologica

dichoto

町(つまり,

urban

d non‑urban

groups all non‑urban peoples toge

her, the mos

pr泊 itive, isolated

ribalgroups,  acculturated priitives, the mixed  rura

cu

ユ 七

uresof Latin .Ame

・ica, and the peas1tpeoples 

12) Rogers, E. M. f P

R.  J.玖ll'dMge: 1972,  p.416 

2)

Fost G

M

etal.  (eds

1967

, ト

2

14  Siegel,  :B.J.  (ed.): 1962, Foreword  l

) う

Wolf, E. R

: ・

1966,  p,vii(Preface)  16) Kroeber,  A.  L

: ・

1948, p.284 

f,f.お,Redfieldも,その者 Peasan七Societyand Culture ‑ An Anthro‑

pological Approach

oCivilization

一 (

1956

)嶋ニ斡

Peas

.try : Part‑Socie

ies

としている。

門町

ee, J.  F

・ : 吻 , ト ロ (

Preface)

18  Foster, G. M.  et a

ユ .

(eds.): 1967, p.154 

なお,

Janus

とは、古代イタリアの神で、頭の前後に顔令もっている。

(19) Redfield, R.: 1956,  p.70 

その外,

f

。 工

k1dclassic cu

tures

P

pularand learned七radi‑

~ ons

,山

r chic副 l可 c叫 t

吋 蜘

薬 開 … 似 て い

20) F

ster,G. M.  et a

ユ .

(eds.):  1967,  p.5,  p.8  21)  Sjoberg,  G.: The Preindustrial City 

( Foster, G. M. 

e

al. (eds. ) : 19

印 刷

33‑

(7)

参 考 文 献 〉

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The University of Chicago Press  Chicago, Illinois 

Foster, G. M.  1953 What is Folk Cu

ture

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Foster,  G. M., J.M. Potter & M. N.  Diaz (eds.)  1967 

Peasant Society ‑ A Readerー Little,  :Brown and Company,, :Boston  Kroeber, A. L.  1948  Anthropology ‑ Race, Lai唱uage, Culture, 

Psychology, Prehistoryー New Edition,  Revised 

Harcourt, Brace & World,  Inc. 

New York and BurlなJgaine

Redfield, .R

1930 Tepoztlan‑'‑A Mexican Villa♂ −  A Study of  Folk Lifeー

The Universi七y of Chicago Press  Chicago, Illinois 

Redfield,  R. & 心fonsoVilla Rojas  1934  Chan Kom ‑ A Maya  Village −ー.

The University of Chicago Press  Chicago, Illinois 

Redfield, R. 1941 由1eFo

k Cu

tureof Yucatan 

盟国 Universityof Chicago Press  Chicago, Illinois 

1947 The Folk Society" 

The American Journal of Sociology,  Vol. L

I

1956  Peasant Society and Culture ‑ An Anthropolo‑ gical Approach to Civi

ization‑

恒1eUniversity of Chicago Press  Chicago,  Illinois 

Rogers, E. M. & R. J. Burdge  1972  Social Chanεe幻1

ll'al Societies,  Second Edition  Appleton‑Century‑Crofts,  Educationa

Division

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Penguin Modern Sociology Readings  Penguin Books L七d.

Harmondsworth, Middlesex, Enεland  Siegel, B. J.(ed.) 1962  Biennial Review of Anthropology,  1961 

Sta.Ilford University Press  S

a.Ilford, California 

Wolf, E. R. 1966  Peas副 知 Pren七ice‑Hall,Inc. , 

Englewood Cliffs, New Jersey 

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