コンピュータによる素因数分解
楕円曲線法アノレゴ
P
ズムへの展開について教科・領域教育専攻 自然系(数学)コース 広 瀬 靖 弘
はじめに
素因数分解とは,合成数を素数の積に表すこ とである.近年ではRSA暗号に使用されてい て,その信頼性は大きな数の素因数分解の困難 さに基づいている.また,楕円曲線暗号の副産 物として,楕円関数を使用した素因数分解法で ある楕円曲線法が 1985年にレンストラによ って開発された.楕円曲線法は,暗号にとって 大した脅威を与えたわけではない.しかし,予 想もしないような斬新な工夫から開発されたこ とから,素因数分解の劇的な方法が見つかるか もしれないと暗号研究者は関心を寄せている.
研究内容としては,初等整数論,素数判定法,
素因数分解法,コンピュータによる多倍精度計 算について挙げられるが,論文では初等整数論 から見た楕円曲線法を含む素因数分解法アルゴ、
リズム及びその過程について述べている.
1素因数分解
ユークリッド互除法及び初等整数論の基礎定 理について述べている.これらは,素因数分解 に欠かせないものである.
初等整委主論の基礎定理合成数nは素数の積に 分解される.そこで,同じ素数の積を1つのベ キにまとめれば次が成り立つ.
(1)相異なる素数p,q, T,…と α,b, c,…ε Nにより,合成数nは
指 導 教 員 丸 林 英 俊
a b
n=p q T.
と表される.
(2)素数 p,q, T,…と対応する指数 a,b, c,
…はnによりIJ填序を除いて一意的に定まる.
2合同式
余りのある割り算の性質を深く追求する為の 準備として,合同式を取り扱っている.また,
素数判定法の1つであるフェルマーテストやオ イラーの定理は素因数分解法を述べる上で基盤
となるものである.
合同式 n E Nとα,b E
Z
に対して,差。‑bがnの倍数であるとき aとbはnを法とし て合同であるといい,
α三 b(mod n) と書き表し,この式を合同式という.
フェノレマーの小定理 素数pとaEZに対して,
(1) aP三 α (modp)
(2) (a, p) = 1 =今aP‑1
= =
1 (mod p) が成り立つ.フェノレマーテスト (a, n) = 1かつan‑l若1 (mod n)となるGが存在するならば nは合成数
となる.この合成数判定法をフェルマーテスト という.これは,フェルマーの小定理の対偶か ら得られるものである.
A斗A
nHd n べ
U
オイラーの関数 nENに対して, {L 2, 3,
・,n}の中でnと互いに素となる数の個数を
φ
(n)で表す.この
φ
をオイラーの関数という.オイラーの定理 nE N, m =
φ
(n), (a, n) = 1となる a E Zに対して,αφ(n) = am三 1(mod n)
が成り立つ n=p=素数のとき
φ か)
=p‑1 であるから,フェルマーの小定理はオイラーの 定理に含まれる。3さまざまな素因数分解法
素因数分解法としてp‑1法,p+1法,楕 円曲線法の理論的な展開及びそのアルゴリズム について述べている.また, UBASICというプ ログラミング言語を用いて,素因数分解のプロ グラムを作成している.
p‑l法 1974年,ポラードによって考え出さ れた素因数分解法である.フェルマーテストな どでnが合成数であると分かっているとき n
= pnl (Pは大きな素数)となっていたとしても,
p‑lが小さな素数の積になっていれば,以下 のような理論より nの素因数が見つかる可能性 があると説明できる.
唱 e今 e
P ‑1 = Pl‑1 P2‑L.
…
Pr‑r やiMt<M)となっていると仮定する .
q j < M
となるすべての素数に対して
qf<M
孟qF‑+1となる五を求 め,K = I I q f
とおく.よって ,p ‑ 1は K の約数である .(a, n)
=
1となる αに対してい,p)=
1となるのでフェルマーの小定理から,
aK三 1(mod p)
となる.よって ,aK ‑:‑1はpで割り切れる.し かし nでは割り切れないかもしれない.つま
り,
1
<
(aK ‑ L n)<
nとなる可能性がある.これが成り立てば,nの 真の約数は見つかったことになる.そして,真 の約数が素数ならば nの素因数が見つかった ことになる.
p‑l法は楕円曲線法の理論の一部に組み込 まれている.
p+l法 p‑l法と同様に楕円曲線法の理論 に関わっている素因数分解法であるが,実際に p+l法を使用することはほとんどない.
楕円関数微積分でよく知られている式として,
(Z
d
芯y
諸んゾ τ 玉 吉
(‑1 ~季~ç ;i. 1)とおくと, y=sin‑ix,つまり x= sin yとなる.
同様に,
r者 dz
w んぜ(1‑x2){1 ‑k2:t/1)
とおく.この式を楕円関数という.また,
(0 語~k < 1, ‑1 ~ :t ;;& 1)
x = sn (y, k) = sn y sn (y, 0) = sin y とする.これは,楕円曲線法の元となるもので ある.
楕 円 曲 線 法 複 数 多 項 式 2次ふるい法と並び,
素因数分解の代表的な方法である.特徴として,
楕円曲線上の点がアーペル群になっていること を利用したものである.また,楕円曲線法は運 が良ければ短時間で素因数が見つかるという魅 力的な点がある.
﹁ ﹁
Un y
円六U