138 氏名(生年,月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(56) カワ ゾエ コウ ヘイ川副浩平(昭和2
博士(医学) 魚心1220号平成3年10月18日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
Percutaneous trans董uminal coronary angioplasty and coronary artery bypass surgery-Early and fo皿ow・up clinica豆results一(経皮的冠動脈形成術と冠動脈バイパス術一早期および遠隔成績について
一) (主査)教授 小柳 仁 (副査) 教授 糸田田 瑳一, 新田 剛猛β論文内、容の要旨
目的 近年,経皮的冠動脈形成術(PTCA)の適応が急速 に拡大されつつあるが,冠動脈バイパス術(CABG) との比較において,その安全性と長期予後に関する評 価は未だ十分になされていない.本論文は,PTCAと CABGの早期および遠隔成績を比較して,治療法とし ての妥当性と適応について検討することを目的として いる. 対象と方法 1986年1月より1988年末までに,国立循環器病セン ターで冠動脈造影を行った心筋虚血症例のうち,PTCAを施行した355例とCABGを施行した160例を
対象とした.各治療法を待期的適用と緊急的適用に分 け,それぞれにおける1枝病変例と多枝病変例につい て,術後早期および遠隔期(追跡期間12~48ヵ月)の 予後を比較検討した. 結果1枝病変に対する期待的PTCA 152例と緊急
PTCA 21例の成績に差はなかった.しかし,多枝病変 に対する待期的PTCA 130例と緊急PTCA 31例では, 初期成功率(81.6%vs 64.5%, p<0.05), PTCA後急 性期合併症(3.1%vs 12.9%, p<0.01)および死亡率 (1.5%vs 9.7%, p<0.01)の早期成績,また遠隔期の 重症心合併症(心筋梗塞・心臓死)の発生率(6.2%vs 25.0%,p<0.01)に有意の差を認めた.他方多枝病変 に対する待期的CABG 88例と緊急CABG 25例では, 術後早期合併症発生率(5.7%vs 4.0%),死亡率(2.3% vs 12.0%),また遠隔期重症心合併症発生率(2.3%vs O%)に有意差はなかった. 考察安定狭心症に対するPTCAの治療効果は広く認め
られているが,不安定狭心症に関しては議論のあると ころである.不安定狭心症に対するPTCAの成否を左 右する要因として,“緊急的適用か否か”が最も重要で, 次いで高齢,冠動脈病変の進展,および心筋梗塞や心 不全の既往が重要な危険因子と考えられている.我々 の検討でも,多枝病変例における緊急PTCAの成績 は,早期のみならず遠隔期においても不良であった. これに反し,多枝病変例に対する緊急CABGは,待期 的CABGに比し手術死亡率のみ高い傾向がみられる が有意差はなく,死亡例3例はいずれも術前既に重篤 な臓器不全に陥っていたものである.また耐術者の遠 隔成績も安定しており,長期予後は良好であった. 結語 再狭窄に伴う高度の危険性が予想される多枝病変例 は,不安定狭心症に対する緊急PTCAの適応から除外 すべきで,むしろ緊急CABGが推奨される. 一742一139