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― 肝癌治療例から学ぶ ―

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Academic year: 2021

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46

B-2

研 究 要 旨  

Post-SVR 時代の肝疾患フォローを考える

― 肝癌治療例から学ぶ ―

研究分担者

三田 英治

国立病院機構大阪医療センター 消化器内科 研究協力者

石田  永

国立病院機構大阪医療センター 消化器内科

石原 朗雄

国立病院機構大阪医療センター 消化器内科

田中 聡司

国立病院機構大阪医療センター 消化器内科

(◎:執筆者、研究協力者名は 50 音順) 

インターフェロンフリー治療で C 型肝炎ウイルス(HCV)排除が期待される時代が到来 した。しかし HCV 排除後の肝発癌のリスクは残るため、肝癌のサーベイランスは必要で ある。今後のフォローアップスケジュールを考えるうえで、血液製剤で HIV/HCV に重複 感染した症例における本年度の肝発癌を検証した。その結果、肝癌初発例、再発例ともに HCV 排除後のイベントであり、綿密なサーベイランスが重要であった。

総 括 研 究 報 告 書

全国の HIV感染血友病等患者の健康状態・日常生活の実態調査と支援に関する研究

サブテーマ

  1

合併 C 型慢性肝炎に関する研究

サブテーマ

  2

血友病性関節症等のリハビリテーション技法に関する研究

サブテーマ

  3

HIV 感染血友病等患者の医療福祉と精神的ケアに関する研究

サブテーマ

  4

HIV 感染血友病等患者に必要な医療連携に関する研究

サブテーマ

  5

はじめに

C 型肝炎に対する抗 C 型肝炎ウイルス(hepatitis C virus、 以 下 HCV) 療 法 は、 ペ グ 化 製 剤 を 含 む インターフェロン(interferon、以下 IFN)治療か ら、IFN と直接作動型抗ウイルス剤(direct acting antiviral、以下 DAA)の併用療法、そして DAA だ けの IFN フリー治療へと進化した。著効率(sustained virological response、以下 SVR)率も飛躍的に向上 し、難治性の genotype 3 型や腎機能障害例にも対応 できるようになった。多くの患者さんが SVR を得 られる時代になり、今後のフォローアップのありか たを考えるため、血液製剤で HIV/HCV に重複感染 した症例における最近の肝発癌および再発例を検証 した。

症例提示

[ 症例 1 ]肝癌初発時 40 歳代前半、男性。血友病 A。12 年前にペグ IFN・リバビリン(ribavirin、以 下 RBV)併用療法で SVR。抗レトロウイルス療法

(anti-retroviral therapy、以下 ART)に ddI が使用さ れていたことから、HCV 起因の肝線維化だけでな く ddI 歴による門脈圧亢進機序のため、食道静脈瘤 が悪化し、4 年前に硬化療法および結紮術、さらに

はアルゴンプラズマ凝固法による地固め療法を受け ていた。2 年前には血小板減少(5.2 万 /mm3)に対 し脾臓摘出を受けている。今回、初発肝細胞癌診断 時の肝機能は、T-Bil 1.4 mg/dL、AST 36 U/L、ALT 23 U/L、ALP 621 U/L、 γ -GTP 36 U/L、Alb 3.2 g/

dL、PT 85 %、PT-INR 1.10、 ア ン モ ニ ア 332 μ g/

dL、AFP 3 ng/mL、PIVKA-II 235 mAU/mL、 脳 症 な し、 腹 水 軽 度、Child-Pugh 7 点、grade B で あ っ た。肝動脈化学塞栓療法を行い、ラジオ波焼灼術

(radiofrequency ablation、以下 RFA)を追加した。

[ 症例 2 ]肝癌初発時 40 歳代前半、男性。血友病 A。

数回の IFN 治療で SVR を得られず、8 年前に脾臓摘 出、3 年前のシメプレビル・ペグ IFN・RBV 併用療 法で SVR を得ていた。今回、初発肝細胞癌診断時 の肝機能は、T-Bil 0.7 mg/dL、AST 37 U/L、ALT 28 U/L、ALP 198 U/L. γ -GTP 146 U/L、Alb 4.4 g/dL、

PT 121 %、PT-INR 0.92、AFP 156 ng/mL、PIVKA-II 49 mAU/mL、脳症なし、腹水なし、Child-Pugh 5 点、

grade A であった。術前の肝硬度はフィブロスキャ ンで 6.4 KPa であった。肝部分切除を行い、病理組 織は高分化型肝細胞癌と診断された。なお、2 年前、

S 状結腸ポリープを内視鏡的粘膜切除したところ、

carcinoma in adenoma であった。

[ 症例 3 ]3 年前の 30 歳代後半に肝細胞癌が初発

(2)

  平成 29 年度 厚生労働行政推進調査事業費補助金エイズ対策政策研究事業  47 非加熱血液凝固因子製剤による HIV 感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究

し、RFA を施行した。初発時の肝機能は、T-Bil 1.1 mg/dL、AST 93 U/L、ALT 55 U/L、ALP 532 U/L、γ -GTP 227 U/L、Alb 3.1 mg/dL、PT 67 %、PT-INR 1.30、

AFP 11 ng/mL、PIVKA-II 26 mAU/mL、アンモニア 109 μ g/dL、脳症なし、腹水なし、Child-Pugh 5 点、

grade A であった。2 年前に INF フリー治療を行い、

SVR を得た。今回、単発の再発に対し再度 RFA で 加療した。

考 察

IFN フリー治療による肝発癌抑制効果は、IFN が 基軸の治療と比較して低いのでないかという報告が 当初出たものの、最近は肝発癌抑制効果を肯定する 論文が増えている。ただ、IFN フリー治療後の長期 にわたるフォローアップのデータがまだ出ていない ため、今後の検証を待ちたいと思う。

症例提示した 3 症例は、IFN 基軸の治療後に肝発 癌した 2 例と HCV 排除前の 1 例である。3 例とも 30 歳後半から 40 歳前半と、発癌年齢が明らかに若 年である。HCV に HIV が重複感染すると肝線維化 のスピードが加速されること、肝発癌と肝線維化は 密接に関係していることを考慮すると、HIV との重 複感染が肝発癌年齢を若年化させたことに疑いはな い。一方で、HCV の感染期間が短いと肝発癌のリス

クは大幅に軽減されると考えられている。症例 1 は 初発の 12 年前に HCV が排除され、HCV の感染期間 は短かったと思われる。また、SVR 後 12 年目の肝 発癌は HIV 非感染例でも極めてまれである。以上の ことは HIV/HCV 重複感染例でもより綿密な肝発癌 のサーベイランスを行うべきことを示している。

症例 2 も肝予備能が良好で、フィブロスキャンの 肝硬度が 6.4 KPa の若年の発癌であった。これは肝線 維化が進行していなくても、肝発癌のリスクのある ことを示している。また、大腸癌にも罹患しており、

今後血液製剤被害者の高齢化が進む中で、肝臓以外 の発癌にも留意する療養体制の構築が重要になる。

症例 3 は、初発肝細胞癌の治療後に IFN フリー治 療を行い、SVR を得ていた。SVR が得られると肝 発癌のリスクが抑えられるように、再発に対しても 効果があるものと考えている。少なくとも肝予備能 の低下は SVR 前に比べ、おさえることができ、積 極的に IFN フリー治療を実施するべきである。

図 1 に当科において IFN フリー治療を行った肝 癌症例一覧を示す。肝細胞癌の既往のある 25 例に IFN フリー治療を行い、7 例に再発を認めた。全例 SVR を得ていた。最終の肝癌治療日と再発に明らか な相関は認めなかった。IFN フリー治療後の観察期 間が 1 〜 2 年であり、今後長期間での検討を待ちた

図 1 当科において IFN フリー治療を受けた肝癌症例と治療前直近の画像検査

◎ : 症例 3、CT:computed tomography(本検討では dynamic CT)、MRI:magnetic resonance imaging(本 検討ではEOB-MRI)、US:ultrasonography ※ : 本例だけは喘息の既往があり単純 MRI のみであった

-8 -7 -6 -5 -4 -3 -2 -1 0 0 1 2 3

-18 -15 -12 -9 قাك

(A) ຩ৅ቅ୻पৌघॊIFNইজش੘௜

(B) IFNইজش੘௜৏भຩ৅ቅ

پ

ھڻۃইজ ੘௜

ੂ৚ຩቅ੘௜঩ ھڻۃইজઉ੺ຩቅ੘௜঩

CT MRI US

IFNইজش੘௜

৏भຩቅ੘௜

ٵ

(3)

48

非加熱血液凝固因子製剤による HIV 感染血友病等患者の長期療養体制の構築に関する患者参加型研究

い。

一方、IFN フリー治療後の肝癌初発を 8 例に認め た。IFN フリー治療後の経過観察期間は多くが 2 年 以内なので、必然的に肝発癌も 2 年以内となり、発 癌頻度の評価はできない。ただ、治療後早期の肝発 癌例があることの認識はするべきである。IFN 治療 を行った症例に比べ、IFN フリー治療を受けた症例 の年齢は明らかに高齢であり、肝発癌の高リスク集 団である。高リスクであるため、IFN フリー治療前 の肝画像検査は dynamic CT もしくは EOB-MRI を施 行している症例が多かった(肝癌既往 25 例中 24 例、

96%;治療後肝癌初発 8 例中 6 例、75%)。

結 論

血液製剤被害者は高齢でなくても肝発癌の高リス ク集団とみなすべきであり、IFN フリー治療直後で も、肝発癌を念頭に綿密なフォローアップが必要と 考えられた。

健康危険情報

なし

研究発表

1) 石田 永、石原朗雄、三田英治.HIV 感染を伴 う C 型慢性肝炎に対するインターフェロンフ リー治療の成績について.第 53 回 日本肝臓学 会総会

2) 三 田 英 治、 藤 井 祥 史、 庄 司 絢 香、 他.HIV 感 染 合 併 Genotype 3 型 C 型 慢 性 肝 炎 に 対 す る Sofosbuvir・Ribavirin 併用 24 週治療の成績.第 42 回 日本肝臓学会西部会

知的財産権の出願・登録状況

(予定を含む)

なし

参照

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