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インジゴの存在状態の違いによる色彩の違い

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生活環境学研究 No.4 2016 卒 業 論 文 要 旨

インジゴの存在状態の違いによる色彩の違い

山本 郁美

[指導教員:武庫川女子大学教授 牛田 智]

キーワード:染料,藍,色彩変化,反射スペクトル,吸収スペクトル

1.研究の背景・目的 青色は英語で「blue」としか表現がないのに対して,日本 人は藍色や浅葱色,紺色,納戸色などの,青色が生み出す多 くの色相に伝統的な名称を付け分類されるほど,現在まで大 切に伝えられている。日本で親しみのある青色染めは,天然 染料で古くから「藍」が用いられ,藍染めは現在でも面倒で 難しいとされている建て染めの染色方法で,何百年もの昔か らこの緻密で複雑な技術で青色の濃淡を表現してきた1)。日 本で長く愛されている藍のさらなる魅力を知りたいという思 いからこの研究をするに至った。 藍染めではジーンズように,染色後に色の変化が楽しめる 染色物である。また染色過程でも色素の紺色以外の色味が確 認できることがある。 藍の色素であるインジゴは,水に溶けないため還元して水 溶性にしてから染色をする建て染めの方法を用いる。還元後 に溶液の水面で酸化が進むと,水面にはインジゴが膜状に生 成してくるが,その水面は状況によって,青色ではなく紫色 に見えることがある。それは目視や機器によって色の違いが はっきりと区別できるのか,また,還元後酸化によって水面 に生じたインジゴが青色でなく紫色であることを不思議に思 い,この水面にある光沢のある紫色の膜はどのような時に見 られるものか,インジゴ特有のものであるのか検討した。 2.実験方法 2-1 試薬 合成インジゴは和光純薬工業の特級試薬を,ジブロモイン ジゴ(商品名:ツヤインジゴ)は三井東圧染料の,テトラブ ロモインジゴ(慣用名:チバブルー2B)は東京化成工業の, スレンバイオレット BRL,スレングリーン FFB,スレンレ ッド F3B は田中直染料店のものを用いた。還元のために試 薬特級水酸化ナトリウムと化学用ハイドロサルファイトを使 用した。 2-2 インジゴの還元方法 インジゴは,建て染め染料であり,水に溶けない色素のた め,還元して水溶性にする必要がある。次のような方法で還 元を行った。 1. まず 150ml の水に合成インジゴ 0.1g を加える。温めな がら撹拌させるために,高粘度スターラーの上にウォ ーターバスをセットした状態でビーカーをウォーター バスに入れてビーカーの中にはマグネットス回転子を 入れた。 2. そのビーカーに水酸化ナトリウムを約 0.5g 加え,50℃ 程度で温めながら撹拌を続けた。 3. さらにハイドロサルファイト 1g を加え,撹拌をしても 還元が進まない場合は約0.25g ずつ加えていった。 当初の溶液はインジゴの色素の紺色をしているが,還元剤 によって黄色に変わり,インジゴは還元体として溶解する。 溶液が黄色になっていないと溶液の水面に膜は表れず,少し でも還元できていないインジゴが残っていると膜はできない。 また還元の際にハイドロサルファイトを多く入れてしまうと, 酸化に時間がかかってしまうため,注意して少量ずつ加えて いった。 2-3 膜の採取方法 1. まず三分の一サイズにカットしたスライドガラスをシ ャーレの中に置き,そこへ還元させた染料の溶液を流 し込み,酸化が進むまでしばらく静かに放置させた。 2. シャーレの水面に紫色で光沢のある膜が見られてから, 水分が多すぎると膜が不安定になってしまうため注射 器でゆっくりと余分な液を吸い取った。 3. ピンセットを用いて少し斜めに傾けながらスライドガ ラスを持ちあげ,膜を採取した。 2-4 膜の熱処理方法 次のような加熱処理を行った。 1. 90℃設定した乾燥機の中に膜を採取したスライドガラス を入れ10 分間放置した。 2. 取り出した後,目視で変化を確認後,反射率の測定を行 った。 3. この後も 120℃・160℃・200℃と温度を上げ同じ作業 を繰り返した。 4. 200℃で 10 分間加熱後,大きく変化がない場合は加熱 時間を長くした。 3.結果および考察 3-1 インジゴの膜の色彩に関しての観察と測定 インジゴを還元すると溶液は黄色であるが,その水面に酸 化によって現れるインジゴの膜は光沢のある紫色に見える。 図1 のように,ガラス上に採取した膜を反射光で見ると水面 にある膜と同じように,光沢のある紫色に見えるが,光にあ てるように透過光で見ると青色に見えた。また,分光光度計 で反射スペクトルと吸収スペクトルを測定すると(図 2), 最大吸収波長はそれぞれ 520nm,647nm と,反射光では赤 みであること,透過光では青みであることを示した。このこ とから膜は,機器でも見方によって色味に違いが出ることが 分かった。 図 1 インジゴの膜を採取したシャーレを反射光(左)および透過光 (右)で撮影したもの 図 2 インジゴの膜の反射スペクトル(上)・ 吸収スペクトル(下) 3-2 インジゴ以外の膜の色彩に関しての観察と測定 3-2-1 ジブロモインジゴ・テトラブロモインジゴ インジゴと同様に,ジブロモインジゴもテトラブロモイン ジゴも還元後,酸化すると溶液の水面に膜が現れ,インジゴ と同じ方法で膜の採取ができた。染料の粉末の色はともにイ ンジゴと同じ紺色であったが,採取した膜の色を観察すると 反射光では,ジブロモインジゴ・テトラブロモインジゴ共に 紺色に近い濃い青色をしていた。次に膜を透過光で見ると, ジブロモインジゴは,反射光で見た時と同じような青色をし ていたが,テトラブロモインジゴはエメラルドグリーンのよ うな緑色に近い青色であった。 反射・吸収スペクトルの最大吸収波長で比べると,いずれ も反射光では 500nm 台なのに対して透過光では 600nm 台 に変わることから,反射光では赤み,透過光では青みであり, 若干ではあるが,インジゴと同様に機器でも測定の仕方によ って膜の色味が異なることもわかった。 3-2-2 スレン染料 スレン染料の膜は,インジゴほどはっきりと光沢のあるも のでなく,水面に油が浮いているような,薄い膜であった。 スレン染料の採取した膜は,目視では反射光・透過光で見 てもインジゴの膜のように色味に違いはなく,表面には光沢 も見られない。目視で膜の色は染色した場合と同じ色に見え た。染色布と還元した溶液から採取した膜を,反射スペクト ルにおける最大吸収波長で比較すると,目視での観察でも, 機器からも大きな差はないことがわかった。 スレン染料では還元後に酸化すると膜は現れるが,それは 色素と同じ色味のものであり,インジゴのように色素と別の 色が確認できるというものではなかった。 3-3 熱処理 インジゴの溶液から採取した紫色の膜は,何らかの条件で 染料本来の色の紺色に変わることがないか調べるために,イ ンジゴ・ジブロモインジゴ・テトラブロモインジゴの膜に熱 を加えることで膜の色味の変化を観察した。 インジゴとジブロモインジゴの膜の色は変化がなかったの に対し,テトラブロモインジゴの膜は加熱前,紺色のような 濃い青色をしていたが,200℃の高温加熱によってエメラル ドグリーンのような緑色がかった青色に変化し,反射スペク トルの最大吸収波長も 572nm から 610nm に変化した。目 視だけでなく,機器でも色の変化があったことがわかる。膜 の色味の変化は,200℃での加熱後に見られ,加熱によって 変化した膜の色はそのまま常温で1 週間程度放置していたが, 加熱前の色に戻ることはなかった。 4.結論 インジゴを還元させ,その後酸化が進むと溶液の水面には 色素とは色が異なる光沢のある紫色の膜が現れる。今回はこ の膜を目視での観察だけでなく,分光光度計で測定ができる ように水面にある膜を採取した。採取をした膜は,反射光で は紫色に見え,溶液の水面に現れたように光沢もあった。し かし透過光で見ると,膜は青色に見え,同じ膜でも見方によ って色味が異なった。分光光度計で反射率・吸収スペクトル の最大吸収波長を測定すると,機器でも色味の違いが示され, 反射光では赤みであるのに対し,透過光では青みであること がわかった。 ジブロモインジゴとテトラブロモインジゴもインジゴと同 様に採取した膜には赤みがあり,反射光と透過光で膜の色味 が変化し,分光光度計でも同じ結果が得られた。スレン染料 からも還元後に酸化によって膜の採取ができたが,染料の色 素と膜の色はほとんど同じ色であり,膜はインジゴと異なり, 見方によって色味に変化はなかった。 またインジゴの光沢のある紫色の膜は,200℃で長時間加 熱をしても色素の紺色に戻ることはなかった。 参考文献 1)木村光雄: 藍染の歴史と科学 はしがき ⅲ~ⅳ, 1992

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インジゴの存在状態の違いによる色彩の違い

山本 郁美

[指導教員:武庫川女子大学教授 牛田 智]

キーワード:染料,藍,色彩変化,反射スペクトル,吸収スペクトル

1.研究の背景・目的 青色は英語で「blue」としか表現がないのに対して,日本 人は藍色や浅葱色,紺色,納戸色などの,青色が生み出す多 くの色相に伝統的な名称を付け分類されるほど,現在まで大 切に伝えられている。日本で親しみのある青色染めは,天然 染料で古くから「藍」が用いられ,藍染めは現在でも面倒で 難しいとされている建て染めの染色方法で,何百年もの昔か らこの緻密で複雑な技術で青色の濃淡を表現してきた1)。日 本で長く愛されている藍のさらなる魅力を知りたいという思 いからこの研究をするに至った。 藍染めではジーンズように,染色後に色の変化が楽しめる 染色物である。また染色過程でも色素の紺色以外の色味が確 認できることがある。 藍の色素であるインジゴは,水に溶けないため還元して水 溶性にしてから染色をする建て染めの方法を用いる。還元後 に溶液の水面で酸化が進むと,水面にはインジゴが膜状に生 成してくるが,その水面は状況によって,青色ではなく紫色 に見えることがある。それは目視や機器によって色の違いが はっきりと区別できるのか,また,還元後酸化によって水面 に生じたインジゴが青色でなく紫色であることを不思議に思 い,この水面にある光沢のある紫色の膜はどのような時に見 られるものか,インジゴ特有のものであるのか検討した。 2.実験方法 2-1 試薬 合成インジゴは和光純薬工業の特級試薬を,ジブロモイン ジゴ(商品名:ツヤインジゴ)は三井東圧染料の,テトラブ ロモインジゴ(慣用名:チバブルー2B)は東京化成工業の, スレンバイオレット BRL,スレングリーン FFB,スレンレ ッド F3B は田中直染料店のものを用いた。還元のために試 薬特級水酸化ナトリウムと化学用ハイドロサルファイトを使 用した。 2-2 インジゴの還元方法 インジゴは,建て染め染料であり,水に溶けない色素のた め,還元して水溶性にする必要がある。次のような方法で還 元を行った。 1. まず 150ml の水に合成インジゴ 0.1g を加える。温めな がら撹拌させるために,高粘度スターラーの上にウォ ーターバスをセットした状態でビーカーをウォーター バスに入れてビーカーの中にはマグネットス回転子を 入れた。 2. そのビーカーに水酸化ナトリウムを約 0.5g 加え,50℃ 程度で温めながら撹拌を続けた。 3. さらにハイドロサルファイト 1g を加え,撹拌をしても 還元が進まない場合は約0.25g ずつ加えていった。 当初の溶液はインジゴの色素の紺色をしているが,還元剤 によって黄色に変わり,インジゴは還元体として溶解する。 溶液が黄色になっていないと溶液の水面に膜は表れず,少し でも還元できていないインジゴが残っていると膜はできない。 また還元の際にハイドロサルファイトを多く入れてしまうと, 酸化に時間がかかってしまうため,注意して少量ずつ加えて いった。 2-3 膜の採取方法 1. まず三分の一サイズにカットしたスライドガラスをシ ャーレの中に置き,そこへ還元させた染料の溶液を流 し込み,酸化が進むまでしばらく静かに放置させた。 2. シャーレの水面に紫色で光沢のある膜が見られてから, 水分が多すぎると膜が不安定になってしまうため注射 器でゆっくりと余分な液を吸い取った。 3. ピンセットを用いて少し斜めに傾けながらスライドガ ラスを持ちあげ,膜を採取した。 2-4 膜の熱処理方法 次のような加熱処理を行った。 1. 90℃設定した乾燥機の中に膜を採取したスライドガラス を入れ10 分間放置した。 2. 取り出した後,目視で変化を確認後,反射率の測定を行 った。 3. この後も 120℃・160℃・200℃と温度を上げ同じ作業 を繰り返した。 4. 200℃で 10 分間加熱後,大きく変化がない場合は加熱 時間を長くした。 3.結果および考察 3-1 インジゴの膜の色彩に関しての観察と測定 インジゴを還元すると溶液は黄色であるが,その水面に酸 化によって現れるインジゴの膜は光沢のある紫色に見える。 図1 のように,ガラス上に採取した膜を反射光で見ると水面 にある膜と同じように,光沢のある紫色に見えるが,光にあ てるように透過光で見ると青色に見えた。また,分光光度計 で反射スペクトルと吸収スペクトルを測定すると(図 2), 最大吸収波長はそれぞれ 520nm,647nm と,反射光では赤 みであること,透過光では青みであることを示した。このこ とから膜は,機器でも見方によって色味に違いが出ることが 分かった。 図 1 インジゴの膜を採取したシャーレを反射光(左)および透過光 (右)で撮影したもの 図 2 インジゴの膜の反射スペクトル(上)・ 吸収スペクトル(下) 3-2 インジゴ以外の膜の色彩に関しての観察と測定 3-2-1 ジブロモインジゴ・テトラブロモインジゴ インジゴと同様に,ジブロモインジゴもテトラブロモイン ジゴも還元後,酸化すると溶液の水面に膜が現れ,インジゴ と同じ方法で膜の採取ができた。染料の粉末の色はともにイ ンジゴと同じ紺色であったが,採取した膜の色を観察すると 反射光では,ジブロモインジゴ・テトラブロモインジゴ共に 紺色に近い濃い青色をしていた。次に膜を透過光で見ると, ジブロモインジゴは,反射光で見た時と同じような青色をし ていたが,テトラブロモインジゴはエメラルドグリーンのよ うな緑色に近い青色であった。 反射・吸収スペクトルの最大吸収波長で比べると,いずれ も反射光では 500nm 台なのに対して透過光では 600nm 台 に変わることから,反射光では赤み,透過光では青みであり, 若干ではあるが,インジゴと同様に機器でも測定の仕方によ って膜の色味が異なることもわかった。 3-2-2 スレン染料 スレン染料の膜は,インジゴほどはっきりと光沢のあるも のでなく,水面に油が浮いているような,薄い膜であった。 スレン染料の採取した膜は,目視では反射光・透過光で見 てもインジゴの膜のように色味に違いはなく,表面には光沢 も見られない。目視で膜の色は染色した場合と同じ色に見え た。染色布と還元した溶液から採取した膜を,反射スペクト ルにおける最大吸収波長で比較すると,目視での観察でも, 機器からも大きな差はないことがわかった。 スレン染料では還元後に酸化すると膜は現れるが,それは 色素と同じ色味のものであり,インジゴのように色素と別の 色が確認できるというものではなかった。 3-3 熱処理 インジゴの溶液から採取した紫色の膜は,何らかの条件で 染料本来の色の紺色に変わることがないか調べるために,イ ンジゴ・ジブロモインジゴ・テトラブロモインジゴの膜に熱 を加えることで膜の色味の変化を観察した。 インジゴとジブロモインジゴの膜の色は変化がなかったの に対し,テトラブロモインジゴの膜は加熱前,紺色のような 濃い青色をしていたが,200℃の高温加熱によってエメラル ドグリーンのような緑色がかった青色に変化し,反射スペク トルの最大吸収波長も 572nm から 610nm に変化した。目 視だけでなく,機器でも色の変化があったことがわかる。膜 の色味の変化は,200℃での加熱後に見られ,加熱によって 変化した膜の色はそのまま常温で1 週間程度放置していたが, 加熱前の色に戻ることはなかった。 4.結論 インジゴを還元させ,その後酸化が進むと溶液の水面には 色素とは色が異なる光沢のある紫色の膜が現れる。今回はこ の膜を目視での観察だけでなく,分光光度計で測定ができる ように水面にある膜を採取した。採取をした膜は,反射光で は紫色に見え,溶液の水面に現れたように光沢もあった。し かし透過光で見ると,膜は青色に見え,同じ膜でも見方によ って色味が異なった。分光光度計で反射率・吸収スペクトル の最大吸収波長を測定すると,機器でも色味の違いが示され, 反射光では赤みであるのに対し,透過光では青みであること がわかった。 ジブロモインジゴとテトラブロモインジゴもインジゴと同 様に採取した膜には赤みがあり,反射光と透過光で膜の色味 が変化し,分光光度計でも同じ結果が得られた。スレン染料 からも還元後に酸化によって膜の採取ができたが,染料の色 素と膜の色はほとんど同じ色であり,膜はインジゴと異なり, 見方によって色味に変化はなかった。 またインジゴの光沢のある紫色の膜は,200℃で長時間加 熱をしても色素の紺色に戻ることはなかった。 参考文献 1)木村光雄: 藍染の歴史と科学 はしがき ⅲ~ⅳ, 1992

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