ヘクシャー=オリーン・モデル
2017年度前期大学院 2017年5月26日、6月2日
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理論の背景
●師弟関係にある2人のスウェーデンの学者、 •エリ・ヘクシャー(Eli Heckscher,1879-1952) •バーティル・オリーン(Bertil Ohlin,1899-1979) が完成させた理論で、オリーンは1977年にノーベル経済学賞を受賞。 ●ヘクシャーの論文は1919年に発表されていたが、スウェーデン語で書かれ たために普及せしたかった(1949年に“The Effect of Foreign Trade onIncome Distribution”, in H.S. Ellis and L.A.Metzler eds., Readings in the Theory of International Trade,1949 の中で英訳され、邦訳は木村保重訳『オ リーン国際貿易論』晃洋書房、1980の巻末にある)。
●後に弟子のオリーンに受け継がれて、Interregional and International
Trade,1933(木村保重訳『オリーン国際貿易論』晃洋書房、1980)として完成 された。
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理論の特徴
•
リカード・モデル
では、労働という一生産要素を用いて、貿易
が行われる根拠を各国の
生産技術(technology)の相違
に求めて
いる。
•
ヘクシャー=オリーン・モデル
では、労働のみならず資本や土
地といった複数の生産要素を考え、貿易が行われる根拠を各国
の
要素賦存(factor endowments)の相違
に求めている。
•
ヘクシャー=オリーンの定理
とは、「
各国は自国に相対的に豊
富に賦存する生産要素を集約的に用いて生産される財を輸出入
しあう
」、例えば、「
労働豊富国は労働集約財に比較優位を持
ち、資本豊富国は資本集約財に比較優位を持つ
」というもので
ある。
ヘクシャー=オリーン・モデルの4つ定理
1. ストルパー=サミュエルソンの定理 (Stolper-Samuelson Theorem) ⇒pp.122-124, Fig. 5-6, fn.4 (100頁-103頁, 脚注4) ⇒財価格(相対価格)と要素価格(比率)の関係:所得分配:価格関係 ⇒賃金が相対的に高くなれば労働集約財の相対価格が上がり、資本レンタルが相対的に高くなれば資本集 約財の相対価格が上がる。 2. リプチンスキーの定理 (Rybczinski Theorem) ⇒pp.124-126, Fig. 5-8, fn.6 (103頁-104頁, 脚注6) ⇒生産量と生産要素(資源)の関係:経済成長:数量関係 労働賦存量が増加すると、労働集約財(衣料)の生産は増加し、資本集約財(食料)の生産は減少する。 資本賦存量が増加すると、資本集約財(食料)の生産は増加し、労働集約財(衣料)の生産は減少する。 3. ヘクシャー=オリーンの定理 (Heckscher-Ohlin Theorem) ⇒pp.126-127 (105頁-106頁) ⇒相対価格と貿易パターンの関係 ⇒資本豊富国は資本集約財に、労働豊富国は労働集約財に比較優位を持つ。4. 要素価格均等化定理 (Factor-Price Equalization Theorem)
⇒pp.134-135 (113頁-114頁)
資本と労働が代替的な場合のHOモデルの仮定
1. 自国でも外国でも、衣料(C)が労働集約的(labor-intensive)、食料(F)が資本集約 的(capital-intensive)である。したがって、衣料および食料の労働・資本比率は、 以下のように定義される。
2. 自国は労働豊富国(labor-abundant)、外国は資本豊富国(capital-abundant)であ る。したがって、自国および外国の要素賦存比率(ratio of factor endowment)は、 以下のように定義される。
3. 仮定2.により、自国は相対的に賃金が安く、外国は資本レンタルが安い。した がって、自国および外国の要素価格比率(ratio of factor prices)は、以下のように 定義される。 F C L L K K < *
L
L
K
K
>
*w
w
r
r
<
5賃金・レンタル比率 w r 労働・資本比率 L K FF CC 賃金が資本レンタルに比べて 相対的に高くなる w r 労働から資本への代替が起こる 労働集約的な技術から 資本集約的な技術に移行 KL F L K C L K w r いかなる賃金・レンタル比率で あっても、必ず食料が資本集約財 であり、衣料が労働集約財である。 F C L L K K < 労働集約財と資本集約財の定義 生産要素の代替性の意味
生産要素の代替性
(Factor Substitution)
Fig 5-5 67 C Q F Q
生産可能曲線と等価値線(isovalue line)
C C C F F F C F F P V V P Q P Q Q Q P P = + ⇒ = − + 生産可能曲線の接線の傾き 等価値線の傾き 0 lim C F F F Q C C C Q dQ MPL MRT Q dQ MPL ∆ → ∆ − = ∆ =- =-C Q ∆ F Q −∆ C FP
MRT
P
=
収入最大化の条件 Fig 5-2, 5-3Marginal Rate of Transformation (MRT: 限界変形率):
L K k11 k12 2 1 k13 3 ω1 ω2 ω3 賃金が相対的に安くなる(ω↓) ⇒労働集約的な技術(k↓) 賃金が相対的に高くなる(ω↑) ⇒資本集約的な技術(k↑) QF=1
等産出曲線(isoquant curve)
w r ω = 要素価格比率(ratio of factor prices)
K k L = 資本・労働比率 (capital-labor ratio) L ∆ K −∆ 一定量の生産物を作ること ができる生産要素の投入量 の組合わせ(input mix) 1 min . . F ( , ) TC rK wL s t Q F K L = + = 費用最小化の条件 0 lim L w T w MRS C K L r r K dK MRS r L dL ∆ → = − + ∆ = = ∆ ∴ =
1.要素価格と財価格(ストルパー=サミュエルソンの定理)
C F C F P w r P P w r P ⇒ ⇒ 賃金が相対的に上昇: 労働集集約財である衣料の相対価格が上昇: 資本レンタルが相対的に上昇: 資本集約財である食料の相対価格が上昇: C F P P w r Fig 5-6 9相対価格( )、要素価格比率( )、労働・資本比率( )の関係
w r C F P P C F P Pw
r
L K FF CC L K Fig 5-6 Fig 5-5 Fig 5-7 1 C F P P 2 C F P P 1 w r 2 w r 1 F F L K 1 1 1 2 2 2 2 F F L K 2 C C L K 1 C C L K 102.資源と生産量(リプチンスキーの定理)
C Q F Q C F P P -C F P P -1 2 1 C Q 2 C Q 2 F Q 1 F Q 労働賦存量が増加すると、労働集約財(衣料)の生産は増加し、資本集約財(食料)の生産は減少する。 資本賦存量が増加すると、資本集約財(食料)の生産は増加し、労働集約財(衣料)の生産は減少する。 113. ヘクシャー=オリーンの定理 (証明)
自国は労働豊富国(labor-abundant)、外国は資本豊富国(capital-abundant)である。したがって、
である。したがって、自国は相対的に賃金が安く、外国は資本レンタルが安い。したがって、自国お よび外国の要素価格比率(ratio of factor prices)は、
*
L
L
K
K
>
*w
w
r
r
<
となる。したがって、自国は労働集約財(衣料)の相対価格が安く、外国は資本集約財(食料)の相対価 格が安い。 * C C F FP
P
P
P
<
である。したがって、自国は衣料に比較優位を持ち、外国は食料に比較優位を持つ。 12相対価格( )、要素価格比率( )、労働・資本比率( )の関係
w r C F P P C F P Pw
r
L K FF CC L K Fig 5-6 Fig 5-5 Fig 5-7 C F P P * C F P P w r * w r F F L K 1 1 1 2 2 2 * F F L K * C C L K C C L K 1314 C Q F Q
相対価格の変化と産出量の変化
1 F Q 1 C Q 1 C F P P -2 C Q 2 F Q 2 C F P P -1 2 C C F F P P P P < , .5 9 C F C C F F P Q F g Q Q i P ⇒ ⇒ Q ⇒ − C FP
MRT
P
=
収入最大化の条件 Fig 5-2, 5-3C F Q Q C F P P RD RS* RS 1 2 3 1 C F P P 2 C F P P 3 C F P P