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市場細分化論についての一考察

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(1)

市場細分化論についての一考察

その他のタイトル On the Market Segmentation Theory

著者 保田 芳昭

雑誌名 關西大學商學論集

巻 11

号 3

ページ 257‑284

発行年 1966‑08‑31

URL http://hdl.handle.net/10112/00021519

(2)

257 

市 湯

細 分

化 論

に つ

い て

の 一

考 察

︵ 保

田 ︶

一 ︑ 序

一 ︑

二 ︑ 市 場 細 分 化 論 の 内 容 三︑市場細分化論の若干の論点

A 市場に対する認識

B 細 分 化 の 基 準

C 戦略としての性格と消費者中心志向 四︑市場細分化論に対する批判

現代マーケティング論の重要な特徴は︑

( 1 )  

いわゆる消費者中心志向である︒それは︑単に消費者をマーケティング の終点において認識するのみならず︑生産や投資の始点にまでさかのぽって認識するものであり︑

始まり消費者に終るとの認識に立ち︑あらゆる活動の計画と統合を強調するものである︒しかも消費者は︑マーケ

︑ ︑ ︑ ︑ ︑ ︑

ティング努力の︑従ってまた企業の諸活動の焦点として位置づけられているのである︒そのばあい︑消費者の満足 ということが極めて重要なものと意識され︑ある者は消費者満足をあたかも企業の目的のごとく考え︑ある者は消

市場細分化論についての一考察

豆 芳

いわば消費者に 昭

(3)

258 

費者満足を通じて企業目的は達成されると考えているがごとくである︒

衆国での現代マーケティングは︑ いわゆる﹁プロダクト・アウト﹂︵つくったものを売る︶という概念よりも︑﹁マー

( 2 )  

ケット・イン﹂︵売れるものをつくる︶という概念に立脚している﹂というように︑市場需要に適合した製品をつく

るべき製品計画が最も重要な核心的地位をマーケティングの中で占めている︒かかる観念をもつ製品計画と最も密

接な関連をもって登場してきたマーケティング戦略こそ︑ここで検討する市場細分化

( m

g k

e t

s e g m

e n t a

t i o n

)

に 外

ならない︒いわば市場細分化戦略は︑現代マーケティングのもつ消費者中心志向の直系的流れをくむものであると

かかるマーケティング戦略としての市場細分化は︑すぐれて戦後のマネジリアル・マーケティングのなかで理論

的に展開されてきた︒しかし︑実践としては必ずしも戦後に始まるとはいえないであろう︒たとえば︑すでに二〇

年代におけるフォードの王座に挑戦した

G

の戦略にその発端とみとめることもできようし︑また第二次大戦の直 M

( 3 )  

前にもかなり広く認められるとする見解もある︒たとえそれらが市場細分化戦略を意識していなかったとしても︑

その萌芽形態を無視するものではない︒けれども︑理論が展開されるようになって実践がより一般化し︑支配化す

る事実も否定しえぬであろう︒かかる理論的研究の出現は︑一九五六年︑それはあたかもマネジリアル・マーケテ

ィングの開花する時期に照応するのであって︑ウェンデル・スミス

( W

g d

e l

R . l   S m

i t h )

" P

r o d u

c t D i

f f e r

e n t i

a t i o

n  

( 4 )  

なる論文に端を発していると見られている︒それは︑

g

d ン

l f a r

k e t

S e

g m

g t

a t

1 o

n   a

A l s  

t e r n

a t i v

e   M a

r k e t

i n g  

S t r a

t e g i

e s . "

 

そのごの細分化にかんする諸論稿のなかでのスミスの地位からも裏付けできよう︒

わが国においても︑本格的にマーケティングが導入されて以来ほぼ十年を経るが︑ようやく最近の深刻な過剰生

産恐慌を背景として意識的にかつ脚光をあびて登場して来たといってよいであろう︒かかる意味からも︑現在︑市 い

え よ

う ︒

市湯細分化論についての

1

考 察

︵ 保 田 ︶

ハンセン (H.L•Hgsen) が、「アメリカ合

(4)

259 

市 湯

細 分

化 論

に つ

い て

の 一

考 察

︵ 保

田 ︶

︑ 市 場 細 分 化 論 の 内 容

( 5 )  

場細分化論を理論的に検討することは極めて重要な事柄といってよい︒われわれは︑別稿において︑戦後アメリカ

における年令集団別細分市場をマーケティング戦略との関連で取扱ったが︑本稿では改めてより一般的にアメリカ

における市場細分化論を明らかにし且つ批判しようとするものである︒

︳ 七

注山拙稿﹁現代マーケティング論と消費者中心志向﹂︑﹁関西大学商学論集﹂第九巻第五号︒

H .

  L•Hansen,

M a r k e t i n g ,   T e s t ,   C a s e s ,   a n d   R e a d i n g s .  

1 9 5 6 . 邦 訳 ﹃ マ ー ケ テ ィ ン グ ﹄ 日 本 版 へ の 序 言 ︑ 五 頁 ︒

A l a n   A .   R o b e r t s ,   "

A p p l y i n g h e   t   s t r a t e g y   o f   m a r k e t   s e g m e n t a t n " i o i n ,     S t e u a r t   H .   B r i t t   a n d   H a r p e r .   W   B o y d .  

( e d s . ) ,   M a r k e t i n g   M a n a g e m e n t   a n d   A d m i n i s t r a t i v e   A c t i o n ,  

1 9 6 3 .  

p .  

8 8 .  

W i l l

i 目

H . R e y n o l d s , ^ ' M o r e   s e n s e a   b o u t   m a r k e t   s e g m e n t a t i o n "

H ,   a r v a r d   B u s i n g s   R e v i e w ,  

S e p .

‑ 0 c t .  

9 1 6 5 .  

p .  

1 0 7 .  

﹃近代経営﹄誌一九六六年三月号︑村田昭治氏の発言︑三二頁︒小嶋外弘編﹃マーケット・セグメンテーション﹄一九六六

年 五

月 ︑

一 頁

固拙稿「戦後アメリカにおける年令集団別細分市場とマーケティング戦略」、「関西大学商学論集」第十巻第一―-•四•五合併

号 ︒

われわれは︑市場細分化およびその理論を批判するに先立って︑まず戦後に展関された市場細分化論を明らかに

しなければならないであろう︒そのために︑本節ではとくに市場細分化とは何かを中心に明らかにし︑次節では︑

よりそれを明確にするために若干の論点が検討せられるであろう︒

さてわれわれは︑市場細分化の内容を把握するために若干の見解を紹介しよう︒

まず最初に︑理論における先駆的研究であり︑

よ み

う ︒

そのごの研究に大きな影酵を与えた

w . R

・スミスの見解をみて

(5)

260 

特徴づけられている︒

w . R

・スミスは︑市場細分化を︱つのマーケティング戦略として製品差別化

( p r o d u c t d i f f e r e n t i a t i o n )  

連で把握している︒この関連的取扱いは︑

てスミスは︑供給および需要側における多様性と異質性を認識し︑

かかる不完全競争という現在の諸条件の下で︑﹁マーケティング・マネジャーは一般に︑ある特定時点での企業の要

( 2 )  

求に最も適合した全体にわたるマーケティング戦略又は諸戦略のコンビネーションを選択する責任がある﹂のであ

って︑かかるマーケティング戦略の決定は︑合理的な戦略の選定がなされるべきとするなら︑

最小化する統合的アプローチが優位をとらねばならず︑従ってそれは︑生産とマーケティングの全体にわたるマネ

( 3 )  

ジメント決定とみるべきことを主張する︒

え あ

る ︶

スミスは︑かかる戦略として市場細分化と製品差別化をみる︒それらは﹁密接に関連した︵おそらく不可分でさ

( 4 )  

コンセプト﹂であるが︑

ようとするものであり︑ マーケティング操作の計画における一層の的確性と理論における明確性をきする

ために分けて比較的に取扱われる︒スミスによれば︑製品差別化は︑市場需要を売手の好ましい供給条件に調整し

( 5 )  

いわばそれは﹁需要を供給の意志に屈服させることに関係する﹂ものと考えられる︒それ

は︑広汎な一般化した市場を対象とするのであって︑そのいみで市場の水平的なシエアをマーケターに与えるとい

える︒そのばあい︑差別化は︑自己の製品と競争相手の製品との差異を広告し促進することによって︑

要上に一定度の支配を確保することであり︑ それは基本的には︑企業の市場地位を確保し︑また価格競争からのが

ヽ ヽ ヽ

( 6 )

れるための売手の欲望の産物であるとする︒しかもそれは︑広告と促進の重厚な利用の故に﹁促進的戦略﹂として

これに対し市場細分化は︑市場の需要側での展開に基づいており︑製品およびマーケティング努力の消費者又は 市場細分化論についての一考察︵保田︶

そのごの研究に大きく影響を与えている点でもある︒さてその前提とし

( 1 )  

これは不完全競争の下での問題であると考える︒

トータル・コストを

一製品の需 との関

(6)

261 

市 湯 細 分 化 論 に つ い て の 一 考 察 ︵ 保 田 ︶ 使用者の必要とするものへの合理的でより的確な調整を示すものであり︑ 分のなかに深く市場地位を築くものとされる︒市場細分化は︑従って異質的な市場を異なる製品選好に応じて多数 の小さい同質的市場とみるのであり︑それは消費者の変化する欲求をより的確に満足させるための欲望に起因する と考えられている︒広告や促進もかなり使用されるとはいえ︑

︳ 九

それは有効に限定され洞察された市場細

それは︑かれらの必要を正確に適合するようその有

( 7 )  

用性を市場細分に報知するためであるという︒かくして市場細分化は︑本質的には﹁マーチャンダイジング戦略﹂

と考えられている︒かかる二つの戦略は︑同時に用いられるかもしれないがより一般的には変化する市場条件に応

( 8 )  

じて順次適用される性格をもち︑細分化は次にくるであろう差別化への﹁束の間の或いは短期の現象﹂と考えられ

る︒しかし﹁マーケティング活動計画の成功は︑マーケティング戦略の構成因子としての製品差別化と市場細分化

( 9 )  

の両者の適切な利用を要求する﹂とスミスはいう︒

以 上

の よ

う に

ス ポ

ー ツ

・ カ

ー ︑

スミスは︑細分化を市場細分における消費者又は使用者の満足への欲望に起因するものとし︑そ

れが本質的にマーチャンダイジング戦略であること︑およびその短期的性格を明らかにした︒しかも差別化との関

連では︑細分化の過渡的性格および相互補完的性格を示したものといえよう︒かかるスミスの見解は︑市場細分化

論の最も正統的見地を示すものとして重要視せねばならないが外に若干の見解をみることも有益であろう︒

モーザー

( F 9 d i n a n F .   d

M a u s g )

によると︑﹁市場細分化戦略は︑市場を︑多数の個々の小さな市場又は各々がい

くらか異なる欲望をもち︑異なる訴求に反応する種々様々な消費者集団から編成されているものと見なす︒その目

的は︑特定の細分に適合する特定の製品︑即ち郊外家族のためにステーション・ワゴン︑若い独身者たちのために

( 1 0 )  

セールスマンのためにツー・ドア・セダン等々を提供することである﹂とされる︒この思考は先

のスミスと基本的に変らないものである︒ただモーザーのばあい︑差別化と細分化は密接にからみ合っていること

(7)

262 

これらの概念に言及することは厄介なことであるとして︑ミクロマーチャンダイジングおよびマクロマーチ

ャンダイジングという概念を導入する︒即ち︑ミクロマーチャンダイジングは︑ ーつの細分に集中すること又は市

場の一片を抽出することによって市場を開拓すを戦略をさし︑これに対しマクロマーチャンダイジングは︑実際に

すべての人々を引きつけるであろう 1 それは望ましいことだが・~製品のなかに普逼的な訴求を築こうとするこ

( 1 1 )  

とであるとされる︒モーザーは︑かかる概念を設定したのち︑戦後におけるマクロからミクロヘの戦略転換の事例

( 1 2 )  

をあげ︑現代におけるミクロの有望性を主張する︒ ﹁マクロアプローチは第一次的な消費者の必要がまだ豊富にあ

( 1 3 )  

るばあいに妥当した︒現代のミクロアプローチはよりソフィスティケイトされ且つ有望である﹂と︒

次にマッカーシー

( E . J e r o m e

M c  

C a r t h y )

の見解をみよう︒かれによれば︑独占的市場情況を達成するための鍵

は︑顧客のかなりのグループが競争製品と著しく異なると感ずるトータル・プロダクトをもつことであり︑そのた

( 1 4 )  

めの二つの基本的方法として︑市場細分化と製品差別化があるとされる︒

市場細分化は︑あらかじめ満足していない標的市場を隔離して︑市場格子のその部分に対しユニークな製品を企

画しようと努めるものであって︑ここでは無類に異なる物理的製品及び︵又は︶サービスについて強調される︒こ

れに対し︑特定の格子区画にいる顧客に対しすでに直接の競争者がいるばあいには︑製品の差異を強調することが

必要となるのであり︑ か

ら ︑

このアプローチを製品差別化と呼ぶ︒製品差別化は︑ 市 湯 細 分 化 論 に つ い て の 一 考 察 ︵ 保 田 ︶

たとえ当該会社の製品が競争製品と全

<類似していても︑識別点を強調する促進努力によって需要曲線を右ヘシフトしようとする︒そのばあい︑心理的

差異は重要な役割を果すが︑またときに物理的変化が︑たとえばラジオに新しい特徴を加え︑練歯磨に新しい香料

を加えうるし︑また新しい成分

( n e w i n g r e d i e n t s )

が組み入れられることがある︒さような物理的変化は市場細分

化を意図するのではなくて︑むしろより大なる市場での地位の改善を企てるものであるとみなされている︒

四 〇

マ ッ

(8)

263 

市場細分化論についての一考察︵保田︶

ま ︑

9 (  

ーシー

ここに特別のサービスとか保証とかまた何らかの余計なものを含むトータル・プロダクト・コンセプト が適用するという︒かれによれば︑市場細分化アプローチは︑

この製品変化が潜在市場を狭くするよう作用するよ うになると適用されるようになってくる︒このアプローチは︑特定のトータル・プロダクトを一っ又はただニ・三 の市場格子区画にある標的顧客を満足さすために展開される︒ここでよりドラスティックな変化がー│贔新製品の導 入とか旧製品の修正とかによってー│より小さい標的市場に訴えるために︑より一層非弾力的需要曲線を達成する ためにトータル・プロダクトのなかで行われることになる︒このことは︑製品多様化と製品のラインの拡大をもた らすであろう︒最後にかれは︑自動車産業にみられるように︑かなりの市場細分化も激烈な競争によって類似性が 増大する結果︑細分化と差別化との併用が強制される︑と述べている︒ただここに一っ追加しておくこと

I i i

︑ マ ッ

カ ー

シ ー

が ︑

いわゆる計画的廃物化

( p l a

n n e d

o b s o

l e s e

n c e )

に言及して︑製品がたとえ表面的な修正であっても

I

たとえば名声のために 1 消費者が真にそれを好み満足するところであれば︑ これもまた︱つの市場細分化政策と

以上のマッカーシーの見解も基本的にスミスのそれと差はないとみてよいだろう︒細分化は︑独占的市場を得る

︱つの手段としてみられ︑標的顧客を満足させるために展開される性質のものであること︑だが追加の指摘にみる

︑ ︑

︑ ︑

︑ ように細分化はますます顧客の主観に依存するものであることが明らかになった︑といえよう︒

と し

︑ スタントン

( W i l

l i a m

J .   S t

a n t o

n ) は︑まず﹁製品差別化と市場細分化は︑二つの関連せる製品戦略であって︑不

(16) 

完全競争又は独占的競争によって特徴づけられた市場で非価格競争に従うことをねがう企業によって用いられる﹂

これらの戦略は︑通常かなりの広告および促進努力を必要とする結果︑促進戦略と製品計画戦略の双方とみ

なされる︑という︒スタントンの指摘によれば︑市場細分化は﹁そこでは買手の満足に応じて製品をつくることが みなしている点である︒

(9)

264 

全く普通となっている産業製品の分野において︑何年ものあいだ用いられてきた﹂けれども︑今や﹁その戦略は消

( 1 7 )  

費者市場においても大いに用いられつつある﹂とされる︒かかる﹁市場細分化戦略を用いるに当って売手は︑かれ

の全異質的市場が多くの小さい同質的単位から形成されていることを認識する︒ついでかれは︑これらの単位の一

( 1 8 )  

つ又はそれ以上に対し特定の製品を企画し開発しようとする︒﹂

以 上

あろう︒われわれは︑ これはスミスもいうように︑限定された市場に深

く侵透しようとするものであるが︑ある企業が市場細分化を採用すると︑やがて競争によって差別化へ切りかえを

強制されるに至る︒かくしてかれによれば︑﹁かくて何らかの与えられた市場の細分化は︑一っの過渡的現象であり︑

( 1 9 )  

競争状態はかれの市場を細分化する新しい諸方法を不断に探し求めることを強制する﹂ことになる︒

スミスをはじめとする論者の見解をみてきた︒そこに市場細分化が何をいみするか大体明らかになったで

ここでふれてないところの細分化の基準の問題も含めて︑次に市場細分化論をより明確にす

注 山

w g d e l l R .   S m i t h

" P ,   r o d u c t   d i f f i g e n t i a t i o n   a n d   m a r k e t   s e g m e n t a t i o n  

a s  

a l t e r n a t i v e   m a r k e t i n g   s t r a t e g i g "

" J

0 日

n a l o f  

M 且

g i n g , J u l y ,  

1 9 5 6 .  

i n   E .

  J•Kelley

a n d  

W .  

L a z e r ,  

( e d s . ) ,   M a n a g e r i a l   M a r k e t i n g

"

p e r s p e c t i v g g d   v i e w p o i n t s ,  

1 9 5 8 .  

p .  

282 

f f .  

i b i d . ,   p .  

2 8 3 .  

③囚固

i b i d . , p .  

2 8 4 .  

矧 m

i b i d . , p .  

2 8 6 .  

i b i d . , p .  

2 8 5 .  

i b i d . , p .  

2 8 7 .  

皿 皿

F e r d i n a n d F .   M a g 3 M o d e r n   M a r

k e t i n g   M a n a g e m g t ,

1  

9 6 1 .   p .  

8 4 .  

四モーザーは︑マクロからミクロマーチャンダイジングヘの転換のよき事例として︑紙巻タバコをあげる︒今日︑紙巻タバ る諸点に光をあてようと思う︒

市 場

細 分

化 論

に つ

い て

の 一

考 察

︵ 保

田 ︶

(10)

265 

う ︒

市 湯

細 分

化 論

に つ

い て

の 一

考 察

︵ 保

田 ︶

場 細 分 化 論 の 若 干 の 論 点

四 一 ︱

コほ百十七の異ったプランド又はクイプーフィルター付や薄荷入の有無︑サイズの大・小・ケースの硬軟︑および種々の

組合せ︑ーで提供されている︒しかもミクロの導入は︑プランドの地位を変えるのに役立ったとみられる︒一九五九年の 販 売 高 に ラ ン ク さ れ た 十 大 プ ラ ン ド に は ︑ 一 九 四 九 年 の 四 つ の リ ー ダ 1

だ け

が の

こ っ

た に

す ぎ

な い

i b i d . ,   p .  

8 5 .  

E .

J .   M c C a r t h y , a s   B i c   M a r k e t i n g :

A   

m a n a g e r i a l   a p p r o a c h ,   r e v .   e d . ,  

1 9 6 4 ,  

p .  

330 

f f .  

i b i d . ,   p .  

3 3 6 .  

W i l l

i 目

J .

S t a n t o n , F   u n d a m e n t a l s   o f   M a r k e t i n g ,  

1 9 6 4 .  

p .  

1 9 7 .  

i b i d . , p .  

1 9 8 .  

U B l i b i d . ,   p p .  

1 9 7    

1 9 8 .  

i b i d . ,   p .  

1 9 8 .  

先にわれわれは︑主として市場細分化とは如何なるものかについて考察してきたが︑更に市場細分化論の若干の

論点をとりあげ︑検討を加えることによって︑その理解をすすめたいと思う︒このばあい︑市場細分化のプロセス

に従って︑山市場に対する認識︑③細分化の基準︑③戦略としての性格と消費者中心志向の三点をとりあげてみよ

市場に対する認識

すでにみてきたように市場細分化論の出発点は︑市場が全体として異質的であり︑ これは多数の小さい同質的市

場から構成されているとの認識に立っている点である︒この認識は︑市場細分化の重要な前提になっている︒

(11)

266 

B

細 分 化 の

' 基 準

ないことを指摘するにとどめておこう︒ の基礎をもつとみてよいであろう︒ここでは︑ かかる認識論は︑先の諸論者にみられるように︑近代経済理論の﹁不完全競争論﹂および﹁独占的競争論﹂にそ

(1)  スミスの見解をみてみよう︒スミスは︑現代のビジネス・シーンの

解明にとって完全競争および純粋独占の理論は不適切であるとして︑不完全競争の理論に依拠する︒需要と供給の

両側での同質性を仮定せず︑多様性と異質性を強調する︒供給側に多様性が存在する理由として︑山生産の設備・

方法・過程の相違︑③好立地にある製造業者による特別優れた資源利用︑③製品のデザイン・開発・改善における

競争者間の進歩の相迩︑④品質管理技術による製品差異排除の不能︑固価格感度・色彩・材料・包装の大いさ等々

にかんする市場需要の性質についての評価の相違︑等があげられ︑他方︑消費者需要における多様性又は変化は︑

習慣の相違︑多様性への欲望︑独占欲︑また使用者の必要における基礎的差異とか買物における失策・不合理性に

こうした多様性の理由は︑独占段階以前からずっと存在していたのであって何らこと新しいものではないし︑か

かる理論からは独占の形成も又独占の支配も何ら説明しうるものでもない︒従って︑何故に市場細分化をおこなわ

ざるをえなくなったか︑ は市場における多様性の認識からは説明しえない︑といわねばならない︒かくして︑市場

における多様性存在の認識を前提とする市場細分化論は︑超歴史的認識に立っていると考えられる︒ここでは︑た

( 2 )  

だ﹁すべての市場は︑多くの異なった市場細分から成り立っている﹂との認識が︑とくに戦後の市場細分化論のな

かで明確になったこと︑

そ の

ば あ

い ︑

基因すると考えられている︒ 市場細分化論についての一考察︵保田︶

これまでの独占間競争形態の行詰り︑市場の狭陰化は︑表面に表現されてい

四 四

(12)

267 

市場細分化論についての一考察︵保田︶

四 五

第二の点は︑市場を細分化する上での基準の問題に関係する︒異質的市場を多数の小さい同質的市場に分割する

にあたって︑如何なる甚準が妥当すると考えられているかである︒この問題は決して単純ではない︒極端にいえば︑

あらゆる個人は一っの市場細分を構成することになり︑全ての製品はカスタム・メイドであるべきである︒しかし

それは現実的でない︒

映する購買者の集団で且つ︑企業の利潤を達成しうる規模のものでなければならない︒もとよりロバーツ(Alan

A .  

( 3 )  

R o

b e

r t

s )

のいうように︑真に耕作するに値する細分が存在するかどうか何によって決定するか︑という問題がその

前にあるはずであるが︑

さ て

基 準

に は

いわゆる伝統的基準といわれるものと心理的・社会心理的甚準があり︑論者によって一方のみを

強調する場合と両者を並列する場合がある︒しかし近年︑心理的・社会心理的基準を重視する傾向に注目しておか

ねばならない︒それは基準問題における新しい傾向といえよう︒

取 り

上 げ

マーケティングにとって市場細分とは︑市場耕作にとって基礎となるべき十分な同質性を反

ここではふれないことにしよう︒

さて伝統的基準とは︑性︑年令︑所得︑教育︑職業︑地域︑人種等々のごとき基準である︒これらは︑これまで

( 4 )  

の市場分析の手法であったもので︑測定可能な基準といえよう︒われわれはすでに別稿で︑年令集団別細分市場を

そのなかで﹁消費者市場は全体として複雑な異質的市場であり︑これを何らかの基準で小さな多数の同

質的市場に分割した各々を細分市場というけれども︑もともと個別的消費者は多様な諸要因をもつ複雑な環境のも

とに生活しているのであって︑全体なるが故に複維なる存在であるのではない︒実際上は︑ある基準で同質的とみ

られた細分市場は︑他の基準でみるとき異質的であるといえよう︒だから特定の細分市場は主要基準と副次的諸基

準の混成としての細分ミックスに外ならない︑といえよう﹂﹁まさしくこの細分︑ミックスが現代マーケティングの現

実的対象を形成するのだ﹂との見解を明らかにした︒このことは︑ いわゆる伝統的基準︵心理的・社会心理的基準

(13)

268 

効性をもつとはいいえないのである︒ ーは︑心理的基準を含んでいるとはいえ︑

( 1 1 )  

の見解をみてみよう︒かれは にも妥当するが︶の単独使用の限界を明示するものであったのである︒その限りにおいて︑たとえば清水晶教授の

( 5 )  

顧客の「細分化の基準」—ー'所得、地域、年令、性別、職業、所属する団体、センス、性格、購買動機、購買態度

︑ ︑

︑ ︑

その取り上げ方は羅列主義であり︑市場細分化戦略にとって十分の有

オクセンフェルト

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のいうように︑﹁顧客は︑問題となる製品およびそれが販売される環境の

( 6 )  

多くの特徴に従って分類されなければならない﹂し︑モーザーのいうように消費者は自ら多様な役割を演ずるから︑

( 7 )  

この問題は一層の困難をともなう︒スミスのように︑﹁異なる製品選好に応じて﹂といっても︑その表現自体正し

いとしても具体性をもっていない︒次に若干の見解をあげてみよう︒アレキサンダー︑バーグ

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は最も共通のものとして︑国細孟理︑⑯用途︑伺満足︑⑱グループ︑伺購買の方法・条件︑ぃ

( 9 )  

所得の六基準をあげている︒またスチュワート

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Steuwart) は、山地理的細分化ー~北部、南部、西部の 市場、都市と田舎、気候の差異による分割、②文化的細分化ーー人種、言語又は文化的風習、③社会経済的差異—

ー所得︑職業︑教育︑家族の大いさ︑④個人的差異 1 性︑年令︑興味︑種々の心理的差異︵内向的か外向的か︶︑

をあげているが︑これの利用方法にはふれていない︒更により経営者的視点からみるオクセンフェルトは︑特定製

品のために市場を細分する最も重要な基準として︑山特定製品に対する必要ないし欲望の強度︑図それが到達する

経路︵広告媒体・販売経路等々︶ヽ③かれらが感応する訴求︑④特定の販売訴求︵価格考慮によって影響される能力

( 1 0 )  

信用の有効性販売員の話術等々︶︑固物理的地域の五つをあげており︑今日多くの注目をあつめている︒

ここで新しい傾向を単的に示すものとしてヤンケロビッチ

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細分化分析を提案するが︑ そのばあいいわゆる伝統的基準を用いないのである︒というのは︑かれによれば︑細分 市湯細分化論についての一考察︵保田︶

四 六

(14)

269 

市場細分化論についての一考察︵保田︶

四 七

化分析には次の三点が前提となっているからである︒即ち︑山現代の経済においては︑個々のブランドは全体市場

に対してではなく︑ある市場のただ若干の細分に対しよく売られている︒②健全なマーケティング目標は︑要求と

感受性において︑ある会社のブランドにとって最も多い顧客を生む細分が︑競争ブランドに最も多い顧客を生む細

分とどう違っているかを知ることに依存する︒③市場細分化の伝統的な人口統計学的方法は通常この知識を提供し

ない︒年令︑性︑地理および所得水準による市場細分の分析は︑経営者が必要とするようなマーケティング戦略へ

コンピューター︑軽トラックなど十種類の製品をとりあげ︑人口統計学的基

準によらない七つの基準による細分化の例を示している︒その基準は例示的とされているが︑ それは︑価値

( v a l

u e ) ︑

変化の感受性

( s g c e p t i b i l i t y t o   c h a n g e ) ︑目的

( p u r p o s e

) ︑美的観念

( a e s t h e t i c c o n c e p t s ) ︑態度

( a t t i t u d e s ) ︑個々の

必要

( i n d i d i v u a l i z e d n e e d s )

および自信

( s e l f . , c o n f i d e n c e )

で あ

る ︒

( 1 2 )  

かれによれば︑人口統計学的基準は常に最上の方法と考えられてきたが︑ それは通常真実でないとして︑市場は

購買者の態度︑動機︑価値︑使用の型︑美的選好又は感受性の程度における大きな差異に対して精密に調査される

べきことを主張する︒この点にヤンケロビッチの﹁新しさ﹂を見い出しうるのである︒なぜなら︑かれ自身がいうよ

うに︑﹁とりわけわれわれは︑決して︑市場をみる最上の方法をもっていると前もって仮定してはならない︒これは

︑ ︑

細分化分析の根本的掟である︒市場を細分化するあらゆる方法が考慮されねばならない︒そして次にあらゆる方法

(13) 

のなかから行為にとって最も重要な意味をもつ有用な方法を選択せねばならない﹂以上︑決して初めから人口統計

学的基準をディスカードすべきではないであろう︒更にいえば︑非人口統計学的基準といえども単独使用に限界が

あるのであって︑やはりわれわれのいう細分ミックスの概念を採用すべきであるこというまでもない︒ かかる前提に立ち︑時計︑自動車︑ の指示を与えそうもない︑との前提である︒

(15)

270 

以上︑基準の問題について長々と考察してきたが︑

つまりプロダクト・プランニングの段階に それは前節でふれなかったためだけではない︒市場細分化論

におけるその重要性のためである︒なぜなら﹁ひとたびマーケティング重役が︑かれの市場を細分する最も実用的

にして有用な方法を発見すると︑それはほとんどすべての評価に対してーつの新しい標準となる︒かれは競争の戦

力と脆弱性を評価するため︑製品ラインを計画するため︑広告および販売戦略を決定するため︑のちにそれに対す

( 1 4 )  

る遂行が測定されるところの正確なマーケティング諸目標を設定するためにそれを使用するであろう﹂からである︒

要 す

る に

ここでは︑市場を細分化する基準として心理的・社会心理的要素が導入される傾向をみてきた︒しかし

ながら︑その基準の性格の如何を問わず単独の基準では不適切であり︑細分ミックスがそれにとって代らねばなら

ないであろう︒もとより基準それ自体を抽出してあれこれ︑ヽヽックスしても無意味であろう︒企業の諸条件および環

境諸条件との関係のなかで市場を明確化せねばならない︒

戦略としての性格と消費者中心志向

( 1 5 )

. 

周知のように︑オクセンフェルトは︑マーケティング戦略を︑田標的市場の明確化︑図マーケティング・ミック

スの構成︑という二段階の規定を設定した︒われわれがこれまで考察してきた範囲は︑主に第一段階に属すること

であり︑次にマーケティング・ミックスの展開が行われるべきことになるわけである︒

と こ

ろ で

いうまでもなく市場細分化とは︑単に市場を多数の小さい同質的市場に分割することに終るのでも︑

また単にセリングのために市場領域を分割する販売段階での戦術でも戦略でもない︒販売段階で市場を分割するこ

とは︑何ら新しいことでもない︒それは︑出来上った製品を資本にとっていかに合理的に能率的に売るかという課

題に関係する︒問題は︑販売段階に始まるのではなくて前生産の段階︑ G  市場細分化論についての一考察︵保田︶

四 八

(16)

271 

市場細分化論についての一考察︵保田︶

あ る

点 に

四 九

ここにいう市場細分化の特質がある︒そばのあい︑細分化は︑表面的差異を強調する製品差別化と異な

る実質的な製品変化に関連する︒つまり︑製品のブランド・包装・色彩・外観といった非実質的・表面的差異の強

調でも︑またマッカーシーのいう新成分の混入といったなお非本質的な製品変化でも︑いわんや特定のサービス・

保証の附加といったいわばエキストラ的なものでもない︒ 市場細分化は、かようにこれまでの製品とは実質的に異なる製品ー~新製品とか旧製品の実質的変更ーー'を消費

者又は使用者の必要と欲求を満足さすべく開発し︑もって特定市場を支配しようとする性格をもっている︒そのい

みで市場細分化は︑市場細分化戦略である︒単に市場を分割するだけでも︑また単なるプロダクト・︒フランニング ︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑

( 1 6 )

でもないのである︒ロバーツがいうように︑﹁市場細分化とは︑市場を分割して征服する戦略である︒﹂︵傍点は筆

者︶このいみで市場細分化戦略は︑単に製品戦略

( p r o d u c t s t r a t e g y )

としてよりも︱つのマーケティング戦略とし

て把握されるべきであろう︒もとよりこのマーケティング戦略は︑製品差別化戦略のように促進を中核とするので

は な

く ︑

いいかえるならばマーケティング・ミックスの構成の中に促進を中核とするのではなくて︑製品を中核と

するミックスの展開ということである︒ところで︑消費者の欲求とは単に適合せる製品だけではないともいえよう︒

つまり価格に対す欲求もあって︑ それによって細分化することもありうると考えられるかもしれない︒バスカーク

( R i c h a r d

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は︑価格差異︵微細な製品差異にもとづく︶による市場の細分化によって総収入を極大化す

(17) 

る例を示している︒しかしこれは︑自動車業界などに見られるものであるが︑われわれが理解してきた正統の見解

とは異なる︒たとえば︑自動車のばあい同じ基本モデルを少々修正して種々の価格で売るのであるから︑

品差別化を価格政策で補強したものとわれわれは考えることができよう︒

ところでわれわれは︑市場細分化は︱つのマーケティング戦略であり︑ それは製

マーケティング・ミックスの構成と展開

(17)

272 

かる競争によるものであった︒新たな市場細分をみい出し︑それに照応する製品を開発し︑その市場を支配する市

場細分化戦略も︑ライフ・サイクルの成長段階︑ときには導入の割合早い時期に競争企業の介入を受けるに違いな

ぃ︒後節でふれるように︑独占的超過利潤を追求してやまぬ独占資本の論理がここにも作用する︒先発企業には︑

保守的な特許の問題のごとく介入排除政策︑他企業にとっては研究開発およびあらゆる産業スパイなどによる介入

政策が問題となろう︒あるいはまた︑公然・非公然のカルテルと細分化戦略が問題となろう︒それらはともかく競

争が介入してくると︑そこには製品差別化戦略が主役となってくる︒まさにそこに短期的・過渡的戦略としての性

格があるといえよう︒ライフ・サイクルの成熟又は成長の後期には︑企業の成長を維持するために新たな細分化戦

一製品のみ生産するのでないし︑

従ってまた製品ミックスの問題が起るであろう︒ ここに製品多様化・製品ラインの拡大︑

( 1 8 )  

マーケティング・ミックスの視点からみると︑市場細分化戦略の効果的遂行には︑とくにスチュアートのいう既

存の広告や径路が特定細分に能率的に達しうるかの問題も重要なボイントになるであろう︒

かかる市場細分化戦略の決定は︑あるいみで企業の生命を左右する決定であって︑それはその短期的性格にかか ︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑ わらず長期的︑全体的視野からトップ・マネジメントが決定すべき問題であり︑それの計画と遂行にあたっては企

業の諸部門間の調整を必要とするし︑既存の生産設備を使用するのでなければ︑新たな設備投資の決定にも規定的

︑ ︑

︑ ︑

︑ ︑

に関連せざるをえないであろう︒その基礎には︑﹁消費者が︑会社の運命を決定し︑会社が生き残り且つ成長するか︑

( 1 9 )  

失敗するかを決定する﹂との観念︑﹁経営者の挑戦は︑動的な市場諸条件に創造的に適応すること︑またその結果生 略を必要とするであろう︒大部分の場合︑ にあたって製品が中核となると理解してきた︒現代における戦略は︑ ︑

︑ ︑

︑ ︑

にありえないから︑ 市 場 細 分 化 論 に つ い て の 一 考 察 ︵ 保 田 ︶ 五 0 ︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑ すぐれて独占間の激烈な競争なしには本来的

︑ ︑

︑ ︑

それは競争関係に規定されると理解されよう︒前節で指摘された市場細分化の過渡的性格もか

(18)

273 

市 湯

細 分

化 論

に つ

い て

の 一

考 察

︵ 保

田 ︶

が次の課題とならねばならない︒

( 2 0 )  

ずる市場機会によって︑より効果的に変化する消費者需要に任えることである﹂との姿勢が横たわっているのであ

る︒かくして市場細分化戦略の重要な特徴は︑これまで考察してきたように︑それが現代マーケティングのもつ消

︑ ︑

︑ ︑

︑ ︑

費者中心志向と不可分であるばかりでなく︑その直接の具現者であり︑遂行戦略である点に求められよう︒市場細

分化論においては︑この戦略の遂行にあたって︑周到なマーケティング・リサーチや細分化分析が要求され︑消費

者の必要と欲求の行動科学的調査分析がなされ︑かくして全体市場が多数の小さい同質的市場に細分され︑明確化

され︑当該企業の資源と目標に合致する特定の市場細分を抽出して市場標的とし︑これを満足せしめる製品を開発

し︑これを中核としてマーケティング・ミックスを展開するものと理解されている︒ここでは︑独占資本が戦後の

オートメーションを中心とする技術革新生産のもつ矛盾︑つまり生産と消費の一層の矛盾と激烈をきわめる独占間

競争の矛盾のなかで︑独占的超過利潤の収奪を求めてやまぬ独占資本の論理は隠蔽されてしまい︑あたかも消費者 ︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑︑ の必要と欲求を満たす戦略であるかのごとく論じられている︒われわれにとっては︑かかる市場場細分化論の批判

注 山 以

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囚拙稿「戦後アメリカにおける年令集団別細分市場とマーケティング戦略」、「関西大学商学論集」第十巻第三•四・五合併

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第 四

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(19)

274 

︑ 市 場 細 分 化 論 に 対 す る 批 判

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われわれは︑以上において︑現代マーケティング論で開花した市場細分化論の内容を考察し︑若干の論点に検討

を加えてきた︒われわれは今や︑市場細分化をどのように評価し批判するかの問題に直面する︒現代マーケティン

グ論の新しい戦略としての市場細分化論こそ︑消費者中心志向の担い手として最も卑俗な﹁消費者満足論﹂の横行

( 1 )  

する局面であり︑また事実その役割を果しつつある︒アメリカにおいて︑この市場細分化が﹁消費者優位の証拠﹂で

( 2 )  

あるいわれ︑わが国においても︑それが﹁消費者満足の増大︑したがってまた︑社会福祉の増進に寄与するもの﹂

として肯定的に考える風潮がみられる現在︑市場剖分化論のもつ本質を明らかにすることは重要な課題といわねば 市 湯 細 分 化 論 に つ い て の 一 考 察 ︵ 保 田 ︶

(20)

275 

市場細分化論についての一考察︵保田︶ われわれが市場細分化を問題とするにあたっては︑ さて︑われわれの見解に移ろう︒ ところで︑われわれの見解を明らかにするに先立ってアメリカにおける︱つの批判的見解をみてみよう︒それは︑ われわれの見地とは異質のものであるが―つの内在的批判とみてよいであろう。レイノルズ (W 臣目 1H•Reynolds)

によれば︑市場細分化といわれるものの多くは実は﹁バラエティ戦略﹂であるとし︑一般市場へ多様製品を提供す

る戦略が支持されている︒かれの論文の結論的部分によれば︑市場細分化は向う見ずの相談としてではなく︑会社

が従うべき健全な政策として文献のなかで勧められているが︑次のような問題があるという︒山細分化戦略が真に

ただ︱つの適切な戦略であるほど人民は種々様々であるか︒図ある製品の他製品による共食化は常に悪いか︒③単

一の市場細分への狭い訴求は︑全体市場への広汎な訴求よりも必ず強力であるか︒山真に消費者は特殊なプランド

や製品に対するかれらの選好によって︑いくつかの細長い溝にすっきり適合しうるか︒固市場細分化と思われるも

のの多くは︑消費者が種々様々な製品の行当りばったりの購買をなす結果にすぎないのではないか︒

レイノルズの批判点は︑

な ら

な い

一面市場細分化戦略を行う者にとって考慮に値するかもしれない︒しかし︑細分化は︑

なにも企業にとって︱つの製品を一っ又は若干の細分市場に適合させることに終るのでも︑﹁若干の企業は︑大衆市

( 4 )  

場にアタックすることを不可能にさせる競争の弱さのゆえに細分化戦略を追求する﹂といった性格のものでも本来

ない︒巨大企業は多種類の製品で細分化を追求し︑もって大衆市場を支配しようとするのであり︑その限りで多様

化戦略と結合するのである︒もとより若干の中小企業が製品の特殊性から︑限られた市場で小型の細分化を採用し

うる可能性を否定するのではないが︑問題は巨大企業の遂行する細分化戦略であることに留意すべきといえよう︒

それが理論的にも実践的にも支配化する戦後の再生産構造の

(21)

276 

ねばならない︒ なかでの独占資本の主体的行動の論理に則して明らかにすべきだ︑との見地に立つ︒従ってまず戦後の再出産の基 礎を明らかにせねばならない︒

戦後アメリカの国家独占資本主義は︑単一世界市場の崩壊︑植民地の独立という外的条件の下で︑冷戦体制の強

化という条件を創出し︑経済を体制的に軍事化せしめた︒他方では︑国家による独占資本への金融︑財政援助︑加

速度償却の保障︑人為的購買力の創出政策および独占のための国家市場の確保と不断の拡大という条件の下で︑生

産技術の発展を基礎に︑独占資本の生産はオートメーションを中心とする技術革新生産という性格をもつに至った︒

かかる巨大なオートメーションを中心とする技術革新生産は︑巨額の投資をもって︑巨大な商品を生み落すので

あるが︑それが再生産の維持と拡大には︑それに照応する巨大な市場を要請するに至る︒それは一方では︑海外進

出を強化せしめるとともに︑他方では軍需を中心とする国家市場の拡大を体制的に強化すると同時に︑国内市場の

水平的拡大・垂直的深耕を絶対的要請とせしめたのである︒ところがかかる技術革新生産は︑その資本主義的生産

関係のゆえに︑大きな矛盾を内包せざるをえないのである︒

第一に︑技術革新は資本の有機的構成を極度に高度化する︒それは生産力を飛躍的に増大せしめると同時に労働

者階級の貧困化および利潤率の低落傾向を深化させ︑生産と消費の矛盾をより一層激化させ︑独占資本の市場占拠

率をめぐる闘争を激烈なものとする︒

第二に︑技術革新はそれ自体変化であり︑しかも激しい独占間競争において︑巨額の固定された資本を独占利潤

をもって早期に回収せねばならない︒従って狭監化せる市場に対し︑新製品の続発︑広告促進手段等々を中心とす

る強力なマーケティング戦略によって︑長期的見通しの下に︑短期に大量生産し︑短期に大量販売を可能ならしめ 市湯細分化論についての一考察︵保田︶

五 四

(22)

277 

市湯細分化論についての一考察︵保田︶ かように独占資本の技術革新は︑自らつくり出す市場の狭陰化と巨大な生産力とのより大きな矛盾に直面するの で

あ る

が ︑

それはまた技術革新のもつ矛盾からより一層マーケティングを加速化せずにはおかない︒しかもその加

速化は︑独占資本の論理から︑高圧的な加速化とならざるをえない︒独占的高利潤を追求する独占資本のマーケテ

ィングは︑ここに技術革新のマーケティングとなり︑高圧的な加速化マーケティングとなってこざるをえないであ

ろう︒かかるマーケティングの戦略の典型的にして一般的な形態をわれわれは︑一貫した廃物化戦略

( o b s o l e s e n c e

( 5 )  

s t r a t e g y

) に求めることができる︑といえよう︒なぜなら廃物化戦略ほど技術革新のもつ内的矛盾に最も照応する形

態はないからである︒廃物化とは︑消費者大衆に︑機能的にまだ健全な製品をスタイルなどによって心理的に古い

ものとして捨てさせ︑また製品の死亡日を短縮させ︑また新製品を作ってもっともっと買わせる戦略である︒まさ

にかかるマーケティング戦略として︑われわれは製品差別化と市場細分化を把握すべきではないだろうか︒もしそ

( 6 )  

うだとすれば︑この二つの戦略形態の出現の歴史的ずれを説明せねばならないだろう︒差別化は二 0 年代に盛行を

きわめた︵勿論現在も重要な戦略︶のに対し︑細分化は二 0 年代に萌芽をみるとはいえ︑とくに戦後に出現したの

は何故か︒とりわけここでは︑市場細分化の出現の条件を明らかにせねばならないであろう︒

第一は︑細分化に照応する生産の技術的基礎が︑若干の領域で確立したこと︵矛盾に満ちているが︶︒

細分化するためのマーケティング・リサーチおよびコンビューターのごとき計量的管理技術の発展︒第三に︑

コミとりわけテレビの発展︒第四に︑市場領域における変化として︑消費者需要の変化︑小売におけるセルフサー

( 7 )  

ビスの普及をあげることができよう︒

し か

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が ら

五 五

これらの条件は決して十分でないであろう︒なぜなら︑かかる条件だけでは細分化は出現しない

であろうからである︒しからばその基本要因は何か︒それは︑すでに指摘した独占資本の技術革新生産そのものの

マ ス

第 二

に ︑

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しかし市場細分化戦略は︑まことに矛盾に満ちたものといわなければならない︒今これを経営の内部的矛盾と外

経営の内部的矛盾としては︑第一に︑オートメーション生産のもつ大量生産と細分化による相対的多種少量生産

との矛盾を指摘することができる︒それは生産技術的にある程度その基礎ができたとはいえ︑経済的には︑本来的

な大量生産の利益と矛盾する︒その結果︑生産コストの増大は不可避となり︑労働者に対する一層の労働強化と低

賃金を強要する合理化を強めるだろうし︑他方では細分化論のいう消費需要への的確な適合ということも﹁実行可

能な範囲内﹂という限定を自らに課さざるをえないことになる︒第二に︑流通コストの銀点からみて︑差別化は促

進コストが支持しがたいほどかかり︑一面ではその合理化・効率化のために細分化を推進するとはいえ︑基本的に

は︑オートメーション生産からくる多量製品を出来るかぎり急速に販売しつくさざるをえない関係から︑および追

加的にはたとえば現代広告の重要な役割からみて流通コストは軽減するというよりはむしろ増大する傾向さえ示す

だろう︒消費者の選好に合致する製品だからその有用性を報知すればよいとのスミスの見解は︑楽天的であり支持

しがたい︒むしろその主観的意図にかかわりなく細分化は巨額の説得広告および他の促進努力を必要とするだろう︒

第三に︑細分化は厳格なマーケティング・リサーチに依存する度合はきわめて大きく︑

を必要とするだろう︒それにもかかわらず︑ それは細分化の成功を確実に保障する性質を有せず︑不確実性との矛 部諸力との矛盾について指摘すれば次のようになるだろう︒ る ︒ 矛盾のなかに内在するといえよう︒それとともに︑これまでの製品差別化戦略の一定の限界から独占資本が独占的 超過利潤を追求する場を求めていたという事情が存在する︒いいかえれば︑独占の高度資本蓄積の法則が︑戦後の 技術革新生産の段階において︑ それを可能とする条件の整備にともなって市場細分化戦略を必然化せしめたのであ 市湯細分化論についての一考察︵保田︶

それだけに巨額の調査費用

五 六

参照

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