著者 堀池 美衣
雑誌名 研究紀要 : 共に創りあげる授業
巻 20
ページ 108‑114
発行年 2020‑03
出版者 静岡大学教育学部附属静岡中学校
URL http://doi.org/10.14945/00027161
授業実践
1 題材名 思いのある衣服
―思いを込める衣生活に向かって―(第2学年)
2 題材の目標
T.P.O.や流行をもとに衣服を選んでいる子どもたちが,身近な衣服に込められている意味や思いを様々 な視点から探ることで,衣服に自分の思いを重ねて,衣服を選択することができるようになる。
3 題材観 (1) 人と衣服
私たちは生まれて間もなく衣服を身にまとって 以来,毎日着用して生活を送っています。このよ うな生活は人生の幕を閉じるまで続くことになり ます。
衣服を着ることは,身体を守り,健康で安全な 暮らしを支えることだけでなく,所属や役割を表 したり,力や美しさを示したりすることでもあり ます。着用すること,製作することによって個性 を表現し,楽しむ人たちも多いはずです。ですか ら,生活の中に衣服があることで,人とのつなが りや心の豊かさがもたらされていると考えます。
和歌や文学作品の描写として使われていることか らも,衣服と私たちの生活は強く結びつき,欠か すことのできない存在となっていると言えます。
それほどまでに結びつきが強いものだからこそ,
私たちは衣服に思いを込め,衣服と共に生活して いるのでしょう。
(2) 衣服に込められている意味や思い
人の一生には,成長の節目ごとに通過儀礼と呼 ばれる慣習があり,昔から,節目を迎えた人に対 して願いを込めて様々な儀式が行われてきました。
その際に身に着ける特別な衣服にもそれぞれ意味 や思いが込められています。
例えば,生まれてすぐに亡くなってしまう子ど もが多かった時代では,生後3日目が大切な節目 の日とされてきました。この節目に新生児が初め て袖を通す産着には,江戸時代から麻の葉模様が 用いられ,子どもが麻のように丈夫でまっすぐ成 長してほしいという願いが込められています。ま た明治中期までは,厄除けとして産着の背に背守 り縫いを五色の絹糸で縫う習わしがありました。
乳児の運動を妨げないゆったりした形をしており,
着物式,洋服式どちらも前開きで着替えやおむつ 交換が容易な形になっています。
婚礼衣装においては,色が大きな意味をもって います。白は純潔を表し,邪気を払う意味をもつ 色です。打掛,その下に着る掛下,帯,そして小
物に至るまで全てが白一色で統一されている白無 垢には,汚れなくまっさらな状態で嫁ぐという意 味が込められているのです。そして,披露宴の際 に新婦が白無垢から華やかな色打掛に着替えるお 色直しには,白からどのような色 (嫁ぎ先の家風)
にも染まるという意味があります。
このように衣服を見ると,衣服の形,色,素材,
由来などから込められた思いを感じることができ ます。このことは,先人たちが衣服の形,色,素 材などに思いを込めてきたということであり,衣 服は思いを込めることができるものであるとも言 えるでしょう。
(3) 「込められている思い」から衣服を見つめ直 すこと
時代が移り変わるとともに通過儀礼はイベント 化,形骸化してきており,現代では「記念として」
「決まりだから」 「周りの人もそうしているから」
という理由で行っている場合が多くなっているの ではないでしょうか。また,短期間で流行が移り 変わり, 多種多様な衣服があふれている現代では,
日常着においても「流行だから」 「いつも着ている 系統の衣服だから」 「好きだから」と,その衣服を 選ぶ理由をじっくりと考えなくても選ぶことがで きるかもしれません。しかし,身近な衣服に込め られている意味や思いを知ろうとすると,普段そ れほど意識していない衣服の形,色,素材や由来 などに自然と目が向くでしょう。 「思い」というフ ィルターを通して衣服そのものと向き合うことで,
込められている意味や思いを感じとることができ れば,自分の思いと重ね合わせて着るようになる でしょう。そしてそれは,衣服に思いを込めるこ とにつながると言えます。
(4) 衣服に思いを込めること
世の中には,応援しているチームに勝ってほし い(白星をあげてほしい)という思いからコーデ ィネートの中に白いものを取り入れたり,日本の 文化を大切にしたいという気持ちから日常的に和
く