盲点において補完された線分の長さの知覚 [ PDF
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(2) ディスプレイ では,2つの刺激を両眼にそれぞれ呈示する両眼観察下 においても,補完された線分は知覚的縮小がおきるのであ ろうか.また,知覚的縮小は刺激呈示方位の影響を受ける. 標準刺激. のであろうか.その 2 点を調べるために実験 2 を行った.. 比較刺激. 実験 2:恒常法による両眼観察 2.1 目的 恒常法を用い,刺激を両眼に呈示する両眼観察条件の もと,実験1と同様に,盲点において補完された線分の 観察距離 30cm. 右眼. 盲点 左眼 Fig.1.1 単眼観察の実験状況. 知覚的長さになんらかの歪みが見られるかどうか,水平 方位/垂直方位の間に異方性があるかどうかを検討し, 単眼観察の結果と比較することを目的とした. 2.2 方法. 1.3 結果および考察. 被験者;正常な視力をもつ成人 6 名が実験に参加した.. 刺激呈示条件,刺激呈示方位,刺激の長さの 3 要因. 装置と刺激;すべての刺激の作成・制御には,パーソナ. 繰り返し分散分析を行った結果,刺激呈示条件で主効果. ル・コンピューター(FMV Net Vi st a A30P)を用い,刺. が統計的に有意であった[F( 1, 6) =30. 452 , p<. 01] .また. 激呈示には 2 台のディスプレイ(I I YAMA HM204D)を用. 刺激呈示条件と刺激呈示方位の交互作用が有意傾向であ. いた.各ディスプレイは 1 台に標準刺激を,もう 1 台に. った[F( 1, 6) =5. 569 , p=0. 0563]ので,単純主効果の検. 比較刺激を呈示し,ミラーステレオスコープによって両. 定を行ったところ,実験条件において垂直方位と水平方. 眼融合されるようにした.チンレストを用いて,被験者. 位との間が統計的に有意であった.盲点において補完さ. の頭部を半固定し,ノニウス線分によって注視点を呈示. れた線分は,盲点以外に呈示された線分より短く知覚さ. することによって眼球位置を統制した.反応の記録には. れている(Fi g1. 2 参照)ので,縮小して知覚されるとい. キーボードを用いた.. える(知覚的縮小) .更に,盲点において補完された線分. 刺激は,実験条件では,標準刺激の線分は,幅 1. 7°. は垂直方位では縮小しないが,水平方位では縮小すると. ×長さ 18°で,右眼の盲点領域を挟むように盲点の水平. いう異方性が観察された. 線分の長さについては,いず. 軸上あるいは垂直軸上に呈示された.比較刺激は,標準. れの結果も有意な差は得られなかった.従って呈示線分. 刺激と同一の幅で一本の線分であり,長さは 15∼21°の. の長さは歪みの量に関係していなかった.. 7 段階であった.比較刺激は左眼の右眼盲点対応領域(こ めかみ側網膜)に呈示された( Fi g. 2. 1 参照) .. 実験条件―統制条件( deg). 2. 水平方位. 垂直方位. 1. 標準刺激/比較刺激. 知覚世界. +. 0. -1. -2 16°. 18°. 20°. 標準刺激の長さ. Fig.1.2 盲点領域・盲点領域外に呈示された刺激の 知覚量の差 (実験 1). 右眼. 左眼 右眼盲点対応領域. 盲点. Fig.2.1 両眼観察の実験状況. ディスプレイ.
(3) 統制条件では,標準刺激は,盲点領域にかからない右. 装置と刺激;すべての刺激の作成・制御には,パーソナ. 眼の鼻側網膜上に盲点の水平軸あるいは垂直軸と平行な. ル・コンピューター(FMV Net Vi st a A30P)を用い,刺. 方位に呈示された.比較刺激は左眼のこめかみ側網膜上. 激呈示にはディスプレイ(I I YAMA HM204D)を用いた.. に呈示された.標準刺激も比較刺激もどちらも一本の連. 単眼観察下では実験 1 と同様に,1 台のディスプレイを. 続した線分であり, 幅・長さは実験条件と同じであった.. 用い,左眼を眼帯で遮蔽した.両眼観察下では実験 2 と. いずれの条件においても刺激は継時的に呈示され,呈示. 同様に, 2 台のディスプレイを用い,1 台に標準刺激を,. 時間は 200ms であった.. もう 1 台に比較刺激を呈示し,ミラーステレオスコープ. 手続き;実験前に,各被験者は右眼の盲点領域を測定し. によって両眼融合されるようにした.両観察条件ともに. た.被験者は標準刺激に対し,比較刺激が長いか短いか. チンレストを用い,被験者の頭部を半固定した.反応の. 判断することを求められた.. 記録にはキーボードを用いた. 刺激は,単眼観察下において,実験条件では,標準刺. 2.3 結果および考察. 激は,幅 1. 7°×長さ 18°で,盲点領域を挟むようにし. 各被験者の反応からそれぞれの下位条件における主. て盲点の水平軸上あるいは垂直軸上に呈示された.凝視. 観的等価点(PSE)を求め,統計的分析の単位とした.. 点を挟んで,刺激と同一の幅で一本の連続線分である比. 刺激呈示条件,刺激呈示方位の 2 要因繰り返し分散分析. 較刺激がこめかみ側網膜に呈示された.統制条件では,. を行ったところ,いずれの主効果も有意ではなかったの. 標準刺激は,盲点領域にかからない右眼の鼻側網膜上に. で,両眼観察では補完された線分に歪みはなく,また,刺激. 盲点の水平軸あるいは垂直軸と平行な方位に呈示された.. 呈示方位による差異( 異方性) もなかった.この結果は実験1. 凝視点を挟んで,比較刺激が右眼のこめかみ側網膜に呈. と異なる.この原因として,測定法の相異や比較刺激の変化. 示された.標準刺激・比較刺激ともに一本の連続した線. 幅の問題が挙げられる.これらの問題を解決する為,単. 分であった.幅は実験条件と同じであった.. 眼観察も両眼観察も行うことが出来る測定方法を用い, 単眼観察・両眼観察の比較を実験3で行った.. 1. 7°×長さ 18°で,右眼の盲点領域を挟むように盲点 の水平軸上あるいは垂直軸上に呈示された. 比較刺激は,. 2. 実験条件- 統制条件(deg). 両眼観察下において,実験条件では,標準刺激は,幅. 標準刺激と同一の幅で一本の線分であり,左眼の右眼盲. 水平方位. 垂直方位. 1. 点対応領域に呈示された.統制条件では,標準刺激は, 盲点領域にかからない右眼の網膜上に盲点の水平軸ある いは垂直軸と平行な方位に呈示された.比較刺激は左眼. 0. のこめかみ側網膜上に呈示された.標準刺激も比較刺激 も一本の連続した線分であり,幅・長さは実験条件と同 じであった.. -1. いずれの場合も比較刺激の長さは 15∼20°の長さで あり,刺激は継時的に呈示され,呈示時間は 200ms であ. -2. った. Fi g. 2. 2 盲点領域・盲点領域外に呈示された. 手続き;実験前に,各被験者は右眼の盲点領域を測定し. 刺激の知覚量の差 (実験 2). た.被験者は標準刺激に対し,比較刺激が長いか短いか 判断することを求められた.. 実験 3:PEST法による単眼・両眼観察 3.1 目的. 3.3 結果および考察. PEST法を用い,盲点において補完された線分の知覚的. 単眼観察にて得られた値を,刺激呈示条件,刺激呈示. 長さについて,単眼観察と両眼観察との比較・検討を行. 方位の 2 要因繰り返し分散分析を行ったところ,刺激呈. うことを目的とした.. 示条件,刺激呈示方位の主効果が統計的に有意であった [F( 1, 6) =62. 609 , p<. 01;F( 1, 6) =7. 589 , p<. 05] .また. 3.2 方法. 刺激呈示条件と刺激呈示方位の交互作用効果が有意であ. 被験者;単眼観察では,正常な視力をもつ成人 7 名が,. った[F( 1, 6) =121. 917 , p<. 01]ので,単純主効果の検定. 両眼観察では,成人 6 名が実験に参加した.. を行ったところ,実験条件において垂直方位と水平方位.
(4) との間および水平方位の実験条件と統制条件の間で有意. 生じるか, また, ②水平方位/垂直方位の異方性があるか,. な差が得られた.. ③単眼観察と両眼観察での差異はあるか検討することを. 両眼観察にて得られた値を,刺激呈示条件,刺激呈示. 目的とした.実験 1 では,単眼観察条件下で,調整法を. 方位の 2 要因繰り返し分散分析を行ったところ,刺激呈. 用いて検討した.実験2では,両眼観察条件下で,恒常. 示条件の主効果が統計的に有意であった. 法を用いて検討した.実験3では,両眼観察・単眼観察. [F( 1, 5) =14. 112 , p<. 05] .また,刺激呈示条件と刺激呈. の両条件下で,PEST法を用いて検討した.それらの結果. 示 方 位 の 交 互 作 用 効 果 が 有 意 で あ っ た. をまとめると次のようであった.①盲点において補完さ. [F( 1, 5) =22. 341 , p<. 01]ので,単純主効果の検定を行. れた線分に歪みが生じ,それは知覚的縮小であった.そ. ったところ,実験条件において水平方位と垂直方位との. の縮小は②水平方位では縮小量が大きく,垂直方位では. 間および水平方位の実験条件と統制条件の間で有意な差. 殆どおきないという異方性があった.それらの結果は③. が得られた.. 単眼観察においても両眼観察においても同じ結果であっ. よって,単眼観察・両眼観察ともに,盲点周辺での歪. た.. みがあるといえる.その差は盲点以外に呈示された線分. 補完された線分の知覚的縮小とその異方性の原因は. より短く知覚されているので,実験 1 同様,知覚的縮小. 何か.原因として 3 つの可能性がある.①補完が起きる. が起きており,また,水平方位では知覚的縮小が起きる. ことで生じている. ②盲点に対する V1 皮質上の形状が影. が垂直方位では起きないという異方性も観察された.. 響している.Komat su ら( 2000) はマカクザルの皮質上で. 実験条件ー統制条件(deg). 盲点に対応する箇所は,盲点の形状に対して極端な縦長 2. 楕円形をしていることを明らかにした.この皮質上の形. 水平方位. 垂直方位. 1. 状が,水平方位では知覚的縮小がおき,垂直方位ではお きないという異方性に影響した可能性も残る.そして, ③補完の生起と V1 皮質上の形状の両方が相互に影響し 合い,知覚的縮小がよりおきている.これら 3 つの可能. 0. 性を検討していく必要がある. まだ盲点における補完は明らかにされていない点が多い.. -1. 今後研究を重ねることで複雑な視覚システムの情報処理 ****. 解明の一手がかりとなる.. -2. Fi g. 3. 1 盲点領域・盲点領域外に呈示された刺激の. 引用文献. 知覚量の差 単眼観察( 実験 3) Andrews, P. R. & Campbel l , F. W . 1991 I mages at t he bl i nd spot . Nat ure 353, 308. 実験条件ー統制条件(deg). 2. 水平方位. 垂直方位. 1. Komat su, H. , Ki noshi t a, M. &Murakami , I . 2000 Neural responses i n t he ret i not opi c represent at i on of t he bl i nd spot i n t he macaque V1 t o st i mul i f or percept ual. 0. f i l l i ng- i n.. Journal. Neurosci ence. 20, 9310- 9319 Schuchard, R. A. 1993 Val i di t y and i nt erpret at i on of. -1. Amsl er gri d report s. Archi ves of Opht hal mol ogy **. -2. 111, 776- 780 Sears, C. R. & Mi kael i an, H. H. 1989 Expl orat i ons of. Fi g. 3. 2 盲点領域・盲点領域外に呈示された刺激の 知覚量の差 両眼観察( 実験 3). percept ual f unct i oni ng surroundi ng t he opt i c di sk. Canadi an Psychol ogy 30( 2a) , 408 Tri pat hy, S. P. , Levi , D. M. &Ogmen, H. 1995 Percei ved. 総合考察 本研究では,①盲点において補完された線分に歪みが. l engt h across t he physi ol ogi cal bl i nd spot . Vi sual . Neurosci ence 12, 385- 402.
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