Hokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University
1
ホ
ス ピ ス :そ
の医
療
的 法 的
諸
問 題
一 主
に ア メ リ カ に おけ
る薬
剤 師
の役割 を
中
心 と し
て一
三
浦
賦
河
島
ぜ
Hospices
:Medical
andLegal
Problems
−
With
Reference
.
to
the
Pharmacist
’sRole
in
.
the
United
States
−
s
Izumi
Miura
,Susumu
Kawashima
目 次 工 は じめ にII
ホス ピ ス につ い て 1,
序 説2.
ホス ピス と は3.
ホス ピス の歴 史の概 要4.
ホス ピス に おけ る 夕一
ミナルケア につ いてIH
ホス ピ ス にお け る医療と薬剤 師の役割1.
ア メ リ カ に お け る ホス ピスケア の基 本(イ} 医
学
的管理〔ロ} 看 護
’
相 互 的 専 門 的 訓 練チ
ー
ム{
4
患 者 及 び 家 族の ケァ
2.
ホス ピスケア,
チr ム (4) ソー
シ ャ ル ワー
カ,
カウ ンセ ラー
回 牧師 囚 理学 療 法 士,
作 業 療 法 士,
言語 療 法 士
同 栄 養 士
困
ボラ ンテ ィァ
囚
薬 剤 師
.
3 .
ホスピス ケ ア の対象とな る疾 病につ いて 4.
ホ ス ピ ス に お け る治 療 {/] 症 状コ ン トロー
ル の一
般 原 則 {V)疼痛のコ ン トロー
ル 末期 患者の他の症状 とその管 理 (;) 疼 痛召 ン トロ L ルの他の方法
5.
薬 剤・
師の役 割 (d) 薬 物の選 択 及 び 投 与 回 入 院へ の コ ンサル タン ト 囚 薬物治療モニ タ リング ロDI
活動 困 薬の相互作用の ス ク リー
ニ ング 囚 薬物の保 管管理 〔ト} 末期患 者 及び家 族へ の カウ ン セ リン グ
ホス ピス ケア に求め られる研 究
6
.
ホスピスケア・
におけ る薬 剤 師 活 動 及 び 薬 剤 師 教 育に つ いて の問 題 W ホ ス ピ ス に おける法 的諸問題につ い て・
1.
医師の過失 責 任と緩 和ケ ア にお け る薬 剤 師の過失 責 任につい て2
.
医 師の説 明 義 務 と患 者の同 意に つ いてV
む す び * 法学 教室,
E,
IV章・
* * 薬 剤 学1.
教 室, 皿章83
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University 2 三浦 泉
・
河島 進1
は じ め に昭和
60
年12
月27
日,
わが国では医
療 法の一
部 改 正 (法 律 第 109 号 ) がな され た。 こ の改 正の 目 的は,21
世 紀に向っ て,
人口の高 齢 化,
疾 病構 造の変 化,
医学 医術の 進歩な どを想定 しつ つ「
,
か つ,従
来の治 療を中心 と し た医
療か ら,
.
疾病の予 防,
早 期 発 見,
リハ ビ リテー
シ ョ ンなど広い領 域を含
む “ 包 括 医療” 体 制の確 立 を 意 図 した ものである。 その 内 容 は,
大 き く分 けて ,都
道府県
医療計
画,
い わゆる
“ 地 域 医療” と医 療 法 人に関 する事 項である が,
特に,
地 域にお ける充 実 し た医 療 体 制を整備す
る ことに より,
国 民の健 康 と福祉
の向
上に寄
与
せん と し たもの であ る。筆 者 ら は
,
これ らの 改 正において種々 注目すべ き点が あ る と考え る。特
に “ 地域医療”
の目的 の な かで,
まず,
ア メリ カの医療 シス テ ム に おけるホー
ム ケア (プライマ リ・
ケア の1
つ )の 導 入 を 図ろ うとしてい る点で あ る。
つ ま り,
地域
医療
に おい て,
プライマ リ・
ケア推
進の た め に,
医療 施設 及 び医療 従 事 者の確 保な らびに研 修 体 制の 整 備 を 都 道 府 県の医療計
画 に要 請したこと である。 それ は,
わ が 国の 現在の 医 療 制度
が,
保障
制度
として非常
に優
れて いると考
え られ る側
面 を認識しっ っ,
さ ら に,
医療の質
の向上 を促進 さ せ ること を 意図して いる と 思 わ れ る。 そ して,、
い ま一
つ は,
薬 局と病 院等との機 能 及び業 務の連 携の強 化に関 することが明 記 されたこ とである。 即ち,薬
局 及び薬 剤 師のより積 極 的な医 療へ の参 加 と,
医 療の質
の向上に対す
る協 力と努
力 を 法 律の上で明 確に要 求し たこ とである。 したがっ て,
薬 剤 師に は,
地 域 医 療に対 する建設 的 な意見 を 述べ る機
会 を 与え ら れ た 反面,非常
に 広範
囲の業 務を実 行 し,
医療の質
の向上に対 して貢献
す る厳 しい業 務を課せ られたといえ る。 そして そのために,
薬 剤 師 職 能の新 たな確 立 と,
薬 剤 師の 教 育,
資 質の充 実が求 められ ること に なっ たので あ る。 さて , わ れ わ れ は,
こ うした わ が国の 医 療 制 度の 今 後の方 向を期 待し な が らも,
それで もなお かつ,
現 状に おい ては,
治 療 (Cure
) に全力
が注が れて い、
る が,
ケア (Care
)に関して は軽 視さ れて い るの で は ないか と考えて い るのであ
る。 た と えば,
末 期疾 病 (癌 な ど)の 治 療管
理が
患者 本 人 及び その家族に とっ て不充 分なの でないか と考え ら れ る。
そこ で,
ケアを 中 心 と し た ホ ス ピス医療
が イギ リズか らア メ リカへ と展 開 されて い ることに着 目 し、
その内 容 がいか
なるもの であるか、
癌 治 療にふさわしい ものであるのか,
また医療シ ス テム の な か で どの ように位
置付
け られて い るの か,
につ い て検討
した。 さ らに,数
少な いけれ ど も,
わが国で実 践 されて い るホ ス ピス ケア で は,
薬 剤 師が直
接関
与してい ない事
実 を知 り,
ホス ピス医療
に おいて薬剤師
の役
割が あ るのか どうか,
また法 的 問題がある か否か にっ い て,
主 と して ア メ リカのホス ピス に関 する文’
{1)献
な らびにわ が国の著 書に基づい て考
察した。 (1
) 本稿を草ずる にあたっ て は,
わ が国の ホス ピス に関 する著 書, 訳 書 並 びに アメ リカの著 書を
参考と・
した。 わが 国の著 書 (初版の年 代順に) として
,
(1
}柏木哲夫,
死にゆく人々 のケア,
一 末 期 患 者へ の チー
ムアプロ
ー
チ , 医学
書隣
,1978
年 (昭 和53
年 )5
月15第1
版 第1
刷 (19858
月1 日第 1版 第 6刷 )(2
)柏木 哲 夫t 臨 死 患 者 ケァの理 論 と実際
,
一
死にゆ・
く患者の看護一 ,
日本総研 出版,1980
年 (昭和55
年 ),7
月1日第 1版 第 1刷 (第 6刷1982
年12月15日),
(3
〕・
ビ クター
&ロー
ズマ リー ・
ゾル ザ,
岡 村 昭 彦 監 訳,
木 村 恵子訳
,
ホス ピスー
末期ガン患 者へ の 宣告一 ,
家の光 協会,
昭 和56
年 に12
月10日第 1版 (昭 和57
年2
月1
日第2
版 ),
〔4
}サ ン ドル・
ス トダー
ド,
高見 安規子 訳,
ホス ピ ス・
ムー
ヴ メン トー
よりよき 生の た め に, 時 事通 信社
,
昭 和57
年 6月1
日,
昭 和 印 年6月 1 日発行,
(5
}Kenneth P.
Cohen ,斉
藤武
,
柏 木 哲 夫 訳,
ボス ドス :・一
一
末期 医 療の思想と方 法, 医 学 書 院, 1982年 (昭 和57年 ) 5 月15日 第1
版第
1
刷 (1983
年8
月1
日第1
版第2
刷 ),
(6
)NHK
取 材 班,
日本の条 件.
9医 療一
あな たの あ すを誰が L84
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University ホス ピス その医 療 的法的 諸 問 題 3 看 る
一
,
日本 放 送 出 版 協 会,
昭 和57年10月20日第1
刷,
(7
}若林一
美,
安らか な死の ため}こ一
ホス ピ スー ,
現 代 出版,1982
年 (昭和57
年)6
月21H
初 版 第1
刷,
(8
旧 本経 済新 聞 社 編,
ドキュ メ ン ト聖隷ホ ス ピス , 昭 和58
年4
月1
日第1
刷, (9
}柏 木 哲 夫,
生 と死 を支え る一
ホス ピス・
ケアの実践一
「,
朝日新 聞社
,1983
年 (昭和58
年 )5
月20
日第1
刷,
GO
}原
義雄・
千原 明,亦
ス ピ ス・
ケアー 看
取りの医療へ の 提 言一 ,
メ ヂ カル フ レ ン ド社,
昭 和58
年8
月25日 第 1版第1
覇 (昭和61年7月26日第1
版 5刷 ),
(11
)柏 木哲夫,
ホス ピ スをめざし て,
医学書 院,1983
年 (昭和58
年)11
月1
日第1
版第1
刷, 膕シ シ リー
ソ ンダー
ス 他編 著,
岡村 昭 彦 監 訳,
ホス ピスハ ン ドブッ クー
こ の運 動の反 省 と未 来一
,
家の光 協 会,
昭和59
年7月20日第 1版,q3
舶 木 哲 夫, 死にゆ く患者と家 族へ の援助一
ホス ピ ス ケア の実 際,
医 学 書院,
1986
年5月1
日第 1版第1
刷,
ア メリカの著 書 と して,
(1
}Kenneth
P .
Cohen ,
Hospiee − Pr6scripti
◎nfor
Forminal
Care,
An
Aspen
Publication,
1979,
〔2
)Anne
Munley ,
The
Hospice
Alterna−
tive
,
− ANew
Gontext for Death and Dying,
Basic Books , Publishers,
New Yorkl 1983,
(
3jEdited
by
Paul
R .
Torrens ,
M ,
D .
M .
P .
H ,
Hospice
Programs
andPublic
Policy,
American
Hospitals
.
Publisling
Inc
:,
.
1985。
1
ホス ピス につ い て
1.
序 説厂死」
,
それは生命
の ある もの に とっ て は不 可 避の結 末で あ り,
当 然の宿 命で ある。 そ し て死 は
一
般
の人 間に とっ て大 きな恐 怖で もある。そ
の 恐 怖は,
分 析してみ ると,
(1
階 痛へ の恐 怖,
孤 独へ め恐怖
,
(3
)不 愉快 な体
験へ の 恐 れ一
尊 厳を失
な うこ とへ の恐 れ一一
,(
4
隊
族や社
会の負
担
にな る ζとへ の恐 れ,
未 知 な る ものを 前に して の不 安,
人 生に対 す る不 安 と結 びっいた 死へ の不 安
,
〔7
)
人 生を不 完全 な ま ま に終
え ることへ の不 安, 自
己の消滅
へ の不 安,
死 〔2)
後の審 判 や 罰
に
関 す る不 安 な どが あ る。 特に肉 体の消 滅 を もっ て具 現 す る死 (何 を 基 準 と して死と判
定す
る か につ い て 議 論のある
ところ である。 肺 臓 死,
・
心臓死
, 脳 死の問 題が あ る)は,死 後の世 界の霊
魂
を信
じると信 じないとにか か わ らず,
すべ ての人 間 が 直 面せざるをえ ない事 実で あ る。・
死につ い て は
,
かつ て よ り哲
学 者や宗 教 家が,
そ の解 釈な い し意 味づ けに力を注い で きた 。死が
齢
あ るものにと
・ て の永
却
テー
マ と さ れてい るこ と 齬鷺
き尠
事 実 なの である・哲学者
シ ョー
ペ ンハ ウアー
は,
その著
「意 志と表象
と して の世界
」のな かで死 につ い て論 じて いる。 筆 者なりに抜 粋してみcl う。 「
……
考え ること を し ない動 物における と同 様に,
人 間 において も また,
自分は自 然その ものなのだ,
世 界その ものなの だ.
とい う かの最 内 奥の意 識か ら生ま れて
く
る安
心感が平
生は持続的
な 状 態 と して は優位
を占
めてい るので あ る。死
は確実
で間 近だ という思 想が,
か くべ っ 人 間を お びやか さ ない の は そ の た めな の で あっ て,
誰 もがま.
るで 自分 は 永 遠に隼
きて い るに違い ない とで もい うよ う に,
その 日をや り過ご して い る。
これは
大げ
さ に言え ば次の よ うに言え るで南
ろう。普
通布
ら,彼
の気持
と死 刑の宣 告 を 受 けて い る 罪 人の気 持 との間には,
けっ して大 差はあ り得ない はずの もの だ が,
誰 し もが 自分の死の確 かさ につ いて は
本 当
に切実
な実
感 を 抱い て いない 。 いう ま で もな く誰
も抽
象 的・
理論的
に は死の 確 か さを 認めて い るの では あるが, しか し誰 もがζれ を考 え ないように して,
けっ して自分の切 実な 意
識
の な かに受
け 入 れ よう とはし ない の で あ る」 と述べ,
さ らに 「時 折 ま ざ ま ざとこ、
の死の確 実さ は なにかの
機
会が あ っ て 思い うかべ る ときに しか 人 間に不安
を抱
かせ るこ と は、
85
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University 4 三浦 泉
・
河島 進、
ない」ので あ る。
〔4[哲 学 者パ ス カル も ま た 死につ いて
,
そ の著 「パ ンセ 」』
で多面
的に考察
して いる。 その な か に は,
ショー
ペ ンパウ ア の思 想 に類
似 した文 章が見
出 さ れる。 「ζこ に幾 人 かの人が
鎖に6
な が れて い るの を 想 像しよ
う。 み な死 刑 を 宣告
さ れて い る。 その な かの何 人か が毎日他の人たちの 目の前で殺 されてい く。 残っ た者は,
自分 た ちの運 命 もそ め仲
間たち と同じであること を悟 り,
悲 しみ と絶
望 との う ちに 互い に顔
を 見合
わ せ な が ら,自
分の番が く.
るのを 待っ て い る。 これ が 人間の状
態 を描い た図なの で あ る。」 と。人 間は現 実に はそう し た 死 刑囚のような
状
態 にある こと を,
日 々 の生 活のなか で忘 却 し てい る にす ぎない。 死 は我々 に とっ て切 実 な 問 題 と して眼 前にある に もか か わらず,
これ を 避け よ う と している の が われ われの姿
なので あ る。死
は あ る意味
で は,人生
の長い道程
を経た終 着 駅 で はな くて,
現に今 ヒこ にあ ることなの で あ る。 ま た死は,
わ れ自身 か た だ ひ と りで直
面し な け ればな らない現擧
で あ る。騨
分の出
生が 自分ひζ
りの体 験で
あっ た と同様に.
、
死 もまた自・
ら のものであって、他者
に よ る身代
わ りのできない もので
あ る。 そ れ ゆ え にこそ死は 恐怖
で あり,
t5} 孤 独なもの で あると言 えよ う。 哲 学 者ハ イ デカー
は,
く し く も彼の著 「現 存 在 と時 間性 」でこ う述べ て い る。 「いかな るひ と も他者
か ら彼
の死 亡を取
り除
い てや ること はでき ない ので
ある。 誰か が 「他者
の代わりに死んでや る 」こと な ら た し かに で き はする。 け れど もこ の こと は,
つ,
ね に,
「或
る特
定の事 柄に おい て」他者
の代わ りに犠 牲にな っ てやる とい うことに ほかな らな い。 だ が,
この よ うに誰かの代 わ りに死
亡 してや るとい うことが意 味 する の は,
そのおかげで 他 者か らその死が ほ んの少 しでも取 り除 か れ た とい うζとで は,
けっ して あ り え ない 。 死 亡は,
それ ぞ れの現 存 在 がその と き ど きにみ ず か らわが身に引 き受 け ざる を え ないものなの であ る。 死は,そ
れ が 「存在す
る 」 か ぎり, 本質
的 に そのつ ど私のもの である」。 他 者のために犠 牲に な る 死 は あ っ て も,自
らの 死は自
らが背負
わ なければな ら ない。 こ の事 実は,
た とえ いか なる人 間で あ ろ う と厳 粛に受 け 止 め な け ればな ら
窩
い。
他者
のた め に犠
牲に な る 死 は,
隣人愛の 究 極 的な愛の姿 型 で.
あ ろう。 古 今 東 西,
わ ずかで は あ る が,
そ う した行為
が為
さ れ て いる ことは筆者
も多少
承 知している。 し かし凡 庸 な 者には,
は か り知れ ない世 界で も あ る。考 え
てみ
れ ば,
死は個々 人が自
ら引受
け ざるを得
ない 不 可 避的
事 実であ り,
死の 意 味の 探 求 は,
逆に 「生 きる 」 ことの意 義 を 知ることで も あ る。 「生 き る」 という実 存 的 問題を投 げ
か け て いる死は,
ま
さ しく我々 に意義あ る 人 生へ の探 求 を 迫るもの でも ある。
こう して 死の間魑
は,、
生の問題
と密接
な連関性
ない し不可
分性
を もっ て迫っ て くる ものと して,
認 識せ ざるを 得ない の で ある。.
死は,
その人の生 涯がいか な る もの であっ た かの結 論で あっ て,
人 生の 総決
算で も ある。筆 者 は
,
こう した視 点を踏え な が ら,自
らの死を受容
しっ っ あ る人間
(末
期 患 者 )の問 題 を どう取扱
い,
どう対
処さ れ るべ きか , に関
心 を 抱いて き た。人 間 はい かにす れ ば実 質のある人 生 (
life
ofquality
) を 生 き,
尊厳
を もっ た死を迎え ら れ る か。 また,
現 代社
会,
とくに医療
の な か で, 死に直
面 した人間
(患 者 )・
は真に,
価 値ある尊 い もの とし て扱
わ れて い るの か どう「
か な どの疑 問に蓬着
して い るか らで あ る。
そ して筆
者 とし ては,死
の医療
という現代社
会の 重 要な かつ 困 難 な 問 題に対 して,
ホス ピス 医 療 か らの示 唆を た よりに考 察 を 試 みたい と考 えて い るの であ る。86
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University ホス ピ ス そ の医 療 的 法 的 諸 問 題
5
2.
ホ.
ス ピ ス と は現 代の 重
票
な病
気の典
型 は癌
で ある,
と言わ れて い る。 勿 論, 他に多 くの難 病が あるこ とは 承 知 して い るつ も りであるが,
治療困
難な病 気 とい う点
で は,
最 も注
目 され て い るもの の一
つ が 癌である。
人類
の歴史
は,
あ る意味
で は病気
との闘い で あっ た。 それ は,13
世 紀の ラ イ,14
世 紀のペ ス ト,16
世 紀の梅 毒,17〜18
世 紀の痘 瘡・
発 疹チフス,19
世 紀の コ レ ラ・結核 ,
20
世
{61 紀のイン フ ル エ ンザ,
そ して癌・
心 臓 病 と,
人 間の 生 存の 歴 史はま さ し く病 気の苦 難か ら治療
へ の模 索 克 服に か か っ ていた,
とい っ て も言
い過 ぎで は ないであろう。 そ して現代
の医
学も
そ’
s うし た 過程の うえに立た さ れ ているの で ある。 わが国におい て も,
ア メ リ カにおい て も癌は わ れ わ れを悩 ま し続 けて い る。 その こと は末 期 患 者で死 亡 した 人々 の手 記,
日記 等が か なり出版
{7} さ れて い る事
実IC
よっ て も 証明さ れ ている。.
では
,
こ う した 末 期 患 者に対 して ,
現 代の医 療 制 度の下
で は, いか な る治療
が な さ れて い る’
のか。一
般
に医師
は治療
(Cute
)す
るの が 目的
であ り,.
その た め に は十 分な設 備,
検 査 方 法,
最高度
の医
学 的知 識 ・技
術 等を用い て治 療 (生 命,
健 康の 回 復 )せ ねば 敗 北であ る と考
えて い る であろう。 その こ とは決 して無
意味
で は ない。
む しろわ れ わ れ は,
そう期待
し ているの で あ る。 しか し 反面,
死が迫まっ て いる末
期患者
に関して は,
治 療よ りむ しろケア (Care
)が必 要 であ
る にもか か わらず,
延命
へ の努
力が強 調さ れ る あ まり,
尊い死の受 容どい っ た視 点が欠 落 してはい な喚
か.
とい っ た疑 問が牛
じて くる であ ろ う。 ホ.
ス ピ ス 医 療の登 場は、
ま さにそ う し た疑
問か ら 出発 しており,
現 代の医
療へ の挑 戦とも見 ら れる。 しかし同時に ホス ピス は現 代医
療その もの に対 して,
重 要 な堤 言を
内 包 してい る よノうにも感 じ られ るの で あ る 。わが
甲
で は、
畳の上で死を 迎 え るのが当祭
ζ
さ れてき た。 そ して死1
〈
向っ て い る人々も
そ
う ありたいと念 じて,
家 族の待つ 家 庭に帰 りたい と く り返え し希
望 を述べ るのが一
般
で あっ た。 その ことは現 時点
に おい て も ほ と ん ど変
わっ て いないで あろ う。 こ の ような心 情はア メ リカでも
共 通の・
よ うであ り,
人々は家 庭のN
ッ トでの キュ ア,
ケアを 願っ ている と言 わ れている。 家 族に見守
られて死を 迎 え韋
いとい う願
いは.洋
の東西
問わず 変わ らぬ気 持ちであ るらしい。 そ こで現 代の医 療 は,
そ う した要 求に対 して いかなる解 答 をな しうるの か。 ホス ピス ケ アの必 要性
が , 近代
に おい て,
イ ギリス.
からア メ リ・
カへ と展 開さ れ,
さらに世
界に広がろ うと して い る の は ま さに,
現代医
療の こ の空 白
を埋
め る警
鐘 の意味
を も、
っ て い ると思 わ れ る。ホス ピス とは
,
全米
ホス ピス協 会(
National
:Hospice
Organization
)に よれ ば岬
次
の よ うに躡
さ れ る・ それは 味 期黯
と その家族
1
こ璽
る痛み と症 状コと
ト゜一
ノレw
え るサー
ビス の た めの相 互 的専
門 的 訓 練 (interdisciplinary
)のプ
ロ グラムで ある 。 ホス ピス は ケア の特 殊 な概念
であっ て,
特
殊
な ケアの 場所で はない」.
と・ボス
冒
ス は末期
患考
(特に癌
によ る)の身体
的 精神
的苦 痛をい かに緩 和 する か,
ま た患 者と その家 族に対 して いかに ケア を す るか 等に重 点 を 置い て い るといえよう。 さ らに
患 者 と家 族の希
望に沿
っ て・
「その入
ら しい生
」 を全うす
る』
た め に援助
をす
ることにあり,
患者
の人 生の死
の 時点 まで質の高い もの に維 持 する た めに努め るの で あ る。・
そ のた めのケアは,.
病 院と・
いう 医療 機 関 内に限 定さ れ るもので は な く,
ホー
ム’
(在 宅 )にお ける ケア も重 要 な役 割 を担っ てい る。 ア メ リ カにおけるホス ピス は,
病 院ホス ピス よ り も,
む し ろ訪
問 看 護 (ケア)に多 くの働き を な して い ると言 わ れている
。 ホス ピス は場所 や設 備では ない 。 それ は,出
来
得る限 り長 く,
生87
N工 工一
Eleotronio L土braryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University
6
三 浦 泉 6河 島 進の尊 厳 とそのコ ン トロ
ー
ル を 維 持 することを,
患 者に可能
にす る た めのプロ グ ラムで あ る。
そのプロ グラム の な か で
,
特 に症状
コ ン トロー
ル につ い てみれば,
(11
身 体 的 痛み (Physigal
pain
) {2
)精神
的輝
み (Matirial
pain
),
(3
}社
会 的痛
み (Social
p3in
).〔
4
)
宗教 的痛
み (Spri
−
t
。alp 。i
・) を それ
ぞれ
専 門 的}・分 担 す るのが叔
ピス ケア である盤
のため}・は 洛 々専 門 分 野に分 れて,
それ らの専門
職が ケア を担
当す
ることによっ て行な わ れ る 。 そ して担 当 者の チー
ム を組
んで末期
患者
に関 する役
割 を分
担 する ことになる。 その メ ン バー
と しては,
ホ不ピス コー
ディ ネー
ター
又は医 務 部 長,
医 師,
ナー
ス,
心理学者
,
牧 師,
ソー
シ ャル ワー
カーt 栄
養士,
禰薬
剤師,
療 法士 (身 体 的 ),
ボ ラン ティ アがあ り,
彼 らは病 院内
ケア また は在 宅ケ ア におい て その働 き を な してい1
る の である。 これらの人々 の役割
につ い て は後
述 し たい。 (皿’
− 1,2
)。3 .
ホス ピス の 歴史の 概 要 ホ。 ピ%
歴 史 を遡
る な らば漏
院 轣史
毓 れ か ら舗 腰
があるで あろう。
しかし
本 稿 では,
病 院 その もの の歴 史の説 明は除かざる を え ない。’
ホス ピス の起 源は
古代
イン ド,
エ ヂプトにお ける初 期の病 院に遡
る ことがで きる。 しか し当 時の病院は,
今日知
ら れて い る治 療に 重 き を置いた ものでは な く,
む し ろS“ や さ しい愛 情の あ 個・
るケア”
にあっ たと
見 ち れて いる。 そこか ら考 え られること は,
治 療 を 目的 とす る現 代の病 院 も,
その原 型 は実は ケァを中心 と してい た とい うこ.
とであ る。 しか し古 代 ギ リシ ア やロー
マ 時 u励 代に おい てはT 温 泉 療 法や水 浴 療法
な ど医師
の指導
に よっ て適 切な治療
が施
さ れ,
む し ろ現代
的な 意味で病 院の 萌 芽が 垣間み られ た。 しか し ま だ,
ホ ス ピス の原型 と 目 し う るものは 現 わ れ て いな かっ た。 ホス ピス の理念 的なものが現 わ れるには,
ヨー
ロ ッパ 中世を待た なければな ら な か っ・
た。周
知のよ うに古代
ロー
マ に キ リス ト教 が伝
え られて 以辛
1
迫 害 と殉 教の摩
史 を 経て,
キ リス.
ト教 社 会 体 制 が 確 立 しは じ め る。 そのな かで教
会,
修道院 が 設 立さ れ,
病院
もそ れ ら に付
随 し て開
設・
発展す
ることにな
る。特
に ホス ピスがや や明 確になっ て くる のは,
修 道 院におい て キ リ ス ト教 的愛の 精 神に よ る病
入へ の ケア が強調 され た と患
わ れ る点
におい て で ある。 特 に十 字 軍 の時
代に,
「修道院
内に “Hospitia
” と呼 ばれ る旅
人や巡礼者
達に食
物や休息
を 与え る場 所』
が出 現 した」と言 わ れる ように,
当 時.
a
)修
道院は、
病 院の役 割を担いつ つ,薬
の 調剤
さ え も行 な わ れていた。’
しか し現 代 的 意 味で の病 院では勿 論な く,
旅 人や 巡礼
者が旅に疲
れ果そ
て死 を 迎 え る旅
人 や 巡礼者
に愛 とな ぐさ めの精 神 を もっ て,
ケア を 施 すことをその使 命として いた と 思わ れ る。 ま さに そ う した精 神が ホス ピス の 基本
に あ ること を見喜
れ るこ と は できない 。.
こ の ような キ リス ト教
的
精 神に端 を 発 した近代
的なホ ス ピス が,19
世 紀 半ば,
「ア イル ラン ド の ダブ リン に慈善修
道会
の シ ス タr , メア リ・
ア イ ケ ンヘ ッ ドを中
心に不 治の病
人を集
め看
護 UT と精神
的に癒し を目 的と して建
て られた 」,
と
い わ れ.
( い る。現代
のホス ピス は、
イギ リス の ロ ン ドン}ζおいて開 花 した。1967
年に シ シ り一,
ソ ン ダー
ス博 士に よっ て設立 さ れ たセ ン ト ク リス トフ ァー
ホズ ピスが そ れであ る。 そ して その後,
ソン ダー
ス博 士の仕 事}こ刺 激され,
ア メ リ カのエー
ル大 学,
ニ ュー
ヘ ブン病 院,
そ して その地域の人々 が中
心 とな り,1974
年にニ ュー
ヘ ブ 。ホズ
ピス が甦す
る姪
。 たのであ譯
、
4
.
ホス ピス にお け る 夕一
ミ ナ ル ケ ア に つ い て88
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University ホ
・
ス ピス その医 療 的 法 的 諸 問 題7
ホス ピス ケアは,
ま さ し くター
ミ ナル ケア の中 心の 問 題 を 提 起 するもの で ある。 患 者が病 院 における治 療 (キュ ア)で健 康 回 復の望みを失な っ た場 合に,
こ の末 期 患 者 をいかに取 扱うか の 問 題がそれ
である。 医療
担 当者
は,末期
患者
の 期待
と希
望にいか に対処
すべ き か , とい う切 実な 課 題に直
面せざる を え ないわ けであ る。
そのよ う な状
況のな かで,
ホス ピス ケ ア の役割 は,
すこぶ る重要
な 位 置 を 占めて くる と思 わ れる。 ところで ター
ミナル ケアに おい て,
患者 (本 人 )ま た は医 師は,
以下の三 つ の基本 的 事 項に 注 目し なけれげ
な らない。 すなわ ちどこで
死
を 迎え る か と!
・ うこと,病名お
よび 症状
の告
知を
す
べ き か否
かとい うこと,
延命の た め に全 面 的な努 力を行なうべ きか,
あるい は苦痛
を取 り除 くことに主 眼を置 くべ き か とい うこと。’
そ れで これ らの事
項
に関して,
ホス ピ スケア にい か な る 問 題 が あ るのか を,
筆 者なりに考え てみたいQ、
「
.
・
第
1
点につ いて は,
当 然の ことであるが,
ホス ピス において死 を 迎え ること も1
またホー
ム ケア と して 家 庭にお い て家族に見 守ら れて死を 迎 え ること も句
能で あ る。
そ の際,
特に ア メ リ カにおい て 展 開 さ れて い る訪 問 看 護の方 式 が 考えられる。第 2
点につ いて は,
ホス ピス で は,
末 期 患 者に対 し て病 名お よび症 状 を 告 知 し,
患 者が そ れ を 知 っ たうえで ケ アがな され る のが 自然である。
た だ し.
、
そ の告知の具体
的な方 法はそれぞれ の ケー
ス に応じて考 慮さ れ なければ なら ない 。 医 師の 診 断における判 断が,
患 者 本 人の 人 生 観・
性格 ・育
っ た環 境・社
会 的立場・
教養 ・信
仰の 問題
等の背 景を考 慮 して告
知 が な さ れ,
その う えでケアが なされ ることが望 ま しい といえ る。 こ のように ホ ス ピスで は,
患 者が病 名 を 知っ て い ることカミ
よ りよ い ケア に役 立つ と考え られる こ と か ら,
告 知が必 須 的な要 件と なっ て い るの
で ある。 とこ ろで末
期
患 者 (特に癌の場 合の)が病 名お よび
症状
を告 知さ れ た場 合,
絶 望 感に陥り
,
「
結果
と し て死 を早
めると言
っ た 議論
もな される か も しれない。
しか し筆 者 は,
わ が嚀
のホ ス ピスを実 際に見 聞して,
か な らずし も そうで ない こと を 知 っ た。 告知 さ れ た後の ケアの 在 り 方 (方 法 )に配 慮 が なされ,
また人 間 的な ケアがなされ
る な らば,
告 知はかな らずしも否 定 的 な要素
を含
むものとは考え ら れ ない のである。 ア メ リカで は,
こ の告 知 は,
わ が 国より もはる かに当然
の こと と してな されてし
・る よ うである 。 その 固有
な文化 ・
民族
性・
社 会 的宗教
的 背 景 等 に基づい て な さ れてい る か「
らであり,
ま距
医療
問題が訴 訟社
会といわ れるほ ど法 律 問 題とな る ためで
も ある。 ところが わ が国
で は,
こ の告 知の 問 題は,現在 あ
ところ ,
か な り微妙
な問 題 と考えられて い るのが実 情である。聖
、
第
3
点につ い ては,
ホス ピス ケア の場 合,
末 期 患 者の延 命 効 果の問 題よ り も,
身 体 的 精 神 的 苦 痛をいか に緩 和して,
、
その残こさ れ た生
を いかに充実
し た ものに為
すか に焦点
が罩
かれる。 すなわ ち生の質 を 高め ることに
その主 眼が ある とい え よう。 その た めのPain
contro1 の 最善
の方法
が模索
さ れて い るの で あり
・
,限
られた人
生 を有
意義
なも
の にす
る た めに, その ケア に 全 力が投 入されて いるの であ る。’
ア メ リ カの ホス ピス のプロ グラム は
次
の ように述べ られてい る。 すなわ ちホ ス ピス ケア の狙 いは,
「痛みとその他の 症 状の コ ン トロー
ル にあ り,
それはい たず らに延 命 策として人工の手 段は 用い ない とい うことです。
治療の継続
は,
ホス ピス の サー
ビスで は,
批 判さ れる
要 素です が,
それは ホス ピズの目
的の 焦 点が治 療 とい う よ り も む しろ苦 痛の一
時の緩 和にあ るか らで\
89 N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University
8
三浦 泉・
河島 進 す。 ホス ピ ス のプロ グラム を,
末 期 患 者へ のその他の取 り組みと区 別 する の は,
サー
ビス の性 質と そこ にあ る 理念で あ っ て建物
などの よ う な周 囲の環境
では あ り ません1
と。 要す
るに いわ ゆ る治 療 面にそ れ ほ ど力 を注 が ない の がホス ピス ケア で あ る.
8
い うこ とに な ろ う。 しか し同時 に,
ア メ リカの ホ ス ピス協 会の 基 準の な かで,
適 切 な 治 療 を 目標 と し,
ま た適 切な 治 療こ そ ホ ス ピスケア の最 終 目標で ある と定 義さ れ ているの も事 実であり,・
「治 療 をし ないホス ピス は存 在、
’
し ない」 と言 わ れて い るの も否 定でぎ ない。 その意 味では,
ホス ピス は 「死の家 」』
というイメー.
ジで は な く,
治療 を否定 しない ホス ピスへ と進 展 して いるよ うに思 われる。 延 命の た め人工的 手 法 も併せ 用い ら れ てい るので あ る。・
わ が国の 聖 隷ホス ピス に おいて もまた,
「死の受 容が で き る 患者
で も,
や はり一
日も長 く家 族と と もに生 き・
たい と切望 し,
延 命を願
い,
で き る だけの 治療
的努
力を続け
て ほ しいと熱望 して いる。 こうし た努
力を放棄
して患者
を見捨
て る態度
は ど うして も とれ ない 」 と語られて い る。
筆者
もまたそ う あっ て ほ しい と願う者の一
人で あ る。
〔2
}アル フォ ン ス・
デー
ケン, メヂカ ルフ レン ド社 編 集 部, 叢 書 「死へ の準 備 教 育 」,
A・
デー
ケン,
死 を考 え る, 第 3巻, メヂカル フ レ ン ド社, 昭 和61年 5月20日第』
2.
刷, 197〜
208頁 参 照。ショ
ー
ペ ンハ ウアー
,
西 尾 幹二訳,
「
「意 志 と して の世界の第二考 察 」,
世 界の名 著,
45巻,
中 央 公 論 社,
昭 和55年4
月20日初版,
513頁 参 照。
〔4
)パ ス カル,
前田陽一
,
由木康 訳,
「パ ンセ」,
世 界の名 著,29
巻,
中央公論 社,
昭和53
年7
月20
日初版
,
155頁 参 照Q・
7 (
5
) ハ イ デ ガー,
原 佑,
渡 辺二郎訳,
「存在 と 時 間 」,
世界の名 著,
74巻,
中央 公論 社,
昭和55年2
月20
日初版,395
頁 参照。 〔6
) 立 川 昭二,
病気の 社会史一
文明に探る病 因一 ,
NHK ブッ クズ152,
昭和 58年 5 月・
2e
日第17
刷,
15頁〜16
頁 参照。
、
.
{7
) 近年,
癌で死 亡 する人々 の数が増加して いる こ と は周 知の事実で あ る。 わが国の 昭 和60
年の人口動 態統計に よれ ば
,
「
昭和59年より死 亡者 数力亨
,
12,
00p人 増加し,
752,
000人にな り,
その な かで癌死 亡者は188,
000人 と な6 て死 因 中第 1位で あ る。
(昭 和61年 6月27日,
毎 日新聞 朝刊に よ る )。
な お,
癌で倒れ た人の闘 病 記 録が数 多 く出版さ れ,
その苦 闘の様 子は読む者の心 を痛め ふ る わ せ る も のが あ る。
治ゆの医 学 的努力が払わ れるべ き は勿論で あ る が,
治 療の方法 も模索さ れ なけれ ば な らない と考え ら れ るの であ る。ち なみに, わ が 国の 出版 物 (初版の年 代順に) として筆 者 が 参 考にしたの は次の通 りであ る。 高見 順
「詩 集 死の 淵よ
.
りjl
講 談社文 庫,昭
和46年7月 1日,
朝 山新一
,
「さよなら あ りが とう, み ん な (癌と闘っ た夫 妻の 記 録 )」 中 公新書
,
昭和46年 2月25日, 岸 本 英 夫,
「死 を見つ め る心 t ガンと たたかった十 年 間 」
,
講 談社文
庫,
昭和48
年3
月15
日,
原崎百 子,
「わ が 涙 よ,
わ が 歌 とな れ 」,
新教出版 社,19
79年 (昭 和54年 )3月31日
,
井 村 和 清,
「飛鳥へ,
そ しτ
まだ見ぬ子へ 」,
1
洋伝 社,
昭 和55年5月25日,
吉岡 昭 正
,
「死の受容 」,
ガンと向き あっ た365日,
毎日新 聞 社,
昭 和55年11月30日, 児 玉隆也,
「ガ ン病 棟の
98
日」,
新潮文庫,
昭 和55
年12
月25
日,
松 岡 寿 夫,
「ガン宣 告 」,
講 談社,1981
年 (昭 和56
年 )12
月8
日
,
西 川喜作,
「輝やけ我が命の 日々 よ一
ガンを宣告さ れ た精神
科 医の1000日一
」,
新 潮社,
1982年(昭 和
57
年 )10
月ユ5日, 大 橋 祥宏, 「林檎の夜一
癌,
友だ ちの戦 記 」 , 知 人 館、
1984年 (昭 和59年 )4
月10日.
,
雨 宮育造,
雨宮淑 子著・
編,
「この一
日を 永 遠に,
一
ガン闘 病ホス ピス 日記一
」,
キ リス ト教 新聞社,1984
年 (昭 和59年 )8
月22
日,
内村普,
「死よ 何 とい うつ らさ一
ガン・
痛哭の ドキュ メ ン トー
−1
北国 出版社
,
昭和61
年7
月18El
£ その他癌
死に関するもの とL一
て,
柳田邦 夫,
「ガン50
人の勇気」,
文 藝 春秋,
昭和56
年3
月11
日,
柳田邦夫,
「明日 }こ刻む 闘い一
ガン回 廊からの報告一
」文藝 春秋,
昭和 56年8月5 日,
日野 原重明, 「死を どう生 き た か 」, 中公新 書,
昭 和58年3月25日,
石 井 仁,
「担 癌 者 」,
新潮社
,1984
年 (昭 和59年12
月5・
日),
向井承 子,
「たた かい はい の ち 果て る まで,
一
医師 中新井 邦 夫の愛 90 N工 工一
Eleotronio MbrmryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University ホス ピス そ の医療 的法 的 諸問題
9
の 実 践rJ , 新 潮 社,.
1984年 (昭 和59年7月10日), 塚 本 哲 也,
「ガン と戦っ た昭和史 (上’
・
下 )一
塚本 寛 甫と医 師たちセ」 文 藝 春 秋
,
昭 和61
年 4月1 日),
朝 日新 聞 特 別 取 材 斑,
「ガンとの 対決」(上・
下 ),
朝日新 聞社, 昭
和
56年 5月30日(
上 ),
昭 和56年11月30日 (下 ),
庭瀬康二,
「ガン病棟の カル テ」 新 潮 社,
昭 和57年2月25日,
抑田 邦 夫、 「死の 医 学 」へ の序 章 」,
新 潮社,1986
年 (昭和61
年 )12
月5
日など が あ る。
〔
8
}National
Hospice
Orgainzation
発 行のパ ン フレ ッ トのThe
Basice ofHospice ,
1986に よ る。
(
9
)Interdisciplinary
team と は,
各専門 分 野より成る チー
ム・
アプロー
チ,
(注 個,
112頁)と 訳されている が
,
筆者は相互的専 門 的訓 練チー
ムと訳しt
。 これには, 特別に訓 練 された健 康 (health
)専門職
,
非 医療 専 門職, 家 族メ ン バー
と ボ ランティ アが 含 ま れ る。 こ のチー
ム は 通 常 医 師に串
っ て指導さ れ,
1
人 またはそれ 以 上の ナー
ス,
ソー
シャ ル ワー
カー,
心 理 学 科 医 者,
物理療 法 士 と牧 師を含む もの で ある。 ホ ス ピ ス コ
ー
ディネー
ター
は,
在宅,
入 院 患者
の いかな る状 態に関 して も,
すべての ホス ピスサー
ビ ス の適 切 な 調 整 を 行 う責任 を
負
う。
ま た 患 者ケ アコー
ディ.
ネー
ター
は,
ホス ピ スチー
ム・
主治医・
.
患者
・
患 者の家 族 等の間の密 接 な 関 係 を 図 りつ つ 仕 事 をする (Hospice
:ltsconcept and LegislativeDevelopment ,
september1982,
at10.
よ り訳
す る)。
「
’
な お,
1978
年には全米ホス ピス協会が法 人化さ れ,
これに よっ てホス ピスケアプロ グラム規範が採 用 さ れ,
その規 範に合 致 するプロ グラムを有 するホス ピスが認 定されることになっ て い る。
そ の規 範は次 の22項 目か らなる。 すなわ ち (1
)適切な治 療こそ,
ホス ピス ケア の最 終 目標で あ る。 {2
胎 癒がもは や不可 能な場 合は,一
時緩和的看護 が,
もっ と も適 切な ケアの形で あ る。13
}一
時緩 和的治療は,
慢 性の兆候や、
症 状に よ る 苦 痛の 防止 を 目指す。
〔4
)ホス ピス 入 院は,
患 者とその家 族のニー
ズが あ る か ど うか,
彼ら が 看護の要請を表明 した かどう か,
に よつ て決め る。
ホス ピス・
ケァは専 門家の非専 門家の サー
ビスの 混 合である。
ホス ピス におけ る看 護で は,
患者と その家族の生 活の,
あ ら ゆ る側面が治療に関 連 して,
有 効である,
と考え る。
(7
)ホス ピ ス・
ケ ア は患 者とそ の家 族の信 条 を すべ て尊 重 し,
彼 らの個 人 的,
哲 学 的, 倫 理 的,宗 教 的要 素を満たす, 様々 な方策を試 ける。 ホス ピス・
ケアは絶え間ない看護 で あ る。
ホ ス ピス
・
ケア・
プロ グラムは 患 者と家 族 をひどま と め に して,
ケア の一
単 位と考え る。 患 者と家族は
,
,
ホス ピス・
ケア・
チー
ムの 中心的存在である,
と考え られて い る。
(IDホス ピス看 護計画
で は,
』
家族のなかに看 病の責 任 を 負っ てくれる者の いない患 者の世 話をすること がで き る人々 を見いだ し
,
,
配 属し
,
監 督 しよ う と努める。 働ホ ス ピ ズ に よる家taic
対する ケアは,
患者の死後 も続く。 〔13)ホス ピズ は年 中無休。一
日24時 間、
1週7 日間の看護を受け られ る。 働ホス ピス・
ゲアは,
職域関連 的なチー
ムで 行 なう。 ホス ピス・
プロ グラム は,
職員 を支 える,
組 織的,
非公式の手 段を与え る。
』
U6
)ホス ピス・
・
プ ログラムは
,
全 米ホス ピス協 会の規 範 と,
患者と家 族に対 する看 護の組 織 を 司る適 切な法 律と規制に従 う もので ある。
a
物ホス ピス・
プロ グラム の活動は中央 行政の調 整に従う。 絶 望的な症状をコ ン トロー
ルする最 善の道は, ホス ピス
・
ケア の本質で,
職 域関連的 チー
ムに よ る,
医 療,
看 護 そ 他の サー
ビスを必 要 とす る。 ホス ピス
・
ケァ・
プ ロ グ ラム はつ ぎの職 種を含む。 〔a職 員全体の医療部 長,
{b}ケアチー
ムの
一
員 と して職 員に加わ る医 師,
回縣
者の担当 医、
(外 来 また は 主治 医)と密接に連絡をと りあ うこと。看 護の場 所 を決 定 するファ クタ
ー
と して ,患者の ニー
ズ と好み に基づき , ホス ピス・
プロ グ ラム は,
入 院 看 護 も在宅看護 を行 う。 教 育
,
トレ“
一
ニ ング,
ホ スピス・
サ 「ビ ス の評砺
は,.
ホス ピス・
ケア・
プ ログラム の活動とし て,
現在 進 行 中で ある。
?2)全 患 者につ い て,
精 密,
かっ最新の記 録が保 管さ れてい る。 (な お
,
この規範の詳 細にう い て は1
日本経済新聞 社編、
「ドキュ メ ン ト,
聖隷ホス ピス ,.
昭和58年
4
月1
日第1
刷,159
頁〜162
頁 を 参照 さ れ たい。) こ の規 範は,
ホス ピス の資格・
目 的 を 定め るこ とに よ り, 「ホス ピスに名 を 借 り た 不 完 全,
不 適 切な 施 設の氾濫を防ぎ,
連邦や州 な ど か らの補 助 金 を 獲 得 しや すい狙い」 を もつ と言 わ れてい る。
( 前掲書(
7
}「が
ん との対決 (下)」100
頁参照 )。
ao
} 柏木 哲夫,
「生 と死を支え る一
ホ ス ピス・
ケア の実践 」,
朝日新 聞社,
1983年 5 月20日第 1 刷,
4碩
参
照・
{11
} 柏木哲夫,
「臨死 患者ケア の理 論 と実 践厂一
死にゅく患 者の看 護一
」,
.
日本 総 研 出 版,1982
年12
月,
、
91
N工 工一
Eleotronio LibraryHokuriku University
NII-Electronic Library Service Hokuriku University
10 三浦 泉
・
河 島 進
15
日第1
版6
刷,142
頁 参照U2
}National
Hospice
Orgainzation,
About
Hospice ,
at 10.
a3
)、
ホス ピス の語 源は,
ラテン語 (hospitiu’
m )の ホス ト (Host
)客
を もてなす 主 人ま
た はゲス ト (Guest)’
客に由来 するもの であ り,
「本来は旅 人が 憩い のた めに短い期 間だけ滞在 するコ ミュ ニ テ ィを 意味し,
旅ゆ く 人 た ち が補 給や休 養を し た り
,
ま た,
こ の人 々 を世 話した りする場 所」 のことであ る と言われる(ビク タ
ー
&ロー
ズマ リー ・
ゾルザ,
監訳 岡村昭彦,
木村 恵子訳,
「ホス ピスー
末期ガ ン患者へ の宣告
一
」,
家の光協会1 昭和59
年2
月1
日第2
版,396
頁 参照。
一
Marlene
Scham ,
andArnold
Schan ,
Hospices
:Medical
alldLegal
considerations,
1985,
Cyril
H .
Wecht ,
Series
editor,
Legal
Medicine
1985,
Praeger
publishers,
at、
301.
e5
)Ke
皿 ethP .
Cohen
Ph .
D,
MPH .
,
斎 藤武,
柏木 哲夫 訳,
ホス ピ スー
末 期医 療の 思想 と方法
一
一
医 学 書 院, 1983年 8月 1日第 1豚
2刷, 21頁 参 照。
Kenneth
P .
Cohen ,
斎 藤 武, 柏 木 哲 夫・
前 掲 書 (15}, 21頁 参 照。(
17
} 沖 藤 典 子,
平 安 な れ命の終 り,
一
ホス ピス病 棟 か らの報 告, 新 潮 社,
昭 和61
年 7月15
日第6
刷,
.
38
頁参 照
。
・ll8
)Barbars
Coleman
,A
Consurner
Guid
to
Hospice
care ,Natiorral
Consumers
League
,
June