保健 学研 究
看護学生の死生観 の学年 間比較
田代 隆良
1・永 田 奏
2・出田 順子
2・安藤 悦子
1要 旨 長崎大学 医学部保健 学科 の看護 学生
270人 (
1年 生
68人 ,
2年生
68人,
3年生
68人 ,
4年 生
66人) を対象 に死生観 に関す る 自記式 ア ンケー ト調査 を行 った.学 生 は,死 を 「 永遠 の眠 り
」「肉体 と精神 の眠 り」
「 神秘 ・不 可解 な もの」 と捉 え,学 年 間 に違 い は認 め られ なか った. 自分 の死 に関 して もっ とも嫌 な こ と と して
,「 物事 を体験 で きな くな る
」「 予 定 していた計 画 や仕事 が で きな くな る」 は
1年生 に,「 痛 み ・苦 しみ
」は
4年生 に多 く,有 意差 が認 め られた.死 生観 に影響 を与 えた因子 は 「身近 な人 の死
」「テ レビ ・映画
」「 葬 儀 へ の参 列
」「 読書」 の順 であ り,学 年 間 に違 い は認 め られ なか ったが , 「 講義
」「 実 習」 は
4年 生 が有 意 に 多 か った. しか し,講義 や実習 の影響 は学 生 の期待 よ りも小 さ く, 日々の授 業 におい て死 の準備教 育 を行 う 必 要が あ る こ とが示 唆 され た.
保健 学研 究
19(1):43‑48,2006KeyWords
死生観 ,看護学 生 ,死 の準備 教育
は じめに
社 会が豊 か にな り,公 衆衛 生 ,医療 が発 達 したわが 国 で は,健康 障害 を有 す る人 や死 にゆ く人 の多 くは病 院や 施設 に入 院 ・入所 してい る.その結 果 ,死 は私 た ちの 日 常生活 か ら切 り離 され,身近 に体験す る機会 は少 な くなっ た. この ような環境 で育 った若者が看護 師 を目指す とき, 講義 で老化 や病気 につい て学 び,実 習 で病気 に苦 しむ人 や死 にゆ く人 に揺 す る こ とになる.学生 の多 くは初 めて 死 に直面 し,死 にゆ く人 を前 に 自分 は何 が で きるのか を 思 い悩 み,不安 にな る.現代 人 の ライ フス タイル と価値 観 は多様 化 し,生 と死 に対 す る考 え方 ,価値観 も一様 で はない.最近 ,終末期 医療 のあ り方 が 問題 となってい る 背景 には,国民 の死 生観 の多様 化 ・複雑化 が あ り,看護 師 は しっか りと した 自己 の死生観 を持 つ必 要が あ る.
対 象 と方 法
1.対 象
対象 は長崎大学 医学部保健学科看護 学専 攻 の 1年生 か ら
4年生 までの学生
300人で あ る.
2.
研 究 デザ イ ン
集合 法 に よる ア ンケ ー ト調 査 . 質 問票 は, 近 藤
1)の
「 死 に関す るチ ェ ック リス ト」 を参考 に独 自に作 成 した.
質 問 は,① 死 に関す る経験 ,( ∋死 に村 す るイメー ジ,③ 自己の死 につ いて,④ 死 を語 る こ とについ て,6) 死生観 に影響 を与 えた因子 の各項 目か ら成 り,選択 回答 形式 と したが , その他 を選択 した もの には具体 的内容 を記載 し て もらった.各 学年 の授 業終了後 の休 み時 間 に研 究 の趣 旨,倫 理 的配慮等 につい て説 明 した後 ,同意 が得 られ た
学生 に質 問票 を配布 し無 記名 で記 載 して もらい ,講義茎 出口で 回収 した.
3.
調査 時期
2005年7月
4.
分析 方法
学 年 間の有 意差 検 定 は
x2独 立性 の検 定 を行 い ,有 意 水 準
0.05未 満 を有 意差 あ りと した .統 計 ソ フ トは
SPSS 10.OJを用 いた.
5.
倫 理 的配慮
本研 究 は,長崎大学医学部保健 学科倫 理委員 会 の承 認 を受 けた.
結 果
1
.対 象 の属性
全 看護学生
300人 中
270人か ら回答 が得 られ た ( 回収 率
90%
).性別 は女性
250人,男性
20人,年齢 は
18歳
〜31歳 , 平均
20.1±1.9歳 で あ る.学 年 別 の 人数 ,悼 , 年齢 を表
1に示 す .
表 1.対 象
学 年 人数 ( 女性/男性) 平均 年齢 ( 範囲)
1
年生
68人
(62/6) 18.7歳
(18‑21 )
2
年生
68人
(60/8) 20.0歳
(19‑23) 3年生
68人
(64/4) 21.0歳
(20‑31) 4年生
66人
(64/2) 21.6歳
(21‑25)1
長崎大学大学 院医歯 薬学 総合研 究科 保健学専攻 看護学講座 2 長崎大 学 医学部保健 学科看護学専攻元学生
保健 学研 究
看護学生の死生観 の学年 間比較
田代 隆良
1・永 田 奏
2・出田 順子
2・安藤 悦子
1要 旨 長崎大学 医学部保健 学科 の看護 学生
270人 (
1年 生
68人 ,
2年生
68人,
3年生
68人 ,
4年 生
66人) を対象 に死生観 に関す る 自記式 ア ンケー ト調査 を行 った.学 生 は,死 を 「 永遠 の眠 り
」「肉体 と精神 の眠 り」
「 神秘 ・不 可解 な もの」 と捉 え,学 年 間 に違 い は認 め られ なか った. 自分 の死 に関 して もっ とも嫌 な こ と と して
,「 物事 を体験 で きな くな る
」「 予 定 していた計 画 や仕事 が で きな くな る」 は
1年生 に,「 痛 み ・苦 しみ
」は
4年生 に多 く,有 意差 が認 め られた.死 生観 に影響 を与 えた因子 は 「身近 な人 の死
」「テ レビ ・映画
」「 葬 儀 へ の参 列
」「 読書」 の順 であ り,学 年 間 に違 い は認 め られ なか ったが , 「 講義
」「 実 習」 は
4年 生 が有 意 に 多 か った. しか し,講義 や実習 の影響 は学 生 の期待 よ りも小 さ く, 日々の授 業 におい て死 の準備教 育 を行 う 必 要が あ る こ とが示 唆 され た.
保健 学研 究
19(1):43‑48,2006KeyWords
死生観 ,看護学 生 ,死 の準備 教育
は じめに
社 会が豊 か にな り,公 衆衛 生 ,医療 が発 達 したわが 国 で は,健康 障害 を有 す る人 や死 にゆ く人 の多 くは病 院や 施設 に入 院 ・入所 してい る.その結 果 ,死 は私 た ちの 日 常生活 か ら切 り離 され,身近 に体験す る機会 は少 な くなっ た. この ような環境 で育 った若者が看護 師 を目指す とき, 講義 で老化 や病気 につい て学 び,実 習 で病気 に苦 しむ人 や死 にゆ く人 に揺 す る こ とになる.学生 の多 くは初 めて 死 に直面 し,死 にゆ く人 を前 に 自分 は何 が で きるのか を 思 い悩 み,不安 にな る.現代 人 の ライ フス タイル と価値 観 は多様 化 し,生 と死 に対 す る考 え方 ,価値観 も一様 で はない.最近 ,終末期 医療 のあ り方 が 問題 となってい る 背景 には,国民 の死 生観 の多様 化 ・複雑化 が あ り,看護 師 は しっか りと した 自己 の死生観 を持 つ必 要が あ る.
対 象 と方 法
1.対 象
対象 は長崎大学 医学部保健学科看護 学専 攻 の 1年生 か ら
4年生 までの学生
300人で あ る.
2.
研 究 デザ イ ン
集合 法 に よる ア ンケ ー ト調 査 . 質 問票 は, 近 藤
1)の
「 死 に関す るチ ェ ック リス ト」 を参考 に独 自に作 成 した.
質 問 は,① 死 に関す る経験 ,( ∋死 に村 す るイメー ジ,③ 自己の死 につ いて,④ 死 を語 る こ とについ て,6) 死生観 に影響 を与 えた因子 の各項 目か ら成 り,選択 回答 形式 と したが , その他 を選択 した もの には具体 的内容 を記載 し て もらった.各 学年 の授 業終了後 の休 み時 間 に研 究 の趣 旨,倫 理 的配慮等 につい て説 明 した後 ,同意 が得 られ た
学生 に質 問票 を配布 し無 記名 で記 載 して もらい ,講義茎 出口で 回収 した.
3.
調査 時期
2005年7月
4.
分析 方法
学 年 間の有 意差 検 定 は
x2独 立性 の検 定 を行 い ,有 意 水 準
0.05未 満 を有 意差 あ りと した .統 計 ソ フ トは
SPSS 10.OJを用 いた.
5.
倫 理 的配慮
本研 究 は,長崎大学医学部保健 学科倫 理委員 会 の承 認 を受 けた.
結 果
1
.対 象 の属性
全 看護学生
300人 中
270人か ら回答 が得 られ た ( 回収 率
90%
).性別 は女性
250人,男性
20人,年齢 は
18歳
〜31歳 , 平均
20.1±1.9歳 で あ る.学 年 別 の 人数 ,悼 , 年齢 を表
1に示 す .
表 1.対 象
学 年 人数 ( 女性/男性) 平均 年齢 ( 範囲)
1
年生
68人
(62/6) 18.7歳
(18‑21 )
2
年生
68人
(60/8) 20.0歳
(19‑23) 3年生
68人
(64/4) 21.0歳
(20‑31) 4年生
66人
(64/2) 21.6歳
(21‑25)1
長崎大学大学 院医歯 薬学 総合研 究科 保健学専攻 看護学講座
2 長崎大 学 医学部保健 学科看護学専攻元学生
2.死 に関す る経験
死別経験 は97.8%,葬儀へ の参列経験 は94.4% とほ と ん どの学生が経験 していたが,実際 に臨終 に立 ち会 った 経験 は19.6%だった.いずれ も学年 間に有意差 は認 め ら れ なか った.死別経験数 は平均2.8人,死別 した相手 は, 祖父母47.0%,親戚23.7%,友人 ・知人15.1%が多 く, 学年 に よる差 はなか った.患者 との死 別経 験 は5.6%と 低 いが ,1年生0%,2年生1.5%,3年生4.4%,4年 生16.7%と学 年 間で有 意 差 が認 め られ た (p<0.001) (図1).
%
80706050403020100祖 親 友
父 戚 人
母
*P〈O.001
親 兄
弟 壷 妹
図 1
.死別経験 した相手患 そ
者 I O h )
子供時代 における家庭での死の話題 に関する質問では,
「語 り合 った記憶 がない」が44.1%と最 も多 く,「おお っ ぴ らに語 られた」は31.1%であ った. また, 「不快感 が あ った」は18.5%,「ほ とん どタブーであった」は3.7%,
「自分 はのけ者 に された」は2.6%だった.学年 間に差 は 認 め られなか った.
3.死 に対す るイメージ
死 に対す るイメージは,子供時代 は 「天 国か地獄 に行 く」が55.9%と過半数 だったが,現在 は 「天国か地獄 に 行 く」は8.1%と減少 し, 「永遠 の眠 り」40.0%, 「肉体 と精神 の活動 の停止」26.7%, 「神 秘 ・不可解 な もの」
21.5%が増 えていた.学年別 にみる と1年生で 「永遠 の 眠 り」 が多いが有意差 は認 め られ なか った. また, 「特 に考 え た こ とは ない」 は3年 生 と4年 生 は 1人 ず つ (1.5%) と1年生,2年生 より少 ないが,有意差 はなかっ た (図2).「その他」 の内容 を見 る と,子供時代 は4学 年 とも死 に対 して 「怖 い」「悲 しい」「星 になる」 な どが 多かったが,現在 は
1
年生 は 「怖 い」「存在 しな くなる」「悲 しみ」,2年生 は 「怖 い」「悲 しみ」「無 になる」「避 け られない もの」「生 まれ変 わる」,3年生 は 「永遠の別 れ」「新 たな旅立 ち」「いるのが当た り前 だった ものがい な くな る」, 4年生 は 「人生 の最期」「想 い出 は残 る」
「魂 は輪廻転生す る」「人生の完成」「永遠 の別れ」「避 け られない」「無 になる」 と学年 に よ り違 いがみ られた.
%
50 40 30 20 100
天 国 か 地 獄 に 行 く 魂 は 永 続 す る 神 秘 ・不 可 解 永 遠 の 眠 り
図
2.現在 の死の イメージ肉 体 と 精 神 の 活 動 停 止 特 に 考 え た こ と は な い
4.自己の死 について
自分 に とって死 とはなにか とい う質問 には, 「生命 の 終わ り」が43.0%ともっとも多 く,次いで 「永遠の眠 り ・ 憩 い」29.6%, 「この世 の生命 は終 わるが霊魂 は生 き続 ける」12.6%だった.1年生 は 「永遠 の眠 り ・憩 い」が 他学年 よ り有意 に多 く (p‑0.016), 「生命 の終 わ り」 を 上 回っていた (図
3).
% 60 50 40 30 20 10
生 命 の 終 わ り 永 遠 の 眠 り ・憩 い 霊 魂 は 生 き 続 け る 死 後 の 生 命 の 始 ま り
*p
く
0.05図
3. 自分 に とって死 とは分 か ら な い
自分 の死 に関 して もっ とも嫌 なこ とでは,「家族 や友 人たち を悲 しませ る」 が33.3%と多 く,次 いで 「物事 を 体験 で きな くなる」23.6%, 「痛 み ・苦 しみ」22.2%,
「死後の生命が どうなるか分 か らない」18.9%,「自分 の 体 が どうなるか分 か らない」10.0%, 「家族 の面倒 をみ るこ とがで きな くなる」9.3%の順 であ った.「物事 を体 験 で きな くなる」 (p‑0.045), 「予定 した計 画 ・仕事 が で きない」 (p‑0.023), 「痛 み ・苦 しみ」 (p‑0.004)は 学年 間で有意差が認め られた (図4).
自分 の死 を考 える ときに感 じるこ とで は, 「恐怖感 を 2.死 に関す る経験
死別経験 は97.8%,葬儀へ の参列経験 は94.4% とほ と ん どの学生が経験 していたが,実際 に臨終 に立 ち会 った 経験 は19.6%だった.いずれ も学年 間に有意差 は認 め ら れ なか った 死別経験数 は平均2.8人,死別 した相手 は,
祖父母
47.0%,親戚23.7%,友人 ・知人15.1%が多 く, 学年 に よる差 はなか った.患者 との死別経 験 は5.6%と 低 いが, 1年生0%, 2年生1.5%, 3年生4.4%, 4年 生16.7%と学 年 間で有 意差 が認 め られ た (p<0.001)( 図
1).%
閑
706050403020100祖 親 友 親 兄 患 そ
釜 戚 会 芸 者 品
人 妹
*p
く
0.001図1.死別経験 した相手
子供時代 における家庭での死の話題 に関する質問では,
「語 り合 った記憶がない」が44.1%と最 も多 く,「おお っ ぴ らに語 られた」 は3
1
.1%であ った. また,「不快感 が あ った」 は18.5%,「ほ とん どタブーであった」 は3.7%,「自分 はのけ者 に された」 は2.6%だった.学年 間に差 は 認め られなか った.
3.死 に対す るイメージ
死 に対す るイメージは,子供時代 は 「天 国か地獄 に行 く」が55.9%と過半数 だったが,現在 は 「天国か地獄 に 行 く」 は8.1%と減少 し,「永遠 の眠 り」40.0%,「肉体 と精神 の活動 の停止」26.7%,「神秘 ・不可解 な もの」
21.5%が増 えていた.学年別 にみる と1年生で 「永遠 の 眠 り」 が多いが有意差 は認 め られ なか った. また,「特 に考 えた こ とは ない」 は3年 生 と4年 生 は 1人 ず つ (1.5%)と1年生,2年生 よ り少 ないが,有意差 はなかっ た (図2).「その他」 の内容 を見 る と,子供時代 は 4学 年 とも死 に対 して 「怖 い」「悲 しい」「星 になる」 な どが 多かったが,現在 は 1年生 は 「怖 い」「存在 しな くなる」
「悲 しみ」,2年生 は 「怖 い」「悲 しみ」「無 になる」「避 け られない もの」「生 まれ変 わる」,3年生 は 「永遠の別 れ」「新 たな旅立 ち」「いるのが当た り前 だった ものがい な くな る」,4年生 は 「人生 の最期」「想 い出は残 る」
「魂 は輪廻転生す る」「人生の完成」「永遠の別れ」「避 け られない」「無 になる」 と学年 によ り違いがみ られた.
%
50403020100I
特 に 考えた こ とは な い
肉 体と精神 の 活動停 止
永 遠 の 眠 り
神 秘 ・不可 解
魂は 永続する
天 国か 地獄に 行 く
図2.現在の死の イメージ
4.自己の死 について
自分 に とって死 とはなにか とい う質問 には,「生命 の 終わ り」が43.0%ともっとも多 く,次いで 「永遠の眠 り ・ 憩 い」29.6%,「この世 の生命 は終 わるが霊魂 は生 き続 ける」12.6%だった.1年生 は 「永遠 の眠 り ・憩い」 が 他学年 よ り有意 に多 く (p‑0.016),「生命 の終 わ り」 を 上回っていた (図3).
%
6050403020100分 か ら な い
その 他
死 後 の 生 命 の 始ま り
霊魂は 生き 続 ける
永遠 の 眠 り ・憩 い
生命 の 終わり
*
p く
0.05図
3. 自分 に とって死 とは自分 の死 に関 して もっ とも嫌 なこ とでは,「家族 や友 人たちを悲 しませ る」 が33.3%と多 く,次 いで 「物事 を 体験 で きな くなる」23.6%,「痛 み ・苦 しみ」 22.2%,
「死後の生命が どうなるか分か らない」18.9%,「自分 の 体 が どうなるか分 か らない」10.0%,「家族 の面倒 をみ ることがで きな くなる」9.3%の順 であった.「物事 を体 験 で きな くなる」 (p‑0.045),「予定 した計 画 ・仕事 が で きない」 (p‑0.023
)
,「痛 み ・苦 しみ」 (p‑0.004)は 学年 間で有意差が認め られた (図4).自分 の死 を考 える ときに感 じるこ とで は,「恐怖感 を
第
19巻 第
1号
2006年
痛 み ・苦 し み
予 定 し て い た 計 画 や 仕 事 が で き な く な る
家 族 や 友 人 を 悲 し ま せ る
家 族 の 面 倒 を み る こ と が で き な く な る
死 後 の 生 命 が ど う な る の か 分 か ら な い
自 分 の 体 が ど う な る の か 分 か ら な い
物 事 を 体 験 で き な く な る
*p
く
0.05# P
〈O.005図
4.自分 の死 に関 して もっ とも嫌 なこと覚 える」42.2%, 「気分 がす ぐれな くなる」19.3%, 「失 望 ・落胆す る」 ll.1%, 「諦 め る」6.3%, 「目的 を失 う」
2.2%な ど否定 的感情が多 く,「生 きてい ることの喜 びを 感 じる」 とい う肯定 的感情 は26.7%だ った. 「気分がす ぐれな くなる」 で学年 間 に有意差 (p‑0.022)が認 め ら れ,4年生 は他学年 よ り少 なか った (図5).「その他」
の内容 で は, 「不安」「悲 しみ」「喪失感」 とい う否定 的 感情 と,「‑ 日を精一杯生 きよう」「後悔 しない ように生
きる」 とい う前 向 きな記載が見 られた.
%
60 5040 000
0
︹くU21恐 怖 感 を 覚 え る
*
p く
0.05気 分 が す ぐ れ な く な る
失 望 ・落 胆 す る 目 的 を 失 う そ の 他
生 き て い る こ と の 喜 び を 感 じ る
諦 め る
図5. 自分 の死 を考 える ときに感 じること
5.死 を語 るこ とについて
自分が不治の病であるこ とを知 った場合 にその ことを 他 人 に語 るか どうか とい う質 問 に関 して は, 「語 る」
41.9%が 「語 らない」21.9%よ り多 か った. また, 「語 りたいが どうや って語 って よいか分 か らない」 は36.2%
だった.いずれ も学年 間に有意差 は認め られなか った.
語 らない理 由 としては 「相手の反応が分か らないか ら」
34.4%, 「何 を語 って よいのか分 か らないか ら」30.6%,
「相手が 聞 きたが らない と思 うか ら」16.7%だ った.「そ の他」 は18.3%で あ り, 「他 人 に気 を遣 わせ た くない」
「悲 しませ た くない」「相手 に迷惑 をかけた くない」「言 われた相手 も困る と思 うか ら」な どと記載 されていた.
死 に関 して語 る ときに感 じることでは,「ぎこちな さ」
37.3%, 「憂欝感」32.50/.が多 く,学年 間 に差 はなか っ た.「その他」の内容では,「悲 しみ」「空虚感」「喪失感」
な ど否定的感情が多 いが,4年生では 「生へ の素晴 らし さを感 じる」 と記載 した学生 もいた.
自分 の死 について語 りたい相手 は,
「 親
」62.2%,「 配
偶者」53.0%,「友人 ・知人」43.3%,「兄弟 ・姉妹」38.1%が多 く,「看護 師」8.9%,「医師」7.4%,「宗教家」0.4
% は少 なか った (図
6)
. 自分 たちが これか ら就 こう と す る看護師 とい う専 門職 に 「語 りたい」 と望 む ものは, 1年生16.2%,2年生5.9%,3年生4.4%,4年生9.1%と,1年生 は他学年 に比べ る と多いが有意差 はなか った (p‑0.075).
%
70
6050403020100宗 教 家
医 師
看 蔑 師
友 人 ・知 人
親 戚
兄 弟 ・姉 妹
親 配 偶 者
図
6. 自分 の死 について語 りたい相手6.死生観 に影響 を与 えた因子
死生観 に影響 を与 えた因子 について尋 ねた多選択肢 ・ 複 数 回答 の質 問で は, 「身近 な人の死」 が49.3%と最 も 多 く,次 いで 「テ レビ ・映画 な ど」33.0%, 「葬儀へ の 参 列」 24.1%, 「読書」 18.9%の順 だ った. 「講義」 と
「実習」 はそれぞれ10.0%,3.0%と少 ないが , 「講義」
は学年が上が るにつれて増加 し (p‑0.003), 「実習」 は 4年生で10.6%と他学年 より有意 に高かった (p<0.001).
また,宗教 は7.0%と少 なか った (図7).
上記質問 とは別 に実習が死生観 に影響 を与 える と思 う か と尋 ねた二者択一 の質問 には83.7%が 「はい」 と答 え た. また,今 まで死生観 に影響 を与 えるような実習 を経 験 したか とい う二者択一 の質問 には16.3%が 「はい」 と 答 えてお り,学年別 で は,1年生4.4%,2年生5.9%, 3年生19.1%,4年生36.4% と学年が上が るにつ れて増
第
19巻 第
1号 2006年
* .抱 . 腿 .覗 . 「「 * 「 「 #
痛 み ・苦し み
予 定 し て い た 計 画 や 仕事 が で き な く な る
家 族 や友 人 を悲し ませ る
家 族 の 面 倒をみる こ と が で きな く なる
死 後 の 生 命が どうなる の か 分 か ら な い
自 分 の 体が どうなる の か 分 か らな い
物事 を 体 験 で き な く な る
*pく0. 05
#p(0. 005
図
4. 自分の死 に関 して もっとも嫌 なこと覚 える」42.2%,「気分がす ぐれな くなる」19.3%,「失 望 ・落胆する」ll.1%,「諦める」6.3%,「目的 を失 う」
2.2%など否定的感情が多 く,「生 きていることの喜びを 感 じる」 とい う肯定的感情 は26.7%だった.「気分がす ぐれな くなる」で学年間に有意差 (p‑0.022)が認め ら れ,4年生は他学年 より少 なかった (図5).「その他」
の内容では,「不安」「悲 しみ」「喪失感」 とい う否定的 感情 と,「‑ 日を精一杯生 きよう」「後悔 しないように生
きる」 とい う前向 きな記載が見 られた.
%
6050403020100
* ⊥
「 「 、j J
恐怖感を 覚 える
* pく0. 05
そ の 他
生 き て い る こ との 喜 び を 感じ る
締め る
目 的を失う
気 分 が す ぐ れ なく な る
失 望 ・落 胆 す る
図5. 自分の死 を考 えるときに感 じること
5.死 を語 ることについて
自分が不治の病であることを知 った場合 にその ことを 他 人 に語 るか どうか とい う質問 に関 して は,「語 る」
41.9%が 「語 らない」21.9%よ り多か った. また,「語 りたいが どうや って語 って よいか分か らない」 は36.20/.
だった.いずれ も学年間に有意差は認め られなかった.
語 らか 、理由としては 「相手の反応が分か らないか ら」
34.4%,「何 を語 って よいのか分か らないか ら」30.6%,
「相手が聞 きたが らない と思 うか ら」16.7%だった.「そ の他」 は18.3%であ り,「他 人 に気 を遣 わせ た くない」
「悲 しませ た くない」「相手 に迷惑 をかけた くない」「言 われた相手 も困ると思 うか ら」 などと記載 されていた.
死 に関 して語るときに感 じることでは,「ぎこちなさ」
37.3%,「憂審感」32.5%が多 く,学年 間 に差 はなか っ た.「その他」の内容では,「悲 しみ」「空虚感」「喪失感」
など否定的感情が多いが, 4年生では 「生への素晴 らし さを感 じる」 と記載 した学生 もいた.
自分の死 について語 りたい相手 は,
「 親
」62.2%,「 配
偶者」53.0%,「友人 ・知人」43.3%,「兄弟 ・姉妹」38.1%が多 く,「看護師」8.9%,「医師」7.4%,「宗教家」0.4
%は少 なか った (図6). 自分 たちが これか ら就 こうと する看護師 という専 門職 に 「語 りたい」 と望む ものは, 1年生16.2%, 2年生5.9%, 3年生4.4%, 4年生9.1%
と, 1年生は他学年 に比べ ると多いが有意差 はなかった (p‑0.075).
%
706050403020100 宗 教 家
医 師
看護 印
友 人 ・知 人
親 戚
兄 弟 ・姉妹 親
配偶 者
図
6.自分の死 について語 りたい相手6.死生観 に影響 を与 えた因子
死生観 に影響 を与 えた因子 について尋ねた多選択肢 ・ 複数 回答 の質問では,「身近 な人の死」 が49.3%と最 も 多 く,次 いで 「テ レビ ・映画な ど」33.0%,「葬儀へ の 参列」 24.1%,
「読 書
」 18.9%の順 だった. 「講義」 と「実習」 はそれぞれ10.0%,3.0%と少 ないが,「講義」
は学年が上が るにつれて増加 し (p‑0.003),「実習」 は 4年生で10.6%と他学年 より有意に高かった (p<0.0
01 ).
また,宗教 は7.0%と少なかった (図 7).
上記質問 とは別 に実習が死生観 に影響 を与 えると思 う か と尋ねた二者択一の質問には83.7%が 「はい」 と答 え た.また,今 まで死生観 に影響 を与 えるような実習 を経 験 したか とい う二者択一の質問 には16.3%が 「はい」 と 答 えてお り,学年別では, 1年生4.4%, 2年生5.9%, 3年生19.1%, 4年生36.4% と学年が上が るにつれて増
%
706050403020100実 習
講 義
テ レ ビ ・映 画
読 書
宗
教
家 族 の 病 気
自 分 の 病 気
葬 儀 へ の 参 列
身 近 な 人 の 死
*pく0.005
#p
く0.001図 7.死生観 に影響 を与 えた因子
加 し,有意差が認め られた (p<0.001).
宗教 の役割 に関す る質問では,「まった くない」 と答 えた ものが34.8%ともっ とも多 く,「ほ とん どない」30.0
%,「さほ ど重要ではない」17.6%,「やや重要」15.7%,
「非常 に重要」1.9%であ り,学年間に有意差 はなかった.
考 察
看護学生 は他分野の学生 とくらべ,入学時 よ り生 と死 について関心 を持 っているものが多 く,学年が進 むにつ れ さらに深 く考 えるようになる といわれている25).死生 観の形成 には,入学 までの様 々な経験 と入学後 の体験お よび教育が大 きく影響する.本学では,1年前期 に病院 ・ 施設の見学実習,1年後期 に基礎看護学実習 Ⅰ,2年後 期 に基礎看護学実習 Ⅱ,3年後期 に領域別看護学実習, 4年前期 に老年看護学実習,地域看護学実習,助産学実 習 (選択) を行 っている.調査 は7月に実施 したので, 4年生 はほぼすべ ての実習 を終了 しているが,1年生 は 見学実習のみ,2年生は基礎看護学実習 Ⅰまで,3年生
は基礎看護学実習 Ⅱまでの経験である.
死 に対す るイメー ジは,幼少 時代 は過半数 の ものが
「天国か地獄 に行 く」 と答 えていたが,現在 は 「永遠 の 眠 り」「肉体 と精神の活動の停止」「神秘 ・不可解な もの」
な ど多様化 していた.これは小児期 か ら青年期へ と成長 す ることによる自然 な変化 と考 えられる.学年 間に有意 差 は認め られなかったが,1年生で 「永遠の眠 り」が多 く,「特 に考 えた ことはない
」
は3, 4年生で少 ない傾 向にあった.その他の内容は,4年生では 「人生の完成」「想い出は残 る」「輪廻転生」な ど死 を肯定的に捉 えた記 載が見 られた.
学生 は,死 を 「生命 の終 わ り」と捉 える とともに,
「永遠の眠 り ・憩 い」と感 じ,「霊魂」や 「死後の生命」
を信 じる もの もいた. 自分の死 を考 えるときに 「恐怖感 を覚える」 ものが各学年 とも多かった.このことは死ぬ ときの痛みや苦 しみへの不安 ,私 とい う存在が消滅す る
ことへ の不安,死後の生命が どうなるか分か らない とい う未知 なる死後へ の不安か らくる もの と思 われる.青年 期 にある若者の多 くは,死 は高齢者や病者 に起 こる もの であ り,若 くて健康 な今 の自分 には関係 ない と楽観的に 考 えている.看護学生 は講義や実習 を通 して,人は誰 も 死か ら逃れることは出来 ない ことを知 り,親兄弟や友人 な ど身近な人 に,そ して 自分 にも必ず死が訪 れるとい う 現実 に気づいてゆ く.有意差 はなかったが, 3, 4年生 の方が1,2年生 よりも恐怖感 を覚 える ものが多か った のは,死 をよ り現実的に捉 えているため と思 われる. ま た,30%近 くの ものは 「生 きていることの喜びを感 じる」
と答 えている.死 を考 えることは生 きる意味 を考 えるこ とであ り,死 について深 く考 える機会が増 えれば,生の 喜び も増 えるのではないだろうか.
自分 の死 に関 して嫌 な こととして,「物事が体験 で き な くなる」「痛み ・悲 しみ」「死後の生命が どうなるか分 か らない」 といった不安 とともに, 「家族や友人 を悲 し ませ る」「家族の面倒 をみることがで きな くなる」 といっ た他者への思いや りがみ られた.1年生では 「物事 を体 験で きな くなる」「予定 していた計画や仕事 がで きな く なる」 といった 自分 に関することが他学年 より多か った が,4年生では 「痛み ・悲 しみ」が他学年 より多かった.
4年生 は実習でがん患者や終末期患者 をケア した もの も 多 く,死 をよ り身近 に捉 えているため と思われる69).
自分が死 の病であることを知 った時,語 る方法が分か らない者 も含め,約8割の学生が 自分の死 について語 り たい と思 っている.語 りたい相手 として多かったのは親, 配偶者,次 いで友人 ・知人,兄弟 ・姉妹 であった. これ は青年期 に共通の傾向 といえるが, 自分 たちが これか ら 就 こうとしている看護師あるいは医師に語 りたい ものは 少 なか った.有意差 はない ものの看護師 ・医師 とも 1年 生で最 も多 く, 2年生, 3年生 と低下 し, 4年生で少 し 増加 しているのは興味ある結果である.看護師を目指 し, 大学 に入学 したばか りの 1年生 は看護師 ・医師に漠然 と
した期待 と信頼感 をもっているが, 2年生, 3年生 と次 第に薄れること, しか し実習で医療者 と患者の触れ合い を身近で見, 自ら経験す ることによ り,再 び,医療者 に 対す る期待 と信頼感が高 まって くるのではないか と推測 され る.宗教家 に語 りたい もの は1人 (0.4%) のみで あ り, 日本 では宗教あるいは宗教家が身近 に存在 してい ない ことが示 された.
自己の死生観形成 に影響 を与 えた因子 では,祖父母 な ど身近 な人 との死別経験が もっとも多かった.身近 な人 の死 を悼み,悲 しむことが,死生観 の形成 に大 きな役割 を果たす もの と思われる.ほ とん どの学生が死別経験 と 葬儀への参列経験 を有 しているが,臨終 に立 ち会 った学 生 は約20%と少 なかった.現代 は多 くの人が病院で死 を 迎 えているため,子供が臨終 に立 ち会 う機会 は少 ない.
住み慣 れた 自宅や家庭的な環境 を提供 して くれる施設で 死 を迎 える人が増 えれば,臨終 に立 ち会 う機会 も増 える
%
706050403020100. A . d
.山. 相 . . 「
* #
[ 「 「
実 習
講 義
テ レ ビ ・映 画
読 書
宗
教
家 族 の 病 気
自 分 の 病 気
葬 儀 への 参 列
身 近 な 人 の 死
*pく0.005
#pく 0. 0 01
図
7.死生観 に影響 を与 えた因子加 し,有意差が認め られた (p<0.001).
宗教 の役割 に関す る質問では,「まった くない」 と答 えたものが34.8%ともっとも多 く,「ほとん どない」30.0
%,「さほど重要ではない」17.6%,「やや重要」15.7%,
「非常 に重要
」
1.9%であ り,学年間に有意差 はなかった.考 察
看護学生 は他分野の学生 とくらべ,入学時 よ り生 と死 について関心 を持 っているものが多 く,学年が進 むにつ れ さらに深 く考えるようになる といわれている25).死生 観の形成には,入学 までの様 々な経験 と入学後の体験お よび教育が大 きく影響する.本学では, 1年前期 に病院 . 施設の見学実習, 1年後期 に基礎看護学実習 Ⅰ, 2年後 期 に基礎看護学実習 Ⅱ,3年後期 に領域別看護学実習,
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年前期 に老年看護学実習,地域看護学実習,助産学実 習 (選択) を行 っている.調査 は7月に実施 したので, 4年生 はほぼすべ ての実習を終了 しているが, 1年生は 見学実習のみ,2年生は基礎看護学実習 Ⅰまで, 3年生は基礎看護学実習 Ⅱまでの経験である.
死 に対す るイメージは,幼少時代 は過半数 の ものが
「天国か地獄 に行 く」 と答 えていたが,現在 は 「永遠の 眠 り」「肉体 と精神の活動の停止」「神秘 ・不可解な もの」
な ど多様化 していた.これは小児期 か ら青年期へ と成長 す ることによる自然な変化 と考 えられる.学年間に有意 差 は認め られなかったが
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年生で 「永遠の眠 り」が多 く,「特 に考 えたことはない」 は3, 4
年生で少 ない傾 向にあった.その他の内容は,4年生では 「人生の完成」「想い出は残る」「輪廻転生」 など死 を肯定的に捉 えた記 載が見 られた.
学生 は,死 を 「生命の終 わ り」 と捉 える とともに,
「永遠の眠 り ・憩 い」 と感 じ,「霊魂」や 「死後の生命」
を信 じる もの もいた.自分の死 を考 えるときに 「恐怖感 を覚える」 ものが各学年 とも多かった.このことは死ぬ ときの痛みや苦 しみへの不安,私 とい う存在が消滅する
ことへの不安,死後の生命が どうなるか分か らない とい う未知 なる死後への不安か らくる もの と思われる.青年 期 にある若者の多 くは,死 は高齢者や病者 に起 こるもの であ り,若 くて健康 な今の自分 には関係 ない と楽観的に 考 えている.看護学生 は講義や実習 を通 して,人は誰 も 死か ら逃れることは出来 ない ことを知 り,親兄弟や友人
など身近な人に,そ して自分 にも必ず死が訪 れるとい う 現実 に気づいてゆ く.有意差 はなかったが, 3, 4年生
の方が1,2年生 よりも恐怖感 を覚えるものが多か った のは,死 をよ り現実的に捉 えているため と思われる. ま た,30%近 くの ものは 「生 きていることの喜びを感 じる」
と答 えている.死 を考 えることは生 きる意味 を考 えるこ とであ り,死 について深 く考 える機会が増 えれば,生の 喜び も増えるのではないだろうか.
自分 の死 に関 して嫌 な こととして,「物事が体験で き な くなる」「痛み ・悲 しみ」「死後の生命が どうなるか分 か らない」 といった不安 とともに,「家族や友人 を悲 し ませ る」「家族の面倒 をみることがで きな くなる」 といっ た他者への思いや りがみ られた. 1年生では 「物事 を体 験で きな くなる」「予定 していた計画や仕事がで きな く なる」 といった自分 に関することが他学年 より多かった が, 4年生では 「痛み ・悲 しみ」が他学年 より多かった.
4年生 は実習でがん患者や終末期患者 をケア した もの も 多 く,死 をより身近 に捉 えているため と思われる69).
自分が死の病であることを知 った時,語 る方法が分か らない者 も含め,約8割の学生が 自分の死 について語 り たい と思っている.語 りたい相手 として多かったのは親, 配偶者,次 いで友人 ・知人,兄弟 .姉妹 であった.これ は青年期 に共通の傾向 といえるが, 自分 たちが これか ら 就 こうとしている看護師あるいは医師に語 りたい ものは 少なか った.有意差はない ものの看護師 ・医師 とも1年 生で最 も多 く, 2年生, 3年生 と低下 し, 4年生で少 し 増加 しているのは興味ある結果である.看護師を目指 し, 大学 に入学 したばか りの 1年生 は看護師 ・医師に漠然 と
した期待 と信頼感 をもっているが
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年生, 3
年生 と次 第に薄れること, しか し実習で医療者 と患者の触れ合い を身近で見, 自ら経験することにより,再び,医療者 に 対する期待 と信頼感が高 まって くるのではないか と推測 される.宗教家 に語 りたい ものは1人 (0.4%)のみで あ り, 日本 では宗教あるいは宗教家が身近 に存在 してい ない ことが示 された.自己の死生観形成 に影響 を与 えた因子 では,祖父母な ど身近 な人 との死別経験が もっとも多かった.身近 な人 の死 を悼み,悲 しむことが,死生観の形成 に大 きな役割 を果たす もの と思われる.ほとん どの学生が死別経験 と 葬儀への参列経験 を有 しているが,臨終 に立 ち会った学 生は約20%と少 なかった.現代 は多 くの人が病院で死 を 迎 えているため,子供が臨終 に立 ち会 う機会 は少ない.
住み慣れた自宅や家庭的な環境 を提供 して くれる施設で 死 を迎 える人が増 えれば,臨終に立ち会 う機会 も増 える