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(オキカジカ属およびその近縁群比較形態学および系統分類学的研究)

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 水 産 科 学 ) 稲 川    亮      学 位論 文題 名

Comparative /Iorphology and Phylogenetic Systematics     of Fishes of the Genus Ay を d を ZZ 勿 s     anditSRelatiVeS ( PerCif 〇 rmeS : COttidae )

(オキカジカ属およびその近縁群比較形態学および系統分類学的研究)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  オキカジカ属Ar tediellus,キンカジカ属Cottiusculus,ソコカジカ属Zesticelusなどの6属21種か ら構成されるいわゆるオキカジカグループは,スズ キ目Perciformesカジカ科Cottidaeに属し,北部 太平洋,北部大西洋,および北極海の浅海から深海にまで生息する小型の底生性魚類である.本グルー プは,頭部が著しく縦扁すること,体はほぼ無鱗で,側線鱗が溝状で皮下に埋没することなどで特徴づ けられる.

  オキカジカグループの分類については,Taranetz (1941),Neyelov (1968,1979)などにより′伝統的分 類学の立場から研究され,カジカ科内の族(tribe)あるいは亜科とする見解が提示されてきた.また,

分岐 分類 学的 な立 場か らの 研究 によ り本 グル ー プの 数属 が単 系統 群で ある こと ,ま た,Bolinia eurypteraが それらの姉妹群であるとする仮説が提示されてきた(Yabe,1985; 1991).このほかに も Bolin (1936)などによる本グループとの近縁性が示唆された種が知られているほか,近年,本グループ に類似するがグループ内のいずれの属の標徴とも一致しない未記載種(以後Yellow Sea sculpinとする)

が黄海で採集された.

  このように,オキカジカグループは従来から様々な研究がなされているが,本グループ全体を扱った 分岐分類学的な研究が行われていないため,本グループの分類・系統・進化に関しては不明な点が多い,

  そこで本研究は,オキカジカ属Artediellus,クロ ヒレカジカ属Ar tediellich thys,キンカジカ属 Cottiusculus,ソコカジ カ属Zesticelus, Bolinia属,クシビレカジカ属Phasmatocottus,韜よびYellow Sea sculpinを新たにオ キカジカグループとして定義し,その1)形態学的諸特徴の記載,2)単系統 性の検証,3)系統類縁 関係の推定,4)分類体系の 再構築,および5)進化プロセスの解明をするこ とを目的とした.

【材料および方法】

  オキカジカグループを含むカジカ科10属23種の比 較解剖を行い,得られた形態形質を系統解析に用 いた.解析には分岐分類学的手法を採用し,最節約的基準のもとで系統解析ソフトPaup*ver.4.Obl0を 用い た, 形質 の極 性決 定に は外 群比 較法 を採 用 し, 外群 にはJordan幽 ―叩eおよ び肌m過p脇¢恥 冒ゴめ釘ガを用いた,形質進化の推定にはMacCladever.4.Oを用い,分布および生息水深における進化 プロセスの推定はSawada(1982)に従った,

【結果および考察】

])オキカジカグループの系統類縁関係

‑ 972

(2)

  本グループの比較解剖を行い,骨格系・筋肉系の形態学的記載を行った.また,頭部感覚系を骨格要 素との比較により再定義・記載した.そこから得られた53変換系列を用いて,系統解析を行った.そ の結果,150本の最 節約的な樹形(樹長104,一 致指数0.5673)が得られ,その厳密合意樹を本グルー プの系統仮説として採用した(図1).

  本グループは側線鱗が溝状を呈す,後部腹椎骨の側突起が癒合して薄板状を呈するなど10個の共有 派生 形質 で支 持さ れる 単系統群(クレードD2)であると判明した.また ,本グループにはBolinia lineage(クレードEl),Ar話d面口ushneage(クレードF1),およびNon‐メh゜勿d嵒口Hslineage(ク レー ドF2)の3つの 主要系統が存在すること が明らかになった.めぬなhneageはめムぁ嵒属から構 成され,感覚管の分枝管が発達することで支持された.Arめめ甜mslineageはオキカジカ属魚類のみか ら構成され,眼下骨棚が細いことで支持された.Non.讎B出ぬ絡1血eageはクロヒレカジカ属,キンカ ジカ属,クシビレカジカ属,ソコカジカ属,およぴYeuowSeasculpinから構成され,前鰓蓋骨第2棘,

3棘があることで支 持された.また従来のキンカジカ属は側系統群であり,キンカジカ¢蝕閲ロガと Ye110wSeasculpinからなる単系統群とオキヒメ カジカD舮ぬ餾の系統に分かれることが明らかになっ た,

2)オキカジカグループの分類

  従来のオキカジ カ属,クロヒレカジカ属,Bolinia属,クシビレカジカ属,およびソコカジカ属はい ずれも単系統群とみなされたことから,これらの属のランクを踏襲した.従来のキンカジカ属は側系統 群であることが判 明したことから,本属のタイプ種であるオキヒメカジカ のみからなる単系統群を Cottiusculusオキ ヒメカジカ属とした.また,キンカジカesc轟m甜dおよぴ1も110wSeasculpinから なる単系統群には,新属のランクを与えるべきと判断した,

  以下に本研究で提唱するオキカジカグループの新分類体系を示す.なお,本研究では,解析に加える ことができなかった」むぬめ甜施a属およびカワリオキカジカ属については,Neyelov(1979)に従い,便 宜的に本グループに含めた.

4r地め矼んsgroupオキカジカグループ GenusAr伽め甜msJordan,1885オキカジカ属

GenuS2をS缸州uSJOrdanandEVerman,1896  ソコカジカ属 Genusa)£ガH鯔H血sJordanandStarks,1904オキヒメカジカ属 Genus4血め畆切ぬsSoldatov,1922カワリオキカジカ属

Genus亅功a脚a勿勿甜wBOlin,1936クシビレカジカ属 Genus4r.ぬd髭吐え嵒aTaranetz.1937

Genus4ん飢む畆ぬゐ斑リ侶Taranetz,1941クロヒレカジカ属 GenusZ珀Z由嵒Yabe、1991

UnnamedNewGenus(キンカジカおよび1をllowSeasculpinに対する新属)

3)オキカジカグループの進化傾向

  系統解析の結果に基づきオキカジカグループの頭部感覚系,前鰓蓋骨棘,体サイズ,体色,地理分布,

およぴ生息水深の進化傾向を推定した,その結果,本グループは進化の過程で,生息水深の祖先状態を 維持してきたタイプと,浅海化あるいは深海化にともなう幾っかの進化パターンの存在が示唆された.

本グループ内で,B.o圧口血属は共通祖先の生息環境に著しく適応したことで,ほとんどの原始状態を保 持 した .ま た, 生息 域の 浅海 化は4mめaロH81ineageのオキカジカ属とNon‐4mめa口wlineageのキ ンカジカ属およびYeuowSea8culpinで平行的に 生じた.このうち,前者は感覚孔の著しい消失傾向を ともない,その機能を補填する視覚などの発達の可能性が示唆された,また,後者は感覚孔の消失傾向

‑ 973

(3)

舜 黜 ふ ザ ぎ L 丶 カ { 】 蛩 藷 蹴 冲 謝 S 瀞 醂 商 目 渋 黜 S ず ぎ 】 蔀 冷 竍 3 謌 嘗 藻 肓 皀 S ぢ イ 匕 渋 湖 帰 畊 ぎ 瀞 . 舟 、 町 法 諦 ヨ 蒲 蔚 イ 匕 再 N o n ‑ A r t e d i e l l u s   l i n e a g e 3 營 丙 黜 & ザ ぎ ー 崎 ロ パ l / J 、 ジ 廿 詞 S 崎 く ー て 阿 心 、 ン 嘔 く 廿

、 ジ 廿 湎 詩 叶 甓 ヾ u I 、 ジ 廿 湎 カ ゝ ザ 爺 い 心 ぐ ー イ d 嘲 苛 r べ 晦 ぐ ナ こ . 副 崎 て ー F ' I r H チ ー 守 血 S 日 音 禽 イ 匕 高 ヨ 議 黜 蚤 ザ ぎ d 議 ) 蛩 疎 再 苗 蔕 霈 謡 帶 妄 辯 白 勺 帝 r ナ こ 卅 卅 蒲 蕎 イ 匕 「 ナ S 丙 逡 r 〕 辯 球 再 蛩 藷 蹴 ヰ 諱 ヨ 飜 嘶 奇 寄 ヰ ふ X 3 J ヽ 逮 イ 匕 滞 何 蔀 楽 イ 匕 幣 旧 チ 滞 ぐ ノ 蒲 蔚 イ 匕 r ナ こ 旧 鳩 N 冲 ・

き ミ ビ さ 奮 z o n o p e

H e m i l e p i d o   t u s   g i l b e r t i M y o x o c e p ・ カ ヰ き め s t e l l e r i

T a u r o c o t t u s   b e r g i

A s c e l i c h t h y s   t h o d o r u s

m o l i n i a   e u r y p t e r a

A r t e d i e l l u s   n e y e l o v i

ふ ふ ぬ 怠 げ き め u n c i n a t u s

ふ ヽ 譜 暴 き s a 詩 ゝ き ま a 詩 さ 蕁 ま

A r t e d i e l l u s   c a m c h a t i c u s

ふ 、 、 t e d i e l l u s   f u s c i m e n t u s

ふ 屯 ( 瀞 き ` め Q ふ 妥 ぐ さ Q

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A r t e   d i e l l u s   a p o r o s u s

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9 7 4

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教授    仲谷 一宏 副査    教授    矢部    衞 副査   准教授   今村   央

     学位論 文題名

Comparative IvIorphology and Phylogenetic Systematics     of Fishes of the Genus Aytediellus

    and its Relatives (Perciformes: Cottidae)

   (オキ カジカ属お よびその近縁群比較形態学および系統分類学的研究)

   オキカジカ属をど 6 属 21 種から構成されるいわゆるオキカジカグループは,スズキ目カジカ 科に属し,従来から様々な研究がなされてきた。しかし,本グループ全体を扱った分岐分類学 的た研究が行われていないため,本グループの分類・系統・進化に関しては不明な点が多い.

グループにはクシビレカジカ, Bolinia euryptera ,およぴ黄海産カジカ科未記載種(以後 Yellow Sea sculpin とする)の 3 類似種が知られている.そこで本研究は,オキカジカ属,

クロヒレカジカ属,キンカジカ属,ソコカジカ属,クシビレカジカ属, Bolinia 属,および Yellow Sea sculpin を新たにオキカジカグループとして再定義し,その形態学的諸特徴の記載,

単系統性の検証,系統類縁関係の推定,分類体系の再構築,韜よぴ進化プロセスの解明をする ことを目的とした・

以下に本研究の結果を要約する.

1 )オキカジカグループを含むカジカ科10 属23 種の比較解剖を行い,骨格系・筋肉系の形態学的 記載を行った.また,頭部感覚系を骨格要素との比較により再定義・記載した.そこから得ら れた形態学的差異に基づき,系統解析を行った.その結果,150 本の最節約的な樹形(樹長104 , 一致指数 O . 5673) が得ら れ,その厳 密合意樹を 本グループ の系統仮説として採用した,

2 )オキカジカグループは,側線鱗が溝状を呈する,後部腹椎骨の側突起が癒合して薄板状を 呈するをど10 個の共有派生形質で支持される単系統群であると判明した.また,本グループに は, Bolinia lineage ,Artediellus lineage ,およぴ Non‑Artediellus lineage の3 つの主要 系統が存在することが明らかになった. Bolinia lineage はBolinia 属のみから構成され,感覚 管の分枝管が発達することで支持された. Artediellus lineage はオキカジカ属のみから構成 され,眼下骨棚が細いことで支持された. Non‑Artediellus lineage は,クロヒレカジカ属,

キンカジカ属,クシビレカジカ属,ソコカジカ属,およぴYellow Sea sculpin から構成され,

前鰓蓋骨第 2 棘、 3 棘があ ることで指示された.また,従来のキンカジカ属Cottiusculus は 側系 統 群で あ り, キ ンカ ジ カ e schmidti とYellow Sea sculpin か らな る単系統群 と,

オ キ ヒ メ カ ジ カ e gonez の み か ら な る 系 統 に 分 か れ る こ と が 明 ら か に な っ た .

(5)

3 )従来の オキカジカ 属,クロヒ レカジカ属 , Bolinia 属,クシビレカジカ属,およびソコ カジカ属はいずれも単系統群とみなされたことから,これらの属のランクを踏襲した.従来の キンカジカ属Cottiusculus は側系統群であることが判明したことから,本属のタイプ種である オキ ヒメカジカ e gonez のみか らなる単系 統群をオキ ヒメカジカ 属の ttiusculus とした.

ま た ,キ ン カジ カ e schmidti および Yellow Sea sculpin から なる単系統 群には,新 属の ランクを与えるべきと判断した.

4 )本研究で再定義した 7 属に加え,解析に用いることが出来なかったArtediellina 属およぴ カワ リオキカジ カ属の 2 属を暫定 的にオキカ ジカグループに含め,これら 9 属からなるオキ カジカグループを新分類体系として提唱した・

5 )系統解析の結果に基づきオキカジカグループの頭部感覚系,前鰓蓋骨棘,体サイズ,体色,

地理分布,韜よぴ生息水深の進化傾向を推定した.その結果,本グループは進化の過程で,

生息水深の祖先状態を維持してきたタイプと,浅海化あるいは深海化にともなう幾っかの進化 パターンの存在が示唆された.本グループ内で, Bolinia 属は共通祖先の生息環境に著しく適 応したことで,ほとんどの原始状態を保持した.また,生息域の浅海化はArtediellus lineage のオキカジカ属と Non ーArtediellus lineage のキンカジカ属およぴYellow Sea sculpin で平行 的に生じた.このうち,前者は感覚孔の著しい消失傾向をともない,その機能を補填する視覚 などの発達の可能性が示唆された.また,後者i ま感覚孔の消失傾向は認められナょいが,前鰓蓋 骨棘の発達傾向が認められ,捕食者への防御機能の強化が示唆された.生息水深の深海化は Non‑Artediellus lineage のみに認められ,クロヒレカジカ属のクレードとクシビレカジカ属 およびソコカジカ属からなるクレードで平行して生じた.両クレードにも,体色の暗色化傾向 が認められるが,前者は祖先状態を比較的保持したまま深海化したのに対して,後者は前鰓蓋 骨 棘 の 発 達 や 体 サ イ ズ の 小 形 化 な ど 特 殊 化 を と も な い 深 海 化 し た と 考 え た ,    以上の申請者の研究成果は、魚類系統分類学分野に大いに貢献したものと高く評価され、

審査員一同弦、申請者が博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるものと判定した。

参照

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