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(1)

環境辞書 と環境学 知の隠蔽 と再生産の諸相

葉柳 和則 *・鋤 田 慶**

学術論文】

OnEnvironmentalDictionaryandEnvironmentalStudies

ェAConsiderationonAspectsofConcealmentandReproductioninKnowledge‑

KazunoriHAYANAGIandKeiSUKITA

Abstract

Currently,therearealotofdictionarieswhichwecan call''environmentaldictionary''.Butveryfew attemptshave beenmadeatstudiesorinvestlgationsaboutenvironmentaldictionaryeveninlexicography,whichhavemainlybeen focusedonmodem dictionariessuchasOED,Webster,Koujien,andsoon.Giventhesefactors,thispaperhastwo purposes;topositionstudiesaboutenvironmentaldictionaryinthetideoflexicography,andtoinvestlgateaspectsOf environmentaldictionarybyusingbasiclexicographical(metalexicographical)approachandnum ericcharacterdata.In basiclexicography,dictionarylSassum edtobethedescrlPtion/norm oflanguage.Ifso,environmentaldictionarylS assumedtobethedescrlPtion/nom ofenvironmentalstudies.Forthisreason,environmentaldictionarylSgood exampletoillustratewidespreadandcrossdisciplinar y,orsometimesinvisibleenvironmentalstudiestoo.But,toputit ontheotherwayround,environmentaldictionarymightbeadevicepotentiallywhichevenconcealorreproducethe particulardisciplinesofenvironmentalstudies.

Key Words :environmental dictionary,lexicography, concealment/reproduction

0.は じめに

グーテ ンベル クによる印刷術の発 明は、情報 の伝 達 と普及 、お よびその定着 と蓄積 に関 して、それ ま での知のあ り方 に決定的な変化 を もた らした。辞書 とい うメデ ィアの誕生 もまた、 この変容の過程 と不 可分の関係 にある1。言語情報 を基盤 に した知のシス テマテ ィ ックな集積体 である辞書 こそが、対面状況 を超 えた知 の伝達、普及 、定着 、蓄積 を標準化 し、

確 実な もの とす るための基盤 を成す か らである2。

後述す る よ うに、従来 の研究 においては、辞書 は

*

長崎 大学環境科学部

* *

長崎 大学環境科学部環境科学科 受領年月 日 2007(平成19)年1031日 受理年月 日 2008(平成20)年 3 5日

segmental dictionar y , norm alization of descrlPt10n,

限定 され た領域 にお ける対象 を主 として言語的に定 義 ない し記述 したテ クス ト、お よび対象 を言語的に 記述す る際の規範的テ クス トとして捉 え られ てい る。

本稿 は、既刊 の 「環境辞書」の現在 、お よびそれ に至 る歴 史 を、辞書学的アプ ローチ と数量的な内容 分析 の双方か ら明 らかにす ることを課題 とす る。「 境辞書は、言語 に基づ く環境 をめぐる知 、す なわ ち環境学 の記述であ り、議論 の際の言語的規範であ る と規定できる。それ ゆえ、「環境辞書」を分析す る ことによって、広汎 かつ領域横 断的な学知 である環 境学 の現在 を確認す るだ けではな く、そのあるべ き 姿 をも予示す ることも可能 となるはずである。

(2)

葉柳 和則 ・鋤 田 慶

1.資料 .データ

本稿 では、環境 とい う名称 を含む活字 レフアラン スを 「環境辞書と定義 し、その中で 日本 において 発行 された ものを一次資料 として取 り上げる。具体 的には 「環境 とい う語句 をタイ トル に持つ辞書、辞 典 、六法、用語集 、キー ワー ド集 」が該 当す る。 国 立国会 図書館 の NDLOPAC」、お よび 国立情報学研 究所 の NACSISWebcatにおいて、 「環境 +辞 書、

辞典、六法、用語集 、キー ワー ド」をタイ トル ・ワー ドとして検索 し3、該 当す る辞書 を抽 出す る とい う手 順 を取 った。これ に よって抽 出 され たのは、1971

か ら2006年 にかけて出版 された128冊の辞書であ る。

その基礎デー タを図表 1に示す4。

出版年 冊数 出版年 冊数 出版年 冊数

1971 2 1983 2 1995 5 1972

0

1984 1 1996 4

1973 2 1985 2 1997 5 1974 2 1986 3 1998 6 1975 1 1987 3 1999 3 1976 1 1988 2 2000 ll 1977 1 1989 1 2001 8 1978 1 1990 3 2002 4 1979 1 1991 3 2003 14 1980 1 1992 7 2004 6 1981 2 1993 2 2005 8 1982 1 1994 5 2006 5

図表1をグラフ化 した ものが図表2である。

2‑

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rヤ.'二 3液 …..J3,::V//{SJやL"i:i汚 さ栄、<

v

r;̲ 1,1': 〉iYl:2,汁,rミ…ミご謹言笈、架曇 .芸烹gS

^結?

̲11 ;V夏i=i:;:

図表2

2.辞 書 研究 と環境 辞書

辞書 を対象 とした研究のスタイル は大 き く二つ に 分 け られ る。一つは、川瀬一馬 が著 した 『古辞書 の 研 究』(1986年 、雄松堂出版)、あるいは 『辞書遊歩』

(2004年、九州大学 出版会)の よ うな古辞書研究 で あ り、も う一つは、『ウェブスター新 国際英語大辞典』

や 『オ ックスフォー ド英語辞典』、『広辞苑』 の よ う な現代辞書 を対象 と し、記述 内容 の評価や編纂方法 の検討 な どを行 う辞書学 (lexicograplW)的研究であ 5。 環境辞書 を対象 とす る本稿 は後者 、す なわち現 代辞書 を対象 とした辞書学的研 究 として位置づ け ら れ る。だが、環境辞書のよ うな 「専門語辞書techlical dictionary」 (Opitz[1983b‑1984:205]) を対象 とす る 研究 は、 と りわけわが国において ほ とん ど行 われ て いない。 わが国の辞 書学研究の成果は、国語学や英 語学 といった語学系の分野 に大 き く偏 ってお り、語 学系の辞書の性格 か らして、「専門語辞書」はごく周 辺 的に、あるいは国語辞書の よ うな 「典型 的辞書」

(Opitz[1983a‑1984:65])との対比 のための参照事例 として扱 われてい るに過 ぎない。

この傾 向は、欧米 での辞書学 に も大 まかには当て はまる。 しか し、クル ト・オー ピッの 「専門語辞書」

を対象 とした研究 に見 られ るよ うに、環境辞書 を研 究す るための基本的枠組み は既 に構築 されてい る。

オー ピッは、「非言語 的にはっき りと区切 られた言語 領域に焦点が置かれ、その主題 が 「特殊化」ない し 「個別化」された辞書 とい う意味において、「専門 語辞書」を 「区分辞書segmentaldictionary」と再定義 してい る6 (opitz [1983b:163‑1984:205206])。オー ピッの議論 において重要なのは、「区分辞書が 「

(3)

型的辞書の後 に必然的に出現す ると指摘 してい る 点である。オー ピッは、この知見を 「語嚢 の同心 円」

とい う視覚モデル を用いて説 明 してい る (図表3)。

図 3 区分群書の純閲の穏 々の可能性C この (単純化 した)閲の*で, Aで示され た部分は,一つの特殊な分野のみの語数成 城であるゥ BやCの部分は,それぞれ,2, 3の分野にまたがるものである8実際には, もっとた くさんの区分があ り.それに対応 して多 くの重な り合 う部分が免 じ,重複の ために,もっと多 くの意味的な複雑さが生 じるO(中心の濃い部分は,すべ ての話者 の共有する,言語の共通桟を示す)

図表 3 (Opitz[1983a‑1984:71】よ り転載)

上の図の外 円は、ある言語 の総体 を表 してお り、そ の中心に位置す る色の濃い部分は 「典型的辞書 収録 され うる語桑の範囲を、無色の周辺部は 「典型 的辞書」には収録 されない語嚢の範 囲を示 してい る。

周辺部においてA、B、Cとして 「区分」された箇所 は特定の分野における 「専門語」の範 囲を示 してい る。すなわち、 この 「語嚢 の同心円」 とい うモデル が提示 しているのは、(1)「典型的辞書」が取 りこぼ して しま う周辺部は、「区分辞書」に収録 され る、(2) 周辺部に位置す る特定の分野の拡大 と深化は 「区分 辞書」の出現 を必然的に伴 う、 と う辞書学的発生 論 なのである。

この種 の辞書 [区分辞 書]の数 はす こぶ る多 く、

我 々の知識や活動の専門化 に伴い、益 々増加 して い く傾 向にある。一般 に言われてい る専門用語辞 書 とい うものは、[‑‑・]主 として特定の職業に役 に立つ よ うになってお り、その分野で働 く人 と部 外者 との、また、ある一分野に関 して、異なる言 語 を使用す る人同士の、 コミュニケー シ ョンに役 に立 つ よ うに意 図 され た もの で あ る。 (Opitz [1983a‑1984:68])

とすれば、「区分辞書を研究対象 とす る試みは、そ の対象の出現 と同 じく、「典型的辞書」の研究 との間 にタイムラグを伴いなが らも、構造的に出現す るも のだ とい うことになる。 これはすなわち、オー ピッ の議論 を参照す ることによって、本稿 もまた、この よ うな発生論の中に、存立の根拠 を見出 しうるとい

うことで もある。

だが、オー ピッの議論 の重要性 は、 「典型的辞書」

の後 に 「区分辞書」が出現す る必然性 を提示 した と い う点に とどまるものではない。「区分辞書」に関す るオー ピッの理論 は、従来の 「典型的辞書」研究に お ける基本的な論点 を排除ない し、否定す るのでは な く、それ を包含す る形で展開 されている。それゆ え、環境辞書を 「区分辞書」として研究す る試みは、

確 かに辞書学的には周縁的なものであるか もしれな いが、その基本的なパ ラダイム との間に整合性 を持 っている と言 える。

本稿では辞書学の基本的な論点 として、見坊豪紀 の提示 した 「代表的な観点」を採用す る7。

1:辞書は鑑 一規範か、鏡 一記述か、の問題。

2:辞書は社会の言語の財産 目録 か、抜粋か、の問 題。

3:辞書は語嚢項 目ごとに整理 された、言語情報の 集積体である、 とい う観点。

4:辞書は与えるものか、与 え られ るものか、の問 題。つま り、著者 と使用者 の関係 についての問 題。 (見坊[1983:34‑35])

最初 の観 点は、1960年代の ウェブスター論争以降、

辞書学の中心的な問いを成 している 「記述か規範か とい う問題 に関わっている。2番 目の観点は、辞書 に記載す る語の選択 に関す る問題であ り、上述の 「 嚢 の同心 円」のモデル に即 して表現すれば、 「区分」

された領域の中の どの範囲を辞書 に記載す るか、 と い う論点 に還元 され る。4つ 目の論点 も、 ウェブス ター論争以来の辞書学の基本的問いであ り、 とりわ け使用者 に対す る編纂者 の権威 、あるいは権威 の辞 書‑の転写 と う文脈 に置 き換 えることができる。

留意 しなけれ ばな らないのは、 これ らの論点は互 いに不可分な関係 にあるとい うことである 1つ 目 の論点である 「記述か規範 か」 とい う問題 を起点に

して、これまでの主要な辞書研究 を検討す ることに よって、 この こ とを確認す るこ とがで きる。 トム・

マ ッカーサーが 「粘 土板か らコンピュータまで 通観 したメデ ィア論的辞書研究の中で論 じているよ うに、辞書 も含 めた レフアランスの本来的な機能は

「情 報 を 大 脳 の 外 に 蓄 え る (McA血 ∬ [1986‑1991:3])とい う記述的なものである。しか し、

見坊の 「かがみ論」(見坊[1976:75])、ハー トマ ンの

規約化」(H∬tmalm[1983‑1984:6])、南出厚世の 「 記述主義」(南出[1996:82])な どに見 られ るよ うに8 使用者 に対す る編纂者 の権威、あるいは辞書 に転写

(4)

菓柳 和則 ・鋤 田 慶

された編纂者の権威 が介在す ること、その権威 に依 拠す る形で記載す る語 の選択が行 われ ることによっ て、辞書のメデ ィア としての性格 に、単なる記述 か ら規範‑ と転 じる傾 向が生まれ る。す なわち、辞書 学の主要な論点が交叉す る位置 にあるのが記述の規 範化 とい うプロセスなのである9。

記述の規範化 とい うプロセスは、環境辞書の研究 においては、 とりわけ重要である。環境辞書が記述 ない し規範化の対象 とす るのは、環境 をめ ぐる知 の 体系、す なわち広汎 かつ領域横 断的な学 としての環 境学である。それゆえ、編纂者 が環境学内部の どの 領域 を選択 し、記述す るのか、 さらに言えば、そ も そ も編纂者 が環境学 を どの よ うに捉 えてい るかに よ って、環境辞書の項 目選択 と記述のスタンスや濃淡 は異 なった もの となる。環境学の広汎 な領域か らあ る部分領域が 「区分」 され、選択 され ること、それ が辞書 に記述 され、 さらには規範化す るとい うこと は、その裏面において、選択 ・記述 されなかった領域 が、相対的に重要性 の低い もの として、排 除 され、

あるいは少 なくとも周縁的な位置づ けを与 え られ る とい うことを意味 している。すなわち、環境辞書は、

環境学の構成概念 を記述 し、その規範 を提示す るだ けでな く、編纂者 の意 図のあるな しにかかわ らず、

環境学内部 における特定の領域 を不可視化 し、特定 の領域 を優先的に再生産す るイデオ ロギー装置 に も な りうるのである10。

環境辞書の編纂 は、 こ うした危険性 を十分 に考慮 に入れた上で行われ る必要がある。 しか し、先述 の よ うに、環境辞書を対象 とした研究がいまだ皆無 に 近い とい う事実が示唆 しているのは、辞書編纂 とい う行為が内包 してい るイデオロギー性 に対 して反省 的な眼差 しが向け られ ることのないままに、あるい はそれ どころか、このイデオ ロギー性 をいわば無意 識的に顕在化 させ る形 で、環境辞書が企画 され、出 版 されてきた とい う可能的事態である。 とすれば、

環境辞書のあ りうる形 、ない しはあるべき形 を構想 す るためには、既刊 の環境辞書が、現在 に至 るまで いかなる変遷 を遂げてきたのかを、詳細に確認 して お く必要がある11。次節以下では、先 に示 した基礎デ ータ (図表 1お よび 2) をもとに、 この点 を検討 し てい く。

3.環境辞書の変遷 と系統

本節 では、環境辞書がいつ誕生 し、その後 かな る変遷 を遂 げて現代 に至ったのかを、数量的なデー

タを用いて検討す る。環境辞書の変遷 を分析す るた めには、オー ピッの言 う 「区分辞書」 としての環境 辞書 を さらに系統分類す る必要がある。本稿 では、

下で引用す る安 田敏朗の議論 に基づいて、書名、序 文お よび 目次な どの内容 をデー タ として、それぞれ の辞書が 「いかなる分野において、 かなる使用者 を想定 して編纂 されたのか」 とい う編纂者 の視点 を 軸 に した系統分類 を行な う。

[‑‑]序文には、なぜその時代 にこ うした辞書 が必要であるのか、を説 くものがある。[‑‑]時 代 が辞書に希求 していることが率直に反映 されて い るといって よい。それ とともに どういった使用 者 を想定 してい るのかをそこにみ ることもたやす い。 (安 田[2006:83])

具体的には、以下の手順で系統分類 を行 った12。

1:まず、書名 か ら判 断できるもの (『環境六法』や

『環境教育辞典』 な ど) を分類す る。

2:書名 か ら判断できない ものは、上の安 田の議論 よ り、まずその序文か ら判断 し、分類す る。

3:序文か ら判断できない ものは、その 目次や後書 き な どにおいて、どの分野 に特化 された ものなのか を判断 し、分類す る。

その結果、本稿 で資料 として用いる128冊の環境辞 書は、「環境 問題総合 (1)」、「環境法 ・政策 (2)」、「 ネル ギー ・技術 (3)」、 「環境教育 (4)」、 「医学 ・健康 科学 (5)」、 「環境思想 (6)」、 「住 ・福祉環境 (7)」、

特定環境問題特化 (8)」、「環境管理 ・マネ ジメン ト (9)」、 「環境アセスメン ト (10)」、 「環境工学 ・土木 建築 (ll)」、「林業 (12)」、「化学物質 (13)」、「生態 (14)とい う14の系統に分類 され ることになっ た。図表4お よび文末図表は、それぞれの系統 ごと の冊数お よびその時系列変化 を示 した ものである。

4‑

(5)

44

3 l; I/.

=i>. /3;J3

I.ty L5: .

* . + +' tF!

rAL<. >i/f!+Lh:++.

. 4 . 4 5 L15

図表4

既 に触れた よ うに、環境辞書を対象 とした研究は ほぼ皆無である。だが、「環境学」とい う学術用語 の 歴史的変遷 に関す る西川祥子 と森家章雄の研究が、

本稿のデー タ分析 に多 くの示唆 を与えて くれ る。西 川 らは、1930年代か ら1990年代 にかけて 「環境学」

とい う学術用語 が かなる文脈 において用い られて きたのかを調査 し、1970年代以降 と1930‑ 1950 代 とでは、「環境学」とい う学術用語 を使 う背景が異 な ることが分かった(西川 ・森家[2004:176])とい う結論 を示 している。ここで注 目すべ き点は、「環境 学」 とい う学術用語 が現在一般的に用い られてい る

環境や環境問題 に関す る総合的 ・体系的な科学 ・ 問・研究」(西川 ・森家[2004:177])とい う意味で用い られ始 めたのは 1970年代以降である とい う点であ る。一方、図表 1お よび文末図表で示 した よ うに、

環境辞書 とい う 「区分辞書」が初 めて出版 されたの 1971年 (1系統 [環境 問題総合]お よび11系統 [ 境工学 ・土木建築])、つま り、 「環境学」 とい う用語 の意味内容 が変化 を開始 した時期 に、環境辞書 もま た登場 しているのである。西川 らの結論 か らすれ ば、

環境学が固有の分野 として成立す るよ うになっ たのは1970年代以降であると言 えるが、環境辞書の 出版動 向もまた同 じ現実の反映 として見 ることがで きる。

次に検討す るのは、環境辞書の出版総数の変化 、 お よび各系統に分化す る過程である。文末図表が示 す よ うに、1990年以前か ら存在 してい る環境辞書 は 1系統 (環境問題総合)、2系統 (環境法 ・政策)、ll 系統 (環境工学 ・土木建築)のみである。すなわち、

1990年以降 に環境辞書の多様化が進行 し、14もの系 統 に分化 したのである。 さらに、系統の多様化 と連

動す るよ うに、環境辞書の出版総数 も増加 している (図表5)

lO年ごとの変化 (総数とl系統[環境問題総合])

冊数 6050430210000 / 56

巨霊】

● ‑ /

.. 18 3

6

図表 5

これ に関連 して、1990年以降に発表 された環境 学の著書 ・論文等は、1970年代、1980年代 に比べて、

飛躍的に増加す る」(西川 ・森家[2004:175]) こ うし た現象は、1990年代以降 「環境学」とい う分野の拡 大、あるいは 「環境学」 とい う分野にかかわる領域 が多様化 したことを推測 させ る。 さらに、図表5 ら分かるよ うに、1990年代以降 も環境辞書の総数そ の ものは絶対的にも相対的にも増加 し続 けているの に対 して、1系統 (環境問題総合)の出版ペースは む しろ下がってお り、それ と同時に他 の系統の出版 数 が増加 してい ることか らも、「環境学」に関わる領 域の幅が広 くなった こ とを確認す ることができる。

とすれば、西と森家の提示 した 「環境学」の拡大 ない し多様化 とい う現象は、環境辞書の出版数の変 化 と系統分化の過程 と密接 に関連 した ものであると 解釈す ることができる13。

以上、環境辞書の出現、出版数 、系統分化 を数量 的変化 として確認す る とともに、 これ を西川 らによ って提示 された 「環境学」 とい う学術用語 の変化 を め ぐる研究 に関連づ けることで、両者 が同一の現実 変容 を別 の指標 によって表現 しているとい う解釈 を 提示 した。「環境学」の意味内容 の変化 と環境辞書の 出版動向の変化 が連動 しているとい う事実は、環境 辞書が対象領域である 「環境学」を 「鏡」の よ うに 記述 し、 さらには 「鏡」が 「鑑」 とな り、規範化す るとい う現象が生 じている可能性 を示唆 している14。

環境辞書の出版数や系統の変化 とい ういわば外面 的事実において 「環境学」の成立過程 との対応 が認

(6)

葉柳 和則 ・鋤 田 慶

め られた こ とを踏 まえて、次節 では、環境辞書の内 容分布 に焦点 を当て る。す なわち、既刊の環境辞書 かなる研究分野 を 「環境学」として 「区分」し、

それ らを かに して記述 ・規範化 してい るのか を詳 細 に見てい く これ に よって初 めて、環境辞書の あ りうる形 、あるいはあるべ き形 を提示す るこ とが可 能 になるだろ う。

4.環境 辞 書 の 内容分 布

本節 では、既刊 の環境辞書の内容分布 と、その内 容 が規範化 されて く過程 を検討す る。内容分布 の 分析 では、1系統 (環境 問題総合) の環境辞書 を対 象 としてい る。その際の資料の抽 出方法は以下の通

りである。

1:128冊の環境辞書か ら 1系統 (39冊)のみ を取 り 出 し、年代 ごとに分 ける。

2:年代 ごとに分類 した環境辞書 を 「大学図書館 の所 蔵館数」を 「使用度」のメル クマール とし15、そ の数値 が高い順 に再配列す る。

3:図表 5で示 した年代 ご との冊数 よ り、1970年代 お よび1980年代か らそれぞれ1、1990年代 か

3冊、2000年以降か ら2冊を抽 出す る16。

この手順 に従 って、次 の7冊の資料 を 「使用度」の 高い主要 な環境辞書 として分析対象 とす る17。

No.31:石橋弘毅編 1974 『環境用語集 (増補版)』

共立出版。(66館)

No.2:荒木峻 ほか編 1985 『環境科学辞典』 京科学 同人。(573館)

No.82:吉 田邦夫監修 1998 『環境大辞典』 工業 調査会。(395館)

No.34:横 山長 之・市川惇信編 1997 環境用語辞 典』 オーム社。(326館)

No.77:宇井純編 1992 『地球環境 の辞典』 三省 堂。(251館)

No.9:上 田豊甫 ・赤 間美文編 2000 環境用語辞 典』 共立出版。(249館 )

No.14:丹下博文 2003 『地球環境辞典』 中央経 済社。(185館)

次 に、内容分布 の分析 に際 しては、対象 とす る 1 系統環境辞書に記載 されているすべての項 目を、 日 本十進分類法 に準拠 して18、0類 を除いた 1類 か ら9

類 までのいずれ かに振 り分 け、数値 を レー ダーチ ャ ー トとして視覚化す る その際に参照す るのは、各 類 の項 目数 をその辞書の総項 目数 で割 った数値 (「 布度」)である。さらに、各項 目を1類 か ら9類のい ずれかに分類す る際、調査 その ものの均質化 を図 る ために、以下の基準 を設定 した。

・国際会議や条約 な ど、あるいは訴訟や事件 な どに 関す る記述 は歴 史的事項 として2類 とす る。

・『沈黙 の春』や 『成長の限界』な どの著作、論文 な い し報告書な どに関す る記述 は9類 とす る。

・人物 に関す る記述 は伝記 として2類 とす る。

・公 害や環境 問題 に関す る記述 は、 日本十進分類 法 の第3次 区分表 (要 目表)に準拠 し、5類 とす る

・化学物質に関す る記述 は基本的に4類 とす るが、

その用途 を重視 した記述であるな らば5類 (工業 製 品な ど) ない し6類 (農薬 な ど) とす る。

・産業 に関す る記述 は 日本十進分類法 の基本方針 に 従 い、第 1次産業 と第3次産業 を6類 、第2次産 業 を5類 とす る。

・「尊厳死」の よ うな医療倫理 に関す る記述 は、4 (医学)ではな く、1類 とす る

o類 に区分 され るものの うち、ジャーナ リズム・ 聞に関す る記述 は3類 (社会) とす る。

以上の手順お よび基準 に従 って、個々の資料 を数値 化 したのが図表6‑12である

∫‑一一ノ 項E] 分布度

lH 0 0

謹白 6 0.0042 3莞Ei 4 0.034 哨Ei 650 0.4603 5某日 682 0.483 硝自 23 0.0164 7葉自 1 0.OD07 8莞自 0 0 硝白 2 0.0014

図表 6

‑6‑

(7)

/ 項 目数 分布 唐 1票萱 3 0.0007 2票萱 121 0.0203 3葉萱 654 0.1097 4葉萱 3659 0.6147 5萱 123仁一 0.2067 6芙萱 275 0.0462 了葉萱 6 0,001

[漂萱

0 0

9葉萱 0.0007

図表7

̲

∫‑‑∫ 項 目雛 分布庶 1莞自 0 0 讃自 15 0.1255 3某日 351 0.278 ヰ華萱 13 0.103:i 5莞自 492 0.390 6莞巨 124 D.0gEi4 7H 0 0

輔頁 0 0

9芙頁 4 0.0032

図表8

ノー 項 目雛 分布度 l類 2 0.0007 2H 37 0.0132 3莞自 292 0.1043 哨自 l5 0.4495 5芙頁 1127 0.4026 6き自 80 0,02[ 7莞頁 2 0.0007

硝萱 0

9芋Ei 1 0.0004

図表9

No.77〔1992〕

1 0

9 1̲葉萱項 目数 分 布 唐0.0037 2要目 94 0.0579

\旦2 3葉萱 357 0.2192 5葉萱 674 0.415

̲ 4 6了粟萱葉賀 1122 0.0.0069012

日票萱

0

0

9葉萱 10 0.00el2 1∈l24 1 1∈l24 1

図表 10

′一一一 項 目賢女 分布庶 lH 4 0.002 2票自 74 0.0515 3莞自 263 0.l83 哨頁 54 0.3813 5莞自 459 0.3194 6葉自 5 0.592 7薫自 1 0.0007

硝自 0 0

9き自 0.002l

図表 11

項 目数 労.布 度 1葉萱 0.0107 2葉萱 49 0.0754 3 235 0.3584 4禁萱 B4 0.1278 5葉萱 264 0.4062

標声 ll 0.ロ169

了票萱 0

0

告葉萱

0

0

9葉萱 4 0.0046

図表 12

デー タの分析 に先だって、まずは 1系統の環境辞書 の性格 がいかな るものであるかを確認 す る 2‑ 14 系統の環境辞書は典型的な 「区分辞書」 とみなす こ

参照

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