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水谷, 未来

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Academic year: 2021

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九州大学学術情報リポジトリ

Kyushu University Institutional Repository

急性膵炎におけるアデノシン取りこみ阻害薬KF24345 の薬効メカニズム

水谷, 未来

Graduate School of Pharmaceutical Sciences, Kyushu University

https://doi.org/10.15017/22024

出版情報:Kyushu University, 2011, 博士(薬学), 課程博士 バージョン:

権利関係:

(2)

(様式5)

氏 名 :水谷 未来

論文題名 :急性膵炎におけるアデノシン取りこみ阻害薬KF24345の薬効メカニズム 区 分 :甲

論 文 内 容 の 要 旨

【序論】

KF24345は、細胞膜上のヌクレオシドトランスポーターに結合することにより、細胞内へのア

デノシン取り込みを阻害する薬剤である(図 1)。KF24345 は、致死性の急性膵炎モデルである コリン欠乏エチオニン含有食(CDE diet)処置マウスにおいて、組織障害による膵および肝酵素 の血中への逸脱および致死を有意に改善する。これらの薬効はアデノシン受容体拮抗薬の併用に より消失することから、内在性アデノシンの増加を介していることが示唆される。しかし、本モ デルにおいてKF24345が薬効を発揮する際に、どの臓器および細胞で内在性アデノシンを増加さ せているか不明であった。急性膵炎は膵臓を原発とする全身性の炎症病態であるが、組織学的に 重篤な炎症臓器として他に肝臓などが挙げられる。また、炎症増悪に伴い血中サイトカインの上 昇が顕著である。よって、私はKF24345が薬効を発揮する場所として炎症状態の膵臓、肝臓もし くは血中の細胞を想定し、本研究を行った。

(図1)生体内のアデノシン代謝

【方法】

1) CDE diet誘発急性膵炎マウスの膵および肝組織中のアデノシンおよび関連物質量を測定し、

ADO

NT

ADO ATP⇔ADP⇔AMP

SAM⇔SAH AK

SAHase

細胞

正常状態

ADO NT

ADO ATP⇒ADP⇒AMP

ATP⇒ADP⇒AMP

INO⇒Hx⇒XA INO

ADA

Cytosolic ADA 5’-Nuc Ecto

5’-Nuc

炎症状態

KF24345

ADO: adenosine INO: inosine Hx: hypoxantine XA: xantine

ADA: adenosine deaminase AK: adeosine kinase Nuc: nucleosidase NT: nucleoside transporter SAM: s-adenosylmethionine SAH: s-adenosylhomocysteine

(3)

正常マウスと比較した。また、同病態マウスにKF24345を投与し、一定時間後の膵および肝 組織中のアデノシンおよび関連物質量を測定し、正常マウスと比較した。

2) CDE diet誘発急性膵炎マウスの血漿中のアデノシン量を測定し、正常マウスと比較した。ま

た、同病態マウスにKF24345を投与し、一定時間後の膵および肝組織中のアデノシン量を測 定し、正常マウスと比較した。

3) ヒト末梢血由来多型核白血球(PMN)のfMLP誘発活性酸素産生、エラスターゼ放出、また は末梢血由来単核球(PBMC)のリポポリサッカライド(LPS)刺激 TNF-α 産生に対し、ア デノシン単独、KF24345単独、またはアデノシンとKF24345併用の添加による影響を調べた。

4) PMN または PBMC に一定量の赤血球を混和した条件において、同エラスターゼ放出、また は同TNF-α産生に対し、アデノシン単独、KF24345単独、またはアデノシンとKF24345併用 の添加による影響を調べた。

【結果】

1) 病態マウスの膵および肝組織において、アデノシンの産生源であるアデノシン三リン酸の減 少に加え、アデノシン代謝物の一つであるヒポキサンチンの増加が認められた。しかし、ア デノシン自体の明確な変動は認められなかった。また、膵および肝組織中アデノシン量に対 するKF24345投与の影響は認められなかった。

2) 病態マウスの血漿においてアデノシンの増加が認められた。また、病態マウスにKF24345を 投与することにより血漿中アデノシンのさらなる増加が認められた。

3) PMNのfMLP誘発活性酸素産生、エラスターゼ放出、またはPBMCのLPS刺激 TNF-α産生 に対し、アデノシンは単独で抑制作用を示した。一方、KF24345単独の作用は弱く、KF24345 との併用によるアデノシン作用の増強も認められなかった。

4) PMNまたはPBMCに一定量の赤血球を混和した状態において、同エラスターゼ放出、または 同 TNF-α 産生に対し、アデノシンは単独で抑制作用を示さなかった。一方、アデノシンと KF24345の併用添加により、同TNF-α産生に対して抑制作用が認められた。

【考察】

【結果】1)より本モデルの炎症組織においてアデノシン産生の亢進が示唆されたが、炎症局所 ではアデノシンが細胞外に長く滞留できないこと、その消失経路がアデノシン取り込みに依存し ていないことが示唆された。一方、【結果】2)より、本モデルにてKF24345が薬効を発揮する場 所は、炎症組織よりむしろ循環血中の細胞であると考えられた。上記の結果を受け、急性膵炎の 病態増悪に重要と考えられる好中球や単球/マクロファージに注目した。【結果】3)より、PMN やPBMCの活性化に対し、KF24345が直接的に影響しないことが示唆され、【結果】4)よりKF24345 の抑制作用が赤血球を介した間接的なものであることが示唆された。

以上の研究から、CDE diet誘発急性膵炎マウスにおいて、KF24345は主に赤血球のアデノシン 取り込みを阻害することで内在性アデノシンを増加させ、炎症性白血球の活性化を抑制すること により薬効を発揮することが示唆された。

参照

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