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高知赤十字病院医学雑誌第 2 2 巻第 1 号 年 5 原著 尿細胞診 Class Ⅲ(AUC) の臨床細胞学的検討 ~ 新報告様式パリシステムの適用 ~ 1 黒田直人 1 水野圭子 1 吾妻美子 1 賴田顕辞 2 奈路田拓史 1 和田有加里 2 宇都宮聖也 2 田村雅人

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Academic year: 2021

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︿原著﹀

尿細胞診 Class Ⅲ(AUC)の臨床細胞学的検討

~新報告様式パリシステムの適用~

1黒田直人 1吾妻美子 1和田有加里 1安岡香 1小原昌彦 1水野圭子 1賴田顕辞 2宇都宮聖也 2赤澤早紀 2奈路田拓史 2田村雅人 要旨:今回,我々は日本臨床細胞学会が作成している尿細胞診ガイドラインと国際的に作成されたパ リシステムを比較検討した.その結果それぞれのシステムには一長一短があることが判明した. キーワード:尿細胞診,日本臨床細胞学会ガイドライン,パリシステム

はじめに

尿細胞診の新報告様式のパリシステムが 2016 年 度に導入されたが,日本では未だ普及していない. 今回我々は従来の尿細胞診ガイドライン 2015 年度 版にて診断された症例についてパリシステムを適用 して検討を行った.以下のその判定基準を抜粋す る. 尿細胞診ガイドライン(2015年度) 1) 高度尿路上皮癌を示唆する所見 核偏在( 半数以上の異型細胞 ),核突出( 2 箇所以 上),核クロマチン不均等分布(2 箇所以上),核形 不整( 複数 ),N/C 比増大( 長径比 2:3 ),核クロ マチン増量(好中球と比較) 6項目合致→ Malignant, class V

4-5項目合致→ Suspicious for malignancy, class IV 1-3項目合致→ atypical cells, class III

0項目合致→ negative, class I or II と判定した.

パリシステムの診断基準(2016年度)2) に従い,判

定した.要約を示す.標本 1の略語はこれに相当す る.

AUC (atypical urothelial cells) 異型尿路上皮細胞 大基準(必須):N/C 比 >0.5を伴う変性のない非表

層尿路上皮細胞

小基準(以下の 3 項目中,1 項目が必須):核クロマ チン増加,核形不整,不整・粗大・凝集クロマチ ン

SHGUC ( suspicious for high-grade urothelial carcinoma) 高異型度尿路上皮癌疑い

N/C 比 0.5-0.7,中度〜高度の核クロマチン増加(必 須)

不規則に凝集した核クロマチン,著明な核形不整 (2項目のうち,少なくとも1項目)

HGUC ( high-grade urothelial carcinoma ) 高異型 度尿路上皮癌 細胞数最低 5-10 個,N/C 比 0.7 以上,核中等度〜高 度のクロマチン増加,核縁の著明な不整,クロマ チン粗大・凝集

材料と方法

2016 年 1 月 1 日から 12 月 31 日までの当院泌尿器 科で自然尿細胞診のパパニコロウ染色にて細胞診 ガイドラインに従い Class III と診断された合計 31 例について臨床細胞学的に検討し,パリシステムの 適用を試みた.

結果

31 例の臨床細胞学的特徴を表 1 に要約した.男: 女比は 21:10 で,年齢は 44-92 歳で,平均 74.1 歳 1 高知赤十字病院 病理診断科部 2 高知赤十字病院 泌尿器科

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であった.細胞診の提出理由は スクリーニングが 10 例,尿路上皮癌フォローが 9 例,血尿精査が 6 例,検尿異常精査が 1 例,尿路結石が 2 例,水腎 症精査が 1例,子宮頸部および膣 HSIL が 1例,外 陰部扁平上皮癌が 1 例であった.フォローアップ にて スクリーングの 9 例で尿路上皮癌がみつかり, 1 例はポリープ状尿道炎であった.血尿精査では 5 表 1 尿細胞診 class III に相当する 31 例の臨床細胞学的特徴 症例 性 年齢 細胞診提出契機 フォロー パリシステム 1 男 85 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 III AUC 2 男 85 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 AUC 3 男 79 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 SHGUC 4 女 80 子宮頸部・膣の高異型度扁平上皮病変後 III or others NHGUC 5 男 80 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 AUC 6 男 65 顕微鏡的血尿 II AUC 7 男 78 顕微鏡的血尿 II AUC 8 男 75 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 II AUC 9 男 72 スクリーニング SHGUC 10 女 85 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 IV AUC 11 男 75 上皮内癌生検後 III SHGUC 12 男 78 スクリー ニング III, IV AUC 13 女 81 顕微鏡的血尿 III AUC 14 女 82 スクリーニング AUC 15 男 44 検尿異常 II NHGUC 16 男 74 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 III AUC 17 男 49 水腎症精査 AUC 18 男 45 尿路結石 II NHGUC 19 男 84 尿路結石 NHGUC 20 男 74 スクリーニング AUC 21 男 68 スクリーニング AUC 22 男 65 尿路上皮癌, 経尿道的切除後 AUC 23 男 73 スクリーニング III, IV AUC 24 男 86 スクリーニング AUC 25 男 62 血尿 II NHGUC 26 女 61 血尿 II NHGUC 27 男 92 スクリーニング AUC 28 女 88 外陰部扁平上皮癌 NHGUC or others 29 女 82 スクリーニング III, IV NHGUC or others 30 女 84 スクリーニング AUC 31 男 67 肉眼的血尿 II NHGUC

例がフォローで class II となった.パリシステムに 適用すれば AUC が 19 例,高異型度尿路上皮癌陰 性(negative for high-grade upothelial carcinoma) ( NHGUC )( 表 1 の略語はこれに相当 )が 6 例, SHGUC が 3例,NHGUC ないしは others が 3例で あった.

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1) 細胞診ガイドラインとパリシステムでくい違い のなかった症例(19例) (図1) 図1:N/C 比増大( >0.5 ),核クロマチン軽度増量 がみられ,全体として細胞量が少ないものの多くが これに相当した.パリシステムでは AUC の 7 例が これに相当した. 2) パリシステムの適用で細胞診ガイドラインより ダウングレードされた症例(6例)(図2, 3) 図 2:N/C 比増大 (>0.5),核形不整がみられるが, 臨床的に結石が存在し,異型を結石で説明しえる ので,パリシステムでは NHGUC に2例がダウング レードされた. 図 3:血尿・肉眼的血尿・検尿異常などで精査さ れ,N/C 比増大(<0.5),核クロマチン増量 軽度み られるが,パリシステムでは NHGUC に 4 例がダウ ングレードされた. 3) パリシステムの適用で細胞診ガイドラインより アップグレードされた症例(6例)(図4- 図9) 図 4:スクリーニングで発見されたが,N/C 比増大 ( 0.5-0.7 ),核クロマチン増量 中等度, 不規則凝集 核クロマチンなどパリシステムでは SHGUC にアッ プグレードされた. その後,尿管に腫瘍が発見され( 図 5 ),組織検査 では尿路上皮癌が同定された(図6). 図5: 尿管に腫瘍がみられる. 図6: 尿管腫瘍は尿路上皮癌であった. Urothelial CIS 生検後(図7)フォロー症例で,N / C 比増大(0.5-0.7) 核形不整 ,粗大凝集クロマチンがみられ( 図 8 ), パリシステムでは SHGUC と判定した.

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図7: clinging type CIS がみられる. 図8:SHGUC 相当. UC, TUR 後フォロー( 図 9 )後,尿細胞にてN /C 比増大(0.5-0.7, <0.5) 核形不整 ,核クロマチン増量がみられ(図10),パ リシステムでは SHGUC に相当した. 図9: 尿路上皮癌がみられる. 図10: SHGUC 相当. 4)パリシステムでの判定困難例(3例) 尿細胞診で異型重層扁平上皮が存在したが( 図 11 ),外陰部の扁平上皮癌が存在し( 図 12 ),UC with squamous differentiation との鑑別は困難であ り,パリシステムでは NHGUC あるいは others に いれるのか,システム内での明確な記載がなく,悩 ましい問題があった. 図11: 異型重層扁平上皮がみられる. 図12: 外陰部の扁平上皮癌がみられた.

考察

パリシステムの利点は従来の細胞診分類より的 確に尿路上皮癌を検出しえるシステムと思われ,尿 路結石・血尿から生じうる異型細胞など,ゴミ箱的 境界カテゴリーを減少させることができる.2,3)また, パリシステムは尿路上皮癌フォローアップの細胞 診において再発評価において充分に適用可能な評価 システムと考えられる. パリシステムの問題点として,尿道ないしは女性 生殖器に由来する異型扁平上皮細胞と扁平上皮分 化を伴う尿路上皮癌に由来する異型尿路上皮との 鑑別に関しては NHGUC(negative for high-grade

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urothelial carcinoma)に入れるのか,その他のカテ ゴリーに入れるのか,曖昧であり,今後の検討が必 要である.1,2) また,N/C 比が 0.7以下の HGUC は診 断基準に達しないと見落とされる可能性があり,非 常に問題である.4) 実践的には N/C 比を正しく評価 することは難しいものと指摘されている.5 ) パリシ ステムは HGUC の検出を目的に導入されたもので あるが,今回の検討では 実際のところ LGUC の腫 瘍が HGUC のクライテリアで 6 例検出されたものが 存在した. 結論として,日本臨床細胞学会が推奨している尿 細胞診ガイドラインと尿細胞診報告様式パリシステ ムは泌尿器科医の要望も取り入れながら使い分けて いく必要があるものと考える.

参考文献

1 )細胞診断ガイドライン 1 産婦人科・泌尿器 2015 年 度版 金原出版株式会社 p168-210. 2)尿細胞診報告様式 パリシステム 2017年度 丸善出版 3 )Malviya K, et al. Utility of the Paris System in

reporting urine cytology. Acta Cytol 2017; 61: 145-152.

4 )Cowan ML, et al. Improved risk stratification for patients with high-grade urothelial carcinoma following application of the Paris System for reporting urine cytology. Cancer 2017; 125: 427-434.

5 )Layfield LJ, et al. Accuracy and reproducibility of nuclear/cytoplasmic ratio assessements in urine cytology specimens. Diagn Cytopathol 2017; 45: 107-112.

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