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肺癌との鑑別を要した肺葉内肺分画症の1切除例 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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肺癌との鑑別を要した肺葉内肺分画症の1切除例

      都留市立病院呼吸器外科、外科* 深澤敏男 白倉外茂夫        要     旨

 症例は63歳女性.胸部不快感、胸部違和感、左胸背部軽度の疹痛を主訴

に受診した。胸部単純X線検査、胸部CTにて左S6∼S10にかけて不整形

の陰影を認めた.精査にて大動脈造影を行い、横隔膜付近で、大動脈より直 接分岐し、陰影部分に分布する直径約1cmの異常血管を認めた.  手術所見は、下葉の約50%を占める肺分画症で、周囲に広範な炎症性癒着 を伴っていた.大動脈からの輸入血管を2本認め、肺静脈に流出していた.肺葉 内肺分画症、Pryce H型1)と診断した. Key words:肺葉内肺分画症、肺癌との鑑別、肺葉切除術

症例 63歳女性.約6ヶ月前より胸部不快感、胸部違和感があったが、放

置していた.しかし、徐々にこれらの症状が増強し、左胸背部軽度の疹痛も 出現したため当院受診した。入院時現症は、これらの不定愁訴に加えて左背 部に収縮期に増強する連続性雑音を聴取した.既往歴は特記すべきことなく、 家族歴では父親が心不全で死亡している. 検査所見 血液一般、血液ガス、腫瘍マーカーでは異常所見を認めなかった. 心電図では、不完全右脚ブロックを認めるものの、虚血性変化は認めなかっ

た.呼吸機能検査では1秒率は異常ないものの、FVC 1.72Lと、拘束性障

害を認めた. 画像所見 胸部X線写真(図1)では、心陰影の拡大、下行大動脈の屈曲による と思われる右第1弓の突出を認め、側面像にて心陰影の後に7×9cmの辺縁不 明瞭な腫瘤状陰影を認めた。胸部CT写真(図2)では、心陰影の後方、横隔膜上 S6,S10に一致して内部に5×3cmの辺縁不明瞭、不整形な、炎症性と思われる

(2)

平成14年4月1日 所見を持つ陰影を認めた.臨床症状から不安定狭心症の存在も示唆されたことと 左背部の収縮期雑音が聴取されたことから血管性のものの可能性を考え、生検 を行わず、まず血管造影を施行した.血管造影(図3)では、冠状動脈に異常所見 は認められず、胸部大動脈の横隔膜上約3cmのところに径7mmの、心陰影の後 方にある陰影およびその周辺に分布する異常血管を認めた。これらの検査所見 から、肺葉内肺分画症、Pryce H型1)の診断となった. 手術所見(図4)第6肋間から開胸したところ、下葉全体、および肺尖部に強固な 炎症性癒着を認めた.末梢より肺門部へ向かって癒着を剥離していったところ、 S6,9,10を占め、下葉の体積の約50%にも達する分画肺を認めた.周囲の炎症 性変化も高度であった.また、下肺静脈より尾側に下行大動脈より肺靭帯を通り、 分画肺に達する直径約1cmの異常動脈2本を確認した. 下葉全体の炎症性変化が強く、分画肺のみまたは区域切除は不可能と判断し、 2本の異常動脈を結紮切断後、下葉切除術を施行した. 摘出標本摘出した下葉では、写真(図5)のように肺区域S6からS9・10に一致し て分画肺が認められる.健常部分と分画肺が明らかに境界されていることが確認 された。また、分画肺に隣接する健常部分の肺にも、実質の炎症性変化と、胸膜 癒着が見られた。  組織所見(図6)では、分画肺実質の高度なFibrosisのため、正常な肺組織の 構造は見られず、コロイド様内容を含むBronchiectaticなCystの形成が認めら れた。また右の写真では、内膜・中膜の肥厚し、動脈硬化性変化のある輸入動脈 が認められた。

       考    案

 肺葉内肺分画症は、一般に成人に多いと言われている.症状は、血疾、肺炎 様症状などであるが、無症状のことも多い.このため検診などで胸部異常陰影とし て発見されることも多く、肺癌との鑑別診断を要することも多い.本症例は肺葉内 肺分画症の好発部位と言われる左S10発症で、肺分画症の可能性を考慮して検

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画像診断のみでは困難なことも多い2).本症例では太い輸入血管が2本あり、分 画肺内の毛細血管内圧が高くなっていたと推定される.実際組織標本では血管 壁の硬化性変化が見られ、手術中も通常の手術の癒着剥離時に比べ、剥離面の 臓側胸膜側からの出血が多く感じられた.従って、気管支鏡下生検などを行うと、 気道出血が制御できなくなる可能性がある.肺癌の可能性があっても、肺分画症 の可能性が多少なりとも考えられる場合は、血管系の検索を優先させることが安 全と考えられる3).  手術適応に関しては、従来は、無症状の場合経過観察との考えもあったが、肺 炎、喀血などの経過をとることが多く、手術をするべきとの意見が多い2).本症例 では下葉全体の炎症、広範囲の胸膜炎を併発していた.活動性の炎症は沈静化 していたが、不安定狭心症にも類似した胸部不快感があり、術後は消失した.最 近、胸腔鏡下の手術が多数報告されているがos)、本症例でも、炎症の軽度の時 期であれば、胸腔鏡下で区域切除術などが可能であった可能性がある.従づて 当施設においても肺葉内肺分画症に対しては全例手術療法を勧めるべきである と考えている. 参考文献 1)Pryce DM:Lower accessory pulmonary artery With intralobar sequestration of  lung:report of seven cases. J pathol 58:457−467、1946 2)西村元宏、河内秀幸、西山勝彦:成人肺葉外肺分画症の1切除例.日呼外会  誌14:128−132,2000 3)Hattori Y、 Negi K、 Takeda I、 et al:lntrapulmonary sequestration with arterial  supPly from the left i’nternal thoracic artery:Acase report・Ann Thorac  Cardiovasc Surg 6:119−121.、2000 4)Mezzetti M、 Dell’Agnola CA、 Bedoni M、 et al:Video−−assisted thoracoscopic  fesection of pulmonary sequestration in an infant.Ann Thorac Surg 61:1836−一一  1838、1996 5)西村秀紀、青木孝學、巾芳昭、他:胸腔鏡下に摘出した肺葉外肺分画症の1  例.日臨外会誌57:353−356・、1996

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平成14年4月1日

図1 胸部X線写真

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図4 手術所見

図5 摘出標本

参照

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