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配位環境を利用した電子・エネルギー貯蔵触媒の特 性制御

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

配位環境を利用した電子・エネルギー貯蔵触媒の特 性制御

ソ, ジュンチョル

https://doi.org/10.15017/2534408

出版情報:九州大学, 2019, 博士(工学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

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(様式2)

氏 名 :ソ ジュンチョル

論 文 名 :配位環境を利用した電子・エネルギー貯蔵触媒の特性制御 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

化石燃料の枯渇化が懸念される現代において、水素や光エネルギーは、次世代のクリーンなエネ ルギーキャリアとして期待されている。このようなエネルギーキャリアを効率よく活用するために、

金属錯体の利用は非常に有効な手段である。なぜなら、多様な配位環境を精密設計することにより、

金属錯体の特性を合目的に制御することが可能だからである。本論文では、配位環境を設計するこ とによって、水素からの電子を貯蔵する電子貯蔵触媒と光エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵触 媒の特性を制御することに成功した。具体的には、金属錯体によって水素から電子を取り出し、二 酸化炭素を還元することによる酢酸合成を目的とする(第2章)。現在、酢酸の工業的製造は、モン サント法によって行われており、原料は一酸化炭素とヨードメタン(ヨードメタンはメタノールと ヨウ化水素から反応系中で合成)である。モンサント法は、高価で有毒な一酸化炭素を利用するた め、一酸化炭素を二酸化炭素に代替する新しい酢酸合成法の開発が期待されている。本研究では、

電子求引性の高いターピリジン誘導体を支持配位子とするロジウム錯体を用いることで、水素との 反応を促進し、水素と二酸化炭素を用いる新しい酢酸合成法の開発を行った。また、ランタニド錯 体は、一般的に支持配位子と金属の軌道が混合しないため、ランタニドイオンから配位子の三重項 状態への逆エネルギー移動を利用した三重項状態の長寿命化が期待できる。しかし、使用できるラ ンタニドイオンが限られており、また、f 軌道は多様な配位数を取りうるため精密な配位環境のコ ントロールが難しい。本研究では、支持配位子の精密設計によって、7配位構造のジスプロスム(III) 錯体(第3章)と7配位または8配位構造のテルビウム(III)錯体(第4章)を合成することで、エ ネルギー貯蔵触媒の励起寿命制御を行った。

第2章では、強い電子求引性のターピリジン誘導体を支持配位子として用いることによって、H2

の2電子を貯蔵可能なロジウム(III)錯体 [RhIII(HO-terpy)Cl3] (Rh_1) を合成し、CO2の還元反応によ る酢酸の合成に成功した。また、各段階の中間体を単離することで、反応メカニズムを明らかにし た。H2から電子を貯蔵したロジウム(I)錯体 [RhI(HO-terpy)Cl] (Rh_2) の生成は、単結晶X線構造解 析およびX線光電子分光法により明らかにした。次いでRh_2へのヨードメタンの酸化的付加反応 によってロジウム(III)錯体 [RhIII(HO-terpy)(CH3)ClI] (Rh_3) が生成し、本錯体はX 線構造解析によ って同定した。RhIII–CH3結合へCO2挿入反応による酢酸塩の生成は1H NMRで追跡した。この反応 は、RhIIIに配位する可能性のあるハロゲンイオンやアクアの影響によって、CO2の挿入反応が阻害 または促進されることを見出した。即ち、本研究では、ターピリジン誘導体による配位環境の制御 だけでなく、反応系内に存在するRhIIIに配位可能なイオンによる配位環境の制御によって、CO2を 用いる酢酸合成に成功した。

第3章では、環状ポリアミンにフェニル基を修飾した配位子 {(MeMeArOH)3tacn} を用いて、光の エネルギーが貯蔵可能な発光性ジスプロシウム(III)錯体 [{(MeMeArO)3tacn}DyIII(THF)] (Dy_1) の開

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発に初めて成功した。エネルギー貯蔵能力は、3重項酸素 (3O2) へのエネルギー移動反応による発 光挙動の変化から追跡した。THF溶液中、窒素下 (Φ = 0.05、τ = 17.7 µs) および酸素下 (Φ = 0.011、

τ = 4.1 µs) において発光挙動が変化し、酸素濃度0.00 (窒素下) から1.01 M -2 (酸素下) におけるス ターンボルマープロットは良好な直線関係を示した (KSV = 305 M-1R2 = 0.9937)。Dy_1の発光が温 度依存性を示したこと (温度低下に伴う発光強度の増加と酸素応答性の減少)、及び、DyIIIイオンの 直接励起による発光強度も酸素に応答することから、従来のランタニド錯体と同じメカニズムでエ ネルギーが貯蔵されることを明らかにした。

第4章では、配位子 {(RMeArOH)4cyclen} の置換基 (R = tBu or Me) の立体効果を利用して、エネ ルギー貯蔵可能な発光性テルビウム(III)錯体の配位数を8配位 [H{(tBuMeArO)4cyclen}TbIII] (Tb_2tBu) または7配位 [{(MeMeArOH)(MeMeArO)3cyclen}TbIII] (Tb_2Me) に制御し、励起寿命のコントロールに 成功した。3O2 へのエネルギー移動反応を用いて評価を行なった結果、Tb_2tBu (KSV = 17600 M-1) は 過 去 に 報 告 さ れ た 7 配 位 構 造 の テ ル ビ ウ ム(III)錯 体 Tb_2Me (KSV = 12600 M-1) お よ び [{(MeMeArO)3tacn}TbIII(THF)] (Tb_1、KSV = 8300 M-1) より高い酸素応答性を示した。KSVの値が、配 位子とTbIIIイオンの結合距離、ガドリニウム(III)錯体が示す発光寿命と相関があることから、テル

ビウム(III)錯体における励起寿命が、配位子とTbIIIイオンの結合距離で制御されたことを見出した。

本論文では、次世代のエネルギーキャリアとして期待される水素または光エネルギーを用いた電 子・エネルギー貯蔵触媒の反応特性が、金属錯体の配位環境で制御することができた。具体的には、

電子貯蔵触媒を用いたCO2還元反応系を構築し、エネルギー貯蔵触媒におけるランタニド錯体の領 域を拡張した。また、電子とエネルギーを効率的に貯蔵するための分子設計指針を提供し、目的に 適した配位環境構築の重要性を示唆した。今後、本論文で得られた成果が、革新的な電子・エネル ギー貯蔵触媒の開発につながることを期待する。

図 1. 本論文の結果の概略. ロジウム(III)錯体を利用した電子貯蔵触媒による CO2 還元反応 (第 2 章)、ジスプロシウム(III)錯体を用いたエネルギー貯蔵触媒の開発 (第3章)、テルビウム(III)錯体に よるエネルギー貯蔵触媒の励起寿命制御 (第4章).

参照

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