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現代企業環境論とその問題領域

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現代企業環境論とその問題領域

47

現代企業環境論とその問題領域

1 序

2 企業環境論とその考察領域

(1)企業環境論の展開

② 諸論者の企業環境論とその構成

(3)企業環境論の主要考察領域 3 現代の企業環境問題

α)環境問題の新動向

② 環境問題と企業環境論 4 環境の国際化と・企業環境論

1 序

 企業と社会,あるいは企業ないし経営と環境なる主題は今口,事業界において,また学 界において,更には社会の他の諸領域において少なからぬ関心を集めるに至っている。そ

してかかる関心を反映して,「企業と社会」,「企業と環境」,「企業の社会的責任」,等のタ イトルの下に,企業環境についての理論的研究の成果がつぎつぎと公表されている,

 ところで,そのような企業環境研究としての企業環境論は,経営学的研究としてのそれ と経営学的研究以外の視角からするそれとが存在するが,前者についていえば,それは論 者によってその理論構成や内容をかなり異にしており,この意味で経営学の理論としての 企業環境論は発展途上の学問であるといってよい。経営学の理論として企業環境論が十 全な形で存在しうるためには,それは企業と環境の関係についての理論的考察に止まら ず,かかる理論的考察を基礎に企業の環境適応のための経営政策論として展開さるべきと 思われる。しかるに,現状ではそのような経営学的研究は未だ存在しないといえよう、す なわち,理論的似1舶1についての諸研究をとり上げてみた場合でも,企業と社会ないし環境 との関係に関してどのような問題を考察対象とするかに関してさえ論者の問で必ずしも見 解が一致しないのである。むろん,このことの一端は,企業環境論の考察対象が多岐にわ たり1人の論者によってはすべての問題を十分には処理しえないこと,あるいは,企業を めぐる環境問題は国や社会によって異なるとともに,それは動的であり絶えず変化すると いうことによる。それにもかかわらず,より適切な企業環境論の出現のためには,少くと

も理論の考察対象についてある程度の明確化が不可欠である.

(2)

 されば本稿では,経営学的企業環境論の展開のための第一段階として,諸論者の企業環 境論の内容構成を眺めつつ環境論の対象領域を中心に基礎的考察を行うことにする。

2 企業環境論とその考察領域

 (1}環境論の展開

 はじめに述べたように企業環境論は,「企業と環境」,「企業と社会」,「企業の社会的責 任」,等の主題の下に内外の諸論者によって近年その展開が試みられてきたが,かかる展 開はとりわけ,企業の大規模化およびそれに伴っての企業と社会との相互関連性が著しか ったアメリカにおいて盛んであるといってよい。しかしながらアメリカの場合でも,まと まった形で企業環境論が展開されるに至ったのは比較的最近であるといってよい。この点       1)

についてデイヴィスらは,つぎのように述べている。

 1950年代以前にもアナリストは企業の権力とその乱用について記しているが,企業と社 会に関する最初の決定的な著作は,ボーエン(:Howard R. Bowen.)によって1953年に出版   2)された。「ビジネスマンの社会的責任」と題するそれは,社会的責任の概念および企業への

その適用の仕方をとり上げていた。ボーエンの書物の出版に続いて他の多数の著者が,企        3)

業と社会に主要な注意を与えたのであり,かかる主題は徐々に定義され始めた。すなわ ち,セレクマン(Benjamin M. Selekman)はその初期の著作の中で,以下のようなコ メントを行っている。社会的責任への関心へと導いている危機は……複雑である。それは 権カーその有益な局面のみならず危険な局面を伴う一という古くからの問題そのもの から生じている。自分達は権力システムの管理者であると事業家が認識するまでは,かれ らは,いかにしてその支配する権力を道徳的に行使するかという仕事に現実的な形でとり       4)

組みえない,と。1961年には,企業を社会のサブシステムとみるところの企業の社会経 済的モデルへの意義深い貢献が,イールズとウォルトン(Richard Eells and Clarence Walton)によってなされた。かれらは社会的責任をつぎのように述べる。ひとびとが会 社の社会的責任について語るときかれらは,会社企業が社会に対しその影を投げかけると

きに生ずる諸問題の点から,ならびに会社と社会の間の関係を支配すべき倫理的原則の点 から考察しつつある。かれらは個人への会社のインパクトに,ならびに巨大企業,巨大労 組,巨大政府を現代の統治形態が深く根ざす価値と調和させる可能性に関心を抱いてい   5)る,と。

 その間に,社会的関心への企業の必要性が取締役会の会議室,研究グループ,企業の会 合でのポピュラーなトピックとなった。主要な大学は,その経営者向けプログラムにかか るトピックを付け加えた。最初,企業指導者は主題を憤慨もしくは好奇の目で眺めたが,

徐々にその意義を認識し始めた。事業界のひとびとによって読まれた,主題についての最 初のポピュラーな書物が,1963年にマクガイヤ(Joseph W. Mcguire)によって「企業

(3)

現代企業環境論とその問題領域      49       6)

と社会」と題して出版された。企業のあり方としての社会経済的モデルが遂に,それを実 行せねばならぬであろうグループ,すなわち企業指導者によって認識されつつあったので

ある。

 以上のようなデイヴィスらの説明が示すように,実質的に企業環境論といえる研究成果 の野矢は1953年のボーエンの書物であるとともに,正面から企業環境論として展開された 書物は1963年のマクガイヤのそれに始まるといえよう。

 マクガイヤの「企業と社会」は全体で15の章から構成されるが,その内容は,1.序,

2.資本主義の基礎,3.アメリカ合衆国における企業制度の発展,4.経営理念,5.企 業と政府,6.企業と労働,7.多元社会における企業,8.役割の衝突一組織と個人 一,9.現代社会における労働と余暇,10.企業イメージ,ユ1.安定の問題,12.米国 の企業と国際関係,13.豊かさ一戦後のアメリカ経済一,14.経済社会における目標,

価値,および倫理,15.企業制度の将来である。

 かかる構成は,後に示されるように,マクガイヤ以後の諸論者の企業環境論の構成内容 にかなりに影響を与えているとみてよく,かくてボーエンとマクガイヤの著作,とりわけ マクガイヤのそれを以って今日の企業環境論の系譜の基点とすることができると思われ

る。

 (2)諸論者の企業環境論とその構成

 それでは,マクガイヤ以降に展開されてきた諸論者の企業環境論は,どのような内容を もつであろうか。いわゆる企業環境論の研究ば,企業と環境企業と社会といったタイト ルで展開されるのみならず,企業ないし経営者の社会的責任というようなタイトルで述べ られる場合もあり,企業環境論の範疇に属する書物は今日,甚だ多種類にのぼっている。

さればここでは,企業と環境ないしは企業と社会と明記された書物のうちから,その 初;期のものおよび比較的最近のものを幾つかとり上げ,その構成内容を眺めることにす

る。

 まず,1966年に出版されたデイヴィスら(Keith Davis and Robert L. Blornstroln)

        7)

の「企業とその環境」は,つぎのように4つの部と17の章から成っている。すなわち,第1 部,アメリカの企業システム:その起源と発展は,1.変化する社会における企業,2.歴 史的背景の中の企業,3.近代企業の基礎,4.アメリカの工業化:生活方式から,第2 部,企業における今日の問題は,5.経営者の役割,6.経営信条と倫理綱領,7.個人と 組織,8.技術工学と革新,9.社会的権力と責任から成る。第3部,企業とその諸パブリ ックは,10.企業と政府関係,11.所有者の要求と企業,12.企業と消費者,13.企業と 労働,14.企業とコミュニティから,第4部,国際的世界における企業は,15.国際的企 業,16.文化の変化と生産性,17.将来の展望から労うている。

       8)

 つぎに,同じく1966年に出版されたウォルトン(Scott D. Walton)の企業環境論をみ てみよう。ウォルトンの「アメリカの企業とその環境」は,4部33章から成り本文645ぺ

(4)

一ジに達する大著であるが,その構成は以下のごとくである。第1部,企業とその経済的 環境は,1.アメリカの企業とその環境,2.アメリカの企業の発展,3.企業,4.アメリ

カの産業,5.アメリカの経済と企業システム,6.その他の経済システム,7.アメリカ の製品市場,8.生産的資源とその市場,9.外国ならびに世界の市場,10.市場の動的性 格,11。企業の経済的責任から成る。第2部,企業の社会的環境は,12.事業家の見通 しによるアメリカ社会,13.顧客,14.労働とサービスの供給者,15.貨幣の供給者,

16.原材料の供給者,17.競争者と協同者,18.一般的な事業者団体,19.企業とコミュ ニティ,20.企業のイメージ,21.企業イメージの創造者,22.企業の社会的責任から成 る。第3部,企業の政治的環境は,23.企業の政治的環境,24.企業とアメリカ合衆国憲 法,25.法とアメリカの企業,26.企業と連邦政府,27.州および地方の政府と企業,

29.行政プロセスと企業,30.企業と裁判所,31.立法府と立法プロセス,32.企業の政 治的責任から成る。最後に第4部,将来における企業とその環境は,33.将来なる章から

成る。

 これら二つの書物はユ960年代中頃のものであるが,より最近の書物のうちの代表的なも のとしては,1975年に出たスタイナー(George A. Sbeiner)のそれを挙げることができ る.スタイナーの堵,「蝶と社会(第2版1㍉は, 7部29章から成っている.すなオつ ち,ユ.企業生態学の構造なる章に続くところの第ユ部,今日の複雑な相互関係への道は 2.資本主義以前の体制,3.古典的資本主義の理論,4.アメリカの経験から,つぎに第 2部,今日の企業環境:概括は,5.変化する企業環境6.企業への新たな要求と変化す る企業の役割,7.会社権力=神話と実態から成る。第3部,企業と変化する価値は,

8.社会における価値変化,9.企業イデオロギー,10.企業の社会的責任,11.社会的責 任を企業でオペレーショナルたらしめること,12.社会監査,13.経営倫理から,第4 部,企業と主要なコミュニティ問題は,14.企業とわれわれの汚染された環境,15.企業 と消費者,16.企業,コミュニティ問題および恵まれないマイノリティ,17.企業と教 育,18.企業と芸術,19.企業と技術工学,20.豊かさ,成長,および脱産業社会から成 る。第4部,企業と政府は,21.政府と企業:概括,22.公事における企業の政治的役 割,23.企業と政府の計画の集中」24.経済集中と公的政策,25.企業と国際政策,26.

政府の企業規制における他の問題から,第6部,企業とその従業員は,27.組織における ひとびとの役割の変化,28.労働組合と経営者の権限から,そして第7部,将来は,29.

企業と社会の関係における将来の諸力と諸パターンから成る。

 スタイナーの書物の構成は上記のごとくであるが,つぎに最新の書物としては前述のデ       10)

イヴィスらのそれの新しい版を挙げることができる。デイヴィスらはその著書「企業とそ の環境」の第4版のタイトルを「企業と社会一概念と政策問題」とし,共著者にフレデ リック(William C. Frederick)を加えるが,この第4版の内容はつぎのように構成さ れる。第1部,企業と社会のインターフェイスには,1.社会的世界における企業,2.企

(5)

現代企業誌境論とその問題領域 51

業による社会的係わり合いへの賛成論と反対論,3.社会的権力と社会的レスポンス,

4.多元主義社会,5.社会経済的システムとコスト・ベネフィット分析,6.経営者の役 割と社会的問題,7。社会的にレスポンシブな企業が含まれ,第2部,企業,社会変化,

および価値には,8.技術工学と社会変化,9.企業のおよびビジネス概念の進化,10.変 化する企業イデオロギー,ユユ.企業倫理と価値が含まれる。第3部,企業とその諸パブ

リックには,12.政府と企業のインターフェイス,13.規制システムと反トラスト法,

14.社会的規制:問題とインパクト,15,企業への所有者の要求,16.企業と消費者,

ユ7.企業,従業員,および労働組合,ユ8.個人:服従とプライバシーが含まれ,第4部,

企業とコミュニティには,19.コミュニティ活動への企業の係わり合い,20.企業と都 市,21.生態学と企業,22.環境汚染の抑制が含まれる。最後に第5部,国際的世界の中 の企業では,23.多国籍企業と社会,24.多国籍的操業における挑戦,25.将来への展望 が含まれている。       1

 以上,アメリカの場合についてであるが,諸論者の企業環境論の幾つかを年代順に眺め た。ここから知られることの一つは,諸論者の企業環境論の内容が一面では,初めに触れ たデイヴィスの所論のそれにかなりに共通すること,しかしながらそれにもかかわらず他 面では,論者の違いおよび発表時期の違いを反映して論者の間で少なからぬ相違を示して いることである。

 ところで,米国に遅れはするものの企業環境研究はわが国においても盛んとなりつつあ り,既に幾つかの先駆的研究の成果が書物として著わされている。参考までにその1つた          11)

る高田教授編著のものについてその内容を示すならば,以下のようである。

 すなわち,1975年置出版された高田馨編著「実証分析・企業の環境適応」は3部から構 成されており,第1部,総論では,1.経営学的野境論序説,2.体制理念と経営理念,

3. 環境変化と経営戦略,4.経営学における土コロジー概念の応用,5.社会的責任に おける自発性と協力原理が,第2部,基本問題では,6.企業と社会,7.環境と資源,

8.経済体制・産業構造・中小企業,9.公益企業と政府,10.国際環境変化と国際経営 が,更に第3部の経営方針では,ll.環境適応における企業技術一実態調査に見られる 変化,12.企業とテクノロジー・アセスメント,13.環境適応とマーケティング,14.公 害防除投資の課題,15.環境適応と人事・労務,16.国鉄におけるスト権問題とその対策 一公営企業における一例として一が章のタイトルとして示されているのである。

 (3)企業環境論の主要考察領域

 しからば,企業環境論において論ぜらるべき主要な主題として,一般的にいらてなにを 挙げうるであろうか。この問題は結局のところ,企業に係わる環境ないし社会をどう理解 しそれをどう分類するかに掛かっているのであり,論者の立場によってさまざまな回答が 存在しよう。しかしながら,上記の諸論者の企業環境論の構成内容を参考にするとき,環 境論における主要な考察領域として,以下のものを指摘することができると思われる。

(6)

 それらは,企業発展の歴史的考察,経営目的(経営理念と経営目標),価値・倫理と企 業,企業権力と責任,株主関係,従業員関係,消費者関係,地域社会関係,政府関係,国際 的環境における企業といったものである。ちなみに,高田教授は,1970年に刊行のその著          12)

      13)

「経営の目的と責任」においてマクガイヤ,グリーンウッド(William T. Greenwood),

      14)      15)

S.D.ウォルトン,ウィザース(WiUiam Withers)モ,ラニアン(Thomas Moranian)ら,

        16)

更にはデイヴィスらの諸論者の著作の内容構成を考察されたあと,「企業と社会」,「企業 と環境」でとり扱う問題はおおよそ同じ傾向にあり,大きな問題を抽出するとつぎのよう        17)

になると思うと述べておられる。そのような問題とは,ユ.企業の発展(歴史的考察),

2.経営哲学(経営理念),3.経営目標(利潤・所有権の問題),4.倫理,宗教と企業,

5.権力と責任(社会的責任の問題を含む),6.株主関係,7.従業員関係(組織と個人,

入間関係を含む),8.労使関係,9.消費者関係,ユ0.政府関係である。ここでは,高田 教授が示しておられるこれらの諸問題に,地域社会関係および企業の国際的環境が付け加 えられている。

 むろん,そのような問題以外にも,企業の存続と成長に対し少なからざる意義をもつと ころの環境問題が存在するであろう。そして特定の企業にとってはそのような問題が,む しろ主要問題となるかもしれない。たとえば,状況によっては,金融機関は企業の主要な 環境主体を構成し,ここから対金融機関関係が重要な環境問題として登場するかもしれな いのである。しかしながら,一般的には,企業環境論の主たる構成領域を上のように理解 して差し支えないと考えられる。

 なお,論者によっては企業環境とは企業にとっての外的要因であり,ここから企業内部 者としての従業員は環境構成要素に入らず,したがって企業環境論の考察領域から対従業        ユ8)

員関係は除かれるとされる。しかしながら,ここでは環境を組織体の存続・成長に影響を       19)

及ぼす諸要因の総計とみ,内部環境主体としての従業員と企業との関係をも企業環境論の          20)

主要考察領域に加える。

 (注)

(1)Keith pavis, William C. Frederick, Robert L. Blomstrom, Business and Society:

 Concepts and Policy Issues, Forth edition,1980, PP・13〜4・

(2)Howard R. Bowen, Social Responsibilities of the Businessman,1953・

(3}デイヴィスらは初期の例として,Adolph A・Berle, Jr・, Power without Property,ユ959;

 Edward S. Mason ed.,The Corporation in Modern Society,1959;Earl F.Cheit ed.,

  The Business Establishment,1964;William T. Greenwood ed., Issues in Business   and Society,1964;Keith Davis and Robert L BIomstrom, Business and Its  Environment,1966を,ならびに以下の3つの注に示される書物を挙げる。

(4)Sylvia K. Selekman and Benjamin M. Selekman, Power arld Morality in a Business   Society,1956, p. vii。

(7)

 現代企業環境論とその問題領域       53

(5)Richard Eells and Clarence Walton, Conceptual Foundations of Business,1961, PP.

  457〜8.

(6)Joseph W. McGuire, Business and Society,1963.

(7)K.Davis and R. L. Blomstrom, oP. cit。.

(8)Scott D. Walton, American Business and Its Enrironment,1966.

(9)George A. Stener, Business and Society, Second Edition,1975.

⑩K.Davis, W. C. Frederick, R. L. Blomstrom, op. cit..

(11)高田馨編著「実証分折・企業の環境適応」,1975。

(12高田派「経営の目的と責任一経営の主体・環境論の根本問題」」,1970。

⑱W.T. Greenwood ed., op. cit..

(1の William Withers, Business in Society,1966.

⑮ Thomas Moranian, Donald Grunwald, Richard Reidenbach eds., Business Policy   and its Environment,1965.      

α6)K.Davis and R. L. Blomstrom, oP. cit..

q7>高田馨「経営の目的と責任」,第1章序説

個 たとえば対木隆英「社会的責任と企業構造」,昭和54年,2頁。

⑲高田教授もこうした見解をとっておられる(高田馨i「組織と環境」,大阪大学経済学,Vo1.21,

  No.4)。

⑳ 森本教授は,企業環境の構成要因は,内部環境要因を含み,後者は内部環境主体(経営者,管理   者,専門職者,作業者)と内部環境客体(設備など)から成るとされる(森本三男,「経営学の原   理」,昭和53年,98頁)。

3 現代の企業環境問題

 (1)環境問題の新動向

 企業環境論においてとり上げられるべき主要な一般的諸領域は,これまでの考察によっ てほぼ明らかとなったが,しかしながらそれらの領域において考察さるべき具体的な企業 環境問題はかなりに流動的である。それらは時代によって異なり,また,企業の置かれた 社会環境の種類によってかなりに異なる。されば本節では,まずそのような環境問題につ いてその動向の一端を眺めることにする。

 さて,現代の社会にあっては企業は,社会へのその影響の増大によって,また,企業に 対する社会の期待の増大によって,幾つかの新たな経営環境問題に直面しつつある。すな わち,今日の企業は財貨とサービスの生産と配給を通じての利潤獲得というその経済的機 能にのみ注意を向けえないのであり,それは好むと好まざるとにかかわらず,かかる経済 的機能の遂行から派生する環境問題に,更には,企業の経済的機能とは直接には係わりの ないさまざまな社会問題に配慮することを要請されつつあるのである。

      1)

 企業活動のこのような拡大傾向をめぐって,デイヴィスらはつぎのように述べている。

(8)

すなわち,デイヴィスらは,パブリックのムードは変化しつつあり,企業による社会的レ スポンシブネス,社会的関心,社会的説明義務の増大を主張しつつあるのであって,それ は企業についての社会経済的モデルと呼びうるものを要請しているとみる。このモデルで       2)

は,図のような形で企業の社会的係わり合いの拡大がみられる。

/轍的社会均魯  への援働

補惣鯵,

        ぢ『墾

基本的な 経済的機能  の遂行

企業の社会的係わり合いの拡大(デイヴィスら)

 一番内側の円は,企業の伝統的な経済的活動を表わす。これらの活動は雇用の提供およ び取引抑制の廃止の必要の如く,幾らかの社会的意義をもつが,しかしながらそれらは第 1次的には経済的性格のものである。中間の円は,基本的な経済的機能の遂行から直接に 生ずる多数の社会的ならびに倫理的な問題を表わしている。これらのあるものは,平等な 雇馬機会および企業活動からの汚染の防止の如く,急速に重要となっている。

 外側の円は,充分には定義されていないところの市民的活動の領域を表わしている。企 業が経済的自標のみの追求を修正しで未解決の一般的社会的問題の幾つかについて社会 を助けるようにという社会の期待が出現しつつある。企業の活動は直接にはこれらの問題 を惹起しないかもしれないが,それは幾つかの場合に間接に係わり合う。されば,企業は 主要な社会の資源を支配する主要な制度であるが故にそれは,一般的社会問題に関して社 会を助けるべく会社市民として活動すべきであるという感情が存在する。企業はこれらの 問題の解決への第1次的責任をもたないであろうが,しかしながらそれは重要な援助を提 供すべきである。例は,都会の衰微や長期失業者の訓練である。中聞および外側の円の程 度は,社会的係わり合いについての提案されている諸領域に関しての,つぎのような要約 によって示される。社会が企業と社会の間の社会的契約に関して重要な変化を提示しつつ

(9)

現代企業環境論とその問題領域      55

あることが,このリストから明らかである。社会は企業に,広範な領域の社会的ニーズに 奉仕するところの広範な活動に従事することを要請しつつある。強調は,主として生活の 経済的な質から,経済的ベネフィットと並んでの生活の社会的な質へと移行しつつあるの   3)である。

 デイヴィスらによると,係わり合いについての提案された領域は,以下のものを含んで  4)いる。

 □ 生態学と環境の質  既存の汚染の一掃

 汚染防止へと向けての工程の設計  審美面の改善

 騒音抑制  土地利用の抑制  リサイクルの要請

 田園および低開発の地域への産業の移転  有毒物質の抑制

 □ 消費者主義

 貸付,広告,およびすべての企業活動における真実性  製品の保証とサービス

 有害製品の抑制

 ロ コミュニティのニーズ

 コミュニティの問題についての企業の熟練の利用  コミュニティの権力構造における企業の役割の減少  保健施設への援助

 都市更新への援助  []政府関係  ロビイイングの制限  企業の政治活動の抑制

 企業についての広範な新しい規制  国際的活動への制限

 □ 企業寄付

 芸術活動への財政的援助  教育への寄付

 各種慈善活動への財政的援助  □ 少数民族および恵まれない人々  長期失業者の訓練

(10)

 平等な雇用機会

 アルコールと麻薬の中毒者の更生プログラムの運営  入獄歴保持者の雇用

 マイノリティ居住区での工場と事務所の建設  マイノリティの企業からの購買

 技術にとって代られた労働者の再訓練  □ 労働関係

 職場の健康と安全との改善

 労働コストの低い国の部門工場への 職の輸出 の抑制  働く両親の子弟のための全日保育センターの提供  従業員の権利の拡張

 年金の支配,とりわけ年金権利の付与の支配  全体主義的構造への焦慮;参加への要請  □ 株主関係

 種々のインタレスト・グループを代表するパブリック・メンバーへの取締役会の開放  財務的ディスクロージャーの改善

 環境および社会的問題に影響する活動のディスクロージャー  □ 倫理的ならびに道徳的問題

 疑問な支払  権力の行使  資源の利用  他者への公正

 人権を制限する国での営業  □ 経済的活動

 コングロマリットの抑制  巨大産業の解体

 特許権行使の制限

 デイヴィスらによると企業についての期待のかかる拡大は,企業へのパブリックの態度 の重要な変化を表わしている。パブリックの態度は社会政策形成のためのユ基準に過ぎな いが,民主的社会ではパブリックの態度が長;期的には支配の傾向にある。されば企業は,

なんらかの効果的な方法でこれらの期待に応えることを必要とする。応答は,これらの提 案の幾つかは企業にとって適切でないと論じることであるかもしれぬが,しかしながら企        5)

業は少くとも応答を必要とするのである。

 以上のようにデイヴィスらは,現代の企業環境が企業の環境適応的課題に新たなものを        6)

付加しつつあることを指摘する。同様のことは,実務家でもあるアプトによっても述べら

(11)

 現代企業環境論とその乙丸領域       5ワ

れているのであって,アプトは,民間会社の社会的責任の定義をめぐり,会社経営者との 係わり合いの経験に基づきつぎのようにいう。

 まず,かれはなにが社会的責任であるかについての意見の一致の程度に従って,社会的        7)

責任を以下の三つのグループに分ける。

 囚 広範な同意(すべてもしくは殆んどの地域の,すべてもしくは殆んどの産業の間で の)は,以下のことに関して存在する。

 1.主要な法に従う責任(とりわけ法がまた,広く受け入れられた道徳的制裁を伴う場

合).

 2.従業員の人間的取扱いの責任(通常一必ずしも常にではないが一法によって強制さ れる).

 3.他の企業,消費者,ならびに従業員を正直,誠実,公正に扱う責任。

 4.真実の財務報告を行う責任。

 5.合理的な質と量の製品もしくはサービスをとり決められた価格で提供するに際し て,契約の文言のみならず意図を尊重する責任。

 6.利潤を生み出すことにより株主に投資への公正な報酬を提供する,もしくは少くと も提供せんと努める責任。

 7.エントリイ・レベルの仕事に対しての{ド等な雇用機会への責任。

 (B)大多数の同意(殆んどの地域の殆んどの産業の間での)は,以下のことに関してみ

られる.

 8.社会的ベネフィットのためのそれを含むすべての主要な支出について,内部計上な らびに資本予算化する責任。

 9.すべての法律(汚染,不安全な実践と製品,最低賃金,等をめぐる,強制度の低い 法を含む)に従う責任。

10.広告における完全な真実性の責任.

U.製品とサービスの無害性の責任。

12.それが立地する地域挺会にとっての製造工程の無害性の責任。

13.少くとも雇用期間中,そして引退による雇用終了後も従業員に対し,家族の健康,

安全,および福祉を保障するところの手当への責任。

14.税引利益を約2パーセント以上は減少させない程度で,地域の慈善活動に品物もし くは現金で慎み深い寄付を行う責任。

15.すべての人種およびすべてのレベルの男女への平等な雇用機会。

ユ6.社会的に責任ある活動についてのなんらかの記録化,および少くとも定量的たる形 での株主へのそのディスクロージャーへの責任。

 (C)少数者の同意(幾らかの地域の殆んどの産業での,もしくは殆んどの地域の幾らか の産業での)が,以下に関して存在する。

(12)

17.困難さとコストを顧りみず,オフィサー・レベルを含むすべてのレベルで人種と性 の両者に関して平等な雇用機会を達成するよう積極的に努力する責任。

18.汚染の減少および他の活動によって会社の地域環境を積極的に改善する責任。

19.会社の財務的要請と両立しうる手段によって従業員,消費者,地域住民の生活の質 の改善に積極的に努ある責任。

20.顧客,仕入先,借家人,および会社によって影響を受ける他のグループといったも のに影響を与える直接的行為によって,社会的正義とすべてのものへの生活の質との改善 を積極的に追求する責任。

21.会社が生み出した,社会的なベネフィットとコストおよび社会rl勺な資産と負債につ いての詳細な記述を,年次の財務報告書に類似する規則的,定期的,定量的,客観的な基 盤で,測定し,記録し,公に広める責任。

 アプトは,更にいう。会社の社会的責任をめぐる同意についての上記の3つのレベル は,シェルドン(Eleanor Sheldon)の示すそれらにほぼ対応する。すなわち,第1のそ

して広く同意を得ているそれは,  企業は,公正かつ正直に取引しながら利潤を挙げると いう責任を有する というものであり,第2の,そして恐らくは大多数の同意を得ている それは, 黙企業はその従業員と製品に関して社会への責任を,ならびに自身の小宇宙内に 社会の理想と価値を反映するという責任を有する というものである。第3は,  道徳的 と認められる社会的目的の促進にその権力をば用いることが企業の第1次的義務である というものである。これらのレベル内の受け入れの幅は時とともに増大するのであって,

われわれは上,1己の21項目のすべてが二,三年のうちに広範な受け入れの範疇に含まれると         8)

期待しえよう,と。

 デイヴィスらおよびアプトの上述の説明は,現代の企業をめぐり新たに展開されつつあ る環境問題を理解するための有力な手掛りを提供する。現代の企業は,一方では,消費者 主義の台頭によって示されるごとくその本来の経済的機能の適切な遂行を要請されるとと もに,他方では,自然環境の保全,平等な雇用機会,弱者への配慮,ディスクロージャ ー,政治献金,等といった諸問題にも対応することを,すなわち,社会のひとびとの非経 済的ニーズの充足やある種の社会問題の解決への協力にもとり組むことを要請されつつあ るといえよう。むろん,企業によるそのようなとり組みに際しては企業の能力と責任の限 界への十分な認識が存在すべきことはいうまでもないが,それにもかかわらず,企業は環 境問題のかかる拡大傾向を回避しえないのである。

 (2) 環:境悶題と企業環;境論

 かくして,現代の企業環境論はその具体的な環境問題の展開にあたっては,企業環境に おける上述の諸動向をとり込むことを必要とする。多様な環境主体と企業へのその経済的 ならびに非経済的なニーズが,また,環境の地理的拡大が,社会価値等の変化が,あるい は,環境におけるその他の種々の新動向がとり込まれねばならないのである。

(13)

 現代企業環境論とその問題領域       59

 この点では,諸論者の企業環境論は,必ずしもこの要請に十分に応えているとはいい難 いが,要請への対応努力も論者の間でなされつつあることは認めうる。たとえば,ステー        9)

ド(Richard D. Steade)の著「過度期の企業と社会=問題と概念」は,5部15章より成 るが,第1部,企業:たれがそれを必要とするか  は,1.企業と利潤,2.社会的多元 主義と企業権力,3.社会的責任とアカウンタビリティから,また,第2部,生産性と労 働生活の質は,4.ブルーカラー労働者と生産性,5.組織におけるホワイトカラー労働 者,6.企業における婦人から,第3部,産業の成長とわれわれの環境は,7.幾つかの汚 染問題:大気,水,および固形廃棄物,8.地球環境,9.生態学と経済学より構成され る.また,第4部,企業と生活の質は,10.消費者主義,エ1.エネルギー抑制の時代にお ける企業と社会,12.多国籍企業と世界貿易より,第5部,企業と社会更新は,13.貧 困,失業,公民権,14.ハードコアの恵まれないひとの雇用,15.社会的優先性と企業の レスポンスより構成される。かかるステードの環境論は,問題領域がやや片寄り過ぎるき らいはあるものの,環境問題の新動向をかなりに織り込んではいるといえよう。

 ついで乍ら,経営実践においてワ口癖ブルな企業環境論の展開に際して留意すべきこと の一つは,企業をめぐる環境問題が企業の地理的・社会的環境の種類に照応してしばしば 異なるということである。本節でこれまで眺めてきたところの環境動向は主としてアメリ カの社会に関するものであって,それはわが国には必ずしも全面的には妥当しない。

 わが国の場合,社会の関心を集めるとともに企業への社会批判をひき起してきた企業行 動問題としては,1970年以降に限定してもさまざまのものが存在する。この点について米 花教授は,環境汚染問題,投資行動と福祉の問題,国際化の問題,資源問題と消費者の問 題を挙げられ,それらは重なりあいながらも,ほぼつぎつぎと生起してきたと述べられ       10)

る。教授の説明に従いつつそのような問題を眺めるなら,以下のようになろう。

 まず,環境汚染問題であるが,それは昭和30年代末近ぐから顕著になりはじめるととも に,昭和42年8月の公害基本法の制定,昭和45年末の同法の改正と一連の法制定を契機と

して,各種の規制基準の決定,国のレベルを越える地方自治体の基準の設定,個別事業所 との公害防止協定の締結,企業の公害防止投資額の増大,経営組織内での問題の位置づ け,祉会的費用としての公害問題認識の一般化,テクノロジー・アセスメントへの公私に わたるとり組みの開始がみられた。

 つぎに企業の投資行動と福祉の問題についていえば,昭和46年8月のアメリカのドル防 衛政策発表を契機とする円の大幅切上げに伴い政府は積極財政政策をとったが,このこと は昭和47年掛田中内閣成立とその日本列島改造論と相まって,過剰流動性の下での円・商 晶・土地等への企業の投機行動をひき起こせしめ,企業行動への強い社会的批判が生じ た。そして企業はかかる批判に対応して,行動基準の作成,財団の設立,社会への貢献の あり方や営業報告書のあり方(ディスクロージャー),等にとり組むに至っている。

 国際化の展開に関していうならば,わが国の海外投資額の増大に伴い昭和47年にはタイ

(14)

で日本商品の不買運動が始まる等,企業の国外での行動が現地社会の批判を呼ぶようにな った。多国籍企業の問題,国際経営の問題が登場し,企業もまた国際的行動基準の問題を とり上げるようになった。

 資源問題,消費者問題についていえば,昭和45年には全国消費者大会がカラーTV買控 などを決議しており,このころから消費者問題が社会問題化してきたが,昭和48年の第4 次中東戦争勃発に伴うオイル・ショックを端緒とする深刻な資源・エネルギー問題がわが 国社会を襲った。同時にオイル・ショックを契機に,生活物資を中心に消費者の買い溜 め,企業の売り惜しみ・便乗値上げといった形で消費者問題が一段と社会問題化したので

ある。

 企業をめぐる4つの社会問題について米花教授に従って眺めるならば以上のようである が,昭和50年以降の経済不況,昭和51年に明るみに出たロッキード事件,更には社会の高 令化の進行,等は新たな企業責任問題を社会に登場せしめているといえよう。

 このように,わが国の場合,アメリカとはまた異なった形で環境問題が展開されている のであって,このことは,実践に適用可能な環境論がいわゆる条件づき理論として構築さ

るべきことを示しているのである。

 (注)

(1)K.Davis, W. C. Fredeck, R. L. Blomstrom, oP, cit.,P.8ff..

(2) Ibid.,P.10.

(3) Ibid., PP.9〜10.

(4} Ibid., PP.11〜3.

(5} Ibid., P.13.

(6)Clark C. Abt,じ¢The Social Audlt Technique for Measuring Socially Raspons乱ble   Performance、、,in Melvin Anshen ed.,Managing the Socially Responsible Corpora−

 tion,1974.

(7> Ibid。,PP.95〜7.

(8) Ibid., P.97.

(9)Richard D. Steade, Business and Society in Transition=Isstles and Concepts,1975.

(1① 米花稔「現代企業の行動基準の展開」 (細井卓編著「現代企業の経営政策一その行動基準の展 開一」,1978年置,39〜40頁。

4 環境の国際化と企業環境論

 現代の企業環境の特色の一つは,その地理領域の拡大であって,企業環境は地方的な環 境から全国的環境へ,更には国際的環境へ,そしてしばしば世界的環境へと拡大するに至 っている。企業環境論が環境のかかる拡大をその主要な考察領域の一つとすべきことはい うまでもない。

(15)

 現代企業環境論とその問題領域      61

 それでは,この場合,具体的にはどのような問題が考察領域に含まれるべきであろう か。国際的文脈における企業について言及するところの諸論者の企業環境論の幾つかをと       1)

り上げるならば,まず,スタイナーの「企業と社会」の25章は企業と国際的政策と題され ているが,そこで論じられる主要な項目を列挙すると,背景(国際問題における企業と政 府の間の関係,アメリカの海外企業投資の増大,アメリカにおける外国企業投資,国外進 出理由,多国籍企業にとってのコンフリクトの源泉),進出先の国での問題(雇用政策,

貿易および生産に関する統制の変更,競争者からの圧力,国際収支残高問題,現地の諸活 動に対する外国支配,接収,帝国主義の非難,非関税障壁,コンフリクト減少のための対 策),アメリカ多国籍企業と連邦政府(国際収支残高,労働および産業の問題,パーク・

ハートケ法案の規定,多国籍企業は職を輸出するや?,自由貿易と保護関税,反トラスト

・コンフリクト,国際的企業への援助),アメリカ合衆国と現地政府との関係,多国籍企 業の評価:悪か善か?となる。

       2)

 つぎに,デイヴィスらの「企業と社会(第4版)」では,23章,多国籍企業と社会,お よび24章,多国籍的活動への挑戦において国際的世界における企業の問題がとり上げられ ている。23章で論じられている主要項目は,多国籍企業(多国籍企業の発展,多国籍企業 の形態,超国籍的企業),人類のニーズへの多国籍企業のレスポンス(多国籍企業がもた

らすベネフィット,多国籍企業のもたらす不利益,本国の経済的コンフリクト),多国籍 企業の環境(社会的環境,教育的環境,政治的環境,経済的環境,永続的低開発の法則)

であり,24章でのそれは,異質な社会システムの挑戦(社会的システムの理解,文化的シ ョック,集中仮説),価値のコンフリクトと疑問な支払(疑問な支払,国外腐敗活動防止 法,進出先の国での支払の合法性,システム思考,疑問な支払の抑制),発展途上国での 挑戦(生産性阻害要因,効果的な作業設計,従業員の動機づけ,社会契約)である。

      

 更に,ステードの「過渡期の企業と社会」の12章,多国籍企業と世界貿易での主要な項 目を挙げると,多国籍企業:その性質と役割(多国籍企業とはなにか?,多国籍企業の範 囲と影響),多国籍企業の役割:賛成論と反対論(労働組合の観点,他の先進国の観点,

アメリカ企業の観点),多国籍企業に対する国内および国外の障壁(国内:労働組合の保 護主義,国外での貿易抑制:非関税障壁),貿易政策と新重商主義,非同盟諸国:広げた 腕と握ったこぶし(第3世界の定義,非同盟諸国のサミット・コンファレンス,ギャップ  かれらはわれわれを必要とする,オイル価格のインパクト,発展途上国内での富の再配 分,第3世界の資源:われわれはそれを必要とする),発展途上国における多国籍企業

(発展途上国における多国籍企業を支持する議論,多国籍企業への反対論)といったもの がみられる。

 上記の諸論者の体系に共通する主題は,多国籍企業(その概念,発展),国際的環境に おける企業責任(進出先の国および本国における責任問題),および環境の変化と経営効 率(とりわけ発展途上国におけるそれら)である。そしてこのことを参考にするならば,

(16)

現代の企業環境論は環境の国際化に関しては,なによりも企業責任の国際化の問題が,ま た,異質な環境への企業適応と経営効率の問題(とりわけ,文化的差異,インフラストラ クチュア,特定経営管理方式の適用可能性の程度)をとり上げることが不可欠であるとい

えよう。

 かかる企業環境論は,既に触れたように,それがワーカブルであるためには 国際環境 の多様性へのきめ細い考察を伴うものでなければならない。わが国企業による東南アジ ア,北米,ヨーロッパ,等への直接探資は近年ますます増大しているが,このことはその ようなワーカブルな企業環境論の展開を喫緊たらしあているのである。

 (注)

(1)G.A. Steiner, op. cit..

(2)K.Davis, W. Frederick, R. L. Blomstrom, oP. clt_

(3)R.D. Steade, oP. cit..

参照

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