― 121 ― 今年度、実践女子大学文芸資料研究所の所蔵に帰した、 『伝藤原為家筆源氏物語常夏 (模写) 』 は、書写奥書により、 弘化三年 (一八四六) 六月に模写されたものであることがわかる。江戸時代最末期に模写されたものではあるが、その 親本は 「伝藤原為家筆大四半切源氏物語」 として伝存している古筆切のツレだと考えられる。 伝藤原為家筆大四半切は、 常夏巻の断簡が現時点で知られておらず、当該模写本との比較はできないが、原本が今なお秘蔵されている可能性も 残っていよう。 もちろん、親本とされた原本が現存しており公開されることが望ましいが、現時点では紹介されていない。当該模 写 本 は 親 本 に 忠 実 に 模 写 さ れ た こ と が う か が わ れ る た め、 原 本 が 見 い だ さ れ る ま で の 研 究 資 料 と し て 有 用 だ と 考 え、 翻刻 ・ 影印を示し、解題を付して紹介することとした。当該模写本が親本を忠実に模写していることがうかがわれる、 と判断した理由については、以下、書誌事項の紹介や内容の考察の際に詳しく述べることとする。 調査報告 一一三
『伝藤原為家筆源氏物語常夏(模写)
』
解題並びに翻刻・影印
中葉
芳子
― 122 ― まず、書誌を掲げる。該本は、折本一帖。表紙は縦二九 ・ 五センチ、横七 ・ 五センチ。表紙 ・ 裏表紙とも見返しには、 金砂子が粗く撒かれている。外題は打付書で 「源氏物語 常夏 二條 」と記すが、損傷が激しく下半分 の文字は読めない。内題はない。本文は二十五枚の料紙を継いでいる。各紙の右上に、何紙目に相当するか、を示す 漢数字が記されている。これらの漢数字は紙継ぎで下になり、また紙継ぎ後に化粧裁ちされたため、上部が切られて 完存していないものが多い。模写が完成してから料紙を継いでいることから、順序を誤らないために番号が付された のであろう。模写後に料紙を継いだことは、 例えば、 第四紙と第五紙の継ぎ目を見るとわかる。第四紙最終行 (八十三 行目) 「しほうの人にて」 の「人」 は、 一画目が継ぎ目で止まっている。また第五紙第一行 (八十四行目) 「なを の「 」の上部も継ぎ目の下に入っている。 一 紙 の 大 き さ( 横 の 長 さ ) は、 第 二 紙 か ら 第 二 十 四 紙 は 約 四 十 三 セ ン チ、 第 一 紙 が 四 一 ・ 七 セ ン チ、 第 二 十 五 紙 が 二七 ・ 二センチで、全長は約一〇五五センチとなる。本文は五一〇行 (第一紙二十行、第二紙~第二十四紙が各二十一 行、 第 二 十 五 紙 が 七 行 )、 書 写 奥 書 が 三 行、 第 一 紙 紙 背 に 二 行 の 裏 書 が あ る。 折 本 に 仕 立 て ら れ て い る た め か、 折 目 に料紙の損傷があり、割れて読み取りにくくなっている箇所がある。 書写奥書には、 右二条為家卿真蹟源氏常夏巻一帖 天 弘 化三年丙午六月晦日模之畢 第一本 (花押) と記され、先にも述べたように弘化三年 (一八四六) 六月末に模写されたことがわかる。書写奥書の三行目に 「第一本」 とあるのは、該本の親本を含め、何巻かの書籍をまとめて借り出して来たからであろうか。何らかの一巻目であった
― 123 ― ことを記しておいたのであろうか。 本文は、 常夏巻がすべて書写されている。ただし、 二六五~二七五行目と、 二七六~二八六行目とは順序が逆になっ ている。この順序が逆になっている二十二行は、影印からわかるように、第十三紙の十四行目から第十四紙の十四行 目であり、該本の料紙の綴じ誤りによるものではないことが明らかである。親本の段階で生じた誤りであろう。 では、親本はどのような形態であったのか。巻物だと考えると、十一行分では横の長さとして短いであろう。十一 行というのは、冊子本の一面分として適当であるが、冊子本そのものでは十一行と十一行のみ順序が入れ替わるとい うのは考えにくい。巻子本に改装している、もと冊子本であれば、該本のような誤りも起こりうるであろう。 よって、親本は一面十一行詰の冊子本を巻子本に改装したもので、改装する際に順序を誤って継いでしまったもの と考えられる。順序が逆になる前の二六四行は、一面十一行詰の冊子本だと考えると、二四面分、すなわち一二丁分 に 相 当 す る。 一 三 丁 表 裏 が こ の 二 六 五 ~ 二 八 六 行 目 で あ る。 本 文 の 五 一 〇 行 は、 一 面 十 一 行 詰 の 冊 子 本 で 考 え る と、 四六面 (二三丁) 分+四行となり、墨付二四丁の冊子本が親本の本来の形であったことがわかる。 一面十一行詰で藤原為家を伝称筆者とする 『源氏物語』 と言えば、先に述べたように 「伝藤原為家筆大四半切源氏物 語」 として伝存しているものが思い浮かぶ。この伝藤原為家筆大四半切は、 かなりの枚数が伝存し、 巻も多岐にわたる。 また、巻子本に改装されて一巻すべてが現存している巻もある。本文は河内本系統で、尾州家本との近さが指摘され ている。 該本の本文と尾州家本とを比較してみると、表記の違いを除くと、ほぼ一致する。該本には補入・ミセケチも見ら れるが、訂正後の本文が尾州家本と一致する。二十三行目 「せけしの事も」 (独自異文) 、二六一行目 「もてないたまふ
― 124 ― らん」 (御物本、 富田仙助蔵本、 鳳来寺本に一致) 、 四六〇行 「いとかろかなりや」 (御物本に一致) が尾州家本と異なる。 ただ、二十三行目 「おきなひたる心地してせけしの事も」 とある 「せけし」 の「し」 は、諸本ともに 「ん」 とする。 「せけし」 では意味をなさないが、該本には 「し」 としか読めない字が書かれている。ただ、下の 「の」 との間に不自然な空白もあ る。親本に虫喰いや損傷があったために、 「し」 のような縦線しか残っていなかったのを、該本が忠実に模写したので はないだろうか。 なお、 一行目 「ひんかしの□□とのに」 、 十一行目 「風はいと□くふけと」 、 二十二行目 「なにと□□」 、 四九五行目 「と □□ゝ御ふみと」 、四九六行目 「しるし□□」 の□はすべて空白であり、書写した字を擦り消した跡は見られない。も とから何も書かれていないのである。十一行目は一丁オモテの最終行で、 手擦れによる損傷が生じやすい位置である。 また、 一行目 ・ 二十二行目、 四九五 ・ 四九六行目は、 それぞれ紙の表裏に当たり、 親本に虫喰いがあり文字が読めなかっ た可能性が高い。一行目と二十二行目に見える□が虫喰いの跡だとすると、それが二十三行目 「せけし」 の「し」 にまで 及んでいたことも考えられる。 本 文 に は、 先 に 述 べ た よ う に、 補 入・ ミ セ ケ チ が 見 ら れ る。 そ の 中 に は、 一、 二 文 字 の 訂 正・ 補 入 だ け で は な く、 数文字もしくは一行分と思われる補入・ミセケチも見られる。二四一行目には「やまかつのこむかへいてゝものめか したつれ」と一行分の補入が見られるし、二六四行目には「なをひめきみの」という本来の次の行に書かれていたも の を 目 移 り で 誤 写 し た も の の 訂 正 と 思 わ れ る ミ セ ケ チ も あ る( 二 六 四 行 目 の 次 は、 親 本 が 正 し く 紙 を 継 い で い れ ば 二七六行目である) 。 一、 二 文 字 の 訂 正・ 補 入 に 関 し て は、 模 写 の 際 の 誤 写 を 訂 正 し た も の な の か、 親 本 の も の を 引 き 継 い で い る の か、 判 断 が つ か な い。 し か し、 二 四 一、 二 六 四 行 目 の 補 入・ ミ セ ケ チ に 関 し て は、 親 本 が 該 本 同 様、 補 入・ ミ セ ケ チ し て
― 125 ― いたと判断できる。 なぜなら、二六四行目の目移りによる誤写は、二七六行目が正しい位置になければ生じないはずである。それなの に二六四行目は、二七六行目にある 「給ても」 の「も」 の目移りで 「なをひめきみの」 と書き、誤りに気付いて訂正してい ることになる。該本では起こりようのないミセケチ訂正がなされていることから、該本は親本をミセケチまでも忠実 に模写したと考えられるのである。 また、二六五~二七五行目と二七六~二八六行目の順序が逆になるためには、先に述べたように、それぞれが一面 に書写されていなければ起こらない。二四一行目に補入されている一行分が、親本において、補入ではなく本行に書 かれていた場合、一面の行数が合わなくなる。先にも述べたように、二六四行目までは一面十一行で計算して、正し く十二丁分に相当する。このことからも、該本は親本にある補入を忠実に模写したと考えられる証拠となろう。 こ の よ う な 文 字 数 の 多 い、 補 入・ ミ セ ケ チ が 親 本 の も の を 忠 実 に 模 写 し て い る の で あ れ ば、 一、 二 文 字 の 補 入・ 訂 正も親本のものを引き継いでいる可能性があるのではないか。親本が紹介されなければ解決はしないが、可能性とし て提示しておきたい。 最後に、第一紙紙背にある裏書について触れておく。裏書には、 校異源氏物語によるに冨田仙助氏蔵伝為家本とも 相違ありて同書とは同一本にあらざることしらる と記される。 「校異源氏物語」 という語が見られることから、 『校異源氏物語』 が出版された昭和十七年 (一九四二) 十月 以降に記されたものであることは明らかである。 『校異源氏物語』 を改訂した 『源氏物語大成』 が出版された昭和二十八 年(一九三四) とこの裏書が記された前後関係は不明であるが、終戦前後に該本を所蔵していた人物による覚書である
― 126 ― と推定される。 以上のように、 『伝藤原為家筆源氏物語常夏 (模写) 』は、現在 「伝藤原為家筆大四半切源氏物語」 として知られるもの を親本として書写された模写本である。親本のミセケチ・補入・損傷さえも忠実に模写しており、親本の存在が知ら れていない今、河内本系統の尾州家本と深い関係を持つ該本は、本文研究に有用な資料であると考えられる。 翻刻・影印 【凡例】 一 実践女子大学文芸資料研究所蔵 『伝藤原為家筆源氏物語常夏 (模写) 』の翻刻・影印である。 一 ミセケチは、二重抹消線をもって記し、重ね書きは下の文字を二重抹消線を付して記し、重ね書きした文字は右 に傍記した。補入記号は 「 。 」で示した。 一 漢字は原則として通行の字体を用いた。空白部分は□記号で示した。 【表紙】 源氏物語 常夏 二条 以下、傷みにより不明
― 127 ― 【本文】 1 いとあつき日ひんかしの□□とのにいて 2 給てすゝみたまふ中将の君もさふらひた 3 まふしたしき殿上人あまたさふらひて 4 にしかはよりたてまつれるあゆおまへに 5 てゝうしちかきかはのいしふしなとやう 6 のせうようし給にれいの内のおほい殿の 7 君たち中将の御あたりをたつねてまい 8 りたまへりさう しくねふたかりつるお 9 りよく物したまへるかなとておほみきまいり 10 ひ水めしてすいはんなととり にさうとき 11 つゝ風はいと□くふけと日のとやかにくもり 12 なきににし日になるほとせみのこゑなとも 13 いとくるしけにきこゆれは水のうへむとく 14 なるけふのあつかはしさかなむらいのつみは 15 ゆるされなんやとてよりふしたまへりい 16 とかゝるころはあそひなともすさましく 17 さすかにくらしかたきこそくるしけれみ 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17
― 128 ― 18 やつかへするわかき人 たへかたからんかし 19 なおひひもゝとかぬほとよこゝにてたにうち 20 みたれてこのころ世に見えきこえん事 」第一紙 21 のすこしめつらしからんねふりさめぬへ 22 からん事かたりきかせたまへなにと□□ 23 おきなひにたる心地してせけしの事も 24 おほつかなしやとの給へはめつらしき事とて 25 うちいてきこえん御ものかたりもおほえ 26 ねはかしこまりたるやうにてみないと 27 すゝしきかうらんにせなかをしつゝさふ 28 らひ給いかにきゝしことそやおとゝのこの 29 ころほかはらのむすめたつねいてゝかし 30 つき給とまねふ人なんありしまことにさ 31 ることかと弁の少将にとひたまふこと しう 32 さまていひなすへき事にも侍らさりけりこ 33 のはるのころをひゆめかたりしたうひ 34 けるをほのきゝつたへ侍ける女のなんかこ 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 31 32 33 34
― 129 ― 35 つへき事あるとなのり侍けるを中将のあ 36 そんなんきゝつけてさやうにもふれはひぬ 37 へきしるしやあるとたつねとふらひ侍け 38 るくはしきさまにはえしり侍らすけにこの 39 ころめつらしきよかたりになん人 ものし 40 はへなるかやうのことこそ人のためを 41 のつからけそんなるわさに 侍 り け り れ ときこゆ 」第二紙 42 まことなるへしとおほいていとおほかめる 43 つらにはなれてをくるゝかりをしゐてた 44 つねたまふらんかいとふくつけきそかし 45 こゝにこそいとゝもしきにさやうならんも 46 のゝくさはひいとみいてまほしけれとなの 47 りものうきゝはとやおもふらんさらにこそ 48 きこえねさてもゝてはなれたるきはにはあ 49 らしらうかはしくとかくまきれ給めりし 50 ほとにそこきよくすまぬみつにやとれる月 51 のくもりなきやうのいかてかあらんとほゝゑ 35 36 37 38 39 40 41 42 43 44 45 46 47 48 49 50 51
― 130 ― 52 みての給中将のきみもくはしくきゝ給へる 53 ことなれはえしもまめたゝす少将と侍従と 54 はいともからしとおもひたりあそんやさや 55 うのおちはをたにひろへひとわるきなのゝち 56 のよまてのこらんよりはおなしかさしにてな 57 くさめんなにのとかゝあらんとろうし給 58 やうなりかやうのことにてそうへはいとよき 59 やうなる御なかのむかしよりさすかにひま 60 ありけるにまいて中将をいたくはした 61 なめてわひさせ給つらさをおほして 62 なまねたしとももりきゝ給へかしとおほ 」第三紙 63 すなりけりかうきゝ給につけてもたいの 64 ひめきみをみせたらんときあなつらは 65 しからぬかたにてもゝてさはきなんはやい 66 とものきは しくかひあるところつきたま 67 へる人にてよきあしきけちめもものけさや 68 かにもてなしてけちえんなる事も人にこと 52 53 54 55 56 57 58 59 60 61 62 63 64 65 66 67 68
― 131 ― 69 なるおとゝなれはいかにものしとけ ◦ に おもふ 70 らんおほえぬさまにてこのきみをみいてた 71 らんときにかろくはえおもはしかしいとき 72 ひしうはもてなしてんとおほすゆふつけ 73 ゆくにかせいとすゝしくてかへりうくわか 74 き人 思たりこゝろやすくうちとけすゝみや 75 すまんややう かやうのみなかにもいとはれ 76 ぬへきよはひにもなりにけりやとてにし 77 のたいへわたり給へはきみたちみな御ともに 78 まいりたまふたそかれときのおなしなをし 79 ともなれはおほ しくたれともわきまへられ 80 ぬにおとゝひめきみをすこしといてたまへとて 81 しのひて少将侍従ゐてまうてきたりいと 82 かけりこまほしけにおもひたるを中将のいと 83 しほうの人にてゐてこぬむしんなりかし 」第四紙 84 こ の 人 は み な お も ふ こ ゝ ろ な き な ら し な を 85 しきゝはをたにまとのうちなるほとはほと 69 70 71 72 73 74 75 76 77 78 79 80 81 82 83 84 85
― 132 ― 86 にしたかひつゝゆかしうおほゆへかめる 87 こ と な れ は こ の い へ の お ほ え う ち く た し き ほ 88 とよりはいとよにすきてこと しうなんいひ 89 お も ひ な す へ か め る を か た も の す め れ と さ す 90 かに人のすきこといひよらんにつきなしかし 91 かくて物したまふはいかて ◦ か さやうならむ人の 92 ふかさあさゝをもしらんと思しほいなんかなふ 93 こゝちしけるたゝなるよりはさう しきに 94 ねかひおもひしやうなりなとさゝめききこ 95 え給おまへにみたりかはしきせんさいなともう 96 へさせ給はすなてしこのいろをとゝのへたる 97 からのやまとのとませいとなつかしくゆひなし 98 てさきみたれたるゆふはへいみしうおかしく 99 みゆみなたちよりてこゝろのまゝにもえおりと 100 らぬをあかすおもひつゝやすらふいうそくとも 101 なりなこゝろもちゐなともとり につけてこ 102 そめやすけれ右の中将はましていますこし 103 しつまりてこゝろはつかしきけはひまさりて 86 87 88 89 90 91 92 93 94 95 96 97 98 99 100 101 102 103
― 133 ― 104 みゆいかにそをとつれきこゆやはしたなくなも 」第五紙 105 てなし給そなとの給中将のきみはかくよきなか 106 にもすくれておかしけになまめき給へり中 107 将をいとひ給こそおとゝはほいなけれましり 108 物なくきら しかめるなかにおほきみ 109 たつすちにておほえかたくなゝりとにやとの給 110 へ は き ま さ は と い ふ 人 も 侍 け る を と き こ え 給 い て 111 そ の み さ か な も て は や さ れ ん ほ と は ね か は し か ら 112 すたゝおさなきとちむすひをきけんこゝろも 113 とけすとし月へたて給こゝろむけのつらきなり 114 ま た 下 ら う な り よ の き ゝ み ゝ か ろ し と お も は れ は し 115 らぬかほにてこゝにまかせ給つらんにうしろ 116 めたうはありなましやなとうめき給さはかゝる 117 御こゝろのへたてある御なかなりけりときゝ給 118 にもおやにしられたてまつらんことのいつとな 119 きをあはれにいふせくおほす月もなきころな 120 れはとうろにおほとなふらまいれりけちかくて 104 105 106 107 108 109 110 111 112 113 114 115 116 117 118 119 120
― 134 ― 121 いとあつかはしやかゝりひこそよけれとて人め 122 してかゝりひのたいひとつこなたにとめすお 123 かしけなるわこんのおまへにあるをひきよせ 124 給てかきならし給へはりちにいとよくしらへ 125 られたりねもいとよくなれはすこしひき給て 」第六紙 126 か や う の 事 は 御 こ ゝ ろ に い ら ぬ に や と つ き こ ろ お も 127 ひおとしきこえけるかなあきのよの月かけ 128 す ゝ し き ほ と い と お く ふ か く は あ ら て む し の こ ゑ 129 にかきあはせたるほとけちかういまめきたる 130 ものゝねなりこと しきしらへもなしやこの 131 ものよさなからおほくのあそひ物のひやうしを 132 と ゝ の へ と り た る な ん い と か し こ き や ま と こ と ゝ 133 ははかなうみせてきはもなくしをきたることな 134 りひろくことくにのことをしらぬをんなのため 135 と な ん お ほ ゆ る お な し く は こ ゝ ろ と ゝ め て も の な と に 136 かきあはせてならしたまへふかきこゝろとて 137 なにはかりもあらすなから又まことにひきうる 121 122 123 124 125 126 127 128 129 130 131 132 133 134 135 136 137
― 135 ― 138 事 は か た き に や あ ら ん た ゝ い ま は こ の う ち の お と ゝ 139 にひきならふ人なしかしたゝはかなきおなし 140 すかかきのほとによろつの物のねともこもりか 141 よ ひ て い ふ か た な く こ そ ひ ゝ き の ほ れ と か た り 給 142 へ は ほ の こ ゝ ろ へ て い か て か と お ほ す こ と な れ は 143 いふかしうてこのわたりにさりぬへき御あそひ 144 の お り な と に き ゝ は へ り な ん や あ や し き や ま か つ 145 なとのなかにもまねふものあまたはへる事なれ 146 はおしなへてこゝろやすくやとこそおもひ給へ 」第七紙 147 つ れ さ ら は す く れ た る は さ ま こ と に や は へ ら ん と 148 ゆ か し け に せ ち に 心 い れ て お も ひ 給 へ れ は さ か し 149 あつまとそなにたちたるやうなれと御前の御 150 あ そ ひ に も ま つ ふ ん の つ か さ を め す は 人 の く に ゝ 151 は し ら す こ ゝ に は こ れ を も の ゝ お や と し い た し た る 152 に こ そ あ め れ こ の な か に も お や と し つ へ き 御 て よ 153 りひきとり給へらんはこゝろことなりなんかし 154 こゝになともさるへからんおりにはものし給な 138 139 140 141 142 143 144 145 146 147 148 149 150 151 152 153 154
― 136 ― 155 む を こ の こ と に て お し ま す な と あ き ら か に か き な 156 ら し た ま は ん こ と や か た か ら ん も の ゝ 上 す は い つ れ の 157 み ち も こ ゝ ろ や す か ら す そ あ め る さ り と も つ ゐ に 158 はきゝ給てんかしとてしらへすこしひきたまふ 159 こ と つ ひ い と に な く い ま め か し う お か し こ れ に も 160 ま さ る ね に や は へ ら ん と お や の 御 ゆ か し さ に た ち 161 そ ひ こ の こ と に て さ へ い か な ら ん よ に う ち と け ひ 162 き給はんをきかんなとおもひゐ給へりぬきか 163 は の せ ゝ の や は ら た な と い と な つ か し う ゝ た ひ た 164 まふおやさくるつまはすこしうちわらひ給つゝ 165 わさとならすかきならし給へるすかゝきのほと 166 いひしらすおかしくおもしろうきこゆいてひ 167 き給へさえは人なかにてはちぬわさなりさうふ 」第八紙 168 れんはかりこそ心のうちにてまきらはす人もあ 169 りけめおもなくてかれこれにかきあはせたる 170 なんよきとせちにきこえ給へとさるゐ中のくま 171 にてほのかに京人となのりけるふるおほきみ女 155 156 157 158 159 160 161 162 163 164 165 166 167 168 169 170 171
― 137 ― 172 のをしへきこえけれは ひ か 事にもやとつゝま 173 しうてゝもふれ給はすしはしもひきたまは 174 なんきゝとることもやあるとこゝろもとなきに 175 よりそちかうゐさりよりていかなるかせのふ 176 きそひてかうはひゝき侍そとよとてうちかた 177 ふき給へるさまほかけにいとうつくしけなりわ 178 らひ給てみゝかたからぬ人のためにはみにしむ 179 かせもふきそふかしとてをしやり給いとこゝ 180 ろ や ま し 人 ち か う 候 へ は れ い の た は ふ れ こ と も 181 えきこえ給はてなてしこをあかてもこの人 182 の た ち さ り ぬ る か な い か て お と ゝ に も こ の 花 そ の 183 み せ た て ま つ ら ん よ も い と つ ね な き を と お も ふ に い 184 に し へ も 物 の つ い て に か た り い て 給 へ り し も た ゝ 185 いまの事とそおほゆるとてすこしの給いて 186 たるにもいとあはれなり 187 なてしこのとこなつかしきいろをみは 188 もとのかきねを人やたつねんこの事のわ 」第九紙 172 173 174 175 176 177 178 179 180 181 182 183 184 185 186 187 188
― 138 ― 189 つらはしさになんまゆこもりもこゝろくるし 190 うとの給きみうちなきて 191 やまかつのかきほにおひしなてしこのも 192 とのねさしをたれかたつねんはかなけにきこ 193 え な し 給 へ る さ ま け に い と な つ か し う わ か や か な 194 りこさらましかはとうちすんし給ていとゝしき 195 御こゝろはくるしきまてえしのひはつましう 196 おほさるわたり給事もあまりうちしきり人 197 の み た て ま つ り と か め む ほ と は こ ゝ ろ の お に ゝ お ほ し 198 と ゝ め て さ る へ き 事 を し い て つ ゝ 御 ふ み の か よ は 199 ぬ お り な し た ゝ こ の 御 こ と の み あ け く れ 御 こ ゝ ろ 200 にかゝりたりなそかくあいなきわさをしいてゝ 201 や す か ら ぬ も の お も ひ を す ら ん さ お も は し と て こ 202 ころのまゝにもあらはよの人のそしりいはんこ 203 と の か る し さ わ か た め は さ る も の に て こ の 人 204 の御ためいとをしかるへしかきりなき御こゝろ 205 さ し と い ふ と も は る の う へ の 御 お ほ え に な ら ふ は 206 か り は 我 こ ゝ ろ な か ら え あ る ま し う お ほ し ゝ み た 189 190 191 192 193 194 195 196 197 198 199 200 201 202 203 204 205 206
― 139 ― 207 り さ て そ の お と り の つ ら に て は な に は か り か は あ ら 208 む わ か み ひ と つ こ そ 人 よ り こ と に は あ れ 見 ん 人 の 209 あ ま た か な か に か ゝ つ ら は ん す ゑ に て は な に は か り の 」第十紙 210 おほえかはたけからんことなる事なき納言のき 211 は の ふ た こ ゝ ろ な き に て お も は ん に は お と り ぬ へ き こ 212 と そ と み つ か ら お ほ し ゝ る に い と を し う て 宮 213 大将なとにやゆるしてましさてもてはなれ 214 い さ な ひ と り て は お も ひ た え な ん や な と よ ろ つ に 215 いふかひなきにてさもしてんとおもほすおり 216 もありされとわたり給て御かたちをみ給いまは 217 御 こ と を し へ た て ま つ り 給 に さ へ こ と つ け て ち か 218 やかになれより給ひめきみもはしめこそむく 219 つけくうたておほえ給しかかくてもなたらか 220 に う し ろ め た な き 御 こ ゝ ろ は な か り け り と や う 221 め な れ て い と し も う と み き こ え 給 は す さ る へ き 御 222 い ら へ な と も な れ し か ら ぬ さ ま に き こ え か は し 223 なとし給てみるまゝにあいきやうつきかほりま 207 208 209 210 211 212 213 214 215 216 217 218 219 220 221 222 223
― 140 ― 224 さり給へはなをさてもえみすくすましうおほし 225 か へ さ る ま た さ て こ ゝ な か ら か し つ き す へ て さ る 226 へきおり はうちしのひものをもきこえてな 227 く さ み な ん や か く ま た よ な れ ぬ ほ と の わ つ ら は し 228 さこそいとこゝろくるしうはあるへけれおのつ 229 か ら せ き も り つ よ く と も ゝ の ゝ こ ゝ ろ し り そ ◦ め い 230 と を し き お も ひ な く て わ か こ ゝ ろ も お も ひ い り な 」第十一紙 231 はしけくともさはらしかしとおほしよるもいと 232 け し か ら ぬ 御 こ ゝ ろ な り い よ こ ゝ ろ や す か ら す 233 おもひわたらんもくるしからんなのめにおもひ 234 す く さ ん こ と の と さ ま か う さ ま に か た き そ よ つ か 235 すむつかしき御かたらひなりけるうちのおほ 236 い と の は こ の い ま の 御 む す め の 事 を う ち の 人 も ゆ る 237 さすかるめいひよにもそしりいふときゝ給に 238 少 将 こ と の つ い て に お ほ き お と ゝ の さ る 事 や と ゝ ひ 239 給し事かたりきこえけれはわらひ給てさか 240 しかしこにこそはとしころをとにもきこえ 224 225 226 227 228 229 230 231 232 233 234 235 236 237 238 239 240
― 141 ― 241 ぬ ◦ お さ 人 も と き 給 は ぬ お と ゝ の あ や し う こ の 242 わたりの事はみゝとゝめてそおとしめ給や 243 これにこそおほえあるこゝちしけるとの給少 244 将 か の に し の た い に す ゑ 給 へ る は い と こ と も な く け は 245 ひ み ゆ る あ た り に な ん は へ る 兵 部 卿 宮 な と い た う こ ゝ 246 ろ と ゝ め て の 給 と か お ほ ろ け に は あ ら し と な ん 人 247 を し は か り は へ め る と 申 給 へ は い て そ れ は か の お と ゝ 248 の 御 む す め と お も ふ は か り の お ほ え の い と い み し き そ 249 人のこゝろみなさのみこそあるよなめれかなら 250 すさしもすくれ給はし人 しき人ならは 251 としころにきこえなましあたらおとゝのちりも 」第十二紙 252 つかすこのよにすきたまへる御身のおほえあ 253 りさまをおもたゝしきはらにむすめかしつ 254 きてけにきすなからんとおもひやりめてたきか 255 ものし給はぬはおほかたこのすくなくてこゝろ 256 もとなきなめりかしおとりはらなめれとあかし 257 の お も と の う み い て た る は し も さ る よ に な き す く や ま か つ の こ む か へ い て ゝ も の め か し た つ れ 241 242 243 244 245 246 247 248 249 250 251 252 253 254 255 256 257
― 142 ― 258 せある人にてあるやうあらんとおほゆかしその 259 いまひめきみはしもようせすはしちの御こにも 260 あらしやさすかにいとけしきあるところつい 261 給 へ る 人 に て も て な い た ま ふ ら ん と い ひ お と し 262 め給さていかゝさためらるなるなとの給てみこ 263 そまつはえ給はんもとよりとりわきて御なか 264 もよし人からも なをひめきみの かうさくな 265 うすものゝひとへをきたまひてふし給へるさま 266 あつかはしうはみえすいとらうたけにさゝやか 267 なりすきたるはたつきもいとうつくしおか 268 しけなるてつきしてあふきもたまへり 269 けるもさなからかひなをまくらにてうちやら 270 れたる御くしのほといとなかくこちたく 271 な と は あ ら ね と い と お か し き す そ つ き な り 人 272 も物のうしろにふしつゝうちやすみたるほと 」第十三紙 273 なれはふとしもおとろい給はすあふきをなら 274 し給へれはなにこゝろもなくみあけ給へるま 258 259 260 261 262 263 264 265 266 267 268 269 270 271 272 273 274
― 143 ― 275 みもらうありけたかきさまはしらすいとらう 276 るあはひならんかしとの給てもなをひめきみの 277 御ことあかすくちをしくかやうにこゝろにくゝ 278 もてなしていかにしなさんとやすからすいふ 279 かしからせまし物をとねたけれはくらゐさはか 280 り と み さ ら ん か き り は な を ゆ る し か た く お ほ さ る ゝ 281 な り け り お と ゝ も ね ん こ ろ に く ち い れ か へ さ ひ 給 282 は ゝ こ そ は ま く る や う に て な ひ か め と お ほ す を お と 283 こかたはたさらにいられ給はすこゝろやましく 284 な ん と か く お ほ し め く ら す ま ゝ に か る ら か に ゆ く 285 りもなくはひわたり給へり少将も御ともにまい 286 りたまふひめきみひるねし給へるほとなりけり 287 たけにてつらつきのあかめるもおやの御めに 288 は い と う つ く し う み ゆ う た ゝ ね は い さ め き こ ゆ る 289 も の を な ゝ と か い と 物 は か な き さ ま に て は お ほ と の 290 こ も り た り け る 人 も ち か う さ ふ ら は て い と あ や 291 しやをんなはつねにみをこゝろつかひしてなん 292 あるへきこゝろやすくうちすてたるさまにもて 275 276 277 278 279 280 281 282 283 284 285 286 287 288 289 290 291 292
― 144 ― 293 なしたるはしなゝきわさなりさりとていとさか 」第十四紙 294 しうみかためてふとうそんのたらによみいんつ 295 くりてゐたらんもにくしうつゝの人にもあま 296 り け と を く も の へ た て か ま し き な と け た か き や う 297 とても人にくゝ心うつくしうはあらぬわさなり 298 おほきおとゝのきさきかねのひめきみならはし 299 たまふなるをしへはよろつの事にかよはしな 300 たらめてこと しきゆへもつけしたと し 301 き事もあらしとぬるらかにこそをきて給 302 ぬ な れ け に さ も あ る こ と な れ と 人 と し て こ ゝ ろ に も 303 す る わ さ に も た て ゝ な ひ く か た は か た と あ り け る 304 ことなりけれはおひいて給さまありなんかしか 305 のきみの人となりおほやけみやつかへにいたし 306 たて給はんよのけしきこそいとゆかしけれ 307 な と の 給 て お も ふ や う に て み た て ま つ ら ん と 人 し 308 れすおもひしすちはかたくなりにたれといかて 309 人 わ ら は れ な ら す し な し た て ま つ ら ん と な ん 人 の 293 294 295 296 297 298 299 300 301 302 303 304 305 306 307 308 309
― 145 ― 310 う へ の さ ま な る を み き く こ と に お も ひ み た れ 311 は へ る こ ゝ ろ み 事 に ね ん こ ろ か ら ん 人 の ね き こ と 312 に し は し な ゝ ひ き 給 そ お も ふ さ ま は へ り な と い と 313 らうたしなとおもひつゝきこえ給むかしは 314 なに事をもふかうおもひしらて中 さし 」第十五紙 315 あたりていとをしかりしことのさはきにもおも 316 なくてみえたてまつりける事よといまそおもひ 317 いつるもむねふ か たかりていみしうはつかしき 318 大 宮 よ り も つ ね に お ほ つ か な き こ と を う ら み き こ 319 え給へとかくの給につゝましうてえわたりみえ 320 たてまつり給はすおとゝこのきたのたいのいま 321 き み を い か に せ ん さ か し ら に か く む か へ も て き て 322 人 か う そ し る と て か へ し を か ん も い と か る し 323 くものくるをしきやうなりかくてこめをき 324 たれはまことにかしつきこゝろあるかたに人の 325 いひなすなるもねたし女御の御かたなとにまし 326 らはせてさるをこのものにしないたらん人の 310 311 312 313 314 315 316 317 318 319 320 321 322 323 324 325 326
― 146 ― 327 い と か た は な り と い ひ お と す な る か た ち は た い と 328 さいふはかりやはあるなとおほして女御のきみ 329 にこの人まいらせんみくるしからん事はお 330 いしらへる女房なとしてつゝますいひをし 331 へさせ給て御らんせよわかき人 のことく 332 さにはなわらはせ給そうたてあはつけきやうな 333 り と わ ら ひ つ ゝ き こ え 給 な と か い と こ と の ほ か に 334 は は へ ら ん 中 将 な と の い と に け な く お も ひ は へ り 335 け ん か ね こ と に た ら す と い ふ は か り に こ そ は へ ら 」第十六紙 336 めかくのたまひさはくをはしたなくおほさるゝ 337 にかたへはかゝやかしきにやといとはつかしけ 338 にきこえ給この御さまはこまかにおかしけに 339 はなくていとあてにすみたるものゝなつかし 340 きさまそひておもしろきむめの花のひらけ 341 さしたるあさほらけおほえてのこりおほ 342 かりけにほゝゑみ給へるそ人よりことなり 343 けるとみたてまつり給中将のさはいへと 327 328 329 330 331 332 333 334 335 336 337 338 339 340 341 342 343
― 147 ― 344 こゝろわかきたとりのすくなさなりなと申 345 給もいとをしけなる人のおほえかなやかて 346 この御かたのたよりにたゝすみおはしてのそ 347 き給へはすたれたかやかにをしはりて五せ 348 ちのきみとてされたるわかき人のあると 349 すくろくうち給いとせちにをしもみて 350 せうさい とこふこゑそいとしたときや 351 あなうたてとおほして御ともの人のさきを 352 ふをてかきせいし給てつまとのほそめ 353 なるよりさうしのあきとをりたるをの 354 そき給この人もはたけしきはあるへし 355 御かへしやとゝうをひねりつゝとみにもう 356 ちいてすなかにおもひはありやすらんいとあ 」第十七紙 357 さえたるさまともしたりかたちはひらゝ 358 かにさすかにあい行つきたるかたにてかみ 359 うるわしうつみかろけなるをひたひのいと 360 ちかきとこゑのあらさとにそゝこなはれた 344 345 346 347 348 349 350 351 352 353 354 355 356 357 358 359 360
― 148 ― 361 るなめるとりたてゝよしとはなけれとこと人 362 とあらかふへくもあらすかゝみにおもひあはせ 363 られ給にすくせこゝろうしかくてもの 364 し給はつきなくうゐ しうやあることし 365 けくのみありてえとふらひ申さすやとのた 366 ま へ は れ い の い と し た と う て か く て 候 へ は な に の 367 物おもひかはへらんとしころおほつかなうゆか 368 しうおもひきこえさせし御かほをつ 369 ねにもえみたてまつらぬこそてうたぬこゝ 370 ちしはへれときこえ給けに身にちかう 371 つかふ人もおさ なきにさやうにてもみな 372 れきこえんとかねてはおもひしかとえある 373 ましきわさなりけりなへてのつかふまつ 374 り人こそとあるもかゝるもをのつからたち 375 ましらひて人のみゝをもめをもかなら 376 すしもとゝめぬものなれはこゝろやすかへか 377 めれそれたにその人のむすめかの人のこ 」第十八紙 361 362 363 364 365 366 367 368 369 370 371 372 373 374 375 376 377
― 149 ― 378 なとしらるゝきはになれはおやはらからのおも 379 てふせなるたくひおほかへかめりましてとの 380 給さしつる御けしきのはつかしきもみも 381 しらすなにかそはこと しう思給へてまし 382 らひ侍はこそところせからめおほみおほつ 383 ほとりにもつかうまつり侍なんときこえ給へは 384 えねんし給はてうちわらひ給てにつ 385 かはしからぬやくなゝりかうたまさかに 386 あ へ る お や に け う せ ん の こ ゝ ろ あ ら は こ の 物 の た 387 まふこゑをすこしのとめてきかせ給へさらは 388 いのちものひなんかしとおこめたまふおとゝ 389 にてほゝゑみてのたまふしたの本上にこそは 390 へらめおさなくはへりし時たに侍りはゝ 391 のつねにくるしかりをしへ侍りしをめう 392 ほうしのへたうたいとこのうふやにはへりける 393 あえ物となんなけきはへりたうひしけに 394 い か て こ の し た ◦ の と さ や め は へ ら ん と お も ひ さ わ 395 きたるもいとけうの心ふかうあはれなりと 378 379 380 381 382 383 384 385 386 387 388 389 390 391 392 393 394 395
― 150 ― 396 み給そのけちかくいりたちけんたいとこ 397 こそあちきなかりけれたゝそのつみのむく 398 ひなゝりをしことゝもりとそ大そうそしれ 」第十九紙 399 るつみにもかそへためるかしとの給て 400 こなからはつかしけにおはするさまにみえ 401 たてまつらんこそはつかしけれいかにかく 402 あやしきけはひをきゝさためすむかへよせ 403 けんとおほし人 もあまたみつきいひちら 404 さむことゝおもひかへしたまふものから女御 405 のさとに物し給ころ時 わたりまいりて 406 人のありさまなとをもみなれたまへかしこと 407 なる事なき人もおのつからひとにましらひ 408 さるかたになりぬれはさてもありぬかしさる 409 心してみえたてまつり給なんやとの給へは 410 いとうれしきことにこそはへなれいかにして 411 も た ゝ 御 か た に か す ま へ ら れ た て ま つ ら ん 412 ことをのみなんねてもさめてもとしころなに 396 397 398 399 400 401 402 403 404 405 406 407 408 409 410 411 412
― 151 ― 413 ことをおもへ給へる物にもあらす御ゆるし 414 たにはへらはみつをくみいたゝきてもつかう 415 まつりなんいとよけにいますこしとくさえつ 416 れはいふかひなしとおほしていとしかおりた 417 ちてたきゝひろひ給はすともまいりあひ 418 給なんたゝかのあえものしけんのりのし 419 たにとほくはとおこ事にのたまひなすをもし 」第二十紙 420 らすおなしき大臣ときこゆるなかにもいときよ 421 けにもの しうはなやかなるさましてお 422 ほろけの人みえにくきさまなる御けしきをも 423 み し ら す さ て い つ か 女 御 殿 へ は ま い り は へ る へ か 424 らんときこゆれはよろしきひなとやいふへから 425 む よ し こ と し く は な に か は さ も 思 は れ は け ふ 426 にてもとの給すてゝわたり給ぬよき四位五位た 427 ちつゝきみしろき給もいかめしき御いき 428 ほひなるをみをくりきこえていてあはれめて 429 たきわか御おやゝかゝりけるたねなからあや 413 414 415 416 417 418 419 420 421 422 423 424 425 426 427 428 429
― 152 ― 430 しきこいへにおひいてけることゝの給五せち 431 あまりこと しうはつかしけにそおはすめ 432 るよろしきほとなるおやのおもひかしつかんに 433 そたつねいてられ給はましといふもわりなし 434 れいのきみの人のいふ事いひやふり給らん 435 いてあなめさましいまはひとつくちにないは 436 れそあるやうあるへきみにこそあめれとて 437 はらたち給かほつきけちかうあ ひ い きやう 438 つきうちとけそほれたるはさるかたにてもお 439 かしうつみゆるされたりたゝいとあやしきし 440 も人のひなひたる物のなかにておひ て い たまへ 」第二十一紙 441 れはものいふさまもしらすことなるゆへなきこ 442 とのはをもこゑのとやかにをしゝつめていひ 443 いたしたるはうちきくみゝにもおもりかにお 444 ほ え お か し か ら ぬ う た か た り を す る も こ は つ か ひ 445 つき しくてのこり思はせもとすゑおしみ 446 たるさまにうちすしたるはふかきすち思ひえ 430 431 432 433 434 435 436 437 438 439 440 441 442 443 444 445 446
― 153 ― 447 ぬ ほ と の う ち き ゝ に は お か し か な り と み ゝ も と ま る 448 かしこゝろふかくよしあることをいひゐたり 449 ともよろしきこゝろあらんともきこえすあはつ 450 けきこわさまにの給いつることはたこち し 451 うことはたみて我まゝにほこりならひたるめ 452 の と の ふ と こ ろ に て い と い ふ か ひ な き も て な し に 453 ならひたるさまもいとあやしきにやつるゝなり 454 け り い と い ふ か ひ な く は あ ら す み そ も し に も た ら 455 すもとすゑあはぬはしたことうちつゝけなとし 456 給 さ て 女 御 殿 に ま い れ と の た ま う つ る を し ふ 457 なるさまならはものしうもこそおほせよさりま 458 う て ん お と ゝ の き み 天 下 に お ほ す と も こ の 御 か た 459 のすけなうもてなし給はんにはとのゝうちには 460 たてりなんやとの給御おほえのほといとかろか 461 なりやまつ御ふみたてまつれ給あしかき 」第二十二紙 462 のまちかきほとには候なからいまゝてかけふむ 463 はかりのしるしもはへらねはなこそのせきを 447 448 449 450 451 452 453 454 455 456 457 458 459 460 461 462 463
― 154 ― 464 やすゑさせ給つらんとなんしらねともむさし 465 の と い へ は か し こ け れ と あ な か し こ や と て ん 466 かちにてうらにはまことやくれにもまいりこむ 467 と 思 給 へ た つ は い と ふ に は ゆ る に や は へ ら ん い て や 468 あやしきはみなせかはにをとて又はしにはさて 469 かくそ 470 く さ わ か み ひ た ち の う み の い か ゝ さ き い か て 471 あひみんたこのうらなみおほかはみつのとあ 472 を き し き し ひ と か さ ね に い と さ う か ち に い か れ る 473 てのそのすちともみえすたゝよひたるかきさ 474 ましもしなかにわりなうよしはみたりくた 475 りのほとはしさまにすちかひてたうれぬへ 476 くみゆるをうちゑみつゝみてさすかにいとほ 477 そくちひさくまきなしてむすひてなて 478 しこのはなにつけてひすましわらはしも 479 いとよなれてきよけなるいまゝいりなりけり女 480 御殿の御方のたいはんところによりてこれ 481 まいらせさせ給へといふしもつかへみしりて 464 465 466 467 468 469 470 471 472 473 474 475 476 477 478 479 480 481
― 155 ― 482 御ふみとりいるきたのたいにさふらふわらはな 」第二十三紙 483 りけりとて大夫の君といふ人もてまいりてひ 484 きときて御らんせさす女御ほゝゑみてうちを 485 き 給 へ る を 中 納 言 の き み と い ふ い と ち か う さ ふ ら 486 ひてそは みけりいまめかしき御ふみのけ 487 しきにもはへるかなとゆかしけにおもひたれは 488 えみしらねはにやあらんもとすゑなくもみゆ 489 るかなとてたまへりかへり事かくゆへ しく 490 か ゝ す は お も ひ お と さ れ な ん や か て か い た ま へ と ゆ つ 491 りたまふもていてゝこそあらねわかき人 は 492 ものおかしうてみなうちわらひぬ御かへり 493 こへはおかしき事のすちにのみまつはれて 494 はへめれはきこえにくゝこそせしかきめい 495 てはたいとをしからんと□□ゝ御ふみとおもは 496 せてかくちかきしるし□□おほつかなさをう 497 らめしく 498 ひたちなるするかのうみのすまのうら 482 483 484 485 486 487 488 489 490 491 492 493 494 495 496 497 498
― 156 ― 499 になみたちいてよはこさきのまつとかきて 500 よみきこゆれはあなうたてまことにみつからの 501 や う に も こ そ い ひ な せ と か た は ら い た け に お ほ い 502 たれはそれはきかん人わきまへはへりなんとて 503 をしつゝみていたしつ御かたみておかしの 」第二十四紙 504 御くちつきやまつとのたまふめるをとて 505 いとあまへたるたきものゝかを返 たきしめ 506 ゐ 給 へ り へ に と い ふ も の い と あ か ら か に か い つ け て 507 かみけつりつくろひたまへるさまさるかたに 508 てにきわゝしうあいきやうつきたり御たい 509 めんのほとさしすくいたることゝもありけ 510 むかし 499 500 501 502 503 504 505 506 507 508 509 510
― 157 ― 【書写興書】 右二条為家卿真蹟源氏常夏巻一帖 天 弘 化三年丙午六月晦日模之畢 第一本 (花押) 」第二十五紙 【裏書】 校異源氏物語によるに冨田仙助氏蔵伝為家本とも 相違ありて同書とは同一本にあらざることしらる 【裏紙表】
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調査報告