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第 6 章 結論とインプリケーション

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第 6 章  結論とインプリケーション

  この章では、本研究によって得られた新たな事実の発見の確認と、先行研究との比較に よるその考察を行う。さらに本研究の成果から、企業家活動における社会ネットワークの 意義や活用促進のための方策への示唆を検討する。

1. 企業家活動における社会ネットワークの活用と便益

  (1)本研究からわかったこと

  本研究の目的は、日本の企業家が企業家活動において、どのような社会ネットワークを 活用し、またネットワークからどのような便益を得ているのかを明らかにすることである。

海外の先行研究においては、企業家が創業時にどのくらいの数の社会ネットワークを活用 しているか、アクターは誰か、アクターの性別分布、ネットワーク構築や維持に費やした 時間等について研究されている。しかし日本の企業家を対象とした同種の調査は、残念な がらほとんどない。日本の企業家の社会ネットワークを対象とした先行研究は、Hirata &

Okumura(1995)や Aldrich(1995)が挙げられるが、調査したサンプル数はそれぞれ 18 人、

147人と少ない。そこで、日本の企業家が活用している社会ネットワークの特徴、社会ネッ トワークから得ている便益、ネットワーク構築方法について、ある程度多数のサンプルに ついて分析することを試みた。

男女の企業家(創業経営者)に対する質問紙調査の結果 325 件の回答が得られ、その集 計分析結果から、以下のことがわかった。

①企業家が創業時に活用した社会ネットワークの数:平均9.9

②創業時に活用したネットワークの種類(上位5種)

「創業前の仕事の社外ネットワーク」(79.0%)

「創業前の仕事の職場内ネットワーク」(56.1%)

「知人・友人のネットワーク」(54.2%)

「他の創業者とのネットワーク」(39.9%)

「家族・親戚のネットワーク」(39.5%)

  ③創業時に最も役立った社会ネットワークの特徴  ※応答数に対する割合       種類:「創業前の仕事の社外ネットワーク」(40.1%)

      ネットワーク内のアクターの人数:平均  60.7人

      参加・接触頻度:週1回以上40.6%、月1回程度36.4%、年数回以下23.0%

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      参加者の性別:同性が多い62.8%、異性が多い20.9%、同じくらい16.3%

    ④創業時に社会ネットワークから得た便益(上位5項目)※応答数に対する割合       「経営への支援・助言、参画」(13.8%)

「仕事の獲得、受注、取引」(13.8%)

      「経済動向等経営に役立つ一般情報」(12.8%)

「取引先・営業先紹介」(11.7%)

      「専門知識(技術、財務、税務、法務等)獲得・助言」(8.5%)

    ⑤創業後に新たに構築した社会ネットワークの数:平均  8.8   

⑥創業後に構築した社会ネットワークの種類(上位5種)

「業界内の経営者とのネットワーク」(23.0%)

「他業界の経営者とのネットワーク」(19.9%)

「専門人材(弁護士、税理士等)とのネットワーク」(16.6%)

「公的機関・団体とのネットワーク」(10.5%)

「知人・友人のネットワーク」(10.4%)

    ⑦創業後にもっとも役立った社会ネットワークの特徴  ※応答数に対する割合       種類:「他業界の経営者とのネットワーク」(43.8%)

      ネットワーク内のアクターの人数:平均  60.5人

      参加・接触頻度:週1回以上27.3%、月1回程度54.0%、年数回以下18.7%

      参加者の性別:同性が多い62.1%、異性が多い26.8%、同じくらい11.1%

    ⑧創業後に社会ネットワークから得た便益(上位4項目)※応答数に対する割合       「経営への支援・助言、参画」(22.4%)

「取引先・営業先紹介」(18.4%)

      「仕事の獲得・受注・取引」(13.2%)

      「経済動向等経営に役立つ一般情報」(10.5%)

 

  以上が日本の企業家が創業時に活用した、あるいは創業後に構築した社会ネットワーク の態様である。それぞれの企業家が創業時に活用したネットワークは約9.8であり、創業後 に新たに構築したネットワークは約8.8である。創業時には、前の仕事の同僚や取引先など、

ビジネスシーンで構築された社会ネットワークがよく活用されている。創業後には、今度 は業界内の同業他社や異業種の経営者、専門人材とのネットワークが重視されている。

ネットワークに含まれる人数や多様性、接触頻度は、役に立ったネットワークを創業時、

創業後でそれぞれ1位から3位まで回答してもらっている。上記には、「役に立った第1位」

の結果のみ示している。これは、「第1位」の回答率が全体の約7割と少なく、第2位、第 3位はさらに少ない回答しか得られなかったためである。結果として、創業時のほうがより 接触頻度が高く、週 1 回、月 1 回程度の接触がある者が約 7 割以上に上っている。

Granovetterのいう「強い紐帯」に該当するようなネットワークを活用していると考えられ

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る。創業後は月1回程度が約54%を占めるようになり、やや弱い紐帯のネットワーク活用 が増加していると考えられる。

メンバーの多様性を代替する変数として、メンバーの性別比率を聞いたところ、創業時 に役立ったネットワークでは約 6 割が同性のメンバーが多いネットワークで、創業後もそ の割合はあまり変化しないが、異性が多いという回答は少し増えて27%程度になっている。

  創業前、創業後でそれぞれ「役に立った」ネットワークからどのような便益を得ている かを聞いた。この設問は自由記入だったので、回答割合がさらに低く、何らかの記述があ ったものは全体の約 3 割にとどまった。記入された語句をアフターコーディングして集計 したが、上記の結果は応答数を 100 とした時の割合である。創業前に役立ったネットワー クからは、「経営への支援・助言、参画」と「仕事の獲得、受注、取引」が最も多かった。

社会ネットワークの活用は、市場に新規参入した創業企業が不足する信頼を補完するため に活用していると予測したが、このような例にあてはまるネットワークメンバーからの仕 事の受注に加え、経営パートナーとして参画してもらったり、営業方法などについて助言 をもらったりという、経営への支援を得ていることがわかった。創業後に役立ったネット ワークからは、やはり同様に信頼を補完して顧客獲得につながるような便益のほか、経営 への支援と情報提供が挙がっている。

  (2)先行研究との比較

  企業家が創業時に活用するネットワーク数については、Aldrich による複数の研究では

「ほとんどの企業所有者は 3〜10 の強い紐帯を持っていた」(Aldrich, Reese & Dubini 1989)とされる。他の研究においても、5〜20(Fischer 1982)、企業家活動のフェーズご とに異なるが、8〜14.7(Greve & Salaff 2003)となっている。またAldrich & Reese(1995) は1990年〜91年と92年の2回にわたって同じ調査対象に調査を行い、その間に平均ネッ トワーク数が8.8から10.3に増加していることも確認している。企業家活動の経過ととも に、新たなネットワークが形成されているのである。

  日本の企業家に対する調査では、3.44(Hirata & Okumura 1995)とされているが、こ れはサンプル数が18と非常に少ない。

  先行研究では、調査対象となる企業家(創業経営者、企業所有者)が、直接コンタクト を取っている者の人数を「Network Size」として調査していることが多い。それに対して 本研究では、第 3 章でも論じたとおり、直接コンタクトをとっている人以外にも、所属し ているグループのメンバー同士であれば信頼関係がある程度形成されると考え、少なくと も1人以上のメンバーとコンタクトを取っているグループの数をネットワーク数としてカ ウントした。この条件で調査した結果、創業時には約9.8のネットワークを活用しているこ とがわかった。この数は、海外の先行研究の数字とおおむね一致している。

  創業後に新たに構築したネットワーク数については、約8.8と多くなっているが、創業か らの経過年数が平均5年であることから、Aldrich & Reese(1995)の結果を2.5倍した数字

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(6.25)よりもやや多い数になっている。これは、回答者が「新たに構築」という設問を錯 誤し、従来から活用しているネットワークも含めてしまったためとも考えられる。

  ネットワークの種類については、先行研究では「ネットワークメンバーの出自」として 調査されていることが多い。Aldrichが日本、米国、イタリア、アイルランド、スウェーデ ンの企業所有者に対して行った調査によれば、ネットワークメンバーのうち17%は家族、

38%が友人、58%が仕事上の知人(複数回答)となっている。日本は全体の傾向とほぼ同 様の結果となっているが、米国が友人の割合が50%とやや高くなっており、イタリアとス ウェーデンは家族が24%、23%と高くなっている(Aldrich 1995)。

  本研究においては、メンバーの出自ごとのネットワークグループを想定しており、さら にその種類を細かく分けている。先行研究に合わせてこれらをまとめ、応答数を 100 とし て分布を示すと、家族・親戚が11.2%、友人・知人等が36.4%、仕事上の知人が49.6%と なる。今回の調査では、家族・親戚と仕事上の知人の割合がやや少ない結果となったが、

おおむね同様の傾向を示している。

  海外の先行研究では、ネットワークの紐帯の強さを図るため、接触頻度を調査している が、これは「1 週間に何回コンタクトを取ったか」といった数値で把握されることが多い。

あるいは、ネットワーキング活動として、ネットワーク構築や維持にかけた時間を尋ねる こともある。Aldrichが5カ国の企業所有者に対して行った調査によれば、日本を除く4カ 国の平均では週 3 回程度ネットワークメンバーと会っているという結果が出たが、日本の 企業所有者は平均で月に3.5回と突出して少なかった。この理由として「日本の回答者は設 問の意味を厳密に受け止め、明確に仕事の話をした時のみ、カウントしている。すべての 接触を含んでいない」からとしている(Aldrich 1995)。そのことを割り引いても、週1回 程度の接触は想定できる範囲内であり、本研究の数字はそれほど突出した数字ではない。

何らかの便益を得ているようなネットワークのメンバーとは、週1回〜月 1回程度は接触 しているのである。

  メンバーの性別分布については、男性はメンバーの約10%が異性であるのに対し、女性 は66%が異性のメンバーという結果もあり(Aldrich, Reese & Dubini 1989)、また日本は ネットワークメンバーに占める女性の割合が低い(5 カ国全体で平均 16%、日本は 13%)

(Aldrich 1995)というデータもある。調査時点から10年〜15年以上経過しているので、

その後日本でも女性企業家が徐々に増加していると考えられる。本研究では、女性の比率 や異性の比率は数値で把握していないものの、同性・異性のどちらが多いかをきいた設問 では、同性が多いネットワークが 6 割を超えている。男性は男性同士、女性は女性同士の ネットワークを活用していると考えられる。創業後には異性が多いネットワークの割合が 多少増加しており、ネットワークメンバーの性別の多様性は経営活動によって増大するこ とが考えられる。

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174 2.社会ネットワークの効果

  (1)本研究でわかったこと

  先行研究からは、社会ネットワークの活用は企業家にとって有益であるという含意がく み取れるが、具体的にどのような効果が得られるのか。質問紙調査の結果からは、創業時 に活用した社会ネットワークの数と、創業した企業の規模拡大や外部経営資源調達との関 係を分析したが、資本金額の増加額と年平均増加率のみ正の相関がみられたが、他の指標 は統計的に有意な相関関係は得られなかった。

  質問紙で役に立ったネットワークからどのような支援やメリットを得ているかをきいた ところ、仕事の受注や営業先の紹介など直接業績に結びつくようなメリットもあったが、

同じくらいの割合で「経営に関する支援、助言、参画」や「経営に役立つ一般情報」とい った、当該企業家に不足している経営情報や経営ノウハウを補完するような支援を得てい ることがわかった。

  さらにインタビュー調査によって、企業家が社会ネットワークを活用するのは、最初の 顧客を獲得するときや、業歴が浅く金融機関からの融資が受けられない時など、危機的な 状況に直面した場合が多いことを発見した。人材の採用についても、ハローワークなどか ら紹介された人があまりよくなかったという経験から、知人の紹介に切り替えているケー スもあった。また企業家にとって精神的支えを得ていることも、つらいことがあっても乗 り越えて行ける粘り強さの原動力となっている。

  企業家活動における社会ネットワーク活用の効果は、信頼性の補完による顧客や外部経 営資源の獲得をもたらすことと考えられていたが、業績や事業規模拡大、外部経営資源獲 得に対して直接的、継続的に効果をもたらすわけではない。むしろ企業の存続にかかわる ような危機的な問題を乗り越えるために効果を発揮する。経営知識の伝授や経営への参画、

情報提供によって、経営に不慣れな企業家の知識や情報を補完している。また企業家の精 神的支えとなるなど、業績には表れないが、重要な役割を果たしていることがわかった。

  (2)先行研究との比較

  社会ネットワーク活用による経営成果への影響は、先行研究においても統計的には有意 な結果は出ていない(Aldrich 1995)。本調査の分析結果も、これを支持するものである。

  先行研究では、社会ネットワークの効果を数値で測定したものや、ケーススタディで明 らかにしたものは少ない。特に日本の企業家についてはほとんどない。

  山田(2005)は、数少ない日本の企業家のネットワークに関する大量調査を行っている。

その中で、経営する企業の内外における経営パートナーの有無と直近の収支状況の関係を 調べているが、内外ともにパートナーがいない企業の直近の収支状況が最も低く、企業内 にパートナーがいて外にはいない企業が最も収支状況が良かったという分析結果を示して いる

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  特定のネットワークに焦点を当て、もっとも関連する経営指標への影響を分析すれば、

同様の結果が出たかもしれないが、企業家が活用する社会ネットワーク全体を分析対象と したため、明確な関係性が見いだせなかったのかもしれない。

  調査方法や分析方法にも問題があるかもしれないが、自由記入回答の分析やインタビュ ー調査の結果から考察すると、社会ネットワークは日々常に何らかの効果をもたらしてい るのではなく、ここ一番の困難な状況で効果を発揮する。あるいは企業家に対する知識や ノウハウの補完、精神的な支えなど、経営成果とは直接関係のないところで効果を発揮し ているのである。

3.社会ネットワークの構築

  社会ネットワークの形成に影響を及ぼしているのは、創業前の職業経験や子供の有無な どの企業家の個人属性であった。創業時に最も活用されているのは創業前の仕事の社外ネ ットワークや職場内のネットワークであったが、特に職業経験では、取引先等社外のビジ ネスパートナーと接触する機会の多い職種を経験している者は、これらのネットワークの 活用割合が高く、活用したネットワーク数も多い。介護・看護・福祉といった職種の経験 者は、地域ネットワークや子供を通じたネットワークの活用割合が高い。地域内の顧客を 対象とした業務を行っているためであろう。

  また課長や部長など上位の役職の管理職経験や、プロジェクト管理の経験も、社内の他 部署との接触や社外の他社との協働などを通じて、社内外のネットワーク構築に影響をお よぼしている。

  個人属性との関係では、同居の子供がいる企業家は、子供を通じたネットワークや地域 のネットワークを活用している。ママ友や子供の学校のPTA活動などを通じて、ネット ワークを形成する機会があるからであろう。

  創業後に新たに構築したネットワークでは、異業種の経営者とのネットワークや、同業 他社とのネットワーク、専門人材や公的機関とのネットワークが上位に挙がっていた。経 営者同士のネットワークは、業界団体の会合や研修会などに参加し、他の経営者と意見交 換することで構築される。また客としてさまざまな店舗を訪れ、経営者と話し、共感でき る人と出会ったら継続して連絡を取り合うという方法もあった。最近はインターネットの 発達・普及により、サイト上で経営に対する考え方が近い経営者を探すことも可能になっ た。

  特に女性は、経営知識の不足を自覚しており、創業支援を行っている公的機関を利用す る。そこで税理士や社会保険労務士などの専門人材を紹介され、経営知識も得ている。公 的機関には通常、創業希望者の相談に乗る専門の担当者がいて、その人を通じて必要な人 事を紹介してもらったり、取引先や事業提携先を紹介してもらうこともできる。

  創業時に活用した社会ネットワークは、職業経験や生活体験などを通じて意図せずに形

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成されてきたという傾向があるが、創業後は企業家自身が自分に不足するもの、企業経営 に不可欠のものを見極め、必要な知識や情報、ノウハウ、経営資源を得るために、さまざ まな機会をとらえて能動的にネットワークを形成していることがわかった。

4.社会ネットワーク活用と構築における性差

  創業時に活用した社会ネットワークの数および創業後に構築した社会ネットワークの数 は、平均値では差があったものの、統計的有意性は得られなかった。活用したネットワー クの種類では、女性は男性より創業前の仕事の社外ネットワークや職場内ネットワークが かなり少なく、家族や親戚、子供を通じたネットワーク、趣味等のネットワークの活用が 多かった。創業後に構築したネットワークでは、女性は専門人材のネットワークや家族・

親戚のネットワークが男性より多く、逆に同業他社の経営者ネットワークは少なかった。

  インタビュー調査からは、女性は経営知識の不足を自覚し、専門人材を紹介してもらっ たり、公的機関に創業の相談に行っていることがわかった。男性は、創業前の仕事で経営 知識を実践的に獲得したり、自分で本を読んで独学したりという方法で経営知識を身につ けていた。

  また女性は経営方針や経営に対する考え方に共感してくれる他の経営者を同業、異業種 にかかわらず探している。このような経営者と話すことによって、精神的支えを得ている。

男性は家族がその役割を果たしているようである。

  社会ネットワークの構築には創業前の職業経験が大きな影響を及ぼしている。女性は、

一般事務や販売、サービスなど、消費者と接することはあっても社外のビジネスネットワ ークへのアクセスがほとんどない職種に就くことが多い。また管理職に占める女性比率も、

まだ課長で5.0%、部長は2.7%にすぎない(武石2006)。上位の管理職の経験は、社内外 のネットワーク構築だけでなく、経営知識の獲得にもつながる。育児や近所づきあいは、

主に女性が担っている。このような背景があって、結果として活用する社会ネットワーク の種類に性差が生じていると考えられる。

  海外の複数の先行研究では、女性の社会ネットワークにおける家族・親戚の比率は男性 より高いとされているが、本調査でもその傾向はみられたものの、それほど大きな差では なかった。むしろ、ビジネス関連のネットワークにおける差異は非常に大きい。

5.創業期企業家の社会ネットワークにおけるダイナミズム

  本研究の成果から、日本の企業家は創業以前に勤務していた職場でのネットワークや、

以前の仕事と関係する社外ネットワークを創業時に活用していることがわかった。しかし

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このネットワークは固定的ではなく、経営ステージが進展すると新たなネットワークづく りを行う。事業化がある程度進んでくると、今度は経営者同士の交流に力を入れ、同じ志 を持った者、同じ経営者という立場の者同士で信頼関係を構築し、精神的なサポートを得 ている。

  ネットワークの構築プロセスも段階的で、出会いのきっかけはさまざまでも、互いの人 となりを知って、気が合えば信頼関係を構築し、さらに仕事につながっていく。信頼関係 の構築が先なので、友人・知人の紹介さらにその紹介というように、ネットワークを拡大 していく企業家もいる。

  女性企業家の方が、このような信頼関係の構築に熱心であり、ビジネス目的を前面に出 した交流よりも、まず人間同士の交流から入り、結果として仕事に結びつくようなプロセ スをたどる。男性企業家の方が、目的と対象を明確化して、ネットワークを構築している 傾向がある。

6.本研究の成果から得られるインプリケーション

  社会ネットワークは企業家活動にとって不可欠のものか。実は質問紙調査の最後の設問 で、創業や企業経営と社会ネットワークについて自由記入で回答してもらった。回答をま とめたものを参考資料として巻末に記載しているが、その内容を読むと賛否両論が入り混 じっている。企業家の職業経験や学歴、家庭環境、そして業種によって、社会ネットワー クの必要性や重要性は異なってくる。企業家活動全体を一括して論じることは難しい。

  しかし、最初の顧客を獲得するというハードルや、創業間もない時期の資金調達、事業 場所の確保など、企業の存続にかかわる危機はどの企業も直面する課題である。その課題 を解決できる能力を企業家自身が十分に備えている場合には、社会ネットワークの重要性 は相対的に低下する。企業家の信用や能力、知識、情報が不足している場合には、社会ネ ットワークが補完する役割を果たす。

  企業家にとって役立つ社会ネットワークは、企業家の属性や経営ステージ、経営におけ る志などによって異なる。たとえば学生ベンチャーであれば、同年代で同様に創業を目指 す人たちのネットワークが役に立つ。女性企業家は、やはり同性の経営者同士のネットワ ークが役立つ。特に経営者としての悩みや課題の解決といった精神的サポートが得られる ようなネットワークが有効である。

経営ステージで考えると、創業まもない時期は事業開発や販路開拓のためのネットワー クが必要であるが、ビジネス交流会のような大勢と名刺交換する会よりも、30 人程度の顔 が見える人数で、お互いの人となりを理解し、その上で仕事の話ができるような交流会が 良い。

さらに事業化が進むと、経営者同士の横のつながりを持つような交流会が良いが、何ら

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かの目的を設定し、勉強会やプロジェクトの遂行を通じて信頼関係を醸成することが期待 される。

  創業期企業家活動における社会ネットワークは、事業化の進展とともにダイナミックに 変化する。ネットワークに期待することやネットワークから得られる便益も変化する。変 化に応じて企業家が必要なネットワークに参加し、あるいは構築できるような環境づくり をすることで、企業家活動が一層活性化されるであろう。

山田(2005)では、開業者を中心としたネットワークの靭帯の中で焦点となる強連結としてのパートナ ーシップを定量的に観察している。ネットワークの一部を切り出して、機能やパフォーマンスを測定して いる。

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」2004年。数値は従業員100人以上の企業のもの。

参照

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