慢性期脳卒中後遺症者の歩行再建
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(2) 804. 理学療法学 第 42 巻第 8 号. 経過と理学療法後の歩行. 骨盤からの代償も軽減した。そのため歩行速度が向上し,自宅内. 今回の理学療法介入 2 週間後より,自宅内で裸足歩行をする. 裸足歩行の実用性および屋外杖,装具歩行の耐久性が向上した。. ときに体重をかける,かけている感覚が分かりやすくなってき たとの訴えと,同時に屋外での杖と装具歩行が楽になってきた. 考 察. との訴えがあった。また 2 ヵ月後より,自宅内で裸足にて生活. ヒトの移動運動を成功させる基本的要件として Shumway-. する時間がかなり増え(裸足の方が楽な感じ),現在(理学療. Cook ら 1)は,以下の 3 つを挙げている。1)進む方向に身体を. 法介入後 3 ヵ月頃)立位でなにか作業するとき以外は,裸足に. 移動するために下肢と体幹の筋活動にリズミカルなパターンを. て自宅では過ごしているとのことであった。この頃には,屋外. つくり,それを協調させる。2)適切な姿勢を維持し,動いてい. での杖と装具歩行の耐久性が向上してきたとの訴えもあった。. る身体は重力に抗し,外力に抗する。3)環境,目標に適応す. 現在の裸足歩行の状態は,麻痺側立脚期での麻痺側足部の内. る。またこれらは Mary ら 2)によって,特に抗重力筋群の調整. 反が軽減し,麻痺側下肢の伸展能力に向上を認め,遊脚初期での. や正しい足部の定位により実現すると述べられている。加えて, 足部とは下肢の筋活動パターンを制御し,適応させるための重 要な末梢の入力源であり,特に立脚期で非常に重要であるとし, 強く長い支持期が得られれば,振りだしも良好となると述べて いる。今回本症例の裸足歩行の円滑さを向上させるため,麻痺 側足部機能に着目し,足底部からの感覚情報,それに基づく身 体の重力に抗する働きを促していった。麻痺側足部が支持基底 面として機能するように,足部のアラインメントや足部内在筋の 活性化とともに,立ち上がり,立位では足関節戦略での活動を促 した。このことで裸足歩行での麻痺側立脚期での足部内反が軽減 され,それとともに麻痺側遊脚初期の骨盤からの代償が減少し, 自宅内裸足歩行の実用性が向上したと考えた。これらは麻痺側足. a:現象からの問題点の整理と仮説. 部からの感覚情報が意識されない経路により小脳へ感覚情報が送 られ,それが身体の伸展活動に影響を及ぼしたことが考えられた。. おわりに 今回,発表および投稿にご快諾いただき,ご協力いただきま した患者様に感謝申し上げます。. 文 献. b:機能障害レベルの問題点の整理と仮説 図 2 問題点の整理と仮説. 1) Shumway-Cook A, Woollacott M: モーターコントロール―運動制 御の理論から臨床実践へ―(原書第 3 版).田中 繁,高橋 明(監 訳),医歯薬出版,東京,2009,pp. 300‒331. 2) Mary LE, Sue R, et al.: ボバース概念―神経リハビリテーションの 理論と実践―.紀伊克昌(監訳),ガイアブックス,東京,2013, pp. 119‒157.. 図 3 理学療法の一場面.
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