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サトラリズマブ 緒言 Page 1 エンスプリング皮下注 120 mg シリンジ ( サトラリズマブ ( 遺伝子組換え )) [ 視神経脊髄炎スペクトラム ] 第 2 部 ( モジュール 2):CTD の概要 ( サマリー ) 2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 緒言 中外

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(1)

エンスプリング皮下注120 mg シリンジ

(サトラリズマブ(遺伝子組換え))

[視神経脊髄炎スペクトラム]

2部 (モジュール2):CTD の概要(サマリー)

2.6 非臨床試験の概要文及び概要表

2.6.1 緒言

中外製薬株式会社

(2)

略語一覧

略語 英名 和名 AQP4 aquaporin-4 アクアポリン4 CSF cerebrospinal fluid 脳脊髄液 IgG immunoglobulin G 免疫グロブリンG IL-6 interleukin-6 インターロイキン6

IL-6R interleukin-6 receptor インターロイキン6レセプター NMO neuromyelitis optica 視神経脊髄炎

(3)

目次

2.6 非臨床試験の概要文及び概要表 ... 4 2.6.1 緒言 ... 4 2.6.1.1 薬理学的分類及び構造 ... 4 2.6.1.2 科学的根拠及び作用機序 ... 4 2.6.1.3 承認申請の概要 ... 4 2.6.1.4 参考文献 ... 4

(4)

2.6

非臨床試験の概要文及び概要表

2.6.1

緒言

2.6.1.1

薬理学的分類及び構造

サトラリズマブ(遺伝子組換え)(以降,サトラリズマブ)は,pH 依存的結合性ヒト化抗 インターロイキン6レセプター(IL-6R)モノクローナル抗体である。 サトラリズマブは,血中滞留性を向上させるよう,抗体工学技術を用いてアミノ酸配列を改 変することにより創製したヒト化免疫グロブリン(IgG)2抗体である。サトラリズマブは,2 本の軽鎖(それぞれ214アミノ酸残基)及び2本の重鎖(それぞれ443アミノ酸残基)から構成 される糖蛋白質である。糖鎖結合部位は各重鎖の Asn295である。サトラリズマブの構造は, 可変領域(アミノ酸置換を含む相補性決定領域及びヒトフレームワーク領域から構成される), 並びにアミノ酸置換及び欠失を含むヒトIgG2定常領域から構成される。

2.6.1.2

科学的根拠及び作用機序

視神経脊髄炎(NMO)及び視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)は,視神経炎と横断性脊 髄炎を臨床的な特徴とする,重度の炎症性脱髄性自己免疫疾患である1)-3)NMO/NMOSD 患者の多くが,特異性の高い自己抗体,すなわち抗アクアポリン4(AQP4)抗体を保有してい ることが知られており,この抗 AQP4抗体が NMO/NMOSD の病態に関わっていると考えら れている1)-3)。一方で,抗 AQP4抗体が検出されない NMO/NMOSD 患者も認められており, 抗AQP4抗体以外の自己抗体が関与している可能性も考えられる2),4) インターロイキン6(IL-6)は,炎症反応,各種細胞の分化や増殖の誘導,免疫応答の調節, 及び血小板産生等の多様な機能を持つ炎症促進性サイトカインである5),6)IL-6は,以下に示 すように,NMO/NMOSD の病態に関わっていると考えられる。  NMO/NMOSD 患者の血清や脳脊髄液(CSF)で IL-6 濃度が顕著に上昇している 7)-13)  CSF 中の IL-6 濃度が NMO/NMOSD 患者の疾患の重症度及び進行度と相関している7), 10)  CSF 中の IL-6 濃度がアストロサイトの傷害度マーカーであるグリア線維酸性蛋白質の濃 度と相関して上昇している10),14)  B 細胞サブセットの一つであるプラズマブラストが抗 AQP4 抗体の産生に関与しており, また,プラズマブラストの生存がIL-6 により促進されることから,プラズマブラストの 抗AQP4 抗体産生が IL-6 により亢進されると考えられている15)

 IL-6R のシグナル伝達を阻害することで,in vitro でのプラズマブラストの生存が抑制さ れる15)

2.6.1.3

承認申請の概要

本申請で予定している効能・効果及び用法・用量については2.2に記載した。

2.6.1.4

参考文献

1) Oh J, Levy M. Neuromyelitis optica: an antibody-mediated disorder of the central nervous system. Neurol Res Int 2012;2012:460825.

2) Jacob A, McKeon A, Nakashima I, Sato DK, Elsone L, Fujihara K, et al. Current concept of neuromyelitis optica (NMO) and NMO spectrum disorders. J Neurol Neurosurg Psychiatry 2013;84:922-30.

3) Wingerchuk DM, Lennon VA, Lucchinetti CF, Pittock SJ, Weinshenker BG. The spectrum of neuromyelitis optica. Lancet Neurol 2007;6:805-15.

4) Bernard-Valnet R, Liblau RS, Vukusic S, Marignier R. Neuromyelitis optica: a positive appraisal of seronegative cases. Eur J Neurol 2015;22:1511-8, e82-3.

(5)

5) Kishimoto T. IL-6: from its discovery to clinical applications. Int Immunol 2010;22:347-52.

6) Tanaka T, Kishimoto T. Immunotherapeutic implication of IL-6 blockade. Immunotherapy 2012;4:87-105.

7) İçöz S, Tüzün E, Kürtüncü M, Durmuş H, Mutlu M, Eraksoy M, et al. Enhanced IL-6 production in aquaporin-4 antibody positive neuromyelitis optica patients. Int J Neurosci 2010;120:71-5.

8) Li YJ, Zhang F, Qi Y, Chang GQ, Fu Y, Su L, et al. Association of circulating follicular helper T cells with disease course of NMO spectrum disorders. J Neurolimmunol 2015;278:239-46.

9) Matsushita T, Tateishi T, Isobe N, Yonekawa T, Yamasaki R, Matsuse D, et al. Characteristic cerebrospinal fluid cytokine/chemokine profiles in neuromyelitis optica, relapsing remitting or primary progressive multiple sclerosis. PLoS ONE 2013;8:e61835.

10) Sato DK, Callegaro D, de Haidar Jorge FM, Nakashima I, Nishiyama S, Takahashi T, et al. Cerebrospinal fluid aquaporin-4 antibody levels in neuromyelitis optica attacks. Ann Neurol 2014;76:305-9.

11) Uzawa A, Mori M, Arai K, Sato Y, Hayakawa S, Masuda S, et al. Cytokine and chemokine profiles in neuromyelitis optica: significance of interleukin-6. Mult Scler 2010;16:1443-52.

12)Uzawa A, Mori M, Ito M, Uchida T, Hayakawa S, Masuda S, et al. Markedly increased CSF interleukin-6 levels in neuromyelitis optica, but not in multiple sclerosis. J Neurol 2009;256:2082-4.

13) Uzawa A, Mori M, Sawai S, Masuda S, Muto M, Uchida T, et al. Cerebrospinal fluid interleukin-6 and glial fibrillary acidic protein levels are increased during initial neuromyelitis optica attacks. Clin Chim Acta 2013;421:181-3.

14) 鵜沢顕之,森雅裕,桑原聡. 視神経脊髄炎と多発性硬化症の免疫病態の相違. 千葉医学 2011;87:291-4.

15) Chihara N, Aranami T, Sato W, Miyazaki Y, Miyake S, Okamoto T, et al. Interleukin 6 signaling promotes anti-aquaporin 4 autoantibody production from plasmablasts in neuromyelitis optica. Proc Natl Acad Sci U S A 2011;108:3701-6.

(6)

エンスプリング皮下注120 mg シリンジ

(サトラリズマブ(遺伝子組換え))

[視神経脊髄炎スペクトラム]

2部 (モジュール2):CTD の概要(サマリー)

2.6.2 薬理試験の概要文

中外製薬株式会社

(7)

略語一覧

略語 英名 和名

ADCC antibody-dependent cellular cytotoxicity 抗体依存性細胞傷害

AQP4 aquaporin-4 アクアポリン4

CDC complement-dependent cytotoxicity 補体依存性細胞傷害

CHO Chinese hamster ovary チャイニーズハムスター卵巣 CNTF ciliary neurotrophic factor 毛様体神経栄養因子

CRP C-reactive protein C 反応性蛋白質 CSF cerebrospinal fluid 脳脊髄液 EC50 50% effective concentration 50%効果濃度

ELISA enzyme-linked immunosorbent assay 酵素結合免疫吸着測定法

FcγR Fcγ receptor Fcγ レセプター

FcRn neonatal Fc receptor 胎児性Fc レセプター GMFI geometric mean fluorescence intensity 幾何平均蛍光強度

HFLS-RA human fibroblast-like synoviocytes-rheumatoid arthritis 関節リウマチ患者由来ヒト滑膜細胞 IC50 50% inhibitory concentration 50%阻害濃度

IgG immunoglobulin G 免疫グロブリンG

IL-6 interleukin-6 インターロイキン6

IL-6R interleukin-6 receptor インターロイキン6レセプター

IL-11 interleukin-11 インターロイキン11

ka association rate constant 結合速度定数

kd dissociation rate constant 解離速度定数

KD dissociation constant 解離定数

LIF leukemia inhibitory factor 白血病抑制因子 MCP-1 monocyte chemoattractant protein-1 単球走化性蛋白質-1 NMO neuromyelitis optica 視神経脊髄炎

NMOSD neuromyelitis optica spectrum disorder 視神経脊髄炎スペクトラム

OSM oncostatin M オンコスタチンM

PBMC peripheral blood mononuclear cell 末梢血単核球

PHA-L phytohemagglutinin-L フィトヘマグルチニン-L

pI isoelectric point 等電点

SC subcutaneous 皮下

SPR surface plasmon resonance 表面プラズモン共鳴 VEGF vascular endothelial growth factor 血管内皮増殖因子

(8)

目次

2.6.2 薬理試験の概要文 ... 5 2.6.2.1 まとめ ... 5 2.6.2.2 効力を裏付ける試験 ... 6 2.6.2.2.1 ヒト及びカニクイザルの膜結合型IL-6R に対する結合活性 ... 6 2.6.2.2.2 ヒト及びカニクイザルの可溶性IL-6R に対する結合活性 ... 7 2.6.2.2.3 ヒト可溶性IL-6R に対する pH 依存的な結合活性 ... 9 2.6.2.2.4 ヒト及びカニクイザルFc レセプターに対する結合活性 ... 10 2.6.2.2.5 ADCC 活性及び CDC 活性 ... 12 2.6.2.2.6 膜結合型及び可溶性 IL-6R を介した IL-6 活性発現に対する抑制作 用 ... 13 2.6.2.2.7 IL-6 ファミリーサイトカインレセプターのシグナル伝達に対する 影響 ... 14 2.6.2.2.8 IL-6 によるヒトプラズマブラストの IgG1 産生に対する抑制作用 ... 16 2.6.2.2.9 IL-6 によるヒト T 細胞増殖に対する抑制作用... 16

2.6.2.2.10 IL-6 及び可溶性 IL-6R によるヒト滑膜細胞の MCP-1 及び VEGF 産 生に対する抑制作用 ... 17 2.6.2.2.11 カニクイザルにおけるIL-6 活性の抑制作用 ... 18 2.6.2.3 副次的薬理試験 ... 22 2.6.2.4 安全性薬理試験 ... 22 2.6.2.5 薬力学的薬物相互作用試験 ... 22 2.6.2.6 考察及び結論 ... 23 2.6.2.7 図表 ... 23 2.6.2.8 参考文献 ... 23

表一覧

表 2.6.2.2.1-1 ヒトあるいはカニクイザルの膜結合型 IL-6R を発現させた CHO 細胞に対す る サトラリズマブの結合の EC50値 ... 7 表 2.6.2.2.2-1 ヒト及びカニクイザル可溶性 IL-6R に対するサトラリズマブの ka値,kd 値 及びKD値(37°C,pH 7.4) ... 8 表 2.6.2.2.3-1 各種の pH 条件下におけるサトラリズマブとヒト可溶性 IL-6R の結合におけ るka値,kd値及びKD値(37°C) ... 10 表 2.6.2.2.4-1 ヒト及びカニクイザル FcRn に対するサトラリズマブの KD値... 10 表 2.6.2.2.6-1 膜結合型及び可溶性 IL-6R を介した IL-6依存性細胞増殖に対する サトラリ ズマブのIC50値 ... 14 表 2.6.2.2.9-1 PHA-L 及びヒト IL-6刺激によるヒト T 細胞増殖に対する サトラリズマブの IC50値 ... 17 表 2.6.2.2.10-1 HFLS-RA による MCP-1及び VEGF 産生に対するサトラリズマブの IC50値 18

(9)

図一覧

図 2.6.2.2.1-1 ヒトあるいはカニクイザルの膜結合型 IL-6R を発現させた CHO 細胞に対す る サトラリズマブの結合 ... 7 図 2.6.2.2.2-1 pH 7.4と pH 5.8条件下でのサトラリズマブからのヒト可溶性 IL-6R の解離 ... 9 図 2.6.2.2.4-1 ヒト FcγR に対するサトラリズマブの結合 ... 11 図 2.6.2.2.4-2 カニクイザル FcγR に対するサトラリズマブの結合 ... 12 図 2.6.2.2.5-1 サトラリズマブの ADCC 活性評価 ... 13 図 2.6.2.2.5-2 サトラリズマブの CDC 活性評価 ... 13 図 2.6.2.2.7-1 IL-6ファミリーサイトカインレセプターに対するサトラリズマブの影響 .... 15 図 2.6.2.2.8-1 IL-6によるヒトプラズマブラストの IgG1産生に対するサトラリズマブの作用16 図 2.6.2.2.11-1 試験プロトコール概要... 19 図 2.6.2.2.11-2 カニクイザルにおける IL-6活性の抑制効果(試験プロトコール1)... 20 図 2.6.2.2.11-3 カニクイザルにおける IL-6活性の抑制効果(試験プロトコール2)... 21 図 2.6.2.2.11-4 血漿サトラリズマブ濃度又は血漿トシリズマブ濃度と血漿 CRP の関係 .... 22

(10)

2.6.2

薬理試験の概要文

2.6.2.1

まとめ

視神経脊髄炎(NMO)及び視神経脊髄炎スペクトラム(NMOSD)は,視神経炎と横断性脊 髄炎を臨床的な特徴とする,重度の炎症性脱髄性自己免疫疾患である1)-3)NMO/NMOSD 患者の多くが,特異性の高い自己抗体,すなわち抗アクアポリン4(AQP4)抗体を保有してい ることが知られており,この抗 AQP4抗体が NMO/NMOSD の病態に関わっていると考えら れている1)-3)。一方で,抗 AQP4抗体が検出されない NMO/NMOSD 患者も認められており, 抗AQP4抗体以外の自己抗体が関与している可能性も考えられる2),4) インターロイキン6(IL-6)は,炎症反応,各種細胞の分化や増殖の誘導,免疫応答の調節, 及び血小板産生等の多様な機能を持つ炎症促進性サイトカインである5),6)。IL-6は,以下に示 すように,NMO/NMOSD の病態に関わっていると考えられる。  NMO/NMOSD 患者の血清や脳脊髄液(CSF)で IL-6 濃度が顕著に上昇している 7)-13)  CSF 中の IL-6 濃度が NMO/NMOSD 患者の疾患の重症度及び進行度と相関している7), 10)  CSF 中の IL-6 濃度がアストロサイトの傷害度マーカーであるグリア線維酸性蛋白質の濃 度と相関して上昇している10),14)  B 細胞サブセットの一つであるプラズマブラストが抗 AQP4 抗体の産生に関与しており, また,プラズマブラストの生存がIL-6 により促進されることから,プラズマブラストの 抗AQP4 抗体産生が IL-6 により亢進されると考えられている15)

 IL-6 レセプター(IL-6R)のシグナル伝達を阻害することで,in vitro でのプラズマブラ ストの生存が抑制される15) サトラリズマブ(遺伝子組換え)(以降,サトラリズマブ)は,ヒト IL-6R に対するヒト化 免疫グロブリンG(IgG)2抗体であり,血中滞留性を向上させることを目的として,抗原であ るIL-6R に対する pH 依存的結合16),抗体分子等電点(pI)の低下17),及び胎児性Fc レセプ ター(FcRn)への酸性条件下での結合性増強18)という特性を持つように,抗体工学技術によ るアミノ酸改変が加えられている。更に,抗体依存性細胞傷害(ADCC)や補体依存性細胞傷 害(CDC)といったエフェクター作用を極力低減するように,Fcγ レセプター(FcγR)への結 合親和性が低いとされるIgG2骨格19)が適用されている。 サトラリズマブの薬理作用を評価するために,効力を裏付ける試験及び安全性薬理試験を実 施した。なお,サトラリズマブは,開発の過程で SAQRA,SA237及び CH5333787とも称され ており,2.6.2項の図中データでは,CH5333787及び SA237の呼称が使用されている。 1) 効力を裏付ける試験

サトラリズマブの抗IL-6R 抗体としての基本特性を in vitro で評価した。また,IL-6R を介し た生理活性に対する薬理作用を,in vitro 及び in vivo で評価した。 サトラリズマブは,ヒト及びカニクイザルの膜結合型IL-6R 及び可溶性 IL-6R に結合した。 また,ヒト及びカニクイザルの可溶性IL-6R に対して,サトラリズマブは,結合後,酸性条件 下(pH 5.8)では中性条件下(pH 7.4)と比較して速やかに解離する特性を持つことが明らか となった。抗体の血中半減期に重要な役割を果たすことが知られている FcRn への酸性条件下 (pH 6.0)でのサトラリズマブの結合親和性は,非改変の対照 IgG2抗体に比べ,ヒト FcRn, カニクイザル FcRn いずれに対しても増強されていた。一方,ヒト FcγR への中性条件下(pH 7.4)でのサトラリズマブの結合親和性は,非改変の対照 IgG2抗体に比べて同程度又はそれ以 下であり,ヒト IL-6R を発現する細胞株 U266に対する ADCC 活性及び CDC 活性は認められ なかった。

サトラリズマブは,ヒト gp130とヒト膜結合型 IL-6R を発現させた組換え細胞株及びヒト gp130とカニクイザル膜結合型 IL-6R を発現させた組換え細胞株を用いた試験,並びにヒト gp130を発現させた組換え細胞株を用いた試験で,膜結合型 IL-6R を介した IL-6シグナル伝達

(11)

(古典的シグナリング)及び可溶性IL-6R を介した IL-6シグナル伝達(トランスシグナリング) の双方を濃度依存的に阻害した。IL-6のシグナル伝達と同様に gp130を共有する IL-6ファミリ ーサイトカイン(白血病抑制因子[LIF],インターロイキン11[IL-11],毛様体神経栄養因 子[CNTF]及びオンコスタチン M[OSM])のシグナル伝達に対し,サトラリズマブは影響 を及ぼさなかった。 サトラリズマブは,IL-6による,ヒトプラズマブラストの IgG1産生,活性化したヒト末梢血 由来 T 細胞の増殖,及び関節リウマチ患者由来ヒト滑膜細胞(HFLS-RA)の単球走化性蛋白 質-1(MCP-1)及び血管内皮増殖因子(VEGF)産生を抑制した。 サトラリズマブは,マウス又はラットで交差反応性を示さなかった20),21)。したがって in vivo 薬理試験は,サトラリズマブに交差反応性を示すカニクイザルで実施した。IL-6による C 反応性蛋白質(CRP)産生に対するサトラリズマブの抑制効果をカニクイザルで評価した。 サトラリズマブを単回皮下(SC)投与したとき,IL-6による CRP 濃度増加がほぼ完全に抑制 された。サトラリズマブを2 mg/kg の用量で SC 投与したとき,平均血漿サトラリズマブ濃度 は28日間にわたって1 μg/mL 以上に維持され,CRP 産生及び,サトラリズマブの結合していな いフリーの可溶性 IL-6R 濃度の双方が持続的に低値に抑制された。これらの結果から,月1回 の SC 投与で持続的に IL-6シグナル伝達を阻害可能なサトラリズマブ用量は2 mg/kg であると 推定された。 サトラリズマブに交差反応性を示すカニクイザルでの NMO/NMOSD 動物モデルが構築さ れていないため,in vivo NMO/NMOSD 動物モデルでサトラリズマブの効果は評価しなかっ た。 以上,サトラリズマブは抗 IL-6R 抗体としての基本特性を持つことが示された。更に,サト ラリズマブは,pH 依存的な IL-6R 結合親和性を示し,酸性条件下(pH 6.0)で従来の IgG2抗 体よりも強くFcRn に結合し,また,ヒト FcγR 結合が従来の IgG2抗体よりも弱いか同程度で あり,ADCC 活性又は CDC 活性を示さなかったことから,サトラリズマブは意図された抗体 改変による特性を有することが確認された。また,サトラリズマブはカニクイザルにおいて IL-6の生物学的活性を抑制することが確認された。 2) 副次的薬理試験 該当なし。 3) 安全性薬理試験 中枢神経系,呼吸器系及び心血管系への影響をカニクイザルにおける4週間及び26週間反復 SC 投与毒性試験の中で評価した結果,一般症状,呼吸数,心電図検査,血圧並びに関連する 臓器及び組織の病理学的検査において投薬による影響は認められなかった。 4) 薬力学的薬物相互作用試験 該当なし。

2.6.2.2

効力を裏付ける試験

2.6.2.2.1

ヒト及びカニクイザルの膜結合型

IL-6R に対する結合活性

(資料番号4.2.1.1-1) ヒト及びカニクイザルの膜結合型 IL-6R に対するサトラリズマブの結合活性を確認する目的 で,ヒトあるいはカニクイザルの膜結合型 IL-6R を発現させたチャイニーズハムスター卵巣 (CHO)細胞を用いて,フローサイトメトリー法により評価した。陽性対照として,抗ヒト IL-6R IgG1抗体であるトシリズマブを使用した。 評価の結果,サトラリズマブは,ヒト及びカニクイザルの膜結合型 IL-6R に対し濃度依存的 な結合を示した(図 2.6.2.2.1-1)。結合を示す幾何平均蛍光強度(GMFI)を常用対数変換し

(12)

た数値を用いて50%効果濃度(EC50)を算出したところ,ヒト膜結合型 IL-6R 及びカニクイザ ル膜結合型IL-6R に対する EC50値(幾何平均)はいずれも0.019 μg/mL であった(表 2.6.2.2.1-1)。なお,体内での非特異的消失を低減させ血中滞留性を向上させる目的で pI を低下させる 改変を加えたことにより,膜結合型IL-6R への結合性に影響が及ぶ懸念があったが,サトラリ ズマブは,陽性対照として用いたトシリズマブと同等の結合活性を示した(図 2.6.2.2.1-1)。 図 2.6.2.2.1-1 ヒトあるいはカニクイザルの膜結合型 IL-6R を発現させた CHO 細胞に対する サトラリズマブの結合

独立して実施した3回の試験の内の代表的な1回の結果を示す(A:ヒト膜結合型 IL-6R を発現させた CHO 細胞, B:カニクイザル膜結合型 IL-6R を発現させた CHO 細胞)。 縦軸は幾何平均蛍光強度(GMFI),横軸は各抗体の濃度を示す。 各データポイントは平均値 ± 標準偏差(n = 3)を示す。 CH5333787はサトラリズマブを示す。 陽性対照としてトシリズマブ(tocilizumab)を用いた。 [4.2.1.1-1 Figure 2及び3を改変] 表 2.6.2.2.1-1 ヒトあるいはカニクイザルの膜結合型 IL-6R を発現させた CHO 細胞に対する サトラリズマブの結合のEC50値 対象 EC50 (μg/mL) 幾何平均(幾何標準偏差) ヒトIL-6R 0.019 (1.0) カニクイザルIL-6R 0.019 (1.1) EC50:50%効果濃度,IL-6R:インターロイキン6レセプター 独立して実施した3回の試験から得られた EC50値の幾何平均と幾何 標準偏差を示す。 [4.2.1.1-1 Table 1及び2を改変]

2.6.2.2.2

ヒト及びカニクイザルの可溶性

IL-6R に対する結合活性

(資料番号4.2.1.1-2) ヒト及びカニクイザルの可溶性 IL-6R に対するサトラリズマブの結合活性を確認する目的で, 37°C,pH 7.4条件下での解離定数(KD)値を表面プラズモン共鳴(SPR)により測定した。ま た,血中滞留性の向上を目的として行われた改変の一つである pH 依存的な抗原結合親和性を 評価するために,ヒト及びカニクイザルの可溶性IL-6R に対するサトラリズマブの結合と解離 のカイネティクスを,pH 7.4と pH 5.8の各条件下で SPR により解析した。いずれの試験でも対 照としてトシリズマブを使用した。 解析の結果,37°C,pH 7.4条件下でのヒト可溶性 IL-6R に対するサトラリズマブの KD値

(13)

(幾何平均)は1.5 nmol/L,トシリズマブの KD値(幾何平均)は5.8 nmol/L であり,カニクイ ザル可溶性IL-6R に対するサトラリズマブの KD値(幾何平均)は2.0 nmol/L,トシリズマブの KD値(幾何平均)は8.5 nmol/L であった(表 2.6.2.2.2-1)。ヒト及びカニクイザル可溶性 IL-6R に対してサトラリズマブは,37°C,pH 7.4条件下でトシリズマブに比べて強い親和性を示 すことが明らかとなった。 表 2.6.2.2.2-1 ヒト及びカニクイザル可溶性 IL-6R に対するサトラリズマブの ka値,kd値及びKD値(37°C,pH 7.4) 抗体 対象 ka値 (× 104 [mol/L]-1s-1) kd 値 (× 10-4s-1) KD 値 (× 10-9 mol/L) 幾何平均 (幾何標準偏差) 幾何平均 (幾何標準偏差) 幾何平均 (幾何標準偏差) サトラリズマブ ヒト可溶性 IL-6R 61.4 (1.0) 9.4 (1.0) 1.5 (1.0) カニクイザル 可溶性IL-6R 57.9 (1.0) 11.8 (1.0) 2.0 (1.0) トシリズマブ ヒト可溶性 IL-6R 20.1 (1.0) 11.6 (1.0) 5.8 (1.1) カニクイザル 可溶性IL-6R 17.2 (1.0) 14.7 (1.0) 8.5 (1.0) IL-6R:インターロイキン6レセプター,ka:結合速度定数,kd:解離速度定数,KD:解離定数 独立して実施した3回の SPR による測定から得られた各定数の幾何平均と幾何標準偏差を示す。 [4.2.1.1-2 Table 1を改変] また,サトラリズマブは,pH 5.8条件下では pH 7.4条件下に比べて速やかにヒト可溶性 IL-6R から解離した(図 2.6.2.2.2-1)。カニクイザル可溶性 IL-6R からの解離についてもヒト 可溶性IL-6R からの解離と同様の結果が得られた。

(14)

図 2.6.2.2.2-1 pH 7.4と pH 5.8条件下でのサトラリズマブからのヒト可溶性 IL-6R の解離

pH 7.4(A)と pH 5.8(B)の条件下でのヒト可溶性 IL-6R とサトラリズマブ(CH5333787)の相互作用を SPR で調べた3回の測定結果によるセンサーグラムを示す。

縦軸は結合の指標となる共鳴シグナル(単位はレゾナンスユニット[RU]),横軸は時間(単位は秒[s])を 示す。

図中の矢印は結合相(Association phase)と解離相(Dissociation phase)を示す。 陰性対照としてトシリズマブ(tocilizumab)を用いた。 [4.2.1.1-2 Figure 3を改変] 以上のことから,サトラリズマブはヒト及びカニクイザルの可溶性 IL-6R に対しトシリズマ ブに比べて強い親和性を持つことが示され,また,pH 依存的な抗原結合親和性を持つことが 示唆された。

2.6.2.2.3

ヒト可溶性

IL-6R に対する pH 依存的な結合活性

(資料番号4.2.1.1-3) サトラリズマブがpH 依存的な抗原結合親和性を持つことが示唆された(2.6.2.2.2)ことから, 更に詳細にpH 依存性を評価するために,37°C,各種の pH 条件下(pH 7.4,pH 7.0,pH 6.5, 及びpH 6.0)でのヒト可溶性 IL-6R に対するサトラリズマブの結合親和性を SPR で解析した。 解析の結果,結合速度定数(ka)値がpH 7.4から pH 6.0の間でほとんど変わらない一方で, 解離速度定数(kd)値はpH 7.4と pH 6.0で10倍以上の違いがみられ,サトラリズマブは pH が 低くなるに従ってヒト可溶性 IL-6R から速やかに解離することが示された(表 2.6.2.2.3-1)。 中性条件(pH 7.4)から酸性条件(pH 6.0)にかけて KD値が高くなっていることから,サトラ リズマブはヒト可溶性IL-6R に対して pH 依存的な結合親和性を持つことが示された。

(15)

表 2.6.2.2.3-1 各種の pH 条件下におけるサトラリズマブとヒト可溶性 IL-6R の結合における ka値,kd値及びKD値(37°C) ka値 (× 104 [mol/L]-1s-1) (× 10kd 値 -4 s-1) (× 10K-9 Dmol/L) 値 pH 7.4 46.8 ± 1.7 8.85 ± 0.32 1.89 ± 0.026 pH 7.0 47.0 ± 1.5 12.4 ± 0.96 2.64 ± 0.25 pH 6.5 43.8 ± 3.9 29.9 ± 0.70 6.87 ± 0.80 pH 6.0 32.7 ± 1.0 110 ± 1.0 33.6 ± 1.4 ka:結合速度定数,kd:解離速度定数,KD:解離定数 独立して実施した3回の SPR による測定から得られた各定数の平均値 ± 標準偏差を示す。 [4.2.1.1-3 Table 3を改変]

2.6.2.2.4

ヒト及びカニクイザル

Fc レセプターに対する結合活性

(資料番号4.2.1.1-4) 血中滞留性の向上を目的としてサトラリズマブに行われた改変の一つである,酸性条件下で の FcRn への結合性増強を評価する目的で,25°C,pH 6.0条件下でのサトラリズマブのヒト及 びカニクイザルのFcRn に対する KD値をSPR により測定した。陰性対照として,非改変の天 然型ヒト IgG2抗体(パニツムマブ)を使用した。次に,FcγR への結合親和性が低いとされる IgG2骨格を有するサトラリズマブに対して行われた定常領域のアミノ酸改変が FcγR への結合 に及ぼす影響を評価する目的で,20°C,pH 7.4条件下でのサトラリズマブのヒト及びカニクイ ザルの FcγR に対する結合を SPR により測定した。陽性対照として非改変の天然型 IgG1抗体 (トシリズマブ)を,陰性対照として非改変の天然型 IgG2抗体(パニツムマブ)をそれぞれ 使用した。 測定の結果,ヒト及びカニクイザルFcRn に対するサトラリズマブの KD値は,非改変の天然 型ヒトIgG2抗体に比べて低かった(表 2.6.2.2.4-1)。 表 2.6.2.2.4-1 ヒト及びカニクイザル FcRn に対するサトラリズマブの KD値 抗体 対象 KD値(× 10 -7 mol/L) 幾何平均(幾何標準偏差) サトラリズマブ ヒトFcRn 6.8 (1.0) カニクイザルFcRn 6.4 (1.0) 非改変の天然型 IgG2抗体 ヒトFcRn 21 (1.0) カニクイザルFcRn 19 (1.0) FcRn:胎児性 Fc レセプター,IgG2:免疫グロブリン G2,KD:解離定数 独立して実施した3回の SPR による測定から得られた KD値の幾何平均と幾何標準偏差 を示す。 [4.2.1.1-4 Table 1を改変] 1塩基多型を含む8種類のヒト FcγR(Ia,IIa,IIb,IIIa,IIIb)に対するサトラリズマブの結 合は,トシリズマブの結合に比べて弱く,非改変の天然型 IgG2抗体であるパニツムマブの結 合に比べてほぼ同等又は弱かった(図 2.6.2.2.4-1)。1塩基多型を含む7種類のカニクイザル FcγR(Ia,IIa,IIb,IIIa)に対するサトラリズマブの結合は,トシリズマブ及びパニツムマブ の結合に比べてほぼ同等又は弱かった(図 2.6.2.2.4-2)。

(16)

図 2.6.2.2.4-1 ヒト FcγR に対するサトラリズマブの結合

1塩基多型を含む8種類のヒト FcγR に対するサトラリズマブ(CH5333787)の結合を SPR で調べた3回の測定結 果の平均値 ± 標準偏差を示す。

縦軸はセンサーチップに捕捉された抗体量で補正した各FcγR との結合量を示す。

陽性対照としてトシリズマブ(tocilizumab),陰性対照としてパニツムマブ(panitumumab)を用いた。

FcγR:Fcγ レセプター,h:ヒト,hFcγRIIa (R):hFcγRIIa_167Arg,hFcγRIIa (H):hFcγRIIa_167His,hFcγRIIIa (F) : hFcγRIIIa_176Phe , hFcγRIIIa (V) : hFcγRIIIa_176Val , hFcγRIIIb NA1 : hFcγRIIIb neutrophil antigen 1 , hFcγRIIIb NA2:hFcγRIIIb neutrophil antigen 2

(17)

図 2.6.2.2.4-2 カニクイザル FcγR に対するサトラリズマブの結合 1塩基多型を含む7種類のカニクイザル FcγR に対するサトラリズマブ(CH5333787)の結合を SPR で調べた3回 の測定結果の平均値 ± 標準偏差を示す。 縦軸はセンサーチップに捕捉された抗体量で補正した各FcγR との結合量を示す。 陽性対照としてトシリズマブ(tocilizumab),陰性対照としてパニツムマブ(panitumumab)を用いた。 cy:カニクイザル,cyFcγRIIa1:cyFcγRIIa_1,cyFcγRIIa2:cyFcγRIIa_2,cyFcγRIIa3:cyFcγRIIa_3,cyFcγRIIIa (S):cyFcγRIIIa_42Ser,cyFcγRIIIa (R):cyFcγRIIIa_42Arg,FcγR:Fcγ レセプター [4.2.1.1-4 Figure 5を改変] 以上のことから,ヒト IgG2の定常領域にアミノ酸改変を施したサトラリズマブは,非改変 のヒト天然型IgG2抗体に比べて,ヒト及びカニクイザル FcRn に対する親和性が向上している ことが明らかとなった。また,ヒト及びカニクイザル FcγR に対するサトラリズマブの結合は, 非改変のヒト天然型 IgG1抗体及びヒト天然型 IgG2抗体に比べて,ほぼ同等又は弱く,サトラ リズマブに対して行われた定常領域のアミノ酸改変がヒト及びカニクイザルの FcγR への結合 を増強させるような影響を及ぼしていないと考えられた。

2.6.2.2.5

ADCC 活性及び CDC 活性

(資料番号4.2.1.1-5) サトラリズマブのADCC 活性及び CDC 活性を,ヒト IL-6R を発現する細胞株 U266を用いて, カルセインリリースアッセイにより評価した。ADCC 活性評価のためのエフェクター細胞とし て健康成人由来の末梢血単核球(PBMC)を用い,CDC 活性評価のための補体としてヒト補 体血清を用いた。今回用いた評価系の妥当性評価のために,CD20を発現する細胞株 BALL-1 に対するリツキシマブのADCC 活性及び CDC 活性を確認した。 リツキシマブの BALL-1に対する明らかな ADCC 活性及び CDC 活性が認められた一方で, サトラリズマブのU266に対する ADCC 活性及び CDC 活性は認められなかった(図 2.6.2.2.5-1,図 2.6.2.2.5-2)。

(18)

図 2.6.2.2.5-1 サトラリズマブの ADCC 活性評価

U266に対するサトラリズマブ(CH5333787)の ADCC 活性(A)及び BALL-1に対するリツキシマブ(rituximab) の ADCC 活性(B)を,3名の健康成人由来の PBMC をエフェクター細胞として用いてそれぞれ評価した3回の 試験の内の代表的な1回の結果を示す。 グラフの各データポイントは平均値 ± 標準偏差(n = 3)を示す。 E:T:エフェクター細胞と標的細胞の比率 [4.2.1.1-5 Figure 1を改変] 図 2.6.2.2.5-2 サトラリズマブの CDC 活性評価

U266に対するサトラリズマブ(CH5333787)の CDC 活性(A)及び BALL-1に対するリツキシマブ(rituximab) のCDC 活性(B)を,ヒト補体血清を用いて,独立して3回実施した試験の内の代表的な1回の結果を示す。 グラフの各データポイントは平均値 ± 標準偏差(n = 3)を示す。 C’:補体希釈係数 [4.2.1.1-5 Figure 3を改変] 以上のことから,サトラリズマブが,PBMC による ADCC 活性,及び CDC 活性を誘導する 可能性は極めて低いことが示唆された。

2.6.2.2.6

膜結合型及び可溶性

IL-6R を介した IL-6活性発現に対する抑制作用

(資料番号4.2.1.1-6) 膜結合型IL-6R を介した IL-6のシグナル伝達(古典的シグナリング)及び可溶性 IL-6R を介 したIL-6のシグナル伝達(トランスシグナリング)に対するサトラリズマブの抑制作用を評価 した。古典的シグナリングによるIL-6依存的な細胞増殖に対するサトラリズマブの抑制作用を, ヒトgp130及び,ヒト膜結合型 IL-6R あるいはカニクイザル膜結合型 IL-6R を発現させた組換 え細胞(BaF/hIL-6R あるいは BaF/CyIL-6R)を用いて評価した。また,トランスシグナリング

(19)

による IL-6依存的な細胞増殖に対するサトラリズマブの抑制作用を,ヒト gp130を発現させた 組換え細胞(BaF/hgp130)を用いて,ヒトあるいはカニクイザル可溶性 IL-6R 存在下で評価し た。陽性対照としてトシリズマブを使用した。

BaF/hIL-6R あるいは BaF/CyIL-6R は,ヒト IL-6あるいはカニクイザル IL-6の添加により細胞 増殖を示した。また,BaF/hgp130は,ヒト IL-6及びヒト可溶性 IL-6R,あるいは,カニクイザ ルIL-6及びカニクイザル可溶性 IL-6R の添加により細胞増殖を示した。サトラリズマブ及びト シリズマブはこれらの細胞増殖に対し濃度依存的な抑制作用を示した。古典的シグナリングに よる細胞増殖に対するサトラリズマブ及びトシリズマブの50%阻害濃度(IC50)の幾何平均は, ヒト IL-6R に対して11 μg/mL 及び5.1 μg/mL,カニクイザル IL-6R に対して3.9 μg/mL 及び 2.1 μg/mL であった。また,トランスシグナリングによる細胞増殖に対するサトラリズマブ及 びトシリズマブのIC50の幾何平均は,ヒトIL-6R に対して0.038 μg/mL 及び0.078 μg/mL,カニ クイザルIL-6R に対して0.046 μg/mL 及び0.067 μg/mL であった(表 2.6.2.2.6-1)。 以上のように,サトラリズマブは,膜結合型IL-6R を介した IL-6の古典的シグナリング及び 可溶性IL-6R を介した IL-6のトランスシグナリングいずれに対しても濃度依存的に抑制するこ とが示唆された。 表 2.6.2.2.6-1 膜結合型及び可溶性 IL-6R を介した IL-6依存性細胞増殖に対する サトラリズマブのIC50値 組換え細胞 (発現レセプター) リガンド等 (濃度) 抗体 IC50 (μg/mL) 幾何平均 (幾何標準偏差) 古典的シグナリング BaF/hIL-6R (hgp130/hmIL-6R) (10 ng/mL) hIL-6 サトラリズマブ 11 (1.3) トシリズマブ 5.1 (1.8) BaF/CyIL-6R (hgp130/cyno.mIL-6R) (10 ng/mL) cyno.IL-6 サトラリズマブ 3.9 (2.3) トシリズマブ 2.1 (1.8) トランスシグナリング BaF/hgp130 (hgp130) hsIL-6R 及び hIL-6 (30 ng/mL ずつ) サトラリズマブ 0.038 (1.4) トシリズマブ 0.078 (1.3) BaF/hgp130 (hgp130) cyno.sIL-6R 及び cyno.IL-6 (30 ng/mL ずつ) サトラリズマブ 0.046 (1.5) トシリズマブ 0.067 (1.6) BaF/CyIL-6R:ヒト gp130及びカニクイザル膜結合型 IL-6R を発現させた組換え細胞株,BaF/hgp130:ヒト gp130を発現させた組換え細胞株,BaF/hIL-6R:ヒト gp130及びヒト膜結合型 IL-6R を発現させた組換え細胞 株,cyno.:カニクイザル,h:ヒト,IC50:50%阻害濃度,IL-6:インターロイキン6,IL-6R:インターロイキ

ン6レセプター,mIL-6R:膜結合型 IL-6R,sIL-6R:可溶性 IL-6R

独立して実施した3回の試験から得られた IC50値の幾何平均と幾何標準偏差を示す。

陽性対照としてトシリズマブを使用した。

[4.2.1.1-6Table 1を改変]

2.6.2.2.7

IL-6ファミリーサイトカインレセプターのシグナル伝達に対する影響

(資料番号4.2.1.1-7) IL-6R を介した IL-6のシグナル伝達と同様に gp130を共有する IL-6ファミリーサイトカイン であるLIF,IL-11,CNTF 及び OSM のシグナル伝達に対するサトラリズマブの影響を,各サ

(20)

イトカインに対するレセプター及び gp130を Ba/F3細胞に発現させたそれぞれの組換え細胞を 用いて評価した。

各組換え細胞は,それぞれヒトIL-6,ヒト LIF,ヒト IL-11,ヒト CNTF 及びヒト OSM の濃 度に依存した増殖を示した。サトラリズマブはヒトIL-6依存性の増殖に対し濃度依存的な中和 活性を示した一方で,他のIL-6ファミリーサイトカインによる増殖に対して作用を示さなかっ た(図 2.6.2.2.7-1)。 以上のことから,サトラリズマブは,IL-6ファミリーサイトカインである LIF,IL-11, CNTF 及び OSM の各シグナル伝達に対して影響しないことが示された。 図 2.6.2.2.7-1 IL-6ファミリーサイトカインレセプターに対するサトラリズマブの影響 各サイトカインに対するレセプター及び gp130を発現させた組換え細胞を用いて,各サイトカイン刺激による細 胞増殖に対するサトラリズマブ(CH5333787)の影響を調べた結果の平均値 ± 標準偏差(n = 3)を示す。 縦軸は細胞数を表す吸光度,横軸はサイトカイン濃度を示す。 CNTF:毛様体神経栄養因子,IL-6:インターロイキン6,IL-11:インターロイキン11,LIF:白血病抑制因子, OSM:オンコスタチン M [4.2.1.1-7Figure 1を改変]

(21)

2.6.2.2.8

IL-6によるヒトプラズマブラストの IgG1産生に対する抑制作用

(資料番号4.2.1.1-8) IL-6によるヒトプラズマブラスト(CD19+, CD27+, CD38+, CD180-)のIgG1産生に対するサト ラリズマブの作用を評価した。健康成人の末梢血より単離したプラズマブラストを,インター ロイキン-21(50 ng/mL)と抗 CD40抗体(1 μg/mL)存在下で,IL-6(1 ng/mL)及びサトラリ ズマブ(1 μg/mL)の有無の条件下で6日間培養し,それぞれの培養上清中の IgG1サブクラス の量を酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により測定し IgG1産生の指標とした。 プ ラ ズ マ ブ ラ ス ト に よ る IgG1 産 生 は IL-6 添 加 に よ り 有 意 に 増 加 し ( 変 化 量 は 295 ± 190 ng/mL[平均値 ± 標準偏差];P < 0.001,対応のある両側 t 検定),この IL-6で誘導され るIgG1産生は,サトラリズマブにより有意に抑制された(変化量は90 ± 140 ng/mL[平均値 ± 標準偏差];P < 0.05,対応のある両側 t 検定)(図 2.6.2.2.8-1)。 以上のことから,サトラリズマブは IL-6によるヒトプラズマブラストの抗体産生を抑制する ことが示唆された。 図 2.6.2.2.8-1 IL-6によるヒトプラズマブラストの IgG1産生に対するサトラリズマブの作用 12名の健康成人から単離されたプラズマブラストによる,インターロイキン6(IL-6)及びサトラリズマブ (SA237)の存在又は非存在下での免疫グロブリン G1(IgG1)産生の実測値を示す。 対応のある両側t 検定により統計学的有意性を検定し,*は P < 0.05,**は P < 0.001を示す。 [4.2.1.1-8Figure 2を改変]

2.6.2.2.9

IL-6によるヒト T 細胞増殖に対する抑制作用

(資料番号4.2.1.1-9[参考資料]) ヒトT 細胞における IL-6R を介したシグナル伝達に対するサトラリズマブの作用を評価する 目的で,フィトヘマグルチニン-L(PHA-L)で活性化した,健康成人由来の末梢血 T 細胞を用 いて,[3H]-チミジン取り込みを指標として細胞増殖を調べた。健康成人末梢血 PBMC から T 細胞を単離し,PHA-L(最終濃度2 μg/mL)で活性化後,各濃度のサトラリズマブ(最終濃度0 ~100 μg/mL)を添加し,更に,ヒト IL-6(最終濃度10 ng/mL)を添加した。3日間培養後, [3H]-チミジンの取り込み量を測定し,放射活性の相対値(% of control)を下記算出式により 算出した。

(22)

(% of control) = 各ウェルの放射活性 − PHA-L 単独群の放射活性の平均値

PHA-L + ヒト IL-6群の放射活性の平均値 − PHA-L 単独群の放射活性の平均値 × 100 この相対値を細胞増殖の指標として用いて,細胞増殖に対する IC50値を算出した。陽性対照 としてトシリズマブを使用した。 PHA-L で活性化したヒト末梢血 T 細胞による[3H]-チミジンの取り込み量は,ヒト IL-6によ り増加し,サトラリズマブ及びトシリズマブはこの増加を濃度依存的に抑制した。3名の健康 成人に由来するヒト末梢血T 細胞増殖に対するサトラリズマブ及びトシリズマブの IC50値の幾 何平均はそれぞれ,4.4 μg/mL 及び2.9 μg/mL であった(表 2.6.2.2.9-1)。 以上のことから,サトラリズマブは,ヒト末梢血T 細胞のヒト IL-6R を介したシグナル伝達 を阻害して,PHA-L で活性化された T 細胞の IL-6による増殖を抑制することが明らかとなっ た。 表 2.6.2.2.9-1 PHA-L 及びヒト IL-6刺激によるヒト T 細胞増殖に対する サトラリズマブのIC50値 抗体 IC50 (μg/mL) ドナー1 ドナー2 ドナー3 (幾何標準偏差)幾何平均 サトラリズマブ 2.6 4.2 8.0 4.4 (1.8) トシリズマブ 1.6 4.1 3.8 2.9 (1.7) IC50:50%阻害濃度,PHA-L:フィトヘマグルチニン-L 3名の健康成人に由来する T 細胞を用いた試験から得られた IC50値の幾何平均と幾何標 準偏差を示す。 各ドナーのIC50値は平均値(n = 6)から算出した。 陽性対照としてトシリズマブを用いた。 [4.2.1.1-9 Table 1を改変]

2.6.2.2.10

IL-6及び可溶性 IL-6R によるヒト滑膜細胞の MCP-1及び VEGF 産生に

対する抑制作用

(資料番号4.2.1.1-10) ヒトIL-6及びヒト可溶性 IL-6R 刺激による HFLS-RA の MCP-1及び VEGF 産生に対するサト ラ リ ズ マ ブ の 作 用 を 評 価 し た 。HFLS-RA に 各 濃 度 の サ ト ラ リ ズ マ ブ ( 最 終 濃 度 0 ~ 100 μg/mL),ヒト IL-6(最終濃度50 ng/mL)及びヒト可溶性 IL-6R(最終濃度50 ng/mL)を添 加し,2日間培養した後の培養上清中の MCP-1及び VEGF 濃度を ELISA により測定した。 MCP-1及び VEGF 産生の相対値(% of control)を下記算出式により算出した。 (% of control) = 各ウェルの MCP-1又は VEGF 濃度 − 無刺激対照群の MCP-1又は VEGF 濃度の平均値 刺激対照群の MCP-1又は VEGF 濃度の平均値 − 無刺激対照群の MCP-1又は VEGF 濃度の平均値 × 100 この相対値を MCP-1及び VEGF 産生の指標として用い,MCP-1及び VEGF 産生に対する IC50値を算出した。陽性対照としてトシリズマブを使用した。

ヒトIL-6及びヒト可溶性 IL-6R の添加により,HFLS-RA 培養上清中の MCP-1及び VEGF 濃 度が増加し,サトラリズマブ及びトシリズマブは,この増加を濃度依存的に抑制した。サトラ リズマブ及びトシリズマブの MCP-1産生に対する IC50値の幾何平均は,それぞれ0.17 μg/mL

(23)

及び0.26 μg/mL であった。また,サトラリズマブ及びトシリズマブの VEGF 産生に対する IC50 値の幾何平均は,それぞれ0.44 μg/mL 及び0.32 μg/mL であった(表 2.6.2.2.10-1)。 以上のことから,サトラリズマブは,可溶性IL-6R を介した IL-6シグナルを阻害することに より,HFLS-RA の MCP-1及び VEGF 産生を抑制することが明らかとなった。 表 2.6.2.2.10-1 HFLS-RA による MCP-1及び VEGF 産生に対するサトラリズマブの IC50値 抗体 IC50 (μg/mL) 実験1 実験2 実験3 幾何平均(幾何標準偏差) MCP-1産生 サトラリズマブ 0.081 0.56 a 0.11 0.17 (2.9) トシリズマブ 0.17 0.35 0.28 0.26 (1.4) VEGF 産生 サトラリズマブ 0.63 0.89 0.15 0.44 (2.6) トシリズマブ 0.27 0.35 0.33 0.32 (1.2) HFLS-RA:関節リウマチ患者由来ヒト滑膜細胞,MCP-1:単球走化性蛋白質-1,VEGF:血管内皮増殖因 子 独立して実施した3回の試験から得られた IC50値の幾何平均と幾何標準偏差を示す。 各実験のIC50値は平均値(n = 3,a は n = 2を含む)から算出した。 陽性対照としてトシリズマブを使用した。 [4.2.1.1-10Table 2及び3を改変]

2.6.2.2.11

カニクイザルにおける

IL-6活性の抑制作用

(資料番号4.2.1.1-11及び4.2.1.1-12) ヒトにおけるサトラリズマブの SC 投与による血中動態と薬効を予測する目的で,カニクイ ザルを用いて,カニクイザル IL-6刺激による CRP 産生に対するサトラリズマブの作用を調べ た。カニクイザルにとって異種蛋白質であるサトラリズマブを SC 投与することから,試験期 間中,抗薬物抗体の出現に伴う血中濃度の低下が懸念された。そのため,抗薬物抗体による影 響を受けにくいと考えられる短期評価系(試験プロトコール1)とサトラリズマブの臨床での 想定投与頻度である月1回投与による評価系(試験プロトコール2,単回投与後28日まで)で評 価した。陽性対照としてトシリズマブを使用した。 試験プロトコール1:カニクイザル(雄,1群4例)に溶媒,サトラリズマブ(0.5 mg/kg), 又はトシリズマブ(1 mg/kg)を SC 投与した。投与前及び投与3日後(day 3)から day 11まで, 毎日採血した。day 3から day 10まで,採血後にカニクイザル IL-6(5 μg/kg)を SC 投与した。

試験プロトコール2:カニクイザル(雄,1群4~5例)に溶媒,サトラリズマブ(1 mg/kg 又 は2 mg/kg),又はトシリズマブ(2 mg/kg)を SC 投与した。投与前及び day 4から day 28まで, 2日に1回採血した。day 5から day 27まで2日に1回,カニクイザル IL-6(5 μg/kg)を SC 投与し た。

いずれの試験プロトコールでも,試験開始前(試験プロトコール1では14日前,試験プロト コール2では8日前)に採血を行い,カニクイザル IL-6(5 μg/kg)を SC 投与して24時間後の血 漿CRP 濃度(CRPmaxと定義)を測定した。図 2.6.2.2.11-1に試験プロトコールの概要を示した。

(24)

図 2.6.2.2.11-1 試験プロトコール概要

cyno.IL-6:カニクイザルインターロイキン6,CH5333787:サトラリズマブ,s.c.:皮下投与,tocilizumab:トシ リズマブ,Vehicle:溶媒(0.5 mg/mL ポロキサマ―188,20 mmol/L ヒスチジン,150 mmol/L アルギニン‐アス パラギン酸,pH 6.0) [4.2.1.1-11で使用されている図を改変] 血液から血漿を分離し,血漿中の CRP 濃度,フリー可溶性 IL-6R 濃度(サトラリズマブあ るいはトシリズマブが結合していない可溶性IL-6R 濃度),トータル可溶性 IL-6R 濃度(サト ラリズマブあるいはトシリズマブが結合している可溶性IL-6R とフリー可溶性 IL-6R の総和濃 度),サトラリズマブ濃度,トシリズマブ濃度,抗サトラリズマブ抗体価,及び抗トシリズマ ブ抗体濃度を測定した。なお,抗サトラリズマブ抗体価陽性で血漿サトラリズマブ濃度が定量 限界(0.05 μg/mL)未満の個体及び抗トシリズマブ抗体が検出され血漿トシリズマブ濃度が定 量限界(0.781 μg/mL)未満の個体については,その時点以降のデータを除外して,血漿中の CRP 濃度,フリー可溶性 IL-6R 濃度及びトータル可溶性 IL-6R 濃度の平均値及び標準誤差を算 出した。 試験プロトコール1での試験の結果を図 2.6.2.2.11-2に示した。サトラリズマブ(0.5 mg/kg) 投与群,トシリズマブ(1 mg/kg)投与群とも day 3での平均血漿中濃度はほぼ同等であったが, トシリズマブ投与群の血漿中濃度が day 7で定量限界未満のレベルまで速やかに消失したのに 比べて,サトラリズマブ投与群ではday 10においても平均で約1 μg/mL を維持していた。溶媒 投与群で,カニクイザル IL-6刺激による血漿 CRP 濃度の上昇がみられたが,サトラリズマブ 投与群では,day 11まで持続的に血漿 CRP 濃度の上昇が抑制された。また,血漿フリー可溶性 IL-6R 濃度はサトラリズマブ投与後に減少した後,徐々に増加し,day 11に投与前と同レベル となった。血漿トータル可溶性IL-6R 濃度はサトラリズマブ投与後に上昇した後,試験期間中, 高レベルで維持されていた。なお,サトラリズマブ投与群の4例中2例で,それぞれ day 9と day 10に抗サトラリズマブ抗体価陽性となったが,その後 day 11まで血漿サトラリズマブ濃度 が定量限界未満となることはなかった。

(25)

図 2.6.2.2.11-2 カニクイザルにおける IL-6活性の抑制効果(試験プロトコール1)

血漿中のサトラリズマブ(CH5333787)濃度及びトシリズマブ(tocilizumab)濃度(A),血漿中の C 反応性蛋 白質(CRP)濃度(B),血漿中のフリー可溶性インターロイキン6レセプター(free sIL-6R)濃度(C),血漿 中のトータル可溶性IL-6R(total sIL-6R)濃度(D)を平均値±標準誤差(n = 4,a は n = 2)で示す。

a:抗トシリズマブ抗体が検出され血漿中トシリズマブ濃度が定量限界(0.781 μg/mL)未満の個体のデータを除 いて平均値と標準誤差を算出した。

[4.2.1.1-11 Figure 1, 2, 3及び4を改変] 試験プロトコール2の試験の結果を図 2.6.2.2.11-3に示した。2 mg/kg のサトラリズマブ投与 群の平均血漿サトラリズマブ濃度は,28日間にわたり1 μg/mL 以上に維持され,カニクイザル IL-6刺激による CRP 産生を day 28においても抑制した。また,血漿フリー可溶性 IL-6R 濃度は サトラリズマブ投与後に減少した後,徐々に増加したもののday 28においても投与前よりも低 いレベルに抑制されており,血漿トータル可溶性IL-6R 濃度はサトラリズマブ投与後に上昇し た後,試験期間中,高レベルで維持されていた。なお,2 mg/kg のサトラリズマブ投与群では, 5例中3例が抗サトラリズマブ抗体価陽性となり(day 10, day 12, 及び day 26),その内2例が 血漿サトラリズマブ濃度が定量限界未満となった(day 14, day 20以降)。また,1 mg/kg のサ トラリズマブ投与群では,全4例が day 12から day 20までに抗サトラリズマブ抗体価陽性とな り,day 20から day 26までに血漿サトラリズマブ濃度が定量限界未満となった。

(26)

図 2.6.2.2.11-3 カニクイザルにおける IL-6活性の抑制効果(試験プロトコール2)

血漿中のサトラリズマブ(CH5333787)濃度及びトシリズマブ(tocilizumab)濃度(A),血漿中の C 反応性蛋 白質(CRP)濃度(B),血漿中のフリー可溶性インターロイキン6レセプター(free sIL-6R)濃度(C),血漿 中のトータル可溶性IL-6R(total sIL-6R)濃度(D)を平均値±標準誤差(n = 4~5,a は n = 1~4,n = 1の場合 は実測値)で示す。(A)は血漿中のサトラリズマブ濃度又はトシリズマブ濃度が定量限界未満の個体を 0 μg/mL として平均値及び標準誤差を算出した。 a:抗サトラリズマブ抗体が検出され血漿サトラリズマブ濃度が定量限界(0.05 μg/mL)未満の個体のデータ, 又は抗トシリズマブ抗体が検出され血漿トシリズマブ濃度が定量限界(0.781 μg/mL)未満の個体のデータを除 いて平均値と標準誤差を算出した。 [4.2.1.1-11Figure 5, 6, 7及び8を改変] 次に,血漿サトラリズマブ濃度又は血漿トシリズマブ濃度と血漿 CRP との相関図を図 2.6.2.2.11-4に示した。血漿CRP 濃度測定値(図 2.6.2.2.11-4 (A))及び個々の血漿 CRP 濃度測 定値を CRPmax(サトラリズマブ又はトシリズマブ投与前のカニクイザル IL-6初回投与後24時 間の血漿 CRP 濃度)で除算した値(図 2.6.2.2.11-4 (B))をプロットした。その結果,血漿 CRP に対する血漿サトラリズマブ濃度のプロットは,血漿 CRP に対する血漿トシリズマブ濃 度のプロットとほぼ同一であった。したがって,サトラリズマブはトシリズマブと同程度の血 漿中濃度でIL-6による CRP 産生を抑制することが示された。

(27)

図 2.6.2.2.11-4 血漿サトラリズマブ濃度又は血漿トシリズマブ濃度と血漿 CRP の関係 血漿中のサトラリズマブ(CH5333787)濃度又は血漿中のトシリズマブ(tocilizumab)濃度と,血漿中の C 反応 性蛋白質(CRP)濃度の関係(A),血漿中のサトラリズマブ濃度又は血漿中のトシリズマブ濃度と,血漿中の CRP/CRPmax(サトラリズマブ又はトシリズマブ投与7日以上前のカニクイザル IL-6初回投与後24時間の血漿中の CRP 濃度)値の関係(B)を示す。 [4.2.1.1-11Figure 9を改変] 以上,サトラリズマブはカニクイザルにおいて,カニクイザル IL-6刺激による CRP 産生を 抑制した。また,トシリズマブに比べて長期間高い血漿中濃度を維持して,サルIL-6刺激によ る CRP 産生抑制作用及びフリー可溶性 IL-6R 減少作用もトシリズマブに比べて持続すること が明らかとなった。更に,2 mg/kg のサトラリズマブ SC 投与では,day 28でサル IL-6誘導 CRP 産生の抑制,フリー可溶性 IL-6R の減少,更に上昇したトータル可溶性 IL-6R の維持を示 すことから,1回の SC 投与で IL-6シグナルを1カ月持続的に阻害できるサトラリズマブの投与 量は2 mg/kg と推定された。

2.6.2.3

副次的薬理試験

該当なし。

2.6.2.4

安全性薬理試験

サトラリズマブはヒト化抗体であるため,ICH S6及び ICH M3 (R2)ガイダンスを考慮して, カニクイザルを用いた4週間及び26週間反復 SC 投与毒性試験で中枢神経系,呼吸器系及び心 血管系を評価した(2.6.6.3.2及び2.6.6.3.3参照)。 一般状態,呼吸数,心電図,血圧及び病理検査(剖検,並びに中枢神経系,呼吸器系及び心 血管系に関連する臓器及び組織の組織学的検査)で,サトラリズマブ投与による有害作用は検 討した最高用量50 mg/kg/week まで認められなかった。

2.6.2.5

薬力学的薬物相互作用試験

該当なし。

(28)

2.6.2.6

考察及び結論

サトラリズマブはヒト 6R に対するヒト化 IgG2抗体である。サトラリズマブの抗ヒト IL-6R 抗体としての特性を,in vitro 薬理試験で評価した。 サトラリズマブは,中性条件下でヒト及びカニクイザルの膜結合型 IL-6R 及び可溶性 IL-6R に結合する。サトラリズマブは,酸性条件下でトシリズマブと異なる特性を示し,トシリズマ ブよりも速やかに可溶性 IL-6R から解離する。サトラリズマブは,酸性条件下で,対照 IgG2 抗体よりも強い FcRn 結合親和性を示した。一方,中性条件下では,サトラリズマブのヒト FcγR に対する結合親和性は,対照 IgG2抗体と同程度又はそれ以下であり,サトラリズマブは ヒトIL-6R を発現する細胞株 U266に対し ADCC 活性又は CDC 活性を示さなかった。

ヒト gp130とヒト膜結合型 IL-6R を発現させた組換え細胞株及びヒト gp130とカニクイザル 膜結合型 IL-6R を発現させた組換え細胞株を用いた試験,並びにヒト gp130を発現させた組換 え細胞株を用いた試験の結果から,サトラリズマブは膜結合型IL-6R を介した IL-6シグナル伝 達(古典的シグナリング)及び可溶性IL-6R を介した IL-6シグナル伝達(トランスシグナリン グ)の双方を濃度依存的に阻害することが示された。一方,サトラリズマブは,IL-6ファミリ ーサイトカイン(LIF,IL-11,CNTF 及び OSM)のシグナル伝達に対し,影響を及ぼさなかっ た。サトラリズマブは,IL-6による,ヒトプラズマブラストの IgG1産生,活性化したヒト末 梢血由来T 細胞の増殖,並びに HFLS-RA の MCP-1及び VEGF 産生を抑制した。 In vivo 薬理試験は,サトラリズマブに交差反応性を示すカニクイザルで実施した。サトラリ ズマブは,高い血漿中濃度をトシリズマブよりも長期間維持し,カニクイザル IL-6による CRP 産生をより持続的に抑制し,フリーの可溶性 IL-6R 濃度をより持続的に低下させた。更 に,サトラリズマブを2 mg/kg の用量で SC 投与したとき,平均血漿サトラリズマブ濃度は28 日間にわたって1 μg/mL 以上に維持され,CRP 産生及びフリーの可溶性 IL-6R 濃度の双方が持 続的に低値に抑制された。これらの結果から,月1回の SC 投与で持続的に IL-6シグナル伝達 を阻害可能なサトラリズマブ用量は2 mg/kg であると推定された。 以上,サトラリズマブは,抗 IL-6R 抗体としての基本特性を持つことが示された。更に,サ トラリズマブは,pH 依存的な IL-6R 結合親和性を示し,酸性条件下(pH 6.0)で従来の IgG2 抗体よりも強くFcRn に結合し,また,ヒト FcγR 結合が従来の IgG2抗体よりも弱いか同程度 であり,ADCC 活性又は CDC 活性を示さなかったことから,サトラリズマブは意図された抗 体改変による特性を有することが確認された。また,サトラリズマブはカニクイザルにおいて IL-6の生物学的活性を抑制することが確認された。 中枢神経系,呼吸器系及び心血管系への影響をカニクイザルにおける4週間及び26週間反復 SC 投与毒性試験の中で評価した結果,一般症状,呼吸数,心電図検査,血圧並びに関連する 臓器及び組織の病理学的検査において投薬による影響は認められなかった。

2.6.2.7

図表

図表は本文中に挿入した。

2.6.2.8

参考文献

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(29)

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20) .SAQRA のマウス IL-6レセプターへの交差性検証試験(Study No. PHM -0069S).中外製薬株式会社 社内報告書, .

21) .SAQRA のラット IL-6レセプターへの交差性検証試験(Study No. PHM -0095S).中外製薬株式会社 社内報告書, .

(30)

エンスプリング皮下注120 mg シリンジ

(サトラリズマブ(遺伝子組換え))

[視神経脊髄炎スペクトラム]

2部 (モジュール2):CTD の概要(サマリー)

2.6.3 薬理試験概要表

中外製薬株式会社

(31)

目次

2.6.3 薬理試験概要表 ... 3 2.6.3.1 薬理試験一覧表 ... 3 2.6.3.2 効力を裏付ける試験 ... 5 2.6.3.3 副次的薬理試験 ... 8 2.6.3.4 安全性薬理試験 ... 8 2.6.3.5 薬力学的薬物相互作用試験 ... 8

表一覧

表 2.6.3.1-1 薬理試験一覧表 ... 3 表 2.6.3.2-1 効力を裏付ける試験 ... 5

(32)

2.6.3

薬理試験概要表

2.6.3.1

薬理試験一覧表

表 2.6.3.1-1 薬理試験一覧表 被験物質:サトラリズマブ 試験の種類 試験系 投与方法 実施施設 試験番号 資料番号 効力を裏付ける試験 ヒト及びカニクイザルの膜結合型IL-6R に対す る結合活性 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0045 4.2.1.1-1 ヒト及びカニクイザルの可溶性IL-6R に対する 結合活性 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0192 4.2.1.1-2 ヒト可溶性IL-6R に対する pH 依存的な結合活 性 In vitro — PHM -0119 4.2.1.1-3 ヒト及びカニクイザルFc レセプターに対する 結合活性 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0194 4.2.1.1-4 ADCC 活性及び CDC 活性 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0217 4.2.1.1-5 膜結合型及び可溶性IL-6R を介した IL-6活性発 現に対する抑制作用 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0048 4.2.1.1-6 IL-6ファミリーサイトカインレセプターのシグ ナル伝達に対する影響 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0228 4.2.1.1-7 IL-6によるヒトプラズマブラストの IgG1産生に 対する抑制作用 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0118 4.2.1.1-8 IL-6によるヒト T 細胞増殖に対する抑制作用 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0076S 4.2.1.1-9 (参考資料) IL-6及び可溶性 IL-6R によるヒト滑膜細胞の MCP-1及び VEGF 産生に対する抑制作用 In vitro — 中外製薬株式会社 PHM -0079 4.2.1.1-10 カニクイザルにおけるIL-6活性の抑制作用 サル/カニクイザル 皮下投与 中外製薬株式会社 PHM -0181 4.2.1.1-11

(33)

表 2.6.3.1-1 薬理試験一覧表(続) 被験物質:サトラリズマブ 試験の種類 試験系 投与方法 実施施設 試験番号 資料番号 効力を裏付ける試験(続) PHM -0181試験で得られた血漿中のサトラリ ズマブ,抗サトラリズマブ抗体,トータル可溶 性IL-6R 及びフリー可溶性 IL-6R の濃度又は抗 体価測定 In vitro — PHM -0002 4.2.1.1-12 副次的薬理試験 副次的薬理試験は実施していない。 安全性薬理試験 独立した安全性薬理試験は実施していない。反復投与毒性試験で評価した安全性薬理評価項目は,2.6.6「毒性試験の概要文」2.6.6.10項で考察す る。 薬力学的薬物相互作用試験 サトラリズマブと他の薬剤を用いた薬力学的薬物相互作用試験は実施していない。 ADCC:抗体依存性細胞傷害,CDC:補体依存性細胞傷害,IgG:イムノグロブリン G,IL-6:インターロイキン6,IL-6R:インターロイキン6レセプター,MCP-1:単球 走化性蛋白質-1,VEGF:血管内皮増殖因子

(34)

2.6.3.2

効力を裏付ける試験

表 2.6.3.2-1 効力を裏付ける試験 被験物質:サトラリズマブ 試験の種類 試験系 試験方法 主要な結果 資料番号 ヒト及びカニクイザルの 膜結合型 IL-6R に対する 結合活性 In vitro フローサイトメトリー サトラリズマブのヒト膜結合型IL-6R に対する EC50値は0.019 g/mL,カニクイザル膜結合型 IL-6R に対する EC50値は0.019 g/mL であった。 4.2.1.1-1 ヒト及びカニクイザルの 可溶性IL-6R に対する結 合活性 In vitro SPR 37°C,pH 7.4条件下でのサトラリズマブのヒト可 溶性IL-6R に対する KD値は1.5 nmol/L,カニクイ ザル可溶性IL-6R に対する KD値は2.0 nmol/L で あった。 pH 5.8条件下でサトラリズマブは,pH 7.4条件下 に比べて速やかにヒト可溶性IL-6R から解離し た。 4.2.1.1-2 ヒト可溶性IL-6R に対す るpH 依存的な結合活性 In vitro SPR サトラリズマブはpH 7.4から pH 6.0の間で pH が 低くなるに従ってヒト可溶性IL-6R から速やかに 解離した。 各pH 条件下でのヒト可溶性 IL-6R に対する KD 値は,pH 7.4で1.89 nmol/L,pH 7.0で 2.64 nmol/L,pH 6.5で6.87 nmol/L,pH 6.0で 33.6 nmol/L であった。 4.2.1.1-3 ヒト及びカニクイザル Fc レセプターに対する 結合活性 In vitro SPR サトラリズマブのヒトFcRn に対する KD値は 6.8  10-7 mol/L(対照 IgG2抗体では21  10-7 mol/L),カニクイザル FcRn に対する KD値は 6.4  10-7 mol/L(対照 IgG2抗体では19  10-7 mol/L)であった。 サトラリズマブのヒト及びカニクイザルFcR に 対する結合は対照IgG2に比べてほぼ同等又は弱 かった。 4.2.1.1-4 ADCC 活性及び CDC 活

In vitro ADCC には U266細胞株とPBMC,CDC には U266細胞株 とヒト補体血清を用いたカル セインリリースアッセイ

サトラリズマブのU266細胞株に対する ADCC 活

図  2.6.2.2.2-1    pH 7.4と pH 5.8条件下でのサトラリズマブからのヒト可溶性 IL-6R の解離
表  2.6.2.2.3-1    各種の pH 条件下におけるサトラリズマブとヒト可溶性 IL-6R の結合における k a 値,k d 値及び K D 値(37°C)  k a 値 (× 10 4  [mol/L] -1 s -1 )  k d 値(× 10-4  s -1 )  K D 値(× 10-9  mol/L)  pH 7.4  46.8 ± 1.7  8.85 ± 0.32  1.89 ± 0.026  pH 7.0  47.0 ± 1.5  12.4 ± 0.96  2.64 ± 0.25
図  2.6.2.2.4-1    ヒト FcγR に対するサトラリズマブの結合
図  2.6.2.2.4-2    カニクイザル FcγR に対するサトラリズマブの結合  1塩基多型を含む7種類のカニクイザル FcγR に対するサトラリズマブ(CH5333787)の結合を SPR で調べた3回 の測定結果の平均値  ±  標準偏差を示す。  縦軸はセンサーチップに捕捉された抗体量で補正した各 FcγR との結合量を示す。  陽性対照としてトシリズマブ(tocilizumab),陰性対照としてパニツムマブ(panitumumab)を用いた。  cy:カニクイザル,cyFcγRIIa1:c
+7

参照

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