報告 関東地区のレディーミクストコンクリート工場におけるコンクリー トの運搬に関する実態調査
斉藤 丈士
*1・中田 善久
*2・伊代田 岳史
*3・齋藤 俊克
*4要旨:本報告は,コンクリート工学年次大会
2015(千葉)実行委員会の生コンセミナー部会において関東地区のレディーミクストコンクリート工場を対象として実施したアンケート調査のうち,レディーミクストコ ンクリートの運搬に関する状況と意識についてとりまとめたものである。アンケート調査の結果から,生コ ンを運搬するトラックアジテータは関東
2区地域で比較的古いものが使用されていること,関東地区全体で 運転手の高齢化が進んでいること,運搬時間の限度の変更はそれほど適用されていないこと,
JISの改正にあ たっては化学混和剤によるスランプの回復を可能にすることが望まれていることなどがわかった。
キーワード:レディーミクストコンクリート,運搬,トラックアジテータ,運転手,運搬時間
1.
はじめに
日本コンクリート工学会「コンクリート工学年次大会
2015(千葉)実行委員会 生コンセミナー部会」では,コ ンクリート工学年次大会の付随行事である生コンセミナ ーにおいてレディーミクストコンクリート(以下,生コ ンと称する)業界を取巻く現状の課題とその将来につい て討論を行うために,生コンセミナーの開催に先立ち,
関東圏における生コン工場の現状ならびに生コン実務者 の考えなどを把握することを目的としてアンケート調査 を実施した。アンケートの内容は大別して,
(1)生コン工場における設備と人材の状況および人材の確保と育成へ の取組みに関する項目,
(2)JIS A 5308認証および国土交 通大臣認定の取得状況に関する項目,
(3)生コンの出荷に関する取決めと残コン・戻りコンの状況に関する項目,
(4)生コンの運搬の実態および意識に関する項目
の
4つ
である。
本報告は,このうち,生コン工場における生コンの運 搬の状況と意識に関する項目について結果をとりまとめ たものである。
2.
アンケート調査の概要
2.1
アンケート調査の実施時期および対象者
アンケート調査は,平成
27年
4月に実施した。アンケ ートの送付先は関東地区
1都
6県(東京都,千葉県,神 奈川県,埼玉県,茨城県,栃木県および群馬県)の生コ ンクリート工業組合に加盟する生コン工場とし,品質管 理等を担当する技術職の方(できるだけ上級職の方)を 回答者に指名した。
2.2
アンケートの配付および回収の方法
全国生コンクリート工業組合連合会を通じて各生コ ンクリート工業組合にアンケート用紙の電子データを送 付し,任意の方法での組合員工場への配付を依頼した。
記入後のアンケートは紙ベースで各生コンクリート工業 組合が回収し,これをとりまとめて生コンセミナー部会 で集計した。
2.3
アンケートの配付数および回収の内訳
アンケートの配付数および回収の内訳は,表-1 に示 す通りである。なお,東京都,千葉県,埼玉県および神 奈川県生コンクリート工業組合を関東
1区,茨城県,群 馬県および栃木県生コンクリート工業組合を関東
2区と グループ分けする。
2.4
調査項目
ここでは,生コン工場におけるコンクリートの運搬に 関する状況と意識に関連する次の項目について調査を行 った。
表-1 アンケートの配付数および回収の内訳
地域 都道
府県 配付数 回収数 回収率
(%)
地区の 回収率
(%)
関東
1区
東京
55 46 83.678.6
千葉
59 44 74.6埼玉
62 41 66.1神奈川
53 49 92.5関東
2区
茨城
29 23 79.378.7
群馬
38 34 89.5栃木
27 17 63.0合計
323 254 78.6-
*1
日本大学 生物資源科学部生物環境工学科 准教授 博士(工学) (正会員)
*2
日本大学 理工学部建築学科 教授 博士(工学) (正会員)
*3
芝浦工業大学 工学部土木工学科 准教授 博士(工学) (正会員)
*4
日本大学 工学部建築学科 専任講師 博士(工学) (正会員)
コンクリート工学年次論文集,Vol.38,No.1,2016
・工場に常駐するトラックアジテータの状況
・工場に常駐するトラックアジテータの運転手の状況 と意識
・運搬可能エリアに関する状況
・運搬時間の限度に関する状況と意識
3.
調査結果および考察
3.1
工場に常駐するトラックアジテータの状況
関東
1区および関東
2区においてレディーミクストコ ンクリート工場(以下,工場とする)に常駐するトラッ クアジテータ(以下,運搬車とする)に関して,新車登 録から10 年以上経過している運搬車の割合を図-1 に示 す。工場に常駐する運搬車のうち新車登録から
10年以 上を経過しているものの割合は関東
1区よりも関東
2区 で高い傾向にあり,関東
2区では
8割以上が
10年以上 経過している運搬車であるとする工場がおよそ
4割
(38%)であった。また,関東
1区では
10年以上経過し ている運搬車はない(
0割)と回答した工場が
13%あっ たのに対し,関東
2区で同様の回答をした工場はなかっ た。これは,粒子状物質(PM)の基準を満たさないデ ィーゼル車は平成
15年
10月1日から1都3県(東京,
千葉,神奈川および埼玉)の地域で運行が禁止された
1),2)ことにより関東
1区では環境を配慮した新車導入が進ん だこと,関東
1区内で運行できない運搬車が関東
2区に 流入したと思われることが影響していると考えられる。
関東
1区および関東
2区において工場に常駐する運搬車 の総数(回答があった工場に常駐する運搬車の総台数)
について,その所属(所有者)を図-2 に示す。運搬車の 所属は,関東
1区においては系列の輸送会社が最も多く
37%,次いで自社所有(工場所属)が34%,系列でない
輸送会社が
25%であった。これに対し関東2区では自社 所有(工場所属)が多く
77%となっていた。これは,関 東
1区では工場の規模が大きく(1工場あたりの平均年 間出荷量は関東
1区で約80 千
m3,関東
2区で
38千
m3),
また生コン業
1社で複数の工場を運営する場合が多いた め輸送部門を分社化するケースが多いこと,出荷量が多 い日に半日単位で調達できるリース(派遣)の運搬車が 比較的普及しているため常駐車を少なめにできることな どが影響していると考えられる。
3.2
工場に常駐するトラックアジテータの運転手の状況 と意識
トラックアジテータの運転手(以下,運転手とする)
については,まず工場に常駐する人数を把握した。その 結果,
1工場あたりの平均人数は関東
1区で
18.0人,関 東
2区で
10.4人,関東全体では
15.8人であった。
工場に常駐する運転手の年齢構成に関する意識を図
-3 に示す。関東
1区および関東
2区のいずれも「高齢
化している」とした回答が最も多く
7割を超えていた。
また,この回答と関連して, 「若手(20~30 代)社員が少 ない」とする回答がいずれも次点で
1/4以上となったが,
「中堅(
40~
50代)社員が少ない」とする回答は非常に 少なく(複数回答のため全体合計は
100%以上),地域に関係なく運転手は全体に中堅~高齢者により構成されて いる現状が浮き彫りとなった。
工場に常駐する運転手を対象とする定年制(高齢の運 転手に対する年齢制限)の有無を運転手の所属会社ごと に図-4 に示す。関東
1区では,自社に所属する運転手
【関東1
区】 【関東
2区】
図-1 工場に常駐するトラックアジテータのうち新 車登録から
10年以上経過している割合
【関東1
区】 【関東
2区】
図-2 工場に常駐するトラックアジテータの所属
【関東1
区】
【関東2
区】
図-3 工場に常駐するトラックアジテータの運転手 の年齢構成に関する意識
0割 13%
1割以上、
3割以下 26%
4割以上、
7割以下 37%
8割以上、
10割以下 24%
回答数n=175
0割 1割以上、 0%
3割以下 19%
4割以上、
7割以下 43%
8割以上、
10割以下 38%
回答数n=72
自社所有
(工場所属)
34%
輸送会社(系 列会社)所有
37%
輸送会社
(非系列 社)所有 25%
持込み(運 転手所有)
4%
常駐運搬車総数=3,740台
自社所有
(工場所属)
77%
輸送会社
(系列会 社)所有 14%
輸送会社(非 系列社)所有
8%
持込み(運転 手所有)
1%
常駐運搬車総数=820台
12.9%, 22
76.0%, 130 4.1%, 7
26.9%, 46 0.0%, 0 ちょうどよい年齢構成になっている
高齢化している 中堅(40~50代)社員が少ない 若手(20~30代)社員が少ない その他
0 50 100 150
回答数n=171(複数回答)
回答数
4.3%, 3
77.1%, 54 2.9%, 2
25.7%, 18 0.0%, 0 ちょうどよい年齢構成になっている
高齢化している 中堅(40~50代)社員が少ない 若手(20~30代)社員が少ない その他
0 20 40 60
回答数n=70(複数回答)
回答数
と自社に関連する輸送会社(以下,系列輸送会社とする)
に所属する運転手については年齢制限を設けている場合 が多く,自社に関連しない輸送会社(以下,非系列輸送 会社とする)に所属する運転手については年齢制限を設 けていない場合が多かった。関東
2区では関東
1区と逆 に,自社に所属する運転手と系列輸送会社に所属する運 転手については年齢制限を設けていない場合が多く,非 系列輸送会社に所属する運転手については年齢制限を設 けていた。ただし,関東全体で見ると自社に所属する運 転手と系列輸送会社に所属する運転手については年齢制 限を設けている場合と設けていない場合はほぼ半々であ り,非系列輸送会社に所属する運転手についてはおよそ
6割で年齢制限は設けられていない結果となった。
運転手について年齢制限を設けている場合において 定年としている年齢を図-5に示す。ここでは,関東
1区と
2区ならびに運転手の所属の違いによる明確な傾向 は見られなかったため,全回答を総数(n=195)として 示している。年齢制限が設けられている場合に運転手が 定年となる年齢は一般的な企業の定年と同じ
60歳が最 も多い(46%)が,65 歳(41%),
70歳(7%)と高めの 年齢を回答しているものも比較的多かった。なお,一部 で
61,
63,
68歳などと回答している場合があり,最も高 い年齢は
75歳(4 件,2%)であった。
これより,生コン工場では運転手が高齢化しても比較 的長く雇用できるしくみとなっている場合が多いようで ある。ただし,一部の改正が平成
25年に施行された「高 年齢者雇用安定法」への対応として,一般に定年の引き 上げや定年の定めの廃止を導入する事例は少なく継続雇 用制度を導入する事例が多い
3)ことから,生コン工場に おける運転手の定年制度は法改正に対応したものではな く,以前からの決まりである可能性が高い。
3.3
運搬可能エリアに関する状況
生コンの運搬可能エリアの設定(工場の決まりとして 運搬可能エリアを定めているか)について図-6 に示す。
ここでは,選択肢を「運搬可能エリアを定めている」 , 「運 搬可能エリアを定めているがエリア外へも運搬すること がある」および「運搬可能エリアを定めていない」の
3つとした。関東
1区では運搬可能エリアを定めている割 合が全体の
86%と多数であり,そのうちの
40%(全体の
34%)でエリア外へも運搬することがあるとしていた。
一方,関東
2区では運搬可能エリアを定めている割合が
全体の
69%と関東1区よりも低く,また,エリア外へも
運搬することがあるとの回答はそのうちの
55%(全体の
38%)で関東
1区よりも高い割合となった。
運搬可能エリアを設定している場合について,その対 象を図-7 に示す。関東
1区では,地域(市区町村や地 区など)を対象に定めているとする回答が約
6割と最も
【関東1
区】 【関東
2区】
図-4 工場に常駐するトラックアジテータの運転手を 対象とする定年制(年齢制限)の有無
図-5 運転手について年齢制限を設けている場合に おいて定年としている年齢
【関東
1区】 【関東
2区】
図-6 生コンの運搬可能エリアの設定
【関東
1区】 【関東
2区】
図-7 運搬可能エリアの設定対象
制限なし 37%
制限あり 63%
回答数n=86
制限なし 61%
制限あり 39%
回答数n=62
制限なし 制限あり 47%
53%
回答数n=92
制限なし 62%
制限あり 38%
回答数n=24
制限なし 65%
制限あり 35%
回答数n=72 制限なし
0%
制限あり 100%
回答数n=10
90
2 0 4 0
80
0 0 2 0 13
0 0 0 0 4
0 20 40 60 80 100
60 61 62 63 64 65 66 67 68 69 70 71 72 73 74 75 回答数(延べ)n=195
年齢
回答数
定めて いる 52%
エリア外 への運 搬もある
34%
定めて いない 14%
回答数n=174
定めて いる 31%
エリア外への 運搬もある
38%
定めて いない 31%
回答数n=71
工場から の距離 26%
地域 61%
その他 13%
回答数n=125
工場から の距離 地域 48%
45%
その他 7%
回答数n=29
自社所属の 運転手
系列輸送会社 所属の運転手
非系列輸送会社
所属の運転手
多く,工場からの距離を対象にしたとする回答は全体の
1/4程度となった。関東
2区では,地域を対象としたとす る回答と工場からの距離を対象にしたとする回答が概ね 同程度であった。また,距離を対象とした場合について,
その距離は関東
1区の平均が
16.2km(最長
40km),関東 2区の平均が
22.9km(最長
30km)であった。これは,都市部の多い関東
1区と郊外の多い関東
2区で運搬時の平 均時速が異なるためと考えられる。なお, 「その他」につ いて記述式回答の内容は,関東
1区では生コン協同組合 が定めた範囲,生コン協同組合の割決(加入工場に対す る出荷先の割り当て)によるなど生コン協同組合が関係 している場合が多く,一部で運搬時間を考慮したとする 回答があったのに対し,関東
2区ではすべてが運搬時間 を考慮したとする回答となっていた。地域を対象に運搬 可能エリアを定めた場合についても生コン協同組合の指 定する範囲が影響している可能性があり,これらのこと から運搬可能エリアの決定に生コン協同組合が及ぼす影 響は関東
1区で大きいものと推察される。
運搬可能エリアの設定根拠を図-8に示す。関東
1区,
関東
2区ともに
JISの運搬時間の限度(1.5 時間以内)を 根拠にしたとする回答が最も多かったが,その割合は関 東
1区で約半数だったのに対し関東
2区では
9割と非常 に多かった。また,交通渋滞をあげた回答が関東
1区で は関東
2区に比べて多く,前述の距離を対象として運搬 可能エリアを定めている場合の平均距離と併せて見ると,
関東
1区における交通事情(道路の混雑状況,平均速度 など)は関東
2区よりも良くないようである。
3.4
運搬時間の限度に関する状況と意識
JIS A 5308
-
2014(レディーミクストコンクリート)に
おいて運搬時間(練混ぜを開始してから運搬車が荷卸し 地点に到達するまでの時間)の限度は
1.5時間以内と規 定されている。この限度時間内に荷卸し地点に到達でき ない場合の原因を図-9 に示す。関東
1区,関東
2区の いずれも「現場での待機時間が長い」とする回答が最も 多く,関東
1区では
64%,関東2区では
72%となった。また,次点はいずれも「渋滞などの交通トラブル」とす る回答であったが,この割合は関東
1区(64%)で関東
2区(34%)よりも高く,前述した交通事情の良くない 状況を裏付ける結果となった。なお,原因を「運搬距離 が長い」とする回答の割合は関東
1区(
7%)よりも関東
2区(28%)で高かった。関東
2区で距離を対象に運搬 可能エリアを定めている場合の平均運搬距離が大きいこ とを併せて考慮すると,関東
2区における生コンの運搬 距離は日常的に関東
1区よりも長いことが推察できる。
一方,「その他」について記述式回答の内容は,「これま でに
1.5時間以内に荷卸し地点に到達できないことはな い」とする旨の回答が関東
1区で
4件および関東
2区で
1
件, 「トラックアジテータの事故・故障など」とする旨 の回答が関東
1区および関東
2区で各
1件あった。
「現場での待機時間が長い」ことにより
1.5時間以内 に荷卸し地点に到達できない場合における積み荷の生コ ンの取扱い方法を図-10 に示す。関東
1区および関東
2区ともに「サインありで戻る(納入伝票に施工者が買い 取りを証明するサインをした上で,生コンは荷卸しせず 工場に戻して廃棄処理する)」との回答が多く,その割合 はいずれも
8割を超えていた。ただし, 「サインなしで戻 る(生コンの代金は支払われず,工場に戻して廃棄処理 する)」とする回答が関東
1区では
1割あったのに対し,
関東
2区では見られなかった。 これより,関東
1区では,
一部で現場での待機時間が施工者の都合により発生して いることが十分に認識されていない可能性がある。なお,
【関東
1区】
【関東
2区】
図-8 運搬可能エリアの設定根拠
【関東
1区】
【関東
2区】
図-9 1.5 時間以内に荷卸し地点に到達できない原因
51.5%, 87 19.5%, 33
8.3%, 14 16.6%, 28 16.6%, 28 JISの運搬時間(1.5時間以内)
想定される現場待機時間 トラックアジテータの台数 交通渋滞 その他
0 20 40 60 80 100
回答数n=169,複数回答
回答数
90.0%, 45 22.0%, 11
8.0%, 4 6.0%, 3 10.0%, 5 JISの運搬時間(1.5時間以内)
想定される現場待機時間 トラックアジテータの台数 交通渋滞 その他
0 20 40 60
回答数n=50,複数回答
回答数
7.1%, 12
46.7%, 79 63.9%, 108 3.0%, 5
運搬距離が長い 渋滞などの交通トラブル 現場での待機時間が長い その他
0 50 100 150
回答数n=169,複数回答
回答数
28.0%, 14 34.0%, 17
72.0%, 36 6.0%, 3
運搬距離が長い 渋滞などの交通トラブル 現場での待機時間が長い その他
0 10 20 30 40
回答数n=50,複数回答
回答数
受入検査に合格すれば
JISマークを抹消し規格外品とし て使用するとした回答の割合は関東
1区(1%)よりも関 東
2区(
12%)で多く,受入検査に合格すればそのまま 使用するとした回答の割合は関東
1区(
7%)と関東
2区
(6%)で同程度であった。JIS マークを抹消し規格外品 として使用する割合が関東
1区で少なかったことは,建 築基準法第
37条の適用を受ける建築の現場において規 格外品の使用が困難なことが影響している可能性がある。
JIS A 5308-2014
(レディーミクストコンクリート)に
おける運搬時間の限度は,購入者と協議の上で変更する ことができると規定されている。この規定を適用し,運 搬時間の限度を変更した実績を図-11 に示す。なお,変 更を適用した場合については,運搬時間の限度を短縮し たか延長したかを調べた。関東
1区,関東
2区ともに運 搬時間の限度を変更したことがあるとの回答は少なく,
変更したことはないとする回答が関東
1区で
90%,関東2
区で
96%となった。これより,JISに規定されている運
搬時間の限度の変更については適用事例の少ないことが 確認された。なお,運搬時間の限度を変更したことがあ る場合については,短縮したとの回答は関東
1区で全体 の
7%,関東
2区で全体の
4%であり,延長したとの回答 は関東
1区で
3%であったが,関東
2区では見られなか った。
運搬時間の限度を変更した場合について,その理由を 図-12 に示す。関東
2区の回答数は
3件と非常に少ない が,関東
1区,関東
2区ともに「夏場に基規準類の時間 限度が短くなるため」とする回答が最も多かった。これ は,土木学会コンクリート標準示方書や日本建築学会建 築工事標準仕様書
JASS 5(鉄筋コンクリート工事)にお いて,気温により生コンの製造から打込み終了までの時 間限度を指定しており夏期にはこれが
1.5時間(90 分)
以内となるため,打込み等に要する時間をここから差し 引いて運搬時間が指定されることを表している。また,
関東
1区では現場の段取りの都合とする回答が次点で
27%であった。なお,
「その他」における記述式回答の内
容は,ほとんどが設計者や施工者の意向や特記仕様によ るとされており,1 件で地方公共団体の仕様によるとさ れていた。
今後,工場の集約化などにより工場数が減少すると,
平均運搬距離や時間は長くなる可能性がある。これに対
応して,
JIS A 5308(レディーミクストコンクリート)における運搬時間の限度への要望(どのように規定を変え ていくのが望ましいと思うか)を図-13 に示す。ここで は関東全体のデータを示している。最も多かったのは,
スランプが低下した場合に流動化剤や高性能
AE減水剤 による回復を認めるとよいとする回答であり,全体の
2/3がこれを望んでいた。また,次点は「運搬時間の限度は
定めず品質規定のみにする」 , 「運搬時間の限度を
1.5時 間より長くする」, 「運搬時間の限度はすべて協議で決定 する」の順で,いずれも
3割程度となった。図-14 に,
将来的に運搬時間の限度を変更または廃止する場合に技 術的な裏付けとして必要となる資料を示す。回答の割合 に多少の違いはあるものの,関東
1区および関東
2区の いずれも最も多いのは「スランプを回復させた場合の品 質に関する資料」で次点は「スランプの経時変化を明ら
【関東1
区】 【関東
2区】
図-10 「現場での待機時間が長い」ことにより
1.5時 間以内に荷卸し地点に到達できない場合におけ る積み荷の生コンの取扱い方法
【関東1
区】 【関東
2区】
図-11 購入者と協議の上,運搬時間の限度を変更した 実績
【関東1
区】 【関東
2区】
図-12 運搬時間の限度を変更した理由
図-13 JIS A 5308 における運搬時間の限度への要望
サイン なしで 戻る 10%
サインありで 戻る 81%
JIS規 格外品 として取 り扱う
1%
そのまま使う 7%
その他 1%
回答数n=115
サインなし で戻る
0%
サインありで 戻る 82%
JIS規 格外品 として取 り扱う
12%
そのまま使う 6%
その他 0%
回答数n=35
短縮あり 7%延長あり
3%
変更したこと はない
90%
回答数n=178
短縮あり 4%
延長あり 0%
変更したこと はない
96%
回答数n=69
現場の 段取り の都合 27%
夏場に基規準類の 限度が短くなるため 現場が特 41%
殊なため 5%
その他 27%
回答数n=22
現場の段取り の都合
0%
夏場に基規準 類の限度が短 くなるため
67%
現場が 特殊な ため
0%
その他 33%
回答数n=3
30.5%, 76 26.5%, 66
33.7%, 84 21.3%, 53
67.1%, 167 7.6%, 19
6.0%, 15 1.2%, 3 運搬時間限度を1.5時間より長くする
運搬時間限度はすべて協議で決定 運搬時間限度は定めず品質規定のみにする 長時間運搬対応の修正標準配合設定義務づけ スランプが低下した場合に、流動化剤や高性能
AE減水剤による回復を認める 運搬時間の限度を変更または廃止し、必ずしも
荷卸しで品質保証しなくて良い仕組みづくり 技術革新によって時間限度を廃止できるように
その他
0 50 100 150 200
回答数n=249(複数回答)
回答数
【関東全体】
かにする資料」であった。これらの結果より,練混ぜか ら
1.5時間(現行
JISの運搬時間の限度)程度の時間経過 が多少変化した場合に生コンの品質への影響は主にスラ ンプの低下であること,また低下したスランプを化学混 和剤により回復させても品質に問題は生じないことが認 識されており,これらの資料を整備すべきと考えられて いるようである。
4.
まとめ
本報告を総括すると次の通りである。
(1)
工場に常駐するトラックアジテータは,関東
2区に おいて新車登録から
10年以上経過したものが多く使 用されている。また関東
2区では自社所有のトラッ クアジテータが多い。
(2)
トラックアジテータの運転手は全体に高齢化してお り若手(20~30 代)が少ない。ただし,生コン工場で は運転手が高齢化しても比較的長く雇用できるしく みがとられている。
(3)
生コンの運搬可能エリアは定められていることが多 く,関東
2区で関東
1区よりも広い傾向にある。ま た,現状の交通事情(道路の混雑や平均速度)は関東
1区よりも関東
2区の方が良いようである。
(4) JIS
の運搬時間の限度(1.5 時間)内に荷卸し地点に到
達できない場合の理由として,現場における待機時 間が長いとする回答が多かった。また,
1.5時間以内 に荷卸し地点に到達できなかった場合,関東
1区で は伝票へのサインなしで工場に戻されることがある。
(5)
購入者と協議の上で運搬時間の限度を変更できると する
JISの規定が適用された事例は少ない。ただし,
適用された事例については短縮したものが多い。
(6)
今後,運搬時間の限度について
JISを改正するとした ら,化学混和剤によるスランプの回復を認めるよう 望む回答が多い。また,そのための技術的な資料の整 備が必要と認識されている。
謝辞
本アンケート調査にご協力頂いた関東地区のレディ ーミクストコンクリート工場担当者各位,全国生コンク リート工業組合連合会ならびに各生コンクリート工業組
合の方々に深く感謝の意を表します。また,本報告のと りまとめに当たり第
22回生コンセミナーのパネルディ スカッションを参考にさせて頂きました。パネラーの桝 田佳寛氏(日本大学),十河茂幸氏(広島工業大学),陣 内浩氏(大成建設),鈴木澄江氏(建材試験センター),
谷口秀明氏(三井住友建設)に深く感謝いたします。
なお,本部会は次の委員で構成されている。
中田善久(部会長・日本大学) ,伊代田岳史(幹事・芝 浦工業大学),斉藤丈士(幹事・日本大学),伊藤司(東 京都生コンクリート工業組合) ,根本明(千葉県生コンク リート工業組合),石川寿秋(神奈川県生コンクリート工 業組合),佐野雅二(埼玉県生コンクリート工業組合),
茅根勉(茨城県生コンクリート工業組合),福田英博(栃 木県生コンクリート工業組合) ,林充郎(群馬県生コンク リート工業組合),齋藤俊克(日本大学),伊藤康司(全 国生コンクリート工業組合連合会)
参考文献
1)
自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の 特定地域における総量の削減等に関する特別措置法,
2007.5.18,
2)
例えば,東京都:都民の健康と安全を確保する環境に 関する条例,2000.12.22
3)
東京都産業労働局:高年齢者の継続雇用に関する実態 調査,p.7,2013.3
【関東
1区】
【関東
2区】
図-14 運搬時間の限度を変更または廃止する場合に技 術的な裏付けとして必要となる資料
57.9%, 92 43.4%, 69
51.6%, 82 79.9%, 127 3.1%, 5
スランプの経時変化を明らかにする資料 空気量の経時変化を明らかにする資料 時間経過による強度の変化を明らかにする資料 スランプを回復させた場合の品質に関する資料 その他
0 50 100 150
回答数n=159
回答数
65.1%, 41 47.6%, 30
49.2%, 31 66.7%, 42 4.8%, 3
スランプの経時変化を明らかにする資料 空気量の経時変化を明らかにする資料 時間経過による強度の変化を明らかにする資料 スランプを回復させた場合の品質に関する資料 その他
0 20 40 60
回答数n=63
回答数