奈医誌. リ.Nara Med. Ass.) 40, 39‑‑‑:'45,平l
A m p h o t e r i c i n B
の大量経口投与と吸入 による深部真菌症の予防の試み一ー造血器悪性腫虜患者の剖検例5例での検討一一
奈良県立医科大学第2内科学教室
小 島 興 二 , 西 川 潔 , 下 山 丈 人 水 本 保 子 , 成 田 亘 啓
PROPHYLAXIS OF DEEP MYCOSIS BY LARGE DOSES OF ORAL AMPHOTERICIN B AND INHALATION OF AEROSOLIZEDFORM
‑AUTOPSY EXAMINATIONS OF FIVE PATIENTS WITI王HEMATOLOGICALMALIGNANCIES
KYOJI KOJIMA, KIYOSHI NISHIKAWA, TAKETO SHIMOYAMA,
、YASUKOMIZUMOTO and NOBUHIRO NARITA
Second Depαrtmentげlnte円wlMedicine, Nara lIdedical University
Received January 31, 1989
( 39 )
Summary: Autopsy examinations were conducted in five patients with hematological malignanci巴s,especially in search of fungal infections. All of them had several risk factors includind prolonged granulocytopenia, treatment with broad‑spectrum antibiotics, anti‑ cancer therapy, insertion of central venous catheters and so on. They all received prophylactically large doses of oral ampl川 ericinB suspension (2.4gjd) as well出 inha‑ lation of aerosolized amphotericin B, except for one patient who received only oral therapy,
but none of theIh received intravenous administration. Results of postmortem exami‑
nations were: 1) immediate causes of death, without exception, were nonmycotic infec聞 tions, 2) None of the five patier山 had signs of fungal colonization thro昭hout the digestiv巴tractor in deep organs.
Indcx TerlllS
deep mycosis, hematological malignancics, amphot巴nCll1B
緒 1=1
白血病や悪性リンパ騒の治療時における種々の合併症 のうちで,頼粒球減少時における感染症は最も重要なも のであり,そのIやでも深部真菌症はその限患頻度の高さ と予後の不良な点とから注目さわしている1)2) しかしな がら,深部真菌症の生前での診断は非常に困難であり,
剖検によって初めて診断されることが多いため,現在で
は,広域スベクトルの抗生斉IJを投与しても下熱したい如 粒球減少H在の不明熱に対しては,早期に amphotericin
Bの全身投与を開始するのが一般的となってきているわ.
しかし, amph口tericinBの全身投与は発熱,ショック,
腎毒性等の副作用のため必ずしも容易ではなく,より安 全な投与方法が望まれている
我々は治療に際して,頼粒球減少やその他の真菌感染 症に対する危険因子が予想される時には, amphotericin
( 40 ) 小 鳥 輿 ニ ( 他4名) 報告する.
Bの経口投与と吸入とを予防的に行っている.今回,
amphotericin Bの予防投与を施行した患者の中で 5 例の剖検例を経験し,その直接死因と消化管および深部 臓器の真菌感染について病理組織学に検索を行ったので
対 象 と 方 法
症例は表lに示すように,急性骨髄性白血病3例,↑受 Table 1. Patient characteristics
No of patients Sex
Mal巴
Female Age
Days of Amph. B
Granulocytopenic days (く500//11)(剖
Febrile days (>38"C)(剖
Days of Antibiotics悼〉
No without LAF No with CV catheter No with steroids
5 (AML 3, CML 1, NHL 1) 3
2
29‑60y (med 54y) 20‑64d (med 40d) 16‑18d (med 18d) 10‑21 d (med 16d) 22‑28d (med 28d) 3
5
(*): during 4 weeks before death AML: acute myelogenous leukemia CML: chronic mye1ogenous leukemia NHL: noトHodgkin'sl.ymphoma LAF: laminar air flow
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Fig. 1. Case 1. AM.L (29y, M).
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Amphotericin 13の大量経仁1投与と!投入による深部真菌症の予防の試み ( 41 )
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30 July8 Fig.2. Case 2. A M2L (54y, M).
性骨髄性白血病l例,悪性リンパ腫l例で,男性3例, なお, amphotericin B投与の副作用としては,軽度 女性2例,年令は29才から60才であった.amphotericin の悪心・幅吐が少数例にみられたが,いずれも投与の中 Bの投与は,治療開始前より内服用 amphotericinBシ 止に到るほど重篤なものではなかった.
ロ ッ プ 2.4g/日にて経口投与と静注用 amphotericinB
15mg/日にて吸入とを行い,その投与期間は20日から64 日であった.なお,症例lについては吸入は行わなかっ た. また, amphotericin Bの経静脈投与を行った症例 は,この5例には含まれていない.
深部真菌症の危険因子に関しては,死亡前4週間にお ける頼粒球減少 (500/μl以下)と発熱 (380C以上)と 広域スベクトノレの抗生邦jの投与の期聞は,それぞれ16日 から18日, 10日から21日, 22日から28日であった.一般 個室で治療したものは3例, HEPAアィノレター使用の 無菌病室で治療したものは2例であった.中心静脈カテ ーテノレを留置したものは5例,副腎皮質ホノレモンを投与 したものはl例であった.
我々が経験した5症例の死亡前4週間の臨床経過の概 要を,図lから図5に示した.
結 果
ilT駿死因は表2にl示すように 3例 が 敗 血 症 例 が アメーパ腸炎に合併した穿孔性腹膜炎例が肺炎であ り 3例の敗血症の最初の感染病巣はすべて腸管であっ た.起炎菌は4例 が 細 菌 例 が 赤 痢 ア メ ー バ で あ っ た.真菌感染が直接死因となった症例はなく,また剖検 での消化管および深部臓器の肉眼的また組織学的検索に おし、ても,其菌の定着の認められた症例はなかった.さ らに,生前の血液培養からも真菌が検出された症例はな かった.
考 察
造血器悪性腫爆の患者において,剖検時に深部真菌症 の存在が認められる頻度は約30‑50%1)2)と高率であるに
( 42 ) 小 、 鳥 興 二 ( 他4名)
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Fig.3. Cas巴3.AM4L (55y, M).
.July 10
もかかわらず,その生前での確定診断が非常に困難であ ることが知られてドる.Degregorioらめの52例の剖検 例の検討でも,:17例の全身性カンジダ症のうち生前に診 断されだものは9例にすぎず,また7例のアスベルギー ルス症で、は生前に診断で、きた症例はなかウた.このよう に深部真菌症は診断が困難であるうえ,深部真菌症を合 併した時点においては患者の全身状態が極度に悪化して いることが多く,その致死率が非常に高いとされてい るわ. そのため真菌症に擢忠しやすい時,すなわち長期 間の販粒球減少,長期間の抗生斉jの使用,抗腫疹剤の使 用,中心静脈カテーテノレの留置,副腎皮質ホルモンの長 期間の投与5)などに際しては,予防的に nystatin,am‑
photeridIi B, miconazole, ketoconazoleなどを投与す ることが試みられてきたの ~9).
我々は,深部真菌症のほとんどを占める,消化管より 侵入するカンジダと気道より侵入するアスベルギーノレス
とに対して,予防の目的で、それぞれに:;tmphotericinB シ ロ ッ プ 2.4g/日の経口投与と静注用 amphotericinB 15mgl日の吸入とを行った.それは口腔内,食道,胃,
腸管にわたる全消化管と気道において高い有効濃度を維 持することによって,真菌の増殖を抑え定着を阻止する
ことが,深部真菌症例の予防に有用であるという観点に 立脚したものである.van der Waaijら10)によれば,
amphotericin B 1.5‑2.0 g/日の経口投与により糞便中の 有効濃度が Candidaalbicansのminimuinmycostatic concentrationの20‑100倍となるが, 1.5 g/日以下では 必ずしも十分な濃度が期待できないとしており,大量の 経口投与の必要性を示唆している.
Amphotericin Bの大量経口投与と吸入による深部真菌症の予防の試み ( 43 )
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Fig.4. Case 4. NHL (60y, F).
最近, amphotericin Bの大量経口投ー与にてもある智 度の血中濃度が維持でき11),カγジダ性肝膿疹等の深部 真菌症の治療にも有効であるとの報告もみられるが,経 口投与による血中濃度の限界を考えると,治療に際して の第一選択は経静脈投与であり,大量経口投与の主目的 は,消化管で、の真菌の定着阻止とその結果としての深部 真菌症の予防にあると思われる.
今回我々は 5例の剖検例での検討にて,真菌感染症 がまったく認められず, amphotericin Bの予防投与の 有効性を示唆する結果を得た.真菌感染症の予防の試み は多数行われているが,生前診断の困難な深部真菌症例 の最も確実な診断である剖検の検討による報告13)‑15)は 末だ少し今後さらに症例を重ねて検討する必要がある
と思われる.
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我々は,造血器悪性腫湯患者の治療に際して,予防的 にamphotericinBの経口投与と吸入lを施行したが,そ のうちで5例の剖検例での検索において,
1) 真菌感染が直接の死因となった症例はなかった.
2) 消化管あるいは深部臓器における真菌感染は全症 例でまったくZ認められなかった.
以上より,少数例での検討ではあるが,造血器悪性腫 療の治療に際して,真菌感染の危険因子が考えられる時 には amphotericinBの経口投与と吸入は試みられる べき方法であると考えられた.
( 44 ) 小1 鳥 興 ニ ( 他4名)
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Fig.5. Case 5. CML (49y, F). Table 2. Results
Case 1 Case 2 Case 3 Case 4 Case 5 (AML,) (AML,) (AML,) (NHL,) (CML,) 29γ,M 54y, M 55y, M 60y, F 49y, F
Sepsis Sepsis Amoebic colitis Pneumonia Sepsis Causes of death (P. aeruginosa) (K‑zepmoniae) B. fragilis (Gram(coccuss 十)) (p EntaeEr岬obacnt刊er
Fungal infection
GI tract (ー) (→ (一) H H Deep organ (一) (→ (ー) (ー) (一)
Fungemia (ー) ←) (ー) ←) ト)
文 献
strong, D.: Fungemia in the immunocompromised host. Am. J. Med. 71: 363‑370, 1981.
1 )金倉譲,手島博文,平山文也,谷慶彦,窪田良 3) Pizzo, P.A., Robichand, K.J., Yi1l, F.A. and 次,小熊茂,植田高彰,中村博行,柴田弘俊,正 Witebsky, F.G.: Empiric antibiotic and antifungal 岡 徹,吉武淳介:急性白血病における発熱原因の therapy for cancer patients with prolonged fever 検討.臨床血液 48: 1514‑1521, 1985. and granulocytopenia. Am. J. Med. 72: 101‑111, 2) Meunier心arpentier,F., Kiehn, T.E. and Arm. 1982,