はじめに
敵意や攻撃性は健康を害するばかりではなく, 成人社会での暴力や児童の問題行動としても現れ るので,重要な研究テーマとなった.アメリカで は,攻撃性や敵意を測定する質問紙が多くあり, 妥当性研究も進んでいるが,日本では攻撃性を測 定 す る 質 問 紙 の 開 発 が か な り 遅 れ た ( 山 崎 , 2002). このような状況を踏まえ,安藤・曽我・山崎・ 島井・嶋田・宇津木・大芦・坂井 (1999) は,ま ず Buss & Perry (1992) の 29 項目に 16 項目を追加 して 45 項目版の質問紙を作成した.そして,大 学生 1125 名に実施し,回答に偏りがあった 7 項 目を除外した.次に,残りの 38 項目の因子分析 を行い,因子負荷量が.40 以上で,複数因子に.40 以上で重複せず,男女で同一の因子に属するとい う 3 つの条件に合致した項目の中から各因子 6 項 目ずつを下位尺度項目として選択し,日本版攻撃 性質問紙 (BAQ) とした.すなわち,BAQ は,身 体的攻撃 (physical aggression),言語的攻撃 (ver-bal aggression),短気 (anger),敵意 (hostility) の 4つの下位尺度から構成された. BAQの妥当性研究の参加者は,大学生 9 グルー プで,8 名の評定者が指名を行った.内訳は,男 子 5 グループ 55 名,女子 4 グループ 43 名で,そ れらの集団の構成メンバーの性格や行動特性につ いてよく知っている者を評定者とした.評定者は, © 日本パーソナリティ心理学会 2005問題攻撃性尺度の基準関連的構成と
アサーション・トレーニングによる治療的介入
村 上 宣 寛
1)福 光 隆
富山大学 大沢野小学校 研究 I では,担任教師が指名した攻撃性の著しい児童 23 名を基準群,攻撃性の認められない児童 567 名 を対照群とした.参加者は 8 つの小学校の 3–6 年生 1701 名と担任教師 59 名であった.問題攻撃性尺度は二 群を弁別する 13 の質問項目から構成された.研究 II では,児童の攻撃性についてクラスの担任教師が 5 段 階評定を行った.参加者は小学校 3–6 年生 224 名と担任教師 8 名であった.担任教師の評定の信頼性は.93 であった,問題攻撃性尺度と評定との相関は.46,再検査信頼性は.85 であった.814 名のデータを IRT で分 析すると,尺度の高得点側で測定精度が高かった.研究 III では,実験群でアサーション・トレーニングに よる攻撃性の適正化教育を行った.参加者は,実験群が 3 年生 38 名,統制群が 3 年生 35 名であった.事 前・事後の尺度得点の 3 要因分散分析の結果,アサーション・トレーニングは攻撃性の低い児童で弱い介入 効果があった. キーワード:攻撃性,基準関連的方法,アサーション・トレーニング 1) 本論文は,第二筆者が 2004 年に富山大学教育学研究 科に提出した修士論文を第一筆者が再分析・再執筆 したものである.研究に専念できるように便宜を図っ てくださった大久保小学校金山泰仁前校長と大久保 小学校の皆様,調査に快く協力していただいた小学 校の校長先生をはじめ,教員の皆様,児童の皆様に 心より感謝申し上げます.さらに,アサーション・ トレーニングの助言をいただいた富山大学教育学部 小林真助教授に感謝申し上げます.短気,敵意,身体的攻撃,言語的攻撃の 4 つの下 位尺度に対応した文章に,それぞれ最もあてはま る人と最もあてはまらない人を,構成人数の 1 割 にあたる人数だけ選んで,その氏名を記入した. 各下位尺度の高得点該当者 10 名と低得点該当者 10名の BAQ 得点を比較したところ,敵意以外は 有意差があった.このことから,BAQ の基準関連 妥当性は,敵意を除く短気,身体的,言語的攻撃 の 3 下位尺度では,認められた. この BAQ を小学生向きに書き換えたのが,坂 井・山崎・曽我・大芦・島井・大竹 (2000) の小 学生用攻撃性質問紙 (Hostility-Aggression Ques-tionnaire for Children: HAQC) である.予備調査で は,小学生 255 名を対象に,BAQ 作成時の最初に 使用した 45 項目の質問項目の用語や表現を児童 用に修正して使用した.そして,項目分析および 因子分析(主因子法,4 因子抽出,バリマックス 回転)の結果から,27 項目を選択した.本調査で は,小学生 963 名を対象に因子分析(主因子法, 4因子抽出,バリマックス回転)を行い,いずれ の因子にも高い負荷を示さなかった 1 項目を除外 した.そして,はじめに想定した 4 つの構成概念 (敵意,言語的攻撃,身体的攻撃,短気)との関 係や,項目数のバランスを配慮して質問項目を選 択した.その結果,敵意が 6 項目,言語的攻撃が 5項目,身体的攻撃が 6 項目,短気が 5 項目の計 22項目となった.全 27 項目のうち 5 項目は採点 の対象から外したが,質問紙には含めた. HAQCの妥当性研究の参加者は,小学生 243 名 から担任 8 名によって指名された 118 名であった. 担任は,4 つの攻撃性の下位尺度を説明する文章 について,その特徴が強い児童と弱い児童を 2 名 ずつ男女別に挙げた.そして,特徴が強い児童と 特徴が弱い児童の質問紙の平均得点を対象に 2 要 因分散分析を行った.その結果,全ての下位尺度 で,両群の平均得点に主効果が認められた.敵意 は,男子では有意差があったが,女子では有意差 はなかった.こうして,HAQC は,女子の敵意を 除けば,妥当性も全般的に高いとされた. このように,良く知っている仲間に尺度の高得 点の記述に該当する人と,尺度の低得点の記述に 該当する人の名前を挙げさせ,高得点該当者と低 得点該当者の尺度得点の平均を比較し,有意差が あれば妥当性があるとする妥当化の手続きをノミ ネート法という.しかし,ノミネート法は妥当性 検証の方法としては欠陥がある.なぜなら,有意 差は高群と低群の選抜率に左右されるし,妥当性 係数の大きさを保証しない.例えば,高群と低群 を 100 名から 10 名ずつ選抜する場合と 1000 名か ら 10 名ずつ選抜する場合を想定すれば容易に理 解できるであろう.Taylor & Russell (1939) の古典 的な研究はテストの妥当性係数が小さくても,選 抜比が大きければ,見かけの妥当性が上昇するこ とを示している. BAQや HAQC は,身体的攻撃,言語的攻撃, 短気,敵意という構成概念に対応した質問項目を 収集し,それを因子分析で内容的に整理したもの である.因子分析に先立って,特定の外的基準と 相関がある質問項目が収集された訳ではない.妥 当性検証もノミネート法であり,外的基準との関 係(相関係数や標準回帰係数など)ははっきりし ない.そのため,行動予測や介入の決定には役立 たないはずである.しかし,山崎 (2000) は児童の 攻 撃 性 の 測 定 に HAQC が 使 用 可 能 と 判 断 し , フィークス (PHEECS: Psychological Health Educa-tion in Elementary-school Classes by Schoolteach-ers) プログラムで,攻撃性の適正化教育の効果測 定のために使用した. フィークスでは,児童の攻撃性を適正化するこ とを目標に,心理学のさまざまな治療技法やソー シャル・スキル・トレーニング等を取り入れた. プログラムの目標は階層的に構成される.大目標 として攻撃性の適正化があり,構成目標として, セルフ・エスティームの向上,攻撃性をもたらす 原因帰属の改善,攻撃性と拮抗するソーシャル・ スキルの向上があり,そして,一番下の階層にさ
まざまな操作目標がある.それらの操作目標の下 に,具体的にはフレームとモジュールという枠組 みで技法を整理している. プログラムの評価に使用した尺度は,攻撃性低 減では HAQC,セルフ・エスティームでは児童用 対人領域セルフ・エスティーム尺度,帰属では児 童用意図帰属尺度,ソーシャルサポートではソー シャルサポート尺度の短縮版であった.残念なが ら,プログラムの介入効果はほとんど認められず, HAQCの測定精度の問題が指摘された( 山崎, 2000, p. 125). フィークスでは多領域の方法と理論を広く取り 入れたが,各技法の有効性の確認は行われていな い.各技法の有効性が確認されて初めて,心の健 康教育のプログラム構成が可能になるはずである. 効果的な攻撃性低減プログラムを開発するために も,より基準関連妥当性の高い児童用攻撃尺度を 作成することが急務である. 濱口 (2001) によると,攻撃的児童の情報処理 様式の歪みは深刻で,道具的行動傾向優勢タイプ と反応的攻撃行動優勢タイプがある.前者は人を 脅したり,いじめたりするタイプで,後者は,か らかわれたときは叩き返すタイプであり,それぞ れのタイプに対応するキレ行動尺度が提案されて いる.また,下坂・西田・齋藤・伊藤・神藤・柳 原・鶴田・久木山・西田・西村・榎本・坂本・前 川 (2000) が開発したキレ行動尺度は,間接的攻 撃,直接的攻撃,パニック状態,反社会的行動の 4因子からなる.しかし,いずれの質問紙も因子 分析で,キレる行動の内容分類をして作成した質 問紙であり,実際のキレる行動との相関を確認し た訳ではない. Aiken (1996) によると,質問紙は理論的・因子 分析的質問紙と基準関連的質問紙の二つに分類さ れる.因子分析的質問紙は広く用いられているが, 基準関連妥当性は低いか不明なことが多く,行動 予測や診断に役立たないことが多い.これは,構 成概念に基づいて質問項目が収集されため,特定 の外的基準と相関のない項目が含まれるためであ る.一方,基準関連的質問紙は基準群と対照群に 予備的質問紙を実施し,二群をよく弁別する項目 を残す方法で構成される.その結果,すべての項 目が特定の外部基準と関連を持つため基準関連妥 当性は高くなる. 例えば,MMPI の心気症尺度は,純粋で単純な 心気症患者を基準群,患者の見舞いや付き添い, 大学生を対照群として作成された.基準関連的尺 度構成は経験的方法とも呼ばれ,特定の理論を持 たないが,予備的質問紙は二群を弁別する項目を 可能な限り含める必要がある.また,基準群と対 照群の設定も尺度の作成目的に合致するように注 意深く行う必要がある. 本研究の目的は二つある.第一の目的は,学級 ではっきりと問題となる攻撃行動を予測する質問 紙を作成することである.そのために,担任によ る評価を外的基準とし,基準関連的な方法で尺度 構成することにした.HAQC は正常な範囲の攻撃 的な意識は測定できるであろうが,俗にキレると いう学級で問題となる攻撃行動を予測するには不 十分である. 本研究の第二の目的は,新規に作成された測定 尺度で,介入研究を行い,攻撃性適正化教育を評 価することである.フィークスでは,性格面,認 知面,行動面,それぞれに対して多くの技法で介 入を行った.しかし,多くの技法を介入に用いる と,攻撃性の適正化がどの技法の効果であるか, 分からない.本研究では,介入を行動面に限定し, アサーション・トレーニングを攻撃性適正化教育 の単一のプログラムとして選び,妥当性の高い尺 度によって,その効果を探っていく. アサーション・トレーニングは,ソーシャル・ スキル・トレーニングのなかの重要な訓練技法の 1つであり,その目的は対人関係スキルの習得と 人間関係の活性化である.アサーションとは,他 人の意見や気持ちを尊重しつつ,同様に自分の意 見や気持ちを大切にし,それらを相手に上手に
はっきりと表現することである.したがって,ア サーション・トレーニングは,こうした主張を相 手にはっきりと表明し,互いが望むような結果を 最大限に得られるような言動,振る舞い方を習得 することをめざす(高山,1999). アサーション・トレーニングは,攻撃性の表出 過程にアプローチする方法でもあり,怒りが湧き 上がってきた時に,それを粗雑に表出するのでは なく,社会に受け容れられるような形で表現した 方が,心身により良い影響を与えると考えられて いる.したがって,アサーション・トレーニング は,自分をなかなか表現できない受動的な人に特 に効果的であるが,攻撃性の抑制効果があるため, 攻撃的な人にも治療効果があるとされる. さらに,中釜 (2002) によると,アサーションを 教室に導入した教師たちからは,コミュニケー ション力や自尊感情・他者への共感能力の向上, 学級内の人間関係の活性化,子ども自身による問 題解決能力の向上といった変化が頻繁に報告され ているという.
研究 I
研究 I の目的は,学級運営上問題となる攻撃性 の測定尺度の開発である.BAQ や HAQC のよう に,攻撃性の構成概念には身体的攻撃,言語的攻 撃,敵意,短気という 4 つの下位概念があるが, 基準関連的に尺度構成する場合,HAQC の項目だ けではなく,もう少し広い範囲から攻撃性に関係 する項目を収集しておく必要がある. 曽我・島井・大竹 (2002) は児童の性格と攻撃 性との関係を検討した.小学生用 5 因子性格検査 (FFPC) と HAQC を小学生 4-- 6 年生 1206 名(男子 633名,女子 573 名)に実施して,重回帰分析を 行 っ た . 標 準 偏 回 帰 係 数 は , 協 調 性 と 敵 意 が .41,外向性と短気が.68,外向性と身体的攻撃 が.48,外向性と言語的攻撃が.33 であった.し たがって,性格と攻撃性の間にはある程度の関係 があると思われるが,HAQC や FFPC の妥当性係 数は不明である.自己認知という制約の下で,関 係があるに過ぎない.性格と現実の攻撃行動との 関係は未知である. 以上のことから,尺度構成は,HAQC の構成概 念を基本にしながら,さらに攻撃性や性格特性に ついての質問項目を追加することとした.性格特 性の質問項目は,妥当性と信頼性が確認されてい る村上・村上 (2001) の主要 5 因子性格検査 (Big-Five) を児童用に書き換えたものを使用する. 方 法 参加者 富山県内の 8 つの小学校の 3 年生 412 名( 男子 210 名, 女子 202 名), 4 年生 405 名 (男子 217 名,女子 188 名),5 年生 460 名(男子 224名,女子 236 名),6 年生 424 名(男子 231 名, 女子 193 名),計 1701 名(男子 882 名,女子 819 名)と担任教師 59 名であった. 調査用紙 児童用質問紙の質問項目は,2 件法 による 58 項目であった.その内訳は,HAQC の 22項目(敵意 6 項目,言語的攻撃 5 項目,身体 的攻撃 6 項目,短気 5 項目),第二筆者が独自に 追加した 6 項目(敵意 1 項目,言語的攻撃 2 項 目,身体的攻撃 1 項目,短気 2 項目),BigFive を 児童用に書き換えた 30 項目(外向性 6 項目,協 調性 6 項目,勤勉性 6 項目,情緒安定性 6 項目, 知性 6 項目)であった.書き換えは第二筆者(小 学校教員)が行ったが,難しい漢字をひらがなに 直したり,難しい言葉を平易な言葉に置き換える だけとした. 児童用質問紙の教示では,「みなさんのような 小学生が,学校で気持ちよくすごすために先生方 がどんなふうにしていけばよいかを考えるための ものです.これは,みなさんがどう考えているか をそのまま知るためのものですから,正しいとか まちがっているとかは,関係ありません.」とし, 質問に対する回答法を説明した.また,学校の学 校の名前,学年,組,出席番号を記入してもらっ た.漢字にはすべてルビを振った. 教師用質問紙は,学級運営上問題となる具体的な問題行動を,HAQC の攻撃性の 4 つの下位概念 に対応して,文章化したものであった (Table 1). 教師用質問紙は 1 ページで,「次の 4 つの項目に 当てはまり,学級運営上問題がある,または,こ れから気にかけていかないといけないと先生が判 断された児童」について,それぞれの文章の下に 書かれた枠の中にその児童の出席番号を記入して 貰った.当てはまる場合は,特に顕著な児童を一 人だけとした.また,いくつかの項目で同じ児童 を選んでも良かった.これらの教示の下に 4 つの 文章を印刷し,それぞれの文章の右下に,あては まる児童の出席番号を書く欄を一つ設けた. 調査手続き 担任教師はクラス単位で児童用質 問紙を実施した.また,担任教師は学級運営上問 題がある,または,これから気にかけていかない といけない児童の中で,教師用質問紙の質問項目 にあてはまる児童を,最大で 1 名を指名した.指 名の条件を厳しくしたのは,より問題性の高い攻 撃性を測定する尺度を作成するためであった. 調査協力への説明 事前に担任教師に,研究の 意義を詳しく説明した.どの現場でも,攻撃性の 強い児童に対する対応について悩んでおり,研究 の意義を理解してくれた.指名の結果について, それぞれの学校の傾向などを出すのではないとい うことを説明し,同意を得た.特に個別のデータ を欲しいという希望はなかった. 分析手続き 担任教師によって,2 項目以上で 指名された児童を基準群,基準群の児童が属する クラスの児童を対照群として,両群の質問項目の 回答を c2検定で分析し,有意な差があった質問 項目で問題攻撃性尺度を作成した.そして,α係 数を算出することによって,問題攻撃性尺度の信 頼性を検討した.また,主因子法による因子分析 を適用して,問題攻撃性尺度の因子構造を検討し た. 結 果 小学生計 1701 名のうち,担任教師によって指 名された児童は合計 84 名(男子 64 名,女子 20 名)であった.内訳は Table 2 に示した.一度も 指名されなかった児童は 1617 名であった. 基準群は,2 項目以上で指名された 3 年生 6 名 (男子 5 名,女子 1 名),4 年生 4 名(男子 2 名, 女子 2 名),5 年生 7 名(男子 7 名),6 年生 6 名 (男子 5 名,女子 1 名),計 23 名(男子 19 名,女 子 4 名)とした.基準群の指名回数を構成概念別 に見ると,敵意が 10 回,言語的暴力が 16 回,身 体的暴力が 11 回,短気が 15 回であった. 対照群は,基準群の児童が属するクラスで一度 も指名されなかった児童 567 名(男子 282 名,女 子 285 名)とした. 児童用質問紙 58 項目の基準群と対照群の回答 を項目ごとに c2 検定で比較すると,13 項目に有 意差が認められたので,これらの項目で問題攻撃 性尺度 (problem-aggression scale) を構成した.結 果を Table 3 に示した.採点方向に回答した場合, 1点を加点する. 児 童 の 尺 度 得 点 の 平 均 は , 基 準 群 で 10.57 (s1.45),対照群で 6.28 (s3.21) であった.全 Table 1 教師用質問項目 身体的暴力 よく(一ヶ月に一回以上),腹を立てて,友達 または先生に暴力をふるったり,教室内にある ものを投げたり, 蹴ったりしたことがある. 言語的暴力 自分の意見と違う意見に対してまたは,気にく わないことがらに対して,けんか腰で強く相手 をののしったり,言葉で否定したりしたことが ある. 敵意 友達や先生に言われたことを否定的にとらえた り,自分が失敗したときに否定的な仕方で対応 したりして,相手に対して敵意をもつことがあ る. 短気 自分の気にくわないことがあると,我慢できず にかっとなり,怒りの感情をなかなかおさめる ことができない. Table 2 指名された項目数と学年別人数 3年 4年 5年 6年 合計 1項目 23 13 16 9 61 2項目 5 2 5 5 17 3項目 1 2 2 1 6 4項目 0 0 0 0 0
参加者 1701 名の平均は,6.44 (s3.19) で,α係 数は,.79 であった.主因子法による因子分析を 適用すると,固有値は,3.30, .66, .39, .14, .06 と減 少した.第 1 因子の因子寄与率が 92.49% であっ たので,尺度の一次元性は確認された. 考 察 問題攻撃性尺度は,教師の指名により基準群と 対照群を設定し,質問項目に対する反応を比較す るという,基準関連的方法によって作成された. 基準群は,教師用質問紙 4 項目に該当する児童 を,最大で 1 名を指名し,2 項目以上で同時に指 名された児童から構成された.基準群は 1701 名 中 23 名 (1.4%) にすぎず,かなり問題のある児童 であった. HAQCの 22 の質問項目のうち,問題攻撃性尺 度に入ったのは,2, 3, 5, 6, 8, 9 の 6 項目だけで あった.つまり,HAQC の 16 項目 (73%) は,担 任教師が「学級運営上問題がある」,あるいは, 「これから気にかけていかないといけない」児童を 識別できない.すなわち,HAQC は学級運営上問 題がある,攻撃性の高い児童を評価するには適切 でないことを示している.攻撃性の構成概念に基 づいて,質問項目を作成し,因子分析で項目を整 理するだけでは,有用な妥当性の高い質問紙は作 成できない. 問題攻撃性尺度の 10–13 は独自に追加した項目 で,10 と 12 はキレる行動のうち,反応的攻撃行 動に関係していた.1, 4 は,BigFive の知性項目, 7は,協調性項目であった.項目内容は攻撃行動 とは無関係なので,内容的妥当性は乏しい.しか し,これらの項目は基準群と対照群をよく弁別す るし,基準関連的方法による尺度構成では,この ような項目が含まれることがある. 内容的妥当性は特定の行動領域の内容適切性を 専門家が判断したものであり,基本的には妥当性 の資格を持たない (Messick, 1992).言い換えれば, 内容妥当性は専門家の頭の中にあるだけで,参加 者の反応の中にはない.項目 1, 4, 7 は,基準関連 妥当性が高く,児童の問題となる攻撃性をよく識 別するので,これらを尺度に含めることとした. なお,曽我ら (2002) は FFPC で,協調性と敵 意,外向性と短気,外向性と身体的攻撃との間に 有意な標準偏回帰係数を認めたが,本分析からは 外向性項目は問題攻撃性尺度からすべて除外され Table 3 問題攻撃性尺度の項目 基準群 対照群 質問項目 n23 n567 c2 識別力 困難度 当て推量 はい いいえ 1 いろいろなことをたくさん知っています. 16 164 15.36∗∗ 1.19 3.15 .30 2 からかわれたら,たたいたりけったりするかもしれません. 20 285 10.49∗∗ 1.19 .02 .05 3 すぐにおこる方です.(すぐにむかつく方です.) 20 269 12.22∗∗ 2.15 .29 .12 4 クラスの中で大切な人です. 21 353 6.74∗∗ .56 .09 .19 5 友だちの考えにさんせいできないときは,はっきり言います. 17 232 8.47∗∗ 1.24 2.42 .40 6 すぐにけんかをしてしまいます. 15 164 12.11∗∗ 1.29 .89 .06 7 思いやりのある方です. 17 283 4.11∗ .55 .65 .18 8 人にらんぼうなことをしたことがあります. 23 358 11.57∗∗ 1.27 .46 .09 9 ちょっとしたことではらがたちます.(むかつきます.) 18 231 11.27∗∗ 2.02 .44 .09 10 たたかれたらたたきかえします. 21 339 7.90∗ 1.16 .18 .07 11 おこると,くちぎたない言葉を言います. 21 348 9.05∗∗ 1.18 .31 .10 12 いやなことを言ったあい手には強く言いかえします. 18 281 6.18∗ .97 .07 .07 13 カッとするとなかなか気持ちをおちつけることができなくなります. 16 254 4.51∗ .94 .73 .20 ∗∗ p.01 ∗ p.05 10–13 は独自追加項目. 採点方向 はい : 1 2 3 5 6 8 9 10 11 12 13 いいえ: 4 7
た.つまり,外向性と問題攻撃性とは無関係と思 われる.
研究 II
研究 I では基準関連的方法によって問題攻撃性 尺度を作成したが,妥当性係数や信頼性係数の検 討は不十分である.妥当性係数については,担任 教師が児童の具体的な攻撃行動についての評定を 行い,尺度得点との相関係数を算出することとし た.評定項目は研究 I と同様,攻撃性の構成概念 である,身体的暴力,言語的暴力,敵意,短気と した. 研究 I のように,記述に当てはまるか,当ては まらないかの 01 データでは相関係数の算出時に, 分布のゆがみの影響を受けやすい.また,学級運 営上問題となるような攻撃行動が対象なので,研 究 I のように 95% の児童が当てはまらないと評価 される可能性がある.担任教師はクラスの児童全 員を評定するため,負担を考慮して 5 段階評定と した. 問題攻撃性尺度のα係数は.79 であった.一応, 十分な値であるが,問題攻撃性尺度は,学級運営 上,何度か繰り返し実施しする可能性があるため, 再検査法による信頼性係数を確認しておく必要が ある.再検査信頼性係数は通常一から二週間の間 隔で求められるが,授業の実施等の関係から一週 間間隔とした. さらに,項目反応理論を用いて,質問項目の再 分析を行うことにした.3 パラメタ・ロジスティッ ク・モデルは次の式で表現される. qは潜在特性,P(q) は正反応率,D は定数であ る.項目反応理論は学力テストの分野で開発され たため,パラメタ a は項目の識別力,b は項目の 困難度,c は当て推量と呼ばれる.c0 の場合が 2パラメタ・ロジステック・モデル,さらに a1 とした場合が 1 パラメタ・ロジステック・モデル である. 性格検査の場合は,a は項目の識別力だが,b は項目の採点方向への応答率に該当し,c は項目 へのデタラメ応答と解釈できよう.本研究では小 学生 3 年生から 6 年生の児童を対象にしているた め,全員の児童が項目の意味を十分に理解できた かは不明で,デタラメ応答の可能性も無視できな い.それで 3 パラメタ・ロジスティック・モデル を適用することとした. 方 法 参加者 富山県内の一つの小学校の 3 年生 59 名(男子 29 名,女子 30 名),4 年生 50 名(男子 25名,女子 25 名),5 年生 61 名(男子 37 名,女 子 24 名),6 年生 54 名(男子 25 名,女子 29 名) 計 224 名(男子 116 名,女子 108 名)と担任教師 8名である. 調査用紙 児童用質問紙は 40 項目,2 件法で あった.その内訳は,問題攻撃性尺度 13 項目, BigFiveを児童用に書き換えた 30 項目(外向性 6 項目,協調性 6 項目,勤勉性 6 項目,情緒安定性 6項目,知性 6 項目)であった.ただし,この 30 項目の内,3 項目は問題攻撃性尺度と重複してい る. 教師用質問紙の質問項目は Table 1 と同じで あったが,“全くあてはまらない”(1 点)−“とて もあてはまる”(5 点)の 5 段階評定である.質問 項目は 1 ページに一つ印刷し,全児童の評定を行 い,次の質問項目に進むようにした.教師評定に よる児童の攻撃得点は全項目の合計得点であり, 最小値は 4 点,最大値は 20 点となる. 調査手続き 児童用質問紙は,担任教師が一週 間の間隔をおいてクラス単位で二度実施した.教 師用質問紙は,クラスの担任教師が各質問項目に ついて,全児童を 5 段階で評定した. 調査協力への説明 事前に担任教師に,研究の 意義を詳しく説明した.調査結果は秘密とし,そ れぞれの学校の傾向などを出すのではないという ことを説明し,同意を得た.また,研究 I と同様, P c c exp Da b ( ) ( )) θ θ 1 1 (児童には「みなさんのような小学生が,学校で気 持ちよくすごすために先生方がどんなふうにして いけばよいのかを考えるためのものです.…」と 説明した. 分析手続き 児童の問題攻撃性尺度の得点と教 師評定の攻撃性得点との相関係数を算出し,妥当 性係数とした.また,児童用質問紙から問題攻撃 性尺度の得点を算出し,一回目と二回目の相関係 数を算出し,再検査信頼係数とした.3 パラメ タ・ロジスティック・モデルの解析プログラムは Hanson (2002) の IRT Command Language Version 0.02031を使用した.この分析の参加者は研究 I の 基準群 23 名, 対照群 567 名, 研究 II の 224 名 (一回目のデータ)を合わせた 814 名とした. 結 果 担任教師の評定点数は 4–20 点まで広く分布し ていた.攻撃性の見られない児童(4 点)が 38 名 もいたので,低得点側に分布がやや歪んでいたが, 尺度得点は素点のままとした. 問題攻撃性尺度と教師評定との相関係数は,3 年 生 で .54( 教 師 評 定 の a.96, n59),4 年生 で.72 (a.91, n50),5 年生で.36 (a.92, n61), 6年生で.45 (a.90, n54),全体で.46 (a.93, n224) であった. 問 題 攻 撃 性 尺 度 の 妥 当 性 係 数 を 全 体 の . 4 6 (a.93, n224) とすると,基準の汚染(教師評定 の信頼性係数)が.93 で,妥当性係数の理論的最 大値は√.46.93.96 となり(村上・村上,2001), 非常に優れた値であった.再検査法による信頼性 係数は,3 年生で.86,4 年生で.89,5 年生で.83, 全体で.85 と,十分に高い値であった. 3パラメタ・ロジスティック・モデルによる分 析結果を Table 3 に示した.項目 4 と 7 は数値を 逆転して分析した.識別力は 13 項目中 9 項目が 1.00以上の値であった.項目 4 と 7 は識別力が 劣っていたが,大きな問題はなかった.これらの 項目を除外すると,教師評定との相関係数が減少 したので,削除しなかった.困難度からは項目 1 と 5 は肯定する回答が得にくいが,識別力は高 かった.当て推量は項目 5 がやや高く,でたらめ 回答が起きやすいのかもしれない. テスト特性曲線とテスト得点の推定値の散布図 を Figure 1 に示した.潜在特性が1 から 1 の 間は識別力が比較的高く,1.5 以下や 1.5 以上 では識別力が低かった.つまり,尺度得点では, 両極端の 3 点以下や 11 点以上で識別力が劣って いた.潜在特性で1.5 以下や 1.5 以上の児童が ほとんどいなかったためである. 一方,テスト得点の標準偏差を Figure 2 に示し た.グラフは非対称で,潜在特性が 0 より少し大 きい所で標準偏差が最大で,3 の方向では緩や かに低下し,3 の方向ではやや急速に低下して いた.低得点側と比べると,高得点側では測定値 の散らばりが小さく,精度が高いことを意味して いる. 考 察 問題攻撃性尺度と担任教師の攻撃性の評定との 相関係数は,.46 と中程度の相関であった.行動 評定の妥当性係数としては高い値であった. 問題攻撃性尺度の再検査法による信頼性係数は .85であった.BAQ と HAQC の再検査法による信 頼係数の値とは,検査間隔が異なるため,単純に 比較することはできない.しかし,市販の性格検 査で信頼性係数が.80 以上あるものは例外である (村上,1993)という現状から見ても,十分な値 であった. 問題攻撃性尺度は,古典的な基準関連的方法で 構成し,その後,項目反応理論で分析した.項目 反応理論は,複数のテスト間の結果の比較ができ ること,測定精度を細かく確認できることなどの 利点が多い.所定の項目プールから出発し,複数 の等価な尺度を作る場合などで真価を発揮する (豊田,2002).ただ,学力テストの分野で発展し たためか,項目の妥当性の問題はほとんど議論さ れていない.項目反応理論を外的変量に結びつけ る試み (Muthén, 1988) はあるが,まだ,一般的に
使える状態にはなっていない.そのため,本研究 では c2検定で項目選択を行った. 問題攻撃性尺度の項目を減らすと妥当性係数が 下がってしまうので,13 項目をそのまま残したが, 3パラメタ・ロジスティック・モデルの分析結果 (Table 3) を見ると,妥当性の低下を押さえつつ, より少数の項目で尺度を構成することも可能であ る.例えば,項目 4 と 7 は他の項目と比べて識別 力が劣るので削除することも考えられる.また, 項目 10 と 11 は識別力が類似していて困難度が少 し違うだけなので,困難度が負の項目 11 を削除 すれば良いかもしれない.問題攻撃性尺度を,他 の一般的な質問紙の一部として実施し,項目数が 増える場合,このような短縮版を考慮すべきであ ろう. テスト特性曲線 (Figure 1) を見ると,低得点と 高得点の両端では識別力が低下するが,テスト得 点の標準偏差 (Figure 2) を見ると,高得点側での 低下が著しい.つまり,両者を併せて考えると, 問題攻撃性尺度は高得点側の方が測定精度が高 い.そのため,学級で問題となる攻撃行動をする 児童を検出するのに有効であると思われる. 今後は実際に教育の現場で生かす試みが必要と なる.そこで,研究 III では,攻撃性適正化教育 を行い,介入効果を問題攻撃性尺度で評価する. Figure 1 テスト特性曲線とベイズ推定法によるテスト得点の推定値の散布図 Figure 2 潜在特性のレベルごとのテスト得点の標準偏差
研 究 III
山崎 (2000) のフィークス・プログラムの特徴 は,問題となる性格や行動の発達・顕在化過程に ついての実証的研究を重視したこと,多領域の方 法と理論を広く取り入れてプログラムを考案した こと,学校教員がわずかなトレーニングを経て実 施できること,などであった.大目標の攻撃性を 評価するため,客観的,科学的評価基準として HAQCを用いた. フィークス・プログラム(山崎,2000)では, 攻撃性適正化プログラムを 6 週間実施し,その教 育効果をプログラム終了後と 2 ヶ月のフォロー アップ期間も設けて検討した.実験群は小学校 5 年生 68 名(男子 35 名,女子 33 名)の 2 クラス, 統制群は小学校 5 年生 71 名(男子 37 名,女子 34名)の 2 クラスであった.HAQC による評価で は,プログラム効果がほとんど認められなかった. 全般的に実験群の値が統制群の値よりも低くなっ たが,統計的な有意差には至らなかった. 攻撃性の評価のため仲間評定も併用した.仲間 評定は,児童が同じクラスの児童全員について, 「すぐに怒る」という質問項目について,7 段階で 評定する方法である.攻撃性の仲間評定では,ク ラスの同性から本人が受けた評価の平均値と,ク ラスの同性への本人からの評価の平均値を,実験 群と統制群について実施直後ならびにフォロー アップ時で比較した.分析の結果,本人が受けた 攻撃性評価は,全般的に教育クラスの値が統制ク ラスの値よりも低く,プログラムの教育効果が確 認された.ただ,フォローアップ時では,両クラ スの差異が小さくなり,教育効果が薄らいでいた. また,本人から友達への攻撃性評価についても同 様の教育効果がみられた.したがって,フィーク ス・プログラムにはある程度の教育効果があった と思われるが,HAQC はプログラム評価には役立 たなかった. フィークス・プログラムのもう一つの弱点は, 多くの理論や技法を取り入れたことである.リス トアップすると,ブレイン・ストーミング,グルー プ・ディスカッション,ロール・プレイング,モ デリング,ソーシャル・スキル・トレーニング, 応用行動分析,認知行動療法,来談者中心療法, リラクセーション,構成的エンカウンターグルー プがある.同時に実施したため,個々の技法がど の程度,攻撃性低減に役立ったかは分からない. 研究 I で見たように,HAQC の質問項目の 73% は,担任教師が「学級運営上問題がある」,ある いは,「これから気にかけていかないといけない」 攻撃的な児童を識別できないので,介入効果の研 究に HAQC を使っても,変化が検出できない可能 性が大きい.したがって,研究 III の介入効果の研 究には,研究 I で作成した問題攻撃性尺度を使用 する. 研究 III の介入研究では,アサーション・トレー ニングを攻撃性適正化教育の単一のプログラムと して選んだ. アサーション・トレーニングは, ソーシャル・スキル・トレーニングの一種で,攻 撃的な態度をアサーティブな態度へと転換する方 法である.怒りが湧き上がってきた時に,その感 情をコントロールし,社会的に受容される形で表 現すれば,結果として攻撃行動が抑制されるとい う.しかも,自分をなかなか表現できない,受動 的な人にも有益である.クラス単位で実施できる という利点があり,参考書も揃っていることも, 介入研究に用いた理由である. 多くの文献はアサーション・トレーニングの介 入効果を認めている.本研究の場合,一学期,延 べ 10 時間に渡り,介入を行う.したがって,ト レーニング法が間違っていなければ,介入効果が 見られるはずであり,介入効果は事前の問題攻撃 性得点と関係があるかもしれない.それで,児童 を問題攻撃性尺度の低得点者,中得点者,高得点 者に区分し,介入効果を調べることにした. 方 法 参加者 実験群は 3 年生 1 クラス 38 名(男子20名,女子 18 名),統制群は 3 年生 1 クラス 35 名(男子 19 名,女子 16 名)であった. 調査用紙 研究 II で使用した児童用質問紙. 実験手続き 実験群では,総合的な学習の時間 でアサーション・トレーニングによる攻撃性の適 正化教育を,週 1 時間,計 10 回行った.事前調 査は,担任教師が 4 月中旬に行い,事後調査は攻 撃性の適正化教育終了後の 7 月中旬に行った.統 制群では,総合的な学習の時間は自然観察で,校 庭の自然に親しむことを目的とした学習を行った. 児童は,自分の学習課題にしたがって,植物観察 や昆虫の飼育と観察などに取り組んだ.担任教師 の都合で,事前調査は 6 月上旬となり,実験群の 調査時期とずれたが,事後調査は 7 月中旬に行わ れた. プログラムの内容 園田・中釜 (2000) に基づい て指導案を作成した.大枠は,ワーク A − 3 つの 話し方−(3 時間),ワーク B −あなたの中のさわ やかさんを育てる−(2 時間),ワーク C −インタ ビューゲーム−(2 時間),ワーク D −ほめ言葉の プレゼント−(2 時間),ワーク E −ふりかえり− (1 時間)であった.具体的なワークの目標を下記 に示す. ワーク A では,人の話し方は 3 つのパタン(非 主張的,攻撃的,アサーティブ)に区別されるこ と,そして,3 つの話し方はその後の関係に大い なる影響を及ぼすことを理解するため,3 つの話 し方を見極める力を養う. ワーク B では,自分の中にある 3 つの話し方に 目を向け,それぞれの話し方に目を向け,それぞ れの話し方がどんな場面で,どんな相手に対して 出てきやすいか,また損なわれがちかを理解し, 意識的に努力したり働きかけたりして「さわやか さん」を引き出す気持ちが持てるように取り組む. ワーク C では,クラス全体でそれぞれの自己紹 介をして楽しみあう.他者に対して心を開き,自 分についてや自分の考えについて表現しあい,そ して表現された自分らしさとその人らしさを味わ うことで,それぞれをお互いの個性として尊重し あうことを体験的に学ぶ. ワーク D では,友達にほめ言葉のプレゼントを する活動を通じて,友達の良いところを見つけ, 認めるという体験をする.また,ほめ言葉を気持 ちよく受けとめたり聞いたりするなかで,相手の ことも大切にすることを学習する. ワーク E では,アサーション・トレーニングで の自分が気づいたことや学んだことをふりかえる. 調査協力への説明 事前に担任教師に,研究の 意義を詳しく説明した.調査結果は秘密とし,そ れぞれの学校の傾向などを出すのではないという ことを説明し,同意を得た.また,研究 I と同様, 児童には「みなさんのような小学生が,学校で気 持ちよくすごすために先生方がどんなふうにして いけばよいのかを考えるためのものです.…」と 説明した. 分析手続き 実験群と統制群,問題攻撃性尺度 の低・中・高得点群,事前と事後の 3 要因分散分 析法を適用した. 結 果 問題攻撃性尺度得点は,実験群の事前と事後で は平均 5.03 (s3.48) と 6.16 (s3.56),統制群の 事 前 と 事 後 で は 平 均 5.05 (s3.31) と 5.14 (s3.56) であった. 研究 I でのデータ(平均値 6.44, s3.19)を基 に,実験群と統制群の参加者を,低得点群(0–3 点),中得点群(4–9 点),高得点群(10–13 点) の 3 群に分けた.参加者数はそれぞれ 13, 19, 6 と, 16, 14, 5であった.実験群の平均得点(標準偏差) は,事前で 1.31 (.61), 5.79 (1.61), 10.83 (.90),事 後で 3.46 (2.79), 6.58 (2.82), 10.67 (1.25) であった. 統 制 群 で は 事 前 で 2.13 (.86), 5.79 (1.71), 10.80 (.75),事後で 2.94 (2.16), 5.79 (2.86), 10.40 (2.50) であった. 実験群・統制群,低・中・高得点,事前・事後 の 3 要因分散分析を行うと,低・中・高得点の主 効果のみが有意 (F(2, 72)38.04, p.01) であった.
10%の有意傾向に達したのは,事前・事後の主 効果 (F(1, 73)3.09, p.10),低・中・高得点と事 前・事後の交互作用 (F(2, 73)2.56, p.10) であっ た.弱いながらもアサーション・トレーニングの 介入効果は認められ,それが事前の問題攻撃性尺 度得点と交互作用を持つことがわかった. 有意傾向に達しなかったのは,実験群・統制群 の主効果 (F(1, 72)1.87, n.s.),実験群・統制群と 低・中・高得点との交互作用 (F(2, 73)0.11, n.s.), 実験群・統制群と事前・事後の交互作用 (F(1, 73) 1.42, n.s.),3 要因の交互作用 (F(2, 73)0.74, n.s.) であった. 考 察 実験群・統制群,低・中・高得点,事前・事後 の 3 要因分散分析によると,弱いながらもアサー ション・トレーニングの介入効果は認められ,そ れが事前の問題攻撃性尺度得点と交互作用を持つ ことがわかった.すなわち,介入の結果,実験群 の低得点群の得点が 1.31 から 3.46 点まで上昇し たが,中得点群,高得点群の得点にはほとんど変 化がなかった. 実験群の問題攻撃性尺度得点は介入によって上 昇したが,望ましくない攻撃性が身に付いた訳で はない.なぜなら,実験群の得点の上昇は,実験 群の低得点群の得点の上昇に起因するもので,そ の得点の上昇幅は 2 点で,低得点者群の平均は 3.46点であった.これは研究 I の全参加者 1701 名 の平均 6.44 をはるかに下回る. 実際,問題攻撃性尺度得点が 4 月時点で,1 点 だったのが,7 月に 4 点に上昇した A 児の場合, 家庭においても,1 学期を通して,自分を積極的 に表現することができるようになったという保護 者からの報告を受けた.その他にも,学校におい て,積極的な面が見られるようになったと担任教 師の評価を受けた児童がいた. アサーション・トレーニングは,低得点群の攻 撃性適正化には有効であり,10 週間のアサーショ ン・トレーニングによって,アサーティブな行動 が身に付いて,受動的な児童でも自己表現できる ようになったと思われる.ただし,変動は小さく, 平均の 6.44 点までは達していないので,まだ,受 動的な印象を与えるはずである. 一方,アサーション・トレーニングは,攻撃性 の高い児童でも攻撃行動をアサーティブな行動に 変化させるので有効であると信じられてきたが, 無効である可能性が示された.本田 (2002) はキレ にくい子を育てる授業として,教室でできる啓発 教育プログラムを提案しているが, 攻撃性の高い 児童は,問題が複雑化している可能性があるので, 集団を対象とした教育プログラムだけではなく, 攻撃性を治療対象とした認知行動療法など,専門 家による個別的な対応が必要となるだろう. アサーション・トレーニングはソーシャル・ス キル・トレーニングの一部であり,フィークス・ プログラムに含まれるソーシャル・スキル・トレー ニングと本質的に異なるものではない.フィーク ス・プログラムと本研究が大きく異なる点は,前 者では介入効果の測定に HAQC を使用し,本研究 では新規に作成した問題攻撃性尺度を使用した点 である.フィークスでは介入効果の測定に失敗し たが, 本研究では介入効果の測定に成功した. HAQCの質問項目の 73% はこのような児童を弁別 できない.この結果だけでは,問題攻撃性尺度が HAQCより優れているという結論は下せないが, その可能性は示された.今後,問題攻撃性尺度を 使って,様々な教育プログラムの有効性の検証が 行われると期待したい. 引用文献
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Construction of Criterion-based Problem-aggression Scale for Children,
and Intervention with Assertiveness Training
Yoshihiro M
URAKAMI1and Takashi F
UKUMITSU21
Faculty of Education, Toyama University
2
Osawano Elementary School
THEJAPANESEJOURNAL OFPERSONALITY2005, Vol. 13 NO. 2, 170–182
In Study 1, 23 pupils nominated by their teachers as seriously aggressive were assigned to criterion group, and 567 non-aggressive to contrast group. They were among 1701 third to sixth grade pupils at eight ele-mentary schools with 59 teachers. A problem-aggression scale was constructed, with 13 items that best dis-criminated the two groups. In Study 2, teachers rated aggressiveness of their pupils with a 5-point scale. Par-ticipants were 224 third to sixth grade pupils and eight teachers. Reliability of the teacher ratings was .93. The problem-aggression scale had a correlation of .46 with the ratings, and its test-retest reliability coeffi-cient was .85. Measurement accuracy was high on the higher end of the scale when data of 814 pupils were analyzed with IRT. In Study 3, intervention with assertiveness training was experimentally examined. Thirty-eight and 35 pupils in the third grade were assigned to experimental and control groups, respectively. As-sertiveness training had a weak therapeutic effect on the low aggressive pupils when a 3-way ANOVA was performed on the pre- and post-intervention scores.