Title
タンパク解析技術を用いた化学物質の生殖発生毒性評価法
に関する研究( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
宇佐見, 誠
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(農学) 乙第126号
Issue Date
2008-09-10
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/33627
※この資料の著作権は、各資料の著者・学協会・出版社等に帰属します。氏 名(本(副籍) 学 位 の 種 類 学 位 記 番 号 学位授与年月 日 学位授与の要件 学 位 論 文 題 目 審 査 委 旦 会 宇佐見 誠 (愛知県) 博士(農学) 農博乙第126号 平成20年9月10日 学位規則第3条第2項該当 タンパク解析技術を用いた化学物質の生殖発生毒性 評価法に関する研究 主査 岐阜大学 教 授 副査 静岡大学 教 授 副査 岐阜大学 准教授 副査 信州大学 教 授 守 也 淳 忠 哲 弘 井 坂 澤 井 土 高 岩 辻 論 文 の 内 容 の 要 旨 近年のタンパク解析技術の進歩は目覚しく、分子間相互作用による生体機能の解析 や、組織中のピコモル単位のタンパク質を網羅することができるプロテオクスを可能 にしている。これらの解析技術を、化学物質の毒性スクリーニングや毒性発現の機序 解明などに応用できれば、これまでほとんど行われていなかったタンパク解析技術を 用いた生殖発生毒性の研究が目覚しく進展することとなる。そこで本研究では、生殖 発生毒性研究における新しいタンパク解析技術の応用として、表面プラズモンバイオ センサーを用いた化学物質のエストロゲン受容体結合能測定法の開発および二次元電 気泳動を用いた培養ラット胚のプロテオミクス解析法の開発を行った。 まず、放射性標識および蛍光標識化合物を必要としない表面プラズモンバイオセン サーを用いた簡便な化学物質のエストロゲン受容体結合能測定法の確立を試みた。す なわち、表面プラズモン効果を応用したバイオセンサーであるビアコアバイオセンサ ーにおいて、合成したアミノ化estradiol(E2-17PeNH)をリガンド、およびヒト組み 替えエストロゲン受容体(hrERa)を高分子相互作用分子とし、被験物質をアナライトと した。その結果、被験物質のhrERaへの結合は、hrERaのE2-17PeNHへの結合の減少と して測定することができ、簡便なエストロゲン受容体結合能測定法を確立した。 次に、インビトロの発生毒性研究における簡便なプロテオミクス解析法として、培 養ラット胚タンパクの二次元電気泳動法の確立を試みた。その結果、一次元目に固定 化p8勾配等電点電気泳動法を、二次元目にドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルア ミド電気泳動法を用いて種々改良を重ね、ラット妊娠10.5日胚または卵黄嚢膜1検体 から約800個、1,000個のタンパクスポットが各々検出できた。さらに質量分析装置を 用いて、これらのタンパクスポットの中での組織特異的な機能に関与するタンパクを 同定し、二次元電気泳動マップの作成を可能にした。この改良した電気泳動法は、イ ンビトロの発生毒性研究における胚タンパクの二次元電気泳動解析法として有用であ るとともに、培養胚のプロテオミクス解析が発生毒性学における新しい研究法の1つ になりうることを確認した。
-87-最後に、本研究で確立した方法を用いて、セレンの胚毒性を培養ラット胚のプロテ オミクス解析により調べ、月杢本体および卵黄嚢膜において胚毒性の発現に関与する可 能性があるタンパクを同定した。これらのタンパクは、セレンの胚毒性の発現に関与 する可能性があると考えられ、さらに発生毒性研究においてバイオマーカーとして利 用できるものと推察された。 以上の研究結果から、化学物質が引き起こす発生毒性について組織特異性機能タン パクなどを介して詳細に追及することができるようになり、化学物質の生殖発生毒性 評価法を開発することができた。 審 査 結 果 の 要 旨 本研究は、生殖発生毒性研究における新しいタンパク解析技術の応用として、表面 プラズモンバイオセンサーを用いた化学物質のエストロゲン受容体結合能測定法の 開発および二次元電気泳動を用いた培養ラット胚のプロテオミクス解析法の開発を 行ったものである。近年のタンパク解析技術の進歩は、分子間相互作用による生体機 能の解析や、組織中のピコモル単位のタンパク質を網羅することができるプロテオク スを可能にした。これらの解析技術を、化学物質の毒性スクリーニングや毒性発現の 機序などに応用できれば、これまでにほとんど行われていなかったタンパク解析技術 を用いた生殖発生毒性の研究が目覚しく進展する。そこで、この研究では、「バイオ センサーを用いた化学物質のエストロゲン受容体結合能測定法の開発」、「培養ラット 初期着床胚タンパクの二次元電気泳動法の確立」、「培養ラット初期着床胚のプロテオ ーム解析」および「セレンの培養ラット胚に及ぼす影響のプロテオクス解析」につい て研究した。 まず、表面プラズモンバイオセンサーを用いた、放射性標識および蛍光標識化合物 を必要としない簡便な化学物質のエストロゲン受容体結合能測定法を確立した。すな わち、表面プラズモン効果を応用したバイオセンサーであるビアコアバイオセンサー において、合成したアミノ化estradiol(E2-17PeNH)をリガンド、ヒト組み替えエ ストロゲン受容体(hrERa)を高分子相互作用分子とし、被験物質をアナライトとした。 被験物質のhrERaへの結合は、hrERaのE2-17PeNHへの結合の減少として測定できた。 次に、インビトロの発生毒性研究における簡便なプロテオミクス解析法として、培 養ラット胚タンパクの二次元電気泳動法を確立した。一次元目に固定化pH勾配等電 点電気泳動法を、二次元目にドデシル硫酸ナトリウムーポリアクリルアミド電気泳動 法を用いて種々改良を重ね、ラット妊娠10.5日胚ひとつから約800個のタンパクス ポットが検出できた。また、質量分析により81個のタンパクスポットを同定し、二 次元電気泳動マップを作成した。この改良した電気泳動法は、インビトロの発生毒性 研究における胚タンパクの二次元電気泳動解析法として有用であることが判明した こととともに、ラット培養胚のプロテオミクス解析が、発生毒性学における新しい研 究法の1つになることも確認できた。すなわち、胚本体および卵黄嚢膜についてそれ ぞれ約800個および1,000個のタンパクスポットのうち、胚本体(126スポット)ま たは卵黄嚢膜(304スポット)に組織特異的な機能に関与するタンパクを同定するこ とが出来た。 最後に、本研究で確立した方法を用いて、セレンの胚毒性を培養ラット胚のプロテ オミクス解析により調べ、胚本体および卵黄嚢膜において胚毒性の発現に関与する可
-88-能性があるタンパクを同定した。これらのタンパクは、セレンの胚毒性の発現に関与 する可能性があると考えられ、さらに発生毒性研究においてバイオマーカーとして利 用できるものと推察された。 以上について、審査委員全員一致で本論文が岐阜大学大学院連合農学研究科の学位 論文として十分価値あるものと認めた。 学位論文の基礎となる学術論文は以下の通りである。 ・UsamiM,MitsunagaK,OhnoY・Estrogenreceptorbindingassayofchemicals withasurfhceplasmonresonancebiosensor・JSteroidBiochemMoIBiol, 81:47-55.2002. ・UsamiM,MitsunagaE,NakazawaK・Two-dimensionalelectrophoresisof proteinfromculturedpostimplantationratembryosfordevelopmentaltoxicity studies. ToxicolInVitro,21:521・526.2007. ・UsamiM,MitsunagaK,NakazawaK.Comparativeproteomeanalysisofthe embryoproperandyolksacmembraneofdayll・5culturedratembryos・ BirthDefectsResB,80:383・395.2007. ・Usami,M.,Mitsunaga,K.Nakazawa,K.andDoi,0.Proteomicanalysisof seleniumembryotoxicityinculturedpostimplantationratembryos・Birth DefectsResB,83:80・96.2008. その他参考となる学術論文は、合計24編(筆頭9編、その他15編)である。