社会系教科教育学会
『社会
系教科教
育学研究』第21
号 2009
(pp.61-70)
歴史解釈を発展させる歴史学習の構造
−
ドイツ歴史教科書
“ANNO” 1994
年版と2006
年版の比較分析
をもとに−
The Structure of History Study to Develop the Interpretation of History:
The Case of German History Textbook
“A
N
N
O
” in
1994 and 2006
1。
研究の
目的
本稿の
目的は,
1990
年代
と2000
年代の新
旧の歴
史教科書の比較分析
を通
して
,
ドイツの歴史学習
の
変革を捉
え
,近年の歴史学習の原理を解明する
ことである。
ドイツでも歴史学習の変革が叫ばれ
て久
しい
。
しか
しその実現は難
しく
,遅々と
して進まないの
が現状である
。
K.
ベルクマンによると匚
子ども
は
,時代順に沿
った歴史学習の中で,現在の成立
や過去に
おける現在の根拠を認識することが可能
な歴史的概観が伝達され
るべきである」(1)
と考
えられ
てきた
。伝統的な歴史学習は
,①通史的構
成
,②歴
史の概観
,③知識の伝達,の
うえに立っ
て
,④現在の成立
,現在の歴史的起源や根拠など
の
認識
をするもの
だとされて
きた
。これ
らの
うち
,
伝統的なものは
,①②③
であり,通
史的構成で,
歴
史の概観
を知識と
して
,伝達することを中核に
してきた
であり,それ
。それ
に基づいた授業であった
を主に体現
してきたのが,教科書
。
しか
し
,この歴史学習観は1990
年代に批判にさ
らされ
ることになる
。 1990
年代の
B.
V.
ボ
リー
スの
大規模な子
どもへのア
ンケ
ー
ト調査によると,
歴史授業は
,教科書に基づいた教師による教授が
中心であるが
,特に子どもは教科書に基づいた学
習に魅
力を感
じておらず
,結果と
して歴史科離れ
が進んでいるという現状が明らかとなった
。(2)
ド
イツでは伝統的な歴史学習観が子どもの歴史科離
れ
を招いていることが判明
し
,歴史学習
を変革す
る
ことが急務と
それでは,
ドイツでは歴史学習をどのよ
して認識
され
ている。
うに
変
宇都宮
明
子
(広
島
大
学大
学院)
革
しようと
して
いるの
であろうか
。
この課題
には
,
歴
史教科書の変革が適
した事例
を提供するもので
あろう
。それ
も最も伝統的な歴史学習観を持って
いる中等前期課程のギムナ
ジウム
用教科書が最適
であろう
。というのも,ペルクマンの示
した
4つ
の要素
を堅持
し続けてきたのが
,ギムナ
ジウム
用
歴史教科書だからである
。本稿では
,その歴史教
科書
として
,ヴェスターマン社の
“A
NNO”を
取
り上げ
,その旧版
(3
(以下,
)
1994
年版
とする)
と新版
(4
(以下,
)
2006
年版とする)を比較する
ことで,
ドイツの歴史学習の
変革を捉
えたい。
“ANNO”ぱHi s t o r i
a”と並んで
,
保守的な歴史教科書とされており
(5
)
,その旧版
は
ドイツの伝統的な歴史学習を如実に反映
して
い
ると考
えられる
。それが新版になるとどのような
歴史学習
へ
変革されたか比較分析すれば
ドイツの
歴史学習の
変革
を明らかにできると考え
,分析対
象と
して選択
した。
以下では
,まず1994
年版
と2006
年版の内容構成
を分析
し
,
ドイツの歴史学習の変革
を捉
える。さ
らにそう
背景と原理
した変革
を解明す
を生み出
ることをめざす
した近
年の歴史学習の
。
2。1994
年版
と2006
年版
の
内
容構
成
(1)1994
年版
と2006
年版の
全体構
成の
比
較
1994
年版
と2006
年版
の
全体
構
成
を
示
しだ
のが
,
表
1で
ある
。表
1の
網掛
け
部分が1994
年版
か
ら変
化
した
箇所
で
ある
。
表1 . 1994 年 版 と2006 年 版 の 全 体 構 成
1994年 版 2006 年 版 単 元 名 主 要 単 元 特 設 単元爽
歴史 と の辿 遇(8) 歴 史 の 導 入(3) 方 法(I) 先 史 時 代(4) 古 代 の 人 間 の 痕 跡(4) 方 法(3) 探 求(2)犬
神 話 か ら の 歴 史(6)TT
卜 二 二
初期 の高 度文明(3) 古 代 エ ジプ ト の歴 史 か ら (4) 探 求(2) 方 法(1) ギ リ シ ア(6) ギ リ シア 人(9) 方 法(2) 探 求(2) ロ ー マ 帝 国(5) ロ ーマ 帝 国(10) 方 法(4) 探 求(2) ロ ー マ の 継 承(5) 古 代 の遺 産(3) 古 代 と 中世 の 間(2)缶
中 世 の 支 配 と教 会 (6) ヨ ーロ ッパ 中世 の歴 史 か ら(5) 方 法(2) 中 世 の人 間(7) 中世 の生 活 形 式 (10 ) 探 求(2) 方 法(2) 縦 断 面(2) 中世 末期 のヨ ーロ ッ パ(4) 中世 の信 仰 と 支配 (8 ) 縦 断面(2) 探 求(4) 方 法(1) 大 変 革 の時 代(4) 新 し い 世 界 の 出発 (11 ) 探 求(4) 方 法(l) 縦 断 面(1) 宗 教 改 革 と そ の経 過(3) 宗教論 争の中のヨ ー ロ ッ パ(3 ) 近 世 ヨ ーロ ッ パ の 絶対 主 義(5) 絶対 主 義 と 啓 蒙主 義 (フ ) 探 求(2) 方 法(1) 縦 断 面(1) イ ギ リ ス とUSAの 興 隆(5) 市 民 革 命 と そ の 結 果 (11) 縱 断 面(2) 探 求(1) 方 法(2) 変 革の中のヨーロッ パ(3) ヨ ー ロ ッ パ の 復 古 と 革 命 (5) 探 求(1) 復 古 と 革 命(4) 産業 革 命(6) 産 業 化 (7 ) 縦 断 面(1) 近 現 代 ド イ ツ 帝 国(6) ド イ ツ 帝 国 (5 ) 方 法(1) 探 求(3) 帝国主 義 の時 代(6) 帝 国 主 義 と 第 一 次 世 界 大 戦(8) 方 法(!) 探 求(3) 第一 次 世 界 大 戦 と そ の 経 過(6) ワ イ マ ール 共 和 国 (12 ) 方 法(3) 世界 強国 の誕牟(2) 国 家 社 会 主 義 と第 二 次 世 界 大 戦(15) 方 法(1) 探 求(I) 縦 断 面(1) 民 主 主 義 と独 裁 の は ざ ま で(3) 第 二 次 世 界 大 戦 と そ の 経 過(7) 東 西 冷 戦(4) 1945 年 以 後 の ド イ ツ (7) 方 法(1) 変革 の中の世 界(5) 東 西 摩 擦 の 象 徴 の 中 の 世 界(11) 探求(1) ド イ ツ 一分 裂 か ら 再 統 合 まで (12 ) 方 法(3) 縦 断 面(1) 未来 のな い惑星か ? (3) 実 際 の 世 界 政 策 の 問 題 領 域(フ ) 方 法(1) ※( ) 内 の 数 字 は, 小 単 元 数 を 示 す
(1994 年 版, 2006 年 版 目次 よ り , 筆 者 作 成 )
両版 の単元 を概 観す ると単元 名や単 元区分 に若
干 の違 い はある にせよ, どち ら も時代 順 のオーソ
-ド ッ ク ス な 通 史 的 構 成 で, 歴 史 的 な 概 観 が 把 握 で
き る も の と な っ て い る こ と が 共 通 点 と し て 挙 げ ら
れ る。 そ れ に対 し 相 違 点 と し て , ま ず2006 年 版 に
匚神 話 か ら の 歴 史 」 と い う 新 た な 単 元 が 追 加 さ れ
て い る点 が 挙 げ ら れ る。 1994年 版 で は 歴 史 的 知 識
と さ れて い な か っ た 史 実 に基 づ かな い オ シ リ ス や
ヘ ラ クレ ス と い っ た 神 話 も歴 史 学 習 の 内容 と な っ
た こ とを 示 し て い る。 最 も大 き な 相 違 点 は, 2006
年 版 で の 特 設 単 元 の設 定 で あ る。 ほ ぼ 全 単 元 に方
法 ・ 探 求 ・ 縦 断 面 と い う 特 設 単 元 が 挿 入 さ れて い
る。 匚方 法 」 単 元 で は , 文 献 史 料 ・ 絵 画 資 料 ・ 図
表 ・ 歴 史 地 図 な ど 歴 史 学 習 に お い て 活 用 さ れ る 学
習 方 法 を 取 り 上 げ , 子 ど も が そ の 活 用 方 法 を 習 得
し, 歴 史 解 釈 を 形 成 す る た め に, 適 し た 資 史 料 を
選 択 し, ど の よ う に 吟 味 ・ 検 証 す れ ば よ い か を 考
察 す る た め に 組 織 し て い る。 匚探 求 」 単 元 は , そ
の 時 代 を 象 徴 す る歴 史 事 象 を 取 り 上 げ , 資 史 料 を
活 用 し た時 代 内 で の 横 断 的 な 学 習 を め ざ し て い る。
匚縦 断 面 ] 単 元 は , 歴 史 地 図 と 現 在 の 地 図 な ど の
資 史 料 を 活 用 し な が ら の 歴 史 事 象 の過 去 と現 在 の
比 較 に よ る縦 断 的 な 学 習 を め ざ し て い る 。 匚探 求 」
単 元 と 匚縦 断 面 」 単 元 は テ ー マ を 設 定 し , 子 ど も
自身 が 資 史 料 を 基 に テ ー マ に 関 わ る 問 題 を 探 求 す
る。 特 設 単 元 の設 定 は, 歴 史 学 習 が そ れ ま で の 歴
史 的 知 識 の 学 習 内 容 の 重 視 か ら , 主 要 単 元 で の 学
習 内 容 に 加 え , 学 習 方 法 へ の 焦 点 化 へ と変 化 し て
い る こ と を 示 し て い る。
そ れで は , 学 習 方 法 に焦 点 化 し た こ と が 歴 史 学
習 を ど のよ う に変 革 し た ので あ ろ う か。 単 元 匚ロ ー
マ 帝 国 」 を 事 例 に, 両 版 の項 目 構 成 と 学 習 展 開 を
比 較 す る こ と で 検 証 す る。 単 元 匚ロ ー マ 帝 国 」 を
選 択 し た の は, 下 学 年 の単 元 の方 が 学 習 が シ ン プ
ル で あ る た め 歴 史 学 習 の特 質 を 明 ら か に で き , そ
の 下 学 年 の単 元 の 中 で も, 単 元 匚ロ ー マ 帝 国 」 は
多 く の 特 設 単 元 が 組 み込 ま れて い る か ら で あ る 。
(2)1994年版 と2006年版 の学習 展開・
①1994年版 の学習 展開
1994年版 の単 元「ロ ーマ帝 国」 の構成 は以 下 の
ようにな ってい る。
62 −表2. 1994 年 版 の 単 元 厂ロ ー マ 帝 国 」 の全 体 構 成
単 元 「 ロ ー マ帝 国」 小 単 元 名 項 目 領 域 学 習 内 容 テ ペ レ 川 か ら世 界帝 国 ・ ロ ーマ の 起源 ・ ロ ーマは勢力 範囲を拡大 する ・ 初 期 の都 市 と社 会 政 治 経 済 社 会 ロ ーマ 帝 国 の 拡 大 過 程 危 機 か ら再 編 へ ・ 社 会 危 機 ・ 貴 族 支 配 の危 機 政 治 経 済 社 会 ロ ー マ ー世 界 の首 都 ・ 道 路 , 広 場 , 建 造 物 ・ 都 市 の労 働 と住 居 ・ 奴 隷 は 人 間か ? ・ ロ ーマ のあ る 1 日 ・ 自 由 な 時 間 と討 論 社 会 文 化 ロ ーマ の 生 活 状 況 属 州 の生 活 ・ 世 界 は ロ ーマ で あ る ・ 富 の防 備 ・ ロ ーマ 人 のケ ル ン 社 会 ロ ーマ 化 の 影 響 ロ ー マ人 が キ リ スト 教 徒 にな っ た ・ 多 様 な 宗 教 ・ キ リ スト 教 の拡 大 ・ キ リ ス ト 教 の勝 利 文 化 キ リ ス ト 教 の 普 及(1994 年 版 よ り 筆 者 作 成)
1994年版 の単元 匚ロ ーマ帝国」 は, ロ ーマ 帝国
の拡大 過程・ ロ ーマの生活 状況, ロ ーマ化 の影 響
とキ リスト教 の普及 か らな って いる。 まずロ ーマ
帝 国 の拡大過 程を学 習す るこ とで, 歴史 的な 概観
を 掴 ま せ る た め に大 き な 歴 史 の 流 れ に 関 連 づ け,
次 に 社 会 史 の成 果 で あ るロ ー マ の生 活 状 況 , ロ ー
マ 帝 国 が ヨ ー ロ ッパ に 果 た し た 現 代 的 意 義 と し て
の ロ ー マ 化 と キ リ ス ト 教 につ い て学 習 す る 。 全 体
と し て 政 治 ・ 経 済 ・ 社 会 ・ 文 化 と い っ た 全 領 域 を
網 羅 す る 歴 史 的 知 識 を 伝 達 し , 獲 得 で き る よ う に
構 成 し て い る。
各 項 目 は, 本 文 と資 史 料 と 課 題 か らな っ て い る。
本文 は , 歴 史 の 内 容 を 時 代 順 に 示 し, そ れ を 読 め
ば, 歴 史 を 概 観 し 大 き な 流 れ を 把 握 で き る よ う に
な っ て お り , 本 文 は伝 統 的 な 歴 史 教 科 書 が 持 っ て
い る 読 み物 の 部 分 を 継 承 し て い る 。 1994年 版 で は,
本 文 に 続 き , 資 史 料 と 課 題 を 示 し て, 本 文 と 結 び
つ け て , 子 ど も が一 部 考 え る こ と が で き る よ う に
変 革 し て い る と い え る だ ろ う。
2006 年 版 と の 比 較 の 都 合 上 , 小 単 元 匚テ ベ レ 川
か ら 世 界帝 国 へ」 の 匚ロ ー マ は 勢 力 範 囲 を 拡 大 す
る 丁6)を 分 析 項 目 と し て 選 択 す る 。 想 定 さ れ る
学 習 展 開を 示 し だ の が 表 3で あ る。
表 3. 項 目 厂ロ ー マ は 勢 力 範 囲を 拡 大 す る 」 の 学 習 展 開
発 問 資 史 料 獲 得 さ せ る 知 識 ・ 技 能 学 習 の意 図 導 入 Q 1. ロ ー マ の 勢力 範 囲 は ど の よ う に変 化しているか? 教 科 書 歴史 地 図 紀元 前264 年 ま で の 勢力 範 囲 第一 次 ポ エ ニ 戦 争 後 の勢 力 範 囲 紀 元 前218年 ま で の 勢力 範 囲 歴史 地 図 の 読 解 か ら, 全 体 を 貫 く 問 い の 設 定 M Q の 形 成 展 開I 村 か ら都 市 へ M Q. ロ ー マ 帝 国 は ど の よ う に支 配 を 拡 大 し た か ? 教 科書 本 文 紀 元 前753 年 の 小 さ な 村 が 紀 元 前500 年 頃 に は 商 業 都 市 と し て 発 展 し た 教 科 書 本文 の 読 解 か ら, 拡 大 過 程 の 把 握 学 習 内 容 の 習 得 展 開 n イ タ リ ア の 征 服 教 科書 本 文 紀 元 前 4 世 紀 に は 地 中 海 地 域 へ 勢 力 範 囲 を 拡 大 し た エ ト ル リ ア人 の 都 市 ヴ ェ ジ の 征 服 紀 元 前272 年 に は 全 イ タ リ ア の 征 服 征 服過 程 で の 近 隣 国 と の 同 盟 関 係 展 開 Ⅲ カ ル タ ゴ の 征 服 教 科書 本 文 第一 次 ポエ ニ 戦 争 ( 紀 元 前264 ∼241 年 ) 後 の シ チ リ ア ・ サ ル デ ィ ニ ア・ コ ル シ カ の 属 州 化 第 二 次 ポエ ニ 戦 争 ( 紀 元 前218 ∼201 年 ) 中 の カ ン ナ エ の戦 い で の 敗 北, ザ マ の戦 い で の 勝 利 に よ る 世 界 帝 国 へ の発 展 展 開IV 文 献 史 料 の 読 解 課 題1. リ ウ ィ ウ ス はハ ンニ バ ル を どう 表 現しているか? 教 科 書 史 料 リ ウ ィ ウ ス は ハ ンニ バ ル を 優 れ た軍 人 と す る が , 一 方 で 野 蛮 で 信 仰 心 のな い冷 酷 な人 物 と し て 表 現 し て い る 文 献 史 料 の 客 観 性 や 信 憑 性 を 疑 う 批 判 的 読 解 学 習 方 法 の習 得 終 結 課 題2. 世 界 帝 国 へ の 過 程 は ど のよ う な 段 階 にな っ て い る か ? 教 科 書 本 文 こ れ まで の学 習 を ま と め る. 本 項 目 の学 習 の 総 括 学 習 内容 の整 理(1994 年 版S.128∼129 を もと に筆 者 作 成)
本 項 目 に基 づ い た 歴 史 授業 が ど の よ う に行 わ れ
る の か は, 明 確 な 指示 が な い た め 不 明 で あ る。 特
に前 半 は 本 文 記 述 だ け が示 さ れ, 歴 史 の 伝 達 を 行
う こ と を 目的 に 構 成 さ れ て い る。 手 が か り と な る
の は, 教 科 書 に 提 示 さ れ て い る課 題 1 と 課 題 2,
特 に課 題 2 匚世 界帝 国 へ の 過 程 は ど の よ う な 段 階
にな っ て い る か 」 で あ る。 こ の 課 題 が 学 習 の総 括
と な っ て い る こ と か ら , 本 項 目 は, ロ ー マ の世 界
帝 国 へ の拡 大 過 程 の 把 握 が 学 習 の 中 心 に な る と 考
え ら れ る。 そ こ で, 網 掛 け の箇 所 を 筆 者 が 補 足 し ,
学 習 展 開 と し た 。 教 科 書 本 文 に 記 述 さ れ たロ ー マ
の拡 大 過 程 に 関 す る 歴 史 的 知 識 を 習 得 す る。 こ の
歴 史 的 知 識 を 獲 得 し た 後 に , 子 ど も は 教 科 書 に 提
示 さ れ た課 題 に取 り 組 む。 課 題 1 は, ロ ー マ人 の
立 場 に 立 つ リ ウ ィ ウ ス の 文 献 史 料 が, ハ ンニ バ ル
を 酷 評 し て い る こ と を 読 み取 ら せ , 史 料 を 批 判 的
に読 解 す る 学 習 方 法 に 関 わ る能 力 を 育 成 す る。 課
題 1 を 考 察 す る 展 開IV と, そ れ まで の 展 開I ∼ Ⅲ
と の 連 続 性 は み ら れず , 学 習 内 容 と 学 習 方 法 の習
得 は 分 離 し, 個 別 に習 得 す る。 課 題 2 は, こ れ ま
で で 習 得 し た 学 習 内 容 を 整 理 し , 定 着 を 図 る た め
の 総 括 的 な 課 題 で あ る。
1994 年 版 の項 目 構 成 と 学 習 展 開を ま と め, そ の
特 質 を 明 ら か に し よ う。 本 項 目 は, 学 習 展 開 を 明
ら か に す る こ と が 困 難 で あ っ た 。 そ れ は, 本 項 目
の 前 半 は, 本 文 記 述 か ら な り, 勢 力 範 囲 の 変 化 と
そ の拡 大 か ら支 配 の拡 大 , ひ い て は 世 界 帝 国 へ の
拡 大 を 読 解 す る 読 み 物 的 な 構 成 に な って お り , 発
問 も子 ど も の 活 動 も み ら れ ず , 歴 史 的 知 識 を 提 供
し 伝 達 す る も の と な っ て い る か ら で あ る。 後 半 で
は , 文 献 史 料 を 批 判 的 に読 解 す る 学 習 方 法 を 一 部
取 り入 れて 解 釈 学 習 的 要 素 を 補 足 す る展 開IV が 追
加 さ れ て い る。 本 項 目以 外 の他 の 項 目 も 同様 の 歴
史 的 知 識 を 提 供 す る 教 科 書 記 述 と な っ て お り, 歴
史 的 知 識 を 伝 達 す る こ と を 目的 と し , 教 科 書 本 文
を 読 み 物 的 に 読 解 す る こ と で 歴 史 的 知 識 を 習 得 さ
せ る 歴 史 学 習 を 基 本 と し て い る。 1994年 版 は, ま
さ にベ ル クマ ンの い う ①時 代 順 に通 史 的 に構 成 し ,
② 歴 史 的 概 観 を 知 識 と し て , ③ 伝 達 す る ド イ ツ の
伝 統 的 な 歴 史 学 習 を 示 し た歴 史 教 科 書 で あ っ た 。
こ れ で は 子 ど も が 歴 史 に 自主 的 に取 り 組 む こ と が
で き ず, 歴 史 教 科 書 が 魅 力 の な い の は当 然 で あ り,
-歴 史教科 書に基づ く-歴 史学習 が-歴史 科離 れを生 ん
だこと もうなず けよ う。
②2006 年 版 の 学 習 展 開
そ れで は2006 年 版 に な る と, ど の よ う な 歴 史 学
習 に 変 革 し て い る ので あ ろ う か 。 2006年 版 の 単 元
構 成 の 大 枠 は先 述 し た よ う に, 1994 年 版 と 大 き く
変 化 し た わ け で は な い 。 で は 何 か変 わ っ た の で あ
ろ う か 。 先 に示 し た 匚ロ ー マ 帝 国 」 を こ こ で も事
例 に し て, 変 革 を 見 て み よ う。
2006 年 版 の単 元 「 ̄
ロ ー マ 帝 国 」 の 全 体 構 成 は 表
4 の よ う にな る。
表 4. 単 元 「 ロ ー マ 帝 国 」 の 全 体 構 成
小 単元
主 要
ロ ーマは1 日にし てな らず
主 要
誰が共 和政期 のロ ーマを支 配し たか
主 要
村か ら世界帝 国へ
特設
方法 :歴史地 図で探 求 する
主 要
崩壊寸 前
特設
方法 :文献史 料 に親し む
主 要
アウ グ スト ゥ スの時代
特設
方法 :現物資 料 に親し む
主 要
ロ ーマ帝 国の生 活
特設
方法 :イ ンタ ーネ ット に親し む
主要
属州 の生 活
主要
ロ ーマ系 ゲルマ ン人
特設
探求 :古代 の文字
特設
探求 :探 検的考 古学
主要
キリ スト 教 は国家 宗教 であ る
主要
ロ ーマ帝 国 は没 落す る
(2006 年 版 よ り 筆 者 作 成)
注 目し た い の は , 主 要 小 単 元 間 に 挿 入 さ れて い
る 特 設 小 単 元 で あ る 。 匚方 法 」 単 元 は , そ の 前 主
要 小 単 元 の 学 習 と セ ッ ト に な って い る 。(「 ̄
探 求 」
単 元 は 独 立 単 元 で あ る 。) 例 え ば 匚村 か ら 世 界 帝
国 へ 丁7) は , ロ ー マ の 世 界 帝 国 へ の 拡 大 を 扱 う
が , 次 の 特 設 小 単 元 匚方 法: 歴 史 地 図 で 探 求 す
る 丁8) で は , 歴 史 地 図 で こ の ロ ー マ の 拡 大 を 空
間 的 に 把 握 さ せ る 。 匚崩 壊 寸 前 回 )は , グ ラ ッ ク
ス 兄 弟 の 改 革 の 失 敗 や 元 老 院 内 の 権 力 闘 争 な ど 共
和 政 の崩 壊 期 を 扱 う が , 次 の 特 設 小 単 元 匚方 法 :
文 献 史 料 に 親 し む ]
(lO
) で は , 文 献 史 料 か ら こ の
64 −グラ ックス兄弟 の改革 の意図 を読 み取 らせる。
主 要小単 元 に共 通 する のは, 本文 →資史 料→課
題 という 内容 構成で ある。 1994年版 と は異な り,
本文 だ けが独立 して, 歴史 の知識を 提供 し, 伝達
す るこ とをしな い。 本 文を必 ず資史 料や課 題 と結
びつ け,課 題を本 文 に沿って 子 どもが探求 す るも
のとな ってい る。 単元 厂
ロ ーマ帝国」 全体 の学習
展 開を示 すこ とは紙面 の制約 上難し い ので, 2006
年版 の歴史 学習 の特質 をよ り明確 に示 す と思 われ
る主 要小単 元 匚
村 か ら世 界帝 国へ」 と特設小 単元
匚
方 法 :歴 史地 図 で探 求 す る」 のセ ット を取 り上
げ る。 特 設 小 単 元 匚歴 史 地 図 で 探 求 す る 」 は 見 開
き 2頁 で , 先 頁 の上 段 に は 現 在 の ヨ ー ロ ッパ の 地
勢 図 , 下 段 に はロ ー マ 帝 国 の 拡 大 を 示 す 歴 史 地 図
と い う 2つ の 地 図 が , 後 頁 に は 2つ の 地 図 の 概 括
的 説 明 と 課 題 が 示 さ れて い る。 主 要 小 単 元 匚村 か
ら 世 界 帝 国 へ」 と 同 様 に, 課 題 を 本 文 に 沿 っ て 探
求 す る 学 習 過 程 と な って い る 。 ま た, 2006 年 版 に
は ワ ー ク ブ ッ ク が あ り(11
)
, こ の 特 設 小 単 元 の 学
習 を 子 ど も が 自 主 的 に 行 う た め の 活 動 が 設 定 さ れ
て い る。 そ れ も含 め て 本 小 単 元 と 特 設 小 単 元 の 学
習 展 開 を 示 し だ の が 表 5 で あ る。
表 5. 主 要 小 単 元 「 村 か ら 世 界 帝 国 へ」 特 設 小 単 元 「 方 法 : 歴 史 地 図 で 探求 す る 」 の学 習 展 開
発 問 資 史 料 獲 得 さ せ る 知 識 ・ 技 能 学 習 の 意 図 導 入沓
雀
一
兀
¬
鷲
岳
禀
買
ロ ー マ の 支 配 拡 大 過 程 は ど の よ う に な っ て い る か ? mq. r な ぜ ロ ー マ 帝 国 は 支 配 を 拡 大 で き た のか ?」 教 科書 本 文 ・ 近 隣 と の 防 衛 戦 争 か ら, ギ リ シア のピ ュ ロ ス王 と の 戦 争 に 勝 利 し, イ タ リ ア を 統 一 す る。 ・ 三 次 に わ た る ポェ ニ 戦 争 で , カ ル タ ゴ を 滅 ぼし て 西地 中 海 の 覇 権 を 握 る。 ・ 地 中海 東 方 で の 戦 争 の 勝 利 で 地 中 海 世 界 を 形 成 す る。 教 科書 本文 の読 解か ら, 小 単 元 を 貫 く問 い の設 定 M Q の 形 成 展 開 I 課 題 の 探 求 過 程 バa) キ ケ ロ が ロ ー マ の拡 大 と し て 挙 げ た 理 由 を 調 べ な さ い 。 そ の 際 に ロ ー マ の 成 立 につ い て の あな た の知 識 を 活用 し な さ い。 (b) な ぜ キ ケロ は 彼 の 描 写 で 対 話形 式 を 選 択 し た の か ? 史 料 6 キヶ 口 の『 国 家 論 』 (a) ロ ーマ 人 の政 治 的 優秀 性 (b) ロ ーマ 人 の 支 配 の正 当 性 を 示 す た め 文 献 史 料 の読 解 に よ る キ ケロの俔 收から のロ ー マ の支 配 拡 大 理 由 の考 察歴
崙
誓
§1
殼
歴 史 解 釈 I の 形 成 2(a) 硬 貨 の 図 案 か ら ロ ー マ 人 が ど の よ う な 自 己 理 解 を し て い た か が 読 み 取 れ る か ? (b) 最 高 軍 司 令 官 パ ウ ル ス の 名 前 は ど こ に 見 え る か ? 資 料 9ロ ー マ 共 和 政 期 の硬 貨 (a) ロ ーマ 人 の軍 事 的 優 秀 性 (b) 全 体 を 支 え る よ う 硬 貨 の下 に 記 し た 名 前 はロ ー マ人 の戦 争 の正 当 化 を示 す 。 現 物 資 料 の読 解 に よ る ロ ーマ 人 の視 点 か ら の ロ ーマ の支 配 拡 大 理 由 の 考 察 3 (a)ロ ー マ 拡 大 に つ い て の ポ リ ュ ビ オ ス の 根 拠 を 整 理 し な さ い 。 (b) あ な た は そ の 根 拠 に 同 意 す る か ? あ な た の 判 断 を 根 拠 づ け な さい 。 史 料 7・ 8 ポリ ュビ オ スの『歴 史』 (a) 政 治 的 優 秀 性 ・ 軍 事 的 優 秀 性 ・ ロ ー マ 人 の倫 理 性 (b) 歴 史 解 釈 の 吟 味 ・ 検 証 に よ る ロ ー マ の 支 配 拡 大 につ い て の歴 史 解 釈 の形 成 文 献 史 料 の読 解 に よ る (a) ポ リ ュ ビ オ ス の 視 点 か らの ロ ーマ の支 配 拡 大 理 由 の 考 察 (b) ポ リ ュ ビ オ ス の 史 料 に 依 拠 し た 子 ど も自 身 の 歴 史 解 釈 の 形 成 4(a) ポ リ ュ ビ オ ス は カ ル タ ゴ の 全滅 を ど の よ う に 描 写 し て い る か ? (b) ポ リ ュ ビ オ ス は 記 述 の 中 で ロ ーマ の 政策 につ い て ど の よ う な 判 断 を 述 べて い る か ? 丈密卜8ポリュ ビ オ ス の 『 歴 史 』 (a) ロ ー マ 人 の カ ル タ ゴ 大 へ の残 虐 行 為 (b) ロ ーマ 人 の支 配 欲 文 献 史 料 の 読 解 によ る 課題 3で探求し たポリ ュ ビ オ ス の 同 一 史 料 内 で の 矛 盾 し た 叙 述 の 把 握 歴 史 解 釈 の 根 拠 の 反 証 5カ ン ナエ の戦 い につ い て の リ ウ ィ ウ ス の記 述 と 教 科 書 の 記 述 とを 比 較 しな さ い。 (a) そ れ ぞ れ ど の 段 階 に 重 点 を 置 い て い るか ? (b) そ れ ぞ れ の 記 述 で 戦 争 は ど う 描 写 さ れて い る か ? 記述 の 中 の 根拠 を 探 し な さい 。 史 料10(a) リ ウ ィ ウ ス 『 ロ ー マ 建 国以 来 の 歴 史 』 10(b)1925 年 当 時 の 歴 史 教 科 書 (a) 戦 い の翌 日 の 状 況 と 戦 闘 の 状 況 (b) カ ル タ ゴ 人 の ロ ーマ 大 へ の残 虐行 為 と, カ ル タ ゴ 人 の 軍 事 的 優 秀 性 文 献 史 料 の 読 解 に よ る カ ン ナ エ の 戦 い に お け る カ ル タ ゴ 人 の 残 虐 性 の 把 握 カ ン ナ エ の 戦 い に お け る カ ル タ ゴ 人 の 軍 事 的 優 秀 性 の 把 握蒿
n
混
の
禁
41
特 設 小 単 一 兀 ¬ 方 法 ●● 歴 史 地 図 で 探 求 す る し 1(a) 地 勢 図 と 比 較 し て , 歴 史 地 図 は 何 を 表 現 し て い る か ? (b) な ぜ 歴 史 地 図 の 読 み 取 り に お い て, 地 理 的 地 図 で 補足 す る こ と か 重 要 な の か ? 資 料 1現 在 の ヨ ーロ ッ パ の地 勢 図 資 料 2ロ ー マ 帝 国 拡 大 を 示 す歴 史 地 図 (a) ロ ーマ 帝 国 の拡 大 と い う 政 治 的 状 況 (b) 地 理 的 状 況 と結 び つ け , 歴 史 的 に 意 義 あ る 情 報を 取 り 出 す た め。 地 図 の読 解 に よ る地 理 的 視 点 か ら のロ ー マ帝 国 拡 大 理 由 の考 察 歴 史 解 釈 の 根 拠 の 比 較 反 証 歴 史 解 釈 皿 の 形 成 2(a) ロ ー マ 帝 国 は ど の く ら い 拡 大 し た の か ? ど の時 点 で ど の 属 州 を 征 服 し た か ? 資 料 2 (a) ワ ー クブ ッ ク白 地 図 の 5 段 階 で の 拡 大 過程 の 色 分 け で の 確 認 と , 地 図 へ の 属 州 名 の記 入 (a) 地 図 の 読 解 に よ る 地 理 的 視 点 か ら のロ ー マ 帝 国 拡 大 理 由 の考 察 (b) そ う し た 大 帝 国 に 拡 大 す る た め にど の よ う な 軍 事 的 ・ 政 治 的 前 提 条 件 を 作 り 出し た の か ? ワ ー クブ ッ クS.24 ロ ー マ 帝 国 白地 図 (b )地 理 的 条 件 ( 山 脈 ・ 川 な ど ) や辺 境 防 壁施 設 の 配 置 か ら 軍 事 的 ・ 政 治 的 条 件 を 考 察 す る 能力 (b) ロ ー マ 帝 国 拡 大 に つ い て の 歴史 解 釈 の 再 形 成 3(a) 今 日 の ど ん な 国 家 が ロ ー マ 帝 国 に 扁 し て い るか ? (b) そ れ らの 国 家 で はロ マ ン語 , ゲ ル マ ン語 , そ の他 の言 語 が話 さ れ る か ? 資 料 1 資 料 2 ワ ー クブ ッ クS.24 ロ ー マ 帝 国 白地 図 (a) 資 料 1 ・ 2 と , 現 在 の ヨ ー ロ ッ パ の地 図を 比 較 し て 回 答 を 導 く 能 力 (b) 百 科 事 典 な ど の 調 査 に よ り 回 答 を 導 く 能力 地 図 読 解 に よ る 教 科 書 以 外 の資 料 で の 調 査 活 動 → 自主 的 活 動 の 導 入 ヨ ーロ ッ パ の ロ ー マ化 や ロ ーマ 帝 国 の 今 日 的 意 義 の把 握→ 次 単元 の 導 入 終 結 M Q.「 な ぜ ロ ー マ 帝 国 は 支 配 を 拡 大 で き た のか ?」 子 ど も 自身 が 選 択 し た 資 史 料 選 択 す る 歴 史 解 釈 の 根 拠 を 自 ら の視 点 か ら 再 度 補 強 す る 。 歴 史 解 釈 の 根 拠 の 再 補 強 歴 史 解釈 Ⅲ の形 成(2006 年 版S.152∼159 を も と に 筆 者 作 成)
表 5より読 み取 れる2006年 版 の歴史学 習の構造
が図1で あ る。主 要小 単元「 村 から世界 帝国へ」
展
開
I
|| 士み 11 士み綴
沿
綴
の形成
説
鰰J・L慝乂ゆ 一一-説
駟冫L 苓⇒乂 一一-説
根 拠
根 拠
根拠
ふ 卩il二 も乂.卩m展
開
H
喩
喩
喩
新たな
資料 で
の根拠
づけ に
よる歴
史解 釈
n の再
形成
説
比 較
和
⇒
反 証
説
比 較
鰰
ゆ
反 証
説
根 拠
根 拠
根拠
他 視 点 か ら の 根 拠 他 視 点 か ら の 根拠 他 視 点 か ら の 根 拠終
結
説
子 ども
自身 の
視点 か
らの歴
史解釈
Ⅲの再
々形 成
根 拠
他 視 点 か ら の 根拠 子 ど も の 視 点 か ら の 根拠図1 . 2006 年 版 の 歴 史 学 習 の 構 造 ( 筆 者 作 成 )
で ある展 開I のう ち, 1∼ 3まで は歴 史解 釈の形
成過 程で ある。 キケロ『 国家論 』や 硬貨, ポリ ュ
ビ オスの『 歴史』 とい った資史料 の読 解よ り 匚
な
ぜロ ーマ が支配を 拡大 する ことがで きた のか」 と
い う問い に対す る諸説 とそ の根拠を導 いて い る。
こ の説 と根拠 からな る歴 史解 釈は, 歴史家 の研究
と 同様 の資史料 の読解で 根拠づ け られた科 学性 が
保証 さ れた もので あ る。
課 題1 (a)で は, キ ケロ 『国 家論 』 の読 解 を通
し て, ロ ーマ大 の政治 的優秀性 説 とその根 拠を,
1(b) で は, 当時 の有力 者 に 代弁 さ せ る対話 形式
を とる ことで,ロ ーマ人 の 倫理 性説 とそ の根拠を
読 み取 らせて い る。 課 題2( a)で, 3人 の戦 争捕
虜 を従え る軍司令 官 ルキニ ウス・ パウル スの軍事
的 勝利を 象徴 する硬貨 の図版 に普 遍化さ れたロ ー
マ人 の自己理 解の読 解を通 して, ロ ーマ人 の軍事
的 優秀 性説 とそ の根 拠を, 2 (b)で は, 硬貨 の図
版 にパ ウル スの名 が軍 事的 勝利を 支え るよう に下
に描 かれてい るこ とから, ロ ーマ人 の倫理 性説 と
その根拠を読 み取 らせてい る。課題3( a)はポリュ
ビオ ス『歴史 』の読 解よ り, ロ ーマ人 の政治 的優
秀 性説, ロ ーマ大 の軍事的 優秀性 説,ロ ーマ人 の
一66 −倫
理性説という3つの説
とその根拠
を整理する課
題である
。以上の学習で形成され
た歴史解釈が,
次の課題3(b)
に
より比較検証され
る
。
続
く課題
4
・5は,各説の根拠
を反証す
ること
を課題と
している
。課題
4では
,ポ
リュ
ビオスの
『歴史』か
らポエニ戦争での
カルタゴ大への残虐
行為か
ら戦争に
おける
ロ
ー
マ大の倫理性を,さら
にアテネやスパルタの
ようにロ
ー
マ大も支配欲に
よ
り退廃
していると
して支配における
ロ
ーマ人の
倫理性を疑問視する叙述
を読み
取ることで
,ロー
マ人の倫理性の根拠を反証する
O課題5では
ロ
ー
マが大敗
したカンナ
エの戦いについての
リウィウ
ス
と1925
年当時の歴史教科書の記述
を比較する
。
前者は
,カンナ
エの
戦いに大勝
した
カル
タゴ人の
戦争の終結
した翌
日の
さらなる残虐行為よ
りカル
タゴ人の残虐性
を
,後者はハンニバルというカル
タゴ人の
軍事
的優秀
性を読み
取
らせる
ことで
,ロー
マ人の倫理性や
ロ
ー
マ人の
軍事的優秀性の根拠を
反証する
。課題
4
・5は
,課題
1∼3で形成
した
歴史解釈の根拠に対
し批判的検討を行い
,その歴
史解釈の科学性
をよ
り高め
るために設定され
てい
る
。展開
Iでは
,歴史家が研究の際に行う解釈形
成
・比較
・反証
といった活動を追体験
し
,
1段階
目の歴史解釈の形成がめ
ざされ
る
。
展開
Hでは
,展開
Iとは異なる視
点か
ら根
拠づ
け
,それ
を踏ま
えて,3つの歴史解釈の根拠を比
較
・反証することで,歴史解釈の再形成がめざさ
れる
。展開
Iによ
り形成
された各歴史解釈の根拠
を空間的な視点か
ら比較
・反証す
る過程
である。
課題
1では政治的状況を示す歴史地図と山脈や河
川といった地理的条件を示す地勢図を比較するこ
とで
,ロー
マが拡大可能であった根拠
を地理的条
件か
ら考察
させ
,展開
Iで形成
した根拠の妥当性
を判断させる
。課題2では,この
地理的条件にさ
らに辺境防壁施設の
配置などの学習を踏ま
えて
,
ここでも展開
Iで形成
した根拠の妥
当性を判断さ
せ
る同様の学習で比較
・反証するの
である。さら
に課題3は
,教科書の資史料だけでは解決できな
い課題であり
,多様
な資史料を活用
して問いを探
求する
ことを求めている
。
終結は
,展開
Hの再形成された歴史解釈か
らよ
り妥
当と考
える歴史解釈
を判断
・選択
し,その歴
史解釈の根拠
を
,子
ども自身が選択
した資史料
を
活用
して補強する過程である
。展開
Hまでの学習
は
,すべて教科書や
ワーク
ブックによ
り提示され
た資史料に基
づく学習であった
。終結は
さらにそ
の学習
を進め
,今度
は自
らの
視点
で資
史料
を収集
・
選
択
し
,それによ
り根拠
を再補強することで,歴
史解釈
をさらに発展
させ
る
。終結では,独
自の視
点か
ら根拠
づけた歴史解釈の再々形成がめざされ
る
。
本小単元以外の小単元も課題を探求する同様な
学習展開となっており,
2006
年版における小単元
の歴史学
習は
,課題の
探求の
中での資史料の
吟味
・
検証という学習方法による歴史解釈の根拠づけが
学習の中心であ
り
,学習内容となっている歴史解
釈
を繰
り返
し形成することで歴史解釈
を発展
させ
る
歴史学習であることが分かった
。
以上よ
り2006
年版は,
1994
年版と通史的構成
を
とっているとい
う点では共通
して
いる
。
しか
し,
1994
年版と異な
り
,子どもが課題の探求により独
自の歴史解釈
を行
うことが可能
となっている
。歴
史的知識を伝達する歴史学習か
ら
,子
どもが歴史
解釈
を発展
的に形成する歴史学習へ
と変革させて
いる
。子どもが歴史に自主的に取
り組み
,探求す
る楽
しみ
を見出す歴史教科書に基
づく歴史学習は
,
子どもの歴史科離れ
という歴史学習の課題を克服
するものに
なっている
。それ
では
,なぜ2006
年版
は歴史学習を変革することが可能であったのか
。
この
の
歴史学習の原理を考察
問いを解明するために
したい。
,次章では,
2006
年版
3。2006
年版
の歴史学習原理
1994
年版と2006
年版は
,通史的な全体構成
とい
う点では共通
している
。 1994
年版と2006
年版
で大
きく異なっているのは
,資史料と課題が歴史教科
書において果たす役割であろう
。 1994
年版では学
習の
ほとん
どが歴史的知識の伝
達に終始する中で
,
資史料と課題は
,子
どもに考える学習を提供する
ために提示され
る補足的な役割
を果たすにす
ぎな
かった
。それ
に対
し,
2006
年版では資史料と課題
が1994
年版と比較
してか
な
り増大
している
。これ
はなぜなのか
図
1の展開
Iである歴史解釈
を
,図
1をもとに明
Iの
らかに
形成に関
した
して
い。
は
,歴
史家の研究の追体験であ
り,歴
史家が実際
に自らの歴史解釈の根拠
と
して活用
した
一級の歴
史的資史料の吟味
・検証が学習の中心となる。例
えば
,小単元匚
村から世界帝国へ」で考察する
匚
ロ
ー
マがなぜ支配
を拡
大する
ことがで
きたの
か?」
は
,す
でに
ロー
マ共和政期の歴史家が
取り組んだ
問いであった
。その代表が
,前2世紀のギ
リシア
大政治家ポ
リュ
ビオス
である
。ローマが地中海世
界に覇権
を拡大する厂
共和政中期の研究において
一次史料と
して存在する歴史書はポ
リュビオスの
『歴史』のみ
であり
,集中的に分析
(12
」
)
され
てお
り
,多くの歴
史家が
『歴史』に依拠
している。キ
ケ
ロの
『国家論』は
,ローマ大がその支配や戦争
の
正当性
をどのように根拠
づけようと
したかを考
察する際の
重要
な文献
史料と
して活
用され
て
きた
。
(13
)
リウ
ィウスは
,基本的にポ
リュビオス
『歴史』
に依拠するが
,ポ
リュ
ビオスの唱
えるロー
マ人の
支配の
正当性に対
しては反証を行
い,ポ
リュ
ビオ
スの
史料批判
を行っている
(14
。
)
そのため
,吟味
・
検証
・反証に適
した資史料であることを根拠
とし
てキケ
ロ
・ポ
リュ
ビオス
・リウィウスの文献史料
が
選択
されて
いるのである。
単元
「 ̄
ロ
ーマ帝国」の他の小単元をみ
ても
,小
単元
匚
アウグス
トゥスの時
代」では
,ア
ウグス
トゥ
スの支配に対するアウグス
トゥス
自身の叙述と夕
キ
トゥスの叙述を
,小単
元
「 ̄
キ
リス
ト教は国家宗
教である
」では,コンスタンティヌス
帝における
戦争の際のキ
リス
ト教が果た
した意義に対する当
時の作家ラクタンツと現在の歴史家ブラン
トの叙
述を挙げ
,批判的に検
証させてお
り,小単元匚
村
から世界
帝国へ
」と同様の根拠から資史料が選択
されていることが分か
る。
歴史解釈
Hの
形成に関
しては
,歴史解釈
Iで活
用
したの
とは異
なる視
点からの資史料が選択
され
る
。歴史解釈Ⅲの
形成に関
しては,歴史解釈
nを
吟味
・検
証するために子ども自身の視点か
ら自由
に
資史料が収集
・選択され
る。こう
して
多様な資
史料や歴
史解釈
を吟味
・検証することで,歴史解
釈
を発展する歴
この
3段階にわ
史学習とな
たる歴史解釈の
っている。
形成に関
して,
資史料と課題が中心的役割を果た
分かる。歴史解釈
を発展的に形成させるという目
していることが
-標のもと
,どの
ような課題に沿ってどの
ような資
史料を活用
して探求させれ
ばよいか
を想定
した入
念な計画と意図に沿って資史料
と課題は設定され
ているの
である
。そのため,
2006
年版では歴史解
釈の形成に適
した資史料や課題が豊富に盛
り込ま
れ
ている
。こうして2006
年版は
,課題
と資史料が
学習の中心
となることで
,教師の伝達か
ら子ども
の
探求学習へと学習方法が大きく変革
している
。
この学習方法の
変革によ
り
,結果と
して学習内
容にも変革が生
じる
ことになった
。 1994
年版では
教師の伝達
とい
う学習方法のために
,学習内容が
歴史の概観
を掴む歴史的知識であった
。 2006
年版
になると
,子どもの探求
という学習方法のために
学習内容は歴史解釈となった
。資史料や複数の歴
史解釈の
吟味
・検証を経て歴史解釈は形成され
る
ために
,歴史学において論争され
,複数の歴史解
釈が対立するテ
ーマが適切な学習内容と
して選択
され
る
。例
えば
,小単元匚
村か
ら世界帝国へ」は
,
ロ
ーマの拡大理由についての歴史解釈が学習内容
であるが
,このテー
マは
ローマ史研究の
中心的論
争テ
ーマである
。小単元匚
ロー
マは1
日に
してな
らず」(13)
は
,匚
なぜ
ロー
マが建国されたのか」
,
小単元匚
アウグス
トゥスの時代」(14)
は
,匚
なぜア
ウグス
トゥスが皇帝権
力を確立できたか」
,小単
元「 ̄
キ
リス
ト教は国家宗教である」(15)
は
,匚
なぜ
キ
リス
ト教が国家宗教となりえたか」
,小単元
匚
ロ
ーマ帝国は没落する」(16)
では,匚
なぜ
ロー
マ
帝国が滅
亡
したのか」という論争テ
ー
マを探求す
る構成となっている
。もちろん
,全小単元が論争
テ
ー
マで構成され
ているわ
けではないが
,その場
合
でも歴史事象
を解釈
した形で提示することは可
能
であ
り
,全小単元の学習内容は歴史解釈
として
示され
ている
。これ
らの学習内容は通史的構成の
ままで学習
していくことに何
ら支障はないため
,
通史的構成はそのまま継承
され
ている
。
2006
年版の歴史学習は
,<通史的構成>のまま
で
,<資史料と課題を学習の中心に置くことで可
能
となった探求学習>
を通
して
く歴史解釈
を発展
させる>という3つの原理によ
り成立
した歴史学
習である
。歴史学習の方法
を変革
し,それ
を中核
とすることで
,学習内容を変革
し,知識伝達に
と
どまるという歴史学習の課題
を克服
しようと
して
68−
いる。
4。2006
年版
の歴史学習の意義
それ
では,
2006
年版の歴史学習は
ドイツの伝統
的な歴史学習を克服
しうるだけの
変革を果た
した
意義のある歴史学習といえるのであろうか
。これ
までの分析
を踏ま
えて,
2006
年版の歴史学習の
変
革
をさらに検証する
1点目の
変革は
,<歴史学研究の伝達か
ことでこの問
いを解明
した
ら探求
い
。
>への変革である
。この変革が2006
年版の
変革の
核心であることは前述の通
りであるO 1
章で示
し
た
ドイツの伝統
的な歴史学習の特徴
である②歴史
の概観
,③知識の伝達に
とどまるという2点の課
題
を克服す
るために
,子
ども主体の歴史
を探求す
る歴史学習になったの
である
。これは
,学習方法
レベルでの
変革といえる。
2点目の
変革は
,<技能的能
力重視>への変革
である
。これは
1点目の
変革と関連
した変革であ
る
。 2006
年版は歴史教科書が歴史授業において果
たす役割
を大
きく変えている
。伝統的な歴史教科
書は
,歴史授
業における学習内容そのものであっ
たが,
2006
年版になると
,歴史教科書は子どもが
探
求す
るための学習
方法
を提示す
る学
習手段となっ
た
。そのため
,学習内容の獲得に
よる認知的能
力
のみ
な
らず
,子どもが
自ら資史料
を収集
・選択
し,
吟味
・検証す
るといった学
習方法に関する技能
的
能
力も育成することがめざされ
るようになった
。
2006
年版は学習内容
・学習方法に関わ
る多岐にわ
た
る能
力を育成する歴史教科書となったの
である
。
これ
は
,歴史教科書
レベルでの変革といえる
。
3点目の変革は
,
くどの教師が
行っても,同
レ
ベ
ルの
歴史授業の実施可能性を保証する歴史学習
>への変革である
。
2章で示
した1994
年版と2006
年版の学
習展開
を比較す
るとこれが
了解で
きよ
う
。
1994
年版では
,読み
物的構成のために学習展開に
関
して明確
な指示はな
く
,ローマの拡大過程
をど
のように伝達するかは個々の教師の裁量に任され
ていた
。それに対
し,
2006
年版に
なると学習展開
を構成する課題と資史料がすべ
て教科書に
示され
,
教科書に沿って子どもに探求させれ
ば
,誰が教師
であっても同様の歴
史授
業を行
うことが
可能にな
っ
ている
。個々の
教師の裁量に任せ
た歴史学
習か
ら,
どの
ような教師であっても同様の
学習展開で
,一
定
レベルの能
力の
育成
を可能にす
る歴史授
業となっ
たの
である。これは
,歴史授業
レベルでの
変革と
いえる。
以上か
ら,
2006
年版は学習方法
・歴史教科書
・
歴史授
業の
3つの
レベルによ
り
ドイツの伝統的な
歴史学習
を変革
しているといえる
Oこの変革によ
り厂教科書内容に限定され
た歴史学研究の成果の
伝達か
ら
,教科書の枠組み
を越
えた子どもの
主体
的な探求により歴史学研究の成果
をさらに発展
さ
せ
,子
どもが獲得する学
習内容の質的向上ととも
に
,どのギムナジウム
においても同様
な学習が行
われ
ることで
,ギムナジウムの歴史学習全体の質
的向上も可能となっている
。 2006
年版は
,これま
で歴史学習の
変革が
叫ばれ
ながらも
,歴史学習の
現状を変えるには至らなか
ったギムナジウムの歴
史学習の
あり方
を変革する可能性を備えてお
り
,
新
しい歴史学習のス
ター
トラインと
しての大きな
意義
を持
っているといえよ
う。
5。結語
それ
では
,最後に2006
年版の歴史学習の成果と
限界
を総括する
。 2006
年版の歴史学習は,通史的
構成
とい
う枠組み
は堅持
しなが
らも
,知識伝達型
か
ら探求に
よる歴史解釈形成型へと歴史学習を変
革させている
。しかも単に歴史解釈を形成するだ
けではな
く
,資史料や歴史解釈の吟味
・検証によ
り歴史解釈
を段階
的に発展
させる
,いわ
ば解釈発
展学習という新
しい歴史学習の
形態
をとって
いる
。
この解釈発展学習は
,教科書内でその学習展開の
全てが
示されてお
り
,どの教師でも実施可能であ
る
。
ドイツの歴史学習の
変革は,日本のよ
うに特
定の高度な歴史教育理論の導入に
よる変革では
な
く
,現場の教師がだれでも実施できる歴史学習の
変革と
して示され
たのである
。これ
までも
ドイツ
では歴史学習の
変革に向けて
,様々な試みがなさ
れ
てきたが
,実質的に学校教育現場での歴史授
業
が
変わ
る
ことは
なか
った
。学
習方法
・歴史教科書
・
歴史授業の
3つの
レベルでの
変革こそが学校教
育
現場の歴史授業の
変革をもたらす重要な条件とい
えるのではなか
革をもた
らした2006
ろうか
年版の歴史学習は
。この
3つの
レベル
,伝統的な
での
変
枠組み
を越
える新
しい歴史学習の可能性が開
いた
という点
で大きな成果といえる。
しか
し
,一方でその歴史学習の限界も指摘
され
る
。伝統的な歴史学習で重視され
てきた
1章で挙
げた④現在の歴史的起源や根拠などの認識は2006
年版の歴史学習の射程に入っていない
。これ
は,
2006
年版の歴史学習が
,歴史学研究と
しての歴史
学習の
枠組み
内での変革であった
ことに起因す
る
。
歴史学研究
としての歴史学習とは
,歴史と現在と
の
関連
を考慮せず
,歴
史をあくまでも過去の歴史
と
して学ぶもので
ある
。歴史を現在
と結び
つける
という④
を射程に入れた歴史学習
を想定す
ると
,
また異なった歴史学習の変革も考えられ
る
。そう
した歴史学習は
,歴史学研究と
して歴史学習の枠
組み
を越
えた異
なった歴史学習であ
り
,ギムナジ
ウム
以外の別の校種
(例
えば
,ハ
ウプ
トシュー
レ
やゲザム
トシュ
ー
レなど)の歴史学習からその
可
能肚
を見
出す
ことが
で
きる
。例
えば
,
ゲザム
トシ
ュー
レで行われ
る地歴公
を統合
したゲゼ
ルシャ
フツ
レ
ー
レにおいて歴史学習の果たす意義は全く異なった
ものになろう
。そ
こで,別校種での歴史学習の分
析か
ら異なる歴史学習の変革可能性
を考察するこ
とが今後の課題である。
【註】
O)K
l
a
us Bergmann,
Versuch uber die Fragwiirdigkeit
des chronolo
がschen Geschichtsunterriclits.,
In:Hans-昆gen Pandel, Gerhard Schneider (hrsg.)
Wie weiter
?
,
Wochensch.au Verlag, 2001,S.35
(2)Bodo
von Borries,Geschiclitsdidaktik am Ende des
20.
Jahrhunderts.,
in : Hans-Jiirgen Pandel, Gerhard
Schneider
(Hrsg.),
Wie weiter?, Wochenschau Verlag,
2001,S.10
( 3
)Bernhard Askani
u.a.^LNNO
i,Westennaun,
1994
( 4
)Ulrich Baumgartner
u.
a。
ぶWN05,
厄Westermann,2006
(5)A.
a.
0.,(
A
n
m.2),S.7
( 6
)
A.a.o.,
(Anm.3)
,S.
128-129
( 7
)A.a.o.,
(Anm.4),S.
152-157
( 8
)Ebd.,S.158-159
( 9
)Ebd.,S.160-163
(lO)Ebd.,S.164-165
(11)
ANN05/6 Arbeitsheft,
W estermann,2006