CAEの導入によるナックル型プレス機の機構解析
吉富秀樹*1、 小宮山 悟*2
Dynamic Analysis of Knuckle Joint Press by Using CAE Tool for Analysis of Mechanical Systems
Hideki YOSHITOMI*i, Satoru KOMIYAMA 2
This paper describes dynamic analysis of a knuckle joint prcss by using CAE tool. The purpose of this study is to make it easy for engineers to predict the dynamics of the knucklejoint press. These predictions arc essential for the optima1 design of itS mechanical system. At firsちwe deve工oped a compuler aided design system for the analysis introducing dynarnic simulation software named Working Model. In this system,
Working Model is linked to other applications such as CAD and Excel in order to make it easy to draw a diagram of the analytical model and to analyze data generated by simulations. Then we performed the experiments of the knuckle joint press, and compared the experimental results with the simulation resuks to verify that this simulation resu}ts show accurately the dynamic characteristics of the actual machine. Finally we investigated the fiuctuation in rotating speed and the effect of flywheei.
1.緒言
プレス機の設計において機構の運動を解析する場合、従 来は運動学的な解析や簡単な近似モデルによる動的解析によって 速度変動や所要動力等を求め、これを経験値と比較することによっ て設計を進めることが多かった。これは、例えばクランクプレス に代表されるように、その機構が比較的単純なため、理論式によっ て容易に各部の速度や力などを計算することができ、あえて複雑 な解析を行わなくても経験的な方法で設計が行えたためと考えら れる。しかし、近年の製造業の激しい競争社会においては、ブレ ス機にも高速化や振動低減などドラスティックな高性能化が求め られ、従来の設計法だけでは不十分であり機構のフルダイナミク スを解析する必要性が出てきた。また、製品開発の効率化の観点 からコンカレントエンジニアリング思想(1)に基づく設計法が注目 されており、図1に示すように、設計しながら機構や性能をシミュ レーションし最適化してゆく設計環境を構築することも必要となっ てきている。.
一方近年は、パソコンの高性能化やWindowsによるGUI環境の 整備などと共に、機構解析技術を使ったシミュレーションソフト がCAEヅールの一つとして汎用化されてきており(2)、設計者自身 が機構の運動をコンピュータ上で見ながら各部の動きや力、トル ク等を解析することが可能となってきた。.,
そこで本研究では、アルミチューブ製造や乾電池製造等に 用いられているナヅクル型ブレス機を具体的な設計対象とし、
CAEヅールとして汎用機構解析ソフトを導入し、これにCAD等を リンクさせて機構の運動の動力学的解析のための設計支援システ ムを構築する。次に、このシステムを用いてプレス機の解析モデ ルを作成し、この解析モデルによるシミュレーション結果と実機 による実験結果を比較することによって本解析法の妥当性および 解析精度を検証する。最後に解析事例として、ブレス加工時の速 度およびトルクの変動やフライホイールの慣性効果について動力 学的な面から解析した結果を示す。
‡1機械工学科
*2専攻科平成10年度修了 平成11年8月31日受理
現在,関西チa・一一ブ株式会社
従来の設計法 フィードバック
・設計の下流側で般計鉗口が出ると 條ヤとコストがかかる。
設計
CAD 経験的
ン計式 ・ CAD
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試作・試験
基本設計 技術計算 詳細灘+ @試作
CAEによる最適化設計
璽1更h 二誌穰鍛;警側 L一『}、
u「【一一.、│
設計 遍淑_
一 一 一 一 一 . 山 . 一 一 一 .
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ソ・孤
x〕臨…設計しながらシミュレーション
葺本設計 技術計算 詳細股計
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@ 試作
図1 従来の設計法とCAEによる最適化設計の比鯨
3.ナックル型プレス機の特徴
Working Model
愈
データの 相互リンク
図面の
聲[CAD]
Excel
ナヅクル型プレス機の基本的な機構を図3に示す。トヅ グルリンクDの上部はフレームの固定部Hで支持され、トヅ グルリンクEの下部はスライドラムに取り付けられている。
駆動用モータが減速機を介してクランク軸Aを回転させると、
クランクピンBと連接棒Cを経てトッグルリ.ンクDとEを左右 に揺動させてスライドラムFを一定のストロークだけ上下方 向に動かす。アルミ材料はスライドラムFと固定部Gに取り 付けられた工具によって圧縮加工される。
図2 設計支援システムのソフトウエアの構成
Hl固定部
2.CAEソフトウエア
D B
構造物や機械の強度、振動等をコンピュータを用いて解析する CAEツールは20年ほど前から利用されるようになったが、近年は 設計支援ヅールとしてますますその利用範囲を広げてきている。
今やCAEツールは、一部の専門家だけのものでなく、一般の設計 技術者でもエンジニアとしての素養と常識があれば容易に使える 道具となってきた。このようなCAEヅールの中で、最初に発達し たのは有限要素法による構造解析であり、これは60年代から70年 代に解析手法が確立され、80年代にはNASTRANやMARC等の汎 用有限要素法解析プログラムが市販され広く利用されるようになっ た。一方、機構解析プログラムの研究は60年代から始まったもの の、ADAMSやDADSなどが実用的なレベルで利用できるようになっ たのは80年代に入ってからと言われている(3)。したがって、汎用 の機構解析ソフトが一般の設計現場に現れたのは最近であり、ま だ限られた分野でしか利用されていないのが実状である。本研究 では、パソコン上で動作する2次元の汎用機構解析ソフトウエア Working Model(4)を用いて解析を行う。なお、構築した設計支援シ
ステムでは、Working Modelを単独で使用しているだけではなく、
図2に示すようにCADとExcel(5)をリンクさせて機能の向上と解析 の能率化を図っている。以下、このシステムについて説明する。
解析に当たっては、まずWorking Mode1内にブレス機の 解析モデルを作成するのであるが、このモデルの図形デー タはCADを用いて作図する。 Working Mode1自体にも作図 機能はあるが、その.機能は限定されており複雑な形状を作 図するにはCADを用いた方が能率的である。 CADで作成し た図形データは、DXFファイル形式によってWorking Mode1内に取り込む.ことが出来る。また、 DDEをサ7S 一ト
しているExcelとは計算ステップ毎にデータを相互に受け渡 しするリアルタイムリンクを張ることができる。そこで、
Excelのスプレッドシートにブレス機の駆動用モータの速度 トルク特性を設定しておき、計算ステップ毎にWorking ModelからExcelヘモータの回転速度を渡し、それに見合っ たトルク値をExce1から受け取る。この方法によって、時々 刻々変化するモータの出力を精度良く制御できる。また、
WQrking Modelによるシミュレーション結果のデータは Excelに出力され、 Exce1の豊富なグラフ機能を利用して容 易にデータを纏めることが可能となっている。
E
C
F;スライドラム
「コ…定・
A:クランク軸
図3 ナヅクル型ブレス機の基本的な機構
250 ハを 邑
150起
100 so
e o
圃
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蝦』
凝
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クランク軸回転角度[d6d
720
亟
ltO 360 51e 720
クランク軸回転角度[Cleel
図4 スライドラムの変位と速度
この機構の特徴としては、大きな圧縮荷重はほぼ垂直と なるトヅグルリンクを介してフレームで支えられ、クラン ク軸は僅かな荷重を受けるだけすむなどの点が上げられる
が、加工上重要なのはアルミチューブ製造に適した緩速圧 縮加工が実現できることである。つまり、この機構ではス ライドラムが下死点付近の加工ストロークになるとクラン ク軸の回転角度に対するスライドラムの移動量が微小とな るので圧縮加工時間が長くなり平均圧縮速度の小さい加工 が行える。一例として本研究で使用したナックル型ブレス 機について、クランク軸回転角度に対するスライドラムの 変位と速度の関係を図4に示す。図よりスライドラムの下 死点付近で変位が小さくなっているのが見てとれる。
4,ナックル型プレス機のモデル化
本研究の対象としたブレス機は、練歯磨や絵具用のアル ミチューブや乾電池用ケースの製造に用いられる縦型のナッ クル型ブレス機であり、外形を写真1に示す。また、その 主な仕様は表1に示すように、加圧能力は490【kN】であり、
駆動用モータは3.7(kW】の三相誘導モータで同期速度は 1800【rpm】となっている。
写真1 ナックル型ブレス機の外観
表1 ナヅクル型ブレス機の仕様
仕 様
加圧能力 490[kN]
出力位置 下死点上3[mm]
ストローク数 70[spm]
ストローク量 200[mm]
電動機 3.7[kW] 4P
してくれる。なお、図形データは前述のようにCADで作成したも のをWorking MOdelに取り込んでいる。作成した解析モデルを図5 に示す。
モータ フライホイール
クラッチ 小ギヤ
クランク軸
スライドラム プレスカ
図5 ナヅクル型プレス機の解析モデル
このようなブレス機のフルダイナミクスを解析する場合には駆 動用モータの出力特性を正確に与える必要がある。本研究のブレ ス機は、3.7【kW】の三相誘導モータを直入始動で運転してい るので、その出力特性を速度トルク特性(スリップ特性)として 図6のように与えた。なお、運転中には速度変動によってモータ 回転速度の瞬時値は同期速度の1800【rpm】を越えることがある ので、図には示していないが、1800【rpm】を越える領域のト ルク特性も与えている。この1800【rpm】を越える領域では、
トルク値は負となりブレーキとして作用する。また、モー タはその特性上、速度変動がある場合でも、図6に示す安 定領域すなわちトルク特性が右下がりとなる領域で作動さ せなければならない。なお、前述のようにモータ特性はExcel内 に設定されており、Working M6delは計算ステップ毎に回転速度を Ex㏄1へ渡し、それに見合ったトルク値をExcelから受け取る。
350 300 250 冨200 婚150ミ
・乙100
50
0
−so
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安定領域 i
ロロリロゐヤドヒ コしコココ ゐロ ロコロレロロロ しロ ロコゆロロロリ コのサロほロしロ コ らロロロロ
ーモータトルク串 1わ sio si。 7i。幽 1軸1抽ゆ1ψ。 IS 1
モータ回転敷[rpm】
モデル化においては、本研究で使用したWorking Modelが2次元 版であるため2次元の解析モデルを作成した。2次元モデルを配 置する平面はクランク軸の軸方向と垂直な面とし、この面に各構 成部品の外形と質量を与え、ピン結合やスライダ結合なと実機に 即した拘束条件のもとで各部品を取り付けた。このとき、各部品 の慣性モーメントは形状と質量からWorking MOdelが自動的に計算
図6 駆動用モータの速度トルク特性
また、アルミ材料を圧縮加工するブレスカ(押出し力)は、加 エストロークの初期において急上昇しその後は変化が比較的少な いことから(6)、この解析においてはプレスカは加エストローク中
一定と仮定した。すなわち、加:Lストロークに相当する間は、ス ライドラム下面にプレスカに相当する一定の上向きの力が加わる とした。なお、この解析では各部の摩擦や軸受損失は無視して いる。
次に、後の項でプレス機の起動特性を検討するので、こ こでこのプレス機の起動方法を説明しておく。まず駆動用 モータの始動方法は、3.7[kW】と小容量であるので直入始動 を行っている。駆動用モータとフライホイールはVベルトに よって連結されているが、起動時にはフライホイールとク ランク軸との間のクラヅチを切り、無負荷の状態でモータ の同期速度まで回転上昇させる。その後、クラッチをつな き、クランク軸に動力を伝え、スライドラムが往復運動を 始めブレス加工に入る。
ランク軸との間のクラッチを切った状態で、プレス機の回 転が停止状態から定格速度に至るまでの速度上昇を計測し た。また、この実験と同一条件でシミュレーションを行っ た。それぞれの結果についてモータ軸の回転速度に換算し た値を図8に示す。太線がシミュレーションによる解析値、
点線が実験による計測値である。
2000
oo
[p謙群回塾1Ψァ占 15㎜ 枷
o
e O,5 1 1,5 2 2,5 3 3,5 4 4.5 5 時間[5・e]
1一 「
一解析億一実験値
5.解析精度の検証
図8 起動特性の回転速度上昇 前章までに説明した設計支援システムが実際に役に立つ
ためには、解析モデルが実機の特性を精度良く表すもので なければならない。そこで、本章では解析モデルによるシ ミュレーション値と実機を使った実験値を比較することに よって解析方法の妥当性と精度を検証する。なお、運動学 的事項(図4に示したクランク軸の回転角度に対するスラ イドラムの位置や速度等)は、別途理論的に調べたところ 当然ながら正しいことが確認できているので、ここでは動 力学的事項のみについて示す。具体的には、ブレス機を設 計する上で重要となる起動時の加速特性と無負荷および加 負荷時における回転速度変動について調べる。
5.1 実験用ブレス機
実験に使用したブレス機は、第4章で示した加圧能力 490[kN】のナックル型ブレス機であり商用運転されている実 機である。回転速度を計測するため、図7のようにモータ 軸にカヅプリングを施し、減速機を介して回転計用発電機
(タコジェネレータ)に接続し、その電圧から回転速度を 求めた。電圧の測定にはグラフィックレコーダを使用した。
フライホイール
転計転圧墾
グラフィック 戟Fコーダ
モータ 減速機(1/2.5)
Jップリング
図7 回転速度の測定方法.
5.2 起動特性
(1)実験値とシミュレーション値の比較
起動特性の実験では、前述のようにフライホイールとク
始動後、回転速度は実験結果と解析結果ともに時間に対 してほぼ直線的に上昇しており両者は良く合っている。そ して、いずれも約3.7秒前後で同期速度に達しているのが分 かる。この起動特性について理論面から簡単に考察した結 果を以下に述べる。
(2)理論的考察
起動時には前述のようにクラッチは切られているので、
起動特性に大きな影響を与えるのはモータの出力とフライ ホイールの慣性モーメントである。そこで、図9のように モータ軸のプーリとフライホイールがベルトによって連結 されているモデルを考える。
ao Mo
i Nモータプーリー
Ro To
IO
Tl Tl
フライホイール
重1
To
al
戸
Rl
図9 起動特性の理論解析モデル
ここで、モータの駆動トルクをMoとし、プーリとフライホ イールの慣性モーメントをそれぞれlo、 Il、半径をRo、 Rl、
角加速度をαo、α1とするとベルトは同じ速度で回転して いるので、
Ro・ ao== Ri・ cti (1)
となる。プーリとフライホイールのそれぞれの運動方程式 は、ペルトの張力を図9のようにTo、 T1とすると、
Mo一(Ti To)Ro= lo・ ao (2)
(Ti 一To)Ri=li・ ai (3)
となる。式(1)〜(3)より、プーリの角加速度αoは、
Mo
ao=一 (4)
( 一1}E L )2 × ii + io
Rl
と求められる。ここで、式(4)の右辺分子の駆動トルクMoは 起動時には図6に示すようにほぼ一定と見なせる。そうす ると、左辺の角加速度αQもほぼ一定となるから、図8のよ うに回転速度が時間に対して直線的に上昇してゆく傾向は 理論的にも言える。また、初速度を零としたときのt秒後 の角速度ωは、角加速度αoを一定と見なせば
W=Scrodt=cro・t (5)
となるから、同期速度ωsに至るまでの時間tsは、
(R 02 , li + Ri2 . lo) ces
(6)
ts= Ri2 . Mo
となる。ここに実機の値は以下である。
Ro=64.5 [mm] lo=L35×10−2 [kgm2]
Ri==304.5 [mm] li :18.06 [kgm2]
cL)s=1800 (rpm]=188.4 [rad/secl
また、Moは定格トルクの210%であるとすると41[Nm】とな るので、これらの値を式(6)へ代入すると起動時間tsは、
ts=3.8 [sec]
となる。これも図8の結果と良く一致している。
以上のことから、起動時に動いている部分、すなわち駆 動用モータからフライホイールに至るシステムのモデル化 についてはほぼ妥当であると考えられる。ただし、起動時 にはクラッチが切れておりナックル機構は動いていないた め、システム全体の妥当性は起動特性だけでは議論できな い。そこで、虚心ではナックル機構が動いている時の解析 精度を検証するため速度変動を調べる。
下死点から5.2{mmlの区間で157[kN】の上向きの力が発生す るとした。
無負荷状態と加負荷状態の速度変動をそれぞれ図11と図 12に示す。愚図において太線がシミュレーションによる解 析値、細線が実験値である。また、縦軸はモータ軸に換算 した回転速度、横軸は計測開始からの時間であり、クラッ チをつなげ、スライドラムが往復運動を始めてしばらくし てから任意のタイミングで計測を開始した。なお、解析値 は実験値に波形が重なるように位相を合わせてある。
2000
ロ 三
1800薄
回1700→
甲1600 1500
2000 冨書9。。
琶180。
翠 170。
串1600 1soe
一 一 一
_一一 i竺三四型
o e,5 1 1,5 2
時聞[sec] 2,5 3 3.5 4
図11 無負荷状態の速度変動
一解析櫃一・一実験値
O O.5 1 1.5 2
旧聞15.G] 2,5 3 3.5 4
図・12 加負荷状態の速度変動
5。3 速度変動
(1)実験値とシミュレーション値の比較
プレス機を定格回転面まで立ち上げ、フライホイールと クランク軸の間のクラヅチをつないで機構全体を動かし、
無負荷状態および実際にアルミチューブを加工している加 負荷状態での速度変動を計測した。また、この実験と同一 条.件でシミュレーションするわけであるが、加負荷状態の シミュレーションにおけるブレスカは以下のように設定し た。すなわち、実験の圧縮加工に使用したアルミ材料は図 ゆ
10のような形状をしており、これの加工に要するブレスカ は経験的に約157【kN】と推定されている。また、加エストロー クは材料の厚みの5.2【mm】に等しいと見なした。したがって、
シミュレーションでは、スライドラムの下降行程において
図11および図12より、実験値にはノイズの影響が見られ るもののノイズを平均化して見れば解析値とほぼ一致して いる。この速度変動についても理論面から簡単に考察した 結果を以下に記す。
(2)理論的考察
プレス機のように瞬間的に大きな力を必要とする機械で はモータから直接エネルギを得るのではなく、図1釧こ示す ようにフライホイールに一旦エネルギを蓄積し、そこから
モータ
s 回転数回復に必要な
エネルギ
フライホイール
a」pt−1 1 瞬間的に大きな エネルギ
図10 アルミ材料の形状 図13 プレス機のエネルギの流れ
仕事に必要なエネルギを取り出すと考えるのが妥当である。
1回のプレス加工によるエネルギ消費量Eは、ブレスカを P[kN]、加工ストロークをL【mm】とすると、
E=PXL [N m] (7)
となる。ここで、考察を簡単化するため、ブレス作業によ るエネルギ消費がフライホイールの回転エネルギのみを減 少させると考える。つまり、リンク部の運動エネルギおよ ひモータから供給されるエネルギは無視して考える。そこ で、フライホイールの慣性モーメントをllとし、エネルギ 消費量Eによってフライホイールの角速度がω1からω2に 減じたすると、
1E=一÷ li (ct) i 2一 co 22) (s)
2
となる。このブレス機ではモータ軸に対するフライホイー ルの減速比は0,21となっているので、モータ回転数が1800
【rpm1の時のフライホイールの角速度ω1は39.6【rad/sec】で ある。また、前述のように、P=157【kN}、 L=5.2【mm]、 Il=
18.06[kgm2】であるから、これらの値を代入すれば、ω2=
38.4【rad/sec】となる。したがって、速度変動率ρを、
tu 1−tu 2
P=一 (9)
Ct) 1
とするとρは3。0%となる。一方、図12では実験値とシミュ レーションによる解析値ともにおよそ1760[rpm】から1810
[rpm】の間で変動しており速度変動率は2.8%となり、理論値 より若干小さいものの良く合っている。なお、理論値はリ ンク部の慣性エネルギやモータから供給されるエネルギを 考慮していないため、実験値やシミュレーション値に比較 して速度変動が大きくなる傾向である。したがって、定性 的に整合性のある傾向となっている。なお、複雑なリンク 部の慣性エネルギも容易に考慮できることがCAEツールを 用いた解析法の大きな特徴でもある。また、式(8)〜(9)の理 論式では、どの程度の速度変動が起こるかということしか 計算できないが、本研究の解析モデルによるシミュレーショ
ンでは図12から分かるように1回転中の瞬時の速度変動を 詳細に解析することができる。
以上のように、本設計支援システムで作成した解析モデ ルによる起動特性および速度変動のシミュレーション結果 は実験値と非常に良く一致しており理論的にも妥当である ことが確認できた。また、従来の理論式だけでは不明であっ た瞬時の詳細な動きまで精度良く解析できることが分かっ
た。
6.シミュレーションによる機構解析
タ画面を図14に示す。この図では、トヅグルリンクとスラ イドラムの運動の軌跡も描かせている。このように、機構 解析ソフトを利用すれば各部の運動をコンピュータ上で見
ながら解析できる。
図14 Working Modelによるシミュレーション画面
次に図15は、ブレス機が圧縮加工を行っている際のモー タの速度変動と出力トルクの変動をシミュレーションによ
り求めたものである。図15の下段のグラフは負荷の加わる タイミングを表している。上段のグラフは、その時のモー タの回転速度の変動とトルクの変動を示す。両グラフより、
負荷が加わった瞬間にモータの回転速度が急激に減少して いるのが分かる。これに伴ってトルクが増大し、回転速度 の復帰を促している。このように、回転速度が下がった時 に元に復帰できるようにトルクが作用するためには、前記 図6のトルク特性が右下がりとなっている領域でモータを 作動させなければならない。また図15では、スライドラム が下降する際にスライドラムの重量の影響で、モータ回転 速度が1800【rpm】を越え、トルクが負の値となる区間があ ることが見てとれる。
600eo
4sooe
㎜ 鋤?畢己ミ占 O︐
層15000
一ト レター回転数
tgeeV 2100 23
クランク軸回転角度〔d●d
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綴留回 oo 16
1500 2seo
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ここでは解析事例として、シミュレーションによってブ レス機の機構を動力学的に解析した結果を示す。
6.1 プレス加工時の速度およびトルクの変動 本節では、加負荷時のモータの速度変動および発生トル クについてシミュレーションした結果を示す。この解析で はブレスカは加圧能力と同じ490【kN】とし、加工ストローク は下死点上3【mm]としている。
まず、Working Modelでシミュレーション中のコンビュー
一100000
1Soo
亜
10SO 2160 2340
クランク鮪回転角度[d.t1
2520
図15 プレス加工時の回転速度と出力トルクの変動
6.2 フライホイールの慣性効果の解析
回転速度が変動する場合でも、前述したようにモータは
図6で示した安定領域で作動するよう設計しなければなら ない。したがって、このモータの場合には回転数が1620
[rpml以下まで下がってはならない。つまり、モータの速度 変動率は10%以下に抑える必要がある。速度変動を抑えるた めにはフライホイールはある程度大きくなければならない が、あまり大きくても起動停滞などの問題が起こるので、
ここではフライホイールの慣性効果について解析した結果
を示す。
図16はフライホイールの慣性モーメントを変化させたと きのシミュレーション結果を纏めたものであり、黒の菱形 の点が起動時間、白丸の点がモータの速度変動率を示して いる。シミュレーションは加負荷状態で行い、負荷は6.1節 と同じである。図中のD.Pの位置は、実機に取り付けてい るフライホイールの慣性モーメントの値である。
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1.OE+e7 1,5E 07 2.OE+07 2.5E+07 3.eE+07 3,5E+07 フライホイールの慣性モーメント[kgrnrn^2⊃
一・◆一疇起動時闇 O騨減少摩
IS le 14 12 巴 le 8魚 6 4 2 04,0E+07
極めて良く一致することが明らかとなった。また、従来 の設計法では考慮することができなかった瞬時の詳細な 動きまで精度良く解析できることが分かった。
機構解析は手計算でもある程度は解析できることから、
コンピュータを利用した機構解析システムの設計現場へ の導入は構造解析や熱流体解析に比べて遅れている。し かし、パソコンの高性能化と機構解析技術の進歩、ソフ トウエアの汎用化などにより、今後は利用分野が拡大し てゆくものと思われる。
最後に、本研究において技術的ご助言を賜わり、実験 にもご協力いただいた関西チューブ株式会社技術部中町 栄二殿に感謝申し上げる。
参考文献
(1)現代用語の基礎知識、(1999)、自由国民社、pp.1440
(2)遠山茂樹、動力学解析・市販ソフトの選び方、日経メカニ カル、(19915。13)、日経BP社、 pp.42−50
(3)遠山茂樹、CAEの役割と効果、機械の研究、49・2、(1997)、
養賢堂、pp.45−52
(4)Working Mode}、住商エレクトロニクス(株)
(5)Excel、マイクロソフト(株)
(6)塑性加工研究会プレス便覧編集委員会編、プレス便覧、丸 善、 pp.185
図16 フライホイールの慣性モーメントの影響
図16より、起動時間はフライホイールの慣性モーメント に比例して増大する関係となっている。一方、モータの速 度変動率はフライホ.イールの慣性モーメントに対し反比例 の関係にあることが見てとれる。したがって、慣性モーメ ントを必要以上に大きくしても、モータの速度変動.率には 影響が小さく、起動時間の延長を招いてしまう傾向となる ことがわかる。また、モータの特性上の安定限界である速 度変動率10%付近では、曲線の傾きが大きく、フライホイ ールの慣性モーメントのわずかな変化が速度変動に大きく 影響を与える領域であることが分かる。したがって、従来 の設計では、図中のD.Pのように速度変動率の曲線の傾き が比較的緩やかなところに設計点を持ってきているものと 考えられる。しかし、D.Pの位置は速度変動率10%の点ま でにかなりの余裕が有ることが見てとれ、CAEヅールを利 用することにより解析の精度が上がれば、限界設計という 考え方に立ち小型化が可能となるように思われる。
7.結言
本研究では、近年進歩の著しい汎用機構解析ソフトを 使用しCADおよびExcelとリンクさせることによって、
機構の動力学的解析のための設計支援システムの構築を 行った。そして、この設計環境を利用してアルミチュー ブ製造用のナックル型ブレス機の解析モデルを作成し、
機構の運動をシミュレーションしたところ実機の運動と