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環境特性を受容するための環境感知器デザインの可 能性と意義

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Academic year: 2021

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名古屋工業大学学術機関リポジトリ Nagoya Institute of Technology Repository

環境特性を受容するための環境感知器デザインの可 能性と意義

著者 石松 丈佳

学位名 博士(工学)

学位授与番号 13903乙第286号 学位授与年月日 2015‑03‑23

URL http://doi.org/10.20602/00003158

(2)

学位の種類 学位記番号

学位授与の日付 学位授与の条件 学位論文題冒

論文審査委員

イシマツ タケヨシ

石松 丈佳

博士(工学)

論博第286号

平成27年3月23日

学位規則第4条第2項該当 論文博士

環境特性を受容するための環境感知器デザインの可能性と意 義

(Study on Possibilities and Significance of Designing

KANKYOKANCHIKr  to Sense the EI}vironmental

Characteristics)

ヘ      ゴ

王 査  教 授

教 授 准教授 教 授

水 谷 河 田 北 川 堀 越

早 克 啓 哲

夫 博 介

美(愛知産業大学)

論文内容の要旨

      論文要旨  本論は第1章から第7章によって構成されている。

 第一編の論文「環境の変化及び特質を感知する造形 一日本における「環境感知器」の可 能性と意義一」,日本基礎造形学会論文集013 2004 pp 1−7は,第1章の背景の部分と,.

第2章の「環境特性を感知する造形」の定義の部分に掲載されている。

 第2編の論文環境造形作家新宮晋の侑界、における形態特性に関する考察」,日本基礎造形 学会論文集018 2009pp 1・6は,第3章「人間の造形行為に重点が置かれたr環境特性

を感知する造形』」の全編に掲載されている。

 第3編の「越後妻有大地の芸術祭における環境特性を知覚化する造形に関する考察」,

日本基礎造形学会論文集020 2011pp 1・6は,第4章の全編に掲載されている。

 第4編のAStudy of Characteris七ic Values Found to A枇ractive Elem斑もs−ACase Study on The Way to School of MてJRAKUMO Elementary SCHOOL

 Proceedings The Fouτth Inte宝national Con允℃ence on Human・Environ翅しent System.,

CD・ROM, pp 1・19(空間構成要素に見出される特性価値に関する研究一名古屋市立村雲小学 校児童の登下校を事例として一)は第5章の全編に掲載されている。

 第1章序論においては,背景として,変化に富み,豊かな気候風土を有する日本の環

境特性及び,日本の環境特性を対象に感知する造形を探る背景について述べ,それに基

づいて解決すべき課題として本研究の目的を示した。さらに先行研究を分析して概説

(3)

することにより,本研究の位置づけを述べた。最後に本研究の構成を示した。

 第2章では「環境特性を感知する造形」としての「環境感知器」の定義を行った。「環 境感知器」とは,「ある人間が生活する環境を前提とし,その環境における特質を造形 表現によって翻訳し,情報として提供する装置であり,その体験者は,美的体験を通し て環境における特質を享受することができるもの」と定義した。それが実効的に働くた めに必要な2項の条件を導出した.

 第3章では,自然の力で動く作品を制作し続ける環境造形作家のさきがけ的存在であ る,新宮晋の作品の分析を行い,彼の作品の動的特性,形態の形成の様相を明らかにし た。得られた指標により,新宮作品以外の動く環境造形作品である,カルダーのモビご ルや風車,風見鶏,こいのぼりの4点を新宮作品と共に分類し,新宮作品との分類の特 徴との相似性が確認できた。このことより,得られた指標が,新宮作品以外の環境感器 を判定するにあたって使用が妥当であることが確かめられた。さらに環境感知器の感知 特性の視覚化(聴覚化)の仕組みをモデル化することができた。

 第4章では越後妻有大地の芸術祭における作晶群より,環境を感知する造形,つまり 環境感知器としての特性を有する作晶を抽出し,作品形態特性,とりわけ動的特性と形 態の形成様相を中心に考察を行った。その結果全624の造形作品から,89作品を抽出 することができた.さらに抽出した作品群を環境の特性を知覚化する造形手法という観 点から7分類に類型化した。類型1は自然物が造形と一体になるインボルブである。類 型2は造形と環境が対比をなすコントラストである。類型3は,造形が景観などの環境 を切り取るフレーミングである。類型4は,特定の環境要素に鑑賞者の意識を誘導し,

指示するポインティングである。類型5は,環境の状態や変化に造形が反応するレスポ ンスである。類型7は,鏡面などのように環境を反射するリフレクトである。類型7は,

環境が織りなす現象を造形により写し出すとレースである。この類型の特徴を考察して,

環境感知器を計画する際,検討すべき以下の指針を得た。

 1)設置環境に関わる住民との協働を重要な事項として考える

 2)周到な環境特性の調査を行うことによりその場での作品が活かせることを,検    証しさらにその活用方法を検討する

 3)単純なデザインによる表現を検討する

 さらに本章の知見をまとめ,図式化した「自然のなかにつくられた造形と人間の関 係」のモデルを導出することができた。

 第5章では,小学生の登下校時の道草遊びを事例に挙げ,人間が,様々な環境特性

に対して価値を感知し,活用している状況を観察,分析することによって,人間が生活

する上で環境に存在する様々な環境特性に対して感知する行動の特性について,確認し

た。その結果,環境感知器のデザインの一指針を得ることを目的とする。具体的な事例

(4)

 として,小学生の登下校の道草遊び行為をその環境特性を人間が感知する行為とし て位置づけた。

 まず,学生の登下校の道草遊び行為を27回調査した。それを基に数量化皿類による 分析を行い,分析結果を基に空間構成要素による軸の解釈と行動の分類を行った。さら に,分類した行動特性と空間構成要素の対応を検討した。また,記録地点と行動特性と の関係の考察も行った。       ,

 数量化皿類の分析結果であるカテゴリスコアから,第1軸を造形要素の複雑さの度 合いを表す軸,第2軸を規模を表す軸として解釈した。そして,クラスター分析の結果

を参照して,サンプルスコア散布図上で行動をA〜1の9つの分類をし,各類型の行動 特性の特徴を導出した。

 さらに,各分類で軸の解釈や空間構成要素のカテゴリスコアの散布図と照合し,事 例の記述及び写真のデータを参照しながら,特徴を考察した。全体としては,2次元的 で単純な要素と3次元的で複雑な要素の中間的な部分で,より興味を持ち,積極的な行 動が多く見られること,規模が大きく空間的な要素では,歩行中の無意識的な行動が多

く見られるという傾向が確認できた。

 また,地図上の記録地点を,行動特性によって分類し,記録地点と行動特性との関 係を確認した。様々な行動特性の類型が混在し,顕著な傾向が確認できなかったが,換 言すれば,児童は登下校中に,偶然目の前に出現した空間構成要素に順応した行動を行 っていることが推察される。また,流動型の行動特性は各記録において連続性を持ち,

それは角を曲がり,環境が変化した揚合も確認できた。さらに都市の構成要素と人,行 動が関係し環境感知器化する様態をモデル化することができた。

  第6章では,第3から5章の分析で得られた環境感知器の仕組みのモデルをまとめ,

環境と人との問におかれた環境感知器の役割と仕組みが図式化されたモデルを導出し た。このモデルの有効性を検討するために,実際に「環境感知器」を3件制作し,作品

を通して環境特性と造形との関係から生じる現象を構造的にとらえることを試み,「環 境感知器」の実践的検証を行った。3作品から,詳細な観察により,環境源から造形,

そして人への感知までの「気づくことの伝達」がモデルの流れに従い連関することが確 認できた。本章で示した3作品においてもモデルに対応するかを確認した。3件の作品

を通して,環境特性を感知する造形としての「環境感知器」の実践的検証を行うことが できた。豊かな気候風土を有する目本の環境特性を効果的に表出する方向性は,充分に 見出すことができた。そして,環境要素に対する造形物の特性を反応させる基本的な働

きについて明らかにできたと考えられる。

 第7章「結論」では,各章で得られた知見を総括し,本論文の結論とし,今後の課題と

将来への展望について述べている。

(5)

論文審査結果の要旨

 近年,日本の気候風土の影響下における生活の場での環境のもつ潜在力を利用した造形表現の創造と展開が行 われている状況がある。しかし環境を感知する造形物が成立する仕組みや働きなどを環境との関わりとして明ら かにしている研究は見当たらない。そこで本研究は,「環境特性を感知する造形」あるいは「環境を構成またはそ れ自身が環境となり人間の感知につながる造形」を取りあげ,それらがどのような素材,機構,仕組で構成され ているかを抽出し,その構成要素と造形物それ自身の形態と意匠,動作シークエンスによる演出性や,経時経年 シークエンス,そして設定場面等の造形に関わる時間,空間的構成要素を明らかにすることを目的としている。

さらに,それらの関係から生じる現象を構造的にとらえることを試み,「環境特性を感知する造形」をデザインす る際の最適化へ向けた指針を作成し,デザイン実践を研究の展開として提示し,指針の妥当性の検証を行ったも のであり,全7章により構成されている。

 第1章では,背景として,変化に富み,豊かな気候風土を有する日本の環境特性とそれを感知する造形を探る 背景にっいて述べ,解決すべき課題として本研究の目的を示している。先行研究を分析概説し,本研究の位置づ

けを示している。

 第2章では本論文の主題である「環境感知器」の定義を「ある人間が生活する環境を前提とし,その環境にお ける特質を造形表現によって翻訳し,情報として提供する装置であり,その体験者は,美的体験を通して環境に おける特質を享受することができるもの」とした。実効的に働くための以下の必要条件をあわせて導出している。

 第3章では,自然の力で動く作品を制作し続ける環境造形作家のさきがけ的存在である,新宮晋の作晶につい て数量化理論を用いて分析し,作品の動的特性,形態の形成の様相を明らかにしている。得られた指標により,

新宮作品以外の動く環境造形作品である,カルダーのモビールや風車,風見鶏こいのぼりの4点を新宮作品と 共に同様の手法で分類し,薪宮作品の特徴との相似性を確認している。このことより,得られた指標が,新宮作 品以外の環境感器を判定するにあたって使用が妥当であることを確かめている。さらに環境感知器の感知特性の 視覚化,聴覚化の仕組みのモデル化を提案している。

 第4章では,越後妻有大地の芸術祭における作品群より,環境を感知する造形,つまり環境感知器としての特 姓を有する作品を全624の造形作品から89作晶を抽出し,動的特性と形態の形成様相を中心に考察を行っている。

抽出した作品群を環境の特性を知覚化する造形手法という観点から以下の7分類に類型化している。類型1は自 然物が造形と一体になるインボルブである。類型2は造形と環境が対比をなすコントラストである。類型3は,

造形が景観などの環境を切り取るフレーミングである。類型4は,特定の環境要素に鑑賞者の意識を誘導し,指 示するポインティングである。類型5は,環境の状態や変化に造形が反応するレスポンスである。類型7は,鏡 面などのように環境を反射するリフレクトである。類型7は,環境が織りなす現象を造形により写し出すトレー スである。この類型の特徴を考察して,環境感知器を計画する際の検討すべき指針として,1)設置環境に関わ る住民との協働,2)周到な環境特性の調査と活用方法の検討,3)単純なデザインによる表現の検討を挙げて いる。以上をまとめ,図式化した「自然のなかにつくられた造形と人間の関係」のモデルを導出している。

 第5章では,小学生の登下校時の道草遊びを事例として,人間が様々な環境特性に対して価値を感知し,活用 している状況を観察,分析することによりパ人閥が生活する上で環境に存在する様々な環境特性に対して感知す る行動の特性を明らかにしている。すなわち,児童の登下校の道草遊び行為を27回調査し,その項目を数量化皿 類による分析を行い,「造形要素の複雑さの度合い」と「規模を表す」という説明軸を得て,クラスター分析によ

り,9っの講堂に分類し,各類型の行動特性の特徴を導出している。その結果,2次元的で単紘 3次元的で複 雑な造形要素の中間的な環境で,より興味を持ち,積極的な行動が多く見られ,規模が大きく空間的な環境では,

歩行中の無意識的な行動が多く見られるという傾向を把握している。さらに,児童は様々な行動特性を持ち,偶 然目の前に出現した空間構成要素に順応した行動をとることを把握している。そして都市の構成要素と人,行動 が関係した環境感知器として働く様態をモデル化している。

 第6章では,第3章から第5章の分析で得られた部分的な環境感知器の仕組みのモデルをまとめ,環境と人と の間におかれる役割と仕組みを図式化した環境感知器のモデルを導出している。このモデルの有効性を検討する ために,実際に「環境感知器」3件を制作し,作品を通して環境特性と造形との関係から生じる現象を構造的に

とらえることを試み,「環境感知器」の実践的検証を行っている。環境源から造形,そして人への感知までの「気 づくことの伝達」がモデルの流れに従い連関することが確認できている。豊かな気候風土を有する日本の環境特 性を効果的に表出させる方向性を見出し,環境要素に対する造形物の特性を反応させる基本的な働きにっいて明

らかにしている。

 第7章「結論では,各章で得られた知見を総括し本論文の結論とし,今後の課題と将来への展望にっいて述

べている。

 以上のように,本論文は気候風土の下,都市・集落・田園に存在する環境を人間が感知し,具体化・視覚化さ

れた造形としての「環境感知器」の特性を周囲環境との関係の中で,数量的評価とモデル化を行う手法を用いて

明らかにした研究であり,工学を基礎としたデザイン学の分野の研究として価値あるもので,博士(工学)の学

位にふさわしいものと認める。

参照

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