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特集にあたって

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Academic year: 2021

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雑誌名 社会科学

巻 49

号 4

ページ 1‑5

発行年 2020‑02‑28

権利 同志社大学人文科学研究所

URL http://doi.org/10.14988/pa.2019.0000000631

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特集にあたって

第 19 期第 9 研究会代表者

川 満 直 樹

1 はじめに

本特集号の 5 つの論稿は,日本商品学会第 70 回全国大会(同志社大学人文科学研究所 第 20 期第 7 研究会とシンポジウムを共催,2019 年 6 月 8 日開催)でのシンポジウム「商 品と商店―ショップとストア―」での 5 つの報告がもととなっている。また,同志社大 学人文科学研究所(以下,人文研)第 19 期第 9 研究会での研究成果の一部である。

人文研にて 1995 年から現在までの 20 年以上にわたり「商品と社会」の関係について 研究を行ってきた。その間研究成果として 6 冊の研究成果,石川健次郎編著『ランドマー ク商品の研究』①〜⑤(同文舘出版),川満直樹編著『商品と社会』(同文舘出版)を刊 行した。これまでの人文研での研究は,上記の研究成果からも明らかなように「商品」に 焦点をあて,商品が社会に与える影響を考察してきた。今回の「特集号」では,商品が 消費者に届く終着点(商店)について検討したい。

商店という言葉は,英語で「ショップ(shop)」あるいは「ストア(store)」と表現さ れる。例えば,「ショップ」では 100 円ショップ,ネットショップ,ペットショップなど。

「ストア」ではパママストア,コンビニエンスストア,ディスカウントストア,ドラッグ ストアなど。

詳しくは,小西論稿にゆずるが『ジーニアス英和大辞典』(電子辞書)によると,「ショッ プ(shop)」には小売店や商店の意味もあるが,複合語で「仕事場(物を作ったり修理し たりする),作業場」(workshop)という意味もあるとのこと。ニュアンス的には,「ショッ プ」には商品を売るだけではなく,モノを作ったり加工なども行っている小売店を指し ていると思われる。また,同じく『ジーニアス英和大辞典』によると「ストア(store)」

には,アメリカではいろいろな種類の商品を売る店のことを指し,イギリスでは大型店

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今回の「特集号」では,商品と消費者を結ぶ場所としての商店の関係を「ショップ

(shop)」と「ストア(store)」の違いを踏まえ,売られる場所(商店:ショップ・スト ア)の誕生,商店がどのように運営されているのか,商店の現状(店舗展開,市場規模,

売上高,利益額など)はどのようになっているのか,商店が社会変容に対しどのように 対応しているのか,などを中心に商店を含む小売店の歴史的変遷と現状を検討する。

2 各論稿の要約

ここで簡単ではあるが,各論稿の内容について紹介しておく。

小西浩太「ショップとストアの異同」

小西論稿は,今回の特集号の要となる「ショップ」と「ストア」の異同について論じ ている。日常生活の中で何気なく使っている「ショップ」と「ストア」という言葉であ るが,その言葉の意味あるいは使われ方は異なっているのだろうか。

本論稿では,「ショップ」は商品(財・サービス)を販売すると同時に,商品の修繕や アレンジなどの作業を提供する小売店舗,また「ストア」を比較的規模が大きく商品の 販売のみを行う店であり,取扱商品が多い小売店舗のことであると暫定的であるが結論 付けている。また,ショップとストアだけではなく,日本でよくみられる「―屋」や

「―店」などについても検討を加えている。

ショップとストアという二つの言葉の異同を検討しながら,大衆消費社会からポスト 大衆消費社会に変化しつつある現在,生産者(企業)と消費者の間に位置し商品を直接 消費者に届ける役割を担っている商店がどのように変化してきたのか,また存在意義を 検討している。

亀井大樹「パパママ・ストア」

亀井論稿は,「パパママ・ストア」について論じている。パパママ・ストアとは,家族 労働を中心に有給の常時従業員を雇用していない零細の小売店をさしている。詳しくは 本論稿にゆずるが,同論稿では先行研究をもとにパパママ・ストアという言葉が,日本 でいつごろから使われ始めたのかを明らかにしている。

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パパママ・ストアを含む日本の零細小売店は,その零細性,非効率性などが指摘され てきたが,日本の小売業の歴史を概観する上で無視することのできないものである。本 論稿では,戦後のパパママ・ストアについて統計資料をもとに,パパママ・ストアの変 遷とその特徴を明らかにしている。

水原紹「100 円ショップ」

水原論稿では,「100 円ショップ」をテーマに 100 円ショップの日本社会への普及と定 着について,そして日本社会へ与えた影響などについて論じている。同論稿によれば,日 本での均一販売の歴史は古く,すでに江戸時代からあったという。それが雑貨などを 19 文で販売していた「十九文見世」である。その後,明治に入り「1 円均一」や 10 銭スト アなどにつながっていく。

同論稿では,具体的にダイソーを取り上げ,同店の経営方法などについても検討を行っ ている。また,なぜ 100 円ショップが日本社会に定着したのか,それについても検討を 行い,その理由は,バブル経済崩壊後の日本社会の不況,デフレなどがその一因であろ う,と述べている。

鍛冶博之「日本におけるコンビニエンスストアの普及とその背景」

鍛冶論稿は,「コンビニエンスストア(以下コンビニ)」について論じている。本論稿 では,コンビニが日本で普及した経緯を整理し,コンビニが日本に普及し定着した背景 を分析し,コンビニの現状と経営戦略について,主に検討を行っている。

鍛冶論稿からコンビニが社会に与えた影響をいくつか挙げることができる。一つが消 費者への影響であり,消費者の消費という行為の利便性を高めそのことを当然のように させたこと。二つ目がコンビニの小売業界への影響であり,各店舗での単品管理が可能 となり,それによる店舗管理が一般化したこと。三つ目が,地域社会への影響である。消 費者の日常生活圏にコンビニがいくつか存在し,消費者の生活の基盤となっていること,

などである。

天野了一「ネットショップ−その誕生とインパクト−」

天野論稿では,近年,我々の生活に身近になりつつあるネットショップについて論じ ている。同論稿では,ネットショップが誕生から現在までどのように形成し発展してき たのか。またネットショップで商品を販売する事業者,ネットショップで商品を購入す

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があった。それがハガキや電話での注文販売である。手紙・ハガキ,電話・FAXなどを 利用し,消費者は店舗(小売店などを含む)に商品を注文し,店舗は注文の品を消費者 へ届ける。そしてインターネットの登場と普及により,現在ではメールやブラウザ上に あるショッピングカートでショッピングが行えるようになった。それにより消費者の購 入形態や店舗などの販売形態がどのように変化したのか,などについても同論稿では論 じている。

以上,簡単ではあるが各論稿の要約を行った。各論稿の詳細については,それぞれの 論稿を読んでいただきたい。また,どの論稿から読んでいただいても構わないが,今回 の「特集号」の内容を理解していただくためにも,ショップとストアについて論じてい る小西浩太「ショップとストアの異同」からぜひとも読み始めていただき,亀井大樹「パ パママ・ストア」,水原紹「100 円ショップ」,鍛冶博之「日本におけるコンビニエンスス トアの普及とその背景」,天野了一「ネットショップ−その誕生とインパクト−」の順番

(上記の各論稿要約の順番)で読み進めていただきたい。

3 「ショップとストア」から

「特集号」に掲載されている論稿から,戦後から平成期間を通じ現在に至るまでの「商 店(小売店)」の変化と「消費者の購入形態」の変化についていくつか特徴が明らかになっ た。

第一は,消費者の商品の購入形態の変化である。インターネットが普及する以前は,消 費者は自ら商店(「特集号」で取り上げた小売店以外にも百貨店やスーパーマーケット 等々)に足を運び,自ら商品を品定めし購入していた(もちろん,天野論稿にあるよう にハガキや電話等で注文し配達してもらうこともあった)。

商品を購入するということは今も昔も変わりはないが,インターネットが普及した現 在では,消費者はネットを通じて自宅あるいは外出先でもクリックひとつで商品を購入 することができるようになった。また,変化はそれだけではない,現在では商品を購入 していた消費者までもが,ネットを通じて容易にモノ(商品など)を販売することが可 能となった。そして興味深いことに,ネットを通じ売買を行っているものの中には,大

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学の出席カード,トイレットペーパーの芯やどんぐり(天野論稿より)などといったも のまでもが売買の対象(商品)となっている。そのような中で価値観の変容も見られ,商 品を購入する際に「商品を売ることを考えてから商品を購入する」という行動様式が誕 生しているという。

第二は,小売店の規模と小売形態の変化である。小売店の規模と小売形態の変化は関 連している。商品を売る場の中心が,零細小売(相対販売)から始まり百貨店(定価販 売)などが出現,そしてスーパーマーケット(低価格販売)の台頭,コンビニ(定価販 売)や 100 円ショップ(定価・低価格販売)の登場,そして現在ではネットショッピン グ(定価・低価格)へと変化してきているように思われる。それにあわせ,八百屋・酒 屋などの小売店が中心であったのが(業種),現在ではそれら(同じ)商品を販売する場 合でも売り方が各小売店により変化するようになっている(業態)。もちろん,それらは 各小売店の経営方針や販売方法の変化および違いをあらわし,各小売店が時代や消費者 のニーズを読み取ってきた結果とも言える。

小売店や流通などに関する研究は,これまで盛んに行われ研究成果も多く発表されて いる(各論稿の「参考文献」を参照)。「特集号」の各執筆者は,これまで商品史研究に 関心を持ち研究を行ってきた。今回の「特集号」では,商品史研究を行ってきた我々の 視点から商品が提供(売られる)される場所(小売店)を検討してきた。我々の今回の 試みを読者の方々に判断いただき,忌憚のないご意見をいただきたい。

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