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はじめに(pdf)

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Academic year: 2021

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はじめに

色素増感は 1873 年に Vogel が写真乾板を用いて発見した現象で ある.写真乾板は,ハロゲン化銀(AgX)粒子が光の吸収で発生さ せた光電子を銀イオンと反応させて銀のクラスターを形成すること により光の像を撮る(撮像する)ものであり,撮像は紫外から可視 域の青色までに限られていた.色素増感は AgX 粒子上の色素が光 を吸収し励起された電子を AgX 粒子へ注入して撮像するものであ り,色素を変えることにより可視全域から近赤外の光で撮像するこ とを可能とし,とくにカラーフィルムにとって必須の技術となっ た. このように色素増感は光誘起電子移動という基本的な現象であ り,関連する分野を刺激して新たな材料を生み出すこととなった. 色素増感は種々の光機能性材料で研究され,半導体電極を経て光触 媒,色素増感太陽電池(DSC),ペロブスカイト太陽電池(PSC) などの興味深い材料を生み出していった.色素増感からの展開は筆 者に近いところで起こった.筆者が写真化学の菊池研究室で色素増 感の研究を立ち上げたのは 1963 年であり,本多先輩に共同研究を お願いし軌道に乗せた.1966 年には本多研に大学院生として加わっ た藤嶋後輩が AgX 電極を用いて色素増感の研究に取り掛かり, AgXを二酸化チタン(TiO2)に置き換えて本多・藤嶋効果を発見し 光触媒へと展開した.色素増感は光触媒の感光波長域の長波長化に 寄与することは叶わなかったが,Graetzel はルテニウム(Ru)錯 体色素と多孔 TiO2膜をそれぞれ増感色素と基板に用いて DSC を開 発し,宮坂後輩は Ru 錯体色素をペロブスカイト化合物に置き換え て PSC を開発した. 化学の要点シリーズ 【36】巻 色素増感―カラーフィルムからペロブスカイト太陽電池まで― 日本化学会 編・谷 忠昭著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320044777

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vi  はじめに 色素増感の魅力は,それが電子移動をはじめ,光吸収,電子構 造,電荷の分離と移動などに立脚した学問的に興味深い現象である とともに,感光波長領域を感光母体の束縛から解き放して多岐にわ たる増感色素に委ねることによりカラーフィルムをはじめとする写 真感光材料の実用的な成功に貢献し,今後さらに実用的に価値があ る材料を生み出すポテンシャルを有していることである. 本書ではまず色素増感に関わる光機能性材料としてカラーフィル ム,光触媒,DSC および PSC の概要を解説する.次いで増感色素 などの吸収スペクトル,増感色素の基板への吸着,増感色素/基板 界面の電子構造および色素増感の機構と性能について,上記の光機 能性材料を横断して比較し解説する.これらの解説が色素増感の学 問的な理解を深めるとともに,異なる光機能性材料間での類似点や 相違点の分析からそれらの性能向上の指針がもたらされることを期 待する. 化学の要点シリーズ 【36】巻 色素増感―カラーフィルムからペロブスカイト太陽電池まで― 日本化学会 編・谷 忠昭著 https://www.kyoritsu-pub.co.jp/bookdetail/9784320044777

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