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経済成長理論と低開発国問題

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(1)

経済成長理論と低開発国問題

その他のタイトル The Theory of Economic Growth and the Problem of Underdeveloped Countries

著者 山本 繁綽

雑誌名 關西大學經済論集

11

4

ページ 359‑387

発行年 1961‑10‑20

URL http://hdl.handle.net/10112/15509

(2)

( 1 )

( 2 )

現在︑低開発国開発或いは後進国開発問題に関して見られる諸家の論議は非常に膨大な数にのぽるであろうが︑

私の見た僅かの範囲についていえば︑所謂経済成長理論の明かな応用という形をとつているものは割合少いように

思われる︒これは後進国問題が非常に多くのしかも非経済的な条件に支配されていて︑経済成長理論の一筋縄の適

用というわけにはいかないためであろうが︑少くとも経済学の範囲に属するものについてみる限り︑後進国開発理

論は明らかに応用経済学であって経済成長理論の好個の適用例である筈である︒その上︑現在経済成長理論は非常

に進歩し精密化されているから可成り複雑な問題に対してでも適用することが出来るであろう︒

ところで︑ここで経済成長理論という場合勿論ポスト・ケインジアンの経済成長理論を指すけれども︑その中にお

いても更に二つのタイプの理論があることが注意されなければならない︒いうまでもなく︑その一っはハロッド

11

ドマール型の成長理論であり︑今︱つはロビンソン型の成長理論である︒なお︑R.ソローが一九五六年にクオー

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

(3)

用の例としてバトリック︹4︺及びライベンシュタイン︹9

たいと思う︒なお︑批判といつても後進国問題にいずれの型の成長理論の適用が望ましいかという前述の目的の範

囲内での批判であり︑

て少しでも新しいものを加えようと意図するものではない︒この点︑最初に念のため断つておきたい︒

(1

) 最近は低開発国という言葉が用いられるようになったが︑結局同じことであるから︑便宜上︑

葉を用いる︒

(2

) 後進国開発理論の非常に包括的な展望としてアジア経済研究所︹

2︺を参照︒ アツバス 経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

タリー・ジャーナル・オプ・エコノミックスに発表した理論︹

︺も本質的にロビンソン型の成長理論と変りないと1 5

( 3 )

思われるから︑私は後者の型の成長理論を特にソロー

11

ロビンソン型の成長理論と呼ぶことにしよう︒この二つの

型の成長理論の理論的な差異はピルビン︹

1 0 ︺等によって示されたようにハロッド

11

ドマール型理論においては

生産要素間の非代替性を仮定しているのに対し︑ソロー

11

ロビンソン型理論においてはその代替性を認めているこ

( 4 )

とである︒言葉を変えていうと前者は線型理論であるのに対し︑後者は非線型理論であるといえるだろう︒このよ

うな区別は少し極端かも知れないが︑両理論のテイビカルな特長として最初に指摘しておきたい︒

さて︑小稿の目的は後進国開発理論が経済成長理論一般の応用部門であるという立場から︑

型成長理論とソロー

11

ロビンソン型成長理論のいずれが後進国問題への適用に望ましいかということを論ずること

である︒以下︑第二節ではハロッド

11

ドマール型の成長理論を後進国問題に適用した例としてシンガー︹

1 4 ︺及び

1の理論を紹介し︑第三節ではその批判を行い︑また第四節ではソロー

11

ロビンソン型成長理論の適

の理論を紹介し︑第五節では同じくその批判を行い

一般的な批判ではない︒また︑小稿は諸説の紹介と批判とであって︑後進国開発理論に対し

本文では後進国という言

11

ドマール

(4)

( 3 )

わたくしは成長理論の理論的差異を生産要素の代替性に関して三つに分類した︒すなわち非代替的︵ハロッド︶︑代替性

︵ソロー︶︑交互に代替かつ非代替的︵ロピンソン︶と分類した︒︵山本︹

1 7 ︺)︒ロビンソンの湯合代替かつ非代替的

というのはロピンソン自身の巻末の

7

1 1

pp .4 11 04 20 ) 

1 1 .   従ったためで︑しかし︑線型計画法的に描こうと従来の

方法で描こうと成長理論が対象とする長期的に代替可能である点には変りないのであるから︑ここではソローの場合も ロピンソンの場合も一緒にして代替的といつてハロッド

1

1ドマール型成長理論と対比さすのである︒

(4 ) この点についてはピルビン︹

1 0 ︺の外ハンバーグの著者や稲葉教授の論文に詳しい︒それらについては山本︹

1 7 ︺及び

その引用文献のところを参照︒

( 5 )

栗原氏はハロッド・ドマール及びロビンソンの成長理論が後進国問題の分析にどうであるかという問題を論じている︒

8

︺第四章︶しかし観点が違うからわたくしの批判は殆んど重複しない︒

シンガー

1 4

( 1 )

普通ハロッド

11

ドマール型の成長理論の後進国問題に対する適用として挙げられる例の︱つにシンガ

( 2 )

の論文がある︒しかし︑シンガーが﹁ドマール︑

︵ ︹1 4

p . 

3 8 1

)といつているのはその最後の第四節についてであって全体に

ついてではない︒すなわちハロッド型といつても部分的な適用に過ぎないと一見思われるようである︒この点を意

シンガーは後進諸国の現実のデータから凡そ妥当と考える若干の数値を用いて開発計画モデルの表を作成する︒

その表を説明することが彼の後進国開発論の全貌であるがこ

Aでは二重になるから表を省略して説明だ

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶ 識しながら以下シンガーの所説の要旨を述べることにしよう︒

型の一般的なモデルの助けをかりて﹂ ハロッド及びヒックスの著作によってよく知られている

二 ︑

ーシンガー及びアツバス—ーー ハロッド

11

ドマール型成長理論の適用

(5)

の率の増加に当り︑ ばならないとしよう︒この場合︑資本所得率を四対一としてそれに要する費用三

00

0

以上凶⑱cによって得られる純所得を合計すると四二八三ドルとなり︑これは全体としての国民所得の四・三%

一人当り国民所得の約三%の率の増加に当る︒後進国としては可成り急速な成長率である︒

(C) 

仮定によって農業部門から非農業部門に移転する人口すなわち農業部門の自然増加人口は八・七五人であ

る︒この移転に一人当り一六

00

ドル全部で一四000ドルの費用を要すると仮定する︒この場合︑資本所得率を

六対一とするとその投資によって得られる純所得は二三三三ドルである︒

年率一・ニ五形で増加する人口に食料を供給するためには︑仮定によって人口が一定である農業部門の労働

生産性は一・ニ五%以上上昇しなければならない︒それを農作物の生産や移動の困難によって三%を仮定しよう︒

農業部門の国民所得は四0000ドルであるからそれの三形として純所得は︱二

00

ドル増加する︒この場合︑資

本所得率を四対一とするとその純所得の増加に要する費用は四八

00

非農業部門の人口の自然増加三・七五人に一人当り二

00

ドル合計七五0ドルの所得を得るようにしなけれ

(B)  利益︵純所得︶とを次の凶固cのように計算しよう︒ とそれによって得られるの数値を与えることにより︑一人当り所得を一定の率で増加させるに要する費用︵投資︶ 等に一定 けを述べることにしよう︒先ず︑開発計画モデルは次のような仮定に基いている︒H

000

人︑国民所得一

00  00 

0ドルの社会を仮定する︒口この社会は農業部門と非農業部門とに分けられ︑そのウェイトが人口におい

ては七対三︑国民所得においては四対六であると仮定する︒国人口の年増加率は一・ニ五形であるとする︒四農業

部門における人口の増加は総て非農業部門に吸収されると仮定する︒そうして︑

(6)

D 1 1  

sp

r

 

とすればドマール

ハロッドの基本方程式は1 1 A方︑かる成長率を達成するに必要な費用について囚⑱cの合計はニ︱八

00

である︒ところでシンガーは後進国

の貯蓄率を六形と仮定して︑

S

rを一・ニ五彩とすれば︑Pは約五四形 このニ︱八

00

ドルのうち六

00

ドルは自国で調達出来るにしても一五八

00

ドルと

いう多額の資本が不足することになり︑この儘ではこの開発計画を実現することが困難であるという︒そこで︑こ

の計画を実現するために次のような方策を提起する︒H資本労働比率を低下させることによって費用を減少させ

る︒口消費を切詰めることによって純貯蓄を増加させる︒国人口の増加率を低下させる︒四外部から資本の補充を

行う︒そうしてこのH口回の方策こそドマール

1 1

ハロッドの方程式によって都合よく説明されるというのである︒

Aに至ってハロッド

1 1 ドマール理論の適用の問題が生じてくる︒

そこでDを一人当り所得の成長率︑S

Pを新投資の生産性︵資本係数の逆数︶及びrを人口の増加率

と示される︒この

DSp

rのうちいずれか三つを与えれば他の︱つが決定されるから︑先にも使用した後進国

に妥当すると思われる数値を当嵌め︑次の四つの場合を考えてみよう︒①S

P

1

r5を一・ニ五%と

すればDはほぼ零になる︒②D

P

1

rを一・ニ五%とすればSD5は一六・ニ五%となる︒③

S

P

1

Drはほぼ零になる︒④とすれば5

となる︒このうち②は先の貯蓄率引上の方策⇔の③は人口増加率低下の方策国のそうして④はほぼ資本労動比率低

下の方策日のそれぞれ例である︒しかし︑②の場合の貯蓄率引上は後進国の一般的な貯蓄率六彩を三倍近く引上げ

ることになり︑非常に困難であるといわなければならず︑また③の場合のように人口を少しも増加させないことも

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

(7)

ではあるけれども︑ を論じているところだけであって︑全体についてではない︒しかし︑

つてフォーミュレートすることが可能である︒また外部から資本の補充を行う方策はハロッド

11

ドマール型の方程

式では取扱えないことになっているが︑

働を利用することによって産出量を増加させるという最後の主張はハロッド

11

ドマール型の理論では厳密には扱え

( 3 )

1︺がある︒アツバスは先ずハロッド︹7︺︵及びドマール

数についての仮定すなわち生産要素の非代替性を明かにし︑

結果を示している︒そうしてその上で彼自身の開発計画を作成している︒この意味でアツバスはハロッド

11

ドマー

ル型の成長理論の後進国問題への忠実な適用といえると思われる︒その上︑後進諸国の現実のデータから妥当を思

る ︒

それぞれ資本係数一定を仮定しているので︑ シンガーの理論の要旨を述べたが︑ 経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

本質的にはハロッド

11

ドマール型の方程式によ 不可能である︒これに対し④の場合は投資の生産性を三倍近く引上げることになるけれども︑シンガーは失業或い

は潜在失業労働や天然資源の利用を強化することによって同じ資本の水準においても産出量を増加させることが出

来るという︒また︑新投資の生産性が一定であっても既存資本の生産性を高めることによって産出量の増加が可能

であるという︒要するに︑シンガーはPを増大させる方策こそ後進国開発の一番望ましい方策であるというのであ

11

ドマール型の方程式を用いているのは後半の開発の諸方策

シンガーの開発計画モデルの表は二部門分析

これは容易に取扱えるものである︒ただし︑資本量を一定として︑失業労

シンガーと同じくハロッド

11

ドマール型の成長理論を用いて後進国問題を論じている例としてアツバ

5︺︶の成長理論を詳しく紹介し︑その生産函

それを実際にしらべるため資本係数のいろいろな計測

(8)

なければならないか︒

N o  

11

 566 

(1 00 7J A)  

値も非常に近似している︒以下︑ われる数値を用いて算術的なモデルを構成している点︑先のシンガーのモデルとよく似ており︑用いている定数の

ァッパスの著書の第六章を中心としてその要旨を簡単に紹介しよう︒ただ︑アッ

バスは二0

年間ににわたる開発計画に右の数値を逐次代入することによって非常に詳細な表に作成しており︑

が開発計画の全貌であるが︑われわれは簡単化のためその表の全部を示さずに計算方法と最終結果だけを示すこと

( 4 )

シンガー型の方程式を定差形にして用いることにする︒

にしよう︒その場合︑

アツバスの目的とする問題は﹁南アジア及び東南アジアにおける開発のための資本要求﹂というその著書の題名 にも示されるように︑これら後進諸国における経済開発のために必要とされる投資額︵率︶を算定することである︒ア ツバスに従って三つのケースに分けて考察しよう︒その場合︑ケース1においては資本係数が二

0年間を通じて一

定と仮定されるが︑ケースn

ケース皿においては初めの一五年間と後の五年間は異る値をとると仮定される︒ま た︑ケース皿では農業部門と非農業部門とが分けられ︑農業部門から非農業部門ヘ一定量の労働の移動と︑非農業 部門の増加した労働に要する資本︵それも初めの一五年間と後の五年間では異る値をとる︒︶の値を仮定する︒なお︑

三つのケース全体を通じて人口の成長率が一・三三形︑人口

N及び国民所得Yの初期︵一九五0年︶値がそれぞれ次

のようであると仮定する︒

11

  50 

( , , n

, )  

Yo

. . . N

 

 

先ずケース1は次のような問題を考察する︒貯蓄率四%︑資本係数四とすれば︑二

0年間の間に一人当り所得は

どのように変化するか︒また二

0年間一人当り所得を不変に保っためには資本要求すなわち投資が国民所得の何形

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

Y o 1 1

2 

83 00  ( 10 07

J

u )

(9)

366 

て求めればよい︒その結果S11

0.

  05

32

. 

Y t   Y o  

次に︑.この場合一人当り所得を一定に保つに要する投資は右の式において11̲│'とおいてSを未知数とし

N t   No  

その投資は国民所得の五・三二形にあたる︒要するに︑後進諸国

の現実のデータから妥当と思われる数字をハロッド11ドマール型の方程式に代入すれば︑一人当り所得は一様に低

下することになり︑またそれを防ぐに要する投資率は現実の貯蓄率を凌駕しなければならないことが示されるので

I I は毎年一人当り所得が一ドル宛増加するためには資本要求すなわち投資が国民所得の何%なければなら

ないかという問題である︒ただしこの場合︑資本係数が二0年間を通じて一定という仮定を除去し︑第一年から第

Yt/Nt 

1950  1951  1952  1953  1954  1955  1956  1957  1958  1959  1960  1961  1962  1963  1964  1965  1966  1967  1968  1969  1970 

50.00  49.88  49.77  49.59  49.41  49.25  49.09  48.94  48.80  48.59  48.47  4,8.36  48.25  48.09  47.90  47.76 

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

定差方程式として解くことによって得られる︒

Y ,   Y o   111││

]

+ 1

̲ r ) t   N t   No  

から求めればよい︒その結果は次の表に示される︒

47.65  47.33  47.30  47.06  47.01 

この問題を考察するために︑仮りにシンガ>の方程式

DI

I

rに右の数字を代入してみると

D1

1

0.

033とな

り︑この状態では一人当り所得は年々低下することが判る︒各年の一人当り国民所得の動きはシンガーの方程式を

(10)

その結果は右の表に示される︒これを概していえば一九六年迄は約二0彩一九六六年以後は約一四%となり︑現実.

ケース皿は農業部門から非農業部門へ毎年二

00

万人が移動すると仮定して︑非農業部門の増加労働者一人当り

の資本要求が与えられるとき︑非農業部門の総ての労働を雇用するに要する資本要求すなわち投資は国民所得の何

彩なければならないか︑また︑この率で投資が行われるとき一人当り所得はどのように変化するかという問題であ

︵限界︶資本係数はケースnの場合と同様一回だけ変化し︑増加労働者一人当りの資本要求の率も︐

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶ の後進諸国の貯蓄率に比較すると極めて過大な率である︒

1 2 3 4 5   5 5 5 5 5   t 9 9 9 9 9   1 1 1 1 1  

1956  1957  1958  1959  1960  1961  1962  1963  1964  1965  1966  1967  1968  1969  1970 

st  0.229  0.226  0.223  0.221  0.219  0.216  0.214  0.212  0.210  0.208  0.206  0.204  0.202  0.200  0.199  0.148  0.147  0.145  0.144  0.143 

一五年迄の一五年間は六・八七︑第一六年から第二0年迄の五年間は五・一五と一回だけ変化すると仮定する︒そ

れは工業化の初期には社会的資本に対する投資が大きく︑資本係数が大きいと考えられるためである︒さて︑この

c t 1 1

5.15  

( t 

1 1  

19661970) 

( 5 )

として︑毎年一宛増加するたかの値を逐次代入することにより︑

S t の値を求めればよい︒

s t  

1

r

c i  

Y t  

1

N t l ]  

問題はシンガーの方程式を

c t 1 1

6. 87  

( t 

1 1  

19511965)

---—ー・·—---—―ニ- .' 

(11)

s t  

c t  

Gt

 

y l が与えられているから︑

ハロッド型の方程式

c t 1 1

  5

.1

5.

 

c t 1 1

  6

.  8

7.

 

1 1

1542.5 

k t 1 1

  2708.0 

ど ︑

t1

1

(!

bN

t

2 )  

c t  

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

資本係数の変化に比例して初めの一五年間は二三0

(ドル︶であるが後の五年間は一五四ニ・五︵ドル︶と減.

少すると仮定する︒また︑労働の移転が行われる以前の全人口に対する非農業部門の労働人口の比率は四0形であ

ると仮定する︒この問題を考察するために非農業部門の増加労働者一人当り資本要求を(11立一立︶とすると仮定に

y

も求められる︒更に国民所得の初期値Z

 

△  が求められ︑従ってが得られ︑人口の成長率が与えられているから N t

に逐次代入することによってこの場合要求される

S t が計算される︒また︑

式に代入することによって︑この場合の一人当り所得の動きも求められるであろう︒

( 6 )

その結果は次の表に示される︒これを見れば︑農業部門から移動してくる労働も含む非農業部門の労働の完全雇

傭に必要な投資率は年々低下するとはいえ︑当初国民所得の約四三形という極めて過大な率となり︑

資率を達成すれば二0年後には一人当り所得はほぼ倍増するということが判明するのである︒

( t 1 1

  19661970) 

( t 1 1

  19511965) 

一方かかる投

‑ ‑ ‑‑‑ ‑

こうして求められた

S t をケースIの方程 0

(12)

369 

このようにアッパスの開発モデルは特に断つてはいないけれども国連︑

味においてハロッド

11

ドマール型成長理論の適用によっているものである︒

(1

)

ハロッド

1

1ドマール・モデルの後進国問題への適用としてツンガーの前に国連︹

1 6 ︺のモデルの七六頁の表がある︒

ンガーの理論はこの表を更に発展させたものであるということが出来る︒

( 2 )

ツンガーの理論は非常によく紹介されている︒例えばアジア協会︹3︺の深沢八郎氏の紹介参照︒

( 3 )

その理由はハロッドードマール型の理論では資本と労働との代替が出来ないためである︒本文第三章参照︒

(4

) アッバスはハロッド・ドマール及びツンガー等に見られるような方程式を用いいないし︑いわんや定差方程式を用いて

いない︒算衡的に逐次計算した結果を示しているに過ぎない︒

(5 )S

tの値は筆者の計算による︒

(6

)S

tの値は筆者の計算による︒

前節で紹介したシンガー・アッパスの後進国開発理論は最初に指摘したようにハロッド

11

ドマール型の成長理論

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

一 ︑

ハロッド

11

シンガー・モデルの拡張であり︑この意

1950  1951  1952  1953  1954  1955  1956  1957  1958  1959  1960  1961  1962  1963  1964  1965  1966  1967  1968  1969  1970 

st  0.431  0.405  0.412  0.389  0,368  0.349  0.333  0.317  0.329  0.289  0.278  0.267  0.276  0.265  0.255  0.246  0.238  0.230  0.222  0.215 

Yt/Nt  50.0  54.6  55.3  58.6  60.7  63.$  65.8  68.3  70.7  73.2  75.5  77.7  79.9  82.8  84.2  86.4  88.4  90.5  92.3  94.2  96.1 

(13)

一︑後進諸国は主として農業生産に依存している国であるが︑資本労働比率とか資本係数とかいう場合︑農業部

k  ,   o

/ / 

02 

ー に 0 3

ー ー ー

/ / 

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

の明白な応用であった︒この節ではハロッド

11

ドマール型の成長理論の応用が後進国経済の場合果して適切である ハロッド

11

ドマール型の成長理論の重要な仮定は資本係数一定の仮定である︒このことは資本量と産出量 との間に線型の比例的な関係のあることを意味する︒次に︑労働量と産出量の関係についてはハロッドは特に指定 していないが︑資本の場合と同様線型の比例的な関係があると考えよう︒この二つの関係から資本と労働の関係を

求めると左の図のようになる︒それは生産無差別曲線が直角L字型をなし︑その各項点が原点を通る直線

oa

ある図である︒一次同次的な函数関係が仮定されれば各無差別曲線

( 1 )

は等間隔に描かれる︒さて︑この図において資本と労働が

oa

で示さ

れる比率にある場合のみ両者の完全雇用が同時に達されるわけで︑

仮りに資本量と労働量がE点に示される位置にあるとすれば︑資本

の増加によってのみ排除される労働の失業が存在することになる︒

11

ドマール型の成長理論は資本と労働の使用

が固定比率において定められ︑言葉を変えていうと資本と労働の間 に代替性のない生産函数が仮定されているのである︒そこで先ずこ のような仮定が後進国問題を論ずる場合に妥当であるかどうかを考

かどうかという問題について考察しようと思う︒

(14)

要な技術的制約を後進国の経営者に課しているようである﹂ い︒従つて生産方法︵技術︶の選択の余地も少く︑

︵ ︹

6

p.353)

と述べている︒要するに︑こうしたこ

資本と労働との間に技術的な代替性が見られないといつてもそ

本係数を用いているのである︒ところで︑

後進諸国の工業化は少数の特定の工業についてであり︑

門についてしらべることは適当でない︒そこでは殆んど資本というべきものが用いられていないからである

C

て︑資本係数は工業部門について考察されるべきで︑

れ程不自然ではないであろう︒その上︑ シンガーやアツバス︑の場合も工業化計画を論じるからこそ資

関連工業も少

エッカウスは﹁企業家は一定係数の生産函数すなわち要素間の非代替性に 直面していると考える︒.例えば︑インドの企業家はアメリカの生産方法が最善且つ唯一の方法であると考えてい る︒また或る機械技術者は西欧の技術が製造過程で実際用いられる場合︑選択の余地を与えないものと考え︑不必 とから後進国においては先進国に比較して生産要素間の代替性が少いということは云えると思う︒

二︑また︑生産要素間の代替性が技術的に存在しても︑すなわち利用可能な生産方法が多数あるにしても︑要素 価格が硬直的であれば実際に代替の行われることが出来ない︒生産要素間の代替が現実に行われるのは︑例えば相 対的に増加した要素の価格が下落することによってその要素使用的な技術が採用されることが有利となるというブ ロセスを通じて行われるからである︒ところで後進諸国の大きな特長の一っに労働のモビリティが極めて低いこと

があるC

すなわち︑多くの労働は土地に因習的に定着していて︑他に有利な雇用の機会があっても容易に移動しな

たとえ労働人口が大きく増加或いは減少しても賃銀の水準は余り変化しないであろう︒

一方後進諸国

の中には工業部門の賃銀が政府の特定の保護政策や急進的な労働組合運動によって非常に高い場合もあるだろう︒

しかも労働のモビリティの低さによって農業部門に多量の疑装的失業を抱えながらもこの高い賃銀水準は保たれる

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

(15)

tの増加は油を大きくするが︑ と変更される︒tは平均課税性向︑ G

Cr

11

s+

t

g 長率が極めて単純な方程式によって示されることである︒しかも︑関する︒ハラメーターが容易に導入出来るものである︒すなわち開放体系に拡張出来ることである︒それを簡単な場

( 3 )

合について示してみよう︒先ず︑財政に関するパラメーターを導入するとハロッドの基本方程式は

gは国民所得に対する財政支出の比率である︒この式より他の条件を一定とし

gの増加は珈を小さくすることが判る︒次に︑国際貿易に関するパラメーターを

経済に妥当するものといえよう︒ 経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

のである︒要するにに後進国における労働のモビリティの低さは要素価格の硬直性を通して現実の要素代替性をな

三︑後進国経済についてしばしば指摘される特長の︱つに広範な失業及び疑装的失業の存在がある︒このような

失業は財政政策や貨幣政策によって除去出来ないものであり︑先にも触れた労働のモビリティの低さから生ずる摩

擦的失業と資本の不足から生ずるロビンソンのいわゆるマルクス型失業とに属するものである︒そうして︑資本の

増加によってのみ除去されるマルクス型失業については第1

E点における場合に当嵌り︑非代替的な生産函数

を仮定することによって容易に示されるであろう︒すなわち︑後進諸国における広範な失業の存在は生産要素の非

( 2 )

代替性という事実からも説明出来るのである︒

以上いくつかの事実からわれわれはハロッド11ドマール理論における生産要素の非代替性の仮定は比較的後進国

ハロッド11ドマール型の成長理論の利点はシンガー・アッバスの場合にも用いたようにその中に概念の成 くしているということが出来るであろう︒

この方程式は財政や国際貿易或いは国際金融に

I ―‑‑

(16)

. つ ︒

五五 と表わさされる︒bは国民所得に対する国際収支尻を表わす︒貿易収支が均衡している場合資本輸出超過となればb

は︒フラスとなり︑資本輸入超過となればbはマイナスとなる︒従つてこの式から他の条件を一定として輸出の増加

や外資の導入は袖を高めることが判る︒

さて︑普通後進国開発計画といわれる場合それは投資計画であり︑要求される投資の額とその配分に関するもの

である︒そうして︑腿々いわれていることは後進国は何よりも鉄道港湾或いは教育施設等の所謂社会的資本に対す

る投資が必要であり︑その上後進諸国では︑政府の力が相対的に強くこうした意味において政府の投資政策が最も

重要な政策となるのである︒ところで︑こうした投資計画を樹てる場合多くの後進諸国では常に不安定な国際収支

の動向に注意を払わなければならないし︑貧弱な国内貯蓄では当然不足するので所謂外資導入を図らなければなら

ない︒すなわち︑貿易政策とか外資導入政策もまた重要な役割を持つ︒こうした点を考えると︑後進諸国の開発計

画にはハロッド

1 1 ドマール・モデルが非常に都合がよいと云えるであろう︒先にも示したようにハロッド

1 1 ドマー

ル・モデルでは財政や国際収支に関するファクターが容易に導入され︑数量的に示すことが出来るからである︒こ

1 1 ドマール型成長理論を後進国問題べ適用するのに非常に好都合な点であると考えられるであろ

(1 )

ハロッド

1

1ドマール型の成長理論が必ずしもその生産函数の一次同次性を仮定しているわけではない︒

(2

) 栗原氏︹

8

︺によればハロッド

1

1ドマール型の成長理論の保証成長︑或いは必要成長は資本の完全利用成長であって︑

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

Gw

Cr

 1

1S

1b

. 

導入すると︑ハロッド自身︵︹7

p . 

1 0 5 )

に従って

...... ‑‑. ‑‑--~ —·—---· .... 一•一・‑̲ ̲ :" :, 

(17)

変化する

y

L の函数であると考える︒

1 1

. 

sF

  ( r ,

  1 )

ーミ

バトリック

四 ︑ ソロー

11

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶

ーバトリック及びライベンスクインー│'

完全雇用成長でないから後進国に一般に見られるような失業の事実をこうした理論によって取扱うことが出来ないとい

う︒︵︹8

pp

. 

6465. pp

. 

7072)しかし︑この批判はおかしい︒

(3

) より詳細な場合については栗原︹

8︺九章一0

明を与えようとした短い覚え書であるが︑後進国の経済発展の一般的様式を示すように思われるので簡単に紹介し

1)よう︒拙稿︹

︺に詳しく示したようにソローは一次同次の生産函数1 7

Y1 1F (K L)

と貯蓄投資の均等式

K= sY

とから︑資本労働比率

r ( 1 1

ふャーを唯一の変数とする微分方程式

バトリック︹4︺というのはソロー︹

1 5 ︺の成長理論を用いて経済発展の非常に長期的な形態に説

nは人口の成長率でこの場合与えられている︒ところでバトリックによればnもまたグの函数である︒す

rは一次同次の生産函数によって一義的に一人当り所得

Y‑

nLに対応し︑一方は次の三つの形態をとつて

n

y

nの函数関係については︑日は農業が工業に変り始めて増L

大し︑工業の発展が都市化をもたらすことによって増加の速度が低下し︑経済が富裕な状態に発展することによっ

て再び増大するとも考えられるし︑⇔ソロー自身も取扱っているように︑経済の発展に伴い一人当り所得が上昇す

るにつれ労働力の成長率は最初は上昇するが其の後低下し︑そうして第二次大戦後の米国のように所得水準が非常

(18)

.rは負であるから︑前者の場合はrを増加させ後者の場合はrを減少させる力が働き結局もとの均衡点

r l に収束

することになるからである︒

な状態である︒ れはrlの近傍においてはrrlより小さい場合は•rは正で大きい場合は

心の場合は丁度その逆であって︑均衡点よりの乖離は更に一層の乖離をひきおこすこ

経済発展の過程を次のように示すことが出来る︒

Hr

11

の場合は一人当り所得が非常に低い水準でしかも安定的r 1

( 2 )

仮りにこのような点を低開発均衡点と名付けよ

う︒いわゆる貧困の悪循環はこうした点の周辺に当ると考えられるであろう︒ロミ^r

r 2

の範囲は経済が持

経済成長理論と低開発国問題︵山本︶ それはいわば生存水準所得ともいえるであろう︒

さてこの図を用いて経済発展の指標をr︵それは結局一人当り所得

y

L

とになるのであろう︒ r

される︒第2図において

r t r a

んは不安定均衡点である︒そ

r I   Y2  (3 

に高くなると人口はまた増大するとも考えられるし︑国経済の発展による高級職業や高い社会階級の比率の増大は

出生率の減少をもたらすが︑かかる階級構造の変化が鈍くなるにつけ人口

こうした考慮から︑

K‑

との間に三つの段階に分けられる関係があると仮定する︒L

これより

Z I I

( r )

と表わし︑ソローの方程式を

F 1 1  

sF

  ( r ,  

1 )

 

r

(r

)

ソローと同様位相空間に描いて成長経路を示している︒'それは

2図であり︑ミ奇︶線の勾配が三つの大きな変化を示していることが注目 は再び増加するとも考えられる︒バトリックはn

参照

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港区民講座資料.. 3.3 カロリー消費と摂取量 カロリー消費量 カロリー摂取量 カロリー消費量と摂取量 体重一定(定常状態) 体重 港区民講座資料..

著者 久保 雄志, 山形 辰史.

外資導入については︑ヴアイナーが︑発展を促進する効果を認めながらも︑現在の情勢に沿いては私的資本輸出に

〔その他(オフィスアワー等)〕 本演習では,経済成長論,経済発展論などの理論と現実について学びます.これらを習得する上でミクロ経済学,マクロ経済学,国際経 済学などの知識も必要となるので,それらについても取り上げます. ゼミへの出席,ゼミでの発言内容,論文(ゼミ論文あるいは卒論),これら3つを総合して評価します. 〔教科書〕 演習中に指定する. 〔参考書等〕

no.12

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