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診断における問診の重要性が再認識されたびまん性すりガラス陰影の1例

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Academic year: 2021

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症例報告

聖マリアンナ医科大学雑誌Vol. 44, pp. 77–81, 2016 1 聖マリアンナ医科大学 臨床研修センター 2 聖マリアンナ医科大学 内科学 (呼吸器内科) 3 川崎市立多摩病院 内科学 (総合診療内科) 4 川崎市立多摩病院 内科学 (呼吸器内科)

診断における問診の重要性が再認識されたびまん性すりガラス陰影の

1

こう

こ1

いのうえ

てつ

ぺい2

さか

つばさ3

じゅん

こ4

みね

した

まさ

みち2 (受付:平成28年4月22日) 抄 録 „症例‟ 20歳,男性で,発熱・咳嗽を主訴に近医受診し,感冒の診断で処方を受けたが改善せ ず,2日後再度近医受診し,胸部異常陰影を認め,当院紹介となった。来院時の胸部単純CT で両側のびまん性すりガラス陰影および両側胸水の貯留を認めた。問診で10日前から喫煙を 開始したことを聴取したことから,急性好酸球性肺炎を疑い,精査加療目的で入院となった。 同日施行した気管支肺胞洗浄で好酸球の顕著な増加を認め,ステロイドによる治療を開始した。 速やかに解熱し,胸部単純写真上の陰影も改善したためステロイドを適宜漸減した。投薬終了 後も再燃なく経過良好であった。急性好酸球性肺炎の原因は本邦では喫煙との関連が指摘され ている。今回我々も,喫煙が誘因となった急性好酸球性肺炎を経験した。文献的考察を加えて 報告する。 索引用語 急性好酸球性肺炎,喫煙,びまん性すりガラス陰影 緒 言 急性好酸球性肺炎は,若年男性に喫煙を契機とし て発症することが知られている。画像ではびまん性 すりガラス陰影が主体とされているが,非典型例も 多い。また未成年である事も多く,喫煙歴を隠蔽す る事もある為,しばしば,診断治療に難渋すること がある。今回,急性好酸球性肺炎としては非典型的 なCT画像所見を示したが,問診による喫煙歴の聴 取が診断に直結した1例を経験した。現代の医学で は採血検査や画像検査が重視されがちであるが,診 察の基本は医療面接であり,今回その重要性を再認 識させられた。 症 例 症 例:20歳 男性。 主 訴:発熱,咳嗽。 現病歴:前日から続く39.5ºCの発熱と咳嗽を主訴に 当院紹介受診3日前に近医受診し,感冒の診断で鎮 咳薬,トラネキサム酸を処方されたが改善しなかっ た。2日後再度近医受診し,胸部異常陰影を認めた ため精査加療目的で当院紹介となった。診察時,問 診にて10日前からの喫煙開始が明らかになった。 既往歴:なし。 家族歴:なし。 生活歴:飲酒 機会飲酒,喫煙 10日前に喫煙を開 始,職業 飲食販売店勤務,アレルギー なし。 来院時理学所見:身長178 cm 体重63 kg 体温 37.0ºC 脈拍 106回/分 血圧113/57 mmHg SpO2 94%(室内気下) 呼吸音 清 心音 純,整 来院時検査所見:白血球上昇,白血球分画にて好酸

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表 1 入院時検査所見 図1a 図1b 図1b 図 1a: 入院時胸部単純写真。両側びまん性にすりガラス陰影,両側胸水を認め た。図 1b: 入院時胸部単純 CT。図 1a に一致するように両側びまん性に 小葉中心性陰影主体に浸潤影・すりガラス陰影を認め,両側胸水も認め た。広義間質の肥厚はない。 球上昇,CRP上昇 (表 1) 画像所見:図1a, b に示す通り,胸部単純写真では, 両側びまん性にすりガラス陰影を認めた。胸部単純 CTでは小葉中心性陰影主体の浸潤影・すりガラス 陰影,及び両側胸水を認めた。明らかな広義間質の 肥厚はなく,縦隔リンパ節腫脹もなかった。 経 過:CT に て 後 述 す る , 急 性 好 酸 球 性 肺 炎

(AEP:acute eosinophilic pneumonia) の画像所見で ある広義間質の肥厚がなく,AEPを積極的に疑う所

見ではなかったが,問診より10日前からの喫煙開

始を聴取していたことからAEPの可能性を考え,

即日入院の上,入院時に気管支肺胞洗浄 (BAL; Bron‐ cho-alveolar Lavage) を施行した。BAL液の外観は 淡黄色調であり好酸球が豊富であることを示唆する 所見1)であったことから,AEPの可能性が高いと判 断し,プレドニンゾロン60 mg (1 mg/kg) によるス テロイド加療を開始した。後日判明したBAL液の 解析結果は表 2に示す通り高度の好酸球増多を認め た。第3病日には解熱し,第4病日にはCRPは陰 性化,血中好酸球数は17%まで増加し,その後順次 減少した (図 2)。画像上は第3病日で著明な陰影の 改善 (図 3a) をみとめ,その結果を受け,プレドニ

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表 2 入院時肺胞洗浄液の検査所見

・外観 淡黄色調

・白血球分画 

seg 0.0% lympho 7.0% mono 0.0%

eosino 87% baso 0.0%

・CD4/CD8 4.6 (70/15)

10mg 30mg PSL 60mg 0 1 2 3 4 5 6 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20

day1 day4 day10 day15 Eosino CRP [%] [mg/dl] 図 2 経過表 CRP は速やかに陰性化した。好酸球は一時上昇したもの のその後減少している。 図3a 図3b 図 3a: 第 3 病日の胸部単純写真。入院時と比較しすりガラス陰影は改善し, 胸水も減少している。図 3b: 第 15 病日の胸部単純写真。すりガラス・ 胸水は共に消失している。 ンゾロンは第4病日から図 2に示すとおり適宜減量 し,第15病日の胸部単純写真 (図 3b) ではすりガラ ス陰影は消失したことを確認し,投薬を中止した。 プレドニン中止後も一切の再燃なく経過した。 考 察 AEPは20歳台の男性に多く,喫煙 (20%),薬剤 (14%) が原因とされている2)。臨床症状は発熱・乾性 咳嗽・急速に進行する呼吸不全であり,疾患概念は BAL中の好酸球増多を伴う急性呼吸促迫症候群であ るとされている3)BALの実際の所見はJanzら1)に よれば外観が高濃度の好酸球の為,黄色調となり, 細胞分画は好酸球25%以上とされ,AEPのBAL中 好酸球は平均約35〜55%と報告されている。本症例 でも,外観は黄色調であり,後日報告された検査結 果ではBAL中好酸球は87%と極めて高値であった。 BAL中の好酸球増多を示す疾患としては,喘息,各

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表 3 急性好酸球性肺炎診断基準 1. 5日以内の急性の発熱 2. 低酸素性呼吸不全 3. 胸部レントゲン写真上のびまん性肺胞性 もしくは混合性浸潤影 4. 気管支肺胞洗浄液で好酸球分画が25%以上 5. 寄生虫、真菌、その他の感染症がないこと 6. ステロイド治療に速やかに反応すること 7. ステロイド治療後に再発しないこと 種間質性肺炎などがあげられるが,その多くが5〜 20%程度の増加にとどまるとされている1)。末梢血の 好酸球は,初期は低値で,その後増加する事が典型 的な所見3)であり,本症例も同様の経過であった。 AEPの画像所見は2008年のDaimon4)らは,①両側 びまん性の広範な非区域性のすりガラス陰影もしく は淡い浸潤影 (100%),②Kerley line,特にB line

(90%),③両側胸水 (76%) が典型的所見であるとし, 特に①と②を両方満たす場合はAEPを強く疑える と報告している。②はじん肺,肺うっ血,癌性リン パ管症以外ではほとんど見かけない所見であり, AEPの90%で認めることから特異性が高い重要な所 見である。本症例では②の所見が乏しく,その理由 としては,小葉間隔壁の肥厚をきたすほど,間質性 炎症が強くなかったと考えられ,受診時呼吸不全が みとめられなかったことから,AEPの軽症例と考え れば矛盾しない画像所見と考えた。治療は,重症例 はステロイドパルスも考慮され,軽症例はプレドニ ンゾロン換算で0.5〜1 mg/kgで開始するとしてい る。AEPはステロイドに良好に反応し,投与後数時 間から改善し始め,減量しても再燃はないことから, 画像所見で十分な改善が得られた後は,急速に減量 してよいとされている5,6)。本症例でもプレドニンゾ ロン1 mg/kgで治療開始し第3病日には単純写真 上,著名な改善を認め,治療開始後2週間で投薬を 終了しており,その後再燃なく経過している。 AEPの診断基準は,Allenらによって提唱された 表 3に示す通りであるが,現病歴,検査所見,治療 経過を全て合わせた項目となっている。本症例では, 表 3の2の項目以外の全てを満たす結果となり, AEPと最終診断するに至った。AEPは重症の場合, 喫煙などを中止しても急速に悪化することもあり, 早期診断・早期治療が最も重要な疾患の一つと言え る。今回,我々は,AEPでは非典型例な画像所見で あったが,問診からAEPを疑い,容易に診断・治 療に至った1例を経験した。 文 献

1) Janz DR. Acute Eosinophilic pneumonia. Al‐ lergy 2005; 60: 841–857.

2) Allen JN: Acute eosinophilic pneumoonia as areversible cause of noninfetious respiratory failure. N Engl J Med 1989; 321: 569–574. 3) 吉田浩子:好酸球性肺炎 呼吸 2003; 22: 545–

549.

4) Daimon T, et al. Eur J Radiol 2008; 65: 462– 467.

5) 中島正光:喫煙による急性好酸球性肺炎.呼吸

器 Annual Review 2002 中外医学社.2002; 80– 86.

6) Chlin Kook Rhee, et al. Clinical Characteristics and Corticosteroid Treatment of Acute Eosino‐ philic Pneumonia, ERJ 2013; 41: 402–409.

(5)

1 Clinical Resident Center, St. Marianna University School of Medicine

2 Division of Respiratory Disease, Department of Internal Medicine, St. Marianna University School of Medicine 3 Department of General Internal Medicine, Kawasaki Municipal Tama Hospital

4 Division of Respiratory Disease, Department of Internal Medicine, Kawasaki Municipal Tama Hospital

Abstract

A Case of Acute Eosinophilic Pneumonia Triggered by Smoking:

Initial Diagnosis Based on Imaging and History Taking

Eriko Koda

1

, Teppei Inoue

2

, Tsubasa Sakai

3

,

Junko Saji

4

, and Masamichi Minesita

2

A 20-year-old man consulted his local doctor with a complaint of fever and a cough. Although a common cold was diagnosed., his symptoms did not improve, so he returned to the doctor 2 days later. An abnormal shadow was seen upon chest x-ray, so the patient was referred to our hospital. We performed chest computed tomography and observed diffuse ground-glass opacities and centrilobular consolidation in both lungs and pleu‐ ral effusion on both sides. When we interviewed the patient, we learned that he had started smoking 10 days before the start of symptoms. Acute eosinophilic pneumonia was suspected, and we thus admitted the patient for closer examination. Broncho-alveolar lavage was performed shortly after admission, and a marked increase in the percentage of eosinophils was seen. We began steroid treatment. The patient’s fever disappeared almost immediately, and the chest shadow disappeared, so we gradually tapered the steroid. The condition did not re‐ cur after discontinuation of the steroid therapy. Cases of acute eosinophilic pneumonia triggered by smoking have been reported in Japan, and thus we believe the disorder was smoking-related in our patient. We described the details of our case in light of the available literature.

表 1 入院時検査所見 図1a 図1b 図1b 図 1a: 入院時胸部単純写真。両側びまん性にすりガラス陰影,両側胸水を認め た。図 1b: 入院時胸部単純 CT。図 1a に一致するように両側びまん性に 小葉中心性陰影主体に浸潤影・すりガラス陰影を認め,両側胸水も認め た。広義間質の肥厚はない。球上昇,CRP上昇 (表 1)画像所見:図1a, b  に示す通り,胸部単純写真では,両側びまん性にすりガラス陰影を認めた。胸部単純CTでは小葉中心性陰影主体の浸潤影・すりガラス陰影,及び両側胸水を認めた。明らかな
表 2 入院時肺胞洗浄液の検査所見

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