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「先鋒文学」における語りの技法

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(1)

博士論文

「先鋒文学」における語りの技法

平成

27

3

中央大学大学院文学研究科中国言語文化専攻博士課程後期課程

遠藤 佳代子

(2)

目 次

始 め に

... 2

1

章 馬 原

... 7

1.1 物 語 内 容 の 時 間 と 物 語 言 説 の 時 間 の 錯 綜 ... 7

1.2 語 り 手 と 人 称 ... 12

1.3 語 り の 虚 構 性 と 語 り 手 の ま な ざ し ... 17

1.4 小 結 ... 21

2

章 洪 峰

... 25

2.1 物 語 内 容 の 時 間 と 物 語 言 説 の 時 間 の 錯 綜 ... 25

2.2 語 り 手 の 人 称 と 語 り の 焦 点 ... 29

2.3 語 り の 虚 構 性 と 語 り 手 の ま な ざ し ... 34

2.4 小 結 ... 38

3

章 格 非

... 43

3.1 「 追 憶 烏 攸 先 生 」 ... 44

3.2 「 迷 舟 」 ... 48

3.3 「 陥 穽 」 ... 51

3.4 「 青 黄 」 ... 54

3.5 小 結 ... 58

4

章 蘇 童

... 62

4.1 現 実 性 の 否 定 ... 63

4.2 事 実 性 の 否 定 ... 66

4.3 二 人 称 の 働 き ... 68

4.4 引 用 と そ の 働 き ... 71

4.5 小 結 ... 74

5

章 余 華

... 78

5.1 「 十 八 歳 出 門 遠 行 」 ... 78

5.2 「 四 月 三 日 事 件 」 ... 83

5.3 「 死 亡 叙 述 ( 死 の 叙 述 )」 と 「 偶 然 事 件 ( ア ク シ デ ン ト )」 ... 86

5.4 小 結 ... 90

6

章 「 先 鋒 文 学 」 作 家 の そ の 後 の 主 要 作 品 に お け る 技 法 的 展 開

... 95

6.1 馬 原 『 牛 鬼 蛇 神 』 ... 95

6.2 洪 峰 『 恍 若 情 人 ( 恋 人 の よ う に )』 ... 98

6.3 格 非 『 欲 望 的 旗 幟 ( 欲 望 の 旗 )』『 人 面 桃 花 』 ... 100

6.4 蘇 童 「 妻 妾 成 群 」『 河 岸 』 ... 106

6.5 余 華 『 活 着 ( 活 き る )』『 兄 弟 』『 第 七 天 ( 七 日 目 )』 ... 109

6.6 小 結 ... 112

終 わ り に

... 117

(3)

~ 2 ~

始 め に

1980

年 代 の 中 国 で は 、海 外 作 品 か ら の 影 響 を 強 く 受 け な が ら 、様 々 な“ 物 語 る 方 法 ” を 実 験 的 に 用 い た 文 学 作 品 が 多 く 発 表 さ れ た 。 そ れ ら は 「 何 を 語 る か 」 か ら 「 い か に 語 る か 」 へ と 重 点 を 移 し た

1

作 品 群 と し て 、 一 般 に 「 先 鋒 文 学 」 と 呼 ば れ る 。

「 先 鋒 文 学 」と い う 呼 び 方 に つ い て 、程 波 は「“ 先 鋒 派 ”小 説 が 命 名 さ れ た の は 、

1987

年 」 に 雑 誌 『 人 民 文 学 』 に 葉 曙 明 、 北 村 ら 、 ま た 『 収 穫 』 に 蘇 童 、 余 華 ら の 小 説 が 掲 載 さ れ た 後 の こ と だ と し て い る 。「 先 鋒 派 」 に

1987

年 以 前 の 馬 原 な ど の 作 品 を 含 め て 論 じ る の は 、

87

年 以 降 の 作 品 に 与 え た 「 影 響 と 先 達 的 働 き 」 が あ る か ら だ 、 と 言 う

2

88

年 に は 羅 強 烈 が「“ 先 鋒 文 学 ”」と い う 語 を( 括 弧 つ き で )使 っ て い る

3

こ と か ら 、そ の 頃 に は 「 先 鋒 文 学 」 と い う 名 称 が 定 着 し 始 め て い た と 考 え ら れ る

4

。 先 行 研 究 で の 呼 び 方 は 異 な る 場 合 も あ り 、 分 類 さ れ る 作 家 や 作 品 に も ば ら つ き が あ る が 、 本 稿 で は

80

年 代 に 盛 ん に 発 表 さ れ た 実 験 的 な 作 品 を 総 称 し て 「 先 鋒 文 学 」 と 呼 ぶ

5

「 先 鋒 文 学 」 の 作 者 は 、 文 学 史 の 流 れ を 概 括 す る 場 合 に 「 先 鋒 派 」「 新 潮 派 」「 荒 誕 派 」 等 に 派 閥 分 け さ れ る こ と が あ る が 、 彼 ら は 固 定 さ れ た 文 学 理 念 を 共 有 す る 流 派 で は な く 、共 通 の 団 体 に 所 属 す る よ う な 結 び つ き も 持 っ て い な い 。 「 先 鋒 」的 な 作 品 と は 、 あ く ま で 複 数 の 作 家 が 同 時 代 的 な 、 似 通 っ た 問 題 意 識 を 持 っ た 結 果 と し て 形 成 さ れ た 一 つ の 傾 向 を 持 っ た 作 品 に 過 ぎ な い 。 そ の 問 題 意 識 は 、 端 的 に は 「 権 力 と 因 習 に よ る 堅 固 な デ ィ ス コ ー ス の 破 壊 を め ざ す 」

6

こ と で あ っ た と 言 え る だ ろ う 。 改 革 開 放 お よ び そ の 揺 り 戻 し と い っ た 社 会 の 諸 相 を 背 景 に し て 、複 数 の 作 家 が 用 い た 技 法 の 共 通 性 が 、

「 先 鋒 文 学 」 を 構 成 す る 主 要 な 要 素 で あ る 。

作 家 に よ っ て 時 期 の 違 い は あ る も の の

90

年 代 末 ご ろ に は「 先 鋒 文 学 」と 呼 ば れ る よ う な 作 品 は ほ ぼ 出 尽 く し た と 言 っ て い い だ ろ う 。

90

年 代 以 降 、 多 く の 作 家 は 実 験 的 手 法 の 利 用 を 減 ら し て い る 。 こ の こ と か ら 、 過 剰 な 実 験 性 が 読 者 に 受 け 入 れ ら れ ず 「 先 鋒 文 学 」 が 消 え て い っ た の は 必 然 で あ る と す る 論 者 も 多 い が 、 実 験 性 の ど こ ま で が 適 切 で ど こ ま で が 過 剰 か と い う 判 断 は 個 人 の 審 美 眼 に よ る で あ ろ う 。 そ う し た 審 美 的 評 価 は さ て お き 、「 先 鋒 文 学 」 に お い て “ 物 語 る 方 法 ” が 重 視 さ れ た こ と で 、 そ の 後 の 物 語 の 可 能 性 が 大 き く 広 が っ た こ と は 否 定 で き な い 。“ 語 る こ と ”に つ い て 探 求 し て い く 上 で 、「 先 鋒 文 学 」 が 原 点 と 言 え る こ と に 変 わ り は な い 。

「 先 鋒 文 学 」 の 代 表 的 な 作 家 と し て 、

80

年 代 の 作 品 を 中 心 に 、 本 稿 の 第

1

章 か ら 第

5

章 で は 馬 原 、 洪 峰 、 格 非 、 蘇 童 、 余 華 の 作 品 を 分 析 す る 。

90

年 代 以 降 の 作 品 に つ い て は 、 第

6

章 で 馬 原 、 洪 峰 、 格 非 、 蘇 童 、 余 華 の 代 表 的 な 作 品 を 取 り 上 げ 、 語 り の 技 法 に お け る 変 化 と 継 承 に つ い て 分 析 を 行 う 。

具 体 的 な 「 先 鋒 文 学 」 の “ 物 語 る 方 法 ” を 分 析 す る 上 で 、 本 稿 は 物 語 論

7

、 特 に ジ ェ ラ ー ル ・ ジ ュ ネ ッ ト の 理 論 を 主 に 参 考 と す る 。 こ こ で は 、 本 稿 全 体 の 分 析 を 支 え る 根 本 的 な 概 念 と な る 用 語 に つ い て 説 明 し て お く 。

ジ ュ ネ ッ ト は 物 語 の 実 態 を 構 成 す る 相 を

3

つ に 分 け て と ら え 、 そ れ ぞ れ 意 味 さ れ る

(4)

~ 3 ~

も の 、 つ ま り 物 語 の 内 容 を 「 物 語 内 容 」、 意 味 す る も の 、 つ ま り 物 語 の テ ク ス ト そ れ 自 体 を「 物 語 言 説 」、そ し て 物 語 を 語 る 行 為 と そ の 行 為 が 置 か れ て い る 状 況 全 体 を「 語 り 」 と 呼 ん だ

8

。加 え て 、物 語 の 内 部 で 虚 構 と し て 継 起 す る 時 間 を「 物 語 内 容 の 時 間 」、記 述 さ れ た 物 語 の 準 虚 構 的 な 時 間 を 「 物 語 言 説 の 時 間 」 と 呼 ん だ

9

。 本 稿 も こ れ に な ら う 。 こ れ に よ り 、 時 に ス ト ー リ ー 展 開 の 把 握 が 困 難 な ほ ど 物 語 内 容 の 時 間 と 物 語 言 説 の 時 間 が 錯 綜 す る 「 先 鋒 文 学 」 の 構 造 を よ り 明 晰 に 説 明 で き る 。 特 に 、 第

1

章 と 第

2

章 で は 馬 原 と 洪 峰 の 作 品 に 関 し て 、 物 語 内 容 の 時 間 と 物 語 言 説 の 時 間 が ど の よ う に 錯 綜 し て い る か を 主 に 分 析 し 、 第

3

章 で は 格 非 の 作 品 に 関 し て 、 物 語 内 容 の 時 間 が ど の よ う に 構 成 さ れ て い る か を 確 認 す る こ と で 、ス ト ー リ ー と プ ロ ッ ト

10

に お け る「 欠 落 」を 物 語 言 説 に 即 し て 分 析 し て い く 。

ジ ュ ネ ッ ト は さ ら に 、語 り の「 視 点 」

11

が 研 究 さ れ る 際 に「 誰 が 見 て い る の か 、と い う 問 題 と 、 誰 が 語 っ て い る の か 、 と い う 問 題 と が 、 混 同 さ れ て 」 き た こ と に 対 し 、 語 り 手 と 作 中 人 物 の 位 置 を 区 別 し 、「 視 点 」 と い う 語 の 視 覚 性 を 払 拭 す る べ く 、「 焦 点 化 」 と い う 語 を 採 用 し た

12

。こ れ に な ら い 、以 下 見 る( 知 覚 す る )主 体 、語 り の パ ー ス ペ ク テ ィ ブ を 方 向 付 け る 主 体 を 焦 点 化 し た 人 物 と 呼 び 、 語 る 主 体 、 言 表 行 為 を 行 う 主 体 を 語 り 手 と 呼 ぶ 。単 に 視 点 と 言 う 場 合 に は 、語 る 主 体 お よ び 知 覚 す る 主 体 の 位 置 を 含 む 、 語 り の 視 座 全 体 を 指 す こ と に す る 。 ま た 先 行 研 究 等 の 引 用 を す る 場 合 に は 、「 視 点 」と 表 記 す る 。

語 り の 視 点 は 、人 称 の ほ か 時 間 や 場 所 を 示 す 指 示 子

1 3

な ど 様 々 な 標 識 に よ っ て 示 さ れ る 。 そ れ は 西 洋 諸 語 で は 主 に 人 称 ・ 時 制 ・ 話 法

14

の 移 行 に よ っ て 分 析 さ れ る

15

。 し か し 中 国 語 に は 時 制 や 人 称 に よ る 動 詞 の 形 態 変 化 が な く 、主 語 の 省 略 が 容 易 に 起 こ る

16

。ま た 日 本 語 で は 敬 語 や 受 け 身 表 現 に よ っ て 述 部 か ら 人 称 が 推 定 さ れ る こ と が あ る が 、 中 国 語 に は そ れ も な い

17

。中 国 語 で は 、主 語 が 省 略 さ れ 人 称・時 制・場 所 な ど 語 り の 標 識 と な る 表 現 が な い 場 合 、 そ の 言 表 行 為 の 主 体 が 分 か ら な い の で あ る 。 し か も そ う し た 語 り は 決 し て ま れ で は な い 。 そ の 場 合 、 語 り の 視 点 は 語 り 手 あ る い は 他 の 登 場 人 物 に 決 定 す る こ と が で き ず 、 ど ち ら と も 言 え る こ と に な る 。

話 法 の 移 行 で も 、 こ の よ う な 一 種 の 曖 昧 さ は 残 る 。 引 用 の 場 で は 特 に 、 誰 が 誰 に 焦 点 化 し て 語 る か に よ っ て 、 直 接 話 法 、 間 接 話 法 、 そ し て そ の 間 に 様 々 な 中 間 的 話 法 が 生 じ る 。 直 接 話 法 は 「 他 人 の こ と ば を 変 え な い で そ の ま ま 伝 達 す る 」 方 法 、 間 接 話 法 は 「 伝 達 者 が 他 人 の こ と ば を ひ と ま ず 自 分 の 中 に 取 り 込 ん で 、 改 め て 自 分 の こ と ば で 語 り な お し て 伝 え る 」方 法

18

で あ る 。形 態 的 に は 、そ れ ぞ れ 伝 達 で あ る こ と を 示 す 表 現 や 引 用 記 号 を 持 つ 。 そ れ ら 伝 達 部 を 独 立 さ せ る 記 号 が な く 、 従 属 節 と な っ て い な い 表 現 が 自 由 間 接 話 法 、 自 由 直 接 話 法 と 呼 ば れ る 。 自 由 間 接 話 法 と 自 由 直 接 話 法 は 、 中 国 語 で は 人 称 に よ っ て 区 別 さ れ る が 、 人 称 代 名 詞 が 省 略 さ れ る と 区 別 が つ か な い 。 中 里 見 敬 は こ れ を ま と め て「 自 由 式 話 法 」と 呼 ん で い る

19

。本 稿 で は 話 法 を 分 析 す る 上 で 判 断 が つ く 限 り は 直 接 ・ 間 接 、 自 由 直 接 ・ 自 由 間 接 を 区 別 し て 扱 う が 、 区 別 が で き な い 場 合 も 往 々 に し て あ る と い う こ と に 注 意 し た い 。

中 国 語 は 語 り の 視 点 に 関 す る 変 動 に お い て 、 西 洋 諸 語 や 日 本 語 と 比 べ て 、 よ り 形 態

(5)

~ 4 ~

的 な 自 由 度 が 高 い と 言 え る 。 こ の よ う な 原 文 の 形 態 と 意 味 の 構 造 を で き る 限 り 分 か り や す く 示 す た め 、 本 稿 で 訳 を つ け る 場 合 は 日 本 語 の 自 然 さ を 損 な う と し て も で き る 限 り 直 訳 し 、 必 要 に 応 じ て 原 文 を 引 用 す る こ と に す る 。

語 り の 視 点 に 関 す る 変 動 は 、 語 り に お け る 語 り 手 と 焦 点 化 し た 作 中 人 物 の 距 離 の 変 動 と し て と ら え る こ と が で き る 。 そ れ は 語 り 手 を 主 体 と し て 言 い 換 え れ ば 、 語 り 手 が 作 中 人 物 を 対 象 化 ・ 客 体 化

20

す る 度 合 い や 介 入 度

21

で あ り 、ま た 作 中 人 物 を 主 体 と す れ ば 、 作 中 人 物 の こ と ば の 間 接 度 や 「 声 」 の 流 動

22

と 表 現 さ れ る 。

た と え ば 語 り 手 に よ っ て 焦 点 化 し た 作 中 人 物 の 対 象 化 が 行 わ れ る と き 、 語 り 手 と そ の 作 中 人 物 の 距 離 は 遠 く な る 。 対 象 化 が 行 わ れ ず 、 語 り 手 の こ と ば が 焦 点 化 し た 作 中 人 物 の こ と ば と 重 な り 合 っ て 分 離 し 難 い と き 、 語 り 手 と そ の 作 中 人 物 の 距 離 は 最 も 近 い こ と に な る 。 こ の 距 離 が 最 も 近 い 状 況 に お い て は 、 語 り 手 と そ の 作 中 人 物 が 語 り の 視 点 の 上 で 「 同 一 化 」 さ れ て い る 、 と 言 え る だ ろ う 。

特 に 、 第

4

章 と 第

5

章 で は 「 視 点 」 に つ い て 語 ら れ る こ と の 多 い 蘇 童 と 余 華 の 作 品 に 関 し て 、 語 り の 焦 点 と 人 称 が ど の よ う に 変 化 し ま た 変 化 し な い か を 分 析 し 、 こ れ に よ っ て 語 り の 焦 点 と 人 称 の 相 対 的 関 係 性 を 把 握 し 、 語 り の 視 点 と そ の 働 き を 明 ら か に す る 。

以 上 を 踏 ま え て 、「 先 鋒 文 学 」 の 語 り を 分 析 し て い く 。

1

陳 暁 明 、 『 無 辺 的 挑 戦 ― ― 中 国 先 鋒 文 学 的 後 現 代 性 』時 代 文 芸 出 版 社 、

1993/5、45

頁 。

2

程 波 、 『 先 鋒 及 其 語 境 ― ― 中 国 当 代 先 鋒 文 学 思 潮 研 究 』広 西 師 範 大 学 出 版 社 、2006/6、

46

頁 。

3

羅 強 烈 、 「『 極 地 之 側 』之 叙 事 批 判 」 (『 文 学 自 由 談 』1988 年 第

1

期 原 載 ) 『 複 印 報 刊 資 料 』

1988

年 、

173

頁 参 照 。

86

年 に も 羅 強 烈 は「“ 先 鋒 運 動 ”」と い う 語 を 使 っ て い る が 、 具 体 的 な 作 家 や 作 品 を 挙 げ て お ら ず 、 曖 昧 に 実 験 的 な 小 説 一 般 に つ い て 語 っ て い る に 過 ぎ な い 。た だ し

87

年 以 降 、分 析 法 と 名 称 が 統 一 さ れ た わ け で は な く 、そ の 当 時 は「 新 潮 小 説 」 も し く は 単 に 「 実 験 小 説 」 と 呼 ば れ る こ と も あ っ た 。( 洪 子 誠 、『 中 国 当 代 文 学 史 修 訂 版 』、 北 京 大 学 出 版 社 、

2007/6、293

頁 )

4

も と も と は フ ラ ン ス の「 ア バ ン ギ ャ ル ド 」の 訳 語 で あ る た め 、西 洋 の 芸 術 潮 流 を 紹 介 す る 文 章 で は さ ら に 早 い 時 期 に 用 い ら れ て い る 。文 学 に 関 し て は 、た と え ば 沈 恒 炎「 関 於 西 方 現 代 派 文 学 的 評 価 」『 外 国 文 学 研 究 』

1981

年 第

4

期 。「 先 鋒 文 学 」「 先 鋒 派 」 と い う 用 語 が 、 中 国 の 実 験 的 芸 術 作 品 を 具 体 的 に 指 す も の と し て 普 及 し 始 め た の は 、 確 か に

87

年 以 降 の こ と と 言 え る 。

5

小 説 に 限 定 せ ず 、詩 歌 や 小 説 と 詩 歌 の 中 間 に 位 置 す る よ う な 作 品 を 考 慮 に 入 れ て「 先 鋒 文 学 」 と 呼 ぶ こ と と す る 。

6

関 根 謙「『 集 団 幻 想 』か ら の 脱 却 中 国 一 九 六 〇 年 世 代 の 挑 戦 」 ( 尾 崎 文 昭 編 、 『「 規 範 」 か ら の 離 脱 中 国 同 時 代 作 家 た ち の 探 索 』 山 川 出 版 社 、

2006/1

7

「 物 語( ナ ラ テ ィ ブ )分 析 、特 に 語 り の 形 式 や 語 り 手 の 違 い と 種 類 な ど を 対 象 と す る 文 学 研 究 」( 川 口 喬 一 ・ 岡 本 靖 正 編 『 最 新 文 学 批 評 用 語 辞 典 』 研 究 社 、

1998/8、273

頁 ) で あ り 、 ナ ラ ト ロ ジ ー (

narratology) と も 言 う 。

8

ジ ェ ラ ー ル・ジ ュ ネ ッ ト 著 、花 輪 光・和 泉 涼 一 訳『 物 語 の デ ィ ス ク ー ル 方 法 論 の 試

み 』、 水 声 社 、

1985/9

15

(6)

~ 5 ~

9

ジ ュ ネ ッ ト 、 前 掲 書

27

29

10 E・M・ フ ォ ー ス タ ー は 、 ス ト ー リ ー を 「 時 間 的 順 序 に 配 列 さ れ た 諸 事 件 の 叙 述 」、

プ ロ ッ ト を「 因 果 関 係 」 に 重 点 が 置 か れ た 叙 述 、 と 定 義 し て お り (

E・M・ フ ォ ー ス タ

ー 『 小 説 と は 何 か 』 ダ ヴ ィ ッ ド 社 、

1969/1

、108 頁 )、 本 稿 も こ れ に な ら う 。

11

「 視 点 」は 普 通「 < 世 界 を 構 造 化 し て 見 る / 語 る 主 体 の 位 置 > と い う 意 味 」 ( 石 原 千 秋 ・ 木 股 知 史 ・ 小 森 陽 一 ・ 島 村 輝 ・ 高 橋 修 ・ 高 橋 世 織 、『 読 む た め の 理 論 』 世 織 書 房 、

1991/6、101~103

頁 ) で 使 わ れ る 。

12

ジ ュ ネ ッ ト 、 前 掲 書

217~221

頁 。 ジ ュ ネ ッ ト は の ち に 「 誰 が 見 る の か ? 」 と い う 問 い に 代 え て 、「 ど こ に 知 覚 の 焦 点 が あ る の か ? 」と い う 問 い を 発 す る 方 が 適 切 で あ る だ ろ う 、 と 述 べ て い る ( ジ ェ ラ ー ル ・ ジ ュ ネ ッ ト 、 和 泉 涼 一 ・ 青 柳 悦 子 訳 『 物 語 の 詩 学 続 ・ 物 語 の デ ィ ス ク ー ル 』 水 声 社 、

1985/11、68~69

頁 )。

13

バ ン ヴ ェ ニ ス ト は 、 「 人 称 、時 称 、場 所 、指 示 さ れ る 対 象 な ど 」の 指 示 詞 を 総 称 し て 、 指 示 子 と 呼 ん で い る 。 指 示 子 は 、 話

の 現 存 と い う 「 離 散 的 か つ 、 つ ね に 一 回 限 り で あ っ て 、 そ れ に よ っ て 話 し 手 が 当 該 言 語 を 言 と し て 現 働 化 す る 行 為 」 を 指 向 す る (

E.バ

ン ヴ ェ ニ ス ト「 代 名 詞 の 性 質 」 『 一 般 言 語 学 の 諸 問 題 』み す ず 書 房 、1983/4 、234~

241

頁 )。『 一 般 言 語 学 の 諸 問 題 』 で は デ ィ ス ク ー ル は 「 話

」、 イ ス ト ワ ー ル は 「 歴 史 」 と 訳 さ れ て い る が 、 そ れ に よ れ ば 「 話

」 と は 、「 そ の も っ と も 広 い 意 味 に お い て 、 す な わ ち 話 し 手 と 聞 き 手 と を 想 定 し 、 し か も 前 者 に お い て な ん ら か の 仕 方 で 後 者 に 影 響 を 与 え よ う と す る 行 為 」 で あ り 、「 歴 史 」 の 言 表 行 為 は 「 過 去 の 出 来 事 を 物 語 る 」 も の で あ る

( 特 に

219~226

頁 )。

14

話 法 の 項 を 辞 書 で 引 く と 、 「 述 べ ら れ た り 、書 か れ た り し た 内 容 を 伝 達 す る 仕 方 」 ( 新 村 出 編 『 広 辞 苑 』 第 六 版 、 岩 波 書 店 、

2008/1、3036

頁 ) と あ り 、 広 義 に は 伝 達 や 引 用 の 表 現 を 含 む 。 狭 義 に 「 発 話 者 の 言 葉 の 中 に 、 他 者 の 言 葉 を 取 り 込 ん で 表 す 方 法 、 も し く は そ の 言 語 手 段 」 を 指 す こ と も あ る ( 伊 原 紀 子 『 翻 訳 と 話 法 語 り の 声 を 聞 く 』 松 籟 社 、

2011/5

)。

15

小 森 陽 一 は イ ン ド・ヨ ー ロ ッ パ 語 圏 と 対 比 し て 、日 本 語 に は「『 人 称 』 『 時 制 』 『 話 法 』 の ど れ を と っ て も 、 そ れ ほ ど 明 確 な 文 法 的 規 制 を も っ て い な い 」 と い う 特 質 が あ り 、 そ れ に よ っ て 語 り の 水 準 の 移 行 が 「 文 脈 の 目 障 り な 断 絶 と 転 換 を 明 示 」 し な い こ と を 指 摘 し て い る (『 文 体 と し て の 物 語 ・ 増 補 版 』 青 弓 社 、

2012/11、294

頁 )。 ま た 山 岡 實 は 『「 語 り 」 の 記 号 論 日 英 比 較 物 語 文 分 析 』( 松 柏 社 、

2001/1) に お い て 、「 西 欧 語 の

物 語 に お け る 自 由 間 接 話 法 は 、 三 人 称 代 名 詞 と 過 去 時 制 を 両 方 と も 用 い て 、 適 度 に 語 り 手 と 登 場 人 物 の 空 間 的 ・ 時 間 的 距 離 を 調 節 し 、 客 観 性 を 保 ち つ つ 登 場 人 物 の 内 面 を 描 写 す る 」 の で あ っ て 、 語 り 手 が 「 登 場 人 物 と 融 合 し 易 」 い 日 本 語 の 物 語 で は 「 西 欧 流 の 自 由 間 接 話 法 は 不 可 能 」 だ と 結 論 付 け て い る (

146~147

頁 )。

16

中 里 見 敬『 中 国 小 説 の 物 語 論 的 研 究 』 ( 汲 古 書 院 、

1996/9

)お よ び「 中 国 語 の 自 由 間 接 話 法 に つ い て 」(『 東 ア ジ ア 文 化 交 渉 研 究 』 別 冊

7

号 、 関 西 大 学 文 化 交 渉 学 教 育 研 究 拠 点 、

2011/3)、 ま た 橋 本 陽 介 「 高 行 健 の 『 靈 山 』 に お け る 語 る 聲 の 流 動 と 「 言 葉 の 流

れ 」」(『 日 本 中 國 學 會 報 』 第

60

集 、 日 本 中 國 學 會 、

2008/10) 等 を 参 照 。

17

顧 那「 自 由 直 接 話 法 と 自 由 間 接 話 法 に お け る 語 り 手 の 視 点 」 (『 言 葉 と 文 化 』第

6

号 、 名 古 屋 大 学 大 学 院 国 際 言 語 文 化 研 究 科 日 本 言 語 文 化 専 攻 、2005/3 )、張 群 舟「 日 語 人 称 的 特 点 及 其 潜 在 形 式 」(『 日 語 学 習 与 研 究 』 日 語 学 習 与 研 究 雑 誌 社 、

1992

年 第

1

期 ) 等 を 参 照 。

18

中 川 ゆ き こ 「 自 由 間 接 話 法 の 問 題 点 」『 神 戸 大 学 教 育 学 部 研 究 集 録 』 第

70

集 、 神 戸 大 学 教 育 学 部 、

1983/2。

19

中 里 見 敬 、 前 掲 「 中 国 語 の 自 由 間 接 話 法 に つ い て 」 参 照 。

20

橋 本 陽 介 「『 物 語 世 界 の 客 体 化 』 か ら み る 自 由 間 接 話 法 の 言 語 間 比 較 」『 藝 文 研 究 』

96

号 、 慶 應 義 塾 大 学 藝 文 学 会 、

2009/6

21

山 岡 實 は 、 英 語 の 三 人 称 物 語 を 対 象 と し て 、 語 り 手 の 介 入 度 を 「 三 人 称 代 名 詞 と 過

(7)

~ 6 ~

去 時 制 、 そ れ ぞ れ の 言 語 的 特 徴 の 有 無 」 に よ っ て 数 値 化 す る 試 み を 行 っ て い る 。「 語 り 手 の 介 入 度 の 定 量 化 と 表 現 形 式 の 連 続 性 ― 三 人 称 物 語 の 場 合 ― 」(『 大 阪 府 立 大 学 紀 要 人 文・社 会 科 学 』39 号 、1991/3 )お よ び 前 掲『「 語 り 」の 記 号 論 日 英 比 較 物 語 文 分 析 』 参 照 。

22

橋 本 陽 介 、 前 掲 「 高 行 健 の 『 靈 山 』 に お け る 語 る 聲 の 流 動 と 「 言 葉 の 流 れ 」」。

(8)

~ 7 ~

1

章 馬 原

馬 原 は

1984

年 の 「 拉 薩 河 女 神 ( ラ サ 川 の 女 神 )」

23

を 始 め と し て 、「 先 鋒 文 学 」 の 開 拓 者 と し て 評 価 さ れ る 人 物 で あ り 、 そ の 方 法 は 他 の 多 く の 作 家 と 作 品 に 影 響 を 与 え た と 言 え る 。 そ の 随 筆 や 小 説 中 で の 自 己 言 及 か ら し て 、 馬 原 自 身 が 自 覚 的 に 物 語 る 方 法 に つ い て の 実 験 を 行 っ た こ と は 間 違 い な い と 考 え ら れ る 。 そ の 語 り に お け る 実 験 的 手 法 は 、 物 語 言 説 の 時 間 と 物 語 内 容 の 時 間 の 錯 綜 に 関 す る 手 法 と 、 語 り 手 の 人 称 変 化 に 関 す る 手 法 の

2

つ が 中 心 で あ る 。

1.1 物 語 内 容 の 時 間 と 物 語 言 説 の 時 間 の 錯 綜

物 語 言 説 の 時 間 は 現 実 の 時 間 の よ う に 、 直 線 的 に 、 ほ ぼ 等 し い 速 度 で 進 行 す る 。 物 語 内 容 の 時 間 が そ れ と 錯 綜 す る と い う こ と は 、 物 語 内 容 の 時 間 が 現 実 の 計 測 可 能 な 時 間 と は 異 な る 規 則 で 進 行 す る と い う こ と で あ る 。 馬 原 の 小 説 で は 、 特 に 直 線 的 進 行 に 逆 ら う 叙 述 が 多 く 見 ら れ る 。そ の 中 で も 書 か れ て い る 内 容 に よ っ て 前 後 関 係 を 推 察 し 、 直 線 的 時 間 進 行 の 中 に 配 置 し な お す こ と が で き る 場 合 と 、 そ れ が で き な い 場 合 と が あ る 。

直 線 的 時 間 進 行 の 中 に 配 置 し な お す こ と が で き る 場 合 は 、 よ り 多 く は 回 想 の 形 を と り 、 以 前 に 起 き た こ と を 後 に な っ て 述 べ る と い う こ と が あ る 。 こ れ を 物 語 内 容 の 時 間 に 関 す る 技 法 の ① と す る 。そ の 技 法 が 特 に 印 象 的 な 働 き を し て い る の は「 錯 誤 」

24

で あ る 。

こ の 作 品 は 「

10

数 年 前 」 の あ る 夜 の 出 来 事 を 「 私 」 が 回 想 し つ つ 「 小 説 」 と し て 叙 述 す る と い う 体 裁 を と っ て い る 。 そ の 出 来 事 と は

2

つ あ り 、 一 つ は

2

人 の 女 性 の 男 児 出 産 で 、 子 供 を 生 ん だ う ち の

1

人 は 語 り 手 の 幼 馴 染 の 江 梅 で あ る 。 も う 一 つ の 出 来 事 は 「 私 」 の 軍 帽 の 紛 失 で あ っ た 。 軍 帽 は 当 時 極 め て 価 値 が 高 く 、 奪 い 合 い で 殺 人 が 生 じ る こ と も あ っ た と い う 。 第

1

節 で は 、

2

つ の 事 件 は 事 実 と し て 提 起 さ れ 、「 そ の 尋 常 で な い 夜 」 に 何 が あ っ た か は 、 そ の 後 詳 し く 描 写 さ れ て い く 。

語 り 手 は 第

1

節 の 第

2

段 落 で 次 の よ う に 自 己 言 及 す る 。

私 は 本 当 に 過 去 を 振 り 返 っ て 書 く 方 法 は 用 い た く な い 、ど う し て 私 は 私 の 小 説 の 始 ま り に ま ず 一 言 言 わ ね ば な ら な い の だ ― ― そ の 時 と ?

25

し か し 実 際 は 第

1

段 落 で す で に 、 事 件 か ら 「

10

数 年 が 過 ぎ た 」 と 語 っ て い る の で あ

り 、 大 部 分 が 振 り 返 っ て 書 く 方 法 で 描 写 さ れ て い る と 言 え る 。 ま た 第

2

段 落 で は

2

の 男 児 が 生 き て い れ ば 「

17

歳 だ ろ う 」 と 、 経 過 し た 年 数 を よ り 明 確 に 記 述 し て い る 。

事 件 の 起 き た 年 は 「 お そ ら く

70

年 か 、 も し か し た ら

69

年 か も し れ な い が は っ き り 覚

え て い な い 」、 当 時 の 自 分 の 年 齢 は 「 た っ た の

19

歳 」 と し て お り 、 事 件 の 発 生 し た 時

点 と 現 在 の 時 点 は か な り 明 ら か に さ れ て い る 。

(9)

~ 8 ~

9

節 で 、 語 り 手 は 当 時 の 仲 間 の 黒 棗 と 再 会 す る 。 そ の 状 況 は 次 の よ う に 描 写 さ れ て い る 。 引 用 部 分 で 「 彼 」 と あ る の は 黒 棗 を 指 す 。

そ れ は 少 し 前 に 彼 が 生 き た 鶏 を 売 り に 市 内 に 来 て 、私 に 出 く わ す と ど う し て も 私 を 引 っ 張 っ て ビ ー ル を 飲 み に 行 き た が っ た の で あ り 、飲 ん で ほ ろ 酔 い に な る と 彼 は 江 梅 の こ と を 語 り 始 め た 、

26

こ の 後 、 語 り 手 は 黒 棗 か ら 江 梅 が 死 ん だ 際 の 様 子 と 、 江 梅 が 語 り 手 を 慕 っ て い た こ と 、 江 梅 の 男 児 の 父 親 は 田 会 計 で あ っ た こ と を 聞 か さ れ る 。 語 り 手 が 推 測 し て い た 江 梅 の 相 手 は 事 件 後 姿 を 消 し た 趙 老 屁 だ っ た が 、 そ れ は 間 違 い だ っ た 。 そ し て そ の こ と を 語 り 手 が 知 っ た の は 、「 少 し 前 」 な の で あ る 。

10

節 の 第

1

段 落 は 次 の よ う に 始 ま る 。以 下 、引 用 部 分 の 改 行 は / 、空 行 が あ る 場 合 に は / / で 表 す 。

こ の 時 に 二 狗 が 死 ん だ と き の 情 景 が や っ と 蛇 の よ う に 再 び 私 の 心 に 這 い 戻 っ て き た 。 (

1

文 略 )/ こ の 時 に な っ て 初 め て 私 は 全 て 間 違 っ て い た と 知 っ た 。

27

語 り 手 は こ の 後 、 死 に 際 の 二 狗 と の 会 話 を 引 用 す る 。 第

5

節 に 二 狗 が 死 ん だ の は

23

歳 、 事 件 の 時 に は

18

歳 だ っ た と あ る の で 、 二 狗 の 死 は 事 件 か ら

5

年 後 (

75

年 ご ろ ) と 考 え ら れ る 。つ ま り 第

10

節 で 引 用 さ れ る 会 話 は 、第

9

節 で 引 用 さ れ る 黒 棗 と の 会 話

( 事 件 か ら

10

数 年 後 を 現 在 と し た 語 り の 「 少 し 前 」) よ り も 、 数 年 前 の 出 来 事 と い う こ と に な る 。

5

節 で 語 り 手 「 私 」 は 、 事 件 の 夜 に 軍 帽 を 盗 ん だ 犯 人 が 二 狗 だ と 思 い 込 み 、 股 を 蹴 り 上 げ て「 子 供 を 生 ま せ る 能 力 」を 失 わ せ て い た 。そ れ に つ い て 第

10

節 で 死 に 際 の 二 狗 は 、 軍 帽 は そ も そ も 語 り 手 が 置 き 忘 れ た も の で あ り 、 彼 は そ れ を 「 私 」 に 届 け よ う と し て い た の だ と 言 う の で あ る 。 趙 老 屁 が 軍 帽 を 拾 い 、 二 狗 に 渡 し て 「 私 」 に 届 け る よ う 言 っ た の だ 、 と 。

9

節 の 会 話 で は 江 梅 の 相 手 が 明 ら か に な り 、 語 り 手 の 推 測 が 事 実 に 反 し て 「 間 違 っ て い た 」と 分 か っ た 。さ ら に 第

10

節 の 会 話 で は 、軍 帽 を 盗 ん だ 犯 人 が 二 狗 で は な か っ た こ と が 明 ら か に な り 、 し か も 事 実 に 反 す る 推 測 に 積 極 的 な 行 動 が 伴 っ て い た こ と に な る 。 単 に 語 り 手 の 認 識 だ け で な く そ れ に 基 づ く 行 為 も ま た 間 違 っ て い た 、 つ ま り そ う す べ き で は な い こ と を し た 、 と い う 意 味 が 「 全 て 間 違 っ て い た 」 と い う こ と ば に 含 ま れ る と 考 え ら れ る 。

最 後 の 第

11

節 は 次 の

1

文 で あ る 。 引 用 部 分 で 「 彼 」 と あ る の は 趙 老 屁 を 指 す 。

私 は 趙 老 屁 が あ の 夜 き っ と 江 梅 が 子 供 を 産 ん だ と 聞 い た た め に 彼 の 後 家 さ ん

で あ る 張 蘭 に 思 い 至 っ た の だ と 思 う が 、張 蘭 が 死 ん で 彼 は ま た ど こ へ 行 っ た の だ

(10)

~ 9 ~

ろ う か ?

28

こ の 文 は 「 あ の 夜 」 の 趙 老 屁 の 存 在 と そ の 役 割 を 再 度 強 調 す る 働 き を す る 。

語 り 手 は 語 っ て い る 現 在 の 時 点 か ら 、 事 件 の 夜 、 黒 棗 と の 再 会 、 二 狗 と の 死 別 と い う

3

つ の 時 点 を 主 に 回 想 し て い る が 、回 想 の 順 序 を 入 れ 替 え る こ と で

2

つ の「 間 違 い 」 に つ い て 叙 述 す る 順 序 を 入 れ 替 え て い る 。2 つ の「 間 違 い 」は 間 接 的 に は 関 係 し て い る が 、 直 接 の 因 果 関 係 は な い の で 、 ど ち ら の 解 明 を 先 に し て も 物 語 展 開 上 大 き な 矛 盾 は 起 き な い 。 し か し 、 二 狗 と の 死 別 を 最 後 に 語 る こ と に よ っ て 、 語 り 手 は 二 狗 と の 死 別 と そ の 際 の 会 話 に よ り 重 要 な 位 置 を 与 え て い る と 言 え る 。 こ れ に よ っ て 、 推 理 小 説 の よ う に 単 に 隠 さ れ た 事 実 や 真 実 の 解 明 を 後 回 し に す る だ け で な く 、 語 り 手 の 現 在 の 考 え 、 過 去 の 自 分 に 対 す る 批 評 的 な 立 場 が 、 暗 示 さ れ る 構 造 に な っ て い る と い え よ う 。

同 じ よ う に 叙 述 の 順 序 を 入 れ 替 え る 方 法 だ が 、特 に 回 想 と し て 示 さ な い 場 合 も あ る 。 章 や 段 落 が 切 り 替 わ る 際 に 、 物 語 内 容 の 時 間 も 前 と の つ な が り を 断 ち 切 っ て 、 唐 突 に 転 換 す る 方 法 で あ る 。 こ れ を 物 語 内 容 の 時 間 に 関 す る 技 法 の ② と す る 。 こ の 方 法 は 、

① と 同 じ よ う に 隠 さ れ た 事 実 や 真 実 が 設 定 さ れ て い る こ と も あ る が 、 そ れ 以 外 の 働 き を し て い る 作 品 と し て 、「 窓 口 的 孤 独 ( 窓 辺 の 孤 独 )」

29

が 特 徴 的 で あ る 。

「 窓 口 的 孤 独 」 で は 、 第

1

章 の 最 後 の

1

文 と 第

6

章 の 最 初 の

1

文 が 呼 応 し て い る の で

2

文 を 並 べ て 引 用 す る 。

出 か け る 前 、 彼 女 は 電 気 メ ッ キ の 果 物 ナ イ フ を 身 に 忍 ば せ た い と 思 い 、 少 し 探 し た が な ん と 見 つ か ら な か っ た 。

30

果 物 ナ イ フ を 忍 ば せ て 夜 勤 に 向 か い た い と 思 っ た 徐 小 燕 だ が つ い に 家 の 中 で は そ の 電 気 メ ッ キ の 果 物 ナ イ フ を 見 つ け ら れ ず に 出 か け た 。

31

1

章 の 「 彼 女 」 が 徐 小 燕 と い う 人 物 で あ る こ と は 第

2

章 で も 明 ら か に さ れ て い る の で 、 第

1

章 と 第

6

章 の 物 語 内 容 の 時 間 が 連 続 し て い る こ と は 間 違 い な い 。

2

章 で は 、 徐 小 燕 の 幼 馴 染 の 張 名 名 が 働 く 病 院 に 、 連 続 通 り 魔 事 件 の 被 害 者 が 運 ば れ る こ と か ら そ の 概 要 が 提 示 さ れ る 。 第

6

章 で 、 林 森 は 連 続 通 り 魔 事 件 の 犯 人 が 自 分 だ と 述 べ て お り 、 そ の 内 容 か ら 第

2

章 は 第

1

章 お よ び 第

6

章 よ り も 前 に 位 置 す る こ と が 分 か る 。 こ の よ う に し て 時 系 列 順 に 出 来 事 を 並 べ 替 え る と 、 次 の よ う に な る 。【 】 の 中 は そ れ が 語 ら れ る 章 の 番 号 で あ る 。

4】16

年 前 の 夏 休 み に 、11 歳 の 徐 小 燕 、 張 名 名 、 林 森 は 医 学 書 を 読 ん で 、 遊 戯 と し て 性 的 な 行 為 を 行 う 。

3】4

年 前 、 徐 小 燕 が そ れ と 知 ら ず に 林 森 の 自 宅 の 向 か い に 引 っ 越 す 。

5】1

年 半 前 の 冬 、 林 森 が

6

人 の 女 の お 下 げ 髪 を 切 る と い う 通 り 魔 行 為 を 行 う 。

2】 今 週 、 鋭 利 な 鉄 器 で 女 性 を 襲 う 16

件 の 通 り 魔 事 件 が 起 き る 。

(11)

~ 10 ~

1、6】 夜 、 林 森 が 徐 小 燕 を 路 地 裏 で 待 ち 伏 せ し て 、 自 分 は 9

件 の 通 り 魔 事 件 の 犯 人 で あ り 「 女 が 憎 い 」 と 話 す 。

7】 夜 勤 を 終 え た 徐 小 燕 が 張 名 名 に 林 森 の 話 を す る 。

8】2

人 が 林 森 の 家 に 駆 け つ け る と 、 す で に 彼 は 死 ん で い て 警 察 が き て い る 。

4

日 後 の 新 聞 で は 通 り 魔 事 件 の 犯 人 が 捕 ま っ て

17

件 中

8

件 の 犯 行 を 認 め て い る 、と 報 道 さ れ る 。

こ れ 以 外 に も 林 森 の 母 親 の 離 婚 な ど 生 活 の 略 歴 も 語 ら れ て は い る が 、 直 接

3

人 に 関 わ る 事 件 は 上 記 の 通 り で あ る 。

こ う し て み る と 第

6

章 、 第

7

章 、 第

8

章 だ け が 直 線 的 な 時 間 に 沿 っ て 叙 述 が 進 ん で い る と 分 か る 。そ の 最 後 に な っ て 通 り 魔 犯 が

2

人 い た と い う 事 実 が 明 ら か に さ れ る が 、

「 錯 誤 」 と は 異 な り 時 間 の 流 れ に 沿 っ た 展 開 で あ り 、 特 に 重 要 性 を 与 え ら れ て は い な い 。 ま た 第

2

章 と 第

6

章 で も 事 件 の 件 数 に よ っ て 犯 人 が 複 数 存 在 す る こ と は 充 分 暗 示 さ れ て い る の で 、 読 者 に は ほ と ん ど 驚 き を 与 え な い だ ろ う 。

1

章 で 「 そ の 夜 」 の 始 ま り に 焦 点 を 合 わ せ る こ と で 、 第

2

章 で 今 週 の 話 、 さ ら に 第

3

章 か ら 第

5

章 で は よ り 遠 い 過 去 の 話 と い う よ う に 、 段 階 的 に 焦 点 と な る 時 間 の 幅 が 広 げ ら れ て い る こ と が 分 か る 。 こ れ に よ っ て 、 第

2

章 か ら 第

5

章 の 叙 述 は い わ ば 背 景 と し て 遠 ざ け ら れ 、 物 語 全 体 に お け る 第

6

章 の 比 重 が 相 対 的 に 大 き く な る 。 第

1

章 が 第

6

章 の 導 入 で あ る こ と は 、 林 森 と い う 人 物 の 存 在 を 強 調 し 、 こ の 作 品 を 林 森 の 物 語 と し て 読 む よ う 補 助 的 な 働 き を し て い る と 言 え る 。

5

章 の

1

行 目 で 語 り 手 が 「 こ の 物 語 の 始 ま る 場 所 に 戻 る 前 に 、 ま ず 林 森 に つ い て ち ょ っ と 語 ろ う 」

32

と 書 い て い る 通 り 、「 こ の 物 語 」 の 中 心 は 第

6

章 で の 徐 小 燕 と 林 森 の

2

人 の 対 話 な の で あ る 。

徐 小 燕 と 林 森 の 対 話 と 言 っ て も 、 こ の

2

人 の 位 置 は 対 等 で は な い 。 内 容 上 は 第

6

章 の 導 入 で あ る 第

1

章 で 、 徐 小 燕 は 「 彼 女 」 と い う 代 名 詞 で し か 呼 ば れ な い 。 ま た 徐 小 燕 は

4

年 前 か ら 林 森 の 隣 人 で あ る が 、 そ れ は 林 森 の 側 か ら し か 認 識 さ れ て い な い 。 し か も 林 森 の 部 屋 の 方 が 高 い 位 置 に あ る と い う こ と か ら 、 林 森 は 一 方 的 に 徐 小 燕 の 部 屋 を 覗 き 見 し て い る 。 こ う し た こ と か ら 、 徐 小 燕 は 見 ら れ る 客 体 で あ っ て 、「 こ の 物 語 」 の 主 体 で は な い と 言 え る 。 語 り 手 は 直 接 的 な 表 現 で 林 森 を 特 権 化 す る こ と は な い け れ ど も 、 叙 述 の 順 序 が そ の 働 き を 果 し て い る の で あ る 。

以 上 の よ う に 、 直 線 的 進 行 に 組 み 替 え 可 能 な 叙 述 は 、 直 線 的 進 行 の 叙 述 を 想 定 し そ れ と 比 較 す る こ と で 、 構 造 的 な 物 語 内 容 の 重 点 を 考 え る こ と が で き る 。 し か し そ う し た 想 定 も 比 較 も で き な い 物 語 内 容 を 含 む 作 品 や 、 物 語 内 容 の 時 間 の 切 り 替 わ り が 複 数 回 行 わ れ る た め に 重 点 自 体 が ず ら さ れ て い く 作 品 が あ る 。

直 線 的 時 間 進 行 の 中 に 配 置 し な お す こ と が で き な い 内 容 を 含 む 作 品 と し て 、 最 も 早 く 発 表 さ れ た の は 「 拉 薩 河 女 神 」 で あ る 。 こ の 技 法 を 物 語 内 容 の 時 間 に 関 す る 技 法 の

③ と す る 。 陳 暁 明 は 「 拉 薩 河 女 神 」 は 「 当 代 文 学 の 中 で 初 め て “ 叙 述 意 識 ” を 確 定 し 、

“ 仮 定 性 ” の 原 則 を 認 め た 」

33

と 言 っ て い る が 、 確 か に 馬 原 の 最 初 の 代 表 作 で あ る 。

(12)

~ 11 ~

こ の 作 品 は

1

か ら

7

ま で の

7

つ の 節 で 構 成 さ れ る 。

1

節 は 語 り 手 が 「 読 者 」 に 向 か っ て 、 こ れ か ら 語 る 物 語 に つ い て の い わ ば 前 置 き を 行 う 内 容 に な っ て い る 。 語 り 手 は そ こ で 、 ラ サ の 海 抜 や 経 度 な ど 地 理 的 条 件 を 説 明 し た 後 で 、 登 場 人 物 を 記 号 で 表 現 す る こ と を 宣 言 す る 。 ま た 第

1

節 最 終 段 落 は 次 の よ う に 語 ら れ る 。

物 語 を 生 き 生 き と 語 る た め に 、私 は ち ょ っ と し た 趣 向 を 用 い 、時 間 の 流 れ に 合 わ せ ず に 叙 述 し た い 。 そ う い う こ と に し よ う 。

34

2

節 以 降 、登 場 人 物 は 宣 言 通 り

1

か ら

13

ま で の ア ラ ビ ア 数 字 で 表 さ れ る 。た だ し 例 外 も あ る 。 そ れ は 第

5

節 で 、 こ こ は 寧 扎 と い う 狩 人 の 虎 狩 り の 物 語 と な っ て い る 。 第

5

節 以 外 の 部 分 は

13

人 の 男 女 が あ る 夏 の 日 曜 日 、ラ サ 川 の 川 辺 に 行 楽 に や っ て き た 様 子 を 描 写 し て い る 。 物 語 内 容 の 時 間 は 一 貫 し た 流 れ を 持 た ず に 叙 述 さ れ て い て 、 よ り 正 確 に 言 え ば 、 物 語 内 容 の 時 間 は 断 片 的 で 重 層 的 で あ る 。

前 後 関 係 を 示 す 表 現 が 全 く な い わ け で は な い 。 た と え ば 第

4

節 に は 、「

9

10

は 約 束 が あ っ て 、 物 を 食 べ 終 わ る と み ん な に 向 か っ て 別 れ の 挨 拶 を し た 。」

35

と あ る 。 そ し て 第

6

節 と 第

7

節 で は 、9 と

10

が 水 泳 を し 、砂 で 女 性 の 像 を 形 作 る 様 子 が 語 ら れ て い る

36

。こ の こ と か ら 、第

6

節 と 第

7

節 は 、第

4

節 の 物 語 内 容 の 時 間 よ り も 前 に 起 き た 出 来 事 で あ る と 考 え ら れ る 。 そ う で な け れ ば

2

人 が ま た 戻 っ て き た こ と に な る が 、 そ の よ う な こ と は 語 ら れ て い な い 。 し か し 、 こ れ は 節 の 中 の 物 語 内 容 が 一 つ の 時 間 軸 に 沿 っ て い る と い う 前 提 に よ る 話 で あ る 。 節 の 中 の 一 つ 一 つ の 出 来 事 が 発 生 し た 時 間 に 沿 っ て 叙 述 さ れ て い る と は 限 ら な い の で 、 実 の と こ ろ 、 節 ご と の 順 序 を 考 え た と こ ろ で 出 来 事 全 て の 順 序 が 分 か り 、 論 理 的 に 確 定 さ れ る わ け で は な い の で あ る 。

ま た 第

5

節 は 、 第

4

節 の 最 後 の

1

文 に 「

2

は 腹 い っ ぱ い に 物 語 を 持 っ て い た : 次 は 彼 の 一 人 芝 居 だ 。」

37

と あ る こ と か ら 、 第

5

節 の 物 語 全 体 を 登 場 人 物 の

2

が ラ サ 川 の 川 辺 で 語 っ た 物 語 と 考 え ら れ る が 、2 が そ れ を い つ 語 っ た の か は 分 か ら な い 。出 来 事 が 並 べ ら れ て い る 順 序 は 時 間 に 沿 っ て い る と は 限 ら な い の だ か ら 、

2

の 語 る 物 語 が ど の 時 点 で 語 ら れ た か を 確 実 に 位 置 付 け る こ と は で き な い 。

こ う し て 物 語 内 容 の 時 間 を 断 片 的 に 構 成 す る こ と で 、 叙 述 上 そ れ ぞ れ の 出 来 事 の 間 に 因 果 関 係 が 存 在 し な く な り 、 物 語 全 体 に お け る 出 来 事 の 重 要 性 は そ れ ぞ れ 均 等 に 位 置 付 け ら れ て い る 。言 い 換 え れ ば こ の 物 語 は 一 貫 し た 大 き な ス ト ー リ ー を 持 た な い し 、 い わ ゆ る 主 人 公 も 存 在 し な い と い う こ と だ 。 登 場 人 物 を 全 て 記 号 化 し た こ と も 、 そ の 働 き を 補 強 し て い る 。

こ の 技 法 は 、 多 く の 場 合 語 り 手 の 虚 構 性 へ の 言 及 が 同 時 に 行 わ れ る 。 こ れ は 人 々 が 生 き て い る 現 実 の 時 間 の 流 れ と 大 き く 異 な る た め に 、 虚 構 性 を 強 調 す る 機 能 も よ り 大 き く な る た め で あ ろ う 。「 拉 薩 河 女 神 」 の よ う に 、 語 り 手 自 身 が 自 分 の 物 語 に つ い て 言 及 す る こ と が 多 い 。

以 前 に 起 き た こ と を 後 に な っ て 述 べ る 技 法 は 、「 錯 誤 」の よ う に 何 ら か の 隠 さ れ た 事

(13)

~ 12 ~

実 や 真 実 が 設 定 さ れ て い る 場 合 に 効 果 的 に 機 能 し て い る と 言 え る 。 し か し 「 窓 口 的 孤 独 」 や 「 拉 薩 河 女 神 」 は そ う し た 構 造 に な っ て い な い 。 後 に な っ て 述 べ ら れ て い る の は 、 新 た な “ 事 実 ” や “ 真 実 ” を 明 ら か に す る 叙 述 で は な く て 、 そ れ が ど の よ う に 起 き た か と い う 出 来 事 の 経 過 の 叙 述 で あ る 。 物 語 内 容 の 時 間 の 錯 綜 は 情 報 の 開 示 を 先 送 り に す る と い う 機 能 は 果 し て い る も の の 、 そ の 情 報 は あ く ま で 語 り 手 に と っ て 虚 構 で あ る 出 来 事 に つ い て の 情 報 な の で あ っ て 、 物 語 に お い て よ り 重 大 な 位 置 付 け を さ れ る よ う な “ 真 実 ” で は な い 。

こ う し た 物 語 内 容 の 時 間 が 錯 綜 す る 作 品 で は 、 そ の 時 間 の 変 化 と 同 時 に 語 り 手 が 交 代 し 、 人 称 が 変 化 す る こ と が 多 い 。 こ の こ と は 、 誰 が 誰 に 向 け て 語 っ て い る か と い う 状 況 を 読 み 取 り に く く す る 。 先 行 研 究 に お い て ス ト ー リ ー を 抑 圧 し て い る と 言 わ れ る の も

38

、往 々 に し て こ の よ う な 複 合 的 な 要 素 を 持 つ 複 雑 な 作 品 で あ る 。物 語 内 容 の 時 間 に つ い て は 以 上 と し 、 次 に 語 り 手 の 人 称 に つ い て 分 析 を 進 め る 。

1.2 語 り 手 と 人 称

人 称 は 、 語 り 手 の 物 語 全 体 に 対 す る 立 ち 位 置 を 明 確 に す る 上 で 重 要 な 尺 度 の 一 つ で あ る 。語 り 手 が 語 る 方 法 と し て 、よ り 実 験 性 が 少 な く 、一 般 的 と 考 え ら れ る タ イ プ は

2

つ あ る 。 一 つ は “ 語 り 手 は 姿 を 現 さ ず 、 全 て の 人 物 に つ い て 三 人 称 で 語 る ” 方 法 で あ る 。こ れ を 人 称 に 関 す る 技 法 の ① と す る 。こ の タ イ プ の 語 り 手 は「 全 知 の 語 り 手 」

39

と も 言 わ れ る 。 馬 原 の 作 品 の 中 で は 特 に 初 期 の 作 品 が こ の 方 法 で 語 ら れ て お り 、 最 初 に 発 表 さ れ た 「 海 辺 也 是 一 個 世 界 ( 海 辺 も ま た 一 つ の 世 界 )」

40

も そ う で あ る 。 こ の 作 品 に は 陸 高 と 姚 亮 と い う 人 物 が 登 場 す る 。 彼 ら は 後 の 実 験 性 の 高 い 作 品 で も 繰 り 返 し 登 場 す る 人 物 で 、 馬 原 を 論 じ る 際 に キ ー ワ ー ド と し て よ く 取 り 上 げ ら れ る 名 前 だ が 、 こ の 作 品 で は 特 別 な 手 法 は ほ と ん ど 使 わ れ て い な い 。 物 語 内 容 の 時 間 が や や 前 後 す る も の の 、 そ れ ほ ど 複 雑 で は な い 。

海 辺 の 農 村 に 下 放 し た 陸 高 と 姚 亮 は 、 陸 高 の 飼 い 犬 で あ る 陸 二 が 紅 衛 兵 の 飼 い 犬 に 負 け た こ と か ら 、 相 手 の 犬 を 殺 し 、 陸 二 も 殺 す 。 物 語 は 、 そ の 犬 を 殺 す 夜 の 話 か ら 始 ま っ て 過 去 の 描 写 を 挟 み な が ら 進 み 、 最 終 章 で 陸 高 は 農 場 に 残 り 、 姚 亮 は 学 校 に 戻 っ た こ と が 語 ら れ る 。

陸 高 と 姚 亮 は ど ち ら も 三 人 称 で 語 ら れ る の だ が 、描 写 の 質 に は 差 が あ る 。姚 亮 は「 喜 ん だ 」「 思 い 出 し た 」 と い う よ う な 内 面 描 写 が あ る が 、 陸 高 は 経 歴 や 行 動 な ど の 外 面 か ら の 描 写 し か さ れ な い 。 ま た 叙 述 の 上 で 、 明 ら か に 姚 亮 や 陸 高 が 知 ら な い よ う な 情 報 が 利 用 さ れ る こ と は な い 。 こ の 物 語 の 語 り 手 は 、 自 ら が 語 る 方 法 に つ い て あ ま り 自 覚 的 で は な い と い え る だ ろ う 。

も う 一 つ が “ 一 人 称 の 語 り 手 が 、 他 の 登 場 人 物 に つ い て 三 人 称 で 語 る ” 方 法 で 、 語

り 手 も 物 語 世 界 に 登 場 す る と い う 点 で ① と 異 な る 。 こ れ を 人 称 に 関 す る 技 法 の ② と す

(14)

~ 13 ~

る 。 こ の 技 法 だ け を 用 い て い る 馬 原 の 作 品 は あ ま り 多 く な く 、そ の 中 で は 「 新 懺 悔 録 」

41

が 特 徴 的 で あ る 。

「 新 懺 悔 録 」は「 こ の 物 語 が 始 ま っ た と き 、私 は た っ た の

14

歳 だ っ た 。」

42

と い う 文 で 始 ま る 。

28

歳 に な っ た 青 年 が 、 同 級 生 の 時 鋒 に 再 会 し た こ と か ら

14

歳 の あ る 夜 を 回 想 す る 形 で 語 ら れ 、 空 行 に な っ て い る 部 分 で 場 面 が 転 換 す る 。 そ の 夜 の 出 来 事 の 概 要 は 、 演 芸 コ ン ク ー ル の 後 、 仲 間

4

人 で の 帰 り 道 で 別 の グ ル ー プ と け ん か に な り か け て 回 避 す る が 、 直 後 に

4

人 で 時 鋒 の 家 に 石 を 投 げ 込 ん で 、 帰 宅 し た 。 仲 間 の

1

人 が 捕 ま っ て 「 私 」 の 名 を 出 し た た め に 派 出 所 に 呼 ば れ 、 時 鋒 に も わ け を 聞 か れ る が 、「 ど う し て 」 そ ん な こ と を し た の か 説 明 で き な か っ た 、 と い う も の で あ る 。 一 部 、 物 語 内 容 の 時 間 が 前 後 し て お り 、 石 を 投 げ 込 ん だ 場 面 を 後 で 語 る 働 き を し て い る 。 そ し て 時 鋒 は 事 件 の あ っ た そ の 週 の う ち に 両 親 が 五 七 幹 部 学 校 に 行 く の に し た が っ て 農 村 へ 行 っ た の で 、

2

人 は

14

年 間 会 わ な か っ た 。

時 鋒 を 指 し て 「 彼 は 完 全 に 変 わ っ て し ま っ た 。」

43

と 語 り 手 が 叙 述 す る 文 が 途 中 で 一 度 挟 ま れ る 以 外 は 、

28

歳 の

2

人 に 関 す る 叙 述 は 最 初 と 最 後 に 位 置 す る 断 片 だ け で あ り 、 内 容 だ け で な く 形 の 上 か ら も 現 在 が 過 去 を 包 む 綺 麗 な 二 重 の 円 に な っ て い る 。

語 り 手 は 事 件 の 主 体 的 な 実 行 者 で あ る が 、自 分 が「 ど う し て 」、何 の た め に そ れ を し た の か 、 こ と ば に す る こ と が で き な い 。 こ の 「 ど う し て 」 と い う 疑 問 は 再 三 繰 り 返 さ れ る 。 時 鋒 は 「 私 」 に 尋 ね る 。

“ あ の 時 は 一 体 ど う し て だ っ た の か ? ”

44

14

歳 の 夜 に は 、 問 い 詰 め ら れ た 末 に 「 階 級 的 報 復 」

45

だ と も 言 っ た が 、 時 鋒 を 納 得 さ せ る こ と は で き な か っ た 。そ し て

28

歳 で 再 会 し た 際 の 別 れ 際 に も 、時 鋒 は 同 じ 問 い を 投 げ か け た

46

の だ っ た 。

「 新 懺 悔 録 」 の 末 尾 に は 詩 が 書 か れ て お り 、 そ の 中 に も 少 し 形 を 変 え て 「 ど う し て 」 と い う 表 現 が 現 れ る 。 結 末 の

2

行 を 次 に 引 用 す る 。

母 さ ん が 聞 い た 。ど う し て 裸 足 な の ? / 私 は は っ き り と 答 え た 。ど う し て も !

47

こ の 詩 か ら は 、語 り 手 が

14

年 経 っ た「 い ま 」で も そ の 答 を こ と ば に す る こ と が で き ず 、 今 後 も で き な い と い う 意 味 を 読 み 取 る こ と が で き る だ ろ う 。

こ の 語 り 手 は 語 る 方 法 に つ い て 、 か な り 自 覚 的 で あ る と 言 え よ う 。 だ か ら こ そ 、 こ こ で は 答 が な い こ と が 答 に な り え て い る の で あ る 。 語 り 手 か ら 時 鋒 の 側 に 視 点 を 移 す だ け で 、 こ の 物 語 は 成 立 し な く な る だ ろ う 。 こ の 物 語 は 「 ど う し て 」 と い う 疑 問 を 繰 り 返 す こ と で 、 主 体 的 な 加 害 者 で あ る 語 り 手 が ( 石 を 投 げ こ む と い う 明 ら か に 暴 力 的 で 危 険 な 行 為 の ) 理 由 を 自 分 自 身 に 対 し て も 説 明 で き な い 、 と い う 点 に 大 き な 比 重 が か け ら れ て い る か ら だ 。

① と ② に 比 べ る と 一 般 に 出 現 す る 頻 度 の 少 な い 方 法 が

2

つ あ り 、 一 つ は “ 一 人 称 の

(15)

~ 14 ~

語 り 手 が 、 読 者 に 向 か っ て 語 り か け る ” 方 法 で あ る 。 こ れ を 人 称 に 関 す る 技 法 の ③ と す る 。当 た り 前 だ が 語 っ て い る そ の 時 点 で 読 者 の 返 事 を 得 る こ と は で き な い の だ か ら 、 当 然 叙 述 自 体 は 擬 似 会 話 的 に 、 語 り 手 に よ っ て 想 像 さ れ る 応 答 を 進 め て い く こ と に な る 。 そ う で な け れ ば そ こ で 章 や 節 を 区 切 っ て 結 び を つ け る ほ か な い 。

こ の 方 法 は 先 に 述 べ た 通 り 、「 拉 薩 河 女 神 」 で 最 初 に 利 用 さ れ て い る 。「 拉 薩 河 女 神 」 は 語 り 手 の 人 称 に つ い て も 最 も 早 い 時 期 に 実 験 的 な 技 法 を 使 っ た 作 品 で あ る と 言 え る 。

1

節 の 第

2

段 落 で 語 り 手 は 、 「 読 者 は ま ず 数 種 類 の 簡 単 で 大 切 な 事 実 を 知 ら な け れ ば な ら な い 」 と 語 り 、 ラ サ と 北 京 の 経 度 と 時 差 、 ラ サ の 酸 素 濃 度 が 北 京 の ほ ぼ

60% に

相 当 す る こ と な ど を 説 明 す る

48

。「 読 者 」 を 主 語 に し て 語 る こ と で 、 語 り 手 は 「 読 者 」 を 客 体 化 し て い る 。第

3

段 落 で は「 私 た ち は こ の 日 が 夏 至 の 後 の

20

日 目 だ と 仮 定 す る 」

49

と 語 り 、語 り 手 は 一 人 称 複 数 形 の 主 語 の 中 に 想 像 上 の 読 者 を 取 り 込 ん で い る が 、す ぐ に 「 読 者 は こ れ に よ っ て こ れ が ラ サ 川 で 水 泳 し て 休 日 を 過 ご す 物 語 だ と 推 測 す る こ と が で き る 」

50

と 語 り 、 ま た 語 り 手 は 「 読 者 」 を 切 り 離 す の で あ る 。

「 読 者 」 と い う 客 体 に 向 か っ て 語 り か け る こ と と 「 私 た ち 」 を 主 語 と し て 物 語 る 行 為 に 言 及 す る こ と は 本 来 矛 盾 す る 意 識 で あ る 。そ れ が 可 能 な の は 、「 私 た ち 」の 共 通 性 が 自 明 の 区 分 と し て 語 り 手 に 認 識 さ れ て い る か ら で あ ろ う 。「 読 者 」と い う 呼 び か け 自 体 は 、 現 実 の 読 者 に 対 し て 「 作 者 」 の 存 在 を 印 象 付 け 、 物 語 の 虚 構 性 を 強 め る 働 き を す る だ ろ う 。

こ の 語 り 手 は 一 人 称 で 、 他 の 登 場 人 物 を 記 号 化 し た 三 人 称 で 語 っ て い く 。 語 り 手 は 何 度 か 「 我 々

13

人 」 と 言 っ て い る の で 、 あ く ま で

1

か ら

13

の う ち の 誰 か が 「 私 」 で も あ る と い う こ と に な る 。し か し

1

か ら

13

ま で の 人 物 全 て が 一 度 は 三 人 称 で 描 写 さ れ て い る の で 、 語 り 手 が 何 者 か は 最 後 ま で 読 ん で も 分 か ら な い 。 さ ら に 具 体 的 に は 、 た と え ば 第

4

節 で 「 私 」 は 川 を 泳 い で 渡 り た い と 思 い 、 次 の よ う に 語 る 。

も し

1

が 頑 と し て 私 を 引 き と め な か っ た ら 、 私 は と っ く に 英 雄 か 魚 や ス ッ ポ ン の 餌 に な っ て い た だ ろ う 。 私 は 誰 ?

20

世 紀 だ け の 流 行 語 。 私 は 誰 ?

51

語 り 手 は こ う し て 作 中 人 物 の

1

人 で も あ る こ と を 強 調 し な が ら 、 自 分 が ど の 人 物 か と い う こ と は 読 者 に 対 し て 隠 し て お り 、 ま た 隠 し て い る こ と を 強 調 し て も い る の で あ る 。

こ の 「 私 」 は い ま ま さ に 語 っ て い る 語 り 手 で も あ り 、 登 場 人 物 の

1

人 で も あ る 。 し か し 自 分 を 三 人 称 で 表 現 す る こ と で 、 登 場 人 物 と し て の 語 り 手 は 他 の 登 場 人 物 の 中 に ま ぎ れ こ ん だ 。 こ れ に よ り 、 語 り 手 の “ 語 り 手 と し て の 役 割 ” が よ り 強 調 さ れ て い る と 言 え よ う 。 さ ら に 、 物 語 世 界 内 の 「 私 」 が 語 り 手 か ら 客 体 化 さ れ 遠 ざ け ら れ る こ と で 、 語 り 手 の 存 在 の 方 が 相 対 的 に 比 重 を 増 す 。 こ の 作 品 に は 物 語 全 体 を 貫 く 中 心 的 な ス ト ー リ ー や い わ ゆ る 主 人 公 は 存 在 し な い が 、 作 品 の 中 心 に は 語 り 手 が い る 、 と 言 う こ と が で き る 。

も う 一 つ は “ 一 人 称 の 語 り 手 が 、 二 人 称 で 作 中 人 物 に 語 り か け る ” 方 法 で あ る 。 こ

(16)

~ 15 ~

れ を 人 称 に 関 す る 技 法 の ④ と す る 。 語 り 手 が 二 人 称 を 用 い た ら 、 通 常 は 読 者 な い し 一 般 的 な 人 々 を 曖 昧 に 指 す が 、 実 験 的 な 作 品 の 中 で は 作 中 人 物 に 語 り か け て い る こ と も あ る 。 こ こ で は 会 話 文 の 形 式 を と る 方 法 は 含 ま な い も の と す る 。

「 西 海 的 無 帆 船 ( 西 の 海 の 帆 の 無 い 船 )」

52

で は 、 こ の 方 法 が 多 用 さ れ て 非 常 に 複 雑 な 構 造 に な っ て い る 。

簡 単 な あ ら す じ は 次 の 通 り で あ る 。 画 家 で あ る 陸 高 、 姚 亮 、 小 白 の

3

人 が 、 美 術 展 の た め に ガ リ 地 区 に あ る グ ゲ 遺 跡 に 向 か う 途 中 で 車 が 川 に は ま っ て 動 け な く な っ て し ま う 。成 り 行 き で 近 く に い た チ ベ ッ ト 人 と 衝 突 し た り 交 流 し た り し な が ら 助 け を 待 ち 、 結 果 と し て は 全 員 無 事 に 目 的 の 都 市 に 着 く 。 目 的 地 で は 遺 跡 な ど を め ぐ る と と も に 、 病 院 に 盲 腸 炎 の 治 療 に も い く 。

つ ま り 大 き く 分 け て 河 畔 で の 生 活 と 、 ガ リ 地 区 で の 思 い 出 が 語 ら れ る の だ が 、 そ の 切 り 替 わ り が 一 度 で は な く 何 度 も 行 わ れ る の が 特 徴 的 で あ る 。 こ の 作 品 で は 物 語 内 容 の 時 間 に 関 す る ③ の 技 法 が 非 常 に 頻 繁 に 利 用 さ れ て い る 。 そ れ と 同 時 に 語 り 手 の 人 称 も 複 数 回 切 り 替 え ら れ る 。

1

節 の 語 り 手 は 、二 人 称 の 相 手 に 向 か っ て「 お 前 も … … し て 構 わ な い 」「 お 前 は …

… し て も 構 わ な い 」「 お 前 は ま た … … す る だ ろ う 」

53

な ど と 二 人 称 の 相 手 に 向 か っ て 語 り か け 、 「 お 前 」が 語 る 語 り 方 の 可 能 性 を 列 挙 す る 。こ の 語 り 手 は 一 度 も 自 己 言 及 せ ず 、 一 人 称 す ら 一 度 も 使 わ れ な い の で 、 何 者 な の か は 全 く 分 か ら な い 。 捨 て 置 か れ た 公 道 を 行 く こ と を「 お 前 が 一 生 懸 命 そ そ の か し た の だ 」

54

と も あ り 、語 り 手 は 一 貫 し て「 お 前 」 を 批 判 す る 語 調 で 語 っ て い る 。 第

1

節 の 最 後 の

1

文 を 次 に 引 用 す る 。

ど う し て お 前 は 人 に こ の 全 て が 本 当 だ と 信 じ る よ う 強 い る の か ?

55

2

節 の 語 り 手 は 一 転 し て 一 人 称 で 語 り 始 め る 。 そ の 最 初 の

1

文 を 次 に 引 用 す る 。 彼 が 何 と 言 お う と 、 私 は こ の 全 て が 本 当 だ と 強 調 し な け れ ば な ら な い 。

56

こ う し た 表 現 か ら 、 第

2

節 の 語 り 手 は 、 第

1

節 で 「 お 前 」 と 呼 ば れ た 人 物 で あ る と 考 え ら れ る 。 第

3

節 に な る と ま た 語 り 手 は 一 人 称 を 使 わ な く な る が 、 二 人 称 の 語 り か け も な く 、 全 て の 登 場 人 物 が 三 人 称 で 語 ら れ る 。 そ こ で 「 姚 亮 が こ の 道 を 行 く こ と を 主 張 し た 」

57

と い う 表 現 が あ る こ と か ら 、 第

1

節 の 「 お 前 」、 第

2

節 の 「 私 」 が ど ち ら も 姚 亮 と い う 名 の 登 場 人 物 で あ る と 考 え ら れ る 。

こ の よ う な 回 り く ど い 情 報 公 開 の 後 、 “ 姚 亮 に 向 か っ て「 お 前 」と 呼 び か け る 語 り 手 ”、

“ 姚 亮 と 考 え ら れ る 一 人 称 の 語 り 手 ”、“ 全 て の 登 場 人 物 を 三 人 称 で 語 る 姿 の 見 え な い 語 り 手 ” の

3

種 類 の 語 り 手 が 節 ご と に 交 代 し て 語 っ て い く 。

ま た 第

23

節 は そ の 物 語 内 容 の 世 界 に 属 さ な い 。姚 亮 を 名 乗 る 語 り 手 が「 読 者 」に 向

か っ て 、「 馬 原 」 と そ の 「 小 説 」 に つ い て 批 判 を す る 内 容 に な っ て い る

58

。 そ し て 続 く

24

節 で 、 第

4

の 語 り 手 が 現 れ る

59

。 そ れ は 前 節 の 姚 亮 の 言 説 に 応 答 す る 形 で 、 一 人

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