被服製作基礎技能に対する学生の自己評価と 被服実習授業の検討
赤 崎 眞 弓*
(平成7年10月31日受理〉
A Research of Sewing Skills by Students for Opening a Sewing Class
Mayumi AKASAKI
(Receive(1 0ctober31,1995)
1.はじめに
小学校家庭科は,教科の目標に「衣食住などに関する実践的な活動を通して,日常生活 に必要な知識と技能を習得させるとともに…・」とあるように,実践的・体験的な学習を 行う教科である。衣食住のうち,衣に関する領域である被服領域では,製作に関する基礎 的な知識や技能を習得させることになる。ここでいう基礎的な知識や技能とは,「習得し た知識や技能が,応用的,発展的,創造的なものとなって日常生活に生かされる可能性を 持つことを意味しているj I)と説明されている。したがって,指導する教員はこれらの知識 や技能を確実に習得していなければならないのであるが,音楽や体育や図画工作のような 他の技能教科とは異なり,大学において技能訓練の為の授業科目や時問が設けてあること は少ない2)と予想される。その理由は,学生の人数が多く,技能訓練の為の教室やミシンな どが確保できなかったり,授業担当者数不足や担当授業時間数の偏り,時間割の関連など の理由で実施されていないものと考えられる。小学校の教員として身につけなければなら ない資質は何であるかについては議論が分かれるところであろうが,資質の高い教員を養 成するためには,被服製作技能の習得は必須であって,児童にとってよりよい指導者にな れる可能性をもつことができると考えられる。
一方,小学校の家庭科は5年生,6年生の2学年で授業が行われているので,5年生ま たは6年生の担任にならなければ家庭科の授業を行うことはない。さらに,家庭科の専科 の先生がその授業を一手に引き受けていたり,他の学年の先生と担当授業教科を交換した
りする家庭科の授業担当形態が存在している。筆者は,小学校では全人的な教育が行われ るべきだと思っているので,家庭科も担任が担当して欲しいと思っている。苦手な事を一 生懸命やっている姿を児童に見せることが必要だと思うのである。
筆者は,本学部の教職単位である「初等家庭科教育」の授業において,被服製作技能を
*長崎大学教育学部家庭科教育
身につけさせる為に,2時間(1コマ)ほど時間を使っている3)ものの,学生の技能のレベ ルは低く,全学生にひとつの技能を練習させ,獲得させることもままならない状況である。
しかし,ひとつの技能でも獲得した学生は,少しだけ被服製作の技能について自信をもつ ことによって,他の技能習熟へのきっかけにできないものかと考えている。
一昨年(1993年度)指導した技能は,玉結びである。玉結びができるようになることと,
それを教える難しさを知ることと,教えるためのポイントをつかみ,ことば,教材・教具 を工夫することなどの学習である。この学生たちの玉結びの定着度や,被服製作について の意識や,技能についての評価はどのような状況であるか追跡調査を行うことによって,
一昨年度の授業の評価を行いたいと思った。また現状では,小学校教員養成課程の学生に 対して被服実習授業の開講は無理である為,初等家庭科教育の授業改善に生かせるデータ
を得たいと思った。
そこで,今後の授業改善の一助にすることを目的に,大学り授業内容としてはほとんど 行われていない被服製作基礎技能についで学生はどうとらえているのか,また,自分の技 能をどう評価しているのかなどについて調査を行い,被服実習授業の検討を行ったので報 告する。
2.調査の内容と方法4)
仮説としては次のようなことを考えた。
①玉結びは全員「よくできる」 「できる」と自己評価している。
②被服製作は苦手であると思っている学生は男子に多く,家庭科授業担当意識と関連が 深い。
③学生のこれまでの授業取得状況から判断して,被服製作技能獲得の評価は男女差が大 きい。
④被服製作技能習得のための授業を開設した場合,受講希望者が3割以上あれば,なん らかのかたちで授業改善に生かさなければならない。
調査内容は,以下の通りである。なお,質問紙は資料として文末に掲載する。
家庭科の授業担当意欲 ・被服製作技能の指導意欲 ・被服製作の好き嫌い
・被服製作実習授業の受講希望 ・被服製作基礎技能の習熟度(18項目)
調査対象,調査方法および回収率は次の通りである。なお,調査対象者は,平成5年度
(1993)に「初等家庭科教育」 (筆者担当)を受講した学生である。
調査対象
長崎大学教育学部 学校教員養成課程 稚園教員養成課程 護教員養成課程 年生計250名 調査方法 質問紙法
調査時期 1994年 9月22日〜10月3日 回収方法 留め置き法
回収率 86.4% (216名)
3.結果と考察
3−1 家庭科の授業担当意欲について
「小学校5,6年生の担任になったとき,家庭科の授業をしますか」という質問に対し て,「絶対したい」 「しても構わない」「専科の先生がいたらしない」 「専科の先生がい てもしたい」 「できればしたくない」 「絶対したくない」の6つの選択肢の中から選んで もらった。結果は表1である。
表1 家庭科の授業担当意欲
1 男
2.女 合計
N
%N
%N
%1.絶対したい 7 lO.1 28 19.0 35 16.2
2.しても構わない 33 47.8 84 57.1 117 54.2 3.専科の先生がいたらしない
1927.5 24 16.3 43 19.9 4.専科の先生がいてもする
11.4
3
2.0
4
1.9
5.できればしたくない 6
8.7
6
4.1
12
5.6
6.絶対したくない
34.3
2
1.4
5
2.3
合 計 69
100.0147
100.O216
100.0「しても構わない」が,54.2%で最も高く,約半数は家庭科の授業を行うことに抵抗感を 持っていないことが分かった。2番目に高かったのが, 「専科の先生がいたらしない」で
あり,19.9%であった。約2割が,家庭科だけを専門に担当する専科の先生にまかせたいと 考えているようである。
「絶対したい」と答えた男子学生は,10.1%,女子学生は19.0%と約2倍であった。これ に, 「専科の先生がいてもする」と答えた学生を加えると,男子学生は11.5%,女子学生は 2LO%である。家庭科の授業に対して積極的な姿勢がうかがえる。
しかし,「できればしたくない」「絶対したくない」と答えた学生は,男子学生で13.0
%,女子学生で5.5%いる。ここでも男子学生のほうがより否定的な結果がでている。
「専科の先生がいたらしない」,「できればしたくない」,「絶対したくない」と答え
た学生は,約3割であるが,その理由は何であろうか。「専科の先生がいたらしない」と
答えた学生の理由は,その専門性が自分の身についていないからであろうと推測できる。
とすると,専門性を身につけることができれば,授業を行いたいという意欲は増してくる かもしれない。それを可能にするためには,現在の授業を改善する必要があろう。
学級担任が家庭科を指導すると,子ども一人一人の状況を把握しているので,適切な指 導が行える。しかし,学級担任は他の授業も行うので,家庭科の指導や教材研究を行う時 間が,専科の先生に比べて少ない。一方,専科の先生が指導すると,技能面や家庭科に関 する専門性,また,授業の教材研究も十分に行え,しっかりとした指導が行える。しかし,
子どもと会える時問も限られているので,学級担任のように子ども一人一人の状況を把握 しながら指導することは難しいだろう。それぞれの特徴を考え,学級担任がいいのか,専 科の先生の指導がいいのかを十分に考える必要があろう。ただし,筆者は,小学校では全 人的な教育が行われるべきだと思っているので,家庭科も担任が担当して欲しいと思って いる。児童に苦手な教科を一生懸命やりなさいというのであるから,先生も苦手な教科を 一生懸命やっているという姿を,児童に見せることが必要だと思うのである。
3−2 被服製作の好き嫌いと被服製作技能の指導意欲
「被服製作は好きですか」という質問に対して,「好き」と答えた男子学生は24.6%,女 子学生は55.8%で, 「嫌い」と答えた男子学生は29.0%,女子学生は13.6%であった。 「ど
ちらでもない」と答えた学生は男子46.4%,女子30.6%であった。男子学生の「嫌い」が「好 き」を上回ったのは,高等学校の家庭科を履修しておらず,また中学でも被服領域を履修 していない為であろう。小学校で家庭科を履修しただけでは,経験が少ないのである。
「被服製作技能の指導に力をいれたいですか」という質問に対しては,力を「入れる」
と答えた学生は約4分の1で,「どちらでもない」と答えた学生は約半数であった。これ から分かることは,家庭科の中の特に被服製作技能の指導だけに力をいれるこどはせず,
家庭科の領域全体に偏りなく力をいれたいという学生の意志のあらわれだと考えられる。
表2は,被服製作の好き嫌いと被服製作技能の指導との関連である。被服製作が好きで あれば指導に力を入れるのではないかと予想をたてたが,予想通り,「好き」と答えた学 生の約4割が力を「入れる」と答え, 「嫌い」と答えた学生の15%が力を「入れない」と答 えている。
表2 被服製作の好き嫌いと被服製作技能の指導
1.好 き 2.嫌い 3.どちらでもない 合 計
N
%N
% N %N
%1.入れる
.入れない
.どちらでもない
.N.A
合計
38 49 199
38.4
1.0 9.5 1.1
00.0
46161440
10.0
5.0 0.0 5.0
00.0 13 37 477
16.9
3.9 8.1 1.2
00.0
55 010249216 25.5
4.6 7.2 2.7
00.0
3−3 被服製作実習の受講希望
「大学のカリキュラムの中で,被服製作実習の授業があれば,受講しますか」という質
問に対する結果は,表3の通りである。
表3 被服製作実習の受講希望
1
男
2女
合計N
%N
%N
%1.する
.しない
.わからない 合 計
14 92669 20.3
2.0 7.7
00.0
52 966147 35.4
9.7 4.9
00.0
66 892216 30.6
6.9 2.6
00.0
「受講する」と答えた学生は,30.6%である。この数字からは,選択授業として開講する 価値があるといえる。授業内容として,被服製作実習のみでなく,調理実習,食物や住居 関係の実験などを加えて,今後授業開講の可能性をさぐりたい。学生数も66人であるので,
その実施の可能性は高いといえよう。
3−4 被服製作基礎技能に対する自己評価
小学校家庭科の指導書及び教科書の中から,被服製作に関する基礎的な技能を18項目抽出 し,それらの項目!こ対して,「よくできる」 「できる」 「できない」 「仕方が分からない」
の4段階で自己評価をしてもらった。
(1) 「よくできる」または「できる」と評価した項目について 「よくできる」と「できる」を合わせて表した結果は,表4である。
表4 「よくできる」と「できる」
(数字は%)項 目 男 女 全 体
1i採寸
46.4 91.1 76.9
2i型紙づくり 26.1 46.9 40.3
31印つけ 5
31.9 96.6 75.9
41裁断
52.2 78.6 83.8
:
1布の三つ折り 40.5 93.2 76.4
6iまち針うち 84.1
100.094.9
7i糸通し 97.1
100.099.1
8i玉結び 97.1 99.3 98.6
g iなみ縫い 65.2 85.7 79.2
1
01本返し縫い 69.5 96.6 88.0
11i半返し縫い
71.0 96.6 88.4
12i玉どめ 88.4
100.096.3
13i糸切り
97.1
100.099.0
14iミシンの準備 27.5 95.9 74.1 15iミシンの調節 15.9 88.5 65.2 16iミシンで直線縫い 69.6 99.3 89.8
75.4
100.092.2
18iアイロンがけ 53.6 95.9 82.4
「よくできる」と「できる」を合わせて90%以上の項目が,6つあり,上位から順に,
糸通し,糸切り,玉結び,玉どめ,まち針うち,ボタンつけである。
穴に紐や糸を通すことやはさみで物を切ることは,日常的に経験していることである。
穴の大きさが違ったり,穴に通すものが違ったりするだけで,「通す」という行為自体 は同じである。糸通しや糸切りに必要なことは,小さな穴に小さなものを通すというこ とやぐにゃぐにゃしたものを通すという作業であるので,針を固定したり,通しやすい ように糸を斜めに切ることなどがコッである。
次に,玉結びであるが,98.6%の学生が「よくできる」または「できる」と答えている。
男女の差はほとんどなかった。筆者の授業の中で,玉結びの練習を行った成果であろう。
しかし,上位6項目の内,女子学生が100.0%でないのは,この玉結びだけであり,授業 中に玉結びの評価基準をしっかり伝えたため,できあがった玉結びに対して厳しく評価
した為ではないかと考えられる。授業中の状況からは,玉結びの評価基準を正しい玉結 びの仕方とセットで示すことによって,また,繰り返し練習することによって,実際の できばえには上達がみられ,個々人の技能としては向上したと筆者は評価しているもの の,学生の自己評価の観点が他の項目より明確になっていたり,評価基準がやや高くな っている為ではないかと思われる。
玉結びを作り,縫い始めたら,かならず玉どめが必要となる。玉どめも玉結びと同じ ように,96.3%の学生が「よくできる」または「できる」と認識している。
まち針うちについては,女子学生は100.0%,男子学生は84.1%である。
oボタンつけは,男子学生が75.4%,女子学生は全員「よくできる」または「できる」と 答えている。このような結果がでたのは,日常生活の中で衣服の手入れとしてしばしば 行われていることであるからだろう。きれいに,丈夫につけられたかということを,質 間の項目に付け加えれば若干減ったかもしれないが,ほとんどの学生はボタンをつける ことができるということが分かった。
女子学生については,一番低い型紙作りでも46.9%であったのに対して,男子学生のほ うは,全項目について女子学生より低く,その技能は身についているとはいいがたく,
被服製作基礎技能についての自己評価では男女差が著しいことがわかった。
(2) 「できない」または「仕方が分からない」と評価した項目について
「できない」と「仕方が分からない」を合わせて表した結果は,表5である。
型紙づくり,ミシンの調節,ミシンの準備,しるしつけ,布の三つ折りを苦手としてい ることが分かる。特に,苦手としているのは男子に多く,5割を越えている。
型紙づくりは,男子学生も女子学生も約5割以上の学生が「できない」または「仕方が わからない」と答えている。これは,ほとんどの学生が型紙を作ったことがないからだと 考えることができる。小学校や中学校では既製の型紙利用することが多く,型紙を作った ことのある人はきわめて少ない。
ミシンの調節は,男子学生が最も「できない」とする技能である。ほとんどの男子学生
は,小学生の頃にミシンの学習をしたことがあるだけであろう。小学校の家庭科の中でミ
シンを学習する時間は限られている。その中でミシンを使いこなせる技能を獲得すること
は難しいだろう。その点,女子学生は,中学や高校で家庭科を受講しているのでミシンに
触れる機会が男子よりも多く,ミシンの操作に関する技能の獲得の為の時間も機会もある。
したがって,男女差が大きくあらわれたと思われる。ミシンの調節ができるようになるた めには,糸のかけ方や糸と布の関係,上糸と下糸の関係など,多くの知識や経験も必要に なってくる。
ミシンの準備も,男子学生の7割が「できない」または「仕方が分からない」と答えて いる。ここでも男子と女子の差が明確に出ている。ここでのミシンの準備は,上糸,下糸 を正しくかけミシンで縫う直前の状態にすることである。糸を正しくかけられる為には,
ミシンを使う機会がなければ,できるようにはならない。やはり,ミシンの技能に関して は多くの体験が必要である。
印つけは,型紙に合わせて,布に印をつけていくことである。印つけは,小学校のエプ ロンづくりなどで行ったことがあるのに,「できない」または「仕方が分からない」と答 えた男子学生は,68.1%にも達している。これも,男子が小学校卒業以後,被服製作をほ とんど経験していない為このような結果が出たと考えられる。経験していないから,どの ようにして印をつけるのか,何でつけるのかといった知識も不足しているのである。
布の三つ折りでは,「できない」または「仕方が分からない」と答えた男子学生が,59.4
%である。布を三つ折りにする箇所は,袋の端のしまつであったり,スカートやエプロン の裾のしまつであったりする。男子学生は自分のズボンの裾がほころびてしまって始末す ることはないのであろうか。
表5 「できない」と「仕方が分からない」
(数字は%)項 目 男 女 全 体
l i採寸 53.6
8.8
23.1
2i型紙づくり 73.9 53.0 59.7
31印つけ 68.1
3.4
24.1
:
1裁断 47.8
1.4
16.2
}
:布の三つ折り 59.4
6.8
23.6
6iまち針うち 15.9
0.0 5.1
7i糸通し
2.9 0.0 0.9
8i玉結び
2.9 0.7 1.4
g iなみ縫い 34.8 14.3 20.8
1
01本返し縫い 30.4
3.4
12.1
11i半返し縫い 28.9
3.4
ll.6
12i玉どめ 11.5
0.O 3.7
13i糸切り
2.8 0.0 1.0
14iミシンの準備 72.5
4.0
25.9 15iミシンの調節 84.1 ll.5 34.7 16iミシンで直線縫い 30.4
0.7
lO.2 24.6
0.0 7.9
46.3
4.0
17.6
3−5 被服実習受講希望者と被服製作基礎技能の関連
被服実習受講希望者で被服基礎技能が「できない」または「仕方が分からない」と答え た人数を集計したものが,表6と表7である。
被服実習に関する授業を開講する場合に,その指導内容を考えるデータとなり得る。学 生たちのこれまで受けてきた教育の差5)から生じたものではあると考えられるが,大学で行
う授業では,男子学生と女子学生とは別々の内容に指導の重点をおかなければならないこ とが分かった。
すなわち,男子学生に対しては,ミシンに関する指導が最も必要とされていることが分 かった。さらに,布の三つ折り,型紙づくり,採寸,印つけと続き,18項目中,糸通し,玉 結び,糸切りの3つのみが全員できるようであるので,かなりの練習題材及び時間を確保
しなければならないことも分かった。
女子学生については,型紙づくりが50.0%と最も多く,次に,なみ縫いであった。この型 紙づくりについては、女子学生の把握している内容はかなり高度のものであると予想され る。あくまでも基礎的なものであって,ゆるみとか縫い代とかが組み込まれた型紙づくり である。
18項目中,裁断,まち針うち,糸通し,玉結び,玉どめ,糸切り,ミシンで直線縫い,ボ タンつけは全員できると評価している。
現段階では,この授業を開講できる状況にないので,学生個々人で学習できるような,
それぞれの技能の習得に関するワークブック6)を作成している。もし,授業が開講できれば 授業中に利用したいと思っている。また,今年度の授業で,一部活用してみようと計画を 立てている。
表6 受講希望者で「できない」または 「仕方が分からない」 (男子学生)
項 目 男
実数
%ミシンの調節
1178.5
ミシンの準備 9 64.3
布の三つ折り 9 64.3
型紙づくり 8 57.2
採寸
535.7
印つけ 5 35.7
ミシンで直線縫い 4 28.6
アイロンがけ 4 28.6
なみ縫い 3 21.4
裁断 2 14.3
本返し縫い 2 14.3
半返し縫い 2 14.3
ボタンつけ 2 14.3
まち針うち
17.1
玉どめ
17.1
糸通し 0
0.0
玉結び 0
0.0
糸切り 0
0.0
表7 受講希望者で「できない」または 「仕方が分からない」 (女子学生)
項 目 女
実数
%型紙づくり 26 50.0
なみ縫い 9 17.3
採寸
47.7
ミシンの調節
47.7
アイロンがけ
23.8
印つけ 1
1.9
布の三つ折り 1
1.9
本返し縫い 1
1.9
半返し縫い
11.9
ミシンの準備 1
1.9
裁断
00.0
まち針うち
0O.0
糸通し 0
0.0
玉結び 0
0.0玉どめ 0
O.0
糸切り 0
0.0
ミシンで直線縫い 0
0.0
ボタンつけ 0
0.0
3−6 自己評価の結果と実際のずれ
今回の調査では,被服製作基礎技能に対して学生個々人に自己評価してもらったのであ って,それぞれの技能の評価基準を設けていたわけではないので,評価基準が一定してお らず,また,それぞれの技能の到達度やレベルがまちまちであったことが,この調査の欠 点であった。しかし,このことは調査前から分かっていたことである。おそらく学生の技 能についての正確な実態は,この調査結果とはかなりかけ離れていると予想される。しか しながら,この調査では,本当にできるのかということよりも,できるとか,できないと か,仕方が分からないとかいう,学生自身の意識の実態が知りたかったのである。なぜな らば,技能の向上には,技能に対する自己評価が欠かせない。練習と適切な評価を繰り返 すことによってのみ技能は向上するからである。この被服製作基礎技能に関する学生の意 識についての現状把握を,筆者の今後の一連の研究の出発点にするつもりである。
4.おわりに
調査の結果,次のことが分かった。
・約6割の学生が,家庭科の授業をしたい,しても構わないと思っている。学生は家庭 科の授業を行うことに対して,積極的である。
・被服製作が好きだから被服製作技能の指導に力をいれるというわけではない。
「よくできる」または「できる」と評価した技能と,「できない」または「仕方が分 からない」と評価した技能が明らかになった。
・男子学生と女子学生の技能の自己評価には大きな差がみられた。
・特に男女差がある技能はつぎの5種類であった。
ミシンの準備,ミシンの調節,採寸,しるしつけ,布の三つ折り
・学生のほぼ8割は被服製作の基礎技能は習得できている,と自己評価していることが 分かった。また,学生の自己評価の立場は次の3つに区別できる。
①できるのに低い評価をしている場合 のできないのに高い評価をしている場合 ③正しい評価をしている場合
以上のように,学生の実態を把握することができた。しかし,これから学生が教員とな り,現場にでて指導をするためには,技能が身についていることも必要だが,教員が技術 の正しい評価判断ができなければ,いくら児童に指導しても,正しい技能を習得させるこ とはできない。したがって,学生が正しい技能を身につけるための機会を設ける必要があ ることが分かった。
さらに,被服製作基礎技能の習得意識は,女子学生については高いものの,男子学生の ほうは,全項目について女子学生より低く,その技能は身についているとはいいがたく,
被服製作基礎技能についての自己評価では男女差が著しいことがわかった。
男女共に,家庭科の専門性を身につけることができれば,学生の家庭科の授業を行いた
いという意欲は増してくるかもしれない。それを可能にするためには,現在の授業を改善
する必要があろう。
被服実習の授業を「受講する」と答えた学生は,30.6%であった。この数字からは,大学 での選択科目としてその授業を開講する価値があるといえるだろう。被服製作実習のみで なく,調理実習,食物や住居関係の実験などを加えて,今後,授業開講の可能性をさぐり たいと思う。今回の受講希望者数は66人であったので,人数の関係からはその実施の可能性 は高いといえよう。
また,今回の調査結果は,被服実習に関する授業を開講する場合に,その指導内容を考 えるデータとなりえた。学生たちのこれまで受けてきた教育の差から生じたものではある が,男子学生と女子学生とは別々の内容に指導の重点をおかなければならないことも分か
った。
引用文献および注釈
1)文部省,小学校指導書家庭編,開隆堂,1989,P6
2)小学校教諭免許取得の為には,小学校教科の単位としては各教科2単位,教職の単位としては各教科2単 位が免許法上の最低単位である為,それ以上の単位取得の為に授業を開設している大学は少ない。福岡教育 大学は,以前開設していたが,現在は開設されていない。長崎大学,大分大学は開設していない。
3)これまでに行ったのは,玉結び,玉どめ,名前の縫いとり,ボタンつけである。学生数は,140名位の場 合と80名位の場合である。福岡教育大学において,学生数50名位のクラスで行った時(集中講義)は,小物 づくりやパッチワークで針山づくりを行った(4時問使った)こともある。当時,福岡教育大学では,教職 の単位が3単位あり,そのうちの1単位の演習で行ったのである。技能の向上にはかなりの成果があげられ
たと思う。4)この調査は,平成6年度卒業生の諏訪こずえさんの行った調査をもとに,筆者独自の仮説をたて,分析考
察を行った。5)調査対象者である学生たちの家庭科履修状況である。
S58〜 S60〜 S63〜 H3〜
小学校5,6年
庭中学校 術・家庭
高 校 庭
大 学 職,教科
男 被 服
物住居と家族
食物・被服・住居・保
の中から1領域以上
択初等家庭科教育
女 庭生活
食物123
服123居保育 家庭一般
単位必修
6)このワークブックは,平成6年度卒業生の諏訪こずえさんが,卒業論文の一部として作成したものである。
資 料
小学校家庭科の被服領域に関する調査
( )教員養成課程 ( )選修 男 女
次の質問について,あなたの該当する番号にOをつけてください。
1 5,6年生の担任になったとき,家庭科の授業をしますか。
1 絶対したい 2 しても構わない
3 専科の先生がいたらしない 4 専科の先生がいてもしたい 5 できればしたくない 6 絶対したダない
(1で1,2,4に○をつけた方にお尋ねします。)
1 入れる 2 入れない 3 どちらでもない
1 好き 2 嫌い 3 どちらでもない
1 する 2 しない 3 わからない
V 被服製作技能に関する問いについて,該当する番号にOをつけてください。
よくできる できる できない 仕方が 分からない 1 体や物の寸法をはかることができますか。 1 2 3 4
2 大きさに合わせて,型紙(出来上りの形と大き
1 2 3 4 さを紙でつくったもの)を作ることができますか。
3 型紙どおりにしるしをつけることができますか。 1 2 3 4 11 あなたは,被服製作の技能の指導に力を入れたいですか。
皿 あなたは,被服製作は好きですか。
IV 大学のカリキュラムの中で,被服製作実習の授業があれば,受講しますか。
012 34 5 678 4 5 678 9111 11 1 111
よくできる しるしどおりに布を裁ちばさみで裁つことが
1 できますか。
布を三つ折りにすること、ができますか。
(布端のしまっ)
布をまち針でとめることができますか。
針に,糸を通すことができますか。
玉結び(縫いはじめに糸の端を結ぶ〉ができ ますか。
指ぬきを使って,なみぬいができますか。
本返しぬいができますか。
半返しぬいができますか。
玉どめ(縫い終わりに糸の端を止める)ができ ますか。
糸切りばさみを使って,糸を切れますか。
ミシンを使うときに,上糸,下糸の準備がで きますか。
ミシンを操作して,糸の調子や,針目の大き さを調節することができますか。
ミシンで直線縫いをすることができますか。
ボタンをつけることができますか。
布にあった温度でアイロンをかけることがで きますか。
き2 2 22 2222 2 2 2 2 22 2
るで い
がな 方ら 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 4 仕か
い 分
な 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3 3
き で