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Academic year: 2021

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(1)

中学校社会科における資料活用能力を育てる指導の工夫

永澤 宏明 秋田県学習状況調査により,所属校の生徒の実態として,資料活用能力に課題があるこ とが明らかになった。本研究では,新聞記事を授業に取り入れて,生徒が学習で身に付け た知識及び技能を活用する学習展開により,資料活用能力を育てることができると考えた。 新聞記事やロジックツリーの特性を生かした学習を展開することで,生徒が社会的事象と 向き合い,思考を深めながら諸資料を効果的に活用する姿が見られるようになった。 キーワード:資料活用能力,新聞記事,ロジックツリー

主題設定の理由

秋田県学習状況調査(平成21年12月実施)の結果から,所属校の生徒の実態として,複数の資料 をもとに比較・関連付けするなど,資料活用能力に課題があることが明らかになった。このような 実態を改善するためには,日常の指導において,具体的な事例を通して知識や概念を形成させる指 導の工夫や諸資料を活用させる指導の工夫が必要である。 中学校学習指導要領解説社会編(平成20年9月,文部科学省)によれば,公民的分野の学習では, 「具体的事例を通して政治や経済などについての見方や考え方の基礎が養われるようにすること」 を目標としている。この点を踏まえ,資料の中に,日常の社会生活の具体的な事象が掲載され,時 事性・正確性・信頼性のある新聞記事を取り入れることを考えた。新聞記事には,文字情報の他に 写真や図表などの視覚情報があるという利点がある。授業でこれらの特性を生かし,地図や統計な どの各種基礎的資料とともに活用を図ることで概念の形成につなげていけるのではないだろうか。 また,問題の解決にあたっては,生徒に思考のポイントや考える方向性を示すことが大切である。 そこで,問題を解決するための手立てとしてロジックツリーを用い,諸資料を効果的に活用させる ことにより,資料活用能力を育てていきたい。

研究の仮説

○公民的分野の学習において,単元に新聞記事などの資料の活用を位置付け,具体的な事例に 基づいた学習課題をロジックツリーの特性を生かして適切に解決させることにより,資料活用 能力を育てることができるであろう。

研究内容

1 新聞記事を位置付けた学習内容表の作成 公民的分野の学習では,現代の社会的事象に関心をもって課題を追究するとともに,このような 学習を通してさらに社会的事象への関心を高めることが大切である。しかし,所属校でのアンケー ト調査によると,新聞を読む割合は,時々読むを含めて55%であった。新聞を読まない理由は,忙 しい,時間がない,面倒くさいなどである。このことから,新聞などのメディアに目を向けさせ, 今の社会的事象への関心を高める必要があると考えた。そこで,学習内容に関連する2010年の新聞

(2)

記事を位置付けた学習内容表を作成し(図1),この表をもとに授業を構築した。この図の新聞記 事は,新しいニュースや生徒が収集した新聞記事と適宜入れ替えながら用いる。また,新聞記事を 単元や分野ごとに蓄積し,社会的事象の推移を比較したり,同様の事象を関連付けたり,事象の結 果を調べる際のデータベースとしても活用することができる。 図1 新聞記事を位置付けた学習内容表 2 資料活用能力を育てる授業構想図の作成 本研究では,資料活用能力を①収集,②選択,③読み取り,④意味づけ,⑤比較関連,⑥表現と 捉えた。このような能力を系統的に育てるためには,社会科の年間を通しての指導全体を視野に入 れ,学習内容や教材の特性を考慮し,多様な形態の資料を活用する授業を計画的に行うことが大切 である。そこで,授業構想図(図2)を作成し,それぞれの段階で資料の活用を位置付けていくこ ととした。 授業構想の「つかむ段階」では,社会生活の具体的事例から問題を見出し,学習課題を設定させ る。「追究する段階」では,必要な情報とそうでない情報を選別する合理的な基準を見出す能力を 学習の中で養えるような調査活動を行う。「まとめる段階」では,レポートやポスターセッション など多様な表現活動を計画する。そして,それぞれの段階で新聞記事を他の基礎的資料とともに活 用させることにより,自らの知識や経験に基づいた具体的な課題解決を目指していきたい。

(2)私たちと経済

ア 市場の動きと経済

イ 国民生活と政府の役割

(3) 私たちと政治

ア 人間の尊重と日本国憲法の基本原則

イ 民主政治と政治参加

(4)私たちと国際社会の諸問題

ア 世界平和と人類福祉の増大

イ よりよい社会を目指して

事 (2010 年)

ブルカ禁止決議 犯人よもう逃げられない 臓器移植法施行

駐車版「優先席」 殺人など時効廃止 ワシントン条約会議

普天間問題揺れる 捕鯨妨害で起訴

口蹄疫に国・県甘い対応 事業仕分け カツオの北上遅れる

介護保険維持できない 少子高齢化進む 国の借金882兆円

政府予算案決定 政府税制改正大綱決定 円急騰一時 82 円

地デジ普及率83%・エコポイント効果 高校授業料無償法案成立

小林多喜二の新作発見 子ども手当法成立 足利事件無罪確定

1票の格差違憲判断 福島消費者相を罷免 国民投票法が成立

鳩山総理大臣辞任 菅内閣発足 裁判員制度1年

山崎さん宇宙へ

東京の人口1300万人 空の足混乱世界に波及

上海万博開幕 EU新条約発効 ギリシャ金融危機 ノーベル賞受賞

NPT再検討会開幕 新START G20 菅総理出席

学 習 内 容

(1)私たちと現代社会

ア 私たちが生きる現代社会と文化

イ 現代社会をとらえる見方や考え方

(3)

図2 授業構想図 3 資料活用の手立て 資料を効果的に活用する手立てとして,ロジックツリーを用いた。ロジックツリーは論理構成を 図式化したもので,主張を明らかにするツールである。ツリーの最上層には,解決されるべき学習 課題を具体的に設定する。最上層にある課題について,なぜそうなのか,どうすれば解決できるか を考え,解決を図っていく。上位から下位に分解していくが,最上層と最下層が,「全体」と「部 分」,「原因」と「結果」などの関係になる。課題の全体像を見極め,構成要素を整理して考える もので,一般的には3段階で作成する。授業においては,既習の用語や知識を活用して資料を調べ 結論を説明するツールとして使用する。第2の段階を記入する際に,生徒が話し合いによって焦点 を絞ったり,教師が思考のポイントや解決の方向性を示すことにより,解決までの思考の深まりや 作業時間の短縮が期待できる。 また,検証授業の前後に思考の過程を確認するため,マインドマップを用いた。マインドマップ は連関図の一つで質的な関連により整理・解決していく手法である。テーマに沿って自分の考えた 手段や解決策を周辺に配置し,線や矢印で結びながら内容を整理する。新しい発想や方策を考える 場面などで様々な形で用いられる。マインドマップで思考を広げることで知識の連関が図られ,整 理した内容をロジックツリーで展開することでより論理的な解決が図られると考える。

学んだ知識や技能を課題解決に活用することができる

まとめる段階 学 習 課 題 を 解 決 社会との関係 追究する段階→ロジックツリー つかむ段階 学 習 課 題 の 設 定 生活との関係 学 習 課 題 の 追 究 仮説 →検証 資料の活用を位置付ける ①収集 ②選択 ③読み取り ④意味づけ ⑤比較関連 ⑥表現 用語 は知っ ている が具体 的な事 例と結 びつか ない 内容 や制度 などの 知識理 解で終 わり, 基本的 な考え 方や意 義の理 解が不 十分 実 態

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検証方法

1 検証授業 (1) 調査対象 大仙市立O中学校第3学年1クラス37名 (2) 実施時期 Ⅰ期 平成22年5月31日 Ⅱ期 平成22年9月3日~9月10日 (3) 単 元 名 Ⅰ期 「人権と共生社会」 Ⅱ期 「国の政治のしくみ」 (4) 学習活動 Ⅰ期 検証授業 時数 主 な 学 習 活 動 自 由 権 1 ・小林多喜二の人生を現在の社会や自分の生活と比較して考え,人権 の意味や内容について調べる(新聞記事,学習シート,評価カード)。 「つかむ」段階で新聞記事を取り入れる。 新聞記事の収集とレポート作成(夏季休業中)。資料の収集,選択,読みとりなど検証授業につなげる。 Ⅱ期 検証授業 時数 主 な 学 習 活 動 国会のしくみ 1 ・国会のしくみを知る(マインドマップ,学習シート)。 国会のはたらき 2 ・法律案をつくる(新聞記事,ロジックツリー,評価カード)。 「追究する」段階で生徒が収集した新聞記事を取り入れる。 ・法律案を説明する(ポスター,評価カード,マインドマップ)。 2 検証方法 (1) ロジックツリーの特性を生かした課題解決によって諸資料を効果的に活用できたかに ついて,ロジックツリー及びマインドマップへの記入内容を分析する。 (2) 検証授業の学習シートの記述内容,課題解決の過程,まとめ(作品)を検証する。

Ⅴ 検証結果と考察

1 結果 (1) ロジックツリーとマインドマップの分析から 図3は,検証授業Ⅱのロジックツリーの記入例である。 学習シートの記述を分析すると,ロジックツリーで思 考を焦点化することで,解決までの過程を比較しながら 聞き,他のグループの対策について自分なりの判断をし ている生徒が66%であった。授業の分かりやすさの評価 (4点満点)では,検証授業Ⅰ(ロジックツリーの活用 なし)が3.3で,検証授業Ⅱ(ロジックツリーの活用あり) が,3.6であった。その理由として挙げられていたのは, 図3 ロジックツリーの記入例 調べるポイントがはっきりしている,ポイントごとに役割を分担できたなどであった。また,ロ ジックツリーに記入したことを基に作業することで,作業に要する時間が短縮された。 図4は,検証授業前後のマインドマップへの記入の変化を示している。その中で,テーマ周 辺への記入数が2.9から4.1になり,そのほとんどが単元を通して習得が期待される用語(以下, 基本的用語)で占められようになり,用語同士の関連を示す線も7.0から10.8になった。また, 「みんなの党」など授業で取り上げなかった時事的な用語も記入されるようになった。この記入 内容の量的・質的向上から,授業に新聞記事を取り入れた効果がうかがえる。

(5)

項目別記入数 図4 検証授業前後のマインドマップへの記入の変化 (2) 検証授業から Ⅰ期検証授業では,単元「人権と共生社会」中の「自由権」の導入として新聞記事を取り入 れた。導入によって学習課題に興味関心をもてたとする生徒は86%であった。また,人権につ いて具体的に理解できたとする生徒は80%であった。しかし,授業で提示した資料のほとんど が文書資料であり,読み取りに時間がかかり,中心課題についての話し合いを十分に行うこと ができなかった。 Ⅱ期検証授業では,単元「国の政治のしくみ」の中の「国会のはたらき」の展開に生徒が夏 季休業中に収集した新聞記事を資料として取り入れた。あるグループでは,地上デジタル放送 という身近な事象を取り上げた新聞記事から学習課題 をつかみ,リサイクルやエコの視点から他の例と比較 関連させながら追究することができた。まとめでは, エコ活動を通した温暖化防止の対策が具体的に考えら れていた。 図5は,検証授業の様子である。すべての班で学習の 図5 検証授業の様子 成果をまとめてポスターセッションを行い,提案理由や具体的な対策について自分のことばで 説明したり,質疑応答をしたりすることができた。 2 考察 (1)ロジックツリーとマインドマップの分析から ロジックツリーによって思考が焦点化され,社会的事象を正しく読み取るだけでなく,事象 の推移に関心をもって統計資料を調べるなど,意味づけや比較関連をしたりしながら思考を深 めることができた。 マインドマップへの総記入数は,70%の生徒が増加している。30%の生徒が減少しているが 0 2 4 6 8 10 12 総記 入 数 基 本 的 用 語 テ ー マ周 辺 関連 を 示 す 線 授 業 前 授 業 後 0 1 0 2 0 3 0 4 0 ① ㊱ 授 業 後 授 業 前 個人別記入数

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これらの生徒の基本的用語の記入数は,86%増加している。このことから,学習を通して,記 入内容の質的な向上が図られたと捉えることができる。このことが,必要な資料を適切に選択 して論拠として取り込むなど,資料の効果的な活用に結び付いている。 (2) 検証授業から 授業に新聞記事を取り入れることで,生徒の学習への興味関心が高まった。興味関心が生徒 の課題追究の意欲を高め,実感を伴った具体的な理解につながり,また,そのことにより新聞 などのメディアに更に目を向けさせることができた。 新聞などのメディアに目が向くと,情報を収集したり選択したりする合理的な基準がはっき りしてくる。そして,その基準で読み取り,意味づけを行うことにより,他の事例と比較した り関連付けたりして考察することができるようになった。このような課題解決へのプロセスに よって,資料を活用する技能が高まった。

成果と課題

1 成果 新聞記事を授業に取り入れることは,社会的事象に目を向けさせ,より具体的に考えさせる上で 有効な手段であった。学習を通して新聞記事の利点を理解し,社会的事象から考察しようとする態 度が身に付いてきた。検証授業のポスターセッションでは,自分たちがつくった法律案を説明し, 質疑応答を行い,採択するという学習過程の中で,それぞれの法案についてグループで議論をする ことができた。そこでは,資料から必要な情報を読み取るだけではなく,習得した知識,概念や技 能を活用して他の事例と関連付け,具体的な取り組みやその効果を取り上げて表現することができ た。また,各分野で培った社会的な見方や考え方を活用し考察しようとする意識も高まった。 ロジックツリーは,思考のポイントや解決の方向性を話し合ったり,生徒同士で確認したりする 上で効果的なツールであった。学習課題の解決に向け,思考を深めさせながら作業時間の短縮を図 ることができた。検証授業では,資料を単に読み取るだけでなく,資料の特性を理解した上で批判 的に検討したり,視覚情報を作ったりする姿が見られるようになった。 2 課題 本研究では,新聞記事を単元に位置付ける学習内容表を作成し,表をもとに授業を構築する段階 まで進んだ。新聞記事には,問題を提起する記事,問題の経過を説明する記事,問題を解明する記 事,問題の結果を報告する記事などがある。それらを分類・整理し,どのタイプの記事を学習過程 のどこで用いるかについても検討する必要がある。また,資料活用能力を育てる上で,基本的知識 の習得や多面的・多角的に考察する力は大切な要素である。その意味で,新聞記事を位置付けた学 習内容表を更に充実させていきたい。マインドマップとロジックツリーの関連やロジックツリーの 効果的な活用とともに,来年度の課題としたい。 〈参考文献〉 文部科学省(2008)『中学校学習指導要領解説社会編』. 秋田県教育委員会(2009)『平成21年秋田県学習状況調査の結果』. 秋田県教育委員会(2010)『秋田県学校教育の指針』. 北俊夫(2005)『あなたの社会科授業は基礎・基本を育てているか』明治図書.

参照

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In: Schaufeli WB, Maslach C, Marek T(Eds), Professional burnout: Recent developmentsintheoryandresearch,Taylor&Francis, Washington,DC,pp1-16,1993. 9) Maslach C, Jackson SE:

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