「教育を受ける権利」と高等学校「総合学科」
著者 上田 伝明, 白石 智子
雑誌名 教育実践研究指導センター研究紀要
巻 6
ページ 69‑81
発行年 1997‑03‑31
URL http://hdl.handle.net/10105/4340
上 田 伝 明
(奈良教育大学教育学部)
白 石 智 子
(奈良教育大学大学院社会科教育専攻)
要旨:1993年(平5)の高等学校設置基準(文部省令)の改正によって、従来の高等学校のいわ ゆる普通科、専門学科(職業科)に加えて「普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合的 に施す学科」、すなわち「総合学科」が誕生した。
それは「従来は墨的な拡大に対応することに追われていたが」、今後は、「高等教育を量から質 へ転換する最大の好機」として、「高校教育の改革」の一つとして打出されたものであった。
すでに、学校教育法第41条は、高等学校の目的として「高等普通教育及び専門教育を施すこと」
と指摘している。本稿は、かかる「総合学科」がこの目的に適うものかどうか、とくに授業科目 と時間数を中心に、具体的に検討を行い、いわゆる憲法にいう「教育を受ける権利」の保障への 一つのステップとして捉えていくことの必要性を指摘している。
キーワード:教育を受ける権利、高等学校総合学科 1.はじめに
周知のように、高等学校設置基準(文部省令)の1993年(平5)の改正により、いわゆる「総 合学科」が誕生した。それは同第5条に、従来の「普通教育を主とする学科」および「専門教育 を主とする学科」に加えて、第3の学科たる「普通教育及び専門教育を選択履修を旨として総合 的に施す学科」とされているのである。
すでに第14期中央教育審議会はその1991年3月12日の答申「新しい時代に対応した教育の諸制 度の改革について」1)の中で、「高等学校の現状と問題点」において、今日の高等学校の問題点を
(1)「社会の変化と高等学校」、(2)「青少年の変化」、(3)「画一的な教育」、(4)「受験競争の激化」、
(5)「不本意入学・中途退学の増加等」に分けて説明している。とりわけ、本稿の直接的テーマで ある総合学科に係るところにしぼってみると、「高等学校はこれまで、急速な生徒数の増加や進 学率の上昇などに伴う量的拡大に対応することを重視し、どちらかと言えばその質的な充実を図 る余裕がなかった。また、国民の強い平等志向の中で、高校教育の内容についても、ややもすれ ば形式的で画一的なものとなり、青少年の実態や時代の変化に柔軟に対応することができなかっ た。」として、「今後の高等学校の在り方を考えるに当たっては、次の視点を重視していることが 必要」とし、「ア 量的拡大から質的充実へ」、「イ 形式的平等から実質的平等へ」および「ウ 偏差値偏重から個人尊重・人間性重視へ」の三点を挙げている。そして、「今後の高等学校は、
第二次ベビーブームの波が通り過ぎて生徒数の減少期を迎える。従来は量的な拡大に対応するこ
とに追われていたが、今後はこの面での負担はむしろ軽減される。これは、高校教育を量から質
へ転換する最大の好機であるとも言える。今後は、施設や教職員を充実して、生徒の選択の幅を
拡大し、その個性を十分に伸ばすために、高等学校を質的に充実させることが望まれる」と述べ
る。
かくて、「高等教育の改革」の第一節「学校・学科制度」において、「(1)学科制度の再編成」、
「(2)新しいタイプの高等学校の奨励」、「(3)4年制高等学校」および「(4)高等専門学校の分 野拡大等」を指摘するが、その「(1)学科制度の再編成」において、「普通科については、卒業 後に就職する生徒も少なくないもかかわらず、大学進学型の教育課程が編成されているところが 多く、就職する者に対する職業教育は不十分なものとなっている。また、職業学科においても、
近年では進学希望者が増加しているにもかかわらず、一部の小学科などでは過度に専門分化した 職業教育が行われており、進学希望者への対応が不十分なものとなっている」とし、他方、「生 徒が進路決定を先送りしている傾向」が見られ、また「あらゆる職業に共通の実際的な知識・技 術を習得させることが求められている」として次のように提言している。
「このような現状を踏まえ、現在の普通科と職業学科に大別されている学科区分を見直し、普 通科と職業学科とを総合するような新たな学科を設置することが適当と考えられる。」
そして、この新学科は、職業学科を転換したり、普通科における職業教育の充実をより一層進 める形で設置していくことが適当であり、また専門教科の開設状況に応じて必要な教職員を配置 するとともに所要の施設・設備を設置し、さまざまな形の普通教育と専門教育の組合せが可能と なるようにする必要があるとしているのである。
かかる提言を受けて設置された「高等学校教育の改革の推進に関する会議」において新学科に ついての検討がなされ、その第4次報告を受けて、文部省は、冒頭の省令改正を行なったのであ る。2)
文部省は総合学科における教育の特色を①普通科目と専門科目の中から一定の系統性を持ちな がら数多くの多様な選択科目が開設されること、②将来の職業選択を視野にいれた自己の進路へ の自覚を深めさせる学習を重視すること、③普通科目と専門科目を有機的に履修すること、とし ている。そして、総合学科に学ぶ生徒の例として、次の四つの生徒像を考えている。①自分の興 味や関心のある授業を受けられる総合学科で学びたい生徒、②就職前に専門知識や技術を少しで もマスターしたい生徒、③大学で専攻したいと考えている分野の基礎的な知識や技術を学習した い生徒、および④色々な分野に触れ、自分の可能性を試してみたい生徒(働くか学び続けるかを 決定したいと考えている生徒)である。3)
さて、以上に見た新しい「総合学科」をどのように捉らえるべきであろうか。あるいは、それ は、高等学校教育の理念に応える内容を有するものなのであろうか。
わが国の最高法・基本法である日本国憲法は、その第26条において「すべて国民は、法律の定 めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。」と、いわゆる
「教育を受ける権利」を規定する。それは、「いわゆる国家教育権に対する概念として(の)国民 の教育の自由」(東・地・判・昭和45・7・17、いわゆる「杉本判決」)を前提として、「すべて の国民が、人間として、あるいは国家および世界の担い手として、成長していく上で必要・適切 な教育を受けることを国に要求することができる権利であるということができる」4)ということ を筆者はすでに指摘しているところである。したがってそれは、今日、わが国において、少なく とも高等学校までの教育がその対象となると考えられるべきである。
そして、その内容は、教育基本法第1条にいう「教育は、人格の完成をめざし」といわれるも
のでなければならず、学校教育法第41条にいう「高等学校は、・・・高等普通教育および専門教
育を施すことを目的とする。」ものでなくてはならない。それは従来からの普通科高校および職
業学科高校においても、高等普通教育と専門教育の両者を必ず、そしてバランスよく教育しなく てはならないのである。したがって、「総合学科」を問題にする場合、かかる日本国憲法、教育 基本法、ならびに学校教育法の理念の下に、それが生徒に展開されるものであるかどうかが問わ れなければならないのである。
そこで、以下、高等学校「総合学科」について、授業科目と時間数を中心に、具体的に考察し
ていくこととしたい。
2.高等学校「総合学科」の具体的事例
(D奈良県立山辺高等学校
現行の高等学校学習指導要領によれば、高等学校では原則としてどの学科においても、必修教 科・科目を最低35単位数(普通科に限っては最低38単位数)取得しなければならないこととされ ている。また、卒業に必要な教科単位数も高等学校によってまちまちであるが、高等学校学習指 導要領では80単位以上とされている。従って、卒業に必要な教科単位数から、必修教科・科目単 位数を差し引いた残りの単位数からどのような教科・科目を履修して単位数を取得するかによっ て各学科の特徴を表すことができるといってよい。
平成7年度に総合学科が設置された奈良県立山辺高等学校(総合学科3学級、120人)の場合 も例外ではない。卒業に必要な教科単位数が最低85単位とされており、そのうち学校必修科目を 36単位数から44単位数、総合学科として必ず学習しなければならない総合学科原則履修科目を6 単位数取得しなければならないこととされている。ここでの学校必修科目における36から44の単 位数の幅は、「地理・歴史」及び「理科」の科目の組み合わせの違いによるものである。(表1参 照)つまり、総合学科を取り入れた山辺高等学校においては、卒業に必要な教科単位数85単位か
ら、学校必修科目単位数と6単位数の総合学科原則履修科目との合計を差し引いた残りの単位数 を選択科目を履修することによって取得する点で、総合学科の特徴が表れているわけである。
生徒は、学校側が設けている総合選択科目群5)や自由選択科目群6)の中から、将来における必 要性や興味・関心に応じて自由に選択することが可能である。山辺高等学校では、生徒がより系 統的に学習ができるようにと表2で示したような5つの系列を設けている。なお、総合学科にお ける系列とは従来の類型・コースとは異なり、科目選択をする場合の目安となるものであるから、
系列を越えた科目選択は可能である。
ところで、山辺高等学校における5つの系列は、総合学科が設置される以前の普通科・農業科・
家庭科を引き継いだものと考えられる。つまり、5つの系列のうち、国際文化系と自然科学系は 以前の普通科を引き継いだもの、生物生産系と地域振興開発系は以前の農業科を引き継いだもの、
生活文化系は以前の家庭科を引き継いだものと考えられるのである。なぜなら、学校側が用意し
ている各系列の選択科目の例において考えてみると、国際文化系と自然科学系は、専門科目と考
えられる科目の単位数が系列の選択科目単位数全体の約5%しか占めないで、ほぼ普通科のカリ
キュラムに似通っている。それに対して、生物生産系、地域振興開発系、生活文化系は、専門科
目と考えられる科目の単位数が系列の選択科目単位数全体の約60%を占め、専門学科としての色
あいが強いからである。(表3−1、3−2参照)もちろん、自由に科目を選択履修できるわけ
であるから、学校側が作成しているカリキュラムに全て従う必要はない。しかし、今現在におい
て施設・設備等の問題や教員の問題を考え合わすと、完全な科目の自由選択によるカリキュラム
表1 奈良県立山辺高等学校カリキュラム
必 修 教 科 ・科 目 ・単 位 数 車① 奈 良 県 立 山 辺 高 等 学 校 総 合 学 科
学 校 必 修 科 目 単 位 数
国 語 国 語 I 4 国 語 1 4
地 理 ・歴 史 藁② 4 ※(塾 4 6 8
公 民 ※③ 4 現 代 社 会 4
数 学 数 学 I 4 数 学 I 4
理 科 やす 4 ※④ 4 6 8
保 健 ・体 育 保 健 ・体 育 9 保 健 ・ 体 育 10
芸 術 ※⑤ 2 ※(諺 2
家 庭 家 庭 一 般 4 家 庭 一 般 4
必 修 科 目 小 計 35
※⑥
学 校 必 修 科 目小 計 3 6 3 8 4 0 4 2 4 4 卒 業 に 必 要 な 単 位 数 8 0 総 合 学 科 原 則 履 修 科 目 単 位 数
産 業 社 会 と人 間 2
情 報 処 理 2
課 題 研 究 2
総 合 学 科 原 則 履 修 科 目
小 計
6 学 校 必 修 科 目 ・総 合
学 科 原 則 履 修 科 目 合 計
4 2 4 4 46 48 52 卒 業 に必 要 な単 位 数 8 5
〈出所:奈良県立山辺高等学校学校要覧(平成8年度)から作成〉
※①高等学校学習指導要領、第2款各教科・科目の標準単位数等及び第3款各教科・科目 の履修から白石が作成
※②「世界史A」(2単位)及び「世界史B」(4単位)のうちから1科目並びに「日本史 A」(2単位)、「日本史B」(4単位)、「地理A」(2単位)及び「地理B」(4単位)
のうちから1科目
※③「現代社会」(4単位)又は「倫理」(2単位)・「政治・経済」(2単位)
※④「総合理科」(4単位)、「物理IA」(2単位)又は「物理IB」(4単位)、「化学I A」(2単位)又は「化学IB」(4単位)、「生物IA」(2単位)又は「生物I B」
(4単位)及び「地学IA」(2単位)又は「地学IB」(4単位)の5区分から2区 分にわたって2科目
※⑤「音楽I」(2単位)、「美術I」(2単位)、「工芸I」(2単位)及び「書道I」(2単 位)のうちから1科目
※⑥地理・歴史及び理科の科目の単位数で変化するが、ここでは最少単位数を記入してい
る。
表2 奈良県立山辺高等学校における系列・内容紹介
匡=資 文 化 系 ね
いら
国 際 化 の進 展 に対 応 して、 広 い国 際 的視 野 と国 際 感 覚 を持 って人 間 を 育 成 す る。
生
徒 ・国 際 社 会 や外 国 文 化 に つ い て学 び た い生 徒。
像 ・文 系 に進 学 した い生 徒 。
選択 ・国 語 Ⅱ、 現 代 文 、 古 典 I 、 古 典 講 読 、 政 治 ・経 済 、 数 学 Ⅲ、 英 語 I 、 科目 オ ー ラル コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンA 、 英 語 Ⅱ、 総 合 英 語 、 リー デ ィ ング、
の例 ラ イ テ ィ ング、 外 国 事 情 等
自 然 科 学 系 ね ら い
自然 科 学 に関 す る幅 広 い知 識 を もと に、 科 学 的 に探 究 す る姿 勢 を身 に つ け させ る と と も に、 情 報 活 用 能 力 を養 う。
生 徒 像
・理数 系 や 先 端 技 術 につ いて 学 び た い生 徒 。
・理 系 に進 学 した い 生 徒 。
選択 国語 Ⅱ、 数 学 Ⅱ、 数 学 Ⅲ、 数 学 A 、 数 学 B 、 英 語 I 、 オ ー ラル コ ミュ 科目 ニ ケ ー シ ョ ンA 、 英 語 Ⅲ、 リー デ ィ ング、 科 学 Ⅲ、 物 理 Ⅱ、 生 物 Ⅱ、 生 の例 物 工学 基 礎 、 コ ン ピュ ー タ応 用 、 天 体 観 測 と気 象 等
生 物 生 産 系
ね 生物 生 産 に必 要 な 理 論 の学 習 と、 実 習 を 通 して 近 代 化 に対 応 した先 進 ら
い 的 な 技 術 の 習 熟 を 図 る。
壷 ・生 物 生 産 や バ イオ テ ク ノ ロ ジ ー につ いて 学 び た い生 徒 。
選択 国語 Ⅲ、 数 学 Ⅲ、 数 学 A 、 英 語 I 、 オ ー ラ ル コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンA 、 科目 農 業基 礎 、 農 業 機 械 、 測 量 、 作 物 、 野 菜 、 草 花 、 総 合 実 習 、 生 物 工学 基 の例 礎 等
地 域 振 興 開 発 系 ね
ら い
地域 の歴 史 や 産 業 につ いて の理 解 を 深 め、 地 域 の 振 興 や 活 性 化 に向 け て積 極 的 に 取 り組 む 意 欲 や 態 度 を 育 て る。
崖 ・地域 振 興 や 環 境緑 化 な ど につ いて 学 び た い生 徒 。
選択 国 語 Ⅲ、 数 学 Ⅲ、 数 学 A 、 英 語 I 、 オ ー ラ ル コ ミュ ニ ケ ー シ ョ ンA 、 科目 測 量、 造 園 計 画 、 農 業 土 木 設 計 、 総 合 実 習 、 農 業 コ ン ピュ ー タ利 用 、 郷 の例 土 芸能 等
生 活 文 化 系
ね 新 しい 時 代 に対 応 した 、 豊 か な 生 活 文 化 の 創 造 に取 り組 む 能 力 と態 度 しっ
い を育 て る。
生霊 ・福 祉 や 家 庭 生 活 につ い て学 び た い生 徒 。 深
手斗 国語 Ⅱ、 数 学 Ⅱ、 英 語 I 、 オ ー ラル コ ミュ ニ ケ ー シ ョンA 、 被 服 、 食 只
例 物 、 調 理 、 ボ ラ ンテ ィ ア実 習 、生 活 園 芸 等
〈出所:奈良県立山辺高等学校学校要覧(平成8年度)、『奈良県立高等学校の学科内容紹介』から作成〉
表3−1 奈良県立山辺高等学校、各系列における専門性
系 列 選 択 科 目 の 例 単 位 専門科 目 と考え られる科 目※⑦ 単 位 % ※⑧
国 際 文 化
・国 語 江
・現 代 文
・古 典 I
・古 典 講 読
・政 治 ・経 済
・数 学 A
・数 学 Ⅱ
・英 語 I
・英 語 Ⅲ
・オーラルコミュニケーションA
・ リー デ ィ ン グ
・ ラ イ テ ィ ン グ
・総 合 英 語
・外 国 事 情
4 4 3 2 3 2 4 4 4 2 4 4 5 2
・外 国 事 情 2
小 計 科 目 数 1 4 4 7 科 目数 1 2 4
・国 語 Ⅲ 4 ・生 物 工 学 基 礎 2
・数 学 Ⅱ 4
・数 学 Ⅲ 3
・数 学 A 2
・物 理 Ⅱ 2
・化 学 Ⅲ 2
自然 科 学 ・生 物 Ⅱ 2
・英 語 I 4
・英 語 Ⅱ 4
・オーラルコミュニケーションA 2
・ リー デ ィ ン グ 4
・ ラ イ テ ィ ン グ 4
・生 物 工 学 基 礎 2
小 計 科 目 数 1 3 3 9 科 目 数 1 2 5
生 物 生 産
・国 語 Ⅱ 4 ・農 業 基 礎 2
・数 学 Ⅲ 4 ・総 合 実 習 6
・数 学 A 2 ・農 業 機 械 2
・英 語 I 4 ・生 物 工 学 基 礎 2
・オーラルコミュニケーションA 2 ・作 物 4
・農 業 基 礎 2 ・野 菜 5
・総 合 実 習
・農 業 機 械
・生 物 工 学 基 礎
・作 物
・野 菜
・草 花
6 2 2 4 5 5
・草 花 5
小 計 科 目 数 1 2 4 2 科 目 数 7 2 6 6 2
表3−2
系 列 選 択 科 目 の 例 単 位 専 門科 目と考え られ る科 目※⑦ 単 位 % ヰ⑧
生 活 文 化
・国 語 Ⅲ 4 ・被 服 4
・数 学 Ⅱ 4 ・食 物 4
・数 学 A 2 ・保 育 4
・英 語 I 4 ・家 庭 看 護 ・福 祉 5
・オーラルコミュニケーションA 2 ・被 服 製 作 6
・被 服 4 ・調 理 6
・食 物
・保 育
・家 庭 看 護 ・福 祉
・被 服 製 作
・調 理
・生 活 園 芸
4 4 5 6 6 2
・生 活 園 芸 2
小 計 科 目 数 12 47 科 目 数 7 3 1 66
地 域 振 興 開 発
・国 語 Ⅲ 4 ・農 業 基 礎 2
・数 学 Ⅱ 4 ・総 合 実 習 6
・数 学 A 2 ・測 量 4
・英 語 I 4 ・農 業 土 木 設 計 2
・オーラルコミュニケーションA 2 ・造 園 計 画 2
・農 業 基 礎 2 ・造 園 緑 化 材 料 2
・総 合 実 習 6 ・造 園 施 工 ・管 理 2
・測 量 4 ・生 活 園 芸 2
・農 業 土 木 設 計 2 ・農 業 コ ン ピ ュ ー タ利 用 2
・造 園 計 画
・造 園 緑 化 材 料
・造 園 施 工 ・管 理
・生 活 園 芸
・農 業 コ ン ピ ュ ー タ 利 用
・郷 土 芸 能
2 2 2 2 2 2
・郷 土 芸 能 2
小 計 科 目 数 15 4 2 科 目 数 10 26 6 2
く出所:奈良県立山辺高等学校学校要覧(平成8年度)、奈良県立山辺高等学校平成8年度入学 生の教育課程表から作成〉
※⑦高等学校学習指導要領、第2款2を規準としている。
※⑧各系列で例として出されている選択科目単位数の小計において、専門科目と考えられる科目
の単位数が占める割合を示したものである。
表4 静岡県立小笠高等学校における系列・内容紹介
系 列 内 容
エ コ ロ ジ ー
自然 界 と調 和 の とれ た生 活 環 境 の保 全 に 関 す る基 礎 的 ・基 本 的 な 知 識 と技 術 を習 得 す る と と もに、 よ り よい環 境 の創 造 と生 物 資 源 の 活 用 に積 極 的 に取 り組 む能 力 と態 度 を 身 につ け る。
芸 術
芸術 の諸 活 動 を とお して、 創造 的 な 表 現 力 や 芸術 鑑 賞 能 力 の 向 上 を 図 る と と もに美 に対 す る感 性 を高 め 、生 涯、 芸 術 を愛 好 し、 心 豊 か で ゆ と りの あ る生 活 を 送 る能 力 と態 度 を 身 につ け る。
日本 や世 界 の歴 史 ・文 化 に つ い て学 習 す る と と も に、 国 際社 会 に 国 際 教 養 お い て必 要 な外 国 語 の活 用能 力 の 向上 を め ざ し、 国 際交 流 に積 極 的
に参加 ・貢 献 しよ う とす る意 欲 と態 度 を 身 につ け る。
自 然 科 学
観察 ・実 験 な どを通 して、 自然 科学 にお け る基 本 的 な 原理 や 法 則 に つ い て理 解 を深 め る と と もに、 物事 を数 学 的 ・科 学 的 に考 察 し、
処 理 す る能 力 と態 度 を 身 につ け る。
社 会 科 学
社会 の仕 組 み や政 治 ・経済 な ど につ いて 学 習 す る と と もに 、 そ れ ら に関 す る諸 課 題 に つ い て広 い視 野 か ら考 察 し、現 代社 会 に積 極 的 に 生 き る人 間 と して必 要 な能 力 と態 度 を 身 につ け る。
情 報
コ ン ピ ュー タの原 理 ・原則 につ いて 学 習 す る と と もに 、 そ の利 用 に つ い て基 礎 的 ・基 本 的 な知 識 と技 術 を 習 得 し、 情 報 化 社 会 に主 体 的 に対 応 で き る能 力 と態 度 を 身 につ け る。
ス ポ ー ツ ・ 健 康
運動 の合 理 的 な実 践 や 健康 につ いて の理 解 を 通 して、 健康 の増 進 や 体力 の 向上 を 目指 す と と も に、生 涯 、 ス ポ ー ツを 愛好 し、 明 る く 豊 か で活 力 あ る生 活 を送 る能 力 と態 度 を 身 につ け る。
茶 と 文 化
地 場 産 業 で あ る茶 業 に 関 す る基 礎 的 ・基 本 的 な知 識 と技 術 を 習 得 す る と と もに、 茶 の 文化 につ いて 理 解 を 深 め 、 茶 産 業 の 発 展 に貢 献 で き る能 力 と態 度 を身 に つ け る。
ビ ジ ネ ス
商 品 の流 通 や販 売 な どに関 す る基 礎 的 ・基 本 的 な知 識 と技 術 を 習 得 す る と と もに、 経 済 活 動 全 般 に つ い て の 意義 や役 割 を理 解 し、 ビ
ジ ネス活 動 を 円滑 に行 う能 力 と態 度 を 身 に つ け る。
〈出所:「SHINE ON…(輝きを目指して)」、『季刊教育法』107号、1996年9月30日刊、
75貢〉
編成は非常に困難だと思われる。従って、生徒たちは学校側が用意したカリキュラムに、多少自 分なりの修正を加えて各自のカリキュラム編成を行っているように思われる。
②静岡県立小笠高等学校
静岡県立小笠高等学校(総合学科8学級、320人)も奈良県立山辺高等学校同様、平成7年度 から総合学科がスタートした高等学校である。山辺高等学校とは同じ総合学科だけに、カリキュ
ラム等において多少似通ってはいるものの、小笠高等学校独自のものを打ち出している。
第1の特徴は、必ず学習しなければならない科目として学校必修科目、総合学科として必ず学 習しなければならない科目としての原則履修科目(表1参照)の他に、必修科目として学校側が 独自に「茶文化」(2単位)、「オーラルコミュニケーションA」(2単位)という学校推奨科目
(全4単位)を設けている点である。なかでも特徴的な科目が「茶文化」である。この科目には、
静岡県が茶の名産地であることが如実に反映されていて、学校側が、「匡I際化の進展する現代で あればこそ、日本文化に親しみ、日本の文化を代表する一つである茶についての知識や嗜み、作 法に触れ、郷土の特産である茶についての誇りを持ってほしい」7)と強く願った末に生まれた科 目である。学校側は、この科目を生徒に履修させるために新しく作法室(茶室)を設置した。な お、施設・設備等の問題に関しては、小笠高等学校が以前農業高校であったため、農業に関する 施設・設備は充実しているものの、その他の教科に関する施設・設備、例えば芸術や工業、商業 に関する施設・設備が不十分であるように思われる。本校では全ての生徒が総合学科に所属する ことになる平成9年度までに、生徒が様々な選択科目を履修できるようにするため現在の施設・
設備に加えて、必要とされる施設・設備であるハードウェア実習室、情報応用実習室、エコロジー 実験室、工芸室等々の実に様々な施設・設備が整えられ、完備されるとのことである。
第2の特徴は、小笠高等学校側が設けている9つの系列である。(表4参照)これらの9つの 系列は、「生徒の進路希望、地域産業の実態、近隣校の特色を踏まえた本校の教育環境、これま での本校の果たした役割や、通学するであろう生徒の実態、専門性の深化などいろいろな観点か ら」8)考えられた系列である。奈良県立山辺高等学校同様に、科目選択は生徒個人の自由である が、やはり学校側としては生徒ができるだけ系統立った学習ができるように科目選択のモデルを 作成している。そして、生徒が時間割を作成するに当たっては、できるだけ生徒の選択の幅が広 がるようにと「予め生徒から選択希望科目の調査を行い、生徒の科目選択志向を踏まえながら希 望科目が特定の時間割帯に重複しないように配慮」9)されている。
3. 高等学校と他の諸学科の場合
奈良県の場合、高等学校を卒業するのに必要な教科単位数は原則として90単位以上である。10)
そして各学科の特徴は、その90単位数から学校必修科目単位数を差し引いた残りの単位数を、ど のような教科・科目を履修するのかということで決定する。
普通科は、文字通り普通教育を主とする学科である。奈良県の普通科モデルとして示されてい るカリキュラムを見ると、90単位数のうち文系の場合71単位数、理系の場合74単位数がいわゆる 必修科目、普通教科で占められている。そして、残りの単位数(文系19単位数、理系16単位数)
は外国語(英語)の単位となっている。(表5参照)
それに対して、学習指導要領で職業学科に至っては、「専門教育に関する各教科・科目につい
て、すべての生徒に履修させる単位数は30単位を下らないこと」11)とされている専門学科を主と する職業学科モデルである商業科、食物科(家庭に関する学科の1つ)では、90単位数のうち商 業科の場合は48単位数、食物科の場合は42単位数が、いわゆる必修科目・普通教科で占められて いて、残りの単位数(商業科では42単位数、食物科では48単位数)はそれぞれの学科の特色に合 わせて、専門科目の単位数を取得する。なお、外国語(英語)の単位数が商業科では10単位、食 物科では9単位、それぞれの学科の残りの単位数の中に組み込まれているので、実質的な専門科 目の単位数は、商業科32単位、食物科39単位である。(表6参照)
先にみたように普通教育と専門教育を総合的に施す学科としての総合学科では、85単位数のう ち42単位数から52単位数が、いわゆる必修科目・普通教科で占められていて、残りの単位数は普 通科目でも専門科目でも自由に選択履修できるので、生徒個人に合った科目の単位数を取得する。
つまり、選択科目の取りようによって、職業科目のようにも成り得るし、普通科のようにも成り 得るわけである。
ところで、新しいタイプの高等学校が次々と生まれる中で普通科ではあるが総合学科のように 単位制を取り入れ教科・科目選択を自由に行うことができる学科も出現してきている。その例の
1つが、総合選択制を取り入れてスタートした滋賀県立石部高等学校である。
石部高等学校でのカリキュラムは、1年生においては従来までの普通科のように学校必修教科・
科目等を履修して学習する。2年、3年生においては、それらの学校必修教科・科目に加えて、
理数系、人文社会系、環境科学系、国際教養系、流通経営系という5っの学系を中心に構成され た自由選択科目と各学系の選択指定科目を履修して学習する予定である。(表7参照)従って、
2年、3年生における選択授業は、その科目を必要としている生徒あるいは、その科目に興味・
関心を持った生徒が集まって開講されると考えられるので、その授業自体に活気が出てくるもの と思われる。さらに、学校が位置している豊かな地域性を生かした科目として「甲賀と芭蕉」
(2単位)「至芭琶湖学習」(2単位)等があげられ、これらの特色ある科目が選択科目として位置 づけられている。
総合学科については奈良県立山辺高等学校と静岡県立小笠高等学校を具体的事例として取り上 げ、普通科・職業科(商業科・食物科)については奈良県の公立高等学校のカリキュラムモデル を中心に取り上げ、総合選択制を取り入れた普通科として滋賀県立石部高等学校を具体的事例と して、カリキュラムの面を調べてみた。
文部省は、「高校教育改革のパイオニア的役割が期待されている」12)として総合学科の設置に非 常に積極的であり、現在設置されている45校の総合学科に加えて、「来年度以降の設置も積極的
に検討されており、1県1、2校という当初の目的から希望すればだれでも入れる『通学区に1 校』を目指す段階に入った」13)といわれるほど積極的に押し進めている。
これまでにみた各学科に関する具体的事例やモデルをカリキュラムの面から考察すると、現行 の普通科は極端に必修科目・普通教科の単位数を履修しているように思われる。つまり、現行の 普通科は、普通教育を主として、学習する学科とされているものの、実際のカリキュラムでは普 通教科しか学習していないといっても過言ではない。それに対して、滋賀県立石部高等学校のよ うに総合選択制を取り入れた普通科では、カリキュラムの面において従来までの普通科のような 類型、コースにとらわれないで、生徒の個性を重視して伸ばす教育をめざしている。
また、職業学科、総合学科においては、必修科目・普通教科もあるが、同様に専門教科もあっ
表5 奈良県普通科カリキュラム
必 修 教 科 ・科 目 ・単 位 数 ※① 奈 良 県 全 日制 普 通 科 モ デ ル 文 系 単 位 数 理 系 単 位 数
国 語 国 語 I 4 19 14
地理 ・歴 史 ※② 4 9 4
公 民 ※③ 4 6 4
数 学 数 学 I 4 8 19
理 科 ※④ 4 8 14
保 健 ・体 育 保 健 ・体 育 1 1草⑨ 1 1 11
芸 術 ※⑤ 3 ※⑬ 6 4
家 庭 家 庭 一 般 4 4 4
必 修 科 目 小 計 38 7 1 74
卒 業 に 必 要 な 単 位 数 80 90 90
く出所:『奈良県立高等学校の学科内容紹介』から作成〉
表6 奈良県職業科カリキュラム
必 修 教 科 ・科 目 ・単 位 数 ※① 奈 良 県 全 日制 職 業 科 モ デ ル 商 業 科 単 位 数 食 物 科 単 位 数
国 語 国 語 I 4 12 9
地 理 ・歴 史 ※② 4 4 4
公 民 ※③ 4 4 4
数 学 数 学 I 4 7 6
理 科 ※(動 4 6 5
保 健 ・体 育 保 健 ・体 育 9 9 8
芸 術 ※⑤ 2 2 2
家 庭 家 庭 一 般 4 4 4
必 修 科 目 小 計 3 5
※⑥ 4 8 4 2
卒 業 に 必 要 な 単 位 数 8 0 9 0 90