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(1)

米国における経営者の報酬に関する近時の改正 :  ドッド=フランク法によるsay on payの導入等

著者 伊藤 靖史

雑誌名 同志社法學

巻 64

号 4

ページ 1181‑1216

発行年 2012‑09‑30

権利 同志社法學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000014080

(2)

(    同志社法学 六四巻四号

― ―

ドッド=フランク法による

sa y o n p ay

の導入等

― ―

伊    藤    靖   

   目    say on pay 1 say on pay 2 say on pay 3 say on pay 4   1  2 

(3)

(    同志社法学 六四巻四号  3  4   1  2  3 四 say on pay 1 say on pay 2 say on pay 3 say on pay

はじめに

 米国で〇〇年月日に成立した﹁ドッド=フランク ウォール・ストリート改革および消費者保護法(

D od d- F ra nk W all S tr ee t R ef or m a nd C on su m er P ro te ct io n A ct

)﹂(以下ではドッド=フランク法という)は、〇〇八年の金融危機を受けて、同国の金融規制を改革するものである 1

。同法による改正には、金融危機や金融規制とは直接の関係のない、公開会社 2

の役員報酬についてのものが含まれる 3

。そのような改正のうちで注目されたのは、公開会社に対して、役員報酬について株主総会の勧告決議による承認を行うことを義務付けるルール(そのような決議そのもの、また、そのような決議を要求するルールは、般に、

sa y o n p ay

と呼ばれる)が定められたことである。同様のルール

(4)

(    同志社法学 六四巻四号 は、EU加盟国をはじめ、いくつかの国ですでに導入されている 4

。その嚆矢となった英国のルールは、〇〇年の同国の会社法改正によって導入されていた 5

。 米国では、早い時期からストック・オプション等の業績連動型報酬が発達し 6

、経営者の報酬も他の先進諸国に比べて高額である 7

。そのため、同国では、経営者の報酬をめぐる議論が、コーポレート・ガバナンスに関連した議論の中で、重要な位置を占めてきた。 経営者の報酬をめぐる米国での議論と規制の動きについては、歴史上、いくつかのピークを観察することができる。過去〇年を見れば、〇年代初頭がつ目のピーク、〇〇〇年代初頭がつ目のピークである。前者は、八〇年代を通じて経営者の報酬が増加した方で、〇年代初頭に米国の景気が下降し、経営者の報酬が高額であるとの批判が高まったことを契機とするものである。〇年代初頭の経営者の報酬をめぐる議論は、経営者の報酬の開示の拡充等の規制の改革をもたらした 8

。 つ目のピークは、そのような規制の改革が行われたにもかかわらず、〇年代を通じて経営者の報酬がむしろそれ以前よりも早いスピードで増加したことと、〇〇〇年代初頭のエンロン等の企業不祥事を、契機とするものである。企業不祥事に対応してサーベンス・オックスリー法が制定され、これを受けてニューヨーク証券取引所やナスダック(NASDAQ)は上場規則を改正した。そのような改革の中には、経営者の報酬に関連する内容も含まれている 9

。さらに、〇〇六年には、米国証券取引委員会(以下ではSECという)が、経営者の報酬に関する開示内容を大幅に改正した。この改正は、〇〇〇年代初頭の不祥事とは直接に関係するものではなく、むしろ、〇年代初頭に行われた経営者の報酬の開示の拡充を基礎に、開示内容を改善しようとするものである ₁₀

。 米国では、その後も経営者の報酬への批判は下火にならず、〇〇六年および〇〇年頃から、役員報酬に関する

(5)

(    同志社法学 六四巻四号

勧告決議を求める株主提案がアクティビスト株主によって多数行われ、従来の同種の株主提案よりも多くの支持を受けるようになった ₁₁

。このような動向を受けて、数少ないながら、役員報酬に関する勧告決議を任意に行う会社も現れた ₁₂

。〇〇年には、成立には至らなかったが、

sa y o n p ay

を定める法案が連邦下院に提出され、同法案は同年四月〇日に同院を通過した ₁₃

。また、同様の法案が、連邦上院にも提出された ₁₄

。そして、〇〇八年以来の米国の金融危機を受けて、〇〇年に制定されたアメリカ復興再投資法(

A m er ic an R ec ov er y an d R ein ve st m en t A ct o f 20 09

)では、公的資金投入会社において、年次総会で役員報酬について勧告決議を行うべきことが定められた ₁₅

。以上のような動向を経て、ドッド=フランク法によって、金融機関に限らず、公開会社般について役員報酬に関する法改正が行われたわけである。このような動向を、上に述べたつのピークに続く、つ目のピークと見ることもできるだろう。 本稿は、このような公開会社の役員報酬に関するドッド=フランク法による改正と、同法にもとづいてSECが制定した規則を概観し、同改正がどのような意味を有するかを検討するものである ₁₆

。以下、で同改正のうち

sa y on p ay

に関する内容を概観し、・でその他の改正事項を概観する。四では

sa y on p ay

に関連した実証研究や学界での議論等を紹介する。

 報酬に関する勧告決議(

sa y o n p ay

1 

sa y o n p ay

導入の理由 

sa y o n p ay

に関するルールを含めて、役員報酬に関するドッド=フランク法のルールは、〇〇年月日に連邦下院に提出され、同年月日に同院を通過した、〇〇年会社・金融機関報酬公正法案(

C or po ra te a nd

八四

(6)

(    同志社法学 六四巻四号

F in an cia l I ns tit ut io n C om pe ns at io n F air ne ss A ct o f 20 09

₁₇

の内容を踏襲するものである。同法案の提案の理由として、金融業界の役員・従業員の報酬の問題点に加えて、事業会社の役員報酬についてはその額が非常に高額になり、労働者の給与との格差が拡大していることが強調された ₁₈

。 しかし、

sa y o n p ay

についての、より理論的な論拠は、次のようなものといえる ₁₉

。すなわち、

sa y o n p ay

の目的は、役員報酬について、取締役会の経営判断に代えて株主に判断をさせようとするものではなく、取締役会の株主への説明責任を強化することによって、取締役会の実際の独立性を補強することにある。たしかに、年次総会における取締役の選任は、取締役会の行為について株主が定期的にチェックを行うものであるし、〇〇六年改正によって役員報酬の開示が拡充され ₂₀

、経営者の報酬の決定に関する取締役会のパフォーマンスを評価するための情報は、以前よりも十分に株主に与えられている。しかし、取締役の選任を通じた影響力の行使(取締役の交代や、報酬委員会構成員である取締役の再選において賛成票を投じないという方法による)は、現実には費用も大きいものであるため、取締役会に対する制約として必ずしも有効なものではない。そのため、経営者の報酬の決定を取締役会の意思決定のその他の側面とは切り離し、前者に焦点を絞る形で、株主に権限を与えるべきだとされるのである。

2 

sa y o n p ay

に関するルール ドッド=フランク法条は、四年証券取引所法に四A条を追加する。 同条は、年に度以上の頻度で、SECの委任状勧誘規則が報酬の開示を要求する株主総会(通常は年次総会)において、レギュレーションS

-K

項目四〇 ₂₁

に従って開示される役員の報酬を承認するための別途の決議(以下では報酬承認決議という)が行われることを要求する ₂₂

。また、六年に度以上の頻度で、同様に年次総会等において、報酬承

(7)

(    同志社法学 六四巻四号

認決議の頻度(年に度、年に度、または年に度のいずれなのか)について、別途の決議(以下では頻度決定決議という)が行われなければならない ₂₃

。これらの決議を要求されるのは、四年証券取引所法条の下で登録が行われた証券を発行しており、委任状勧誘規則に服する発行者である ₂₄

。 報酬承認決議・頻度決定決議は、いずれも、発行者またはその取締役会を拘束するものではなく、勧告決議である ₂₅

。四年証券取引所法条(f)項に服する機関投資運用者(

in st itu tio na l in ve st m en t m an ag er

₂₆

は、少なくとも毎年、報酬承認決議・頻度決定決議についてどのように議決権を行使したかを報告しなければならない ₂₇

。 ドッド=フランク法条を受けてSECが制定した規則四a

Sが、報酬承認決議・頻度決定決議要れギンョシーレュレ求、はのるれさばよ詳そ則規同。るめ定を細にの

は、報・酬承認決議頻度決定決議にいて、つ

っ委てるあで合場るれさ誘勧が状任 ₂₈ で行う会社。以下は示会社という)によを開時総員報酬の開示が要求される定(会てその他の総会について、登録者役

-K

っ従に

。報酬承認決議は、レギュレーションS

xe na er fic of e tiv cu e ed m

役員執(象)行 ₂₉

-K

っ目四〇に従項対開示される開示て

の報酬を承認するものであることを示して行わなければならない。そのような要件を充たす決議として、﹁レギュレーションS

₃₀ 、め含を論議るよに章文よび、お、表諸るす関に酬報てここ﹂れさ示例が容内議決うといるるに承認すすことを決議

n a sis ly na A nd . sio ns C om pe us isc n D io at

員酬す関に、報にを酬議たれわ払支る報論A下ではCD&とという)、(析分以

-K

役た目四〇に従って開示されと行おりの、会社の開項対象執示

3 

sa y o n p ay

に関する開示 報酬承認決議に関連して、SECは、委任状説明書の内容について定めるスケジュール四Aに項目四を追加した。 八六

(8)

(    同志社法学 六四巻四号 同項目によれば、会社は、報酬承認決議・頻度決定決議を求める場合に、委任状説明書において、そのような決議の般的な効果(そのような決議が拘束的かどうかなど)を説明しなければならず、役員報酬についての勧告決議の現在の頻度と、次にそのような勧告決議が行われるのがいつかを開示しなければならない ₃₁

。 レギュレーションS

響たにA&DC、がかしいる影にうよのどにおて方なすたっなにとこいら開なばれけなれさ示針 ₃₂ そびよお、かたし慮考にようのどをれそ、ばれすと、酬のの関にし報と定決の酬報員よ役行執の社会が慮考なうた慮考 が針るめ定を酬報し定決を方にるす関に酬報社会、れ際、正考、たま、かうどかたし慮を直果結の議決認承酬報の近さ

-K

改、たれわ行が正改もすていつに〇四目。ながる項)b(目項同すわ関にA&DC、ち項

4 適用除外 ドッド=フランク法条は、SECが、報酬承認決議・頻度決定決議について、主に小規模な発行者への負担を考慮して、規則によって、ある発行者またはある種類の発行者への適用除外を定めることができるものとする ₃₃

。しかし、小規模な発行者においても報酬について株主総会で勧告決議をすることに投資家は同様の利益を有することから、適用除外は定められなかった。そのかわり、小規模報告会社(

sm all er re po rti ng c om pa ny

)については ₃₄

、その負担を考慮して、報酬承認決議・頻度決定決議について、通常の会社よりも年の猶予期間が与えられた ₃₅

(9)

(    同志社法学 六四巻四号

 報酬委員会

1 報酬委員会の独立性 ドッド=フランク法条は、四年証券取引所法に〇C条を追加する。 同条は、報酬委員会の独立性について、以下のことを定める。すなわち、SECは、規則によって、証券取引所および証券業協会に、次の①の要件を遵守しない発行者のいかなる持分証券の上場も禁じることを指示しなければならない ₃₆

。 ① 報酬委員会の独立性  そのような規則は、発行者の取締役会の報酬委員会の各構成員が、(A)発行者の取締役会構成員であること、および、(B)独立している(

in de pe nd en t

)ことを、要求しなければならない ₃₇

。 ② 独立性  そのような規則は、上記①における﹁独立性﹂の定義を定める際に、次のものを含む関連する諸要素を考慮すべきことを、証券取引所および証券業協会に要求しなければならない。すなわち、(A)発行者がそのような取締役会構成員に支払う助言料等を含む、発行者の取締役会構成員の報酬源、および、(B)発行者の取締役会構成員が、発行者・発行者の子会社・発行者の子会社の関係者と、関係しているかどうか ₃₈

。 ③ 独立性に関する要件の適用除外  そのような規則は、報酬委員会の構成員について、発行者の規模その他の関連する諸要素を考慮して証券取引所または証券業協会が適切であると定める特定の関係を、上記①の要件の適用除外とすることを、証券取引所または証券業協会に許容しなければならない ₃₉

。 ドッド=フランク法条を受けてSECが制定した規則〇C

る証条に従って登録され従券法取引所および同法A六同に券件要の下以、が会協業証、るれさ録登てっるように条

はめ、四年証券取引所法〇C条が定 八八

(10)

(    同志社法学 六四巻四号 を遵守しない発行者のいかなる持分証券の上場(当初の上場と上場の継続を含む)も禁じなければならないものとする ₄₀

。 規則〇C

員役あで員成構会締こ取の者行発、がると成いるあでとこるて、し立独、びよお ₄₁

酬は券証年四、件引要なうよのそるめ定取所委行員がの各構報の者発法、に様同と条C〇会

。規則〇C

たこ件さなければならないとをが、明確化されている要充 ₄₂ の、たま、もとくなのでもるれば呼と会員他も職っなうよのそ、酬てあ務でのもるす行遂もを委報れそ、ばれあで会が て酬には報よ委員会に型的で典、くなけだ﹂会員委酬っる遂督員委るす行遂を)む含を監行の酬報員役(務職﹁れさ報

ので味意い狭、はで

。 証券取引所および証券業協会が﹁独立性﹂の定義を定める際に考慮しなければならない要素は、四年証券取引所法〇C条が明示する、(A)発行者がそのような取締役会構成員に支払う助言料等を含む、発行者の取締役会構成員の報酬源、および、(B)発行者の取締役会構成員が、発行者・発行者の子会社・発行者の子会社の関係者と、関係しているかどうか、だけである ₄₃

。SECは、証券取引所および証券業協会が、報酬委員会構成員の独立性の定義を定める際に、裁量を有することを強調する ₄₄

。 右に述べた③の独立性に関する要件の適用除外について、規則〇C

様りあでけだく置をめ定の ₄₅

〇券、四年証取C引所法同とは条

、具体的にどのような関係についてそのような適用除外を定めるかは、証券取引所および証券業協会に委ねられる ₄₆

2 報酬コンサルタントに関するルール 四年証券取引所法〇C条は、報酬委員会が報酬コンサルタント等を雇用する権限等について、以下のことを

(11)

(    同志社法学 六四巻四号

定める。 発行者の報酬委員会は、取締役会の委員会としてのその権限において、同委員会だけの裁量で、報酬コンサルタント、法律顧問その他の報酬委員会の助言者(以下では報酬コンサルタント等という)を雇用しまたはその助言を得ることができる ₄₇

。発行者の報酬委員会は、報酬コンサルタント等の任命、報酬および業務の監督について、直接の責任を負わなければならない ₄₈

。各発行者は、報酬コンサルタント等に対する合理的な報酬の支払いのために、取締役会の委員会としてのその権限において報酬委員会によって定められた適切な資金を用意しなければならない ₄₉

。規則〇C

同と様の定めを置く ₅₀

は、以上

。 発行者の報酬委員会は、SECが以下のように特定する諸要素を考慮した後でのみ、報酬コンサルタント等を選任することができる ₅₁

。SECは、報酬コンサルタント等の独立性に影響する諸要素を特定しなければならない。そのような諸要素は、報酬コンサルタント等の類型間で競争上中立的なものでなければならず、報酬委員会が以後もいずれの類型の者のサービスをも受けることができるようなものでなければならない。そのような諸要素は、以下のものを含まなければならない。すなわち、(A)報酬コンサルタント等を雇用する者(以下では報酬コンサルタント等雇用者という)による発行者へのその他のサービスの提供、(B)報酬コンサルタント等雇用者が発行者から受領する助言料額の、報酬コンサルタント等雇用者の総収入に占める割合、(C)報酬コンサルタント等雇用者の、利益衝突を防止するために定められた方針および手続き、(D)報酬コンサルタント等と報酬委員会構成員の事業上または個人的な関係、(E)報酬コンサルタント等によって所有される発行者の株式 ₅₂

。 規則〇C

要コ立独の等トンタルサン酬に報、がるこのようなえ素性影加証業券証びよお所引取券を響加追の素要の他のそるすに

は報トンタルサンコ酬)をF、(てえ加に上以、等と発ま係関な的人個はた上行業事の員役行執の者

(12)

(    同志社法学 六四巻四号 協会の上場基準に委ねる ₅₃

。また、右に述べた(A)から(F)までの要素は、報酬コンサルタント等を選任する前に考慮しなければならない要素として定められているだけであり、報酬コンサルタント等が独立性を有することが直接に義務付けられているわけではない。このこともあって、規則〇C

基を準や数量基準設性けていない ₅₄

てま、(A)から(F)ではの要素につい要重、

3 報酬コンサルタントに関する開示 四年証券取引所法〇C条は、発行者の年次総会についての委任状勧誘または同意勧誘の説明書において、SECが定める規則に従って、発行者が次のことを開示しなければならないものとする。すなわち、(A)発行者の報酬委員会が報酬コンサルタントを雇用しまたはその助言を得たかどうか、および、(B)報酬コンサルタントの業務が利益衝突を生じさせたかどうか、および、もしそうであれば当該衝突の性質と、同衝突にどのように対処がされたか ₅₅

。 コーポレート・ガバナンスに関する開示項目を定めるレギュレーションS

項る〇四目示、しとあ(でのもるす求要にでにBをす開たっ行を正改る加)追てしと項事示開をす ₅₆ にの項事の)A(たべ述右を示のもるす求要、開あの定てし関にトでっタうが示開の存既なよたのそ、はCES。ン

-K

ルす目四〇は、でサに、報酬コン項

。以下に挙げるもののうち、(ⅲ)が既存の開示事項として(A)を含むもの、(ⅳ)が追加された開示事項である。

  (ⅲ) 登録者の直近事業年度において役員および取締役の報酬の額または形態を決定または勧告する際に報酬コンサルタントが果たした役割。そのようなコンサルタントが誰か、コンサルタントが報酬委員会(またはそれに相当する職務を果たす者)によって直接雇用されるのか他の者によって雇用されるのか、コンサルタントの任務の性質と範

(13)

(    同志社法学 六四巻四号

囲、および、コンサルタントの雇用上の義務の遂行に関してコンサルタントに与えられる指示の重要な要素が述べられなければならない ₅₇

。  役員および取締役の報酬の額または形態についての助言または勧告を得るために、報酬委員会(またはそれに相当する職務を果たす取締役会の委員会)が報酬コンサルタントを雇用した場合には、前事業年度においてコンサルタントまたはその関係者が会社またはその関係者に万ドルを超える追加的な役務を提供したのであれば、執行役員および取締役の報酬の金額または形態の決定または勧告についてのコンサルタント料の総額と、そのような追加的な役務についての報酬の総額を開示しなければならない。追加的な役務についてそのようなコンサルタントまたはその関係者を雇用するかどうかの決定または勧告が経営陣によって行われたかどうか、および、報酬委員会または取締役会がコンサルタントまたはその関係者による追加的な役務を承認したかどうかも開示しなければならない。  役員および取締役の報酬の額または形態についての助言または勧告を得るために、報酬委員会(またはそれに相当する職務を果たす取締役会の委員会)が報酬コンサルタントを雇用したのではなく、経営陣が報酬コンサルタントを雇用した場合には、前事業年度においてコンサルタントまたはその関係者が会社またはその関係者に万ドルを超える追加的な役務を提供したのであれば、執行役員および取締役の報酬の金額または形態の決定または勧告についてのコンサルタント料の総額と、そのようなコンサルタントまたはその関係者が提供したあらゆる役務についての報酬の総額を開示しなければならない ₅₈

  (ⅳ) 右(ⅲ)によって開示されるコンサルタントの業務が利益衝突を生じさせる場合、当該衝突の性質と、同衝突にどのように対処されたかが開示されなければならない ₅₉

(14)

(    同志社法学 六四巻四号 4 適用除外 四年証券取引所法〇C条が定める報酬委員会の独立性に関するルールは、発行者のうちでも、被支配会社(

co nt ro lle d c om pa ny

)、リミテッド・パートナーシップ(

lim ite d p ar tn er sh ip

)、倒産手続中の会社、四〇年投資会社法の下で登録されるオープンエンド管理型投資会社(

op en -e nd ed m an ag em en t i nv es tm en t c om pa ny

)、および、独立した報酬委員会を有しない理由について株主に年次開示を行う外国私的発行者(

fo re ig n pr iv at e iss ue r

)には、適用されない ₆₀

。また、被支配会社については、四年証券取引所法〇C条のすべてのルールが適用されない ₆₁

。以上にいう被支配会社とは、次の発行者をいう。すなわち、(A)証券取引所または証券業協会に上場を認められており、(B)当該発行者の取締役選任において、ある個人、あるグループその他の発行者が議決権の〇%超を有するものである ₆₂

。規則〇C

は、以上と同様の定めを置く ₆₃

。 SECが定める規則は、四年証券取引所法〇C条のルールについて、特に小規模な発行者への負担を考慮して、証券取引所または証券業協会が適切であると定める種類の発行者への適用除外を定めることを、証券取引所または証券業協会に許容しなければならない ₆₄

。このような適用除外について、規則〇C

条を〇同様の定め置とくだけでありC ₆₅

は法所引取券証年四、

、具体的にどのような関係について適用除外を定めるかは、証券取引所および証券業協会に委ねられる ₆₆

(15)

(    同志社法学 六四巻四号

 その他の改正事項

1 ゴールデン・パラシュートの開示・承認 ドッド=フランク法条によって追加された四年証券取引所法四A条は、いわゆるゴールデン・パラシュートについても、開示と株主による承認を要求する。すなわち、ある発行者の、買収、吸収合併、新設合併、または、全部もしくは実質的に全部の会社資産の譲渡その他の処分(以下では買収等という)について、株主総会における承認が求められる場合、同総会についての委任状勧誘または同意勧誘の説明書において、勧誘者は、SECが定める規則に従って明瞭かつ簡潔な形で、買収等にもとづく、またはそれに関連する、執行役員の報酬(即時に支払われるものか、後払いのものか、条件付きのものかを問わず、すべての種類の報酬を含む)に関するすべての合意と、そのような報酬の総額について、開示しなければならない ₆₇

。また、以上のようにゴールデン・パラシュートの開示が要求される総会では、開示された合意と報酬を承認するための別途の決議が行われなければならない ₆₈

。この決議も、勧告決議とされる ₆₉

。 四年証券取引所法四A条を受けて、レギュレーションS

るす求要 ₇₀ も書面にる、のか意そう(て合のなべするす関に)む含でよいおか示開ので形の述記びよを表い、問わなを)ついてに る払われかもの、後に払支、時即(酬報るす連関にれのい問もずのを酬報の類のてべす、種わきか、条件付のものかを 社ま会象対はたと社会収買役員のとま間づ執そはた、くとのもに等収買、行象役て対象執行員に関し、そのような開示 誘委任状勧るもしく同行うよを示開れさ求要てっ勧に号意は誘お対示の各の社会象対びよ開社お会説書に明いて、買収 示にとなこるれさ求要がつ開な細詳ていにトーュたシっ1。法パ)(項)b(条A四所同引取券証年四、は項ラ

-K

・項目四〇に(t)がン追加され、ゴールデ項

(16)

(    同志社法学 六四巻四号  表による開示では、各開示対象執行役員について、その名と、右に述べた合意による報酬の額(金銭による退職補償の金銭価値総額、前倒しで行使可能とされた株式報酬・オプション等の金銭価値総額、年金および非適格後払報酬の金銭価値総額、役得およびその他の個人的便益の金銭価値総額、課税の補償の金銭価値総額、その他の報酬の金銭価値総額に区分した額と、それらの総額)が、開示される(上記の表参照) ₇₁

。 表による開示に加えて、そのようなゴールデン・パラシュートについての合意と、表による開示に含まれる額を理解するために必要な重要な事項が、文章によって記述されなければならない。そのような事項の例として、次のものが規定される ₇₂

。すなわち、(ⅰ)報酬の支払いの理由となる具体的な状況、(ⅱ)支払いが時金か年賦で支払われるか(年賦の場合、期限を開示しなければならない)、および、誰によって支払われるか、(ⅲ)支払いまたは便益の受領に適用される重要な条件または義務(たとえば競業禁止条項、勧誘禁止条項、誹謗禁止条項、機密条項。それらの条項の期限およびそれらの条項の放棄または違反に関する定めを含む)。 SECはまた、以上のようなゴールデン・パラシュートに関する開示は、規制の不均衡を最小化するため、ドッド=フランク法で言及された買収等の際の委任状勧誘または同意勧誘の説明書だけでなく、その他の支配権取引の際にも、また、その他の開示書類においても、要求されるべきであるとし、そのための改正を行っている ₇₃

。 ゴールデン・パラシュートに関する株主による承認についても、SECが制定した規

ゴールデン・パラシュート報酬 名前 金銭

(ドル) エクイ ティ

(ドル)

年金/非 適格後払

報酬

(ドル)

役得/便 益

(ドル)

課税の補 償

(ドル)

その他

(ドル) 総額

(ドル)

PEO

(以下略)

(17)

(    同志社法学 六四巻四号

則四a

、勧会社によって委任状が誘てされる場合とされる ₇₄

に決はのるれさ求要が議な買うよのそ、てっよに、収つめいて株主の承認がら等れる株主総会につい求

。また、スケジュール四Aに追加された項目四によって、会社は、ゴールデン・パラシュートに関する承認を求める場合に、委任状説明書において、そのような決議の般的な効果(そのような決議が拘束的かどうかなど)を説明しなければならない ₇₅

。 ゴールデン・パラシュートに関する開示および株主による承認についても、SECは、主に小規模発行者への負担を考慮した適用除外を定めることができるものとされた ₇₆

。しかし、ここでも、適用除外は定められなかった ₇₇

2 役員報酬の開示 ドッド=フランク法は、役員報酬の開示について、これまで述べてきたもののほか、以下のような改正を行う。 同法条によって追加された四年証券取引所法四条(i)項は、SECが、規則によって、年次総会についての委任状勧誘または同意勧誘の説明書において、発行者の株式価値の変化と配当その他の分配を考慮に入れた、実際に支払われた報酬と発行者の財務的な業績との関係を示す情報を含む開示を、各発行者に要求しなければならないものとする ₇₈

。 ドッド=フランク法条はまた、SECが、役員報酬に関する項目四〇を改正し、次の事項についての開示を各発行者に要求しなければならないものとする。すなわち、(A)CEO(またはそれに相当する地位の者)を除く発行者の全従業員の年間報酬総額の中央値、(B)発行者のCEO(またはそれに相当する地位の者)の年間報酬総額、および、(C)上記(A)の額の(B)の額に対する割合 ₇₉

。 ドッド=フランク法条によって追加された四年証券取引所法四条(j)項は、SECが、規則によっ

(18)

(    同志社法学 六四巻四号 て、年次総会についての委任状勧誘または同意勧誘の説明書において、発行者の従業員または取締役会構成員(または、それらの者が指定した者)が、報酬の部として発行者によって付与された持分証券、または、従業員もしくは取締役会構成員が直接・間接に保有する持分証券の、市場価値の低下をヘッジまたは相殺するために設計される金融商品を購入することを許容されているかどうかを開示することを、各発行者に要求しなければならないものとする ₈₀

3 報酬の返還 ドッド=フランク法四条は、報酬の返還(いわゆるクローバック

cla w ba ck

)について定める。同条は、四年証券取引所法に〇D条を追加し、SECが、規則によって、証券取引所および証券業協会に、以下の要件を遵守しない発行者の証券の上場を禁じなければならないものとする ₈₁

。そのようなSECの規則は、各発行者に、次の事項を定める方針を整備し実施することを要求しなければならない。すなわち、(1)証券法の下で報告を要求される財務情報にもとづくインセンティブ報酬についての発行者の方針の開示、および、(2)証券法の下での財務報告要件についての重要な不遵守によって会計上の修正を行うことを発行者が要求された場合に、発行者が会計上の修正を行うことを要求される日の直近年度の間に、誤ったデータにもとづいて、会計上の修正を考慮すれば執行役員に支払われたであろう額を超過してインセンティブ報酬(報酬として付与されたストック・オプションを含む)を受領した、発行者の現在または過去の執行役員に、発行者が返還請求を行う旨 ₈₂

。このような報酬の返還は、すでにサーベンス・オックスリー法によっても定められていた ₈₃

。右に述べたドッド=フランク法による報酬の返還は、返還をしなければならない主体がより広い点、会社によるエンフォースメントが可能な点で、サーベンス・オックスリー法によるものとは異なる ₈₄

(19)

(    同志社法学 六四巻四号

四 

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についての評価 1 

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に関する実証研究 米国では、〇〇六年頃から役員報酬に関する勧告決議を求める株主提案が行われる例が急増し、〇〇年には

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の導入を図る法案が議会に提出された ₈₅

。このような動向を受けて、米国では、

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について、ドッド=フランク法の成立前から、賛否両論の議論が行われてきた。実証研究としては、すでに〇〇年に同制度を導入している英国において ₈₆

、同制度の実際の有効性を分析するものが公表されている。 そのような実証研究として参照されることが多いのが、フェリおよびマーバー(

F er ri & M ab er

)によるものである ₈₇

。同研究は、六〇〇社あまりの英国の上場会社をサンプルとして、〇〇〇年から〇〇年にかけてのデータをもとに、次のような結果を示す。 サンプルのうち、FTSE〇指数を構成する会社(四社)について、〇〇年と〇〇四年の年次総会(〇〇年の年次総会が、〇〇年改正が施行されて初めての年次総会)における、英国法が要求する取締役報酬報告書についての勧告決議の結果は、反対票の平均が四・六%、〇%以上の反対票が投じられた会社が六社、〇%以上の反対票が投じられた会社が社だけであり、株主は、業績と報酬が連動しない度合いがはなはだしく、他のメカニズムも機能しないと考える場合にだけ、反対票を投じていることが示唆される。 また、この決議は勧告決議であるが、取締役会は反対票を受けて報酬政策について株主の要求に応じた変更を行っており、その結果、次の年次総会での反対票は減少している。たとえば、多くの反対を受けた会社は、任用契約の期間を年以内に短縮すること ₈₈

、新たな報酬コンサルタントを雇用すること、ストック・オプションの内容の変更等によって

(20)

(    同志社法学 六四巻四号 対処をしている ₈₉

。また、サンプルのうち反対票の少なかった会社を〇社取り出し、〇〇年の年次総会以前の報酬政策の変更を調査したところ、任用契約の期間の短縮等、上に述べたのと同様の変更を行っていた会社も多い。このことは、むしろ、年次総会以前に機関投資家による求めに応じてそのような変更が行われ、そのため、年次総会での反対票が投じられた割合が低かったということを示唆する ₉₀

。 サンプル全体について、〇〇年改正の前後で、CEOの報酬の水準や増加率に変化は見られない。しかし、〇〇年改正前に比べ、改正後の方が、CEOの金銭報酬と会社の悪い業績との連動性が高まっている。この連動性の増加は、年次総会で反対票が多く投じられた会社と、CEO報酬の水準が過大な会社において、大きい。このことは、投資家が、CEOの報酬水準そのものではなく、報酬のデザイン(業績と報酬の連動性)に関心を有していることを示す ₉₁

。このような業績と報酬の連動性の高まりは、機関投資家の持株割合が大きく、それだけ強いモニタリングがすでに働いていると考えられる会社にだけ生じているものでもない。他方で、業績と報酬の連動性の高まりは、同じ時期の、株式がAIMで取引されている会社(そのような会社には〇〇年改正が適用されない)では生じていない ₉₂

。また、〇〇年改正によって行われた開示の拡充が、業績と報酬の連動性の高まりの要因ともいえない。以上のことから、業績と報酬の連動性の高まりは、〇〇年改正によって、取締役報酬報告書についての株主総会の勧告決議という制度によるものと考えることができる ₉₃

。 もっとも、フェリおよびマーバーは、以上の結果から、ただちに、〇〇年改正が価値増加的なものであったという結論を導き出すことは控えている。仮に同改正によって株主が求める報酬政策の変更を行う会社が増えたとしても、そもそも平均的な株主が最適でない報酬実務を特定でき、より優れた代替案を提案できるという前提が成り立たなければ、CEOについての報酬実務が改善されることにはつながらないからである。このような前提が成り立たないとすれ

(21)

(    同志社法学 六四巻四号

ば、報酬実務におけるイノベーションが抑止され、特定の実務を個別の会社の実情を問わず押しつけることになりかねない ₉₄

。さらに、仮に英国において〇〇年改正が上記のような効果を有したとしても、その他の状況が異なる国に同様の制度を導入したとしても有効に機能するとは限らないといわれる。英国では、経営者の報酬についての詳細な開示、活動的な経済報道、深みのある取締役の労働市場、取締役の選任について株主の権限が強いこと、確立したベスト・プラクティス、地理的に集中し協調行動をとることについての規制上のハードルの少ない機関投資家といった前提条件があるがゆえに、〇〇年改正が上記のような効果を有したといえるのである ₉₅

。 

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について米国のデータをもとにした実証研究としては、カイおよびウォーキング(

C ai & W alk in g

)によるものがある ₉₆

。同研究はまず、〇〇年四月〇日に

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の導入を図る法案 ₉₇

が大差で下院を通過したことへの市場の反応を分析する。この結果によれば、CEOの俸給とボーナスが株式時価総額・株式リターン・総資産利益率等に比して異常に高額である会社ほど、法案通過への市場の反応が積極的であり、かつ、そのような市場の反応は単に俸給とボーナスの額が高いかどうかによるものではない。また、ストック・オプション等を含めたCEOの報酬と業績の連動性が低い会社について、法案通過への市場の反応が積極的である。企業のベータや規模、コーポレート・ガバナンスの程度といった他の特徴をコントロールしたあとであっても、これらの結果は変わらない。以上のことから、

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に関する立法が、業績に比して高額の報酬を受領するCEOの報酬を減少させ、CEOの報酬と業績の連動性が低い会社について報酬設計を改善することを助けることで、そのような会社の株主にとって便益をもたらすことが示唆される。そして、これらの結果は、

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に関する立法が株主と経営者の利益をよりよく調和させ、平均的に、企業価値を増加させるという仮説と調和的である ₉₈

。同研究はさらに、上記法案の通過に対する市場の反応と、企業のコーポレート・ガバナンスとの相関関係を示す。同研究によれば、コーポレート・ガバナンスに改善の必要性があり、か 〇〇

(22)

(    同志社法学 六四巻四号 つ、たとえ役員報酬を承認する勧告決議が否決された場合にもその結果を取締役会が無視することが見込まれるほどはコーポレート・ガバナンスが弱いわけではない企業ほど、法案通過への市場の反応が積極的である。この結果もまた、上記仮説を支持する ₉₉

。以上の研究は、

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の導入を図る法案が下院を通過したにすぎない段階での市場の反応についてのものであり、たとえ同法案が上院に提出され上院を通過したとしても、当時の大統領であったブッシュは拒否権を行使する方針を公にしており、かつ、たとえ同法案が成立したとしても総会で行われる決議は勧告決議に過ぎないこと、それにもかかわらず以上のような結果が示されたことが強調される 100

。 カイおよびウォーキングの研究は、さらに、〇〇六年から〇〇八年にかけて役員報酬に関する勧告決議を求める株主提案が行われた会社に関するデータから、次のことを示す。株主提案を行った株主の平均持株割合は〇・〇四%であり、仮にそのような株主提案が株主全体の富に影響するとしても、提案株主への影響は小さい。そのような株主提案は、相対的に規模の大きな会社において行われており、CEOの報酬が異常に高額かどうか、報酬の名目額が高額であるかどうか、CEOの報酬と業績の連動性、さらに、会社の業績やコーポレート・ガバナンスの程度は、そのような株主提案が行われるかどうかと関係がない。また、そのような株主提案が行われたことへの市場の反応は、労働組合が提案株主となった場合の方が、そうでない場合よりも、否定的である。そのような株主提案は、平均的には、他の株主からあまり大きな支持を得ていない。他の株主からの支持は、労働組合が提案を行った場合には小さく、CEOの報酬が異常に高額である場合には大きい。そのような株主提案が総会で否決されたことへの市場の反応は、般的に積極的であるが、CEOの報酬が異常に高額である場合には消極的である。以上のことは、〇〇六年以降に実際に行われてきた株主提案が、般的には、役員報酬に関する勧告決議によって便益を得ることが見込まれない会社に対して行われてきたこと、また、株主の利益以外の利益を追求する主体によって株主の最善の利益にならない形で行われる可能性があ

(23)

(    同志社法学 六四巻四号

ることを示唆する 101

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は、すべての会社にとって便益になるというものではないということである 102

2 

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への批判 

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については、ドッド=フランク法の成立前から、学界において批判も存在した。 たとえば、ベインブリッジ(

B ain br id ge

)は、ドッド=フランク法の成立前から、連邦法の規定による

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を批判していた 103

。その理由は、次のようなものである。第に、役員報酬が業績に見合わず高額なものになっているという批判は、事実として妥当しない 104

。第に、そのような会社法上の問題について連邦法によって規制をすることは望ましくない 105

。第に、株式会社の意思決定は、取締役会または取締役会が適切に権限を委譲した経営者によって行われるべきであり、このことは役員報酬についても同様である。

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において株主総会が行うことは勧告決議であるとはいえ、取締役会の意思決定に影響を与えることが予想されるのであり、そのような取締役会の意思決定への株主の介入は、権限を委譲された取締役会による意思決定という、公開会社の効率的な運営を可能にする権限分配の仕組みを混乱させるものである 106

。 また、

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へのより詳細な批判として、ゴードン(

G or do n

)によるものがある 107

。ゴードンはまず、役員報酬について考える基本的な視点が﹁経営者に業績に応じた報酬を与えるべきである﹂というものであるとしても、そのことから、現実の役員報酬の問題について単純な解決策が導き出されるわけではないし、取締役会がそのような観点から役員報酬を決定しているかどうかを決定するための簡易な指標が導き出されるわけでもないとする。役員報酬は、①成功した過去の役務提供への報償を与える、②将来の役務提供へのインセンティブを与える、③経営者の才能を有する者を保持し惹きつける、④経営者に有利な法的ルールを前提に経営者と株主の利益を調和させる、という四つの目標に資

(24)

(    同志社法学 六四巻四号 するものでなければならないが、その四つが互いに安定した関係にあるわけではないからである。これらの四つの目標それぞれからして望ましい役員報酬のあり方は常に致するわけではなく、﹁業績に応じた報酬が与えられたかどうか﹂は容易に計測できるものではない。役員報酬は、個別の会社ごとに、経営者と取締役会の交渉の過程から決定され、個々の会社ごとに複雑な決定が行われる必要があるものであって、そのような決定は取締役会ないし報酬委員会レベルで行われるべきものである 108

。 ゴードンは、英国における

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に関する機関投資家の実際の行動と、米国の機関投資家の議決権行使に関する実務の状況からして、

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は、米国では、硬直的なガイドラインないしベスト・プラクティスに依存したモニタリングをもたらすと述べる。すなわち、英国において、

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に関する機関投資家の議決権行使は、英国保険業協会(

A ss oc ia tio n o f B rit ish In su re rs

A B I

])および英国年金基金協会(

N at io na l A ss oc ia tio n o f P en sio n F un ds

N A P F

])の作成したベスト・プラクティスを遵守しているかどうかに基づいて行われる。このような行動は、報酬実務の硬直化にもつながる。 その上、米国の機関投資家をめぐる状況は、そのような問題がより顕在化しうるものである。すなわち、英国では、機関投資家による上場会社の株式所有は比較的集中しており、機関投資家の行動の調整も容易であって、そのような基礎の上でこそ、

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が良く機能する。これに対して、米国では、機関投資家による株式所有は比較的分散しており、機関投資家の行動の調整には様々な障害(とりわけ連邦証券法上の開示規制)がある。そのため、機関投資家の議決権行使についての意思決定は、実質的には、少数の議決権行使助言会社に実質的に委任されている。さらに、議決権行使助言会社のうち最も重要なものは、コーポレート・ガバナンスに関する助言と評価の両方のサービスを提供している。そのような利益衝突への批判を避けるためにも、議決権行使助言会社は、画的な議決権行使基準に頼らざるをえ

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