BulletinofFacultyofEducation,NagasakiUniversity:Curriculum andTeachingNQ40(2003)15‑29
教科学習 と総合的な学習に関す る一考察
橋 本 健 夫
(平成14年10月31日受理)
A S t ud yo nRe l a t i o ns hi p sbe t we e nS u b j e c tl e a r ni ● ng a ndI nt e g r a t e dl e a r n l ● ng
Ta t e oHASHI MOTO
(ReceivedOctober31,2002)
1.は じめに
戦後の教育は、その力点 を 「教 えることteaching」か ら 「学 ぶ こ とlearning」‑切 り 換 えることか ら始 まった といって も過言ではない(1・2・3)。 しか し、教 える ことを重視 す る伝 統的な教育観 も教員の社会 に根強 く残 ってお り、各学校 の教育実践 に児童 ・生徒の学 びを 中心 とした授業が多 く展開 されているとは言い難い。 また、伝統的な教育観 に対す る社会 の要求 は強 く、進学校での極端 な受験体制の容認 な どはその典型である。
一方で、社会 は経済の高度成長 を経験 し、その成熟度 を増そ うとしている。 この中で教 育 に対す る多様 な考 え方が存在す るようになった。全ての児童 ・生徒 に同様 な教 育 を行 う のではな く、一人一人の個性や関心 に応 じた教育 も必要ではないか との考え方が多 く表明 されるようになった。つ ま り、教育の量 を要求 した時代か ら、教育の質を要求す る時代 に 確実 に移 ろうとしているのである。 この状況にあわせて、学校教育 に も大 きな変化が見 ら れるようになった。平成
1 0
年度 に改訂 された学習指導要領 において、小学校か ら高等学校 に至 るまで 「総合的な学習の時間」
が新設 されたのである(4)。 このね らいは、従 来 の教科 学習の強化 を視野 に入れた上で、教育 目標 としての 「生 きる力」育成の確実な達成にある。本論文では、平成8年度か ら筆者が関わって きた長崎県の総合的な学習 に関す る実践研究 をもとに教科学習 と総合的な学習の関係及び新 しい時代 を迎 えようとしている学校教育に おける総合的な学習の時間の果たすべ き役割 について考 えでみたい。
2.
教科の枠 を超 えた学習の誕生 と変遷日本の近代的な学校教育の歴史は、明治
5
年の学制公布 にさかのぼることがで きる。近 代国家 としての体制は、欧米のシステムを移入す ることによって整 えられていたが、教育 もその例 に もれなかった。ただ、教育においてはシステムの骨格 については欧米の ものを16 長崎大学教育学部紀要 教科教育 Fh40(2003)
そのままの形で適用 したが、教育内容や方法については日本独 自の ものを構築 しようと試 み、その実現 に努力 した跡 を多 く見 ることがで きる(5)。その一つが教科の枠 を超 えた学習 の創設に向けた実践研究である。 この流れをまとめた ものが図1である(6)。
総合的な学習の時間に行われる学習 (ここでは総合的な学習 とする)は、各学校で どの ように行われたのであろうか。今 回新設 された総合的学習は、従来強調 された合科 ・総合 学習 と同 じものではない。 しか し、学校教育の中でそれ らを推進 しようとする考え方には 似通 った部分がある。 一般 に、学校教育のあ り方 を考 えるにあたって、次の三つの視点が ある。
① 日本の社会 ・文化 をどのように捉 え、如何 に継永 してい くか。
② 自然科学などの諸科学の教育は必要なのか。必要ならば、 目標や内容 をどうするか。
③子 どもの自然認識や社会認識 などの獲得過程 を踏 まえた学習はどうあるべ きか。
従来の 日本の教育においては、① と②の視点が強調 された ときには学問中心、つ ま り教 科の学習が推進 され、③の視点 とともに子 どもの生活が強調 された ときには活動中心 とし た教科の枠 を超 えた学習の展開が推進 された。
一般 に日本の学校教育 においては、伝統的に教科学習が主流 を成 して きたが、総合学習 などの歴史が全 くないわけではな く、図1に示す ようにその歴史は、Ⅰ〜Ⅳの四期 に分け ることがで きる。つ ま り、初めて教育 を子 どもの側 か ら考 える必要性 を認 め始 めた時代 (Ⅰ)、子 どもにとっての学習は生活 に即 した ものでなければならない とし、彼 らの自主的 な活動 を組み込んだ学習 を展開 した時代 (Ⅱ)、民主国家の建設 には 自 らが考 え判 断す る 能力が育成 されなければならない として、子 どもたちの生活の場 を取 り上げて学習が展開 された時代 (Ⅲ)、そ して、多様化 ・国際化 してい く社会 を生 き抜 く力 を育 て るため に敬 科の枠 を超 えた学習の場の必要性が指摘 された時代 (Ⅳ)である。
奉時代にお中.纏 食,p食料学習串. 唾蝉教育あ軒卓二
申
蹄 .申喪早級期・= ・「宇和」公布 (5年). ・.・.prr庶物示科学入門双教」や碍介.着J=の教科書への使用
戟
級. ・ゴア.・食料.地合学習の棚カリキュラムの垂 = コ 1(Ⅱ , ・・・・生汚甥 主串紛な坤科観官q低学年痩科も探究学習系統学習 ((単元芋乳.知粍▲と聞趣脱毛お由る食軌.頻能重視)学習)儲合学習)等入
辛 ・.sT.宮坂官や環境教育の預細L (Ⅳ) ・.鹿学年理科■の廃止と生絹科q)挺生.
図
1
日本における合科 ・総合学習及び総合的学習の歴史橋本 :教科学習と稔合的な学習に関する一考察 17
(1)戦前における教科の枠 を超 えた学習の実践
教科の枠 を超 えた学習の歴史は図1に示す ように、大 きく四つの時期 に分けることが で きる。 まず 日本で最初 に教科の枠 を超 えた学習 を実践 し、その普及に努めたのは樋 口 勘次郎氏である。 この時代 には、ユ ンゲの 「生活共存体説」やベイリーの 「自然科」が 紹介 され、学問体系 をもとに した学習 とは別に、子 どもたちの生活 をもとに した学習の 組み立てが可能であることも示 された。こののち、教科学習 とは異 なる観点か ら学習の 充実 を図るという観点か ら、い くつかの学習が提案 された。
(2)戦後直後に行われた生活単元学習
敗戦 にともない、米国の教育思潮が持 ち込 まれた。これはデューイの考 え方に沿った もので、子 どもたちを中心 とした教育 を行わなければならないという考え方の採用であっ た。従 って、教材 としては、子 どもたちの生活に即 したものが選ばれた。 この学習は、
一般 に生活単元学習 と呼ばれ、強力 に推進 された。ここでは教科の統合 とい うことより も、生活の場 を様々な教科で活用するといった形態が取 られた。学習過程 においては子 どもたちの活動が前面 にすえられた。この点では稔合的な学習 と相通 じるものがある。
(3)昭和
6 0
年代以降の教科の枠 を超 えた学習の実践A.
生活科の出現低学年の教科の再構築 を促 した昭和
61
年4
月の臨時教育審議会第2
次答 申を受け工 数育課程審議会 は、昭和6 2
年1 2
月に、小学校低学年 に 「生活科 (仮称 )」の設置が適当であると答 申した。その趣 旨とね らいは次の ようになっている。
①低学年児童の発達上の特徴 を考慮する。
②社会及び自然環境 を一体的かつ 自己 との関わ りで捉える。
③生活 に必要な習慣や技能を獲得する。
④ 自立への基礎 を養 う。
この ように小学校低学年に限った形ではあるが、教育の主体 としての学習者の発達 過程の特性や 日常生活の遂行のための基礎技能の修得等が前面 に打 ち出されて、生活 科が出現 した。これによって昭和40年代か らの教科の枠 を超 えた教育の必要性 につい ての議論 は一応の終止符 を迎えたが、学校教育をどのように捉 え、将来に向けての設 計 をどのようにするか という基本的でかつ厳 しい新たな議論 を生 じることとなった。
B.
環境教育の推進生活科の新設 とほぼ期 を同 じくして環境教育の推進が強調 され始めた。この時期に、
環境教育指導資料が示 され、全国的な環境教育の実践研究の展開が始 まっている。指 導資料の中で、環境教育推進 にあたっての考え方が次のように述べ られている。
①環境教育の 目的は、環境問題 に関心 を持ち、環境保全 に取 り組む人の育成である。
②環境教育は、あ らゆる年齢層 に対 して体系的に行 う必要がある。
③環境教育は知識の習得 にとどまらず態度の育成 を目指す ものであるが故 に、科学 に 根 ざした総合的、相互関連的なアプローチが必要である。
④環境教育は、消費者の視点 をも併せ持つ。
18 艮崎 大学教育学部紀要 教科教育 柚140(2003)
⑤環境教育は、地域課題からの取組みが重要 となる。つ ま りThink Globally,Act Locallyが求められる。
生活科 と同 じような教科 を超 えた総合的な学習内容 を明示 しなが ら、環境教育の推 進にあたっては、「環境科」 とも言 うべ き新 しい教科は設けられず に、従来の教科で それぞれの課題 に対応するとされた。この方針 は、環境問題 を自分のものとして捉え、
環境の保全 を考える上で有効だったのであろうか。 その一つの答えが、総合的な学習 の時間の 「環境」というテーマの例示 なのか もしれない。
C.
総合的な学習の時間の創設平成
1 0
年の学習指導要領の改訂で、小学校か ら高等学校 に至 る全ての学年に総合的 な学習の時間が設けられた。これは、「知識 を一方的に教 え込むことになりがちであっ た教育か ら、自ら学び、自ら考える教育‑ と、その記帳の転換 を図 り、子 どもたちの 個性 を生か し、学び方や問題解決型の学習に じっ くり取 り組むことがで きるようにすることが重要である。」 との中央教育審議会の答申に沿った ものである。
このような学習の必要性については、かな り前か ら議論 されて きた。それは、学校 で獲得する知識や技能が学校内にとどまり、社会生活や自己の生 き方に関わることが 少ないとの反省に立ったものである。 従って、学ぶことの意義を実感 させ、生 きる力 の育成に大 きく関わることが求め られているのが、総合的学習の時間に行われる学習 であ り、教科学習の枠 を超えることはもちろんのこと多様な学習形態が求められるの である。
この学習の成否は、今後の学校教育のあ り方に影響 を及ぼす大 きな要因となる。 そ こで、自ら関わってきた長崎の小学校か ら高等学校 までの総合的な学習の先行実践研 究の中で、実践的に追求 して きた総合的な学習 と教科学習の深化及び連携 について言 及 したい。
3.学習指導要領 (平成10年改訂版)に示 された教育課程
平成
1 0
年に改訂 された学習指導要領では、「生 きる力の育成」が前面 に掲 げ られ、学校 教育の新たな軸 として 「総合的な学習の時間」
が教育課程 に組み込 まれた。この学習指導 要領に盛 り込まれた方針は図2
に示す形でまとめられる。ここで示す ように4
つの側面か ら生 きる力の育成の達成 をうたっている。 ここで大 きな役割を果たす ものが前述 した総合 的な学習の時間であ り、この時間に行われる総合的な学習の成否が 目標達成の一つの鍵 を 握ることになる。 小学校 における教育課程編成の変化は図3に示 しているが、従来の特活、道徳、教科の三本柱 を 「総合的な学習の時間」 という新 しい柱 を加えることによってそれ ぞれを有機的に融合 し、力強い教育課程‑の衣替えを図った もの と受け取っている。
橋本 :教科学習 と畿合的な学習に関する一考察 19
図2 学 習 指 導 要領 (平 成10年版)
従 来 の 小 学 校 の 教 育 課 程 平 成 14年 度 か らの 小 学 校 の
(》調和の取れた人間の育成
② 主体的 に対応できる能力 の育成
③ 基礎基本の指導の徹底
(か豊かな人間性をもった日 本人の育成
② 生きる力の育成
③ 基礎基本の定着と個性を 生かす教育
⑳ 創意工夫を生かした特色 ある教育の展開
図3 小学 校 の教 育課程 の変化
20 長崎大学教育学部紀要 教科教育 Ph40(2003)
4.
総合的な学習の時間の先行実践研究(1)た くま しさを育てる体験的学習活動
長崎県においては平成
8
年度か ら3
年間、上記 をテーマ とした実践研究がなされた。当初 は教育課程 における時間配分や時間数の関係上、総合的な学習 とは切 り離 して行 う とのことであったが、研究最終年の平成
1 0
年の学習指導要領の改訂 を視野 に入れなけれ ばせ っか くの研究の成果が生かせな くなるとの判断か ら、総合的な学習 を前面 に出 した 研究になった。ここで言 うた くましさとは、「生 きて働 く力」 と規定 され、研 究推進 の 根本的な考え方の概要は図4
に示 されている(7)0r たくま.し さ を 育て る 体 験 的 学 習活動 、\‑㌔
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教科 教科 教科 道徳 特活
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教科 教科 教科 道徳 特活
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図
4
た くま しさを育てる体験的学習活動の基本的な考 え方図
4
に示す ように、それぞれの教科の学習 を縦系 として捉 え、体験的な学習活動 を横 系 に して、それぞれの教科学習の成果 を有機的に結合 させ、学校教育全体 として 目標 と いう布 を織 るとい う考 え方が実践研究の基本であった。ただ、総合的な学習の時間の開 設が予測 されるものの、具体像が示 されていない時期であることや、当時の学習指導要 領 による学習時間の制約が存在すること、さらに各学校のおかれた状況が異なることな どか ら研究のテーマの設定や実践研究の進め方などは各学校 の自主的な判断を尊重する ことになった。この先行研究の実施 にあたっては、従来の学校内組織では対応することが不可能 とい う判断の ものに、図5のような体験的学習活動のための組織 を可能な限 り作 ることにし た。図5か ら読み取れるように、その組織は二つの側面 を持 っている。一つは学校内の 研究推進母体 とな り、 もう一つは地域社会 との連携 ・調節の役割 を担 うものである。 前 者は従来の研究にも見 られた ものであるが、後者は新 しい試み として設け られた。 これ は、地域の特徴 を生かす学習のためには、地域社会の協力や後押 しがなければ未熟 な児 童 ・生徒の活動 を見守 り、育てることがで きない との判断 と、学校が児童 ・生徒の保護 者だけでな く地域全体 に教育理念やその内容 ・方法 を発信 し、学校教育‑の理解 を得 な ければ教育の質的な変換が図 られない との判断か らである。
橋本 :教科学習 と怠合的な学習に関する一考察
図5 た くま しさを育 て体験的学習活動の学校組織
21
この地域 との連携 ・調節組織 の立 ち上 げによ り、図
6
の ような地域 とのネ ッ トワーク が構築 され、地域 の人材 の学校教育への登用が円滑 になった。図
6
学校 と地域のネ ッ トワークこの先行研 究 に参加 した一部の小 ・中学校 のテーマ を示 した ものが表1である。 ここ か らわか るように郷土 の特色 を生かす学習が ほ とん どを占めてい る。 これは、体験活動 を効果的 に行 うには、地域 の持つ教育力 を生かすのが最適であると判断 した学校が多かっ た ことを示 している。
これ らの実践 には多 くの困難があ り、当初 はつ まづ きも多かったが、二年 日、三年 目 にはその意図 も浸透 し、児童 ・生徒 の生 き生 きした顔が随所 に見 られるようになった。
22 長崎大学教育学部紀要 教科教育 Ph40(2003)
表1 た くま しさを育 てる体験的学習活動のテーマ
実践小 .中学校 学習のテーマ 研示分類
長崎市立桜町小学校 長崎のよさをみつけよう 郷土 佐世保市立針尾小学校 針尾の歴史 .自然 .文化 .生清とともに 郷土 .福 祉 三井楽町立浜窄小学校 ふるさと大好きチャレンジャー 郷士 芦辺町立EE)5'可小学手交 弥生人になろう 郷土
鷹島町立鹿島中学校 元冠の歴史と郷土を語れる生徒の育成 郷土 小浜町立北串中学校 「諏訪の池」環境字習 環境
嘩 町立西部中学校 わくわくタイムにおける体験的学習活動 郷土
(2)教科再編 のための教育課程の開発
この研 究 には、平成
1 0
年か ら1 2
年度 にかけて長崎大学教育学部附属 中学校 が文部省 の 研 究指定校 として取 り組 んだ ものである。 研 究の 目的は次 の学習指導要領の改訂 に備え、現在 の教科 をどの ように再編す ることがで きるか を実践 の中か ら追及す る ものであ り、
現在 の教 育課程や時間配当 を大幅 に変更 して行 われた(8)0
附属 中学校 における研 究の概要 は、その報告書 に記載 されている図を もとに して作成 した図7に示す とお りである。
図7 教科再編の ための教育課程 の開発研究の概要
橋 本 :教科学習 と稔 介的な学習 に関す る‑・考察 23
図7に見 られるように、試み られた教育課程 は必修教科 と総合実践 の時間及び選択教 科か ら成 り立 っている。必修教科 は従来の教科の役割 を果た し、総合実践の時間は道徳・
特別活動の充実 を図る もの として構想 された。そ して選択教科 は、平成
1 0
年度改訂の学 習指導要領 に盛 り込 まれた教科 の枠 を超 えた学習 と同様 なテーマ学習が展開 される もの とされた。 この三つの柱 をもとに教育 目標である 「自分のよさを生か し、人類や社会の 発展のために貢献す る人間」の育成 を図ろうとしたのである。 この教育課程 は、附属中 学校 の報告書 に示 された図を借 りて示す と、図8
になる。【選択
教 科 】
‑
罰 i 芸 i i ■ ■ ■ 野 . 面 芸 詣 岳 瞳 警 盛 ‑ ‑ 一■■■■一一一一一一一■
敦科ゼミ̲ 2‥世紀津軽/卒顛 L
r■「
tL
自一分めよきを生かし.、人類や社会¢発展めために責献する人間
【必修教科】 【総合実践の時間】
I.〔 ‑
〟 紳
語惇教
科横断的.紬
纏 綿土 鴫
合科霊
学習 一昔 楽縮 美 体
膏奉 現 ‑
革礎 隻;舌関連
L P 芸 術
人間としての生き方学習ー
図
8
教科の再編への道 を拓 くための実践研究で用い られた教育課程 この実践研究で用いられた教育課程 につい て生徒が どの ような印 象 を持 ち、 どの ように 取 り組 んでいるかにつ いて調査が行 われた。 その結果は研究報告 に 詳 しいが、選択教科へ の取組み状況 について まとめ られた一つが図
9
である。現在選択している教科の学習活動に意欲的に取 り組んでいますか.
OI 20% 40% 60% 80
t
1001
交 涜 地 域 生活環 境
捻含芸繊 l l t ■意欲的ではロ大変意欲的■意欲的であ囚あまLであるる的ではないない)意欲 藁̲̲賛 妻
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図9 選択教科への生徒の取組み状況
24 長崎大学教育学部紀要 教科教育 恥40(2003)
この ように、生徒が 慣れ親 しんで きた教科 を大幅に変更 した上での実践研究であった が、総合的な学習の色彩 の濃い選択教科の評判は良 く、意欲的な取 り組みが行われてい た。また、前述の研究推進のための学校組織 について も同様 なものが作 られ活用 された。
(3)高等学校 における総合的な学習の時間のための先行研究
これは、平成11年度か ら13年度 にかけて行われた文部科学省指定の実践研究であ り、
高等学校 における総合的な学習の展開 ・充実 を意図 した ものである(9)。そのため に、個 別のテーマ としては
『
「総合的な学習の時間」 を全生徒 ・全職員の もの にす るため に』が掲 げられた。ここでは、3年間を見通 した能力の育成がそれぞれの学年 に必要である との判断か ら、1年生は 「情報収集分析力」、2年生 は 「課題解 決能力」、3年生 では
「表現力」 とされ、それぞ町 こ沿ったテーマ と学習内容が選択 された。学校組織 と して は上述の もの と同様 なものが作 られ、生徒の活動 を支援 した。
この実践研究の際に掲げられた各学年のテーマを示 した ものが図
1 0
である。 このよう に一年次か ら三年次 にかけて、情報収集分析力、課題解決能力、表現力の3つの能力の 育成が順次図 られるような実践研究の展開となった。 これは、実践校が島峡部 にあ り、進学希望 と就職希望の生徒が混在する中で、高校時代の三年周 に培 うべ き基本的な能力 は何か とい う議論の結果、生み出された ものである。また進学や就職に対する準備状況 を大 きく変えることな く、学習指導要領 に盛 り込 まれたね らいの達成 も図 りたい との学 校 としての判断 もあった。一年次か ら三年次 までの総合的な学習の時間の展開をまとめ た ものが表2‑表 4である。
ここに示 されたように、一年間を通 して生徒たちは教員の支援 を受けなが らもそれぞ れのテーマに沿って学習活動 を行い、学年末の発表会 に向けて研究の進展 をまとめてい
くことになる。
この中で上述 した小学校 ・中学校 における総合的な学習 と非常 に良 く似たテーマを取 り上げ、学習 を行 ったのは
2
年生であった。そのテーマの一部 を紹介すると図1 5
のよう第
3
学年これまでに身につけた能力を生かしてディベートを行い、響
図10 各学年で育成 すべ き能力 と学習テーマ
になる。
これ らはいずれ も地 域の中に存在する課題 を環境や福祉 などの視 点か ら切 り込 もうとし た ものである。生徒た ちは自分たちのテーマ の解決に当初 はとまど いなが ら、教点や地域 の支援 を受けて地域の 支援を受けて立ち向かっ ていった。小学校 ・中 学校 と大 きく異なる点 は教科学習の知識 を活 用 しつつ前進 しようと
橋本 :教科学習 と麓合的な学習に関する一考察
表2 第 1年次の総合的な学習の概要 表3 第 2年次の総合的な学習の概要
学習のテーマ 上五島高校をもつと魅力的な学校にしよう!
アプローチの視点 施設もマナー、科 目や授業形態、行事.遭嬢.
部活動などの改善
最終形態 上五島轟校を魅力ある学校にするための提 吾を冊子にまとめ、発表
実施時間 毎埠金曜 日の6校時(即時rLl)
指導方法 前期 :後期 :クラスの堺を基本とし、担任.. 副担任 によるチームティーチング 中間発表の後、クラスを解体し.班別 テーマごとに6ゲル‑プに再編 各グループは2‑3人の教師による
表4 第 3年次の総合的な学習の概要
学習のテーマ 社会と自分
アプローチの視点 地域のためた自分は何をできるか
最療形敏 祭 (2回のディベート大会 (代表生徒)小論文を作成し、クラス別の各学級)および文化 .小論文集としそまとめるC
実施時間 1学期集中牢鹿
毎週水曜 日か木曜 日に週平均2‑3時間 (車扱単位)
ディベート大会は1日に3時間、2日連続で 実施
25
学習のテーマ 上五島蔦校をもつと魅力的な地域た ! アプローチの視点 国際化.情報化、環境、福祉、郷土研究 最終形態 ふるさと活性化のアイデアを冊子にまとめ、
埠域公開発表会で提言
実施時間 基本的には毎週水曜 日の活動内容に応じ3つの合併クラス(6校時(過ブロック).1時間). こii成
Aブロック(1‑3組)、Bブロック(4.5組)、Cブロック(6.7組)
指導 方法 各ブロックをさらにいくつかの学習テーマ.分け、それぞれを1‑2人教師が担当 に 一人の教師の担当する班は2.‑3班
表
5 2
年生が追求 したテーマ (一部)環 境間
盈 海の ゴミについて 郷土 上五島の新 しいお土産を作 ろ う 船崎海水浴壕の砂の漉 上五島観光モデル コ‑
少について 柿究 スの考察
洗濯水準の向上‑合成 上五島の経済の活性化 洗剤のあ り方‑ について
酸性雨について 祉鍾福康 上五島の少子化の現状と今後の対策 国
際 1.t 価
罪 メディアから見る上五島 21世紀の老人ホーム
す る姿であった。特 に表5中にある 「船崎海水浴場の砂 の減少 について」のグループは、
理科 の教員の支援 を受け、水槽 内に海水浴場 の模型 を作 り、波の働 きや砂 の動 きに関す る実験 を繰 り返 しては、現地に赴 くといった形で追究 を進めた。そ して砂 の減少 を食い 止めるには新 しい堤防の建設が必要 なのではないか とい う説得力のある結論 に達 した。
この過程で見 られた彼 らの努力 は素晴 らし中った。彼 らは、理科で獲得 した知識 を駆 使 し、不足す る部分 については積極的に教 えを乞 い、結論へ向けて活動 し、説得力のあ る結論 を導 き出 した。 ここに教科学習 と総合的な学習の結 びつ き、或 いは連携のあ り方 を考 える一つの視点 を見 出す ことがで きる。
この実践研究の中で、総合的な学習 に対す る生徒 の印象 も調査 された。 この一部 を、
データを借 りて紹介す る と図11‑図14になる。
5.
総合的 な学習の教育的魅力この ように児童 ・生徒が積極的に取 り組 む稔合的な学習の魅力 は何 だろうか。 まず、彼 らの興味 ・関心か らこの学習 を始め られるとい うことである。 しか しそれだけでは学習活 動の維持 にはつなが らない。活動の連続 を生 む力は新 しい ものの発見 とい う成就感が連続 す るとい うことであろう。 そ して最終的には自己が発信で きる ものが作 り出せ るとい うこ
2 6
長崎大学教育学部紀要 教科教育 Th40(2003)図11 総合的な学習への取組み
授業の進め方は、.従来の「教科の授業」と「総合的な学 習の時間」の どちらか好きですか8
23年年
1年
0
l 】 1 l OI言1 l l
図13 総合的な学習の受け取 り方
図12 総合的な学習への興味
1年、2年、3年のうちどの学年が最も興味深く取り組め ましたかo(3年生のみ)
3年0 I 0‑冒
I
図14 各学年の総合的な学習への取組み とにあると考えられる。 この自己発信 と自己完結が総合的な学習を支えるのである。
一万、
6
年間の三実践研究に携わったなかで、徐々にではあるが総合的な学習の進化が みられたと感 じている。 平成8
年 よりも平成1 0
年のほうが、また平成1 0
年 よりも平成1 2
年 のほうが充実 した総合的な学習が展開されている。 これは情報が多 くな り様々な検討が加 えられるようになったということだけでな く、総合的な学習の展開においては、段階的に 諸能力 を開発 してい くパ ターンが有効であることが知 られ始めた結果であると考えている。もちろんパ ターンは一つではない と考えているが、
6
年間に関わった実践研究においては、次のような順序での能力形成 を図るパ ターンでの充実が図られたと思 う。
① コミュニケーション能力の育成
②情報検索及び情報収集能力の育成
③多様な価値の認識 と自己の確立
④テーマに沿った既習知識及び概念の総合的な活用能力 と解決に向かう態度の育成
⑤成就感 をバネにした新課題発見 と教科 (理科)学習への意欲の創出
このような段階の組み合わせがい く通 りも存在すると考えられる。 この組み合わせを実 践結果の分析の中か ら捜 し出 してい くことも大切なことである。
橋本 :教科学習 と麓合的な学習に関する一考察 27
6.
教科学習 と総合的な学習平成
8
年度か らの総合的な学習の先行実践研究に関わ り、学校段階における総合的な学 習のあ り方 を追及 して きた。 その中で最 も留意 して きたのは、教科学習 との関係であった。小学校か ら高等学校 までの
1 0
年間の学校教育に新設 された総合的な学習の時間は、大 きな 期待 とともに様々な負担や不安 を学校社会にもた らした。テーマ等の例示や学校裁量の時 間の活用促進 という目安や支援 はあるものの、進級 してい く中でその学習活動 をどのよう に探化 させてい くか、学習活動の成果 をどのように高めるかなど教育現場の悩みは大 きい。この解決‑の一つの鍵 を握 るのは、教科学習 との有機的な関連 を図ろうとする努力であ る。 い くら自由な学習活動であるといって も、身についていない知識 を使わせ るわけには いかない。また、無理すれば全て教員がお膳立てをしな くてほならな くなる。 一方で子 ど もたちはどちらか と言 えば自分たちの興味関心の高いテーマを選びたい とい うのが真実で ある。 時間や財源的な問題 も浮上することであろう。 このような時、 もう一度足元 を見る ことが必要 になる。学習 に取 り組 もうとしている子 どもたちに備わっている力、開発 され うる能力などの見極めが必要 となる。
今 ここで必要 なのは、明 日の総合的な学習をどうするか とい う議論ではな く、 どの段階 の子 どもたちにはどのような能力が身についているのか という冷静な分析であ り、学校の 教育 目標 をどのように達成 させるか という明確 な計画の構築である。
この際一つの 目安 となるのは、この
6
年間に行われた実践の中の反省や検討事項である。特 に、高等学校 のところで述べた海浜の砂の減少 を食い止めようとい う学習での生徒の取 り組みは、い くつ もの示唆 を与えて くれる。それは次のようになる。
①テーマの解決に向けて どのような教科の知識が必要なのかを知 ることの重要性。
②獲得 しているい くつかの知識 をどのように組み立てなければならないかを知ることに よって生 まれる前向 きな姿勢。
③屋外活動だけでな く室内活動 としての実験等の重要性 を知 ることでの屋内外での活動 を円滑 に進めようとい う納得。
④教月が積極的に関わることによる信頼感の育成。
⑤地域の人々の期待 を知 ることによる満足感。
これ らが総合的な学習の充実、あるいは教科学習の深化への重要な要素 となる。 このよ うな実践の成果 をその学習が行われた場 だけの ものにするのではな く、記録 し、積み重ね、
児童 ・生徒がそれ らを知 ることによって稔合的な学習の深化 と広が りが可能になる。
7.
学校 カ リキュラム と総合的な学習小 ・中学校 は平成
1 4
年度か ら、また高等学校においては平成1 5
年度か ら正式 な学校 カリ キュラムの一環 として、総合的な学習の時間が始 まる。 これまで述べて きたように稔合的 な学習は、児童 ・生徒 には珍 しさも手伝 ってか好意的に受け入れ られている。 また、それ を支援する組織の創立や地域 との連携の開始など、従来の学校教育の質を変えるきっかけ になると期待 もされている。だが、スター ト当初は好感 を持 って迎えられているが、年 を28 長崎大学教育学部紀要 教科教育 m40(2003)
経るにつれて学校教育の重荷 になるのではないか との不安 も一方ではある。
学校教育の中で総合的な学習 をどのように組み込んでい くかについては、三つのパ ター ンがあると考えられる。 一つ 目は、教科学習 と給合的な学習を全 く別なものとするカリキュ ラム編成である。 この場合、総合的な学習 を教科 とは別の視点で編成することや、教科の 枠 を考えな くて も良い とい う長所がある。 しか し、探求力育成のための手立てを別に用意 する必要がある。 二つ 目は教科学習 と総合的な学習の関連を強 くするカリキュラム編成で ある。 この場合、教科学習 を総合的な学習に利用することがで きるものの、教科の枠や範 囲に制限されるとい う短所 もある。 三つ 目は、総合的な学習 を中心 としたカリキュラムを 編成す る場合である。 ここでは学校 の特色 を出 しやす くなる反面、同地域内では同 レベル の教育 を提供するとい う学校教育のシステムか ら逸脱することも想定 される。 これをまと めた ものが図
1 5
である。Ⅰ.教科学習 と琴 合的 な学習の内達 を薄 くする場合
○癒合的な学習に とつての長所 教科学習 総合的学習 '.教科の枠から脱出できる̀.
○総合的な学習に とつての短所 特別活動 .道徳 ̲■賢 学習を離れた手立てが必
Ⅱ̲教 科学習 と捻 告的な学習の関連 を強 くする場合
教科学弓 ‑ 響 .0≡重器至芸冨謹責曇 冨≡≡
帯別活軌 .道徳 .教科学習の枠に制限される。
Ⅱ
,牧舎的な学習を中心 とする場合= 耳 二芋 ≡定 言
特別活動.道徳 ○軸捻 的な学習にとつての短所
図15 カ リキュラム と総合的な学習
このように総合的な 学習の時間の出現 は、
従来の学校 カリキュラ ム編成の考え方 を根本 的に考え直す可能性 を
もた らした。'いま、戦 後一貫 して維持 して き た学校教育の均一化‑
の批判が高 ま りつつあ る。 これは社会の多様 化 に伴って教育 も多様 化すべ きであるとの主 張で もある。 特 に、少 子化の波 にさらされて いる高等学校では何 ら かの特色 を打 ち出 し、
個性的な教育の発信が求め られている。 このような場合 には、図
1 5
のⅢのように、総合的 な学習 を中心 にすえて、カリキュラムを編成す る方法が効果的なのか もしれない。学校教育の個性化 は、教科の枠 を取 っ払い、子 どもたちが主体 となる時間の充実 を図る ことが、第一歩 となる。 その中で子 どもたちが新 しい学校像 を示 して くれるのか もしれな い。教科学習の精選充実 と総合的な学習の飛躍的な進展が新 しい時代の学校 には不可欠 と なる。
8.
おわ りに総合的な学習の小 ・中学校での完全実施 に当た り、その充実 をどのように果たすかにつ いて、先行的な実践研究 を例 に挙 げて述べて きたが、今 までの実践はあまりにも少な く、
地域的にも偏 っている。実践が増 える中、様々な反省点 を積み重ねることによって、さら
橋本 :教科学習 と度合的な学習に関する一考察 29
なる充実 を図 らなければならない。その中で総合的な学習 と児童 ・生徒の活動、及び教科 学習 との関連 を、さらに具体的に考察する必要がある。
要 約
平成
1 4
年度か ら総合的な学習の時間が完全実施 された。この学習 を支える基本 コンセプ トは、知識 を教 え込む教育か ら、自ら学び自ら考える教育への転換 を行 うことによって子 どもに生 きる力 を育成することである。 長崎県における平成8
年度か らの小 ・中 ・高等学 校での先行実践研究に関わる中で、総合的な学習に果たす教科、特 に理科の役割 を考えて きた。この中で、両者の関係 を密 に し総合的な学習の発展 ・深化するための一つのパ ター ンとして、次のような段階別の諸能力の育成が必要 と考えた。① コミュニケーシ ョン能力の育成
②情報検索及び情報収集能力の育成
③多様 な価値の認識 と自己の確立
④ テーマに沿った既習知識及び概念の総合的な活用能力 と解決に向か う態度の育成
⑤成就感 をバ ネに した新課題発見 と教科学習‑の意欲の創 出
さらに、総合的な学習の時間を教科学習の関係か ら機能する三つの型の学校 カリキュ.ラ ムを考え、考察 を加 えた。
謝 辞
本論文 を作成するにあたって、長崎県教育庁の皆 さま、先行実践 にあた られた長崎県内 の小 ・中学校、長崎大学教育学部附属中学校そ して長崎県立上五島高等学校 の各校長先生 をは じめ として多 くの先生方に協力 を頂いた。また報告書の引用 について も快諾 して頂い た。この場 を借 りて心か らお礼 申 し上げたい。
引 用 文 献
(1)神田修 ・山住正巳 :教育の理念 と権札
r
日本の教育J.pp.12‑108,学陽書房,1986(2)橋本健夫 :理科教育の歴史的変遷
,
F理科教育J.鹿利他著,pp.1‑66,東京書籍,1991(3)文部省 :学習指導要領 (試案),1947
(4)文部科学省 :学習指導要領,1998
(5)堀七蔵 :日本の理科教育史Ⅰ〜Ⅲ,福村書店.1961
(6)橋本健夫 :囲い込みの教育からの解放,平成10‑12年度科学研究費補助金報告書,pp.67‑80,2001 (7)長崎県教育委貞会 :た くましさを育てる体蒙的学習活動のすすめ,pp.1‑128,1999
(8)長崎大学附属中学校 :研究開発実施報告書,ppL87.2000
(9)長崎県立上五島高等学校 :上五島をもっと魅力的な地域に,pp.1‑65,2002