薬物治療学分野症例シリーズ7 担当者:山野尚子(学部 4 年生)
咳と突然の呼吸困難で入院した69歳の男性
咳と突然の呼吸困難で入院した69歳の男性
咳と突然の呼吸困難で入院した69歳の男性
咳と突然の呼吸困難で入院した69歳の男性
【患者プロフィル】 69 歳、男性、55 歳まで理髪業、退職後妻と 2 人暮らし 既往歴:胃潰瘍(30 歳、60 歳) 禁忌薬物:薬物有害反応既往なし 嗜好歴:喫煙(40 本×15 年+20 本×25 年:喫煙係数 1,100) 家族歴:胆嚢癌(兄弟) 【主訴】 咳、突然の呼吸困難、胸痛 【現病歴】 生来健康であったが、4/15 畑仕事の後、突然せきこみ、呼吸困難を訴えて近医に緊急入院した。呼吸困難は約 1 日 で改善したが、肺癌の疑いにて 4/20 当院に紹介、4/30 入院となった。体重が、最近 3 ヶ月間で4kg 減少した。 また、1 ヶ月ほど前から夜間に左胸が痛むことがあった。 【理学所見】 身長 150 cm、体重 34 kg、血圧 130/85 mmHg、呼吸数 20 回/min、栄養不良、パフォーマンスステータス 1-2 リンパ節腫脹なし、心臓異常なし、肺領域にラ音なし、打診にて右肩甲下部に濁音あり同部で呼吸音減弱、 腹部・神経系・その他に異常なし、ツ反陽性(12×11/25×16) 【検査成績】 赤血球 406 万/mm3↓、ヘモグロビン 12.1 g/dL↓、ヘマトクリット 35.9%↓、白血球 5300/mm3(好酸球:159/mm3、 桿状核性好中球 583/mm3、分葉核性好中球 3339/mm3、リンパ球 954/mm3↓、単球 265/mm3)、血小板 77.1 万/mm3↑、 赤血球沈降速度 56 mm/h↑、C 反応性蛋白 2.68 mg/dL↑ 血液 pH 7.40、二酸化炭素分圧 36.6 mmHg、酸素分圧 77.3 mmHg↓、過剰塩基 -1.6 mEq/L、酸素飽和度 94.1% 総蛋白 6.7 g/dL↓、アルブミン 3.9 g/dL↓、乳酸脱水素酵素 394 IU/L、コリンエステラーゼ 480IU/L↑、 血清クレアチニン 0.8 mg/dL、クレアチニンクリアランス 76 mL/分 癌胎児性抗原 226.7 ng/mL↑、αフェトプロテイン 5.4 ng/mL 【検査成績】 胸部 X 線写真:右肺中下葉拡張不全、右気管支(B3b)肥厚、右気管支周囲・気管分岐部・縦隔リンパ節腫大あり、 左主気管支周囲リンパ節腫大、左肺野にも転移を認める 問題 問題 問題 問題 1)この患者さんの初期検査計画を立てなさい。 【初期計画:診断】 気管支鏡検査:気管分岐部開大、左主気管支は内側より壁外性圧排あり、右主気管支には気管分岐部まで発赤あり、 右主気管支前壁に隆起性病変(血管増生を伴う表面が不規則な腫瘍)あり、右主気管支全周性に易出血性・ 狭窄あり、右肺上葉は気管支 B1∼B3 の分岐部に腫瘍があり B3 はほとんどピンホール状、中葉・下葉もそ れぞれ腫瘍で狭窄・閉塞あり 気管支鏡下肺生検組織:小細胞癌 CT(腹部):肝・左副腎:転移あり CT(頭部):両側頭頂骨に多発性脳転移あり 骨シンチ:左肋骨前面に転移あり Ga シンチ:右中下肺野・縦隔に高い集積あり【プロブレムリスト】 1)肺小細胞癌(進展型) 問題 問題 問題 問題 2)この患者さんに対する、標準的な治療計画を立てなさい。 3)治療に際して注意すべき副作用の軽減対策を述べなさい。 4)左胸の痛みの治療方法を WHO 方式癌疼痛治療法で緩和するためのポイントを列挙しなさい。 気管支鏡下肺生検の結果、肺小細胞癌であった。胸部 X 線検査、CT 検査(腹部・頭部)およびシンチグラフィ検査か ら、腫瘍は両側胸郭に広がり他臓器転移が確認され、進展型(Stage Ⅳ)に分類された。さらに、パフォーマンスス テータスが 1-2 で、明らかな腎・肝障害が無いことより、下記の化学療法を4コース施行することとした。 5/9∼23 に第 1 回を行った。 * * * *本患者の体表面積は、 BSA = W0.425 x H0.725 x 0.007184 で求められる。 体表面積自動計算のサイト を利用して求めると 1.22 m2 その他、藤本式では 1.18 m2 となり、下記の投与量とする。 塩酸イリノテカン 70mg/m2 シスプラチン 70mg/m2 肺癌の分類 肺癌の分類 肺癌の分類 肺癌の分類 小細胞癌と非小細胞癌の特徴 肺癌は、組織型により治療法と予後が異なる。 組織型は生検による病理組織検査で診断され、 大きく非小細胞癌と小細胞癌に分類される。 非小細胞癌はさらに腺癌・扁平上皮癌・大細胞癌 に分けられる。小細胞癌は神経内分泌細胞を起源 として発生すると考えられており、腫瘍の増殖が 速く、早期に転移するのが特徴である。 病期の分類 病期の分類 病期の分類 病期の分類 非小細胞癌はTNMTNMTNMTNM 分類分類分類分類により分類する。TNM 分類は悪性腫瘍の病期分類に用いられるもので、原発腫瘍(Tumor)の 広がり、原発臓器所属リンパ節(Node)転移の有無と広がり、遠隔転移(Metastasis)の有無の3項目から進行度を 評価する。 小細胞癌は、早期からリンパ節や他臓器に転移するので、一般の固形腫瘍の病期診断(TNM 分類)で治療方針を決め ることが困難である。そこで、治療方法選択の観点から、限局型と進展型に分類する。限局型は、放射線照射できる 大きさ(一側胸郭)に腫瘍が限局したものをいい、進展型はそれ以外のものを指す。 さらに、全身一般状態の程度をパフォーマンスステータス(performance status: PS)で評価する。 小細胞癌 非小細胞癌 患者数 肺癌の 20% 肺がんの 80% 腫瘍増殖 きわめて早い 比較的緩徐 転移 初期より 進行してから 化学療法感受性 高い 比較的低い 放射線感受性 高い 比較的低い 主体となる治療 全身的治療 局所的治療 <1 日目> 乳酸リンゲル液 1,000mL デキサメタゾン 8mg+塩酸グラニセトロン 3mg+生理食塩水 100mL 塩酸イリノテカン 60mg/m2+5%ブドウ糖液 250mL (90 分) シスプラチン 60mg/m2 (30 分) 乳酸リンゲル液 2,000mL <8日目、15日目> 塩酸グラニセトロン 3mg+生理食塩水 100mL 塩酸イリノテカン 60mg/m2+5%ブドウ糖液 250mL (90 分) <2∼5日目> 乳酸リンゲル液 2,000mL デキサメサゾン 4mg+生理食塩水 100mL
パフォーマンスステータス(全身一般状態の程度を、下記の 0∼4 の 5 段階で評価する指標) 0:社会活動ができ、制限を受けることなく発病前と同等にふるまえる。 1:肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や坐業はできる。 2:歩行や身の回りのことはできるが、軽労働はできない。日中 50%以上起居できる。 3:身の回りのある程度のことはできるが、日中 50%以上就床している。 4:歩行や身の回りのある程度のこともできず、終日就床を必要とする。 【初期計画:治療】 治療は非小細胞癌・小細胞癌のいずれかにより、また病期によって異なる。 非小細胞癌に対しては手術可能であれば外科治療を行う。小細胞癌に対しては化学療法が第1選択であり、手術は通 常行われない。 小細胞癌・非小細胞癌の治療方針 小細胞癌・非小細胞癌の治療方針 小細胞癌・非小細胞癌の治療方針
小細胞癌・非小細胞癌の治療方針:日本における一般的な治療法(世界的な標準治療:New Engl J Med, 2004)
化学療法の副作用と対策 化学療法の副作用と対策 化学療法の副作用と対策 化学療法の副作用と対策 抗癌剤の多くが非小細胞癌・小細胞癌のいずれにも効果を示す。なかでも活性が高いのがシスプラチンシスプラチンシスプラチンに代表されシスプラチン る白金製剤である。シスプラチンは DNA との結合により DNA 合成を阻害する。 抗癌剤を多剤投与する場合、作用機序の違う薬をそれぞれ最大耐量投与するのが原則である。小細胞癌の標準的化 学療法でシスプラチンと組合せるエトポシドエトポシドエトポシドあるいはイリノテカンエトポシド イリノテカンイリノテカンイリノテカンは、いずれもトポイソメラーゼ阻害剤である。 シスプラチンは腎毒性が高いため、腎障害予防に投与後1日 2-3L の大量の輸液を行い、尿量を確保する。 肺癌では抗利尿ホルモン不適合症候群を合併することがあり、電解質チェックを行うことが望ましい。 各種抗癌剤の有害反応と対策については、後述する。 肺癌の予後 肺癌の予後 肺癌の予後 肺癌の予後 肺癌による死亡は悪性腫瘍のうち第1位(年間 5 万人以上)である。画像診断の進歩にもかかわらず早期診断が困難 で、約 70%は診断時に既に切除不能であり、I 期で切除された症例でも 5 年生存率は 60-70%、全病期では 10-15%と治 療成績も不良である。喫煙が最大の危険因子であり、喫煙指数(一日の喫煙本数×喫煙年数)が高く、喫煙開始年齢 が低い程死亡リスクが高い。 非小細胞癌 臨床病期 代表的な治療方法 I, II 期 手術可能 外科治療 手術不能 胸部放射線治療 III 期 手術可能 外科治療(術前化学療法:ネオアジュバント治療)±胸部放射線治療 手術不能 化学療法±胸部放射線治療 IV 期 化学療法 一日の半分以上就床 しばしば介助が必要 上記以外 腫瘍が一側胸郭に限局 放射線治療が可能 歩行や日常生活が自立 小細胞癌 限局型 進展型 臨床病期 全身状態 代表的な治療方法 良好 不良 良好 不良 胸部放射線治療+化学療法を同時に行う (シスプラチン+エトポシド) 胸部放射線治療 ±化学療法(放射線治療後) 化学療法(シスプラチン+イリノテカン) 化学療法
【経過】 5/9 化学療法開始後、患者はたびたび嘔気を訴えた。 5/14 左胸の痛みと不眠を訴えた。 5/25 血液検査で白血球減少(1800/mm3)が認められた。 【プロブレムリスト】 1)肺小細胞癌(進展型) 2)抗癌剤の副作用による嘔気、白血球減少 3)左肋骨への癌転移による疼痛 【治療計画】 嘔気・嘔吐の予防と軽減のために、塩酸グラニセトロン(3 mg)とデキサメタゾン(8mg)を 1 日 1 回点滴静注したが、 嘔気を完全に抑制することはできず、2-5 日目の点滴にも塩酸グラニセトロン(2mg)を追加して、症状は軽快した。 白血球減少に対しては、5 月 23 日 1 クール目終了後も白血球数に注意するとともに、患者にはうがいと手洗いの励 行を指導した。白血球数が 1000/mm3未満になるようなら個室に移して感染予防を徹底する。 骨転移による疼痛に対して詳しく問診を行ったところ、うずくような痛みが入院以来続いていたことがわかった。 我慢強い性格と鎮痛剤服用への抵抗感から、痛みを口に出さず、ずっと耐えていたという。Visual Analogue Scale(VAS)
による評価(本人が痛みの程度を 0:全くない∼10:最高に痛いまで 100 mm のスケールで表す)では「6」であった。 患者には、胸の痛みが腫瘍の骨転移によるものであること、鎮痛剤で緩和できること、疼痛治療に用いるオピオイ ドには依存性がないことを説明した。不眠の除去を第1段階の目標として、ナプロキセン(300mg 分 3 内服)と硫 酸モルヒネ徐放錠(10mg 分 1 就寝前)を処方し、観察しながら漸次モルヒネの増量を行うこととした。モルヒネの 副作用(悪心・嘔吐および便秘)を抑えるために、プロクロルペラジン(20 mg 分 2 内服)とセンノシド(24 mg 分 1就寝前)を併用した。これにより夜間の不眠は解決したが、昼間の痛みが残ったため、硫酸モルヒネ徐放錠を増量 した(20mg 分 2、朝夕食後)。 医療スタッフには患者の疼痛の状態をアセスメント用紙にまとめ、情報の共有につとめるよう周知した。
【退院時サマリー】 5/31 退院。白血球数は 2800 /mm3 に回復した。感染症予防のため、外出を控え、手洗い・うがいを励行するよう に指導した。疼痛は VAS で「2」に改善した。 次回来院時に適切な疼痛対策ができるよう、在宅療養中は、鎮痛剤の服用時間・痛みの程度・食欲・吐き気・眠 気・熟睡感・排便回数を毎日「痛み日記」に記入するよう本人と家族に指導した。鎮痛剤は用量を守り、痛みのコ ントロールが不良のときは来院するように伝えた。 6/20 に化学療法のため再入院の予定。 〔退院時処方〕 ナプロキセン 300 mg 分 3、毎食後 硫酸モルヒネ徐放錠 20 mg 分 2、朝夕食後 プロクロルペラジン 20 mg 分 2、朝夕食後 センノシド 24 mg 分 1、就寝前 小細胞肺癌症例 小細胞肺癌症例 小細胞肺癌症例 小細胞肺癌症例 小小小小細胞肺癌症例細胞肺癌症例細胞肺癌症例細胞肺癌症例 N Engl J Med 2005;352:2714 A. 矢印部(上葉背側)に、1.1mm の腫瘤を認める。 A. 矢印部(胸膜直下)に、0.5mm の非腫瘤陰影を認める。 B. 同部の吸引細胞から小細胞癌と診断された. B. 同部の切除標本で腺癌と診断された。 N Engl J Med 2002;346:85 日本からの論文
multicenter, randomized, phase 3 study 154 patients were enrolled.
The median survival was 12.8 months in the irinotecan+cisplatin group and 9.4 months in the etoposide+ cisplatin group (P=0.002).
At two years, the proportion of patients surviving was 19.5 percent in the
irinotecan+cisplatin group and 5.2 percent in the etoposide+ cisplatin group.
癌治療における 癌治療における 癌治療における 癌治療における有害反応の評価有害反応の評価有害反応の評価 有害反応の評価 現在臨床で使用されている抗癌剤の全てに有害作用がある。抗癌剤は致死的な毒性域と治療域との差が小さく、 毒性を完全に回避することは不可能である。正確な毒性評価が抗腫瘍効果の評価と同様に重要である。 化学療法・放射線療法などのがん治療や、臨床試験における毒性評価基準の標準化を目的として、1998 年にNational Cancer Institute−Common Toxicity Criteria (NCI−CTC)Version 2.0 が作成
され、日本語訳 JCOG 版−第 2 版が 2001 年 9 月発表された。NCI−CTC では毒性 項目の細分化(24 区分 279 項目)、重症度のグレード分類、用語の統一化、特殊 な治療法における基準の追加を行い、精密で国際的に比較可能な判定基準とした。 毒性項目の重症度分類は、以下の規準に従う。治療薬と関連する可能性がある 有害事象、すなわち薬物有害反応の重症度を分類する。経験された薬物有害反応 には全て CTC に掲載されている毒性用語を使用する。すでに定義されている有害 事象に新しい名称をつけてはならない。 毒性の最も強いグレードのみをコースごとに記載する。 Grade 0:正常、正常/基準範囲内、なし Grade 1:軽症/軽度の毒性 Grade 2:中等症/中等度の毒性 Grade 3:重症/高度の毒性 Grade 4:生命を脅かす、または活動不能に至る毒性 Grade 5:毒性による死亡(因果関係あり) CTC に掲載されていない毒性については、該当する区分の中の「その他」の毒 性として、内容を具体的に記載したうえで、以下の規準に従って grading する。 第Ⅰ相試験における用量制限毒性(Dose limiting Toxicity)は CTC のグレー ドで決まるのではなく、各プロトコールによって定義される。 抗癌剤に起因する有害反応への対策としては、投与量の調節・投与法の変更な ど、薬効に大きな影響を与えない範囲で臨床家による研究が進められている。 有害反応対策(支持療法)は、治癒が見込めない例においても延命効果をあげ、 がん患者の生活の質(QOL)を向上させる。QOL は癌の全ての段階(病期)で注意 する必要がある。 支持療法:抗癌剤の副作用と対策 支持療法:抗癌剤の副作用と対策 支持療法:抗癌剤の副作用と対策 支持療法:抗癌剤の副作用と対策 副作用のスペクトル・発現の時期は、各抗癌剤毎に特徴がある。抗癌剤使用の原則は最大耐量での治療であるが、 投与量の増加とともに副作用も増す。また、自覚的副作用には個人差が大きい。抗癌剤の生体内動態には循環血液量・ 血清アルブミン量・肝機能・腎機能・体脂肪量・同時併用薬、経口の場合は吸収能も関係する。さらに、年齢・性・ 精神状態・全身状態・合併症・前治療の有無・入院外来の別・生活習慣も副作用の出現に影響を及ぼす。 副作用の分類 副作用の分類 副作用の分類 副作用の分類 抗癌剤の副作用は下表のように多種多様であるが、一般に細胞回転の速い組織(骨髄・消化管粘膜・毛根・爪床の 細胞・精子形成など)が影響を受けやすい。 抗癌剤の副作用の分類 抗癌剤の副作用の分類 抗癌剤の副作用の分類 抗癌剤の副作用の分類 1 血液 白血球減少、血小板減少、貧血、巨赤芽球症、溶血、血漿フィブリノゲン減少 2 消化器 悪心・嘔吐、口内炎、下痢、便秘、食道炎 3 循環器 心筋障害、うっ血性心不全、不整脈、低血圧、心膜炎、レーノー症状 4 肺 肺臓炎、肺線維症 5 肝 肝障害、肝線維化 6 腎 尿細管障害、間質性腎炎 7 膀胱 出血性膀胱炎 8 皮膚 発疹、角化、色素沈着、脱毛、爪の変形 9 内分泌 抗利尿ホルモン分泌異常症候群、女性化乳房 10 生殖器 無精子症、不妊、月経異常 NCI NCINCI
NCI----CTC Version 2.0CTC Version 2.0CTC Version 2.0 における毒性項目区分CTC Version 2.0における毒性項目区分における毒性項目区分における毒性項目区分 1 アレルギー/免疫 2 聴覚器/聴力 3 血液/骨髄 4 心血管系(不整脈) 5 心血管系(一般) 6 凝固 7 全身症状 8 皮膚科/皮膚 9 内分泌 10 胃腸 11 出血 12 肝臓 13 感染/発熱性好中球減少 14 リンパ管 15 代謝/検査 16 筋骨格系 17 神経学 18 眼球/視覚 19 肺 20 疼痛 21 腎/泌尿生殖器 22 二次性悪性腫瘍 23 性/生殖機能 24 症候群
11 神経 中枢神経症状、末梢神経症状、精神症状、めまい、聴力障害、倦怠感 12 免疫 免疫能低下、アレルギー、アナフィラキシー 13 二次発癌 白血病 14 その他 発熱、高尿酸血症、静脈炎、白内障 副作用の特徴と対策 副作用の特徴と対策 副作用の特徴と対策 副作用の特徴と対策 血液毒性 血液毒性 血液毒性 血液毒性 骨髄抑制の出現には、抗癌剤・投与法・蓄積総投与量が相関する。多くの抗癌剤で白血球、特に顆粒球の減少がみ られる。S 期特異的な抗癌剤(核酸代謝拮抗薬、葉酸代謝拮抗薬)では十分量の投与が行われた場合、7∼14 日で最低 になり、その後 7 日間で急速に回復する。S 期非特異的なもの(アルキル化薬など)では少し遅れる。 ニトロソウレア系薬物(nimustine、ranimustine など)、mitomycin C は骨髄抑制の出現・回復が遅延する傾向があ る。busulfan は 顆粒球に対する作用が強く、chlorambucil(日本で未承認)はリンパ球に対する作用が強い。 一般に白血球減少のほうが血小板減少より強いか同じであるが、carboplatin は血小板減少が目立つ。症例によっ ては血小板減少のほうが強く出ることもある(busulfan、mitomycin C)。 赤血球は細胞の生存日数が長いので、副作用としての貧血は少ないが、骨髄に巨赤芽球が見られるものがある (cytarabine、hydroxyurea、methotrexate など)。 多くの抗癌剤が骨髄障害を示すが、bleomycin、neocarzinostatin、vincristine、cisplatin、L-asparaginase で は弱い。抗癌剤の種類によって血液毒性の発現に差がある理由は、よくわかっていない。
抗がん剤の投与量制限因子(dose limiting factor:DLF)の 1/3 は血液毒性であり、その対策は最も重要である。
好中球減少患者の感染症予防と 好中球減少患者の感染症予防と 好中球減少患者の感染症予防と 好中球減少患者の感染症予防と GGGG−−−CSF−CSFCSF 製剤CSF製剤製剤 製剤 血液毒性に伴い最も危惧される疾患は感染症である。特に好中球は、遊走能および貪食能を有し、感染症の予防に 重要な役割を担っている。化学療法後、好中球の大幅な減少が予想される患者には早期より感染症対策を講じる。
好中球減少時の感染症予防
好中球減少時の感染症予防
好中球減少時の感染症予防
好中球減少時の感染症予防
1. 個室への患者の隔離(出来れば簡易無菌装置付き個室)。 2. ガウンテクニック開始(入室者の手洗い、マスク、ガウンの着用)。 3. 病室の窓の開放、生花の持ち込みを禁止。 4. 口腔内の清浄:ブラッシング、ポピドンヨードまたはアムホテリシン B(500 倍、500mL)によるうがい 5. 生食禁止(好中球 500 /mm3以下の場合) 6. アムホテリシン B シロップ:消化管(口腔)カンジダ増殖時、しばらく口の中に含んでおかせ、その後に飲ませる 7. 腸管内殺菌(抗生物質の経口投与):ポリミキシン B(300 万単位/分3、白血病のみに保険適用) またはニューキノロン系薬剤(白血病以外の疾患でも投与可) 8.肛門の清潔:排便後の肛門のヒビテン水による洗浄、ゲンタマイシン軟膏の塗布(1日2∼3回) G GGG----CSFCSFCSFCSF製剤:granulocyte colony stimulating factor. 顆粒球コロニー刺激因子(フィルグラスチム・レノスチグ ラム・ナルトグラスチム)の開発により、短期間に白血球を増加させることが可能となり、患者の感染の危険性が大 幅に減少された。抗癌剤により好中球数 1000 /mm3未満になったとき、保険適応範囲内の量で投与する。投与時期に ついては、化学療法の後、24∼72 時間の間に開始すると好中球の至適回復が得られるとの臨床データがある。 一次予防投与として治療計画の中に入れるべきではない。投与経路は適応に応じて皮下または静脈投与である。 G-CSF 製剤の薬物有害反応には骨痛・腰痛があり、造血幹細胞採取のために使用した場合は約半数に認められる。 このような場合は非麻薬性鎮痛剤の投与など適切な処置が必要である。本剤の使用法において、日本癌治療学会の G-CSF 適正使用ガイドラインが参考になる。 悪心・嘔吐 悪心・嘔吐 悪心・嘔吐 悪心・嘔吐 血液毒性と並んで頻度が高い。患者の QOL も損なうので対策は重要である。悪心・嘔吐が強い抗癌剤としてcisplatin、 dacarbazine、actinomycin D、L-asparaginase があげられる。投与スケジュールも大きく関係し、1回量が多く(特
に大量投与)注入速度が速いほど強くなる。
抗癌剤による悪心・嘔吐は急性・遅発性・予測性のものがある。急性は最も頻度が高く、遅発性・予測性嘔吐の発症 とも相関が高いため、コントロールが重要である。急性の悪心・嘔吐は抗癌剤投与開始後 1-2 時間から 24 時間以内に 発現し、5-HT が大きく影響しているとされる。悪心・嘔吐の発現率が非常に高い cisplatin では、5-HT が第 4 脳室底 にある化学受容器引金帯(chemoreceptor trigger zone:CTZ)の 5-HT3受容体を直接刺激する(中枢性嘔吐)他、回腸 から遊離した 5-HT が上部消化管壁に分布する 5-HT3受容体と結合し、求心性神経を経て、延髄の嘔吐中枢 vomitting center(VC)を刺激する(末梢性嘔吐)。5-HT3受容体拮抗薬(グラニセトロン、オンダンセトロン、アザセトロン、ラ モセトロン、トロピセトロン)は中枢性・末梢性嘔吐をいずれも抑え、急性の悪心・嘔吐に効果がある。 遅発性悪心・嘔吐は、抗癌剤投与後 24∼48 時間頃より始まり、2-5 日間持続する。抗癌剤が腸管に存在するマクロ ファージを刺激し、インターロイキン-1 やプロスタグランジンの産生を促進し、求心性神経を刺激することにより悪 心・嘔吐を引き起こすと考えられている。従ってサイトカイン産生やシクロオキシゲナーゼ誘導を抑制する副腎皮質 ステロイド剤が有効とされる。悪心・嘔吐を高率で発現する抗癌剤を使用する際には、デキサメタゾンを抗癌剤開始 前(8-20mg/day 静注または経口)と開始後 3 日間程度(4-8mg/分 2 静注または経口)投与するのが一般的である。 予測性の悪心・嘔吐は抗癌剤投与を予測しただけで起こるもので、精神的な要因が強い。薬物療法としてはロラゼ パム(0.5-1mg/回、3-4 回/day)、アルプラゾラム(0.4-0.8mg/回、3-4 回/day)を経口投与する。 嘔吐では、胃液喪失による低クロール性代謝性アルカローシス、脱水、低 K 血症等を認める。重度の場合、脱力感・ 倦怠感・手足のしびれ等の電解質異常症状や、口渇・皮膚の乾燥・尿量減少・体重減少等の脱水症状が見られ、意識 障害に至ることもある。 嘔吐による電解質および水分喪失に対しては、生理食塩水を主体に補充する。アルカリ化剤である NaHCO3や乳酸の 入った製剤は、初期には避ける。低 K 血症に対してはカリウムの補充が必要であるが尿量の確保に注意する。 口 口 口 口内炎内炎内炎内炎 口腔粘膜は 7-14 日の周期で回転しており、抗癌剤の作用を受けやすい。口内炎を起こすことの多い抗癌剤は methotrexate、5-fluorouracil、actinomycin D、daunorubicin、 doxorubicin、bleomycin である。cytarabine の大 量投与、5-fluorouracil と leucovorin の併用、5-fluorouracil と methotrexate の交代療法でも頻度が高い。投与法 も相関があり doxorubicin では分割投与、5-fluorouracil は持続点滴で強く出る。 一般に口内炎は投与の初期には少なく、高用量の投与あるいは連続投与から 5-10 日ぐらいして出現する。改善にも 2-3 週を要する。 早ければ治療中より起こり、唾液の分泌が抑制されて口腔内の乾燥などの症状を伴う。治療による白血球の減少が、 口腔内の局所感染を引きおこすこともある。 予防策として以下のような項目があげられる。 1. 化学療法開始前に虫歯を治療しておく 2. 治療中、氷片を口腔内に含んで冷やすことにより、抗がん剤が口腔粘膜に到達する量を減少させる 3. 毎食後・就寝前にうがい薬を使用する 口内炎が発症した場合は、悪化させないよう粘膜の保護と鎮痛による症状の改善に努め、粘膜の再生を待つ。食事 は熱いものや刺激物を避けた薄味の柔らかいものをできるだけ経口で摂ることが望ましいが、難しい場合には経管食 や点滴栄養も検討する。 下痢・便秘 下痢・便秘 下痢・便秘 下痢・便秘 抗癌剤の副作用として下痢の頻度も高い。抗癌剤による下痢に対しては、補液による電解質補正と薬物による対症 療法を行う。 急性の下痢は抗癌剤の投与当日に発現することが多い。消化管の副交感神経が刺激され、蠕動運動が亢進して下痢 が起こるものと考えられる。持続時間は比較的短い。急性の下痢には抗コリン剤(臭化ブチルスコポラミン、ロートエ キスなど)の投与が有効とされている。 遅発性の下痢は抗癌剤が消化管粘膜を障害することにより起こるもので、投与後数日-2 週間経過して発症する。軽 症の場合は収斂薬(タンニン酸アルブミン)、吸着薬(天然ケイ酸アルミニウム)を用い、抗コリン剤を併用することも ある。重度の下痢が持続するときには、ロペラミドの投与が効果的である。さらに重症の場合は腸管運動抑制作用の あるアヘンアルカロイド薬を短期間投与するが、麻痺性イレウスに注意する。 下痢による脱水は重篤になる場合が多いため、十分量の補液が必要になる。下痢では消化管液、NaCl、HCO3−、K+
が失われ、脱水、HCO3−の大量喪失による代謝性アシドーシス、高クロール性代謝性アシドーシス、低 K 血症を生じ る。生理食塩水で Na 補充を行うと HCO3−の希釈によるアシドーシスの増悪を来しやすい。このため、乳酸や酢酸など のアルカリ化剤を含む乳酸化リンゲル液などを使用する。アシドーシスが高度な場合は NaHCO3を用いる。
下痢の頻度が高い抗癌剤として、irinotecan、5-fluorouracil、cisplatin、methotrexate、doxorubicin、etoposide、 mitomycin C、actinomycin D 、cytarabine があげられる。
特にirinotecanでは遅発性の下痢が投与量制限因子であり、管理が重要である。Gupta らは、irinotecan の遅発性 下痢の原因が活性代謝物のグルクロン酸抱合能にあると考え、予測因子として胆汁係数 biliary index (BI)を提唱 した。算出式は下記のとおりである。
BI=AUC
CPT-11×AUC
-SN-38/AUC
SN-38GAUC:area under the plasma concentration-time 血中濃度−時間曲線下面積 CPT-11:irinotecan SN-38:irinotecan の活性代謝物(irinotecan の 1000-1 万倍高い抗癌作用を持つ) SN-38G:SN-38 のグルクロン酸抱合体(胆汁中に排泄される) SN-38 のグルクロン酸抱合能が低いと BI は大きくなり、遅発性の下痢を発現しやすくなる。実際 BI 値と下痢の発 現には高い相関が認められ、irinotecan の点滴開始から 3.5 時間と 7.5 時間後(または 9 時間後)の 2 回、もしくは 5.5 時間後と 9.5 時間後の 2 回の採血による AUC の算出が、最も正確に BI 値を予測できると報告されている。 便秘やイレウスはビンカアルカロイド類(vincristine など)で見られ、これは自律神経障害が関与するものと考え られている 心毒性 心毒性 心毒性 心毒性 心毒性をきたす抗癌剤としてアントラサイクリン系薬物(特に doxorubicin 、daunorubicin)があげられる。急性 と慢性があり、急性のものは注射後数分から数日経って起こる低血圧、頻脈、不整脈、心電図異常などで、10-15%の 症例にみられ、通常一過性である。これに対して慢性の心筋障害は投与後 2-6 ヶ月してから起こり、左室不全のため にしばしばうっ血性心不全に至る。 心筋症発生の頻度は 2-3%とされるが、蓄積総投与量が密接に相関し、総量が 450 mg/m2以上で 7-15%と高くなる。 それ以外の危険因子として、急速投与、70 歳以上、高血圧その他心疾患の既往、他抗癌剤の併用(特に cyclophosphamide)、縦隔への放射線治療などがある。いったん心筋症を発症すると治療は困難であるため、投与前に 患者の心機能を確認し、治療中も定期的に検査を行い、経過観察して予防に努める。 分子標的薬である trastuzumab にも心毒性が警告されている。上記の心筋症発症の危険因子を持つ患者・アントラ サイクリン系薬剤での治療歴を持つ患者に対する投与には注意を要する。
interferons、interleukins、顆粒球・マクロファージ刺激因子 granulocyte-macrophage colony stimulating factor (GM-CSF)などの生体応答調節物質biologic response modifiers (BRMs)で頻脈や低血圧が見られることがある。 * * * *BRMs は 1980 年代になって新しくつくられた言葉で、「腫瘍細胞に対する宿主(患者)の生物学的応答を修飾するこ とにより治療効果をもたらす物質または方法(米国立がん研究所 BRM 委員会)」と定義されている。 呼吸器障害 呼吸器障害 呼吸器障害 呼吸器障害 肺毒性を示す抗癌剤は、まずbleomycin、次いで busulfan、methotrexate、mitomycin C、ニトロソウレア系薬物、 gefitinib、interleukin-2 等である。bleomycin、busulfan、chlorambucil(日本で未承認)、ニトロソウレア系薬物 では肺細胞毒性を示し、用量相関があり、慢性に発生する。 一方、cyclophosphamide、methotrexate、cytarabine、procarbazine の肺障害はアレルギー性と考えられ、急性に 発症し、好酸球の増加と肉芽腫形成を示す。 bleomycin による肺線維症は蓄積総投与量と相関があり、450 mg/m2以下で 5%、150 mg/m2以下では臨床的に問題に なるような肺毒性はまず起こらない。高齢、酸素療法や、他の抗癌剤の併用、腎不全、他の肺疾患の合併、放射線治 療の既往などが危険因子である。 gefitinibによる急性肺障害・間質性肺炎については、2002 年の緊急安全性情報の後、解析が進められ、危険因子 はパフォーマンスステータス 2 以上の全身状態不良例・有喫煙歴・間質性肺炎合併例・有化学療法歴・男性・低酸素
血症・塵肺・扁平上皮癌と報告された。急性肺障害・間質性肺炎が出現した時は、直ちに投与を中止し、メチルプレ ドニゾロンのパルス療法(500∼1000mg、3 日間)を考慮する。 また、頻度は不明であるが rituximab、trastuzumab にも肺障害が起きることがある。 肝障害 肝障害 肝障害 肝障害 抗癌剤による肝障害は主として3病型に分かれる。最も多いのが肝細胞障害性、次いで静脈閉塞性、慢性の線維化 である。肝細胞障害は抗癌剤、あるいはその代謝物によるもので、投与開始後数週間経ってから発症することが多い。 肝酵素が上昇するが、脂肪肝や胆汁うっ滞がみられることもある。肝障害を起こすことの多い抗癌剤は L-asparaginaseである。頻度は低いが、cytarabine、actinomycin D、etoposide、6-mercaptopurine、methotrexate、 bleomycin(高用量)、vincristine も肝障害を起こすことがある。 肝静脈閉塞性肝疾患は血管内皮の障害に基づくもので、血栓形成、虚血から更に肝細胞の障害に至る。発症は比較 的急性である。cytarabine、cyclophosphamide、6-mercaptopurine、mitomycin C、dacarbazine、busulfan の高用量 で見られる。 methotrexate の長期投与による肝の線維化の報告もある。また膵炎が L-asparaginase によって見られることがあ るが、頻度は低い。 肝障害が認められたときは、投薬の中止と適切な処置(ステロイド投与等)を講じる。 腎障害 腎障害 腎障害 腎障害 抗癌剤の腎障害は無症候性のクレアチニン上昇や蛋白尿、急性腎不全まで多様であるが、最も問題になるのは cisplatinの腎毒性である。cisplatin の障害部位は近位および遠位尿細管で、時に集合管も冒されるが、糸球体は 冒されない。cisplatin 投与の際には、腎障害予防のため、投与後1 日 2-3L の大量の補液を行い、尿量を確保する。 その他、高用量 methotrexate、mitomycin C、ifosfamide、streptozocin(日本で未承認)、interleukin-2、interferons などでも腎障害が見られる。ニトロソウレア系薬物では投与後 1-2 年後の間質性腎炎が報告されている。腎障害を 増悪させ、排泄遅延による重篤な副作用が発現するおそれがあるため、上記の薬物は腎障害のある患者には注意を 要する(cisplatin、methotrexate、ifosfamide は禁忌)。 methotrexate は酸性尿で容易に結晶化し、これが尿細管を閉塞させて腎障害を引き起こすと考えられている。高用 量 methotrexate 投与の際には、補液中に重炭酸ナトリウムを加えて尿をアルカリ化し(>pH 7.5)、十分な尿量を保つ ことが必要である。利尿剤を併用する場合には、尿を酸性化するフロセミドは避け、アセタゾラミドを使用する。 methotrexate 排泄が遅延した場合は中和剤であるleucovorinによる救援療法が有効である。 出血性膀胱炎 出血性膀胱炎 出血性膀胱炎 出血性膀胱炎 cyclophosphamide や ifosfamide の代謝物の直接的障害による。対策としては、大量の補液による利尿と拮抗薬の mesna(sodium2‐mercaptoethane‐sulfate)の投与が基本である。 皮膚症状 皮膚症状 皮膚症状 皮膚症状 皮膚の角化は bleomycin で多い。手のしびれ感があり、同時に色素沈着が見られることも多い。瘢痕部に強く出る。 投与総量・投与期間が関係するが、回復可能である。 光線過敏症を示す薬剤として、5-fluorouracil、methotrexate、actinomycin D、bleomycin、doxorubicin があげ られる。 色素沈着は、cyclophosphamide、busulfan、methotrexate、5-fluorouracil、6-mercaptopurine、 doxorubicin、 bleomycin、actinomycin D、hydroxyurea で起こる。 脱毛は毛根の母細胞の障害による。doxorubicin で最も強い。cyclophosphamide も頻度が高いが、程度は軽い。 このほか、5-fluorouracil、methotrexate、bleomycin、actinomycin D、irinotecan、etoposide、vincristine でも 多少の脱毛が見られる。 脱毛は、一般に投与総量がある程度以上になってから起こる。投与総量が同じなら、少量連続投与よりも大量間欠 投与のほうが起こりやすい。抗癌剤の 1 回量が十分量投与された場合、脱毛は投与1-2 週で始まり、2-3 週間続き、 数ヶ月で元に戻る。 内分泌障害 内分泌障害 内分泌障害 内分泌障害
一般に抗癌剤の内分泌腺に対する影響は少ないが、女性化乳房がアルキル化剤や cisplatin の治療を受けた症例の 10%近くにみられる。投与開始後 3-6 ヶ月で起こり、数ヶ月で消える。
また、抗利尿ホルモン分泌異常症候群 syndrome of inappropriate secretion of anti-diuretic hormone (SIADH) が vincristine、cyclophosphamide で起こりうる。これらの抗癌剤投与後に生じた低 Na 血症に対しては、SIADH も念 頭に入れ、補液に留意する必要がある。 他には、甲状腺機能障害が interferons や interleukisn 類で起こりうる。初期には甲状腺機能は亢進するが、その 後漸次低下して、機能低下症に至る。 性腺障害 性腺障害 性腺障害 性腺障害 精腺は抗癌剤の影響をうけやすく、精子無形成に至ることがある。テストステロンは正常値が保たれる。精腺障害 は、抗癌剤の種類(アルキル化剤、併用で強い)、投与総量、年齢(40 歳以上で強い)が相関する。 一方、卵巣に対する影響は十分にはわかっていない。過少−無月経、血中 FSH(卵胞刺激ホルモン)・LH(黄体形成ホ ルモン)の上昇、尿中エストロゲンの低下、卵胞の成熟停止・破壊・線維化出血などが特にアルキル化剤で報告され ている。無月経は 40 歳以上で頻度が高い。 神経毒性 神経毒性 神経毒性 神経毒性 神経毒性を呈する抗癌剤として、ビンカアルカロイド類(特にvincristine)、次いでcisplatin、cytarabine(静注、 髄腔内注入とも)、methotrexate(特に髄腔内注入)、ifosamide(cyclophosphamide では少ない)、5-fluorouracil、タ キサン系薬剤(paclitaxel など)、procarbazine、fludarabine、pentostatin、L-asparaginase、interferons、 interleukins などが挙げられる。 発現の時期、症状の出る場所は様々であるが、薬剤によって多少特徴がある。蓄積投与量が関係することが多く、 遅発性のものが多い。発症メカニズムは不明なものが多く、有効な治療法はない。投与中止により漸次回復するが、 永続するものもある(vincristine の歩行障害、cisplatin の聴力障害など)。 抗癌剤の神経毒性は、他の原因によるものとの鑑別が困難であることが少なくない。診断は他の原因を除外し、か つ症候が使用抗癌剤のパターンと相応することを確認して行う。 倦怠感 倦怠感 倦怠感 倦怠感 多くの抗癌剤で投与後一過性の倦怠感がみられる。特別の治療を必要としないことが多い。 interferons、interleukins、腫瘍壊死因子、trastuzumab などの生体応答調節物質(BRMs)で強く現れ頻度も高い。 過敏症 過敏症 過敏症 過敏症
過敏症あるいはアナフィラキシー反応の頻度の高い抗癌剤は、L-asparaginase、bleomycin、paclitaxel、cisplatin、 melphalan 静注用、doxorubicin、docetaxel などである。 抗癌剤による過敏症は多くの場合Ⅰ型アレルギーで、一般に投与後 1 時間以内に発現するが、24 時間経過してから 起こることもある。Ⅰ型アレルギーは蕁麻疹や気管支痙攣などを発症するが、心肺の虚脱やショックへと進行する場 合もある。 paclitaxelによる過敏症の場合、出現頻度は投与にかける時間と反比例し、発現時期は点滴投与開始後 5-10 分後 頃が多い。症状は呼吸困難感、胸内苦悶感、喘息様症状、発熱、蕁麻疹、紅斑、ショックなどである。予防には、 副腎皮質ステロイド剤と抗ヒスタミン剤の前投薬が有効である。もし過敏症が起こっても、重症度に応じて適切な処 置(点滴速度の減少もしくは一時停止、抗ヒスタミン剤・ステロイド剤の静注)を行えば、98%の患者に paclitaxel の再投与が可能との報告がある。
trastuzumab、rituximab では点滴静注後のinfusion reactioninfusion reactioninfusion reactioninfusion reactionが警告されている。infusion reaction は、投与中 あるいは投与開始後 24 時間以内に発現する薬物有害反応の総称である。臨床症状は発熱、悪寒・悪心、頭痛、疼痛、 瘙痒、発疹、咳、虚脱感、血管浮腫などであるが、重篤化するとアナフィラキシー様症状、肺障害、心障害を生じ、 死に至ることもある。異常が認められた場合には、解熱鎮痛剤・抗ヒスタミン剤を投与するが、重篤な場合は抗癌剤 投与を中止し、酸素吸入やβ作動薬・副腎皮質ホルモン剤投与等の処置を行う。
rituximab では30 分前に解熱鎮痛剤および抗ヒスタミン剤等を前投与することで infusion reaction の軽減が可能 である。一方 trastuzumab の場合は、infusion reaction の発現回避を目的とした前投薬(ステロイド剤・抗ヒスタミ ン剤等)は有用性が認められていない。trastuzumab は 40%の患者で infusion reaction が報告されており、症状は通
常軽度∼中等度で初回投与時に現れやすい。 腫瘍崩壊症候群 腫瘍崩壊症候群 腫瘍崩壊症候群 腫瘍崩壊症候群 抗癌剤により腫瘍細胞が大量かつ急速に破壊されると、細胞内の核酸・カリウム・リン酸が大量に放出される。そ の結果、高尿酸血症・高 K 血症・高リン血症・低カルシウム血症が生じる。重篤な場合には致死的な不整脈、急性腎 不全に陥ることがある。このような病態を腫瘍崩壊症候群(tumor lysis syndrome)といい、rituximabで警告が出さ れている。 増殖速度の速い腫瘍系(急性リンパ性白血病、非 Hodgkin リンパ腫など)で、腫瘍量が多く抗癌剤に対する感受性が 高い場合、初回投与後 12-24 時間以内に高頻度に認められる。また治療前から腎機能障害が存在する場合、LDH や尿 酸値が高い場合、脱水状態も腫瘍崩壊症候群を引き起こしやすい。血清中電解質濃度及び腎機能検査を行い、異常が 認められた場合は直ちに投与を中止し、生理食塩液、高尿酸血症治療剤等の投与、透析を行う。 予防のためには、抗癌剤投与の 24-48 時間前から十分な補液を始めるのが望ましい。また尿のアルカリ化を図り、 尿酸生成抑制剤であるアロプリノールも併用する。 緩和ケア 緩和ケア 緩和ケア 緩和ケア 1986 年 WHO は「がんの痛みからの解放―第 1 版―」というガイドラインを発表し、癌の痛みから解放されて人間ら しさを取り戻すことは、患者の権利であると訴えた。 モルヒネを使った場合、約 80%の痛みが取り除かれるといわれている。神経ブロック等を使用すると、更に多くの 痛みを取り除くことができる。 「WHO 方式癌疼痛治療法」は「痛みの診断」「治療戦略」「鎮痛薬の使用法」「鎮痛薬の選択」から構成されている。 痛みの評価 痛みの評価 痛みの評価 痛みの評価 痛みは患者の主観であり、癌疼痛緩和の評価者も患者自身である。「いつから」「どこが」「どうしたら」「どんなふ うに」「どのくらい」痛むのか、患者に具体的に話してもらうことが、痛み治療の第 1 歩である。
痛みの評価法として、visual analogue scale (VAS)が広く用いられる。全く痛みのない状態を 0 mm、想像しうる 最大の痛みを 100 mm として、痛みの程度を 100 mm の直線スケールで表す。そして患者自身に、現在の痛みがスケー ル上のどこにあるかを示してもらい、痛みを評価する。 フェイススケールは、患者に絵の中から現在の気分に相当する表情を選んでもらうというもので、小児や高齢者な ど、自己表現が困難な患者に適している。 VAS VAS VAS
VAS((((visual analogue scalevisual analogue scalevisual analogue scalevisual analogue scale)))) http://www.emec.co.jp/hareruya/vol3/vas.html より
フェイス・スケール フェイス・スケール フェイス・スケール フェイス・スケール http://www.geocities.jp/pino55v/toutu.html より
痛みのマネジメント 痛みのマネジメント 痛みのマネジメント 痛みのマネジメント 詳しい問診と丁寧な診察・画像診断により、痛みについて次の点を確認する 1)痛みの原因 腫瘍自体が原因である痛み:浸潤・転移など 癌の治療に起因する痛み:手術後の瘢痕痛、化学療法後の口内炎・下痢・腹痛など 全身衰弱に関係した痛み:褥瘡など 癌および癌治療以外の原因による痛み:緊張性頭痛、リウマチ関節痛など 2)痛みの性質 侵害受容性の痛み(体性痛・内臓痛、組織破壊で出た発痛物質が痛覚神経を刺激する痛み) 神経障害性の痛み(末梢神経障害による痛覚過敏) 両者が混在した痛み 3)痛みの治療に関する対話と治療法の選択 身体面・精神面両方へのアプローチが必要である 薬物療法、その他の治療法の双方が用いられる その他の治療法:神経ブロック、放射線治療、脳神経外科的治療法、理学療法、心理療法など 4)段階的な目標を設定する 痛みに妨げられない睡眠時間の確保→安静時の痛みの消失→体動時の痛みの消失を目標とする 5)癌自体による痛みは、適切な薬が・適切な量で・適切な時間間隔で投与されれば、薬の使用のみによって十分な 鎮痛が得られるのが普通である 痛み治療の 痛み治療の痛み治療の 痛み治療の 5555 原則原則原則原則 1)経口的に(by mouth) モルヒネをはじめとする鎮痛薬は経口投与とすることが最も望ましい。経口であれば患者自身が主体的に痛みの マネジメントを行える。
2)時刻を決めて規則正しく投与(by the clock)
痛みが持続性であるときには、薬物の血中濃度を安定化させるため、時刻を決めて規則正しく投与する。 3)除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)」
麻薬に対する誤解と偏見を解く。麻薬は痛みがある患者では精神依存は起こらないため、中等度以上の痛みがあ る時に適応となる。 WHO WHO WHO WHO 方式三段階除痛ラダー方式三段階除痛ラダー方式三段階除痛ラダー方式三段階除痛ラダー http://www.nirs.go.jp/report/nirs_news/200206/hik7p.htm より
4)患者ごとの個別的な量で(for the individual) 至適投与量と鎮痛効果が最大となり、かつ副作用が最小となる投与量の目標に調整する。 鎮痛薬の適切な投与量は、治療対象となった痛みが消える量である。痛みの消失する投与量には個人差が著しい。 5)そのうえで細かい配慮を(attention to detail) がんの痛みは、診断から亡くなるまでの間に強さも性質も変化するため、経過を観察し、オピオイドの反応性を 確かめながら対応していく。副作用対策、患者の心への配慮(スピリチュアルケア)もあわせて行う。 鎮痛薬・鎮痛補助薬の種類 鎮痛薬・鎮痛補助薬の種類 鎮痛薬・鎮痛補助薬の種類 鎮痛薬・鎮痛補助薬の種類 鎮痛薬の効果が予想できない場合には、適当量を静注して患者の痛みの消長を調べるチャレンジテストを行う。
非オピオイド: Non-steroidal anti-inflammatory drugs (NSAIDs)非ステロイド性抗炎症薬)、アセトアミノフェン
骨転移痛、感染や炎症による痛みに対して有効とされる。 主な副作用:胃腸障害。NSAIDs の副作用は薬剤と胃粘膜との接触によるものだけではないため、直腸 内投与、静脈内投与でも起こりうることに注意する。 弱オピオイド:リン酸コデイン 主な副作用:便秘。投与初期から緩下剤の十分量を併用する。ときに嘔気を生じるが制吐薬が有効である。 高齢者には急激な増量は避ける(痰の喀出困難、眠気が発生しうるため)。 強オピオイド:モルヒネ。他にプブレノルフィン、オキシコンチン、フェンタニルなど 主な副作用:モルヒネによる便秘は必発である。投与開始から下剤(センノシド,ピコスルファートナト リウム、酸化マグネシウムなど)を併用する。 嘔気・嘔吐に対しては、中枢性の制吐薬(プロクロルペラジンなど)を同時に併用する。 鎮痛補助薬:抗痙攣薬 (フェニトイン、カルバマゼピン) 局所麻酔薬(メキシレチン) 向精神薬 (クロルプロマジン、ハロペリドール、プロクロルペラジン) 抗不安薬 (ジアゼパム、ヒドロキシジン) 筋弛緩薬 (チザニジン) 抗うつ薬 (アミトリプチリン) 副腎皮質ホルモン(プレドニゾロン、デキサメタゾン):脳圧亢進、神経圧迫による疼痛に有効 モルヒネによる疼痛緩和がうまくいかないとき:原因と対策 モルヒネによる疼痛緩和がうまくいかないとき:原因と対策 モルヒネによる疼痛緩和がうまくいかないとき:原因と対策 モルヒネによる疼痛緩和がうまくいかないとき:原因と対策 1)投与量が不足していないか? 疼痛アセスメントを継続して行い、必要ならば増量する。 2)副作用対策は十分か? 副作用のためにコンプライアンス不良となっていることがある。規則的服用の重要性を説明し、副作用対 策を増強する。 3)疼痛緩和目標は定まっているか? 疼痛緩和の目標があいまいだと患者の達成感が得られず不安につながる。 具体的かつ段階的な目標を設定し、スタッフが情報を共有しながら、徐々にクリアしていくことを目指す。 4)全身状態はどうか? 腹水、胸水、浮腫が出現するとモルヒネの分布容積が増加し、有効な血中濃度が得られないことがある。 5)モルヒネの効きにくい痛みではないか? モルヒネが効きにくい痛みと対策 モルヒネが効きにくい痛みと対策 モルヒネが効きにくい痛みと対策 モルヒネが効きにくい痛みと対策 緊張性頭痛 :筋弛緩薬、ジアゼパム、Nsaids ヘルペス後神経痛 :三環系抗うつ薬、硬膜外局麻 筋攣縮痛 :ジアゼパム * * * *モルヒネに反応するが使うべきでない痛みもある。 胃膨満痛 :抗鼓腸薬を使う 大腸収縮による痛み :腸蠕動刺激薬を使う 便秘による痛み :浣腸、緩下剤を使う
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