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博士(歯学)由良晋也 学位論文題名

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Academic year: 2021

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     博士(歯学)由良晋也 学位論文題名

     顎 関 節 ク ロ ー ズ ド ・ ロ ッ ク 症 例 に お け る 滑液中のマト1 ノックスメタロプロテアーゼ活性の測定

学位論文内容の要旨

  マトリックスメタロプロテアーゼ(matrix metanoproteinaSes:MMPS)は,細胞外基 質を分解し,細胞の増殖や分化,運動性,形態形成,組織再生などを調節する酵素で ある。これらの酵素は,悪性腫瘍患者では腫瘍細胞から盛んに産生されることや,慢 性関節リウマチ患者では滑液中に高いレペルで検出されることから,腫瘍の浸潤や転 移,関節破壊などの組織崩壊にも関与するものと考えられている。関節疾患と滑液中 のMMPSとの関連については,慢性関節リウマチや変形性関節症のような関節破壊性 疾患の滑液中に,活性型MMPsが高頻度で検出されることが知られている。顎関節に おいても,クローズド・ロック症例や変形性顎関節症の滑液中に,活性型MMP―2,3,9 が検出されており,顎関節症における関節炎や骨破壊の指標として注目されてきてい る。し かし ,こ れまで の報 告では,MMPS活性を定量測定し関節鏡視像やMR像と比 較したものはなく,臨床所見と比較したものがわずかに散見されるばかりで,クロー ズド・ロック症例における滑液中MMPS活性の関わりにつては未だ十分な検討が行わ れていない。そこで,今回,MMP―2,3,9活性を特異的に定量することが可能な活性 測定システムを用いて,顎関節クローズド・ロック症例の滑液中MMP‐2,3,9活性を 測定し,これらの酵素活性と画像ならびに臨床所見,関節鏡視所見との関係について 検討した。

  対象は,MRI検査を行い非復位性関節円板前方転位であることを確認したクローズ ド・ロック症例54名58関節である。そのうち,関節鏡視検査を行ったものは16名16 関 節 で , 対 照 と し て 用 い た ポ ラ ン テ ィ ア は 6名 6関 節 で あ る 。

  滑液 中の タン バク 量の定量には,Bradford法を用いたBio―Rad Protein Assay (Bio―RadU.S.)を使用した。MMPー3活性の測定には,ストロヌリシン‑1 (MMP−3) 活性測定キットYU―26001(ヤガイ中央研究所,山形)を,MMP‑2,9活性の測定に

(2)

は ,MMP−2,9activity assay system (Amersham Pharmacia,UK)を用 いた 。な お,

MMP一2,3,9活性 の測 定値 につい ては ,基 質1/L1を1分 間で分 解する酵素活性を1unit と し , 夕 ン パ ク 当 た り の 比 活 性 (unit/mg protein)と し て 算 出 し た 。   患 者の 臨床 像に つい ては ,年齢 と性 別, 無痛 最大 開口 量, 関節痛を調査項目とし,

関節 痛で は, 開口 時お よび 咬合時 ,安 静時 にお ける 疼痛 の程 度をvisualanむog scale (VAS:0−100)を用 いて評 価し た。 画像 所見 につ いて は, 単純X線な らび にス ライ ス幅 3mmのTl強 調 矢 状 断 面MR像 に よ り , 関 節 円 板 の 形 態 , 骨 の 変 化 を 診 断 し ,MMPs 活性 との 関係 を解 析し た。 鏡視像 につ いて は, 滑膜 炎や 骨・ 軟骨の変化,癒着の有無 や程 度を 診断 し, 滑膜 炎や 骨・軟 骨変 化, 癒着 を呈 した 関節 の滑液中MMP―2,3,9活 性と ,対 照と した ポラ ンテ イアの 活性 レベ ルと を比 較す るこ とにより,これらの関節 腔内 病変 と MMPs活性 との 関係に つい て解 析し た。

  対 象と した クロ ーズ ド ロ ック 症例 のMMP−2活性 レベ ルは ,54.4〜344.6 unit/mg protein(平 均146.0 unit/mg protein),MMP−3で は0‑‑0.097 unit/mg protein(平 均0.017 unit/mg protein),MMPー9で は0‑‑‑0.242 unit/mg protein(平 均O.468 unit/mg protein)であ った。 ポラ ンテ イア6関 節のMMP―2活性 レベ ルは ,74.3 ‑214.5 unit/mg protein(平均141.4 unit/mg protein),MMP―3ではO.015〜0.024 unit/mg protein( 平均0.020 unit/mg protein),MMP‑9で はO.109〜0.520 unit/mg protein

(平均0.226 unit/mg protein)であった。

  MMPs活 性 レベ ル と 臨 床 像 と の 関 係 で は ,MMP―2,3,9と 年齢 ,性別 ,開 口量 ,関 節痛 との 間に 有意な関連は認められなかった。MR像との関係については,MMP−2,3,9 と 円 板 形 態 ,MMPー2;3と骨 変化 との 間に 有意 な相 関は 認め られ なかっ たが ,MMP―9 は骨変化を伴う関節滑液中に高く検出された(pニニニ.014)。関節鏡視像との関係につい ては ,滑 膜炎 が進 行し たもの (pー.012),骨 ・軟 骨変化(p=.013), 癒着を認めたも ので (pニ ニ,026) MMP−9活性レベルが上昇していたが,MMPー2,‑3との間には明らか な関 連は 認め られ なか った。 これ らの 結果 は, クロ ーズ ド・ ロッ ク症 例において,滑 膜 炎 や 骨 ・ 軟骨 の 破 壊 , 癒 着 と 関 連 し てMMP−9の 酵素 活性 レベ ルが上 昇す るこ とを 示している。

  MMPsは サ イ ト カ イ ンや 起 炎 物 質 な ど に より 産生 が調 節さ れてい るこ とが 知ら れて お り , 関 節 に お い て は関 節 炎 がMMPsの 産 生を 誘発 する 因子 のーつ であ ると 考え られ て い る 。 一 方 , 産 生 され たMMP―9が 活 性 化す ると 細胞 外基 質分解 能を 発揮 する こと から ,MMP−9は関 節炎 によ り産 生さ れる ばかり でな く, 関節 炎を 誘発ないし増悪さ世 る因 子と もな って いる もの と考 えら れる 。本研 究で ,部 分的 な軽 度の滑膜炎を呈した

(3)

ものにおいてもMMP−9活性に上昇傾向が認められたことから,クローズド・ロック 症例においても,滑膜炎が生じたことによりMMP一9が産生ならびに活性化されるも のと考えられた。また,炎症の範囲が滑膜全体におよぷ高度の滑膜炎でMMPー9活性 が著明に上昇していたことから,MMP−9は活性が上昇するに伴って滑膜を構成する 細 胞 外 基 質 を 広 い 範 囲 で 分 解 し , 滑 膜 炎 を 増 悪 さ せ る も の と 考 えら れ た 。   MMPー9は,滑膜炎を生じた滑膜内の好中球やマクロファージから産生され,活性化 するとプ口テオグリカンやm〜V型コラーゲンなどを分解し,線維軟骨を破壊するこ とが知られている。本研究においても,MMPー9活性は滑膜炎ならびに骨・軟骨の損傷 が観察されたもので有意に上昇していたことから,MMP−9は活性の上昇に伴って細 胞外基質破壊能を発揮し,線維軟骨や骨の破壊に関与しているものと考えられた。

  本研究において,MMP―9活性が癒着を認めたもので上昇していたことから,この酵 素が癒着の形成に何らかの役割を果たしている可能性があるものと考えられる。しか し,癒着が存在する関節には滑膜炎や骨・軟骨の変化を伴うものが少なくなく,癒着 の存在するもので見かけ上MMPー9活性が上昇した可能性を否定できず,癒着の形成 に関してこの酵素が直接的な役割を果たすか否かを明らかにすることはできなかった。

(4)

学位論文審査の要旨 主査    教授    戸塚靖則 副査    教授    鈴木邦明 副査   教授   井上農夫男

学 位 論 文 題 名

顎関節クローズド・ロック症例における

滑液中のマトリックスメタロプロテアーゼ活性の測定

  マ ト リ ッ ク ス メ タ ロ プ ロ テ ア ー ゼ (MMPs)は , 細 胞 外 基 質 を 分 解 し , 細 胞 の 増 殖 や 分 化 , 運 動 性 な ど を 調 節 す る 酵 素 で , 腫 瘍 の 浸 潤 や 転 移 , 関 節 破 壊 な ど の 組 織 崩 壊 に も 関 与 す る も の と 考 え ら れ て い る . 関 節 疾 患 と 滑 液 中 のMMPsと の 関 連 に つ い て は , 慢 性 関 節 リ ウ マ チ の よ う な 関 節 破 壊 性 疾 患 の 滑 液 中 に , 活 性 型MMPsが 高 頻 度 で 検 出 さ れ る こ と が 知 ら れ て い る . 顎 関 節 に お い て も , ク ロ ー ズ ド ・ ロ ッ ク 症 例 や 変 形 性 顎 関 節 症 の 滑 液 中 に , 活 性 型MMP‑239が 検 出 さ れ て お り , 顎 関 節 症 に お け る 関 節 炎 や 骨 破 壊 の 指 標 と し て 注 目 さ れ て き て い る . し か し , こ れ ま で の 報 告 で は ,MMPs活 性 を 臨 床 所 見 と 比 較 し た も の が わ ず か に 散 見 さ れ る ぱ か り で ,MMPs活 性 を 定 量 測 定 し 関 節 鏡 視 像 やMR像 と 比 較 し た も の は な い . 本 研 究 は ,MMP‑239活 性 を 特 異 的 に 定 量 す る こ と が 可 能 な 活 性 測 定 シ ス テ ム を 用 い て , 顎 関 節 ク ロ ー ズ ド ・ ロ ヅ ク 症 例 の 滑 液 中MMP‑239活 性 を 定 量 的 に 測 定 し , こ れ ら の 酵 素 活 性 と 画 像 詮 ら ぴ に 臨 床 所 見 , 関 節 鏡 視 所 見 と の 関 係 に つ い て 検 討 し た も の で あ る .

  対 象 は ,MRI検 査 を 行 い 非 復 位 性 関 節 円 板 前 方 転 位 で あ る こ と を 確 認 し た ク ロ ー ズ ド ・ ロ ヅ ク 症 例5458関 節 で あ る . そ の う ち , 関 節 鏡 視 検 査 を 行 っ た も の は16 16関 節 で , 対 照 と し て 用 い た ポ ラ ン テ イ ア は 6 6関 節 で あ る .   滑 液 中 の タ ン バ ク 量 の 定 量 に はBio‑Rad Protein AssayMMP‑3活 性 の 測 定 に は ス ト ロ メ リ シ ン ‐1 (MMP‑3)活 性 測 定 キ ッ トYU‑26001MMP‑29活 性 の 測 定 に はMMP‑29activity assay systemを 使 用 し ,MMPs活 性 の 測 定 値 に つ い て は , 基 質111分 間 で 分 解 す る 酵 素 活 性 を1 unitと し , 夕 ン バ ク 当 た り の 比 活 性 と し て 算 出 し た ・

  患 者 の 年 齢 と 性 別 , 無 痛 最 大 開 口 量 , 関 節 痛 を 調 査 項 目 と し , 開 口 時 お よ ぴ 咬 合 時 , 安 静 時 に お け る 疼 痛 の 程 度 はvisual analog scaleで 評 価 し た . 画 像 所見 につ い て は , 単 純X線 な ら ぴ にT1強 調 矢 状 断 面MR像 に よ り , 関 節 円 板 の 形 態 , 骨 の 変 化 を 診 断 し ,MMPs活 性 と の 関 係 を 解 析 し た . 鏡 視 像 に つ い て は , 滑 膜 炎 や 骨 ・ 軟 骨 の 変 化 , 癒 着 の 有 無 や 程 度 を 診 断 し , 滑 膜 炎 や 骨 ・ 軟 骨 変 化 , 癒 着 を 呈 し た 関

(5)

節の滑液中MMP‑2,3,9活性と,対照としたポランテイアの活性レベルとを比較す ることにより,これらの関節腔内病変とMMPs活性との関係について解析した.

  対象としたク口ーズド・ロック症例のMMP‑2,3,9の活性レベルは,それそれ54.

4〜344.6(平均14 6.0),O‑‑0.097(平均0.017),0〜0.242(平均0.468)unit/mg proteinで,ポランティア6関節では,74.3〜214.5(平均141.4),0.015〜0.024

( 平 均0.020),0.109〜0.520(平 均0.226)unit/mgproteinで あ っ た ・   MMPs活性レベルと臨床像との関係では,MMP‑2,3,9と年齢,性別,開口量,

関節痛との間に有意な関連は認められなかった.MR像との関係では,MMP‑2,3, 9と 円板 形 態,MMP‑2,3と骨 変化と の間 に有 意な 相関は みら れな かった が,

MMP‑9は骨変化を伴う関節滑液中に高く検出された(pニニニ.014).関節鏡視像と の関係では,滑膜炎が進行したもの(p二ニ.012),骨・軟骨変化(p=.013),癒 着を認めたもので(p二〓ニ.026)MMP‑9活性レベルが上昇していたが,MMP‑2,3と の間には明らかな関連はみられなかった.これらの結果は,クローズド・ロック 症例において,滑膜炎や骨・軟骨の破壊,癒着と関連してMMP‑9の酵素活性レベ ルが上昇することを示している.

  これまでの研究からMMPsはサイトカインや起炎物質などにより産生が調節され ていることが知られており,関節においては関節炎hs MMPsの産生を誘発する因子 のーつであると考えられている.一方,産生されたMMP‑9が活性化すると細胞外 基質 分解能 を発 揮す ることから,MMP‑9は関節炎により産生されるぱかりでな く,関節炎の誘発ないし増悪因子でもあると考えられてしヽる.本研究で,部分的 な軽度の滑膜炎を呈したものにおいてもMMP‑9活性に上昇傾向が認められたこと から,クローズド・ロック症例においても,滑膜炎が生じたことによりMMP‑9が 産生ならぴに活性化されるものと考えられた.また,炎症の範囲が滑膜全体にお よぷ 高度の 滑膜 炎でMMP‑9活 性が 著明に 上昇 して いたことから,MMP‑9は活性 が上昇するに伴って滑膜を構成する細胞外基質を広い範囲で分解し,滑膜炎を増 悪させるものと考えられた.

  MMP‑9は活性化するとプロテオグリカンやIII〜IV型コラーゲンなどを分解し,

線維軟骨を破壊することが知られている.本研究においても,MMP‑9活性は滑膜 炎ならぴに骨・軟骨の損傷が観察されたもので有意に上昇していたことから,

MMP‑9活性の上昇に伴って細胞外基質破壊能を発揮し,線維軟骨や骨の破壊に関 与しているものと考えられた.

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