公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法 一四条 : 国家公務員採用III種試験受験資格確認等 請求事件を素材として
著者 浅田 訓永
雑誌名 同志社法學
巻 59
号 1
ページ 131‑171
発行年 2007‑05‑31
権利 同志社法學會
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000011145
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三一同志社法学 五九巻一号
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条
―国家公務員採用Ⅲ種試験受験資格確認等請求事件を素材として
浅 田 訓 永
(一三一) 目 次Ⅰ 問題の所在Ⅱ 国家公務員採用Ⅲ種試験受験資格確認等請求事件Ⅲ 募集及び採用における年齢制限と憲法一四条Ⅳ 本件受験資格の年齢制限と憲法一四条
Ⅰ 問題の所在
本稿は、﹁公務員採用試験の受験資格に年齢制限をおくことは憲法一四条の平等原則に照らしてどのように評価され
るべきかという問題﹂について、国家公務員採用Ⅲ種試験受験資格確認等請求事件(以下、本件とする)を素材として
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三二同志社法学 五九巻一号
若干のコメントを行い、併せて本件第一審(東京地判平成一六年六月一八日判例集未登載)・控訴審(東京高判平成一
六年九月二八日判例集未登載)・最高裁決定(最三決平成一七年四月一九日判例集未登載)を資料として提供しようとするものである (
。 1)
現在、国家公務員採用試験の受験資格には、様々な年齢制限が設けられている。国家公務員法(昭和二二年一〇月二一日、法律第一二〇号)四四条は、﹁人事院は、人事院規則により、受験者に必要な資格として官職に応じ、その職務
の遂行に欠くことのできない最小限度の客観的且つ画一的な要件を定めることができる﹂と規定している。同条を受けて人事院規則八⊖一八の七条一項は、﹁第三条第一項に掲げる採用試験﹂(①国家公務員採用Ⅰ種試験、②同Ⅱ種試験、
③同Ⅲ種試験、④国税専門官採用試験、⑤労働基準監督官採用試験、⑥法務教官採用試験、⑦外務省専門職員採用試験、⑧航空管制官採用試験、⑨皇宮護衛官採用試験、⑩刑務官採用試験、⑪入国警備官採用試験、⑫航空保安大学校学生採
用試験、⑬海上保安大学校学生採用試験、⑭海上保安学校学生採用試験、⑮気象大学校学生採用試験、⑯郵政総合職採用試験、⑰郵政一般職採用試験)﹁の受験資格は、別表第三に定める﹂としている。そして、別表第三は、各試験の受
験資格年齢を次のように定めている。すなわち、①と⑯は二一歳以上三三歳未満の者、②・⑤・⑧は二一歳以上二九歳未満の者、③は一七歳以上二一歳未満の者、④は二一歳以上二九歳未満の者、⑥は、教官Aについては二一歳以上二九
歳未満の男子、教官Bについては二一歳以上二九歳未満の女子、⑦は二〇歳以上二九歳未満の者、⑨と⑪は一七歳以上二三歳未満の者、⑩は、刑務官Aについては一七歳以上二九歳未満の男子、刑務官Bについては一七歳以上二九歳未満
の女子、⑫・⑬・⑮は二〇歳未満の者、⑭は二三歳未満の者、⑰は、﹁内務﹂については一七歳以上二五歳未満の者、﹁外務﹂については一七歳以上三〇歳未満の者に受験資格を認めている。なお、地方公務員採用試験の受験資格や民間企業
の募集及び採用においても、年齢制限が設けられている (
。 2) (一三二)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三三同志社法学 五九巻一号 本件の発端は、③の受験資格年齢を備えていないことを理由に国家公務員採用Ⅲ種試験の受験の申し込みが受理されなかったことにある。そこで、原告は、当該受験資格におかれている年齢制限は憲法一四条の平等原則に違反するとし て当該年齢制限の合憲性を争った。したがって、本件は、年齢のみを理由にして当該試験の受験の機会を与えないことは平等原則の憲法的保障の観点からどのように正当化されるのか―当該年齢制限の正当性如何―を問うものであ
る。従来、国家公務員法四四条の注釈では、﹁年齢に関する受験資格は﹂﹁長期雇用を前提に新規学卒者を中心にした定期的採用を行うとする我が国の雇用慣行に基づくものであり、その意味で社会的合理性がある (
﹂と解されてきた。そし 3)
て、これまで募集及び採用における年齢制限と憲法一四条との関係が争われた事例は存在しなかった (
を控きる。今回、本件第一審・訴が審・最高裁決定は原告の訴えでとわた関係について争これ最初の事例であるという 本で、の件が当該 4)
退けた。 現代に生きる人々は雇用との関係を通してしか生活を営むことができないといっても過言でない状況の下、募集及び
採用のあり方は日本で生活している全ての人々にとって極めて重要な意味をもつといえる。そこで、本件は公務員採用試験における受験資格の年齢制限の合憲性を本格的に検討する契機になると思われるので、以下若干のコメントと併せ
て本件の訴訟資料を掲載することとした次第である。
Ⅱ 国家公務員採用Ⅲ種試験受験資格確認等請求事件
1 事案の概要
本件は、平成一五年度国家公務員採用Ⅲ種試験(以下、本件採用試験とする)の受験資格年齢を備えていないことを
(一三三)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三四同志社法学 五九巻一号
理由に本件採用試験の受験の申し込みを受理されなかった原告(五一歳)が、当該年齢を定める人事院規則八⊖一八の
七条一項、別表第三の規定(以下、本件受験資格規定とする)の国家公務員法四四条及び憲法一四条一項違反と被告(国)に対して本件採用試験の受験資格を有することの確認を求めるとともに、損害賠償を請求した事案である。
務のめを人事院規則に委任したはな、かかる受験資格は、⋮⋮職定的務法 まず、国家公体員四四条が﹁受験資格の具 ⑴ 本件受験資格規定が国家公務員法四四条に違反するか否かについて 2決判審一第
の内容や我が国の雇用慣行等の社会情勢を踏まえて決定されるべきものであって、その判断には専門性が伴い、また、事情の変化に適切に対応していく必要があることによる﹂。﹁我が国のこれまでの雇用は、長期雇用を前提として、高卒、
大卒等の学歴別に新規学卒者等の一定年齢以下の若年層を採用して、組織内において基幹的な人材を育成していくという形態が一般的であり、そのために、新規学卒者等の一定年齢以下の若年層に優先して就職機会を与えることは、社会
的にも妥当とされてきた﹂し、国家公務員の採用においても同様である。このような﹁雇用慣行の下では、いわゆる中途採用によって、より困難で責任を伴う職務を担うのに適した人材を十分に確保することは事実上困難といわざるを
得﹂ない。﹁仮に若年層以外の者を採用するとすれば、定年制(国公法八一条の二)との関係で、組織内での育成期間が限られてしまうことにもなりかねないし、昇進や給与等の処遇の点で、本人にとって必ずしも有利ではなく、部内均
衡上の問題が生じるおそれも否定できない﹂。 もっとも、募集及び採用において年齢制限を設けないようにとする努力義務規定を設けた雇用対策法七条、国家公務
員採用試験における受験資格年齢の撤廃を示唆した平成一五年度人事院勧告などから、上記﹁雇用形態に変化の兆しが (一三四)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三五同志社法学 五九巻一号 見られる﹂。しかし、﹁基本的な枠組みは従前のまま維持されている﹂ので、﹁国家公務員の採用において、新規学卒者等を中心とする若年層に優先して就職機会を与えることが、社会的に妥当性を欠くに至っているとはいえない﹂。そし
て、﹁年齢制限により多くの人が国家公務員への道を閉ざされている﹂としても、採用後﹁組織内で経験を積み、その後に、経験や能力に応じて、上級の官職に昇進し、組織内の基幹的な人材となっていくことを前提としていることから
すれば、受験資格の有無を一定の具体的な年齢で区切ること﹂と本件受験資格規定が﹁不合理であるとはいえない﹂。よって、本件受験資格規定は、﹁長期勤続が可能な新規学卒者等を中心とする若年層から必要な人材を確保するため、
官職に応じ、職務の遂行に欠くことのできない最小限度の客観的かつ画一的な要件として設けられたものであり﹂、不合理なものとは認められない。
⑵ 本件受験資格規定が憲法一四条一項に違反するか否かについて
憲法一四条一項は絶対的な平等を保障したものではなく合理的な理由なくして差別することを禁止している。そして、⑴で検討したとおり本件受験資格規定は、不合理なものといえないので、憲法一四条一項に違反しない。
本件受験資格規定が国家公務員法四四条に違反するか否かについて⑴ 3 控訴審判決
まず、判決は、国家公務員法四四条が受験資格の具体的な定めを人事院規則に委任した趣旨について第一審判決と同様の指摘をした。そして、第一審判決で述べられた﹁雇用慣行を是認して、新規学卒者等の一定年齢以下の若年層に優
先して就職機会を与えること﹂は、﹁社会政策、行政政策としても正当視されてきたということができる﹂。また、当該
(一三五)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三六同志社法学 五九巻一号
﹁雇用慣行の下では、いわゆる中途採用によっては、受験可能な員数や人材供給が限定されるため、⋮⋮産業構造の変
化に伴う労働市場の流動的需要に即応することは事実上困難となる可能性があり、産業構造的変化の乏しかった国家公務員に関していえば若年層から国家公務員採用試験によって採用された者を時間をかけて組織内で育成していくほかな
かった﹂。仮に若年層以外の者を採用するならば、第一審判決と同様に定年制との関係や年功序列的給与体系のもとでの処遇の点で問題があることが指摘されている。以上から、本件受験資格規定についても﹁我が国の雇用や社会状況に
照らすと、合理性があったということができ、その後もこの状況が継続する中で、それなりの合理性を維持してきたものといえる﹂。
もっとも、判決は、本件受験資格規定により国家公務員への道が閉ざされる者や当該規定がなければ合格したであろう優資質者が排除されること、本件採用試験は﹁職員を組織内で育成するとはいえ将来的に重要困難な業務を遂行する
基幹的な人材となり得る者を採用することを目的とした試験ではないこと﹂などを考慮すれば、本件採用試験﹁の受験資格に年齢制限を設けることには合理性に疑問を抱く余地のある問題を孕んでいる﹂とする。ただ、それでも本件受験
資格規定は、﹁歴史的に国民社会全体としては若年層に優先して就職機会を与えて社会を安定したものとする合理性があるものとして制定され長年にわたり国民社会に受容され実施されてきたものであり﹂、﹁明らかに合理性を欠くもので
あったとはいうことはできない﹂。なお、判決は、第一審判決と同様に雇用対策法七条、平成一五年度人事院勧告に加えて千葉県市川市が職員採用試験における受験資格年齢を撤廃したことから上記雇用形態の変容を指摘しているが、同
形態は本件受験資格規定の公布及び施行当初と比べて﹁著しく変容したわけではなく、基本的に維持された状況にあ﹂るとしている。よって、本件受験資格規定は国家公務員法四四条に違反しないとした。 (一三六)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三七同志社法学 五九巻一号 ⑵ 本件受験資格規定が憲法一四条一項に違反するか否かについて 判決は、第一審判決と同様の憲法一四条論に従って本件受験資格規定が⑴で検討したとおり﹁行政施策として明らか
に不合理なものとはいえない﹂として合憲と判断し、控訴を棄却した。
かをその実質は単なる法令違反主が張するものであって、明ら、う人本高裁は、上告いの﹁件 上告理由は、違憲を最 4定決裁高最
に上記各条項︹上告理由について規定する民事訴訟法三一二条一項、二項︺に規定する事由に該当しない﹂として上告を棄却した。
Ⅲ 募集及び採用における年齢制限と憲法一四条
⑴ これまでの憲法学において、年齢を理由とする別扱いは未成年者と高齢者との関係で論じられてきた (
。未成年者 5)
を対象とした年齢を理由とする別扱いの合憲性に関する主要裁判例としては、①﹁少年に対しては、労役場留置の言渡
をしない﹂と定める少年法五四条は憲法一四条に違反するとした峰山簡判昭和三八年一二月二三日下刑集五巻一一=一二号一一九五頁、②少年法五四条の合憲性を認めた大阪高判昭和三九年三月一三日家月一六巻八号一四〇頁(①の控訴
審判決)、③軽微な非行のあった少年を少年院送致にした保護処分が憲法一四条に違反しないとした東京高決昭和四一年六月六日家月一九巻四号一一三頁、④交通反則通告制度の実施に伴い、成人ならば犯則金の支払いで刑罰を免れるの
に対し、少年の場合には少年法二〇条(﹁家庭裁判所は、死刑、懲役又は禁錮に当たる罪の事件について、調査の結果、
(一三七)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三八同志社法学 五九巻一号
その罪質及び情状に照らして刑事処分を相当と認めるときは、決定をもって、これを管轄地方裁判所に対応する検察庁
の検察官に送致しなければならない﹂)により刑事処分が付されても憲法一四条に違反しないとした高松高判昭和四六年二月五日家月二三巻八号九三頁、⑤福岡県青少年保護育成条例が一八歳未満の者に対して性行為を禁止処罰の対象と
することは憲法一四条に違反しないとした最大判昭和六〇年一〇月二三日判時一一七〇号三頁、⑥少年の保護事件に係る補償に関する法律五条一項の家庭裁判所の職権に基づく補償決定は刑事補償法上の裁判とは性質が異なるので、刑事
補償法一九条一項の趣旨を準用ないし類推適用して同決定に対する抗告・上訴を認めないと解することは憲法一四条に違反しないとした最二決平成一三年一二月七日判時一七七六号一六五頁がある。
高齢者を対象とした年齢を理由とする別扱いの合憲性に関する主要裁判例としては、⑦公証人が七〇歳に達したことを免職事由とする公証人法一五条は憲法一四条に違反しないとした東京地判昭和二七年七月二四日行集三巻六号一三二
八頁、⑧町長が町条例に基づき過員整理の目的で町職員に対して行った待命処分は、五五歳以上を基準にしてその該当者の勤務成績等を考慮してなされたとき、憲法一四条に違反しないとした最大判昭和三九年五月二七日判時三七九号九
頁、⑨五五歳定年制を定めるラジオ局の就業規則は憲法一四条に違反しないとした東京地判平成六年九月二九日判時一五〇九号三頁、⑩国立大学助手の六〇歳定年制は憲法一四条に違反しないとした東京地判平成九年四月一四日判時一六
一七号一四〇頁がある。 ⑵ 本件採用試験の受験資格年齢は一七歳以上二一歳未満の者であり、二一歳以上の者は当該試験の受験資格を有し
ない。原告の出訴時の年齢が五一歳であることに着目すれば、本件で問題となった別扱いは未成年者や高齢者の範疇にも属さない﹁非高齢成年者﹂を対象とした別扱いである (
対成に疇範なた新ういと﹂者年齢高非﹁は件本、で味意のそ。 6)
する別扱いの問題を提起したということができる。そして、学説においても﹁非高齢成年者﹂を対象とした年齢を理由 (一三八)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一三九同志社法学 五九巻一号 とする別扱いはほとんど注目されてこなかった。ただ、一九九九年の松井茂記﹃日本国憲法﹄では、(憲法の体系書の中でおそらくはじめて)﹁公務員試験の受験資格にある年齢制限﹂に﹁合理性が認められるかどうかかなり疑問に思わ
れる (
試をい扱別るすと由理齢合年たしと象対を﹂の憲年と入の部学医、てし例性事の近最たれわ争が者成高非、﹁おな 齢 ﹂、憲が限制該当れりおて一さ摘指と法題四意。るいてれさ識は条とこるなと問の 7)
で年齢を理由に不合格とされたとして五六歳の女性が群馬大学に入学許可を求めた訴訟がある。前橋地判平成一八年一〇月二七日判例集未登載、東京高判平成一九年三月二九日判例集未登載は、原告の訴えを退けた。
⑶ さて、最高裁は本件で問題となった別扱いを憲法問題として捉えなかったが、本件を憲法学的に検討すれば次のような諸論点が問題となろう。学説は、平等原則について定めた憲法一四条一項は合理的根拠のない別扱い(=差別)
を禁止したものだと解し、合理的根拠のある別扱いは許されると解してきた (
的が一条四一法憲い後扱別該当、は項段学条会社、別性、信列、種人(由事挙説、合違われる場の憲審査基準について 、題問。てしそなとがる別扱いの合憲性争 8)
身分、門地)を理由とする場合には﹁厳格な審査﹂テストを適用するか、あるいは同テストと﹁厳格な合理性﹂のテストを使い分けて適用し、同事由以外の別扱いには﹁合理性﹂のテストを適用する傾向にある (
。年齢は同条一項後段列挙 9)
事由に明記されていないが、憲法解釈論上﹁年齢が︹憲法一四条︺第一項後段列挙事由である﹃社会的身分﹄にふくま
れるのかどうか、年齢が﹃うたがわしい分類﹄にあたるのかどうか、年齢による区別が﹃合理的﹄とされる場合はどのような場合なのか (
。摘るきでがとこるす指を点論諸たっいと﹂ 10)
年齢が﹁社会的身分﹂及び﹁疑わしい分類﹂に含まれると明言する学説は現在のところみあたらないが (
準合査基さには﹁理憲性﹂のテストが審違用と説るすとるれするる別扱いに対す適 ( 由理を齢年、 11)
用﹂適がトステの性理合な格厳﹁と 12)
されるとする説 (
判の条論に関して、判決表一現からみる限り、両四法件憲分かれている。本第と一審・控訴審判決のに 13)
(一三九)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一四〇同志社法学 五九巻一号
決には差異(﹁本件受験資格規定は、不合理なものといえない﹂︹第一審︺と﹁明らかに不合理なものとはいえない︹控
訴審︺)がみられる。もっとも、両判決は﹁区別の合理性の一般的な審査基準について﹂﹁特に明示することなく、具体的事件ごとに区別の合理性を審査するという (
。念るうし測推とのもたいおに頭を論条四一法憲の裁高最の来従﹂ 14)
本件第一審・控訴審判決は当該別扱いを簡単に合憲と判断したが、募集及び採用における年齢制限は個人の生計に強い影響力を与える不利益的取り扱いである。雇用対策法七条(﹁事業主は、労働者がその有する能力を有効に発揮する
ために必要であると認められるときは、労働者の募集及び採用について、その年齢にかかわりなく均等な機会を与えるように努めなければならない﹂)は努力義務規定ということもあってか (
、﹄く多が集募たっいと下以歳〇三﹃にだまい、﹁ 15)
ハローワークの求人でも﹃年齢不問﹄は五割弱にとどまって (
こでわかかもにたき募ず応ばれけなが限ら、齢き。るあでのいなで一がとこるす募応切制年なりまつ。うよえいとい、 は歳〇三就でれこ、り上以職の求職者の﹂は未だ容易でお 16)
のような場合、たとえ﹁合理性﹂のテストが妥当するとしても、募集及び採用における年齢制限(本件受験資格規定)は、正当な立法目的と合理的に関連しているかどうか、より厳密に審査されるべきではなかろうか (
。(なお、ハローワーク 17)
における求人の五〇%は年齢不問であり、すべての職業において年齢を理由に応募の機会が否定されているわけではない、つまり希望する職種に応募できないだけである。それゆえ、本件受験資格規定の合憲性審査を厳密に行うべきとす
る本稿の立場の論拠として個人の生計への影響以外にさらなる説明が必要かと思われるが、なお今後の課題としたい)。
Ⅳ 本件受験資格の年齢制限と憲法一四条
⑴ 本件第一審・控訴審判決の問題点は、これら判決のいう雇用形態(﹁長期雇用を前提として、高卒、大卒等の学 (一四〇)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一四一同志社法学 五九巻一号 歴別に新規学卒者等の一定年齢以下の若年層を採用して、組織内において基幹的な人材を育成していくという形態﹂)に依拠して本件受験資格規定の合理性を認め、その合理性判断が平等原則の憲法的規律をも免除されるとしていること
である。これまで判決のいう雇用形態が本件受験資格規定の正当化根拠として一般的に正しかったとしても、雇用形態の変化に伴い本件受験資格に年齢制限をおくことの合理性について議論の余地があることは本件第一審・控訴審判決に
おいて認められている。実際、判決後も①民間レベル、②地方公務員採用試験レベル、③国家公務員採用試験レベルにおける募集及び採用のあり方は日々流動的になっている。①について、政党レベルでは民間企業の募集及び採用におけ
る年齢制限を原則禁止する方向で検討が進められ(朝日新聞二〇〇七年一月一七日︹夕刊・二面︺)、②については受験資格年齢の上限を引き上げる地方公共団体 (
。制るれらみが例るす廃撤を限齢年にうよの市川市県葉千や 18)
さらに、③については二〇〇七年秋に通常の試験とは別に中途採用者選考試験(再チャレンジ試験)が行われる (
いフ採用策﹂であると同時にリ中ーターらの再起を念頭にお途のに代である。人事院の説明よると、この試験は﹁三〇 予定 19)
て実施されるものだという。具体的には、二九⊖四〇歳の者を対象に行政事務(国の官署における一般の事務または技術的な業務)、税務(税務署などにおける国税の賦課・徴収等の事務)、機械(地方運輸局などにおける自動車の検査、
整備事業の指導等の技術的業務)、土木(地方整備局などにおける河川、道路、公園など社会資本整備に関する調査・
計画・管理及び工事の監督・指導等の技術的業務)、林業(全国の森林管理局などにおける森林の保護・管理、造林などの森林施業及び指導等の技術的業務)、皇宮護衛官、刑務官、入国警備官を合わせて一五二人採用するということで
ある。①②③によって募集及び採用における年齢制限は緩和される方向にあるが、なお②と③は①や市川市の対応に比べれば年齢制限の禁止と捉えがたい内容のものである(③のように一定年齢層のみを対象とした特別の試験を実施する
こと自体、問題がないわけではない)。
(一四一)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一四二同志社法学 五九巻一号
憲法上、①②③のみを根拠として本件受験資格規定を憲法一四条違反とすることは困難であろう (
。しかし⑵で述べる 20)
ように、本件採用試験が﹁将来的に重要困難な業務を遂行する基幹的な人材となり得る者を採用する﹂ための試験でないことを考慮すれば、本件受験資格規定が判決のいう雇用形態によって正当化できるかどうかは別途検討を要するよう
に思われる。 ⑵ 国家公務員採用試験は国家公務員としての適格者を判定するために行われ(国家公務員法四五条、人事院規則八
⊖一八第二条参照)、本件採用試験は人事院規則九⊖八第三条の別表第一に定める行政職俸給表㈠の職務の級一級、すなわち﹁定型的な業務を行う職務 (
員用判決は、本件採試訴験がこのような係審控す件官職を対象とる﹂ものである。本の 21)
級の職員を採用するためのものであれば、本件受験資格規定の合理性について議論の余地があることを認めている。ただそれでも、本件採用試験で採用された者は①﹁採用後に⋮⋮上級の官職に昇進し、組織内のより困難で責任のある業
務を遂行する人材となっていくことを前提としているほか﹂②国家公務員採用Ⅰ種・Ⅱ種試験で採用された者と﹁一体となって公務を遂行することから﹂、本件受験資格規定は﹁国家公務員制度全体に関わって重要な影響を及ぼし得る行
政政策的な専門技術性を有する問題である﹂という。すなわち、判決のいう雇用形態に立脚した人材育成を念頭におけば、おそらく一七歳以上二一歳未満の者が二一歳以上の者に比べてより職務に対する順応性や柔軟性が高いことなどを
背景として、﹁新規学卒者を中心に採用する必要がある﹂という説明になるのであろう。 しかし、二一歳以上の者を採用すれば①と②を実行できる人物を確保することはできないのであろうか。①に関連し
て本件第一審・控訴審判決は、二一歳以上の者を採用すれば﹁組織内のより困難で責任のある業務を遂行する人材﹂の確保が困難であり、当該人材の育成期間の短縮を指摘している。確かに二一歳以上の者を採用すれば一七歳以上二一歳
未満で採用された者よりも育成期間は短くなるが、こうした人材の育成は二一歳以上の者であれば不可能であると言い (一四二)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一四三同志社法学 五九巻一号 切れるのかという疑問を提起することができる。一・二歳の年齢差で育成度に決定的な違いが生じるわけではないし、それ以上の年齢差がある者については公務内では得られない専門性や経験を公務に生かしうる面があることも十分考え
られる。そうであれば、二一歳以上の者であれば﹁組織内のより困難で責任のある業務を遂行する人材﹂が育ちにくくなるとはいえないのではなかろうか。また、昇進とともに﹁より困難で責任のある業務﹂になるとはいえ、二一歳以上
の者でも当該業務の遂行は可能ではなかろうか。一七歳以上二一歳未満で採用された者でないと、当該業務を遂行できる人物が育ちにくくなるとは断言できないはずである。では、仮に行政運営を左右しかつ強い影響力を与える人物の育
成についてはどうか。この場合には専門性を相当程度身につけていなければ役に立たないという観点から、育成期間があまりにも短くてはこのような人材が確保できないということがあるかもしれない。もしそうであれば、受験資格をあ
る一定年齢で区切ることも許されるのかもしれない。しかし、たとえ当該人物の育成のために新規学卒者を中心に採用する必要があるとしても、そのような人物の育成を必ずしも念頭においていない本件採用試験に関しては本件受験資格
規定が必要であるとまではいえないように思われる (
と者公家国はに中のの員上以歳一二、での務採た用体一﹁と者たれさ採用で験試種Ⅱ・種Ⅰいが定否はとこるれさ右し 年関、もてし②に行実の務方公齢遂行力が。ではなく個人差に左他 22)
なって公務を遂行﹂できる人物は少なからず存在するはずである。そうであるならば、二一歳以上の者を募集、採用し
たからといって、②の実行の妨げにはならないのではないだろうか。本件採用試験の受験資格年齢を一七歳以上二一歳未満の者に限定しなければ、なぜ②の実行が困難なのであろうか。
このような議論については、本件控訴審判決が指摘しているように﹁年功序列的給与体系の下では昇進や給与等の処遇の点で、本人にとって必ずしも有利ではなく、部内均衡上の問題が生じるおそれ﹂があるという批判が考えられる (
。 23)
つまり、上記の議論は加齢による賃金上昇の抑制が必要となるということであろう。この点、Ⅲ種職員として採用され
(一四三)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一四四同志社法学 五九巻一号
た者については、昇進の有無にかかわらず﹁ほぼ定年まで毎年の定期昇給を受け続けるため、昇給の頭打ちという事態
はほとんど起こらない (
年の制抑を昇上的功年与、給﹁は告勧院事人し職度反ムテスシる得し映に務分十を績実と責職・の ( てかつに摘指のこ、しし七。るいてれさ摘指いは﹂れ一成平。るあつつさ、証反てっよに実事と 24)
﹂の構築の必要性を 25)
述べ、平成一八年度の人事院勧告でも (
の昇勉勤び及度制給な当た新、てし反映と手の進置るいてれさ施実が措勤大拡の映反績実務推 ( 、れしそ。るいてさ績認確が性要必て実こ給実務勤のへ与﹁際らか年六〇〇二の 26)
﹂。 27)
こうした立場から本件をみれば、本件採用試験の受験資格年齢を一七歳以上二一歳未満の者に限定しようとするあまり、かえって二一歳以上で①と②の実行が可能な人物を排除してしまうことになるのではなかろうか。そうすると、当
該年齢を一七歳以上二一歳未満の者に制限する理由は本当にあるのだろうか。 ⑶ 以上のようにみてくると、本件受験資格規定は、﹁合理性﹂のテストをより厳格に適用すれば、憲法一四条違反
とされる余地があるのではないだろうか。すなわち、本件受験資格年齢を一七歳以上二一歳未満に限定することがどのように﹁組織内のより困難で責任のある業務遂行﹂にとって必要なのか明らかでないし、二一歳以上の者が国家公務員
採用Ⅰ種・Ⅱ種試験で採用された者と﹁一体となって公務を遂行する﹂ことを妨げるような行動をとらず、公務を忠実に遂行することができるならば、国家にとって具体的な不利益はないと思われる。それ故、能力の有無に関係なく二一
歳以上の本件採用試験志願者の受験の機会を否定する理由はあるのか、本件受験資格規定が平等原則の憲法的保障に違反する可能性はあるのではないだろうか。
なお、中途採用を積極的に行うことで、募集及び採用における年齢制限の問題が解決されるわけではない。一般に中途採用は、通常の募集及び採用と違って管理職、事務職、技術職、研究職でいわゆる﹁即戦力﹂となる人物を確保する
ために行われるが、募集条件として年齢制限を伴う場合が多い (
用採年、てしと方りあの限び制及集募、てっがたし。齢 28) (一四四)
公務員採用試験における受験資格の年齢制限と憲法一四条一四五同志社法学 五九巻一号 の撤廃と中途採用を同列に扱うことは適切ではない。
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( 1本ししえた。ここに記て入御礼申し上げたい。手て件、の資料については原) 告の兼松信之氏を通じ 集全学律法解 資委員会受験齢格年人を定め事町の村い市び及県府道都、てけ受てがる夫。﹃編樹克柳=喜久田栗=修監注逸て部条につい同、とえば園た もを定めるすのとる﹂と要い件客的一画つ且的観の度限の当適つ地う一方二公を号一六二律法、日三一月)一二員務法九条項(昭和二五年 方方、地合公務員の場、﹁他こ。うろなにとるれさ討検て事し人し委職題且小最な要必上行遂の務て員と格資な要必に者験受、は会と問の力 概〇間民、おな)。頁七二︺年〇二業、堂文弘﹄︹法係関用雇Ⅰ説法企四には効お間人私の定規権の法憲、人性なけ憲このようる年制限の合齢 際は、求人にたしてとえば企業るのく多﹁然依、かてっあもとこ﹃満四こで働労﹃夫道田土﹂(い多がとす〇課を限制齢年ういと﹄でま歳あ 2定条び及集募はに者用使りよに七用法策対用雇、合場の業企間民採に規課務義力努が条同。るいてれさがお務義いなけ設を限制齢年てい)
( 〇員月報五一五(二号〇頁六照参。九四)年 ﹂と﹂るれさ容許﹁は幅とこる限を格資験受にるす齢。禁務公方地﹂ていつに止別な差齢年グロアイダ、﹁おの年採の定一はていつに験試用 5八)年青七九九一、院書林方﹄(法員務公頁地・法員務公家一国︹列、てし慮考を置配事人の型序足功年の実現、﹁は︺執英雅立筆 3=注掲前・編柳田) 栗=修監部園(
( 試限制齢年に格資験るけおに験用設採員務公﹂、らかるれらえ考とが受け納。ういとらいてっ﹂ましてし得るく﹁なれててもい我々はなんと じかように受けるのだえら差別的とはいない、も同益は、がも誰﹁は齢年利つ︺筆執田野︹頁いか九で不も益利、りあーはタクァフるす来到六 2一︺。松=進田野、おな筆二執明戸波江︹頁四茂井)記︺﹄()年〇〇二、閣斐有版編新︹学法でマネシ﹃四
( 4森社代の雇用政策﹄(日本評論、役二〇〇一年)一二〇頁。時現戸﹃英幸﹁雇用政策としての年) 齢差別禁止﹄﹂清家篤編﹃生涯
( 斐茂記﹃日本国憲法(第二版)﹄(有閣松、二〇〇二年)三八二頁参照。井 5齢堂竹、頁五四二)年五九九一、文勲弘︺﹄(版三第︹法憲﹃己正藤伊中﹁に一よる区別の合憲性﹂法学教) 八年〇号(一九九五年)五三頁、室
( 6も別齢者を対象とした扱はいの問題でもある。高限ちにろん、公務員試験お) ける受験資格の年齢制 7。年)三九五頁ま九た、同・前掲注九九) 本松井茂記﹃日国一憲法﹄(有斐閣、(
(しの法憲るいて及系言に題問のい体書別本注と﹄法憲国日と﹃井、松はてし扱ると由理を齢年でます 5もよのこ三で頁二八にう)指摘されてる。なお、これい
第許一(るいてべ述と﹂いなれさ﹁七上法憲ばれあで﹂別差な理合九九年中(Ⅰ法憲﹃の年一〇〇二︺、の執筆野新﹃憲︹Ⅰ(法版)﹄二七三頁 す不﹁がい扱別ると=高憲﹃利勝見高由之和橋=Ⅰ男睦村中=彦俊中、野ばえ法﹄(た︹理を齢年は︺筆執中野頁有六七二)年二九九、一閣斐と 12。以の文献のほか下るのとおりであ)
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