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平成 27 年 3 月 30 日

イラクの石油・エネルギー産業

米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)のレポートを主な ベースとして、イラクの石油・エネルギー産業について紹 介する。 1. イラクの一般情報 1.1. イラクの位置と地勢 イラクは西アジアに位置している。図 1 参照のとおり、6 ヶ国(イラン、トルコ、 シリア、ヨルダン、サウジアラビア、ク ウェート)と国境を接し、南東部の一部 がペルシア湾に面する。国土は大別して 以下 3 地域に分けられる。 ① 中央部を流れる二本の大河(ユーフ ラテス川とティグリス川)の流域、 ② 北部クルディスタン地方の山岳地域、 ③ 西南部を占める砂漠地域 古来、同国はメソポタミアと呼ばれ肥 沃で広大な大河の流域を生かした農業国 であったが、20 世紀に入り豊かな石油資 源を背景に工業化を目指すようになった。 図 2 と表 1 参照のとおり、イラクの地方 行政区画は 19 の県で構成されている。また、イラク北東部のクルディスタン地域政府 (KRG)が治めているクルディスタン地域はアルビール県・ドホーク県・スレイマニヤ県 の 3 県を含むが、同じくクルド人が多く住むイラク最大の油田地帯キルクーク県は含まれ ていない(図 3 参照)。表 2 にイラクの主な一般情報を示す。

2014 年度

3

3

4

4

1. イラクの一般情報 ··· 1 2. 石油 ··· 3 3. 天然ガス ··· 14 図 1 イラクの概略地図

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設置当初の自治地域 後に併合された区域 クルディスタン地域政府(KRG)の主張する自治地域 イラク領土 図 2 イラクの地方行政区画(県) 図 3 クルディスタン地域 表 1 イラクの県と県都(※はクルディスタン地域) 県名 県都 1 ドホーク(Dohuk)県 ※ ドホーク 2 ニーナワー(Nineveh)県 モスル 3 アルビール(Erbil)県 ※ アルビール :クルディスタン地域の首都 4 キルクーク(Kirkuk)県 キルクーク 5 スレイマニヤ(Sulaymaniyah)県 ※ スレイマニヤ 6 サラーフッディーン(Saladin)県 ティクリート 7 アンバール(Al Anbar)県 ラマーディー 8 バグダード(Baghdad)県 バグダード 9 ディヤーラー(Diyala)県 バアクーバ 10 カルバラー(Karbala)県 カルバラー 11 バービル(Babil)県 ヒッラ 12 ワーシト(Wasit)県 クート 13 ナジャフ(Najaf)県 ナジャフ 14 カーディーシーヤ(Al-Qādisiyyah)県 ディーワーニーヤ 15 マイサーン(Maysan)県 アマーラ 16 ムサンナー(Muthanna)県 サマーワ 17 ジーカール(Dhi Qar)県 ナーシリーヤ 18 バスラ(Basra)県 バスラ 19 ハラブジャ(Halabja)県 2014 年 3 月、イラク政府はスレイマニヤ県を分割 してハラブジャ(Halabja)県という 19 番目の新し い県を設置した。

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表 2 イラクの主な一般情報 通称国名 イラク 正式国名及び国旗 イラク共和国 独立年 1932 年、英国から独立 政体 共和制 首都 バグダード 人口 3,480 万人(2013 年) 公用語 アラビア語、クルド語 通貨 イラク ディナール (IQD) 名目 GDP 2,290 億ドル(2013 年) 1.2. イラクの政情 1958 年のイラク革命でイラクは王制から共和制に転換したが、政情不安が続き、1968 年のクーデターで生まれたバアス党政権が 1970 年代後半から比較的安定した政治基盤を 築いた。し 1979 年にサダム・フセインが大統領に就任後は、イラン・イラク戦争(1980 ~88)、湾岸戦争(1990~91)に続き 2003 年のイラク戦争でフセイン政権が崩壊し、連合 国暫定当局(CPA)がイラクを統治した。CPA は 2004 年にイラク暫定政権に権限を移譲、 2006 年にはマリキを首相とするシーア派政権が樹立された。イラク戦争における正規軍の 戦闘は 2003 年内に終わったが、米軍は治安維持のため駐留を続けた。2011 年末に米軍が 完全撤退し、オバマ大統領がイラク戦争の完全終結を宣言した。米軍撤退後、イラク国内 はさらに混乱し 2014 年 8 月にマリキ首相が辞任、翌月同じシーア派のアバーディ首相が率

いる政権が発足し現在に至っている。だが、このところ過激派組織 ISIL(Islamic State in Iraq and the Levant)が台頭、イラクやシリアの一部を支配し、イラクの国土統治は複雑な様相 を呈している。 2. 石油 2.1. 石油分野の概況 イラクは世界第 5 位の原油確認埋蔵量を保持している。全ての油田は内陸部にあり、主 要な油田の多くは生産中もしくは開発中である。単純な地質のため油田の石油回収コスト は比較的安価である。イラクは何年も続いた戦争と制裁が終わった後、石油と天然ガスを 再開発している。イラク政府は意欲的な石油生産目標を掲げ、以前に国際石油企業(IOCs) と署名した技術サービス契約中含まれている石油生産量の目標について再交渉している。 既に発表されている改正目標のいくつかに基づくと、イラクは 2020 年までに原油生産量 900 万 BPD を目指していると見られる。イラク政府はこの目標を達成するため、南部にお いて、輸出インフラと貯蔵能力の拡大、大規模な水の供給と水注入システムの建設などを 含む大きな課題に取り組んでいる。同時に、政治的な不安定、宗派間の闘争、ISIL の拡大 の脅威などがイラクの将来に重大な不確実性をもたらしている。イラクの石油に関する主 な情報は表 3、石油インフラの現状は図 4 のとおりである。

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表 3 イラクの石油の主な情報 石油確認埋蔵量 1,440 億バレル(世界第 5 位) 石油の輸出入 純輸出国 石油輸出国機構(OPEC) 加盟 原油精製能力 108.6 万 BPD 製油所数 15 図 4 イラクの石油インフラ 2.2. ISIL の石油分野への影響 ISIL は 2014 年 6 月初めからイラク攻撃を開始した。北部最大の都市のひとつであるモ スルを占領し、続いて付近の町々も占領した。ISIL の攻撃はクルディスタン地域を除くイ ラク北部の石油生産と製油所操業に影響を与えているが、イラク原油の輸出量合計の約 95%を占めている南部の石油生産および輸出には影響していない。現在、ISIL の攻撃はク ルディスタン地域政府(KRG)にて生産中の油田(Khurmala、Dome、Shaikan)の近くに まで迫り戦闘が続いている。

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Batma、Najma)を占領したが、後に 2014 年 8 月から始まった米国主導の空爆によりその うちのいくつかの支配権を失った。ISIL の主要な石油生産源の 1 つである Ajeel 油田(2.8 万 BPD)は 2014 年 8 月の空爆で制御室に壊滅的な被害を被った。その空爆後イラク高官 は、ISIL のイラクでの生産量は 1.5 万 BPD を超えることはないと報告している。だが、ISIL は闇市場で石油の販売を続けており、その多くはイラク北部の小規模な製油所またはトル コに販売している。KRG とトルコ政府双方は石油密輸を取り締まる対策を強めている。 ISIL はまた、石油の貯蔵タンクやパイプライン及びポンプステーションから石油を盗んで おり、その量は 300 万バレルと推定される。 2014 年 6 月後半、ISIL はイラク最大の Baiji 製油所を攻撃し、同製油所は操業停止した。 2015 年 1 月までにイラク政府は Baiji 製油所を取り戻したが、未だ操業再開には至ってい ない。Baiji 製油所の操業停止はクルディスタン地域を除くイラク北部における石油生産を ほとんど停止する要因となった。ISIL の妨害工作により、イラク~トルコを結ぶ「イラク・ トルコパイプライン」のイラク領域は既に激しく損傷を受け、2014 年 3 月以降停止してい る。Baiji 製油所とパイプラインの停止に伴い、数ヶ月間に亘ってイラク北部(キルクーク 油田と Bal Hassan 油田)の石油の生産が途絶えた。

キルクーク油田と Bal Hassan 油田を巡る ISIL と KRG の衝突後、2014 年 7 月に KRG は キルクーク油田の一部である Abana Dome 油田と Bal Hassan 油田を奪回し、直後に KRG は これらの油田の生産を開始した。2014 年 12 月、イラク政府と KRG 間で合意に達した取り 決めに基づき、イラク政府が北部産原油に対する商業出口を提供し、新しく建設された 「KRG パイプライン」経由でキルクーク原油をトルコのセイハン港まで輸送している。 一方、イラク北部の石油会社はキルクークの Baba Dome 油田から約 12 万 BPD の生産を 継続している。そのうち 3 万 BPD はキルクーク製油所へ送り、残りを油田に再注入し随伴 ガスを回収、発電に使う天然ガス生産の維持に充てている。 2.3. 石油の埋蔵量 2015 年 1 月時点のイラクの石油確認埋蔵量は中東地域全体の約 18%、世界全体の約 9% に当たる 1,440 億バレルで、ベネズエラ、サウジアラビア、カナダ、イランに次いで世界 第 5 位に位置している。 シーア派が多いイラク南部には5つの超巨大油田(石油埋蔵量50億バレル超)が存在し、 その石油確認埋蔵量は同国全体の約 60%を占める。一方、クルド人が多く住む北部のキル クークとモスルやハナギン(Khanaqin)の近郊にイラク全体の 17%に当たる石油確認埋蔵 量が存在し、当エリアの石油管理権に関してクルド人と他民族の間で論争の源になってい る。国際エネルギー機関(IEA)はクルディスタン地域が石油確認埋蔵量 40 億バレルを保 有していると推定している。一方、KRG が発表している石油推定埋蔵量は未確認値を含む ため遥かに多い。最近、KRG は推定値を 450 億バレルから 600 億バレルに増やした。しか し、この値は第三者機関によって立証されていない。また、この値は、キルクーク油田を

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含む少なくとも論争中の区域内の油田を含んでいると思われる。 2.4. 石油分野の管理組織

2.4.1. 概要

イラク石油省がクルディスタン地域を除く全ての地域における石油と天然ガスの開発と 生産を統括している。一方、クルディスタン地域では KRG の天然資源省が石油と天然ガ スの開発と生産を統括している。イラク北部ではイラク国営 North Oil Company、中部では イラクで 4 番目の国営石油会社 Midland Oil Company、南部ではイラク国営 South Oil Companey と 2006 年に同社から分社した国営の Missan Oil Company が操業企業となってい る。国際石油企業(IOCs)がクルディスタン地域を含むイラク全土で大いに活動している。 IOCs はクルディスタン地域を除く地域ではイラク石油省と締結した技術サービス契約に 基づき、クルディスタン地域では KRG と締結した生産物分与協定に基づいて操業してい る。 2.4.2. イラク政府とクルディスタン地域政府間の葛藤 クルド人が自治するイラク北部地域の公式組織である KRG は、イラク政府と主権に関 して論争してきた。North Oil Company によるイラク北部のキルクーク油田の生産を上げる 計画に対し、本区域は KRG が支配する地域の端に位置するので KRG の承認が必要である と異議を唱えている。

一方、イラク石油省は全ての炭化水素に関する契約はイラク政府の署名が必要で、クル ディスタン地域で生産される石油もイラク石油販売公社(State Oil Marketing Organization: SOMO)を経由して販売および出荷されなければならないと主張している。しかし、炭化 水素への投資を管理するイラクの国内法がない状態の 2007 年に、KRG は自国の炭化水素 法を通した。イラク北部の開発鉱区(そのうちのいくつかは論争中の係争地)の生産物分 与協定をイラク政府とエクソンモービルが結んだ時、KRG はイラク政府に異議を申し立て た。以来、KRG はシェブロン、ガスプロム、トタールのようなメジャーと追加契約に署名 している。 2014 年12 月、イラク政府とKRGは石油輸出および収益に関し、以下の内容で合意した。 ① KRG はクルディスタン地域で生産された原油25 万BPD をセイハン基地でイラク石油 販売公社に渡す。 ② イラク政府はキルクーク原油 30 万 BPD を KRG パイプラインを経由してトルコのセ イハン港から輸出する。 ③ イラク政府は KRG にイラクの連邦予算の 17%とクルド人民兵組織ペシュメルガ (Peshmerga)に対し 10 億ドルの支払いを再開する。

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2.5. 石油精製 図 5 にイラクの主な製油所の 配置を、表 4 にイラクの製油所 一覧を示す。イラクの既設製油 所は北部に 6 ヶ所・中部に 4 ヶ 所・南部に 3 ヶ所・クルディス タン地域に 2 ヶ所、合計 15 ヶ所 あり、公称原油精製能力は合計 108.6 万 BPD である。ただし、 実際に使用可能な有効能力は多 くのケースで公称能力を下回っ ている。ISIL が Baiji 製油所を攻 撃した 2014 年 6 月より前は、有 効な原油精製能力合計は約 80 万 BPD であったが、同製油所が 操業停止してからは 60 万 BPD を下回っている。 表 4 イラクの製油所一覧 製油所名 企業 能力 (万 BPD) 備考 Baiji North Refineries Company 29.0 実行能力 23.0 万 BPD Kirkuk 3.0 Sininya 3.0 Hadeetha 1.6 Qayara 1.6 Kasak 1.0 Daura Midland Refineries Company 21.0 実行能力 14.0 万 BPD Najaf 3.0 Samawah 3.0 Diwanya 2.0 Basrah South Refineries Company 21.0 実行能力 13.5 万 BPD Missan 3.0 Nassiriya 3.0 Kalak

(near Erbil) KAR Group 8.0 9.5 万 BPD に増強予定

Bazian

(near Sulaimanya) Qaiwan Group 3.4 6.6 万 BPD に増強予定

能力計 108.6

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イラクの製油所は国内需要以上の重油を生産しているが、ガソリンなどの他の製品生産 量は不十分である。イラク政府は国内の石油製品不足を緩和し、最終的に石油製品を輸出 するため 4 つの製油所の新設と 2 つの既設製油所(Daura 製油所、Basrah 製油所)を拡張 し、原油精製能力 80 万 BPD を追加する計画を立てている。これらのプロジェクトの実現 は 2018 年以降になるとみられる。一方、クルディスタン地域で最大の製油所を操業してい る民間会社 KAR Group はニーナワー県に原油精製能力 6 万 BPD の製油所建設を計画して いる。 2.6. 石油の生産と消費 図 6 にイラクの原油生産量と消費量の推移を示す。2014 年、イラクは原油を前年より 30 万 BPD 以上多い 340 万 BPD 生産した。2013 年が前年比 7 万 BPD しか伸びなかったのに 比べ、2014 年は大きく増加した。2013 年の伸びが僅かだった理由は南部のインフラのボト ルネックに起因すると同時に、イラク・トルコパイプラインへの ISIL の頻繁な攻撃による 供給途絶が増えたためである。2014 年 3 月にイラク・トルコパイプラインが完全に停止し た後、同年 6 月の ISIL の攻撃により北部の石油生産がさらに多く停止した。しかし、南部 とクルディスタン地域の油田の生産量がその途絶した量を穴埋めする以上に増え、2014 年 12 月にはイラクの原油生産量の最大値(375 万 BPD、図 7 参照)を記録した。 これまで KRG によってコントロールされていた北部の生産量は、イラク政府との論争 により変動する傾向はあるが、最近着実に増加している。EIA は 2014 年後半のクルディス タン地域の原油生産量は 35 万 BPD であったと推定している。トルコのセイハン港を経由 して輸出されるクルディスタン地域の産油量を増やすため、KRG はパイプラインの輸送能 力拡大を許可した。KRG 天然資源省はクルド原油の当パイプライン経由でのトルコへの輸 送が 2014 年 5 月に開始されたと報告、輸送量は 2014 年 11 月には 30 万 BPD に達した。 KRG はまた、原油とコンデンセートを計 5〜10 万 BPD、ローリーでトルコの港(Mersin、 Dortyol、Toros)およびイランへ出荷している。 2003 年以降イラクの石油消費量は 1.6 倍に増加し、2014 年には石油と他の液体燃料を合 わせて 76 万 BPD 消費した。そのうち約 7 万 BPD の原油を発電に使用している。

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図 6 イラクの原油生産量と消費量(1990〜2014 年)

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表 5 イラクの油田 地域 主要油田名 外資操業会社 生産能 力 (万 BPD) 輸出方法 南部 Rumaila BP, CNPC 143.0 バスラ港および Khor-al-Amaya 港 West Qurna-1 ExxonMobil,

PetroChina, Shell 55.0

West Qurna-2 Lukoil 22.0

Zubair Eni, Occidental 36.0 Majnoon Shell, Petronas 20.0 Garraf Petronas, 石油資源開発 10.0 Missan fields (Fakka, Abu

Gharb, Bazergan) CNOOC 13.5 Halfaya CNPC, Total, Petronas 11.0

Other fields 21.5 小計 332.0 中部 Ahdab CNPC 14.0 南部の輸出イン フラ経由 Badra Gazprom Neft, Petronas

韓国ガス公社(Kogas) 1.5

Other fields 2.5

小計 18.0

北部

Kirkuk (Avana & Baba) N/A 22.0

キルクーク~セ イハン(トルコ) へパイプライン (ただし 2014 年 3 月より停止中)

Bai Hasan N/A 18.5

Jambur N/A 4.0

Khabbaz N/A 3.0

Other fields N/A 5.0

小計 52.5 イラク地域合計 402.5 クルデ ィスタ ン地域 Khurmala Dome

(northern tip of Kirkuk) 11.0 KRG パイプライ ン経由(~セイ ハン)の他、ト ルコ・イランへ ローリー輸送 Tawke DNO, Genel Energy 13.0

Taq Taq Genel Energy, Sinopec 13.0 Shaikan Gulf Keystone 2.1

Other fields 3.6

小計 42.7

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2.7. 石油の開発 2.7.1. 油田開発計画 イラクは油田開発により同国の産油量を増やす計画を進めている。イラク石油省は 2008 〜2009 年に石油探査鉱区の競争入札を 2 回実施後、巨大油田を開発もしくは再開発するた めの長期技術サービス契約を国際石油企業(IOCs)と締結している。イラクと IOCs は多 くの油田に対し、2017 年までに合計で 1,200 万 BPD を超える安定生産目標を設定したが、 これらの契約は当初より少ない生産量の水準で再交渉されている。既に発表された目標変 更を考慮すると、2020 年までに 900 万 BPD を生産する目標に変更されたと想定される。 しかし、イラクのインフラ整備の継続的な遅延から見れば、この変更目標さえ過度に楽観 的である。 過去 10 年間、イラク北部のキルクーク油田の産油能力は急激に減少してきた。当油田の 産油能力は、ピーク時の 80 万 BPD 超より遥かに少なく、現在は約 22 万 BPD である。2013 年、キルクーク油田に対し BP がコンサルティングサービスを提供する内容の 1 億ドルの 契約にイラク石油省と BP は署名し、両者は 2014 年後半に当油田の再開発についての協議 を開始した。 KRG はクルディスタン地域で 2015 年末もしくは 2016 年初めまでに 100 万 BPD 生産す る目標を立てている。現在のパイプライン能力ではこの生産量には対応できないので、パ イプライン能力を生産目標に見合うまでに拡大しなければならないが、ISIL の攻撃による プロジェクトの遅れによりこの目標は達成されそうもない。 2.7.2. 圧入水輸送事業 計画された石油増産計画を達成するには、石油貯留層の圧力を維持し、石油生産量を増 やし、石油の回収率を上げるため、天然ガスか水もしくは両方の注入量を相当量増やす事 が必要となる。イラクは将来の安定生産目標を達成するため水注入に依存することを計画 している。同国には清水が乏しいことから、海水使用を計画している。South Oil Company

は「圧入水輸送事業:Common Seawater Supply Project(CSSP)」を立ち上げている。ペル

シア湾からの海水を処理し、その後パイプライン経由で石油生産施設へ輸送する計画であ る。各企業は CSSP が 2020 年までに 1,000〜1,200 万 BPD の水を南部の 5 つの油田とマイ サーン県の 1 つの油田へ供給されることを要望している。しかし、その量は再交渉された 生産目標によっては変わる可能性がある。当プロジェクトは少なくとも 2 段階で実行され、 第 1 段階では全供給量の約半分が供給されるようになる。当プロジェクトは最も早くても 2018 年以前に遂行されることはないと報道されている。当初、プロジェクトリーダーはエ クソンモービルだったが、同社は 2011 年後半に撤退しプロジェクトを遅延させた。その後 米国拠点のエンジニアリング会社 CH2M Hill が当プロジェクトのコンサルタントとして 2012 年 12 月に任命されている。

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2.7.3. 電力問題 イラクの石油ガス産業は同国で最大の電力消費部門である。石油の大規模増産は同時に 発電量の増加を必要とする。しかし、現在イラクは全国一円で電力不足であり、電力需要 の対応に苦労している状況である。追加の電力を供給するには電力分野の向上が必要とさ れる。2017 年までに 200 万 kW 超の新しい発電設備の設置を計画しているが、当計画が遅 延すれば石油増産に必要な電力を満たすことができなくなる。 2.8. 原油の輸出 2.8.1. 概要 2014 年、イラク産原油の輸出量は前年より 20 万 BPD 多い 260 万 BPD であった。図 8 にイラク原油の輸出先を示す。主な輸出先はアジア(中国、インド、韓国等)で、全輸出 量の 58%を占めた。米国は中国、インドに次いで 3 番目に多い輸出先で全輸出量の 14%を 占めている。2014 年、米国はイラク産原油を 35.5 万 BPD 輸入したが、その量は 10 年前に 比べ 30%少ない。米国の産油量の伸びが品質が類似するイラク原油の輸入量の減少をもた らしている。 図 8 イラク産原油の輸出先(2014 年) 2.8.2. 南部からの輸出 2014 年、イラクの輸出原油の約 95%が南部のペルシア湾沿岸の石油基地から輸出された。 前年は 90%未満だったのに比べ、南部からの輸出シェアは増加している。イラクは計画通 りに石油生産を行なうための多くの課題に直面している。より多くの輸出を可能とするた めの大きな障害は、南部地域における不十分な石油貯蔵能力、出荷ポンプ能力、輸送パイ

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プライン能力である。イラクの石油貯蔵能力は 7 日分に達していない。そのためペルシア 湾の天候不順またはイラクからの輸出が滞るような事象が起こった場合、不十分な石油貯 蔵能力により油田の生産を停止しなければならない。即ち、中間インフラの欠如がイラク をより脆弱にしている。 近年、イラクはバスラ港沖に 2 基、Khor al-Amaya 港の周辺に 1 基の一点係留式モノブイ を追加設置し、南部の輸出設備を増強した。これらの一点係留式モノブイの公称能力は各々 90 万 BPD だが、3 つの戦争と不十分な維持管理により公称能力以下で稼動している。 2.8.3. 北部からの輸出 イラクの主要な原油パイプラインのほとんどは北部に位置している。それらの多くは紛 争や戦争でかなりの損傷を受け運転可能な状態ではなく、復旧には何年もの期間と大きな 投資が必要となる。イラク・トルコパイプラインのイラク側は、過激派による複数回の攻 撃を被って 2014 年 3 月に運用を停止した。 現在、イラク北部で稼動している主要なパイプラインは KRG と国際パートナーが建設 した 2 本のみである。即ち、KRG が独自に敷設した「KRG パイプライン」と KRG の国 際パートナーであるノルウェーDNO 社により敷設された、Tawke 油田からの原油を送るた めの「DNO/Tawke パイプライン」で、両方ともセイハン港へ向かうトルコのパイプライン と接続している。同時に、他の油田から原油を KRG パイプラインに送るいくつかの小口 径のパイプラインが存在している。KRG は 2016 年初めまでに原油を 100 万 BPD 増産する 計画を支えるため、パイプライン能力を拡大しようとしている。2014 年 12 月、KRG とイ ラク政府は北部の輸出について協力することに合意し、従来イラク・トルコパイプライン を経由していたキルクーク原油は現在 KRG パイプラインを通ってトルコのセイハン港ま で輸送されている。 図 9 イラク産原油の経路別輸出量(2013〜2014 年)

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3. 天然ガス 3.1. 天然ガス分野の概況 イラクの天然ガス分野の主な情報は表 6 に示すとおりである。 表 6 イラクの天然ガスの主な情報 天然ガス確認埋蔵量 3.17 兆 m3(世界第 12 位) 天然ガス資源の約 3/4 は石油生産時の随伴ガスである。 天然ガスの輸出入 湾岸戦争(1990〜1991 年)以前はクウェートへ天然ガス を輸出していたが、現在はどこにも輸出していない。 イラクには随伴ガスを回収し輸出するインフラがない ため、生産した天然ガスの半分以上を廃棄(大気放出ま たはフレア焼却)している。

近い将来、Basrah Gas Project が完了した時点で LNG の輸 出が可能となる。 ガス輸出国フォーラム 非加盟 特記事項 イラクは現在 LNG プラントを保有していないが、Basrah Gas Project に建設計画がある。 3.2. 天然ガスの埋蔵量 2015 年 1 月時点のイラクの天然ガス確認埋蔵量は 3.17 兆 m3(112 兆 cf)で、世界第 12 位である。イラクの天然ガス資源の約 3/4 は石油生産時の随伴ガスである。 3.3. 天然ガスの生産と消費 2012 年にイラクは天然ガスを 205 億 m3生産した。その 42%(85 億 m3)は国内で消費 され、余った 58%(120 億 m3)は大気放出またはフレア焼却された。イラクは世界で 4 番 目に多く天然ガスをフレア焼却している国である。これは、国内消費や輸出のためのパイ プラインや他のインフラを備えていないためである。消費のうち、発電分野に 6.5 億 m3 利用し、残りのほとんどは油田の回収率向上のために再注入された。

フレア焼却量を削減を目的として、イラク国営の South Gas Company は、南部の 3 大油 田(Rumaila、West Qurna 1、Zubair)のフレアガスを回収するため合弁企業 Basrah Gas Company をシェルおよび三菱商事と共に設立する内容の協定に署名した。各社の権益は South Gas Company51%、シェル 44%、三菱商事 5%である。当 JV は既設施設の性能向上、

新規のガス処理プラント(ガス処理能力:日量 0.6 億 m3)の建設と同時に LNG の輸出設

備の建設を検討している。協定に基づき処理されたガスは発電用に South Gas Company に 送られ、余ったガスは新設される LNG プラントを経由して輸出されることになる。 3.4. 天然ガスの輸出 1990〜91 年の湾岸戦争以前、イラクはクウェートへ天然ガスを輸出していた。そのガス はイラクの Rumaila ガス田からクウェートの Ahmadi までパイプライン(全長 170km、輸 送能力 1,100 万 m3 /D)を通して送られていた。石油省は現在休止中の当パイプラインの復

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活について協議しているが、実行する計画はない。現在、イラクはどこへも天然ガスを輸 出していないが、近隣諸国を経て欧州へ天然ガスを輸出する大陸横断ガスパイプラインを 建設する計画を検討している。

<出典および参考資料>

(1) 米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート Iraq Country Analysis Brief

http://www.eia.gov/countries/cab.cfm?fips=IZ

(2) 米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート Energy Today http://www.eia.gov/todayi nenergy/detail.cfm?id=19911

(3) 米国 DOE・エネルギー情報局(EIA)レポート Iraq Country Analysis Brief Overview

http://www.eia.gov/countries/country-data.cfm?fips=iz (4) Iraq http://en.wikipedia.org/wiki/Iraq

(5) Worldatlas http://www.worldatlas.com/webimage/countrys/asia/iq.htm

(6) Geology.com http://geology.com/world/iraq-satellite-image.shtml

(7) Iraq War http://en.wikipedia.org/wiki/Iraq_War

(8) ISIL http://en.wikipedia.org/wiki/Islamic_State_of_Iraq_and_the_Levant

(9) Midland Oil Company http://en.wikipedia.org/wiki/Midland_Oil_Company

(10) Missan Oil Company http://en.wikipedia.org/wiki/Missan_Oil_Company

(11) State Oil Marketing Organization http://wiki.openoil.net/index.php?title=State_Oil_Marketing _Organisation_(SOMO)

(12) LNG WORLD NEWS http://www.lngworldnews.com/iraq-basrah-gas-project-starts-operatio ns/

(13) Iraqi Kurdistan http://en.wikipedia.org/wiki/Iraqi_Kurdistan

(14) Reuters, Mail Online Wires http://www.dailymail.co.uk/wires/reuters/article-2794216/DNOs-Iraqi-Tawke-oilfield-output-increase-delayed.html (15) CH2M Hill http://www.ch2m.com/corporate/about_us/default.asp (16) 外務省 各国情勢 http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/index.html 以上 本資料は、一般財団法人 石油エネルギー技術センターの情報探査で得られた情報を、整理、分析 したものです。無断転載、複製を禁止します。本資料に関するお問い合わせは[email protected] までお願いします。

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表 2  イラクの主な一般情報  通称国名  イラク  正式国名及び国旗  イラク共和国  独立年  1932 年、英国から独立  政体  共和制  首都  バグダード  人口  3,480 万人(2013 年)  公用語  アラビア語、クルド語  通貨  イラク  ディナール  (IQD)  名目 GDP  2,290 億ドル(2013 年)  1.2
表  3  イラクの石油の主な情報  石油確認埋蔵量  1,440 億バレル(世界第 5 位)  石油の輸出入  純輸出国  石油輸出国機構(OPEC)  加盟  原油精製能力  108.6 万 BPD  製油所数  15  図 4  イラクの石油インフラ  2.2
図 5  イラクの主な製油所の配置
図 6  イラクの原油生産量と消費量(1990〜2014 年)
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参照

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