VAD 用機械式人工弁の歴史
全文
(2) 2.1. VAD 用機械式人工弁の歴史. 1960 年代前半はボール弁が弁置換手術用として主流であったが,VAD 用としては各研究 者が独自に弁を開発する場合も多かった.1960 年代後半には傾斜型ディスク弁である Wada-Cutter 弁が開発され,1969 年 Cooley らによって初めて行われた完全置換型人工心臓の 臨床用に使用された.その後,同じく傾斜型ディスク弁の Bjork-Shiley 弁(以下,BS 弁)が登 場し,1973 年にユタ大学の Kwan-Get 型人工心臓に用いられた.BS 弁は弁置換手術用とし ても好成績を得られていたので,多くの施設で VAD 用人工弁として取り入れられた.日本 においても東大サック型 VAD や国循ダイアフラム型 VAD に使用された.ただ,長期間の 動物実験や臨床において, 1) 弁近傍の水撃作用によると思われるディスクやストラットの破損 2) 完全置換型では 4 個の弁を使うため,血球破壊(溶血)が無視できない 3) 弁とポンプとの間のリング状血栓の形成 4) 高価 などの点が指摘された.ユタ大学では主に「1」の問題から Medtronic-Hall 弁(以下 MH 弁) へと変更している. 日本では現在東洋紡 VAD が日本製では唯一の拍動流型 VAD で,1990 年代当初は BS 弁 を使用していたが供給元の関係で SORIN 弁に代わり,最近 SORIN 弁が製造中止になった のを受けて MH 弁への切り替えを行っている.. 2.2 本章の目的 拍動流型 VAD には流入・流出弁が必要で,現在その多くは弁置換手術用の機械式人工弁 (以下,機械弁)が利用されており,種々の機械弁が市場に出ている.空気圧駆動拍動型人工 心臓では陽・陰圧で強制的に拍動流を起こすので,流入・流出弁にかかる負荷が大きく, 機械弁の性能を十分に把握しておくことが必要である. 機械弁に必要とされる性能は,機能性・耐久性・血液適合性の3つに分けられる. この中の耐久性試験法については岩崎らが in-vitro での加速耐久試験方法を研究し,その 1). 妥当性を確認している.また,機能性試験法はさらに流量特性と弁の閉鎖特性に分けられ, 流量特性試験法については 1980 年代に梅津らが確立し,各種人工弁について系統立てて報 2). 告している. 一方の弁閉鎖特性については,弁閉鎖時に発生する水撃現象(ウォーターハンマ)が要因と 3). なり,弁の耐久性や血球破壊(溶血)に影響を及ぼすと言われているが,計測装置・方法につ いては系統化されていない. そこで本章では筆者が今まで蓄積してきた機械加工に関するノウハウをもとに各種機械 式人工弁が簡単に取り付けられ,人工弁閉鎖時の水撃挙動を容易に試験・評価できる試験. - 19 -.
(3) 装置を設計・製作し,評価試験を行う.試験では各種機械式人工弁の他に筆者が拍動流試 験用に設計・製作した簡易型人工弁の性能も合わせて評価する.本試験から弁挙動に関す る標準評価の指針を得ることを目的とする.これによって各種機械弁の閉鎖特性が容易に かつ客観的に評価でき,人工弁選択の指標として提案することが出来る.. 2.3 試験装置 2.3.1 人工弁ホルダ 人工弁ホルダは着脱が容易でかつ密閉性が要求される.そこで国循時代に試作したネジ 式人工弁ホルダの構造を基本にして設計した(Fig.2.1).. Fig.2.1 Drowing of a holder design for artificial heart valves (2010). 人工弁は側面を弁ホルダで押さえ込んで固定し,外周パッキンで水漏れを防止する. ホルダの材質は,コストパフォーマンスの点から硬質塩ビを用いた.また,国循時代に 人工弁の破損が発生した SUS303 製のホルダも製作し,金属固定による影響の有無について も調べた(Fig.2.2).. - 20 -.
(4) Hard polyvinyl chloride. Stainless-Steel. Fig.2.2. Valve Holder. 東洋紡 VAD はセグメント化ポリウレタン製 流入・流出ポートに直接人工弁をはめ込んで外 側からタイバンドで固定している.これを模擬 して,シリコーンチューブ(外径 24mm×内径 20mm)に直接試験人工弁をはめ込んでチュー ブホルダとし,試験を行った(Fig.2.3).. Fig.2.3 Valve Holder (Silicone tube). 2.3.2 試験用人工弁 試験用には,東洋紡 VAD に用いられていたソーリン弁(SL 弁)とソーリン弁の代用として 用いられるメドトロニック・ホール弁(MH 弁),人工心臓用に開発された Jellyfish 弁(JF 弁), 拍動試験用に設計・製作したアンブレラ弁(UM 弁)の 4 弁を用いた(Fig.2.4). - 21 -.
(5) 20mm. SR Valve. MH Valve. JF Valve. UM Valve. Fig.2.4 Test Valves 1) ソーリン弁(SR 弁,Fig.2.5) 開閉角が 55 度のティルティングディスク弁である. 東洋紡 VAD に用いられていたが,製造中止が決まっている. Fig.2.5 SR Valve 2) メドトロニック・ホール弁(MH 弁,Fig.2.6) 開閉角 70°のティルティングディスク弁で臨床に用いら れてから20年以上経つ.ソーリン弁の製造中止に伴い, 東洋紡 VAD に使用される予定である. Fig.2.6 MH Valve 3) Jellyfish 弁(JF 弁,Fig.2.7) 4). 当研究室の岩崎らが開発した高分子製人工弁で,開閉 特性に優れ耐久性も兼ね備えている.外径 20mm×巾 4mm で, 弁輪の中心にピボットがあり,円形シートが固定されている. Fig.2.7 JF Valve. 4) アンブレラ弁(UM 弁,Fig.2.8) 拍動流実験を計画するときに流入・流出弁が必要 になるが,市販の臨床用人工弁は高価で簡単には入手でき ない.そこで入手し易い市販のゴム製チェックバルブを 利用して自作可能な簡易的な弁を設計・製作した.バルブ はフロロシリコーンラバー製の成形品で,自動車用ガソ. Fig.2.8 UM Valve リンタンクの通気弁・逆止弁として利用されており,これをそのまま利用する.バルブプ レートは外径 21mm×巾 5mm のアクリル製で,加工しやすくかつできるだけ開口面積を広く 取るために図のような穴形状にした.. - 22 -.
(6) 2.3.3 拍動ポンプ(Fig.2.9) 拍出特性試験用の拍動ポンプとして,1980 年代に拍動流体外循環に用いられた Fig.2.9 の 直管型拍動ポンプをベースにして人工弁接続部分に設計変更を加えて製作したものを用い た.ポンプ容量は 85ml である.分解・組立が容易で,流入・流出ポートも仕様に合せて 交換できるのが特徴である.. Fig.2.9 Drowing of a prototype design for axial-type pulsatile pump 2.3.4 静的漏れ流量試験 人工弁の流量特性・閉鎖特性を把握する上でも,弁の静的逆流量を把握しておくことが 必要である.そこで Fig.2.10 のように,人工弁流出側に生体の大動脈圧相当の水柱負荷 (100mmHg)を与え,流入側は大気開放にして一定時間の漏れ量を実測する. 助走路の長さは、流れが安定する距離(≒70×内径Φ19)とした。. オーバーフロータンク:100mmHg 流入・流出チューブ:内径 1/2inch(12.7mm)タイゴンチューブ 漏れ量計測:5L ビーカ,電子天秤,ストップウォッチ. Overflow Reservoir. Reservoir Fig.2.10. Test circuit for measuring leakage. - 23 -.
(7) 2.3.5 拍出特性試験 拍出特性試験装置を Fig.2.11 に示す. 流入側は左心房圧相当負荷(10mmHg )とし,流出側は大動脈圧相当負荷(100mmHg)とする. 前負荷・後負荷までの距離は VAD カニューレ長さを想定して 400mm とする. 直管型拍動ポンプに試験弁を組み込んだ弁ホルダを試験位置(流入側か流出側)にセットす る.非試験側はソーリン弁をセットする. SUS ホルダ・硬質塩ビホルダ・シリコーンチューブホルダに4試験弁をそれぞれ装着し, 試験弁近傍の圧力及び流量を計測する. 前負荷:オーバーフロータンク(10mmHg) 後負荷:オーバーフロータンク(100mmHg) 流入・流出チューブ:内径 1/2inch(12.7mm)タイゴンチューブ 拍動ポンプ:直管型拍動ポンプ 駆動装置:VCT-50χ(東洋紡) 圧力計測:圧力トランスデューサ(流入・流出側) バクスター㈱ UK801 流量計測:電磁流量計プローブ(流入・流出側) ㈱日本光電. Overflow. FF-180T. Overflow. Reservoir. Reservoir. Fig.2.11 Pulsatile test circuit. - 24 -.
(8) 2.4 試験方法 2.4.1 静的漏れ流量試験 各試験弁について流出弁側に 100mmHg の負荷を加え,1 分間での逆流量を重量法にて計 測する. 2.4.2 拍出特性試験 拍動流予備試験(前後とも SR 弁)の結果,駆動陽圧 200mmHg・陰圧-50mmHg,70BPM・ 収縮時間比 45%で MAX6L/min 程度の流量が得られた.そこで前記駆動圧・拍動数に固定 して,収縮時間比を変化させた場合の各試験弁近傍の圧力特性・流量特性を 3 種類の弁ホ ルダについて計測した.. 2.5 試験結果 2.5.1 静的漏れ流量試験 静的漏れ試験の結果を Fig.2.12 に示す. 試験弁の中では SR 弁が多く,以下 MH 弁>JF 弁の順で UM 弁は漏れ量ゼロであった.. 800 700. Leakage ml/min. 600 500 400 300 200 100 0. SR SORIN. MH. JF. Fig.2.12 Comparison of static leakage among four kinds of heart valves. - 25 -. UM.
(9) 2.5.2 拍出特性試験 Fig.2.13 は試験時の流量波形・圧力波形の例である.. 25. 25. 20. Inlet flow rate L/min. Outlet flow rate L/min. 20 15 10 5 0. 15 10 5 0 -5. -5. -10. -10 0. 0.5. 1. 1.5. 0. 2. 0.5. 1. 1.5. 2. 1.5. 2. Time s. Time s 40. 250. 30. Inlet pressure mmHg. Outlet pressure mmHg. 200. 150. 100. WH. 50. 20. WH. 10 0 -10 -20. 0. -30 -40. -50 0. 0.5. 1. 1.5. 2. 0. 0.5. 1. Time s. Time s. Inlet side. Outlet side. Reservoir. Reservoir. Fig.2.13 Waveforms of flow and pressure measured at pump inlet and outlet. - 26 -.
(10) 流入弁手前では,弁閉鎖によってプラス側に圧力が急上昇し,直後に逆流が発生してマ イナス側に急上昇する. 流出弁直後では,弁閉鎖によってマイナス側に圧力は急上昇し,直後にその反動でプラ ス側に急上昇する. Fig.2.14~Fig.2.17(a・b・c・d)は,各弁ホルダの影響について調べたグラフである.流 量特性・圧力特性共に,弁ホルダの材質や固定法による差はあまり見られない. Fig.2.18~Fig.2.20(a・b・c)は,各試験弁をホルダごとに比較したグラフである. 流量特性については,いずれのホルダの場合も JF 弁が高い値を示している. WH については,MH 弁が流入・流出両部位とも高い値で,機械弁の SR 弁が次に続き,以 下 JF 弁,UM 弁と低い値を示している.. - 27 -.
(11) 7. Mean flow rate L/min. 6 5 4 3 2 1 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (a) Mean flow rate 300. Inlet water hammer mmHg. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. Systolic fraction %. (b) Inlet water hammer. Outlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. Systolic fraction %. (c) Outlet water hammer Fig.2.14 SR valve performance in each holder - 28 -. 70. 80.
(12) 7. Mean flow rate L/min. 6 5 4 3 2 1 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 60. 70. 80. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (a) Mean flow rate 300. Inlet water hammer mmHg. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. Systolic fraction %. (b) Inlet water hammer. Outlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. Systolic fraction %. (c) Outlet water hammer Fig.2.15 MH valve performance in each holder - 29 -.
(13) 7. Mean flow rate L/min. 6 5 4 3 2 1 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (a) Mean flow rate 300. Inlet water hammer mmHg. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (b) Inlet water hammer. Outlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. Systolic fraction %. (c) Outlet water hammer Fig.2.16 JF valve performance in each holder - 30 -. 70. 80.
(14) 7. Mean flow rate L/min. 6 5 4 3 2 1 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (a) Mean flow rate 300. Inlet water hammer mmHg. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. Systolic fraction %. (b) Inlet water hammer. Outlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. Systolic fraction %. (c) Outlet water hammer Fig.2.17 UM valve performance in each holder - 31 -. 70. 80.
(15) 7. Mean flow rate L/min. 6 5 4 3 2 1 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (a) Mean flow rate 300. Inlet water hammer mmHg. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (b) Inlet water hammer. Outlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. Systolic fraction %. (c) Outlet water hammer Fig.2.18 Comparison of valve performance in hard polyvinyl chloride holder - 32 -.
(16) 7. Mean flow rate L/min. 6 5 4 3 2 1 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (a) Mean flow rate. Inlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. Systolic fraction %. (b) Inlet water hammer. Outlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. Systolic fraction %. (c) Outlet water hammer Fig.2.19 Comparison of valve performance in stainless-steel holder - 33 -. 80.
(17) 7. Mean flow rate L/min. 6 5 4 3 2 1 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. 60. 70. 80. 60. 70. 80. 60. 70. Systolic fraction %. (a) Mean flow rate. 300. Inlet water hammer mmHg. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. Systolic fraction %. (b) Inlet water hammer. Outlet water hammer mmHg. 300. 250. 200. 150. 100. 50. 0 0. 10. 20. 30. 40. 50. Systolic fraction %. (c) Outlet water hammer Fig.2.20 Comparison of valve performance in silicone holder - 34 -. 80.
(18) 2.6 考察 1) 評価装置の設計・製作について 評価装置等を設計・製作する場合には,材質・設計・加工+金額・納期といった要素が 具体的に関わってくる.筆者がこうした評価装置・試験装置等を設計・製作する場合に考 慮する点をここで挙げてみる。 設計して図面を作成する場合は, (1) 設計仕様(性能・体裁・使用環境・費用・納期等)について十分絞り込む. (2) 種々の市販機械要素部品の情報を入手するように心がけ,それらをうまく利用する. (3) 加工者がどんな段取り・手順で加工するかを考える. (4) 組立て・分解際の手順を頭に入れながら図面に落としていく. (5) 記入する寸法については最低限必要な箇所にのみ公差を入れる.不必要な公差の記入 が多いと加工者もどの部分が本当に重要な寸法なのかが見えなくなり,時間がかかる と同時に不良発生の原因となり,金額的にも高くなる. (6) 公差が必要ない場合は出来るだけ丸棒・板材等の素材寸法を生かすと時間が短縮でき, 金額も抑えられる. (7) コストパフォーマンスとしては,旋盤加工・板金加工が安い. (8) アクリル等の樹脂やアルミ部品でネジ部の着脱が多く,ネジ山がへたる可能性がある 場合にはヘリサート(補強用金属製ネジリングを埋め込む)を利用する.ただし,平均し て締め付けること.力をいれ過ぎると逆に破損の原因になる. (9) アクリルパイプには押し出し材とキャスト材とがあり、押し出し材は安価だがクラッ ク等が入り易い.外観等必要な場合はキャスト材を用いたほうが良い. (10) アクリルはバフ研磨によって透明になるが、ポリカーボ(PC)は切削すると透明性を 失う。ポリカーボで透明性が必要な場合には素材表面を生かす必要がある. (11) アクリルで寸法安定性を求める場合は加工前にアニール処理を行う. 具体的な事項をいくつか挙げたが,以上のようなことを考慮しながら設計・加工を進め ることが重要であると思われる. 2) 設計した人工弁ホルダの有用性について ステンレス製ネジ式弁ホルダ・硬質塩ビ製ネジ式弁ホルダに関しては,材質の違いによ る水撃値への影響は殆ど見られなかった.また,シリコーンチューブで人工弁を固定した 場合も弁ホルダと差は見られなかった.弁固定法としてはシリコーンチューブ式が一番着 脱容易であるが,弁輪の肉厚が薄くて外周方向の力に対して変形しやすい2葉弁の場合は, シリコーンチューブの外側からタイバンドで固定する際に弁輪が歪んで弁葉がスタックす る危険性がある.また,シリコーンチューブの断面形状は完全な真円ではなく,肉厚にも ばらつきがあるので条件を一定に確保することは難しい.以上のことを考えると,コネク タ径は寸法精度が確保されていて,人工弁を側面から押さえ込んで保持するネジ式弁ホル. - 35 -.
(19) ダのほうが周方向にかかる力は少なく,2 葉弁に対しても使用可能である. Fig.2.16 の JF 弁での水撃値を見ると,流出側はステンレスホルダでの水撃値が硬質塩ビ やシリコーンチューブに比べて低くなっている.原因として JF 弁は弁輪外径と弁葉外径と がほぼ同じのため,樹脂製弁葉がホルダ内面に触れそれが摩擦抵抗となって水撃値に影響 していると思われる.硬質塩ビホルダでも同様に触れているはずだが,樹脂同士の接触の ために摩擦抵抗が低く,水撃値には影響しなかったと思われる. 以上の結果から,試験弁用ホルダとしては,硬質塩ビ製ネジ式弁ホルダが適していると 思われる. 今回試験に用いた SR 弁は弁輪とストラットとの接続部分(2箇所)が弁輪の巾方向に約 0.2mm 盛り上がっていたので,弁ホルダ側を削り込んで対応した.このような追加工の必 要性等も考慮すると,硬質塩ビ製の弁ホルダが最適であると思われる. 3) 東洋紡 VAD 用従来弁 SR 弁と新規採用弁 MH 弁について Fig.2.21 は,各収縮時間比における流量と水撃値について硬質塩ビホルダで SR 弁と MH 弁とを比較したグラフである.. 7. 350. 6. 300. 5. 250. 4. 200. 3. 150. 2. 100. 1. 50. 0 0. 10. 20. 30 40 50 Systolic fraction %. 60. 70. 0 80. Fig.2.21 Comparison of flow rate and water hammer between SR valve and MH valve 流量については MH 弁が収縮時間比 50%以下の範囲で若干上回っている.水撃値について は流入・流出側とも MH 弁が高値を示している.これは MH 弁のディスク開閉角が 70 度と SR 弁(55 度)に比べ大きいことと,MH 弁の漏れ量が SR 弁に比べて少ないために急激な弁閉. - 36 -.
(20) 鎖が生じるためと思われる. 4) 国循時代の SUS ホルダによる機械弁破損について 本試験では弁ホルダの材質・形状によって WH は余り影響を受けないことがわかった. 当時国循では人工弁は高価なこともあり,実験終了後はきれいに洗浄・再滅菌して動物実 験にも再利用しており,破損した人工弁も延べで長時間使用された可能性が高い.その結 果,弁輪とストラットの溶接部分の疲労が蓄積して,破損した可能性も考えられる. 5) 設計・製作した UM 弁について 拍動流実験用として市販のチェックバルブ部品を利用し,簡易的なアンブレラ弁を設 計・製作した.弁座には加工しやすいアクリルを用い,Φ2 の穴を 16 箇所開けた後にリュ ータを用いて手加工で穴同士をつないで開口面積を広げた(付録:弁座図面参照).Fig.2.8 を 見てもわかるように,開口面積はまだ 0.6cm2 と少ないので市販人工弁やJF弁と比べて弁 抵抗は若干大きいが,収縮時間比を調整することで他の各弁と同程度の拍出量が得られて いる.弁の閉鎖特性については例えば Fig.2.18 より,弁開閉抵抗が他の弁と比べて大きいた めに,WHは低値となっている. 今回用いたチェックバルブの外径はΦ15mm であるが,このほかにもΦ8.6・Φ10・Φ11 と数種類あるので用途に応じた大きさの UM 弁製作が可能である。また、弁葉・弁座共に 樹脂製なので MRI 環境下での拍動実験用としても使用可能である。 以上より,UM弁は水を用いた拍動流試験用流入・流出弁として利用価値が高いと思わ れる.. 2.7 本章のまとめ 以上の結果をまとめると,以下のようになる. 1) 各種機械式人工弁の着脱が容易な人工弁ホルダを材質・加工性をベースに設計・製作し, 人工弁閉鎖時の水撃挙動を簡易的に評価する方法を提案した. 2) 本法で得られた各種機械式人工弁(SR 弁・MH 弁・JF 弁・UM 弁)の水力学特性と圧力特 性は,人工心臓用人工弁選択のための評価指標として提案することができた. 3) 東洋紡 VAD に内蔵されている SR 弁と MH 弁については,MH 弁が高い水撃値を示し た. 4)拍動流試験用として設計・製作した UM 弁は,製作が容易で試験用としても十分機能す ることがわかった. 本章で得られた基礎特性をもとに,3 章では SR 弁・MH 弁を東洋紡 VAD に組み込んだ状 態での流量・圧力特性を比較検討する.. - 37 -.
(21)
関連したドキュメント
出典)道路用溶融スラグ品質管理及び設計施工マニュアル(改訂版)((一社)日本産業機械工業会 エコスラグ利用普及 委員会)..
定義 3.2 [Euler の関数の定義 2] Those quantities that depend on others in this way, namely, those that undergo a change when others change, are called functions of these
A comparison of approximations with simulation estimates for the mean and standard deviation of the maximum jumping window content of two rate- renewal processes with SCV c 2= 15.4
We present a local convergence analysis for deformed Halley method in order to approximate a solution of a nonlinear equation in a Banach space setting.. Our methods include the
9 Influence of pumping on chloride content Concrete temperature (Fig. 8) increased after pumping, and chloride content (Fig. 9) was slightly decreased but leveled out
建設機械器具等を保持するための費用その他の工事
物質工学課程 ⚕名 電気電子応用工学課程 ⚓名 情報工学課程 ⚕名 知能・機械工学課程
「8.1.4.2 評価の結果 (1) 工事の施行中 ア 建設機械の稼働に伴う排出ガス」に示す式を 用いた(p.136 参照)。.