言 語 文 化 研 究 徳 島 大 学 総 合 科 学 部 第 二 十 八 巻 別 刷 二 〇 二 〇 年 十 二 月
日
本
漢
詩
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大
村
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〈 序 章 〉 問 題 の 所 在 徳 島 県 鳴 門 と 兵 庫 県 淡 路 島 と の 間 に 位 置 す る 鳴 門 海 峡 は 、 日 本 の 有 名 な 名 勝 の 一 つ と さ れ て い る 。 そ れ を 多 角 的 に 調 査 し た 『 「 鳴 門 の 渦 潮 」 世 界 遺 産 登 録 学 術 調 査 報 告 書 』 ( 一 ) は 貴 重 な 報 告 書 で あ り 、 こ の 名 勝 に つ い て 教 え ら れ る こ と は 多 い 。 そ の 中 に 「 古 典 文 学 に 描 か れ る 『 鳴 門 の 渦 潮 』 」 ( 執 筆 : 小 島 明 子 ) と い う 論 考 も 収 録 さ れ て お り 、 日 本 の 古 典 文 学 に 見 え る 「 鳴 門 の 渦 潮 」 の 特 徴 や 変 遷 等 を ま と め て い る が 、 中 国 語 の 文 語 体 ( 「 文 言 」 ) を 用 い て 制 作 さ れ た 作 品 、 い わ ゆ る 漢 文 ・ 漢 詩 は 取 り 上 げ ら れ て い な い 。 同 『 報 告 書 』 の 中 で 日 本 人 の 漢 文 ・ 漢 詩 作 品 へ の 言 及 が 見 ら れ る の は 「 大 坂 か ら 阿 波 ・ 徳 島 へ の 往 来 に つ い て ― 渡 海 の 手 続 き と 『 鳴 門 』 見 物 の 旅 を 中 心 に ― 」 ( 執 筆 : 松 永 友 和 ) だ が 、 散 文 の ご く 一 部 に大 村 和 人 2 触 れ ら れ て い る だ け で あ り 、 漢 詩 に つ い て は 取 り 上 げ ら れ て い な い 。 な お 、 中 国 文 学 で 「 漢 詩 」 と 言 え ば 主 に 前 漢 ・ 後 漢 時 代 の 詩 歌 を 指 す が 、 本 稿 の 言 う 「 漢 詩 」 は 日 本 に お け る 用 語 で 、 広 く 中 国 古 典 詩 の 様 式 を 指 す 。 近 年 、 日 本 文 学 だ け で な く 中 国 文 学 の 観 点 か ら の 日 本 漢 詩 研 究 も 盛 ん で あ り 、 日 本 人 が 制 作 し た 漢 詩 ( 以 後 、 本 稿 で は 「 日 本 漢 詩 」 と 呼 ぶ ) も 「 日 本 文 学 」 に お け る 重 要 な 一 ジ ャ ン ル で あ っ た こ と が 近 年 明 ら か に さ れ つ つ あ る 。 「 日 本 文 学 」 、 少 な く と も 昭 和 初 期 こ ろ ま で の 日 本 の 文 学 の 実 態 を 総 合 的 に 理 解 す る た め に は 、 残 さ れ て い る 膨 大 な 「 日 本 漢 詩 」 も 外 す こ と は で き な い の で あ る 。 こ の こ と は 、 鳴 門 海 峡 を 描 い た 文 学 作 品 に つ い て も 同 様 で あ る 。 筆 者 は 中 国 古 典 文 学 を 主 な 研 究 領 域 と す る 者 で あ る が 、 近 年 で は 日 本 漢 詩 に 関 す る 論 考 も 発 表 し て き た ( 二 ) 。 本 稿 で は 右 の 『 報 告 書 』 で ほ と ん ど 取 り 上 げ ら れ な か っ た 、 鳴 門 海 峡 の 景 物 を 描 い た り 、 そ れ と 関 わ る 事 物 を 詠 じ た り し た 漢 詩 ( 本 稿 で は 仮 に 「 鳴 門 漢 詩 」 と 呼 ぶ ) 、 そ の 中 で も 江 戸 時 代 以 降 の 作 品 を 取 り 上 げ 、 そ れ ら の 特 徴 を 分 類 し て 各 々 の 出 典 も 指 摘 し 、 他 の 海 を 描 い た 日 本 漢 詩 と 比 較 す る こ と に よ っ て 、 鳴 門 漢 詩 を 日 中 両 国 の 文 学 史 の 流 れ の 中 に 位 置 づ け る こ と を 試 み た い 。 本 稿 が 使 用 す る 基 本 テ キ ス ト は 鳴 門 市 史 編 纂 委 員 会 編 『 鳴 門 市 史 ・ 別 巻 鳴 門 に 関 す る 文 芸 作 品 集 』 ( 鳴 門 市 、 一 九 七 一 ) の 「 漢 詩 全 国 」 の 部 で あ り 、 そ こ に 収 録 さ れ る 江 戸 時 代 以 降 の 文 人 、 計 百 四 十 三 名 の 作 品 、 二 百 八 十 七 首 を 対 象 と し た ( 三 ) 。 こ れ は 言 い 換 え れ ば 、 主 に 阿 波 以 外 の 地 域 出 身 の 文 人 に よ る 作 品 が 本 稿 の 研 究 対 象 で あ る と い う こ と で あ る ( 四 ) 。 阿 波 の 漢 詩 人 の 中 に も 江 戸 や 京 阪 の 漢 学 塾 あ る い は 詩 社 で 学 ん だ 者 が 少 な か ら ず お り 、 そ れ ら の 影 響 を 多 少 な り と も 受 け て い る と 考 え ら れ る 。 ま ず 本 稿 で は 阿 波 以 外 の 地 域 の 文 人 の 作 品 の 傾 向 を 掴 み 、 そ の 上 で 別 の 機 会 に 阿 波 の 文 人 の 作 品 を 取 り 上 げ た い 。 〈 第 一 章 〉 日 本 漢 詩 に 描 か れ た 鳴 門 海 峡 ( 一 ) 作 品 の 題 名 別 の 分 類
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 ま ず は 作 品 を 題 名 別 に 分 類 し よ う 。 題 名 は 各 作 品 の 制 作 方 法 と 主 題 を 示 す 目 安 と 見 な す こ と が で き る か ら で あ る 。 当 然 の こ と な が ら 一 つ の 題 名 に 内 容 上 の 複 数 の 要 素 を 有 す る 場 合 も 少 な く な い が 、 そ の よ う な 場 合 の 処 理 に つ い て は 各 項 目 で 述 べ る 。 最 も 多 い の は 「 鳴 門 」 と 題 す る 作 品 、 ま た は 鳴 門 海 峡 お よ び 関 連 す る 名 所 そ の も の を 題 名 と し 、 「 叙 景 」 あ る い は 「 題 詠 」 と 解 釈 で き る 作 品 で あ る 。 実 際 に 作 者 が 実 景 を 目 に し て 制 作 し た 場 合 が 多 い で あ ろ う が 、 慎 重 を 期 し て 、 実 景 を 目 に せ ず 「 鳴 門 」 と い う テ ー マ で 制 作 し た と い う ケ ー ス も 想 定 し て お く 。 こ の 種 の 作 品 は 全 部 で 八 十 八 首 認 め ら れ た ( 五 ) 。 こ の 他 、 鳴 門 の 渦 潮 を 描 い た 絵 画 を 作 者 が 目 に し て 制 作 し た 題 画 詩 は 二 首 、 中 国 で は 盛 ん な 「 摩 崖 」 、 す な わ ち 名 所 の 岸 壁 等 に 自 作 の 詩 を 刻 ん だ 詩 は 一 首 認 め ら れ た 。 ま た 、 鳴 門 に 縁 の あ る 歴 史 上 の 人 物 を 描 い た 作 品 は 詠 史 詩 の 一 種 と 見 な せ る が 、 そ れ は 一 首 あ り 、 鳴 門 の 名 産 を 主 題 と し た 作 品 は 三 首 あ る 。 こ れ ら の 作 品 は 鳴 門 の 渦 潮 自 体 や そ れ と 関 連 す る 事 項 を 主 題 と す る も の が 多 い 。 右 の 一 群 の 作 品 の 他 に 、 題 名 に 「 觀 」 「 所 見 」 「 遊 」 等 の 動 詞 を 有 す る 「 遊 覧 」 「 観 光 」 の 作 品 も 多 く 、 五 十 四 首 認 め ら れ た 。 こ れ ら の 作 品 は 作 者 が 実 景 を 見 て 制 作 さ れ た こ と が 明 示 さ れ て お り 、 右 の 一 群 と 区 別 し た 。 こ れ ら の 作 品 に も 鳴 門 の 渦 潮 自 体 や そ れ と 関 連 す る 景 物 を 詠 う も の が 多 い が 、 酒 宴 等 の 娯 楽 の 要 素 が 作 品 の 大 部 分 を 占 め る も の も 少 な く な い 。 こ れ ら と は 別 に 無 題 詩 ま た は 失 題 詩 が 二 十 一 首 あ る 。 こ れ ら の 大 部 分 は 、 鳴 門 海 峡 そ の も の を 題 材 と す る か 、 そ れ ら を 実 見 し て 制 作 さ れ た と 思 し い 。 以 上 の グ ル ー プ の 作 品 の 合 計 は 百 七 十 首 で あ る 。 右 の グ ル ー プ の 作 品 の 作 者 は 一 人 で あ る 場 合 が 主 で あ る が 、 友 人 数 名 と 鳴 門 海 峡 を 見 物 し て 制 作 し た 作 品 、 そ れ ら と は 別 に 詩 歌 を 贈 答 し た も の 、 友 人 の 送 別 の 宴 に お け る 作 品 や 、 自 分 が 阿 波 を 去 る 際 に 見 送 り に 鳴 門 ま で 来 た 友 人 に 贈 っ た い わ ゆ る 留 別 の 作 品 、 友 人 の 作 品 に 唱 和 ・ 次 韻 ・ 畳 韻 し た も の 、 ま た 籤 引 き 等 で 各 人 が 詠 じ る 作 品 を 決 め て 制 作 さ れ た 「 賦 得 」 と い う 作 品 、 そ し て 各 句 で 韻 を 踏 む 柏 梁 体 の ス タ イ ル を 用 い 、 更 に 複 数 人 で 一 句 ず つ 制 作 し た 聯 句 の よ う な 集 団
大 村 和 人 4 制 作 の 作 品 な ど も あ る 。 特 に 、 森 春 濤 ( 一 八 一 八 ― 一 八 八 八 ) や 近 重 物 庵 ( 一 八 七 〇 ― 一 九 四 一 の ) が 鳴 門 を 訪 れ た 際 の 唱 和 や 送 別 等 の 作 品 が 多 く 、 前 者 の 唱 和 者 は 十 二 名 の 十 四 首 、 後 者 は 十 六 名 の 二 十 七 首 が 残 さ れ て い る 。 こ れ ら の 作 品 に 鳴 門 の 渦 潮 の 鑑 賞 を 共 に し た も の も あ る が 、 主 に 作 者 以 外 の そ の 場 の 主 役 の 前 途 を 詠 っ た り 、 後 掲 の 作 品 の よ う に そ の 者 の 才 能 等 を 称 賛 し た り し た も の も 多 い た め 、 「 叙 景 」 「 題 詠 」 の グ ル ー プ と は 別 種 と し た 。 以 上 は 鳴 門 海 峡 の 観 覧 に 加 え て 「 交 友 」 と い う 要 素 も 大 き い 作 品 で あ り 、 九 十 五 首 あ る 。 叙 景 ・ 題 詠 や 観 光 と は 別 に 、 鳴 門 海 峡 そ の も の を 見 る た め で は な く 、 作 者 が 他 の 目 的 の 旅 の 途 中 で 鳴 門 を 通 り か か っ て 制 作 し た 所 謂 「 行 旅 」 の 作 品 も 二 十 二 首 あ る 。 以 上 が 二 百 八 十 七 首 の 題 名 別 の 内 訳 で あ る 。 繰 り 返 す が 、 右 の 分 類 は あ く ま で 便 宜 的 に 分 類 し た も の で あ り 、 一 つ の 作 品 に 複 数 の テ ー マ が 認 め ら れ る こ と も 多 い 。 そ れ を 確 認 し た 上 で 総 括 す れ ば 、 鳴 門 海 峡 自 体 を 描 い た も の と 、 交 友 に お い て 制 作 さ れ た も の が 圧 倒 的 に 多 く 、 前 者 は 全 体 の 約 五 十 九 パ ー セ ン ト 、 後 者 は 約 三 十 三 パ ー セ ン ト で あ る 。 ( 二 ) 特 徴 的 な 表 現 ・ 題 材 の 種 類 と そ れ ら の 典 故 次 に 、 鳴 門 漢 詩 に お け る 特 徴 的 な 表 現 や 題 材 等 を 分 類 し 、 更 に そ れ ら の 典 故 に つ い て も 指 摘 し た い 。 予 め 特 徴 を 挙 げ て お く と 、 次 の 九 種 類 あ る 。 「 渦 潮 や 波 濤 の 描 写 」 「 巨 視 的 な 視 点 」 「 動 物 や 神 怪 」 「 中 国 の 名 勝 と の 比 較 」 「 中 国 の 有 名 人 物 の 作 品 や 故 事 」 「 日 本 の 有 名 人 物 の 作 品 や 故 事 」 「 地 元 民 や 特 産 品 」 「 渦 潮 を 見 た 者 の 反 応 」 「 作 者 の 感 慨 や 思 索 」 。 項 目 に よ っ て は 更 に 数 種 類 に 分 け ら れ る が 、 そ れ ら に つ い て は 後 述 す る 。 ま た 、 改 め て 強 調 す る ま で も な い こ と だ が 、 一 首 に 複 数 の 特 徴 が 見 ら れ る こ と は 珍 し く な い 。 ① 渦 潮 や 波 濤 の 描 写 鳴 門 海 峡 は 渦 潮 で 有 名 な の だ か ら 、 ほ と ん ど の 鳴 門 漢 詩 に お い て も 渦 潮 や 波 濤 等 が 描 か れ る 。 ま ず は 渦 潮 や 波 濤 の 描 写 に 注 目 し よ う 。
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 一 、 形 状 ・ 色 鳴 門 漢 詩 で 頻 出 す る 渦 潮 や 波 濤 の 描 写 に つ い て は 、 以 下 の 二 種 類 の 大 き な 特 徴 を 挙 げ る こ と が で き る 。 ま ず 第 一 点 目 は 、 「 雪 」 の 比 喩 で あ る 。 こ こ で は 篠 崎 三 島 ( 一 七 三 七 ― 一 八 一 三 ) の 古 詩 「 觀 鳴 門 」 ( 六 九 五 頁 ) の 冒 頭 の 八 句 を 挙 げ よ う 。 天 劈 鳴 門 石 岸 開 , 天 は 鳴 門 を 劈 き て 石 岸 開 き , 地 分 淡 島 海 潮 來 。 地 は 淡 島 を 分 か ち て 海 潮 來 る 。 波 文 間 道 照 氷 鏡 , 波 文 間 道 氷 鏡 照 り , 水 勢 盤 渦 倒 雪 堆 。 水 勢 盤 渦 倒 雪 堆 し 百 萬 霍 軍 追 虜 哄 , 百 萬 の 霍 軍 虜 を 追 ひ て 哄 ( ど よ め ) き , 八 千 項 力 拔 山 頹 。 八 千 の 項 力 山 を 拔 き て 頹 る 。 鯨 群 巌 底 潛 噴 沫 , 鯨 群 巌 底 に 潛 み て 沫 を 噴 き , 獅 子 崖 前 吼 似 雷 。 獅 子 崖 前 に 吼 ゆ る こ と 雷 に 似 る 。 首 聯 は 「 天 」 と 「 地 」 、 そ し て 「 鳴 門 」 と 「 淡 島 ( 淡 路 島 ) 」 を 対 句 と し 、 鳴 門 海 峡 の 地 勢 を 巨 視 的 に 描 く 。 第 二 聯 も 対 句 で 波 濤 と 渦 潮 を 描 写 す る が 、 第 三 句 で は 波 濤 を 「 氷 鏡 」 に 喩 え 、 第 四 句 で は 渦 潮 を 「 倒 雪 堆 」 、 つ ま り 雪 山 を 逆 に 積 ん だ よ う だ と 表 現 す る 。 第 三 聯 は 波 濤 や 渦 潮 の 勢 い を 中 国 の 古 の 名 将 の 奮 戦 ぶ り に 喩 え る が 、 後 述 す る 。 第 四 聯 で は 「 鯨 群 」 と 「 獅 子 」 を 対 句 に 描 く 。 前 者 は 水 棲 生 物 で あ る が 、 後 者 は 「 崖 上 」 で は な く 「 崖 前 」 で 吼 え る と い う の だ か ら 、 実 景 と い う よ り は 、 波 濤 の 音 を 獅 子 の 吠 え る 声 に 擬 え て い る と 考 え ら れ る 。 こ の 篠 崎 三 島 の 作 品 の 第 二 聯 の よ う に 、 波 濤 や 渦 潮 を 「 氷 」 や 「 雪 」 に 喩 え る 表 現 は 後 続 の 鳴 門 漢 詩 に も 継 承 さ れ 、 五 十 三 首 確 認 で き る 。 中 国 古 典 に お け る こ の よ う な 表 現 の 先 例 と し て 、 唐 ・ 孟 浩 然 ( 六 八 九 ― 七 四 〇 ) の 五 律 「 與 顔 錢 塘 登 漳 樓 望 潮 作 」 の 尾 聯 「 驚 濤 來 似 雪 , 一 坐 凜 生 寒 ( 驚 濤 來 た る こ と 雪 に 似 た り , 一 坐 凜 と し て 寒 を 生 ず ) 」 ( 六 ) が 挙 げ ら れ る 。 右 の よ う な 波 濤 や 渦 潮 の 美 し さ の 比 喩 と し て は 、 「 雪 」 「 氷 鏡 」 の 他 に 「 浪 花 」 が 挙 げ ら れ る 。 も う 一 つ の 特 徴 的 で し か も 多 用 さ れ る 表 現 と し て 、 「 馬 」 の 比 喩 を 挙 げ る こ と が で き る 。 例 え ば 、 亀 田 鵬 齋 ( 一 七 五 二
大 村 和 人 6 ― 一 八 二 六 ) の 古 詩 「 鳴 門 」 の 第 三 ・ 四 句 に 「 波 濤 奔 注 驅 萬 馬 , 漩 渦 喧 豗 礌 千 磑 ( 波 濤 奔 注 し て 萬 馬 を 驅 り , 漩 渦 喧 豗 と し て 千 磑 を 礌 す ) 」 ( 六 九 九 頁 ) と い う 句 が あ る 。 こ れ は 波 濤 の 急 速 に 流 れ る 様 子 が 無 数 の 馬 が 駆 け る よ う で あ り 、 巻 き 起 こ る 渦 潮 が 激 し い 音 を 立 て て 無 数 の 石 臼 を 搗 い て い る よ う で あ る と 詠 う 。 こ の 「 馬 」 の 比 喩 を 持 つ 鳴 門 漢 詩 は 二 十 六 首 確 認 で き る が 、 こ の 比 喩 は 中 国 の 前 漢 時 代 の 文 人 、 枚 乗 ( ? ‐ 前 一 四 〇 ) の 「 七 發 」 を 淵 源 と す る 。 こ れ は 『 楚 辭 』 を 淵 源 と す る 辞 賦 と い う 長 編 の 韻 文 の 一 種 に 属 す る が ( 後 述 ) 、 内 容 の 梗 概 は 、 病 気 に な っ た 楚 国 の 太 子 を 呉 国 の 客 人 が 見 舞 い 、 様 々 な 歓 楽 を 述 べ て そ の 病 を 癒 そ う と す る 、 と い う も の で あ る 。 そ の 「 歓 楽 」 の 中 に は 「 廣 陵 之 曲 江 」 の 波 濤 と 渦 潮 の 鑑 賞 も 含 ま れ 、 作 中 に て 呉 国 の 客 人 の 口 か ら 具 に 描 写 さ れ る 。 凌 赤 岸 , 篲 扶 桑 , 橫 奔 似 雷 行 。 誠 奮 厥 武 , 如 振 如 怒 。 沌 沌 渾 渾 , 狀 如 奔 馬 。 混 混 庉 庉 , 聲 如 雷 鼓 。 發 怒 庢 沓 , 清 升 踰 跇 , 侯 波 奮 振 , 合 戰 於 藉 藉 之 口 ( 赤 岸 を 凌 ぎ , 扶 桑 を 篲[ は ら] ひ , 橫[ ほ し い ま ま] に 奔 る こ と 雷 の 行 る に 似 た り 。 誠 に 厥 の 武 を 奮 ひ , 振 る ふ が 如 く 怒 れ る が 如 し 。 沌 沌 渾 渾 と し て , 狀 は 奔 馬 の 如 し 。 混 混 庉 庉 と し て , 聲 は 雷 鼓 の 如 し 。 怒 を 發 し て 庢 沓[ て い た ふ] し , 清 く 升 り て 踰 跇[ ゆ え い] し , 侯 波 奮 振 し て , 藉 藉[ せ き せ き] の 口 に 合 戰 す ) 。 ( 七 ) 「 南 の 果 て の 赤 岸 を 越 え 、 扶 桑 の 神 木 を 清 め 、 自 在 に 奔 流 す る 様 子 は 雷 が と ど ろ き わ た る よ う で 、 誠 に そ の 武 威 を 奮 い 、 震 え る よ う で も あ り 、 怒 れ る よ う で も あ る 。 滔 滔 と 流 れ る 様 子 は 疾 駆 す る 馬 の よ う で あ り 、 流 れ て 行 く 波 浪 の 音 は 雷 鼓 の よ う で あ る 。 怒 り を 発 し て 沸 き 立 ち 、 清 ら か に 上 に 昇 っ て 躍 り 越 え る 。 大 波 は 奮 い 立 っ て 藉 藉 の 入 り 口 で 合 戦 し て い る よ う だ 」 。 こ こ で 波 濤 は 様 々 な 擬 音 語 や 比 喩 を 用 い て 多 様 な 形 で 描 か れ て お り 、 そ の 中 に 「 狀 如 奔 馬 」 と い う 直 喩 が 見 え る 。 こ の 作 品 は 漢 魏 六 朝 時 代 の 韻 文 と 散 文 の 有 名 作 品 を 集 め た 『 文 選 』 に 収 録 さ れ て い る 。 周 知 の 如 く こ の 大 ア ン ソ ロ ジ ー は 漢 詩 漢 文 を 制 作 す る 日 本 の 文 人 の 必 読 書 で も あ っ た 。 そ の 「 七 發 」 が 波 濤 を 馬 に 喩 え た 表 現 の 早 期 の 例 で あ り 、 『 文 選 』 に
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 収 録 さ れ て 後 世 の 文 人 に 広 く 読 ま れ た こ と と も 考 え あ わ せ る と 、 馬 の 比 喩 の 淵 源 と 考 え て 大 過 は 無 い で あ ろ う 。 ま た 、 「 馬 」 と 関 連 し て 、 「 七 發 」 の 右 の 引 用 箇 所 に は 波 濤 等 の 荒 れ 狂 う 様 子 を 「 誠 奮 厥 武 , 如 振 如 怒 」 「 侯 波 奮 振 , 合 戰 於 藉 藉 之 口 」 と 合 戦 に 喩 え た 表 現 が 見 ら れ る が 、 そ れ が 発 展 し て 波 濤 を 有 名 武 将 の 率 い る 軍 隊 に 喩 え た 作 品 も あ る 。 例 え ば 、 前 掲 ・ 篠 崎 三 島 「 觀 鳴 門 」 の 波 濤 と 渦 潮 の 描 写 に 続 く 第 五 ・ 六 句 で は 「 百 萬 霍 軍 追 虜 哄 , 八 千 項 力 拔 山 頹 ( 百 萬 の 霍 軍 虜 を 追 ひ て 哄 き , 八 千 の 項 力 山 を 拔 き て 頹 る ) 」 ( 六 九 五 頁 ) と 詠 わ れ 、 荒 れ 狂 う 波 濤 を 前 漢 時 代 の 西 域 征 伐 で 勲 功 を 挙 げ た 霍 去 病 や 、 楚 漢 戦 争 に お け る 一 方 の 総 大 将 ・ 項 羽 の 率 い る 軍 の 奮 戦 ぶ り に 喩 え て い る 。 二 、 音 ・ に お い 前 項 で 主 に 取 り 上 げ た の は 視 覚 方 面 の 比 喩 で あ る が 、 本 稿 で は 別 の 感 覚 に 関 す る 比 喩 を 取 り 上 げ よ う 。 前 掲 の 「 七 發 」 で 波 濤 の 音 に 注 目 し た 表 現 も 目 立 っ た 。 特 に 、 「 橫 奔 似 雷 行 」 「 聲 如 雷 鼓 」 の 二 句 に 見 ら れ る よ う に 「 雷 」 の と ど ろ く 音 に 喩 え ら れ て い る 。 こ の 表 現 も 鳴 門 漢 詩 で 繰 り 返 さ れ 、 七 十 五 首 の 作 品 で 確 認 で き る 。 一 例 と し て は 、 林 東 溟 ( 一 七 〇 八 ― 一 七 八 〇 ) 「 初 渡 鳴 門 上 流 舟 中 有 作 」 其 一 の 首 聯 「 潮 聲 雷 激 海 門 灣 , 驚 浪 高 銜 星 瀍 間 ( 潮 聲 雷 の ご と く 激 す 海 門 の 灣 , 驚 浪 高 く 銜[ ふ く] む 星 瀍 の 間 ) 」 ( 八 ) が あ る 。 そ の 他 、 数 少 な い 例 と し て 、 波 を 猛 獣 の 吠 え る 声 に 喩 え た 海 量 法 師 ( 一 七 三 三 ― 一 八 一 七 ) 「 鳴 門 」 の 「 飛 響 咽 如 猛 獸 吼 ( 飛 響 の 咽 ぶ こ と 猛 獸 の 吼 ゆ る が 如 し ) 」 ( 六 九 四 頁 ) が あ る 。 ま た 、 特 筆 さ れ る 波 濤 の 音 の 表 現 と し て 、 砲 撃 の 音 に 喩 え た 橋 本 海 関 ( 一 八 五 二 ― 一 九 三 五 ) 「 鳴 門 十 五 吟 」 其 十 三 の 末 句 「 礮 ( 砲 ) 戰 」 ( 七 三 七 頁 ) が あ り 、 同 じ 連 作 の 其 十 五 で は 「 百 龍 の 聲 」 ( 七 三 八 頁 ) が 漏 れ 聞 こ え る よ う だ と い う 句 も あ る 。 音 の 他 に 潮 の 香 に 言 及 さ れ る こ と も あ る 。 そ の 場 合 、 使 用 さ れ る の は 「 腥 」 と い う 語 が 圧 倒 的 に 多 い 。 本 稿 の 対 象 作 品 の 中 で は 三 十 二 首 に 見 ら れ る 。 例 え ば 近 重 物 庵 の 七 絶 「 鳴 門 觀 潮 」 ( 七 六 五 頁 ) の 前 半 は 次 の よ う に 詠 う 。
大 村 和 人 8 亂 濤 山 立 激 雷 霆 , 亂 濤 山 の ご と く 立 ち 雷 霆 激 す , 潮 迫 海 門 龍 氣 腥 。 潮 は 海 門 に 迫 り て 龍 氣 腥 し 。 第 二 句 目 は 潮 が 海 峡 に 迫 っ て 龍 の な ま ぐ さ い に お い が あ た り に 立 ち 込 め る と 描 く 。 「 龍 氣 腥 」 は 潮 の 香 り を 海 底 に 棲 む 龍 の に お い に 見 立 て 、 鳴 門 海 峡 の 恐 ろ し さ と 幻 想 性 を 演 出 し 、 読 者 の 嗅 覚 に も 訴 え た 表 現 の 例 の 一 つ で あ る 。 三 、 擬 態 語 と 擬 音 語 鳴 門 漢 詩 で 描 か れ る 波 濤 や 渦 潮 の 表 現 に お け る も う 一 つ の 特 徴 は 、 擬 態 語 と 擬 音 語 の 多 用 を 挙 げ る こ と が で き る 。 前 掲 の 亀 田 鵬 齋 「 鳴 門 」 の 第 四 句 に 見 え た 「 喧 豗 」 は 渦 潮 の 音 が 喧 し い こ と を 描 写 す る 双 声 の 擬 音 語 で あ る が 、 唐 ・ 李 白 の 楽 府 「 蜀 道 難 」 の 中 で 蜀 の 急 流 を 描 写 し た 「 飛 湍 瀑 流 爭 喧 豗 , 砯 崖 轉 石 萬 壑 雷 ( 飛 湍 瀑 流 喧 豗 を 爭 ひ , 崖 を 砯[ う] ち 石 を 轉 じ て 萬 壑 雷[ と ど ろ] く ) 」 ( 九 ) が 早 期 の 用 例 で あ る 。 な お 、 こ の 鵬 齋 の 「 鳴 門 」 は 、 鳴 門 漢 詩 の 中 で 唯 一 、 清 人 ・ 俞 樾 ( 一 八 二 一 ― 一 九 〇 七 ) が 岸 田 吟 香 の 協 力 を 得 て 編 纂 し た 日 本 漢 詩 の 詞 華 集 『 東 瀛 詩 選 』 巻 十 に 収 録 さ れ て お り 、 鵬 齋 の 詩 風 は 李 白 に 似 る と 評 さ れ て い る ( 一 〇 ) 。 右 は 唐 詩 の 例 で あ る が 、 鳴 門 漢 詩 に 見 え る 波 濤 や 渦 潮 の 擬 態 語 と 擬 音 語 の 他 の 淵 源 と し て 、 中 国 、 特 に 漢 魏 六 朝 時 代 の 辞 賦 も 挙 げ る こ と が で き る 。 例 え ば 川 路 月 山 ( 一 八 四 四 ― 一 九 二 七 ) の 七 律 「 觀 鳴 門 落 潮 」 ( 七 三 四 頁 ) の 前 半 は 以 下 の 如 く で あ る 。 怒 潮 衝 石 沸 狂 瀾 , 怒 潮 石 を 衝 き て 狂 瀾 沸 き , 初 識 海 門 阿 淡 灘 。 初 め て 識 る 海 門 阿 淡 の 灘 を 。 漰 渤 千 渦 鳴 激 瀨 , 漰 渤 ( ほ う ぼ つ ) と し て 千 渦 は 激 瀨 に 鳴 り , 淴 泱 一 帶 走 長 湍 。 淴 泱 ( を つ あ う ) と し て 一 帶 は 長 湍 を 走 ら す 。 第 三 句 の 「 漰 渤 」 は 大 波 が 相 打 つ 音 を 描 写 す る 双 声 の 擬 音 語 、 第 四 句 の 「 淴 泱 」 は 波 浪 が 回 り 、 湧 く よ う に 起 こ る 様 子 を 描 写 す る 擬 態 語 で あ る 。 こ れ ら の 語 は 、 東 晋 時 代 の 文 人 ・ 郭 璞 ( 二 七 六 ― 三 二 四 ) 「 江 賦 」 の 三 峡 周 辺 の 揚 子 江 の 波 濤 や 渦 を 描 写 し た 次 の 一 節 を 出 典 と す る 。
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 駭 浪 暴 灑 , 驚 波 飛 薄 。 迅 澓 增 澆 , 涌 湍 疊 躍 。 砯 巖 鼓 作 , 漰 湱 澩 灂 。 㵗 㶔 𤃫𣸎 , 潰 濩 㳚 漷 。 潏 湟 淴 泱 , 㶖 㴸 㶒 瀹 。 漩 澴 滎 瀯 , 渨 㵽 濆 瀑 。 溭 淢 濜 溳 , 龍 鱗 結 絡 。 … ( 中 略 ) … 盤 渦 谷 轉 , 凌 濤 山 頹 。 陽 侯 砐 硪 以 岸 起 , 洪 瀾 涴 演 而 雲 迴 。 峾 淪 溛 瀤 , 乍 浥 乍 堆 。 豃 如 地 裂 , 豁 若 天 開 。 觸 曲 厓 以 縈 繞 , 駭 崩 浪 而 相 礧 。 鼓 㕉 窟 以 漰 渤 , 乃 湓 涌 而 駕 隈 ( 駭 浪 暴 か に 灑 ぎ , 驚 波 飛 び 薄[ せ ま] る 。 迅 澓 增[ か さ] ね て 澆[ そ そ] ぎ , 涌 湍 疊[ か さ] ね て 躍 る 。 巖 に 砯 [ ひ ょ う] と し て 鼓 作 し , 漰 湱[ ほ う く ゎ く] 澩 灂[ か く さ く] た り 。 㵗 㶔[ ひ ょ う は い] 𤃫𣸎 [ く ゎ う か い] , 潰 濩[ く ゎ い く ゎ く] 㳚 漷[ く ゎ つ く ゎ く] 。 潏 湟[ け つ く ゎ う] 淴 泱[ を つ あ う] , 㶖 㴸[ し ゅ く せ ん] 㶒 瀹[ さ ん や く] 。 漩 澴 [ せ ん け ん] 滎 瀯[ え い え い] , 渨 㵽[ ゐ る い] 濆 瀑[ ふ ん ば く] 。 溭 淢[ し ょ く よ く] 濜 溳[ じ ん ゐ ん] と し て , 龍 鱗 の ご と く 結 絡 す 。 … ( 中 略 ) … 盤 渦 谷 の ご と く 轉 じ , 凌 濤 山 の ご と く 頹 る 。 陽 侯 砐 硪[ が ふ が] と し て 以 て 岸 の ご と く 起 こ り , 洪 瀾 涴 演[ ゐ ん え ん] と し て 雲 の ご と く 迴 る 。 峾 淪[ ぎ ん り ん] 溛 瀤[ わ わ い] と し て , 乍[ た ち ま] ち 浥[ く だ] り 乍 ち 堆[ た か] し 。 豃[ か ん] と し て 地 の 裂 く る が 如 く , 豁 と し て 天 の 開 く が 若 し 。 曲 厓 に 觸 れ て 以 て 縈 繞 し , 崩 浪 を 駭[ お ど ろ] か し て 相 礧[ う] つ 。 㕉 窟 [ か ふ く つ] を 鼓 し て 以 て 漰 渤[ ほ う ぼ つ] た り , 乃 ち 湓 涌 [ ふ ん よ う] し て 隈 を 駕[ し の] ぐ ) 。 ( 『 文 選 』 一 八 五 頁 、 巻 一 二 ) こ こ に 見 ら れ る 語 句 の 意 味 を 逐 一 説 明 す る こ と は 省 略 す る が 、 右 の 一 節 で は 揚 子 江 上 流 の 波 濤 や 渦 の 荒 れ 狂 う 様 子 を 擬 音 語 や 擬 態 語 を 駆 使 し て 描 こ う と す る 。 右 に 見 え る 文 字 の 多 く は 中 国 古 典 に お い て も 常 用 の も の で は な い が 、 こ れ は 視 覚 的 効 果 だ け で な く 、 音 読 さ れ る 場 合 の 変 化 の 効 果 も 狙 っ た も の で あ り 、 漢 以 来 の 辞 賦 で 頻 繁 に 見 ら れ る 特 徴 で あ る ( 一 一 ) 。 右 の 引 用 箇 所 に 「 淴 泱 」 「 漰 渤 」 と い う 語 が 用 い ら れ て い る 。 前 掲 の 「 七 發 」 も 辞 賦 の 一 種 と 考 え ら れ て い る が 、 漢 代 の 辞 賦 の 特 徴 の 一 つ と し て 、 一 つ の 対 象 を 様 々 な 角 度 か ら 、 多 様 な 表 現 を 駆 使 し て 描 き 尽 く そ う と す る こ と が 挙 げ ら れ る ( 一 二 ) 。 こ の よ う に 、 辞 賦 は 鳴 門 漢 詩 に と っ て 表 現 や 語 彙 の 供 給 源 で あ っ た 。 し か も そ れ ら の 辞 賦 は 『 文 選 』 に 収 録 さ
大 村 和 人 10 れ た 作 品 が 多 い 。 次 項 以 降 で も し ば し ば 鳴 門 漢 詩 の 特 徴 の 淵 源 と し て 辞 賦 作 品 を 引 用 す る こ と に な る で あ ろ う 。 な お 、 こ の こ と と 関 連 し て 、 「 兮 」 と い う 文 字 が 使 わ れ る 場 合 が あ る 。 用 例 を 列 挙 し よ う 。 ・ 森 春 濤 「 鳴 門 觀 日 出 」 ( 七 一 五 頁 ) 日 出 果 兮 如 照 妖 , 日 出 で て 果 た し て 妖 を 照 ら す が 如 く , 鳴 門 氣 勢 佩 弓 弰 。 鳴 門 の 氣 勢 弓 弰 に 佩 ぶ 。 波 濤 紅 迸 將 何 譬 , 波 濤 に 紅 迸 る 將 た 何 に か 譬 へ ん , 一 詔 輪 臺 射 赤 蛟 。 一 詔 の 輪 を 臺 ( か か ) げ 赤 蛟 を 射 る 。 ・ 奥 田 抱 生 「 春 濤 先 生 鳴 門 觀 濤 小 照 」 ( 七 二 二 頁 ) ( 前 略 ) 翁 兮 虬 髯 颯 森 爽 , 翁 や 虬 髯 颯 と し て 森 爽 , 掀 天 蹴 地 何 壯 哉 , 天 を 掀 ( か か ) げ 地 を 蹴 る こ と 何 ぞ 壯 な る や , 嗚 呼 掀 天 蹴 地 何 壯 哉 。 嗚 呼 天 を 掀 ( か か ) げ 地 を 蹴 る こ と 何 ぞ 壯 な る や 。 前 者 は 鳴 門 海 峡 の 日 の 出 を 幻 想 的 に 描 き 出 し 、 後 者 は 森 春 濤 の 豪 傑 ぶ り を 称 賛 す る 。 「 兮 」 は 助 辞 で 前 者 の よ う に 訓 読 し な い 場 合 も あ れ ば 、 感 嘆 詞 と し て 「 や 」 と 読 む 場 合 も あ る 。 い ず れ に せ よ こ れ は 先 秦 時 代 の 韻 文 に 見 ら れ る 助 辞 で 、 特 に 「 離 騒 」 な ど 『 楚 辭 』 の 収 録 作 品 で 多 用 さ れ る 。 こ の こ と か ら 「 兮 」 が 用 い ら れ た 韻 文 は 「 騒 體 」 と も 呼 ば れ る が 、 ど の よ う な 効 果 あ る い は 機 能 が あ る の か 。 右 に 挙 げ た 『 楚 辭 』 の 収 録 作 品 の 多 く は 戦 国 末 期 の 楚 の 忠 臣 ・ 屈 原 ( 前 三 三 九 ― ? ) の 作 品 と さ れ 、 祖 国 へ の 忠 義 が 報 わ れ ず 、 世 に 受 け 入 れ ら れ な い 彼 の 鬱 屈 を 詠 っ た も の と 長 ら く 解 釈 さ れ て き た ( 一 三 ) 。 更 に 、 内 容 に お け る 特 徴 の 一 つ は そ の 幻 想 性 で あ る 。 「 離 騒 」 「 九 歌 」 等 、 『 楚 辭 』 の 代 表 作 品 は 数 多 く の 神 霊 が 跋 扈 す る 世 界 を 舞 台 と し 、 現 世 的 ・ 日 常 的 な 内 容 を 基 調 と す る 『 詩 經 』 と 好 対 照 を な す と 評 さ れ る 。 そ し て 『 楚 辭 』 の 収 録 作 品 は 辞 賦 の 祖 と 位 置 付 け ら れ る 。 「 兮 」 は こ れ ら の 作 品 に 用 い ら れ た 助 辞 で あ り 、 そ れ を 情 景 描 写 や 幻 想 的 な 描 写 に 用 い れ ば 『 楚 辭 』 の 持 つ よ う な 太 古 の 浪 漫 性
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 を 演 出 し 、 人 間 の 描 写 に 用 い れ ば 屈 原 の よ う な 剛 直 さ を 加 味 で き る た め 、 唐 宋 時 代 以 降 の 詩 歌 で も 用 い ら れ る こ と が あ る ( 一 四 ) 。 前 者 の 森 春 濤 の 作 品 で は 、 朝 に 上 っ た 太 陽 が 海 中 に 棲 む 神 怪 た ち ( 「 妖 」 ) を 照 ら す と い う 句 に 「 兮 」 が 用 い ら れ て お り 、 描 写 に お い て 幻 想 性 に 古 の 浪 漫 性 を 加 味 す る 。 後 者 の 奥 田 抱 生 の 作 品 で は 、 森 春 濤 を 称 え る 句 に 用 い 、 彼 の 屈 原 の よ う な ス ケ ー ル の 大 き な 傑 物 ぶ り を 強 調 す る 。 以 上 の よ う に 、 波 濤 や 渦 潮 等 の 海 の 描 写 は 六 朝 期 ま で の 辞 賦 や 唐 詩 の 表 現 を 踏 襲 し て い る 。 ② 巨 視 的 な 視 点 第 一 項 は 鳴 門 漢 詩 に 必 須 の 特 徴 と 言 っ て 良 い が 、 本 項 以 降 の 特 徴 は そ う で は な い 。 前 項 で は 渦 潮 や 波 濤 と い っ た 微 視 的 な 描 写 に 焦 点 を 当 て た が 、 鳴 門 だ け で な く 周 囲 の 地 域 ま で を も 俯 瞰 し た 、 巨 視 的 な 描 写 の 例 も あ る 。 更 に は 讃 岐 や 土 佐 、 そ し て 紀 州 ま で も 視 野 に 収 め た 作 品 も あ る 。 前 掲 の 篠 崎 三 島 の 冒 頭 で は 鳴 門 海 峡 の 北 側 に 位 置 す る 淡 路 島 と 南 側 の 阿 波 を 対 句 で 詠 っ て い た が 、 こ の よ う に マ ク ロ の 視 点 で 海 峡 の 位 置 を 描 写 す る 作 品 は 、 渦 潮 や 波 濤 の 描 写 ほ ど で は な い に せ よ 、 鳴 門 漢 詩 に 多 い 。 本 節 で は そ の よ う な 特 徴 を 幾 つ か 挙 げ よ う 。 一 、 ス ケ ー ル の 大 き な 描 写 鳴 門 漢 詩 に 目 立 つ 特 徴 の 一 つ と し て 、 周 囲 の 地 域 だ け で な く 、 「 乾 坤 ( 天 地 ) 」 や 「 天 地 」 に 言 及 す る 作 品 が 少 な く な い こ と が 挙 げ ら れ 、 今 回 の 対 象 作 品 の 中 で は 二 十 八 首 で 確 認 で き る 。 前 掲 の 篠 崎 三 島 の 冒 頭 の 二 句 に お い て も 「 天 」 と 「 地 」 が 対 句 に 用 い ら れ て い た 。 こ こ で は 前 掲 ・ 海 量 法 師 の 七 律 「 鳴 門 」 の 全 文 を 挙 げ よ う 。 奇 巌 一 帶 橫 鳴 門 , 奇 巌 一 帶 鳴 門 に 橫 た は り , 驚 浪 奔 騰 帆 影 飜 。 驚 浪 奔 騰 し て 帆 影 飜 る 。 飛 響 咽 如 猛 獸 吼 , 飛 響 の 咽 ぶ こ と 猛 獸 の 吼 ゆ る が 如 く , 急 流 洄 似 亂 雲 屯 。 急 流 洄 る こ と 亂 雲 の 屯 す る に 似 た り 。 鰲 身 覆 日 傷 心 日 , 鰲 身 日 を 覆 ひ 心 日 を 傷 ( や ぶ )
大 村 和 人 12 り , 蜃 氣 連 空 消 旅 魂 。 蜃 氣 空 に 連 な り 旅 魂 を 消 す 。 海 天 南 北 三 千 里 , 海 天 南 北 三 千 里 , 風 高 潮 勢 動 乾 坤 。 風 高 く し て 潮 勢 乾 坤 を 動 か す 。 ( 一 五 ) 作 品 の 前 半 は 作 者 が 乗 る 舟 が 荒 れ 狂 う 鳴 門 海 峡 を 渡 る 情 景 を 描 写 す る 。 第 五 句 の 「 鰲 」 は 大 海 亀 。 唐 の 王 維 ( 六 九 九 ― 七 六 一 ) が 日 本 に 帰 国 す る 阿 部 仲 麻 呂 の 送 別 の 宴 で 彼 の た め に 制 作 し た 五 言 排 律 「 送 秘 書 晁 監 還 日 本 國 」 に 見 え る 。 こ の 作 品 に は 仲 麻 呂 が こ れ か ら 渡 る で あ ろ う 海 を 描 い た 箇 所 に 「 鼇 身 映 天 黑 , 魚 眼 射 波 紅 ( 鼇 身 天 に 映 じ て 黑 く , 魚 眼 波 を 射 て 紅 な り ) 」 ( 一 六 ) と い う 二 句 が あ り 、 海 の 危 険 の 一 つ と し て 、 「 鼇 」 の 存 在 が 挙 げ ら れ て い る 。 「 鰲 」 は 「 鼇 」 の 異 体 字 で あ り 、 指 す 対 象 は 同 一 で あ る 。 「 傷 心 日 」 は 第 六 句 と の 対 句 で あ る こ と を 考 慮 し て 「 心 日 を 傷 る 」 と し か 読 め な い 。 「 心 日 」 は 先 例 が 無 く 、 解 釈 が 難 し い が 、 ひ と ま ず 「 心 目 ( 内 心 の 意 ) 」 の 誤 字 と し て 解 釈 し て お く 。 第 六 句 の 「 蜃 氣 」 は 「 蜄 氣 」 と も 記 さ れ る が 、 大 蛤 の 吐 く 気 の こ と 。 『 史 記 』 「 天 官 書 」 を 出 典 と す る ( 一 七 ) 。 こ の 頸 聯 は 海 に 棲 息 す る 怪 物 や そ こ で 発 生 す る 怪 異 現 象 を 、 中 国 古 典 作 品 に 見 え る 海 に 関 す る 題 材 を 用 い 、 作 者 の 心 が 揺 さ ぶ ら れ る こ と を 描 く 。 そ し て 末 句 で は 、 風 が 高 く 舞 い 上 が っ て 鳴 門 の 渦 潮 の 勢 い は 乾 ( 天 ) と 坤 ( 地 ) を 揺 り 動 か さ ん ば か り で あ る と 詠 っ て 作 品 を 締 め く く る 。 こ の よ う に 天 も 地 も 視 野 に 収 め て 描 い た 作 品 は 鳴 門 漢 詩 に 少 な く な い 。 こ の 他 、 巨 視 的 視 点 に よ っ て 描 か れ 、 別 の 特 徴 を 有 す る 作 品 を 挙 げ よ う 。 こ こ で は 井 坂 松 石 ( 一 七 四 五 ― 一 八 一 九 ) の 古 詩 「 鳴 門 歌 送 藪 祭 酒 」 ( 六 九 七 頁 ) を 取 り 上 げ る 。 長 編 で あ る た め 、 最 初 の 換 韻 が 行 わ れ る ま で の 第 一 段 十 句 の み を 引 用 す る 。 大 海 東 南 不 可 測 , 大 海 の 東 南 測 る べ か ら ず , 尾 閭 洩 之 四 州 北 。 尾 閭 之 を 洩 ら す 四 州 の 北 。 兩 岸 之 山 束 成 門 , 兩 岸 の 山 束 ね て 門 を 成 し , 中 有 萬 雷 鳴 不 息 。 中 に 萬 雷 の 鳴 き て 息 ま ざ る 有 り 。 潮 控 地 軸 走 南 溟 , 潮 は 地 軸 を 控 ( ひ ) き て 南 溟 に 走 り , 巌 仰 天 閽 朝 北 極 。 巌 は 天 閽 を 仰 ぎ て 北 極 に 朝 す 。
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 飛 嶋 雲 崩 鵬 翼 明 , 飛 嶋 雲 崩 れ て 鵬 翼 明 ら か に , 大 毛 山 出 鰲 身 黑 。 大 毛 山 出 で 鰲 身 黑 し 。 層 浪 頹 波 湧 其 間 , 層 浪 頹 波 其 の 間 に 湧 き , 霧 捲 煙 騫 海 若 匿 。 霧 捲 き 煙 騫 げ 海 若 匿 る 。 第 二 句 の 「 尾 閭 」 は 『 莊 子 』 「 秋 水 篇 」 に 見 え る 。 天 下 之 水 , 莫 大 於 海 。 萬 川 歸 之 , 不 知 何 時 止 而 不 盈 。 尾 閭 泄 之 , 不 知 何 時 已 而 不 虛 。 春 秋 不 變 , 水 旱 不 知 。 此 其 過 江 河 之 流 , 不 可 爲 量 數 ( 天 下 の 水 は , 海 よ り も 大 な る は 莫 し 。 萬 川 之 に 歸 し , 何 の 時 に 止 む か を 知 ら ざ れ ど も 盈 た ず 。 尾 閭 之 を 泄 ら し , 何 の 時 に 已 む か を 知 ら ざ れ ど も 虛 な ら ず 。 春 秋 に も 變 は ら ず , 水 旱 を も 知 ら ず 。 此 れ 其 の 江 河 の 流 れ に 過 ぐ る こ と , 量 數 を 爲 す べ か ら ず ) 。 ( 一 八 ) 「 天 下 の 水 で 、 海 よ り 大 き な も の は 無 い 。 全 て の 河 川 が こ こ に 流 れ 込 み 、 い つ 止 む と は 分 か ら な い が 、 海 が 溢 れ る こ と は な い 。 『 尾 閭 』 と い う 大 き な 穴 が 海 中 で 開 い て お り 、 そ こ か ら 海 水 が 漏 れ て い き 、 そ れ が い つ 止 む か は 分 か ら な い が 、 海 が 干 上 が る こ と は 無 い 。 以 上 の よ う な 状 況 は 季 節 に よ っ て 変 わ る こ と も 無 け れ ば 、 洪 水 や 旱 魃 に よ っ て 変 わ る こ と も 無 い 。 こ の 海 が 黄 河 や 揚 子 江 の 流 れ よ り も 大 き い こ と は 、 量 る こ と が で き な い ほ ど だ 」 。 こ こ で 言 及 さ れ る 「 尾 閭 」 と は 、 海 中 の 大 き な 穴 を 指 し 、 そ こ か ら 海 水 が 漏 れ る と さ れ て い る 。 そ し て こ の 井 坂 松 石 の 作 品 で は 、 鳴 門 の 渦 潮 こ そ が そ れ で あ る と 詠 う 。 鳴 門 漢 詩 で 「 尾 閭 」 の 語 は 十 一 首 に 見 え る 。 第 四 句 に も 「 雷 」 の 比 喩 が 見 ら れ る が 、 こ こ で は 第 五 ・ 六 句 に も 注 目 し よ う 。 第 五 句 の 「 地 軸 」 は 大 地 を 支 え る 心 棒 の こ と 。 晋 の 木 華 の 「 海 賦 」 は 夜 明 け 頃 の 海 洋 の 様 子 を 次 の よ う に 描 写 す る 。 於 是 鼓 怒 , 溢 浪 揚 浮 。 更 相 觸 搏 , 飛 沫 起 濤 。 狀 如 天 輪 , 膠 戾 而 激 轉 , 又 似 地 軸 , 挺 拔 而 爭 迴 ( 是 に 於 て 鼓 怒 し , 溢 浪 揚 浮 す 。 更 ご も 相 觸 搏 し , 沫 を 飛 ば し 濤 を 起 こ す 。 狀 は 天 輪 の 膠 戾 し て 激 轉 す る が 如 く , 又 た 地 軸 の 挺 拔 し て 爭 迴 す る に 似 た り ) 。 ( 『 文 選 』 一 八 〇 頁 、 巻 一 二 ) 「 そ し て 海 面 は 揺 れ 動 き 、 波 は 溢 れ て 盛 り 上 が る 。 波 は 代 わ る 代 わ る ぶ つ か り 合 い 、 し ぶ き を 飛 ば し て 大 波 を 起 こ す 。 そ の 様 子 は あ た か も 天 が 激 し く 回 転 し て い る よ う で あ り 、 ま た
大 村 和 人 14 地 軸 が 抜 き 出 て 競 う よ う に 回 っ て い る よ う で も あ る 」 。 こ の 「 天 輪 」 に 対 し て 李 善 注 は 『 呂 氏 春 秋 』 の 「 天 地 如 車 輪 , 終 則 復 始 ( 天 地 は 車 輪 の 如 く , 終 は れ ば 則 ち 復 た 始 ま る ) 」 を 引 用 し て お り 、 こ の 語 は 天 そ の も の を 意 味 す る と 考 え て 良 い で あ ろ う 。 「 地 軸 」 に 対 し て 李 注 は 『 河 圖 括 地 象 』 の 「 地 下 有 四 柱 , 廣 十 萬 里 , 有 三 千 六 百 軸 ( 地 下 に 四 柱 有 り , 廣 さ 十 萬 里 , 三 千 六 百 軸 有 り ) 」 と い う 記 事 を 引 用 す る 。 『 河 圖 括 地 象 』 な る 書 物 は 『 隋 書 』 「 經 籍 志 」 に も 見 え な い が 、 緯 書 で あ ろ う と 推 測 さ れ る 。 木 華 の 右 の 賦 で は 、 海 で 幾 つ も 揚 が る 高 波 を 地 軸 が 何 本 も 地 面 か ら 抜 き 出 て き た よ う だ と 表 現 し て い る 。 「 地 軸 」 は 鳴 門 漢 詩 の 中 で 十 一 首 に 見 え る 。 井 坂 松 石 の 詩 の 第 五 句 で は 、 引 き 抜 か れ た 地 軸 の よ う に 潮 が 波 を 揚 げ な が ら 「 南 溟 」 に 流 れ る と 詠 う 。 こ の 「 南 溟 」 は 「 南 冥 」 と も 表 記 さ れ 、 南 方 の 暗 い 海 を 意 味 し 、 『 莊 子 』 の 首 章 「 逍 遙 遊 篇 」 の 冒 頭 に 由 来 す る 。 北 冥 有 魚 , 其 名 爲 鯤 。 鯤 之 大 , 不 知 其 幾 千 里 也 。 化 而 爲 鳥 , 其 名 爲 鵬 。 鵬 之 背 , 不 知 其 幾 千 里 也 。 怒 而 飛 , 其 翼 若 垂 天 之 雲 。 是 鳥 也 , 海 運 則 將 徙 於 南 冥 。 南 冥 者 , 天 池 也 ( 北 冥 に 魚 有 り , 其 の 名 を 鯤 と 爲 す 。 鯤 の 大 な る , 其 の 幾 千 里 な る を 知 ら ず 。 化 し て 鳥 と 爲 り , 其 の 名 を 鵬 と 爲 す 。 鵬 の 背 は , 其 の 幾 千 里 な る を 知 ら ず 。 怒 り て 飛 べ ば , 其 の 翼 は 垂 天 の 雲 の 若 し 。 是 の 鳥 や , 海 運 れ ば 則 ち 將 に 南 冥 に 徙 ら ん と す 。 南 冥 は , 天 の 池 な り ) 。 ( 『 莊 子 集 釋 』 二 頁 、 巻 一 上 ) 「 北 の 暗 い 海 に 魚 が お り 、 そ の 名 を 鯤 と い う 。 鯤 の 大 き さ と 言 え ば 、 何 千 里 あ る か 分 か ら な い ほ ど で あ る 。 そ の 鯤 が 化 け て 鳥 と な れ ば 、 そ の 名 を 鵬 と い う 。 鵬 の 背 は 何 千 里 あ る か 分 か ら な い 。 そ の 鵬 が 奮 い 立 っ て 飛 び 上 が れ ば 、 そ の 翼 は 天 に 広 が っ た 雲 の よ う で あ る 。 こ の 鳥 は 、 海 が 動 き 出 せ ば 南 の 暗 い 海 に 移 動 し よ う と す る 。 南 の 暗 い 海 と は 、 天 の 池 で あ る 」 。 こ れ は 『 莊 子 』 の 冒 頭 で あ る 。 北 の 暗 い 海 に 棲 む 巨 大 な 魚 で あ る 鯤 が 鵬 と い う 巨 大 な 鳥 に 変 化 し 、 飛 び 立 つ が 、 そ の 目 的 地 が 「 南 冥 ( 溟 ) 」 な の で あ る 。 『 莊 子 』 で は こ れ 以 上 「 南 冥 」 に つ い て は 触 れ ら れ な い の で そ の 詳 細 は 不 明 で あ る が 、 井 坂 松 石 の 詩 で こ の 空 想 上 の 地 名 を 用 い た の は 、 『 莊 子 』 の 右 の 寓 話 が 読 者 の 脳 裏 に 想 起 さ せ 、 ス ケ ー ル の 大 き な 海 洋 を
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 想 像 さ せ る た め で あ ろ う 。 こ の 「 鵬 」 は 井 坂 松 石 の 詩 の 引 用 部 分 の 第 七 句 に も 見 え 、 「 飛 島 を 覆 っ て い た 雲 が 崩 れ る よ う に 晴 れ 、 鵬 の 翼 が は っ き り と 見 え た 」 と 詠 わ れ て い る 。 第 五 句 と 対 句 を 成 す 第 六 句 に 見 え る 「 天 閽 」 は 天 帝 の 護 衛 。 『 楚 辭 』 「 遠 遊 」 に 「 命 天 閽 其 開 關 兮 ( 天 閽 に 命 じ て 其 れ 關 を 開 か し む ) 」 ( 一 九 ) と い う 一 句 が あ り 、 漢 ・ 王 逸 の 注 は 「 告 帝 衛 臣 啓 禁 門 也 ( 帝 の 衛 臣 に 告 げ て 禁 門 を 啓 か し む る な り ) 」 と い う 。 海 面 ( 「 地 軸 」 ) に 焦 点 を 当 て た 第 五 句 に 対 し 、 こ の 第 六 句 で は 海 峡 の 周 囲 の 巌 石 が 天 ( 「 天 閽 」 ) を 仰 ぐ か の よ う に 聳 え 、 北 極 星 に 臣 下 の 礼 を 取 っ て い る か の よ う で あ る と 表 現 す る 。 第 七 句 で は 天 を 飛 ぶ 伝 説 の 大 鳥 を 描 き 、 第 八 句 で は 前 掲 の 王 維 の 作 品 に 見 え た 「 鰲 」 が 大 毛 島 の あ た り か ら 海 中 に 黒 々 と し た 姿 を 現 す こ と が 描 か れ 、 視 点 が 上 ( 天 ) と 下 ( 海 ) 両 方 に 向 き 、 鳴 門 海 峡 を 広 範 囲 に 、 か つ 幻 想 的 に 描 い て い る 。 第 十 句 の 「 海 若 」 は 後 述 。 以 上 の よ う に 、 鳴 門 海 峡 を 詠 っ た 漢 詩 に お い て 天 地 を 視 野 に 収 め た ス ケ ー ル の 大 き な 描 写 が 多 い が 、 そ れ ら は 『 莊 子 』 や 漢 魏 六 朝 時 代 の 辞 賦 に 由 来 す る 。 二 、 海 と 老 荘 思 想 こ れ ま で 鳴 門 漢 詩 の 中 の 海 峡 の 描 写 に 顕 著 に 見 ら れ る 様 々 な 表 現 を 取 り 上 げ 、 併 せ て そ の 典 故 も 指 摘 し て き た が 、 『 莊 子 』 を 出 典 と す る も の が 目 立 っ た 。 こ の 書 で は ス ケ ー ル の 大 き な 寓 話 を 用 い て 読 者 に 通 常 の 世 界 の 物 差 し で は 測 れ な い 世 界 の 存 在 を 示 す こ と が 多 い が ( 二 〇 ) 、 右 の 「 逍 遙 遊 篇 」 冒 頭 も そ の 代 表 例 の 一 つ と し て 数 え ら れ る 。 「 鯤 」 や 「 鵬 」 等 、 虚 構 の 魚 や 鳥 の 途 方 も な い 大 き さ に 目 を 奪 わ れ が ち で あ る が 、 そ の 舞 台 が 海 洋 で あ る こ と は 注 意 す べ き で あ る 。 中 国 文 化 に お い て 海 は 伝 統 的 に 暗 い 、 危 険 な 場 所 と し て 描 か れ て き た し ( 二 一 ) 、 老 荘 と 対 立 し た 儒 家 に お い て 海 は 一 般 社 会 か ら 離 れ た 辺 境 と し て イ メ ー ジ さ れ て き た 。 『 論 語 』 「 公 冶 長 」 は 孔 子 の 「 道 不 行 , 乘 桴 浮 于 海 ( 道 行 は れ ず , 桴 に 乘 り て 海 に 浮 か ば ん ) 」 ( 二 二 ) と い う 言 葉 を 記 録 す る 。 孔 子 は 彼 の 理 想 と す る 道 が 現 実 に は 実 行 さ れ な い こ と を 嘆
大 村 和 人 16 き 、 い か だ に 乗 っ て 海 に 浮 か ぼ う と 言 う 。 現 実 の 社 会 で 我 が 主 張 が 受 け 入 れ ら れ な か っ た 後 に 行 く 最 果 て の 場 所 が 「 海 」 な の で あ る 。 「 四 海 」 以 外 で 「 海 」 と い う 語 の 『 論 語 』 に お け る 用 例 は 右 の 例 を 含 め て 二 例 し か な く 、 し か も 両 方 と も 中 原 か ら 離 れ た 地 と し て 言 及 さ れ る ( も う 一 例 は 「 微 子 」 の 第 九 条 ) 。 こ の 『 論 語 』 以 外 に も 儒 教 経 典 に お い て 「 四 海 」 「 海 内 」 以 外 の 「 海 」 の 用 例 は 多 く な く 、 概 ね 文 化 の 中 心 か ら 遠 く 離 れ た 地 の 果 て と い う 負 の イ メ ー ジ で 捉 え ら れ て お り 、 そ の 思 想 の 核 心 と 深 く は 関 わ ら な い 。 そ れ に 対 し て 、 右 の よ う に 老 荘 思 想 に お い て 「 海 」 は 正 の 意 味 を 持 つ 重 要 な 舞 台 の 一 つ で あ る 。 特 に 現 実 や 人 間 社 会 の 矮 小 さ と 対 比 す る た め に 広 大 な 海 を 描 く た め 、 後 世 の 文 人 が 海 を 描 く 際 に 貴 重 な 資 料 を 提 供 す る こ と に な っ た 。 そ の こ と は 鳴 門 漢 詩 に お い て も 同 様 で あ る 。 こ れ ま で に 挙 げ た 作 品 の 他 に も 、 広 田 澹 洲 ( 一 八 六 三 ― 一 九 一 八 ) の 七 絶 「 送 岐 山 翁 遊 鳴 門 」 の 後 半 が 「 筆 端 巧 刮 造 化 窟 , 捲 起 鳴 門 百 尺 濤 ( 筆 端 巧 み に 刮[ ひ ら] く 造 化 の 窟 , 捲 き 起 こ す 鳴 門 百 尺 の 濤 を ) 」 ( 七 四 四 頁 ) と 詠 い 、 老 荘 思 想 で 天 地 自 然 の 大 い な る は た ら き を 意 味 す る 「 造 化 」 と い う 語 を 用 い て 、 鳴 門 の 渦 潮 こ そ そ の 表 れ で あ る と い う の も 、 海 と 老 荘 思 想 の 関 係 へ の 理 解 に 由 来 す る で あ ろ う 。 本 稿 で は 次 項 以 降 に お い て も 『 莊 子 』 に 度 々 言 及 す る こ と に な る で あ ろ う 。 ③ 動 物 や 神 怪 鳴 門 漢 詩 の 舞 台 は 海 な の で 、 水 棲 生 物 に 触 れ ら れ る こ と も 多 い 。 そ れ だ け で な く 、 想 像 上 の 生 物 や 怪 物 、 神 仙 等 に 言 及 す る こ と も 珍 し く な い 。 鳴 門 漢 詩 に 顕 著 な 特 徴 と し て 、 こ れ ら の 点 も 挙 げ る こ と が で き る 。 一 、 鳥 獣 ・ 水 棲 生 物 ま ず は 鳴 門 漢 詩 に 描 か れ た 鳥 獣 や 水 棲 生 物 を 見 よ う 。 こ こ で は 実 景 と し て 作 者 が 目 に し た 可 能 性 の あ る も の も あ れ ば 、 海 や 河 川 を 描 い た 有 名 な 中 国 古 典 に 描 か れ た 生 物 を 取 り 上 げ た 可 能 性 の あ る も の も あ る 。
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 ま ず 水 棲 生 物 の 中 で 魚 が 多 い こ と は 当 然 予 想 さ れ る で あ ろ う が 、 鳴 門 海 峡 の 特 産 の 一 つ は 「 タ イ 」 で あ り 、 実 際 に 鳴 門 漢 詩 で も し ば し ば 描 か れ る 。 但 し 、 後 述 す る よ う に 、 描 か れ る の は そ れ の 海 を 泳 ぐ 姿 で は な く 、 酒 肴 と し て 調 理 さ れ 、 宴 で 提 供 さ れ る 姿 で あ る こ と が 多 い 。 こ の こ と に つ い て は 「 地 元 民 と 特 産 品 」 の 項 目 で 述 べ る 。 「 タ イ 」 の 他 に は 「 魚 」 と い う 総 称 が 用 い ら れ た り 、 「 鯨 」 に 言 及 さ れ た り す る こ と も あ る ( 十 一 首 ) 。 更 に は 、 「 鰐 」 や 「 鱷 魚 」 、 和 語 で い う 「 ワ ニ 」 や 、 「 海 豨 」 す な わ ち 「 カ ワ イ ル カ 」 に 言 及 す る 作 品 も あ る 。 こ こ で は 前 者 の 例 と し て 、 前 塚 渭 南 ( 一 八 五 一 ― 一 八 九 五 ) の 「 次 春 濤 翁 德 島 留 別 韻 送 其 遊 豫 讚 諸 州 」 ( 七 二 四 ― 五 頁 ) を 見 よ う 。 單 衫 曾 賦 函 關 雨 , 單 衫 曾 て 賦 す 函 關 の 雨 , 孤 枕 還 聞 蘇 峽 猿 。 孤 枕 還 た 聞 く 蘇 峽 の 猿 。 老 氣 橫 空 游 倍 壯 , 老 氣 空 に 橫 ( ほ し い ま ま ) に し て 游 は 壯 を 倍 ( ま ) す , 更 呵 鮫 鰐 渡 鳴 門 。 更 に 鮫 鰐 を 呵 し て 鳴 門 を 渡 る 。 こ の 作 品 は 題 名 に い う と お り 、 阿 波 か ら 讃 岐 や 伊 予 に 赴 く 森 春 濤 が 人 々 に 贈 っ た 詩 歌 に 次 韻 し た 作 品 を 前 塚 渭 南 が 制 作 し 、 春 濤 へ の 送 別 の 作 品 と し た も の で あ る 。 前 二 句 で は 日 本 の 有 名 な 名 勝 を 春 濤 が 詠 っ た こ と に 言 及 し て 彼 が 日 本 全 国 を 飛 び 回 っ て い る こ と を 描 き 、 第 三 句 で は 彼 が 老 い て も 意 気 盛 ん な こ と を 称 賛 し 、 末 句 で は そ の よ う な 彼 の こ と だ か ら 、 こ れ か ら 鳴 門 海 峡 を 渡 る 際 に も 、 「 鮫 鰐 」 を 叱 り つ け て 退 け る で あ ろ う と 詠 い 収 め る 。 こ の 作 品 は 実 景 を 描 写 し た と い う 性 質 は 薄 い が 、 「 鮫 鰐 」 が 鳴 門 海 峡 に い る と 詠 わ れ て い る 。 漢 文 で 書 か れ た 阿 波 の 藩 撰 地 誌 『 阿 波 志 』 巻 三 に お け る 鳴 門 地 域 の 「 土 産 」 「 異 産 」 の 項 目 に は 現 地 で 確 認 さ れ た と い う 水 棲 生 物 が 列 挙 さ れ て い る が 、 「 土 産 」 に は 「 沙 魚 ( フ カ ) 」 が 、 「 異 産 」 に は 「 虎 頭 鯊 ( ネ コ フ カ ) 」 「 犁 頭 鯊 ( サ カ タ サ メ ) 」 が 挙 げ ら れ て い る も の の 、 「 ワ ニ 」 と 思 し き 水 棲 生 物 は 見 え な い 。 ま た 、 「 鮫 」 は 「 ミ ズ チ 」 を 指 す 場 合 も あ り 、 前 塚 渭 南 の 作 品 に 見 え る こ の 語 が 「 フ カ 」 「 ミ ズ チ 」 の い ず れ を 指 す の か は こ こ で は 立 ち 入 ら な い 。 な ぜ な ら 、 「 鮫 鰐 」 は 西 晋 ・ 左 思 ( 二 五 二 ? ― 三 〇 六 ? ) 「 呉 都 賦 」 の 揚 子 江 の 描 写 に 見 え る 水 棲 生 物 で あ
大 村 和 人 18 り 、 前 塚 渭 南 の 作 品 で 生 態 学 的 な 正 確 さ を 期 し て 取 り 上 げ ら れ た と い う よ り は 、 右 の 先 行 作 品 を 踏 襲 し た 性 質 が 強 い と 考 え ら れ る か ら で あ る 。 こ こ で は 「 呉 都 賦 」 の 揚 子 江 の 中 あ る い は 周 辺 に 棲 息 す る 生 物 を 列 挙 し た 箇 所 を 挙 げ よ う 。 於 是 乎 長 鯨 吞 航 , 修 鯢 吐 浪 。 躍 龍 騰 蛇 , 鮫 鯔 琵 琶 , 王 鮪 鯸 鮐 , 鮣 龜 鱕 䱜 , 烏 賊 擁 劔 , 䵶 鼊 鯖 鰐 , 涵 泳 乎 其 中 。 葺 鱗 鏤 甲 , 詭 類 舛 錯 。 泝 洄 順 流 , 噞 喁 沈 浮 。 鳥 則 鵾 雞 鸀 鳿 , 鸘 鵠 鷺 鴻 。 鶢 鶋 避 風 , 候 鴈 造 江 。 鸂 䳵 鷛 𪆂 , 鶄 鶴 鶖 鶬 , 鸛 鷗 鷁 鸕 , 氾 濫 乎 其 上 。 湛 淡 羽 儀 , 隨 波 參 差 。 理 翮 整 翰 , 容 與 自 翫 。 雕 啄 蔓 藻 , 刷 盪 漪 瀾 。 魚 鳥 聱 耴 , 萬 物 蠢 生 。 芒 芒 黖 黖 , 慌 罔 奄 欻 , 神 化 翕 忽 , 函 幽 育 明 。 窮 性 極 形 , 盈 虛 自 然 。 蚌 蛤 珠 胎 , 與 月 虧 全 。 巨 鰲 贔 㞒 , 首 冠 靈 山 。 大 鵬 繽 翻 , 翼 若 垂 天 。 振 盪 汪 流 , 雷 抃 重 淵 。 殷 動 宇 宙 , 胡 可 勝 原 ( 是 に 於 て か 長 鯨 航 を 吞 み , 修 鯢 浪 を 吐 く 。 躍 龍 騰 蛇[ や く り ゅ う と う じ ゃ] , 鮫 鯔 琵 琶[ か う し び は] , 王 鮪 鯸 鮐[ わ う ゐ こ う い] , 鮣 龜 鱕 䱜[ い ん き は ん さ く] , 烏 賊 擁 劔[ う ぞ く よ う け ん] , 䵶 鼊 鯖 鰐[ こ う へ き せ い が く] あ り , 其 の 中 に 涵 泳 す 。 葺 鱗 鏤 甲[ し ふ り ん ろ う か ふ] , 詭 類 舛 錯[ き る ゐ せ ん さ く] し , 泝 洄 し て 流 れ に 順 ひ , 噞 喁[ け ん ぎ ょ う] し て 沈 浮 す 。 鳥 は 則 ち 鵾 雞 鸀 鳿[ こ ん け い し ょ く ぎ ょ く] , 鸘 鵠 鷺 鴻[ そ う こ く ろ こ う] あ り 。 鶢 鶋[ ゐ ん き ょ] 風 を 避 け , 候 鴈[ こ う が ん] 江 に 造[ い た] る 。 鸂 䳵 鷛 𪆂[ け い ち ょ く よ う き ょ] , 鶄 鶴 鶖 鶬[ せ い か く し う さ う] , 鸛 鷗 鷁 鸕[ く ゎ ん お う げ き ろ] あ り , 其 の 上 に 氾 濫 す 。 湛 淡 た る 羽 儀 , 波 に 隨 ひ て 參 差 た り 。 翮 を 理 め 翰 を 整 へ , 容 與 と し て 自 ら 翫 ぶ 。 蔓 藻 を 雕 啄 し , 漪 瀾 に 刷 盪 す 。 魚 鳥 聱 耴[ が う き つ] し , 萬 物 蠢 生 す 。 芒 芒 黖 黖[ ば う ば う き き] , 慌 罔 奄 欻[ く ゎ う ま う え ん こ つ] , 神 化 翕 忽[ き ふ こ つ] と し て , 幽 を 函 し 明 を 育 む 。 性 を 窮 め 形 を 極 め , 盈 虛 自 然 な り 。 蚌 蛤[ ば う か ふ] の 珠 胎 , 月 と 虧 全[ き ぜ ん] す 。 巨 鰲 贔 㞒 し て , 首 に 靈 山 を 冠 す 。 大 鵬 繽 翻 と し て , 翼 は 垂 天 の 若 し 。 汪 流 に 振 盪 し , 雷 の ご と く 重 淵 に 抃 ち , 殷 に 宇 宙 を 動 か す , 胡 ぞ 原[ た ず] ぬ る に 勝 へ ん や ) 。 ( 『 文 選 』 八 三 ― 四 頁 、 巻 五 ) 右 の 引 用 箇 所 を 日 本 語 訳 す る こ と は 省 略 す る が 、 梗 概 を 述 べ れ ば 、 三 つ の 段 落 に 分 け る こ と が で き る 。 「 於 是 乎 長 鯨 吞 航 」
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 か ら 「 噞 喁 沈 浮 」 ま で は 水 棲 生 物 、 「 鳥 則 鵾 雞 鸀 鳿 」 か ら 「 刷 盪 漪 瀾 」 ま で は 鳥 類 を 挙 げ 、 「 魚 鳥 聱 耴 」 以 後 は 、 自 然 現 象 と 生 物 の 影 響 関 係 に つ い て 水 棲 生 物 や 伝 説 上 の 生 物 等 に 言 及 し つ つ 述 べ る 。 こ こ で 第 一 段 に 焦 点 を 当 て れ ば 、 「 長 鯨 」 「 修 鯢 」 と い う 「 ク ジ ラ 」 や 、 「 鮫 」 ( “ ミ ズ チ ” ま た は “ フ カ ” ) 、 「 鯔 」 ( ボ ラ の 一 種 ) 、 「 王 鮪 」 ( 巨 大 な チ ョ ウ ザ メ ) 、 「 鰐 」 ( ワ ニ ) 等 の 生 物 名 が 見 え る 。 こ れ ら は い ず れ も 鳴 門 漢 詩 に も 登 場 す る が 、 前 掲 の 前 塚 渭 南 の 末 句 の 「 鮫 」 「 鰐 」 も 右 の よ う な 大 河 を 描 い た 辞 賦 に 見 ら れ た 水 棲 生 物 の 中 か ら 、 平 仄 に 合 う も の 、 ま た 中 国 古 典 詩 で よ く 描 か れ る も の が 選 ば れ た と 考 え ら れ る 。 『 全 唐 詩 』 に お け る 「 鮫 」 の 用 例 は 七 十 三 例 あ り 、 「 鱷 」 と い う 異 体 字 を 持 つ 「 鰐 」 も 、 潮 州 時 代 の 韓 愈 の 「 鱷 魚 文 」 で 知 ら れ る 。 前 塚 渭 南 の 作 品 に お い て 、 森 春 濤 は 鳴 門 海 峡 に 棲 息 す る 恐 ろ し い 「 鮫 鰐 」 を 叱 咤 し な が ら 渡 っ て い く と 描 か れ る こ と に よ っ て 、 そ の 人 柄 の 豪 快 な 一 面 が 強 調 さ れ る こ と に な る 。 ま た 、 木 蘇 岐 山 ( 一 八 五 八 ― 一 九 一 八 ) の 「 鳴 門 觀 潮 行 」 ( 七 四 一 ― 二 頁 ) の 第 八 句 に は 「 海 豨 王 鮪 亂 作 橫 ( 海 豨 ・ 王 鮪 亂 れ て 橫[ ほ し い ま ま] を 作 す ) 」 と 詠 い 、 「 呉 都 賦 」 に 見 え た 「 王 鮪 」 に 言 及 し て い る 。 木 蘇 岐 山 の 作 品 で 取 り 上 げ ら れ て い る も う 一 種 の 水 棲 生 物 「 海 豨 」 ( カ ワ イ ル カ ) は 東 晋 の 郭 璞 「 江 賦 」 に 見 え る 。 揚 子 江 の 波 濤 や 渦 潮 を 描 写 し た あ と で 水 棲 生 物 を 次 の よ う に 列 挙 す る 。 魚 則 江 豚 海 狶 , 叔 鮪 王 鱣 , 䱻 鰊 鰧 鮋 , 鯪 鰩 鯩 鰱 , 或 鹿 觡 象 鼻 , 或 虎 狀 龍 顏 。 鱗 甲 鏙 錯 , 煥 爛 錦 斑 。 揚 鰭 掉 尾 , 噴 浪 飛 唌 。 排 流 呼 哈 , 隨 波 遊 延 。 或 爆 采 以 晃 淵 , 或 嚇 鰓 乎 巖 間 。 介 鯨 乘 濤 以 出 入 , 鯼 鮆 順 時 而 往 還 ( 魚 は 則 ち 江 豚 海 狶[ こ う と ん か い き] , 叔 鮪 王 鱣[ し ゅ く ゐ わ う せ ん] , 䱻 鰊 鰧 鮋[ こ つ れ ん と う ち う] , 鯪 鰩 鯩 鰱[ り ょ う え う り ん れ ん] あ り 。 或 は 鹿 觡 象 鼻[ ろ く か く ざ う び] , 或 は 虎 狀 龍 顏 な り 。 鱗 甲 鏙 錯 と し て , 煥 爛 た る 錦 斑 あ り 。 鰭 を 揚 げ 尾 を 掉 ひ , 浪 を 噴 き 唌 を 飛 ば す 。 流 れ を 排 し て 呼 哈 し , 波 に 隨 ひ て 遊 延 す 。 或 は 采[ い ろ ど] り を 爆[ か が や] か し て 以 て 淵 を 晃 や か し , 或 は 鰓 を 巖 間 に 嚇 く 。 介 鯨 濤 に 乘 り て 以 て 出 入 し , 鯼 鮆[ そ う せ い] 時 に 順
大 村 和 人 20 ひ て 往 還 す ) 。 ( 『 文 選 』 一 八 五 頁 、 巻 一 二 ) 「 鮪 」 「 鱣 」 は 「 チ ョ ウ ザ メ 」 の 類 ( 二 三 ) 。 従 っ て 、 こ の 「 王 鱣 」 も 前 掲 の 「 王 鮪 」 と 同 じ か 同 種 の 生 物 を 指 す の で あ ろ う 。 『 阿 波 志 』 巻 三 に お け る 鳴 門 地 域 の 「 土 産 」 「 異 産 」 の 項 目 に 挙 げ ら れ て い る 水 棲 生 物 と 、 鳴 門 漢 詩 で 描 か れ た そ れ と を 比 較 す れ ば 、 「 海 豚 」 と 後 述 す る 「 タ イ 」 以 外 の 生 物 と は 重 複 し て い な い ( 鮫 は ひ と ま ず 除 く ) 。 こ の よ う に 、 鳴 門 漢 詩 に 登 場 す る 水 棲 生 物 の 姿 と そ の 種 類 は 、 実 際 の 生 態 を 反 映 し て い た と い う よ り は 、 大 河 や 海 を 描 い た 中 国 古 典 作 品 に 見 ら れ た も の が 借 用 さ れ た も の で あ っ た と い う の が よ り 実 態 に 即 し て い た と 考 え ら れ る 。 前 掲 の 石 川 氏 の 論 文 が 王 維 の 詩 を 例 と し て 論 じ た よ う に 、 中 国 古 典 に お い て 海 は 様 々 な 神 怪 の 棲 む 恐 ろ し い 場 所 で あ る と 伝 統 的 に 描 か れ て き た 。 鳴 門 漢 詩 に お い て も 、 描 か れ る 水 棲 生 物 は 鳴 門 海 峡 の 恐 ろ し さ 、 荒 々 し さ や 雄 大 さ を 誇 張 す る 役 割 を 担 う こ と が 多 い 。 水 棲 生 物 以 外 で 鳴 門 漢 詩 に 多 く 描 か れ る 動 物 は 鳥 類 で あ る 。 特 に 目 立 つ の は 「 鵬 」 ( 八 首 ) 「 鷗 」 ( 十 一 首 ) で あ る が 、 前 者 は 想 像 上 の 巨 大 な 鳥 で あ り 、 前 掲 の 『 莊 子 』 「 逍 遙 遊 篇 」 冒 頭 の 寓 話 を 典 故 と す る 。 こ の 場 合 は 鳴 門 海 峡 の 情 景 の 雄 大 さ と 幻 想 性 を 誇 張 す る 役 割 を 果 た し て い る と 解 釈 さ れ る 。 こ こ で は 例 と し て 井 坂 松 石 の 前 掲 作 品 「 鳴 門 歌 送 藪 祭 酒 」 を 挙 げ て お く 。 後 者 の 「 鷗 」 の 例 と し て は 、 伊 藤 聴 秋 ( 一 八 二 二 ― 一 九 〇 五 ) の 「 廳 召 赴 德 島 舟 中 」 ( 七 〇 九 頁 ) の 頷 聯 と 頸 聯 を 挙 げ よ う 。 誰 道 鳴 門 天 下 險 , 誰 か 道 ふ 鳴 門 は 天 下 の 險 と , 快 風 不 是 卸 帆 時 。 快 風 是 れ 帆 を 卸 ( と ) く 時 な ら ず 。 無 乃 白 鷗 波 上 翻 , 無 乃 ( む し ろ ) 白 鷗 の ご と く 波 上 に 翻 ( か ) け ん , 鬖 鬖 白 髮 渡 鳴 門 。 鬖 鬖 た る 白 髮 鳴 門 を 渡 る 。 こ の 二 聯 は 「 誰 が 『 鳴 門 は 天 下 の 難 所 』 と 言 っ た の か 。 今 は 心 地 よ い 風 が 吹 い て い る の で 、 帆 を 下 し て い る 場 合 で は な い 。 む し ろ 白 鷗 が 波 を 飛 ぶ よ う に 運 航 し て い こ う で は な い か 。 そ の 舟 に は 白 髪 が 長 く 垂 れ 下 が っ た こ の 私 が 乗 っ て お り 、 鳴 門 海 峡 を 渡 ろ う と し て い る の だ 」 と い う 意 味 と 解 釈 で き る 。 「 鳴 門 」 と い う 地 名 が 二 度 用 い ら れ て お り 、 更 に 頸 聯 の 「 白 鷗 」
日本漢詩に描かれた鳴門海峡 と 「 白 髪 」 と い う 対 句 も 上 々 の も の と は 言 え な い が 、 こ の 「 白 鷗 」 の 自 在 に 海 を 飛 び 回 る イ メ ー ジ を 作 者 が 乗 る 舟 に 重 ね 、 珍 し く 穏 や か に 描 か れ る 鳴 門 海 峡 を 意 気 揚 々 と 渡 っ て 新 天 地 に 赴 く 作 者 の 心 情 を 表 現 し て い る 。 先 行 研 究 が 指 摘 す る よ う に 中 国 古 典 に お い て 「 鷗 」 は 自 由 を 象 徴 す る 鳥 で あ り ( 二 四 ) 、 そ の よ う な 「 白 鷗 」 の イ メ ー ジ は 、 詩 歌 で は 例 え ば 李 白 の 「 江 上 吟 」 に 「 仙 人 有 待 乘 黃 鶴 , 海 客 無 心 隨 白 鷗 ( 仙 人 待 つ 有 り 黃 鶴 に 乘 り , 海 客 心 無 く 白 鷗 に 隨 ふ ) 」 ( 『 李 太 白 全 集 』 三 七 四 頁 、 巻 七 ) と 表 現 さ れ て い る 。 李 白 の こ の 作 品 は 江 戸 時 代 の 日 本 で 大 ベ ス ト セ ラ ー と な っ た 『 唐 詩 選 』 に も 収 録 さ れ 、 当 時 の 人 々 に 広 く 知 ら れ た 作 品 で あ っ た と 考 え ら れ る が 、 李 白 以 外 の 唐 詩 に お い て も 「 鷗 」 は 頻 繁 に 描 か れ る 。 鳴 門 漢 詩 に も 「 鷗 」 が 多 く 詠 い 込 ま れ る の は 、 作 者 の 実 見 で あ る 可 能 性 も 高 い が 、 中 国 古 典 で し ば し ば 描 か れ て き た 鳥 類 で あ る こ と に も 起 因 す る で あ ろ う 。 「 鷗 」 「 鵬 」 の 他 、 鳴 門 漢 詩 に 詠 わ れ た 鳥 類 と し て 「 鶻 」 「 鳶 」 「 盤 鵰 」 「 鷁 」 「 鷺 」 「 鳳 凰 」 「 鶴 」 「 雀 」 が 挙 げ ら れ る が 、 「 鶻 」 が 五 首 に 見 ら れ る 以 外 は 、 用 例 一 首 の み の も の が ほ と ん ど で あ る 。 な お 、 「 鶻 」 は 後 掲 の 蘇 軾 の 詩 に 描 か れ て い る 。 鳥 類 が 鳴 門 漢 詩 に 詠 い 込 ま れ る と き は 、 伝 説 の 鳥 で あ れ ば 鳴 門 海 峡 の 雄 大 さ や 幻 想 性 を 表 現 し 、 実 際 に 存 在 す る と さ れ た 鳥 の 場 合 は 、 そ の 自 在 な 様 子 に 作 者 の 心 情 の 軽 や か さ が 投 影 さ れ る こ と が 多 い 。 い ず れ に せ よ そ れ ら は 中 国 古 典 作 品 を 出 典 と す る 。 実 在 の 生 物 の 場 合 は 作 者 が 実 見 し た も の で あ る 可 能 性 も あ る が 、 そ れ が 漢 詩 に 詠 わ れ る 場 合 は 、 中 国 古 典 作 品 に お け る イ メ ー ジ を 継 承 し て い る も の が 多 い の で あ る 。 二 、 想 像 上 の 怪 獣 ・ 神 仙 ・ 人 物 等 前 掲 の 石 川 忠 久 氏 の 論 考 が 王 維 の 前 掲 作 品 を 引 用 し つ つ 論 じ て い る よ う に 、 中 国 古 典 に お い て 海 洋 は 自 然 の 中 で も 危 険 で 恐 ろ し い 場 所 と し て 描 か れ て き た 。 鳴 門 漢 詩 に お い て も 、 鳴 門 海 峡 の 恐 ろ し さ や 神 秘 性 を 表 現 す る た め に 中 国 古 典 に 由 来 す る 様 々 な 題 材 が 用 い ら れ る が 、 想 像 上 の 怪 獣 や 神 仙 等 も そ の 一 つ で あ る 。 『 莊 子 』 に 由 来 す る 前 掲 の 「 鵬 」 も こ れ に 分 類 で き る で あ
大 村 和 人 22 ろ う 。 神 仙 や 神 霊 の 類 で は 、 例 え ば 前 掲 の 井 坂 松 石 の 「 鳴 門 歌 送 藪 祭 酒 」 に 「 海 若 」 と い う 怪 物 が 登 場 す る が 、 こ れ は 前 掲 の 『 莊 子 』 「 秋 水 篇 」 に お い て 「 河 伯 」 に 真 理 を 説 く 北 海 の 神 「 北 海 若 」 で あ る 。 前 引 の 「 尾 閭 」 に 言 及 し た 箇 所 も こ の 神 の 言 葉 の 途 中 で あ り 、 有 名 な 「 井 の 中 の 蛙 」 の 故 事 も そ の 中 で 言 及 さ れ る も の で あ る 。 本 稿 の 対 象 作 品 の 中 で は 十 五 首 に 登 場 す る 。 他 に 鳴 門 漢 詩 に は 多 く の 海 洋 や 河 川 の 神 や 怪 物 が 多 く 登 場 す る 。 例 え ば 林 東 溟 「 初 渡 鳴 門 上 流 舟 中 有 作 」 其 一 の 頸 聯 で は 「 盤 渦 珠 湧 鮫 人 淚 , 積 水 月 迎 龍 女 顔 ( 盤 渦 珠 は 湧 く 鮫 人 の 淚 , 積 水 月 は 迎 ふ 龍 女 の 顔 ) 」 ( 六 九 一 頁 ) と 詠 い 、 「 鮫 人 」 「 龍 女 」 に 言 及 す る 。 前 者 は 晋 ・ 木 華 「 海 賦 」 の 一 節 「 其 垠 則 有 天 琛 水 怪 , 鮫 人 之 室 。 瑕 石 詭 暉 , 鱗 甲 異 質 ( 其 の 垠 に は 則 ち 天 琛 水 怪 , 鮫 人 の 室 有 り 。 瑕 石 詭 し き 暉 あ り , 鱗 甲 異 な る 質 あ り ) 」 ( 『 文 選 』 一 八 二 頁 、 巻 一 二 ) に 見 え 、 李 善 注 は 「 呉 都 賦 」 の 劉 淵 林 注 「 鮫 人 水 底 居 ( 鮫 人 に 水 底 の 居 あ り ) 」 を 引 用 す る 。 ま た 、 「 呉 都 賦 」 の 劉 注 に は 、 人 間 の 世 話 に な っ た 「 鮫 人 」 が 去 り 際 に 礼 と し て 、 流 し た 涙 が 珠 玉 に な っ た も の を 残 し て い っ た と 言 う ( 二 五 ) 。 林 東 溟 の 右 の 作 品 に 登 場 す る も う 一 人 の 想 像 上 の 人 物 「 龍 女 」 は 龍 の 化 身 で あ る 。 晋 代 の 蜀 の 民 間 歌 謡 「 綿 州 巴 歌 」 に 「 下 白 雨 , 取 龍 女 ( 白 雨 下[ ふ] り , 龍 女 を 取[ め と] る ) 」 と い う 二 句 が あ る が 、 こ の 「 龍 女 」 は 唐 代 伝 奇 に し ば し ば 登 場 す る ( 二 六 ) 。 他 に も 登 場 す る 神 霊 や 怪 獣 は 枚 挙 に 暇 が 無 い が 、 語 句 の み 挙 げ れ ば 次 の 通 り で あ る 。 「 馮 夷 」 、 「 龍 王 」 、 「 龍 人 」 、 「 陽 侯 」 、 「 仙 娥 」 、 「 精 衛 」 、 「 天 呉 」 、 「 金 烏 」 、 「 儵 」 、 「 混 沌 」 、 「 北 溟 鯤 」 、 「 南 何 名 」 、 「 湘 君 」 、 「 河 伯 」 、 「 龍 伯 」 、 「 風 師 」 、 「 軒 轅 」 、 「 江 霊 」 、 「 江 神 」 。 鳴 門 漢 詩 で は こ れ ら を 描 き 込 む こ と に よ っ て 、 鳴 門 海 峡 の 恐 ろ し さ あ る い は 幻 想 性 を 描 き 出 そ う と し て い る も の が 多 い 。 「 湘 君 」 に つ い て は 後 述 。 な お 、 前 掲 の 小 島 氏 の 論 文 が 紹 介 す る よ う に 、 日 本 古 典 で 鳴 門 は 竜 宮 城 の 東 門 に あ た る と さ れ る 。 右 に 挙 げ た 語 句 の 中 に は 「 龍 」 に 関 わ る も の が 少 な く な い が 、 日 本 古 典 中 の 右 の イ メ ー ジ か ら の 連 想 も そ の 理 由 の 一 つ で あ る と 考 え ら れ る 。 ④ 中 国 の 名 勝 と の 比 較