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25労086(業務上外:棄却)

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Academic year: 2021

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平成25年労第86号 主 文 本件再審査請求を棄却する。 理 由 第1 再審査請求の趣旨及び経過 1 趣 旨 再審査請求人(以下「請求人」という。)の再審査請求の趣旨は、労働基準監督 署長(以下「監督署長」という。)が平成○年○月○日付けで請求人に対してした 労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号。以下「労災保険法」という。) による遺族補償給付を支給しない旨の処分を取り消すとの裁決を求めるというに ある。 2 経 過 請求人の亡子(以下「被災者」という。)は、平成○年○月○日A市所在の事業 場に教諭として採用され、採用1年目はクラス担当のないフリーの教諭、2年目 は年少組のクラス担当をしていた。採用3年目の平成○年○月○日からは年中さ くら組の担当となり教諭業務に従事していたが、同年○月○日に自宅マンション 10階の自室のベランダから飛び降り、搬送されたY病院にて、同日、Bクリニ ック医師により内臓破裂による死亡(自殺)が確認された。 請求人は、被災者の死亡は恒常的な長時間労働、展覧会の準備及び連絡帳の作 成等の業務による心理的負荷が原因であるとして、監督署長に遺族補償給付の請 求をしたところ、監督署長は被災者の死亡は業務上の事由によるものとは認めら れないとしてこれを不支給とした。 請求人は、この処分を不服として、労働者災害補償保険審査官(以下「審査官」 という。)に審査請求をしたが、審査請求をした日から3か月を経過しても審査請 求についての決定がないことから、労災保険法第38条第2項の規定に基づき、 審査官の決定を経ないで、再審査請求に及んだものである。 第2 再審査請求の理由

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(略) 第3 原処分庁の意見 (略) 第4 争 点 本件の争点は、被災者の死亡が業務上の事由によるものと認められるか否かにあ る。 第5 審査資料 (略) 第6 事実の認定及び判断 1 当審査会の事実の認定 (略) 2 当審査会の判断 (1)精神障害の発病の有無及び発病の時期について 請求人らは、被災者が食欲不振と不眠を訴えた平成○年○月中旬頃にICD ―10におけるうつ病エピソード(F32)を発病していたと主張しているが、 被災者には精神障害の受診歴はなく、医師が発病時期等を診断した医証も認め られていない。 専門部会は、被災者の様子や行動の変化を最も知り得る関係にあった被災者 の母親が、平成○年夏頃に被災者の食欲が減退している旨の申述はしているが、 精神障害の特徴的な症状の出現が認められる申述はしていないこと、また、複 数の事業場関係者は共通して、被災者の精神病の症状をうかがわせるような特 徴的な症状の出現は見受けられなかったとし、家や事業場における被災者の言 動には前向きな姿勢がみられていたこと、(無断)欠勤も認められないことなど を根拠に、被災者の精神障害の発病をうかがわせる、又は精神障害の存在が推 測されうるような様子の変化や異常な行動等の病像は認められないとする旨の 意見を述べている。当審査会としては、請求人や事業場関係者の陳述内容に照 らして、同部会の医学的見解は妥当であると判断する。 (2)精神障害の業務起因性の判断に関しては、厚生労働省労働基準局長は、認定 基準を策定しているが、当審査会としてもその取扱いを妥当なものと考える。 したがって、以下、認定基準に基づいて、本件疾病の業務起因性について検 討するところ、本件は、被災者に精神障害に発病が認められないことから、認

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定基準による労災認定のための判断要件である「対象疾病に該当する精神障害 を発病していること」の要件を満たさないものである。 ただし、当審査会としては、請求代理人が平成○年○月中旬頃に「うつ病エ ピソード」を発病していたと主張していることから、請求人らの主張を踏まえ 被災者が精神障害を発病していたものと仮定して、念のため被災者の死亡前に 業務による強い心理的負荷が認められるか否かについて検討する。 (3)死亡前おおむね6か月の間に起きた業務による出来事について ア 特別な出来事について 認定基準(別表1)の「心理的負荷が極度のもの」に類型する「特別な出 来事」は認められない。 イ 業務による具体的出来事 (ア)被災者は、平成○年○月に年中クラスの担当教諭として業務に従事して いたものであるが、平成○年○月には年少クラスを担当をしていた。被災 者の保育日誌等から年少クラスと年中クラスの行事に大きな違いはみられ ないものの、幼児の経験と活動内容において、年少組の場合は、お絵かき、 はさみの使い方、お歌、英語、鍵盤ハーモニカ、壁面立体作り、紙粘土、 鯉のぼり作成、七夕製作などの指導以外に、片付け、手洗い・うがい、挨 拶、お着替え、制服のたたみ方、トイレの声かけ、排泄など、しつけやマ ナーの指導が多くみられる。被災者の元同僚であるCが、「園の大きい行事 は年少も年中も変わらない。制作物は、年少組よりも年中組の方が園児の 作る物は難しくなる。また、年少組はうまく作れないので、先生の負担が 大きく、年長組になるとハサミを使ったりできるため先生の負担は減ると 思うが、年中組はその中間と思う。しかし、先生が作る物が難しくなるこ とはない。」と述べているように、被災者にとって平成○年度の業務が平成 ○年度と比較して特に過重になったとは認められない。例えば、請求人等 が述べている初めての誕生会の司会についても、被災者は平成○年に既に 経験しているところである。請求代理人は、展覧会の準備は、「仕事内容・ 仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」を類推し、その心理的 負荷の強度は「Ⅱ」であると主張しているが、上記のとおり、平成○年度 の業務が前年度と比較して仕事の内容、責任の変化の程度から過重であっ たと認めることはできない。

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(イ)被災者の労働時間について 請求代理人は、被災者の労働時間について、1月平均の時間外労働時間 が100時間を超える恒常的な長時間労働に従事していたとして、具体的 出来事の「仕事内容・仕事量の大きな変化を生じさせる出来事があった」 の強度を「Ⅲ」に修正されるべきと主張している。 当審査会では、退出時間記録及び退出記録表写並びに事業所の教諭の申 述等より、労働の過重性を評価するための労働時間として次のとおり認定 する。 ① 事業所の所定始業時刻は午前8時20分であるが、教諭の出勤時刻は、 保育の準備、送迎バス当番及び園児の登園時刻との関係で、概ね午前7 時から同8時20分の間と判断し、実際の始業時刻を午前7時30分と し、送迎バス当番の日は、バスが午前7時30分に出発するので午前7 時とする。 ② 所定終業時刻は16時20分とされているが、実際の教諭の退社時刻 は、園児が午後1時ないし午後2時から降園し始め園児全員が帰るのは 午後4時頃とされ、その後、保育日誌を書き、学年ごとに行事の準備、 打ち合わせ及び練習を行っており、退社時刻は早くて午後5時か5時3 0分くらいから午後6時か午後6時30分と述べられていることから、 退社を証明する資料が何もない場合は、原則午後6時30分とする。 また、警備報告書に記録が残されている場合で、最終退出者が教諭の ときは記録された時刻で、園長など教諭以外の場合は記録された時刻か ら1時間を差し引いた時刻とする。なお、退出記録表の場合は、そのま まの時刻とする。 ③ 休憩時間については、昼の休憩時間は、園児と一緒に昼食を摂るが、 園児が食べ物を残さないよう見回ることなどから休憩時間は仕事の一つ、 休憩時間の感覚はないと述べられている。 しかし、園児が登園・降園するまでの送迎バスの待ち時間等1日を通 して具体的な業務に従事していたとはいえない時間帯が相当程度認めら れることから、労働密度を考慮して休憩時間について1時間は確保され ていたと判断する。 ④ 持ち帰り残業の制作物については、展覧会のものは、園児が作ったも

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のを飾り付けるので持って帰ってできるものではないこと、出勤してか ら園児の登園までの間に行うなど教諭によって対応が異なること、また、 自宅でTVを観ながら行っていたとの申述もあることから、業務として の性格を欠いていると言わざるを得ない。一方、連絡帳の作成について は、年中組の提出回数が年度途中で減っているものの、定期的に作成し 提出するもので、作成に当たっては別途時間を確保して集中して行うも のと判断され業務としての性格が認められる。請求人らは、園児一人に つき4~5頁、1人分書くのに40分以上かかるなどと述べ、また、被 災者の同僚で同じ年中組を担当していたDは、園児一人につき最低5頁 くらい、短くて15分、長くて30分くらいと述べているが、連絡帳写 をみる限り下書きを考慮しても5頁には至らないと判断され、よって、 園児一人につき20分、被災者のクラス29名として、仮に全て自宅で 作成したとして1回の提出につき580分(9時間40分)の作業とす る。なお、連絡帳の提出時期については、被災者と同じ年中クラスを担 当していたDからの聴取書を採用し、6月末、9月末、11月末とし、 前記時間を月末締切前に加算する。 ⑤ 前記より、被災者が死亡当日に精神障害を発病したと仮定して前6か 月間の時間外労働時間を算定すると、次のとおりとなる。 死亡前1か月 ○月○日 から ○月 ○日まで 40時間48分 死亡前2か月 ○月○日 から ○月 ○日まで 66時間31分 死亡前3か月 ○月○日 から ○月 ○日まで 64時間37分 死亡前4か月 ○月○日 から ○月 ○日まで 41時間52分 死亡前5か月 ○月○日 から ○月 ○日まで 48時間30分 死亡前6か月 ○月○日 から ○月 ○日まで 83時間48分 したがって、被災者の労働時間に大きな変化は認められず、請求代理人 の主張は認められない。 (ウ)また、請求代理人は、展覧会の展示物の制作において、「ノルマが達成で きなかった」に該当し、その心理的負荷の強度は、容易に「Ⅱ」から「Ⅲ」 に修正されるべきであると主張し、連絡帳の作成についても、「達成困難な ノルマが課された」に該当し、その心理的負荷の強度は、容易に「Ⅱ」か ら「Ⅲ」に修正されるべきであると主張しているが、これまで述べたよう

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に、上記出来事の存在はいずれも認められない。 (エ)請求代理人は、事業場が、被災者の支援は行わず、連絡帳などにおいて、 厳しくチェックし被災者の負担を増大させ、その心理的負荷の総合評価は 「強」であると主張しているが、園長や教諭の申述によると、連絡帳の作 成回数を減らすなど連絡帳作成の負担を軽減し、各種行事の準備等につい ても、園全体として協力していると述べられており、実際に被災者の保育 日誌からもその状況がうかがわれる。また、同種の労働者と比較して業務 内容が困難で、業務量が過大であるとも認められない。したがって、請求 代理人のこの主張を認めることはできず、業務による心理的負荷に係る出 来事として評価することはできない。 (オ)以上、請求代理人の主張に沿って、被災者が平成○年○月中旬頃に「う つ病エピソード」を発病したと仮定して、認定基準に基づき発病前おおむ ね6か月間の業務による心理的負荷をみても、全体評価として「強」とは 判断できないものであり、請求代理人のこの主張を認めることはできない。 (カ)なお、被災者が作成した遺書には、事業場を批判するような内容は記載 されておらず、主として被災者の母親や友人に対する感謝の念が記載され ていることを付言する。 3 以上のとおりであるから、被災者の死亡は業務上の事由によるものとは認めら れず、監督署長が請求人に対してした遺族補償給付を支給しない旨の処分は妥当 であって、これを取り消すべき理由はない。 よって主文のとおり裁決する。

参照

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