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慢性期脳卒中後遺症者の歩行再建

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Academic year: 2021

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(1)理学療法学 第 42 巻第 8 号 803 ∼ 804運動療法の 頁(2015 年) 2 型糖尿病に対する効果とそのメカニズム. 803. 分科学会シンポジウム 8(日本神経理学療法学会). 慢性期脳卒中後遺症者の歩行再建* 渡 邊 裕 文**. はじめに  日々の臨床において我々は,歩行の獲得を目標にすることが 多いが,歩くことに意識しない歩行(自律的な歩行)をめざさ ないと,日常生活では実用的でないことは周知のとおりであ る。今回,当院外来通院中の慢性期脳卒中後遺症者の歩行の再 建を目的に,外来理学療法を再検討した。特に麻痺側足部機能 と身体中枢部の関係,麻痺側と非麻痺側の関係などに着目した 評価と治療および経過について考察を加え報告する。. 症例紹介  症例は 60 代の男性で,約 18 年前に脳出血を発症し,急性期, 回復期および維持期を他院にて加療した。発症から 10 年後の. 図 1 理学療法介入前の裸足歩行 a:麻痺側立脚期を示している.b:麻痺側遊脚期を示している.. 平成 18 年より当院の外来にてリハビリテーションを開始し, 現在も週 1 回の外来リハビリテーションを実施している。. めないまま,麻痺側遊脚期へ移行するが,麻痺側足関節内反,.  日常生活活動(以下,ADL)の状況は,ほとんどの活動を. 股関節屈曲から遊脚初期に骨盤挙上,後退(非麻痺側股関節屈. 非麻痺側上下肢により自立されていた。しかし立位や歩行の不. 曲・外転・外旋,腰椎の麻痺側側屈・左回旋)させ麻痺側下肢. 安定性により,立位での活動や裸足歩行は,実用性の低下を認. を遊脚しようとさせていた。またこのとき,麻痺側肩甲帯後退. めていた。また麻痺側上肢の ADL への参加は,ほとんどない. (非麻痺側股関節屈曲・外転・外旋による体幹の非麻痺側傾斜お. 状況であった。屋外移動は,プラスチック AFO を装着し T 字. よび回旋)が出現していた。そのなかで麻痺側足関節内反と底. 杖を用いて自立しており,屋内での移動は,装具装着し伝い歩. 屈,足趾屈曲を強め,前足部が離地しない,引きずりを強めて. きにて自立レベルであった。本人の主訴は,自宅内を移動する. しまうことで,非麻痺側への体幹の傾斜(非麻痺側股関節外転). ときに,裸足では歩きにくくもう少しスムースに歩きたい,屋. によって,麻痺側下肢を振りだそうと努力的となっていた。. 外では長い時間歩けず友達などと一緒に歩けない,であった。. 歩行観察(裸足歩行,図 1). 問題点の整理と仮説(図 2)  症例は裸足で歩くとき不安定さを感じていた。その不安定さ.  裸足歩行では,麻痺側立脚期において麻痺側足関節底屈・内. の要因として,麻痺側立脚期では,麻痺側下肢での伸展要素が. 反による前足部および足底外側から接地し,麻痺側足関節内反. 不十分であること,麻痺側足底の感覚鈍麻(足関節内反,足趾. は立脚期から遊脚期を通じて継続していた。麻痺側膝関節伸展,. 屈曲)の存在,それらより麻痺側足底が支持面として機能して. 股関節屈曲したまま股関節内転,伸展は認められず,麻痺側下. いないことが,大きな要因と考えられた。麻痺側遊脚期では,. 肢への十分な体重移動(麻痺側股関節の内転を伴った体重移動). 麻痺側前足部の引きずり(内反,足趾屈曲)と麻痺側骨盤の挙. が起こらないため,麻痺側立脚期は短く,素早く非麻痺側下肢. 上(非麻痺側股関節外転外旋,体幹非麻痺側傾斜,非麻痺側立. を振りだしていた。このとき,胸椎(上部体幹)の屈曲と麻痺. 脚での伸展不十分)が不安定さの要因となっていると考えた。. 側肩甲帯の下制により体重移動を代償していた。また麻痺側下. これらのことを考慮して,問題点の整理と仮説を図 2 に示す。. 肢への体重移動や非麻痺側下肢を振りだそうとすることで,麻.  理学療法. 痺側足部の内反がより著明に出現し,麻痺側上肢は屈曲方向の.  末梢からの感覚情報,特に麻痺側足部からの感覚情報をもと. 筋緊張を亢進させていた。立脚終期まで麻痺側股関節伸展を認. に,動けること(立ち上がれる,歩けるなど)をめざして,理. *. Reconstruction of the Walking of Chronic Hemiparesis Patient 六地蔵総合病院 理学療法士 (〒 611‒0001 宇治市六地蔵奈良町 9) Hirofumi Watanabe, PT: Rokujizo General Hospital キーワード:慢性期,歩行,足部機能. **. 学療法を展開した。常に身体中枢部の状態と末梢の麻痺側足部 の状態および非麻痺側の状態に配慮しながら,座位,背臥位, 立ち上がり,立位,歩行とそのつながりのなかで,理学療法を 実施した。それらの内容の一部を図 3 に示している。.

(2) 804. 理学療法学 第 42 巻第 8 号.  経過と理学療法後の歩行. 骨盤からの代償も軽減した。そのため歩行速度が向上し,自宅内.  今回の理学療法介入 2 週間後より,自宅内で裸足歩行をする. 裸足歩行の実用性および屋外杖,装具歩行の耐久性が向上した。. ときに体重をかける,かけている感覚が分かりやすくなってき たとの訴えと,同時に屋外での杖と装具歩行が楽になってきた. 考  察. との訴えがあった。また 2 ヵ月後より,自宅内で裸足にて生活.  ヒトの移動運動を成功させる基本的要件として Shumway-. する時間がかなり増え(裸足の方が楽な感じ),現在(理学療. Cook ら 1)は,以下の 3 つを挙げている。1)進む方向に身体を. 法介入後 3 ヵ月頃)立位でなにか作業するとき以外は,裸足に. 移動するために下肢と体幹の筋活動にリズミカルなパターンを. て自宅では過ごしているとのことであった。この頃には,屋外. つくり,それを協調させる。2)適切な姿勢を維持し,動いてい. での杖と装具歩行の耐久性が向上してきたとの訴えもあった。. る身体は重力に抗し,外力に抗する。3)環境,目標に適応す.  現在の裸足歩行の状態は,麻痺側立脚期での麻痺側足部の内. る。またこれらは Mary ら 2)によって,特に抗重力筋群の調整. 反が軽減し,麻痺側下肢の伸展能力に向上を認め,遊脚初期での. や正しい足部の定位により実現すると述べられている。加えて, 足部とは下肢の筋活動パターンを制御し,適応させるための重 要な末梢の入力源であり,特に立脚期で非常に重要であるとし, 強く長い支持期が得られれば,振りだしも良好となると述べて いる。今回本症例の裸足歩行の円滑さを向上させるため,麻痺 側足部機能に着目し,足底部からの感覚情報,それに基づく身 体の重力に抗する働きを促していった。麻痺側足部が支持基底 面として機能するように,足部のアラインメントや足部内在筋の 活性化とともに,立ち上がり,立位では足関節戦略での活動を促 した。このことで裸足歩行での麻痺側立脚期での足部内反が軽減 され,それとともに麻痺側遊脚初期の骨盤からの代償が減少し, 自宅内裸足歩行の実用性が向上したと考えた。これらは麻痺側足. a:現象からの問題点の整理と仮説. 部からの感覚情報が意識されない経路により小脳へ感覚情報が送 られ,それが身体の伸展活動に影響を及ぼしたことが考えられた。. おわりに  今回,発表および投稿にご快諾いただき,ご協力いただきま した患者様に感謝申し上げます。. 文  献. b:機能障害レベルの問題点の整理と仮説 図 2 問題点の整理と仮説. 1) Shumway-Cook A, Woollacott M: モーターコントロール―運動制 御の理論から臨床実践へ―(原書第 3 版).田中 繁,高橋 明(監 訳),医歯薬出版,東京,2009,pp. 300‒331. 2) Mary LE, Sue R, et al.: ボバース概念―神経リハビリテーションの 理論と実践―.紀伊克昌(監訳),ガイアブックス,東京,2013, pp. 119‒157.. 図 3 理学療法の一場面.

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参照

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